• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C07C
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C07C
管理番号 1279635
審判番号 不服2008-22200  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-08-29 
確定日 2013-05-15 
事件の表示 特願2002-559374「ビスフェノールAの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年8月1日国際公開、WO02/59069、平成16年9月2日国内公表、特表2004-526697〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2002年1月8日〔パリ条約による優先権主張外国庁受理 2001年1月23日(FR)フランス〕を国際出願日とする出願であって、
平成19年10月16日付けの拒絶理由通知に対して、平成20年4月23日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされ、
平成20年5月26日付けの拒絶査定に対して、平成20年8月29日付けで審判請求がなされるとともに、平成20年9月26日付けで手続補正がなされ、
平成22年8月25日付けの審尋に対して、平成23年2月28日付けで回答書の提出がなされ、
平成23年8月29日付けの審判合議体による拒絶理由通知に対して、平成24年2月29日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされ、
平成24年5月9日付けの審判合議体による拒絶理由通知に対して、平成24年11月15日付けで意見書の提出とともに手続補正(以下、「第4回目の手続補正」という。)がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?10に係る発明は、第4回目の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるとおりのものであり、
本願の請求項1に係る発明(以下、「本1発明」という。)は、次のとおりのものであると認める。
「ビスフェノールAを製造する連続的方法であって、フェノールおよびアセトンを反応器に導入することと、強酸触媒と、純粋な2,2-ビス(メチルチオ)プロパン、または、2,2-ビス(メチルチオ)プロパン、アセトン及び水の混合物とを、前記反応器内に添加することと、前記強酸触媒および共触媒としての2,2-ビス(メチルチオ)プロパンの存在下で、フェノールとアセトンを反応させることとを含むことを特徴とする、方法。」

3.審判合議体による拒絶の理由
平成24年5月9日付けの審判合議体による拒絶理由通知書(以下、「先の拒絶理由通知書」という。)に示した拒絶の理由は、
理由1として、『この出願の請求項1?10に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1、3又は8に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。』という理由と、
理由2として、『この出願の請求項1?10に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1?9に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。』という理由を含むものである。

4.引用刊行物及びその記載事項
(1)刊行物8の記載事項
先の拒絶理由通知書において「刊行物8」として引用された本願優先権主張日前に頒布された刊行物である「特開昭59-62543号公報」には、次の記載がある。

摘記8a:請求項1
「フエノール及びアセトンを塩酸含有触媒の存在下に連続法で反応させることにより2,2-ビス(4-ヒドロキシフエニル)プロパンを製造する方法において、…の各工程を含有することを特徴とする高純度2,2-ビス(4-ヒドロキシフエニル)プロパンの製造方法。」

摘記8b:第5頁左下欄第20行?第6頁左上欄第7行
「本発明の方法において、酸性触媒としては前記塩酸又は前記塩酸と塩化水素からなる触媒のみを使用することもできるが、塩酸と他の助触媒成分とを組合わせて使用することもできる。…これらの助触媒として具体的には、…メチルメルカプタン…などのアルキルメルカプタン類;…前記アルキルメルカプタン類…のアルカリ金属塩;前記メルカプタン類から誘導されるメルカプタール類及びメルカプトール類などを例示することができる。これらの硫黄化合物を助触媒として使用する場合の使用割合は反応系内の可溶性酸性触媒に対するモル比として通常1/2000ないし1/30の範囲である。」

摘記8c:第11頁右下欄第1行?第12頁右上欄第5行
「実施例1…第1図に示した反応装置を使用して連続反応を行つた。…第1反応槽に補充アセトン24.6g/hr、補充フエノール145g/hr、15%メチルメルカプタンナトリウム水溶液1.0g/hr、循環油相母液269g/hr、循環水相母液128g/hr及び補充HClガス5l/hrの速度でそれぞれを連続的に供給した。第3反応槽から流出してくるスラリー性反応混合物は間欠的に遠心分離器に装入して、固液分離した。得られた遠心分離ケーキは後記中和精製実験に供し、油相母液と水相母液については前記所定供給量よりも過剰分は系外へ抜出し、その残余を反応槽へ循環し再使用した。…また、同様に油相母液及び遠心分離ケーキ(粗p,p’-BPA・PhOH)に含まれる副生成物濃度も一定の値に落着いた。」

(2)刊行物7の記載事項
先の拒絶理由通知書において「刊行物7」として引用された本願優先権主張日前に頒布された刊行物である「化学大辞典5(縮刷版第32刷)、化学大辞典編集委員会編集、1989年8月15日、共立出版株式会社発行、第792頁」には、次の記載がある。

摘記7a:チオアセタールの項
「チオアセタール,メルカプタール…アルデヒドあるいはケトンのカルボニル基の酸素を2個のチオエーテル基で置換した化合物RCH(SR’)_(2)あるいはR_(2)C(SR’)_(2)をいう.アセタール^(*)のイオウ類似体である.ケトンから誘導されたチオアセタールは特にケトンチオアセタール^(*)(メルカプトール)ということがあるが,別に著しい性質上の差異はない.
製法1)アルデヒドまたはケトンに塩化水素,塩化亜鉛などの酸性触媒の存在で,メルカプタンあるいはチオフェノールを作用させる:
R _(\) HCl R _(\) _(/)SR”
CO+2R”SH → C
R'^(/) R'^(/) ^(\)SR”
2)…
性質 不快なにおいのする液体(高位のものは固体)で,アルカリに対して安定である.」

(3)刊行物2の記載事項
先の拒絶理由通知書において「刊行物2」として引用された本願優先権主張日前に頒布された刊行物である「米国特許第2602821号明細書」には、日本語訳にして、次の記載がある。

摘記2a:第2欄第38行?第3欄第25行
「本発明に従ってビス(ヒドロキシフェニル)化合物を得るためにフェノール系化合物と反応させるビス(オルガノ・メルカプト)メタンの化合物群は、次式で表される:

…この化合物群に分類される化合物の例として含まれるのは:…
2,2-ビス(メチルチオ)プロパン」

摘記2b:請求項15(第12欄第5?8行)
「酸性媒体中でフェノールと2,2-ビス(アルキルチオ)プロパンを反応させることからなる2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンの製造方法。」

(4)刊行物4の記載事項
先の拒絶理由通知書において「刊行物4」として引用された本願優先権主張日前に頒布された刊行物である「特開平6-343879号公報」には、次の記載がある。

摘記4a:段落0002?0003
「従来、2,2ビス(4-ヒドロキシルフェニル)プロパンに相当するビスフェノールAはフェノールとアセトンを主原料とし、メルカプタンを助触媒とする触媒系を使用して製造されてきた。この触媒系における主触媒には通常塩酸などの酸が使用されるが、この反応系から主触媒等を精製除去後の反応生成物には、未反応主原料、反応副生成物、助触媒メルカプタン、水、ビスフェノールA等が含まれている。この反応生成物は、次の軽質分回収蒸留塔で製造目的物ビスフェノールAを主成分とするボトム成分と塔頂から排出されるメルカプタン等からなる軽質分に分離される。…
ボトム成分はビスフェノールAを主成分とし、フェノールその他を含み、ビスフェノールAの分離、精製に供される。一方、塔頂から排出される軽質分にはメルカプタン、アセトン、水蒸気、フェノールその他が含まれるが、アセトン及びフェノールはビスフェノールA製造主原料として回収する必要があり、特にメルカプタンは高価な材料であるので回収が必要でり、さらに特異な悪臭を持つので、大気及び排水中への漏洩は避けるクローズドシステムで処理、回収されることが好ましい。」

摘記4b:段落0008
「メルカプタン回収蒸留塔Fにおいて分留された塔頂留分(メルカプタン、アセトン等)はビスフェノールA製造用原料として、また、塔底留分のうち、フェノールは純度によっては塔頂留分同様に直ちにビスフェノールA製造用原料として使用され、水は排出される。」

5.刊行物8に記載された発明
摘記8aの「フエノール及びアセトンを塩酸含有触媒の存在下に連続法で反応させることにより2,2-ビス(4-ヒドロキシフエニル)プロパンを製造する方法において、…の各工程を含有することを特徴とする高純度2,2-ビス(4-ヒドロキシフエニル)プロパンの製造方法。」との記載、
摘記8bの「本発明の方法において、酸性触媒としては前記塩酸…を使用することもできるが、塩酸と他の助触媒成分とを組合わせて使用することもできる。…これらの助触媒として具体的には、…メチルメルカプタン…などのアルキルメルカプタン類;…前記アルキルメルカプタン類…のアルカリ金属塩;前記メルカプタン類から誘導されるメルカプタール類及びメルカプトール類などを例示することができる。」との記載、及び
摘記8cの「実施例1…第1図に示した反応装置を使用して連続反応を行つた。…第1反応槽に補充アセトン24.6g/hr、補充フエノール145g/hr、15%メチルメルカプタンナトリウム水溶液1.0g/hr、循環油相母液269g/hr、循環水相母液128g/hr及び補充HClガス5l/hrの速度でそれぞれを連続的に供給した…得られた遠心分離ケーキ…遠心分離ケーキ(粗p,p’-BPA・PhOH)」との記載からみて、刊行物8には、
『フエノール及びアセトンを塩酸含有触媒(塩酸と他の助触媒成分との組合せ)の存在下に連続法で反応させる2,2-ビス(4-ヒドロキシフエニル)プロパンを製造する方法において、第1反応槽にアセトン、フエノール、15%メチルメルカプタンナトリウム水溶液、循環油相母液、循環水相母液及びHClガスを連続的に供給する、方法。』についての発明(以下、「刊8発明」という。)が記載されている。

6.対比
本1発明と刊8発明とを対比する。
先ず、刊8発明の「塩酸含有触媒(塩酸と他の助触媒成分との組合せ)」のうちの「塩酸」という触媒成分、及び、刊8発明の第1反応槽に連続的に供給される「HClガス」は、本願明細書の段落0019の「それらは、塩酸、…のような、強酸触媒の存在下に」との記載における「塩酸」に合致するものであるから、本1発明の「強酸触媒」に相当し、
刊8発明の「塩酸含有触媒(塩酸と他の助触媒成分との組合せ)」のうちの「他の助触媒成分」という触媒成分は、本1発明の「共触媒」に相当するところ、
刊8発明の「フエノール及びアセトンを塩酸含有触媒(塩酸と他の助触媒成分との組合せ)の存在下に…反応させる」は、本1発明の「前記強酸触媒および共触媒…の存在下で、フェノールとアセトンを反応させる」に相当する。
次に、刊8発明の「2,2-ビス(4-ヒドロキシフエニル)プロパン」は、摘記4aの「2,2ビス(4-ヒドロキシルフェニル)プロパンに相当するビスフェノールA」との記載からも明らかなように、本1発明の「ビスフェノールA」に相当し、
刊8発明の「連続法で反応させる…を製造する方法」は、本1発明の「…を製造する連続的方法」に相当する。
そして、刊8発明の「第1反応槽」は、本1発明の「反応器」に相当するところ、
刊8発明の「第1反応槽にアセトン、フエノール…を連続的に供給する」は、本1発明の「フェノールおよびアセトンを反応器に導入すること」に相当し、
刊8発明の「第1反応槽に…HClガスを連続的に供給する」は、本1発明の「強酸触媒…を、前記反応器内に添加すること」に相当する。

してみると、本1発明と刊8発明は、『ビスフェノールAを製造する連続的方法であって、フェノールおよびアセトンを反応器に導入することと、強酸触媒を、前記反応器内に添加することと、前記強酸触媒および共触媒の存在下で、フェノールとアセトンを反応させることとを含む、方法。』に関するものである点において一致し、
強酸触媒とともに反応器内に添加される成分が、本1発明においては「純粋な2,2-ビス(メチルチオ)プロパン、または、2,2-ビス(メチルチオ)プロパン、アセトン及び水の混合物」であるのに対して、刊8発明においては「15%メチルメルカプタンナトリウム水溶液、循環油相母液、循環水相母液」である点、及び
共触媒としての化合物の種類が、本1発明においては「2,2-ビス(メチルチオ)プロパン」であるのに対して、刊8発明においては当該「2,2-ビス(メチルチオ)プロパン」という化合物(以下、「BMTP」と略記する場合がある。)に特定されていない点、において一応相違する。

7.判断
上記相違点について検討する。
摘記8bの「これらの助触媒として具体的には、…メチルメルカプタン…などのアルキルメルカプタン類;…前記アルキルメルカプタン類…のアルカリ金属塩;前記メルカプタン類から誘導されるメルカプタール類及びメルカプトール類などを例示することができる。」との記載からみて、刊行物8における「助触媒」としての化合物の選択肢には『メチルメルカプタンのアルカリ金属塩』のみならず『メチルメルカプタン類から誘導されるメルカプトール類』も含まれるものと認められる。
そして、摘記7aの「ケトンから誘導されたチオアセタールは特に…メルカプトール…ということがある…製法1)…ケトンに塩化水素…などの酸性触媒の存在で,メルカプタン…を作用させる」との記載にあるように、アセトン(CH_(3)COCH_(3))のようなケトンとメチルメルカプタン(CH_(3)SH)のようなメルカプタンは、塩化水素(塩酸)などの酸性触媒の存在下で、(CH_(3))_(2)C(SCH_(3))_(2)で示される「2,2-ビス(メチルチオ)プロパン」という「メルカプトール類」を形成することが普通に知られているところ、
刊8発明は、助触媒として『メチルメルカプタンのアルカリ金属塩』である「メチルメルカプタンナトリウム」という化合物(以下、「SMM」と略記する場合がある。)を少なくとも使用するものであって、
このメチルメルカプタン類(SMM)が、塩酸含有触媒(塩酸)の存在下に原料アセトンと反応して刊行物8における「助触媒」としての化合物の選択肢に含まれる「2,2-ビス(メチルチオ)プロパン」という化合物(BMTP)になって「助触媒」として機能すること、及び当該BMTPが未反応の「アセトン」や副生する「水」などとともに、刊8発明の「循環油相母液」ないし「循環水相母液」の中に不可避的に含まれて、反応槽に循環し再使用されることは、刊行物8に記載されているに等しい事項であると認められる。
すなわち、刊8発明の「循環油相母液、循環水相母液」の中には、第1反応槽に供給された「メチルメルカプタンナトリウム水溶液」が塩酸含有触媒の存在下にアセトンと反応することによって不可避的に生じる「2,2-ビス(メチルチオ)プロパン」という「メルカプトール類」と、反応時に副生する「水」と、未反応の「アセトン」との混合物が含まれているものと認められるから、
刊8発明の「循環油相母液、循環水相母液」は、本1発明の「2,2-ビス(メチルチオ)プロパン、アセトン及び水の混合物」に相当する組成を含むものと認められ。
当該「循環油相母液、循環水相母液」の中に不可避的に含まれる「2,2-ビス(メチルチオ)プロパン」が、刊行物8における「助触媒」に含まれる『メチルメルカプタン類から誘導されるメルカプトール類』に該当し、助触媒として機能することも明らかであるから、
刊8発明の「他の助触媒成分」は、本1発明の「2,2-ビス(メチルチオ)プロパン」に相当する助触媒成分を含むものと認められる。
してみると、上記相違点について、両者に実質的な差異は認められない。
したがって、本1発明は、刊行物8に記載された発明である。

また、刊行物8に記載された発明には、摘記8bに示されるように「助触媒」として『メチルメルカプタン類から誘導されるメルカプトール類』を選択する場合が含まれているから、
刊8発明の「他の助触媒成分」及び「15%メチルメルカプタンナトリウム水溶液」の各々が「2,2-ビス(メチルチオ)プロパン」及び「純粋な2,2-ビス(メチルチオ)プロパン」に置き換えられた場合の発明は、刊行物8に記載されているものと認められる。
したがって、本1発明は、刊行物8に記載された発明である。

よしんば、本1発明と刊8発明とに実質的な相違点があるとしても、
摘記8bの「これらの助触媒として具体的には、…前記メルカプタン類から誘導されるメルカプタール類及びメルカプトール類などを例示することができる。」との記載にあるように『メチルメルカプタン類から誘導されるメルカプトール類』をビスフェノールAの製造時の「助触媒」として用いることは、刊行物8などに記載されるように普通に知られており、
摘記2aの「本発明に従ってビス(ヒドロキシフェニル)化合物を得るためにフェノール系化合物と反応させるビス(オルガノ・メルカプト)メタンの化合物群…例として…2,2-ビス(メチルチオ)プロパン」との記載にあるように、本1発明の「2,2-ビス(メチルチオ)プロパン」という化合物(BMTP)をビスフェノールAの製造時に使用することも、刊行物2などに記載されるように普通に知られているから、
刊8発明の「他の助触媒成分」の種類を、上記『メチルメルカプタン類から誘導されるメルカプトール類』としての「2,2-ビス(メチルチオ)プロパン」という化合物(BMTP)に特定し、
当該「他の助触媒成分」の反応器内への添加を、当該BMTPの製造時に共存する物質と一緒の「2,2-ビス(メチルチオ)プロパン、アセトン及び水の混合物」の形態で、又は、当該BMTPを精製した「純粋な2,2-ビス(メチルチオ)プロパン」の形態で添加するように設定することは、当業者にとって通常の創作能力の発揮の範囲である。

そして、本1発明の効果について検討するに、
摘記4aの「ビスフェノールAはフェノールとアセトンを主原料とし、メルカプタンを助触媒とする触媒系を使用して製造されてきた。…特にメルカプタンは高価な材料であるので回収が必要でり、さらに特異な悪臭を持つので、大気及び排水中への漏洩は避けるクローズドシステムで処理、回収されることが好ましい。」との記載にあるように、ビスフェノールAの製造時に使用される「メルカプタン」類は「特異な悪臭を持つ」ものとして普通に認識されており、摘記7aの「メルカプトール…性質 不快なにおいのする液体」との記載にあるように、本1発明の「2,2-ビス(メチルチオ)プロパン」という「メルカプトール」類も『不快な臭いのする物質』として普通に認識されているので、刊8発明のメチルメルカプタンナトリウム(SMM)を、本1発明の2,2-ビス(メチルチオ)プロパン(BMTP)に置き換えても、その悪臭の低減という効果について、飛躍的に顕著な改善が得られているとは認められず、
平成24年11月15日付けの意見書においては、参考資料1?3が添付され、BMTPの毒性が、SMMやメチルメルカプタンに比べて、若干低いことが示されているものの、そもそも「メチルメルカプタン」等のメルカプタン類は、口臭などの悪臭成分として人間の体内に普通に存在するものとして一般に知られており、悪臭はあっても、毒性が著しく高いとはいえないので、その安全性の改善という効果について、飛躍的に顕著な改善が得られているとは認められない。

したがって、本1発明は、刊行物2、4、7及び8に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

8.請求人の主張について
平成24年11月15日付けの意見書において、審判請求人は、『(3.1.3)刊行物8を主引用例とした拒絶 刊行物8は、刊行物3と同じ発明者・出願人による類似した特許出願であり、その記載も類似したものです。具体的には、当該チオアセタールは刊行物8の第5頁右下欄第9行から第6頁左上欄第4行に例示される「副生物」(第6頁右上欄第3?10行などを参照)として記載されているに過ぎず、その実施例ではメチルメルカプタンが触媒として使用されているに過ぎません。したがって補正後の本願請求項1、刊行物8に照らして新規性および進歩性を有する、と請求人は考えます。』と主張している。
しかしながら、刊行物8には、摘記8bの「これらの助触媒として具体的には、…前記メルカプタン類から誘導されるメルカプタール類及びメルカプトール類などを例示することができる。」との記載にあるように「メルカプトール類」が「助触媒」として「具体的」に記載されているのであり、摘記8cの「実施例1」において使用されているメチルメルカプタンがBMTPに変換されて反応槽に循環され、助触媒として再使用されていることも明らかであるから、上記審判請求人の主張は採用できない。

9.むすび
以上総括するに、本1発明は、刊行物8に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
また、本1発明は、刊行物2、4、7及び8に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の理由及びその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-12-06 
結審通知日 2012-12-11 
審決日 2012-12-26 
出願番号 特願2002-559374(P2002-559374)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (C07C)
P 1 8・ 121- WZ (C07C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 太田 千香子  
特許庁審判長 柳 和子
特許庁審判官 木村 敏康
村守 宏文
発明の名称 ビスフェノールAの製造方法  
代理人 渡邉 千尋  
代理人 小野 誠  
代理人 金山 賢教  
代理人 川口 義雄  
代理人 坪倉 道明  
代理人 大崎 勝真  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ