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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1279662
審判番号 不服2011-4734  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-03-02 
確定日 2013-09-25 
事件の表示 特願2004-521371「エリスロポイエチンを含む安定な薬剤組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月22日国際公開,WO2004/006958,平成17年11月24日国内公表,特表2005-535673〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1. 手続の経緯

本願は,平成15年(2003年)7月14日(パリ条約による優先権主張2002年7月17日,スロベニア国)を国際出願日とする出願であって,平成21年7月7日付けで拒絶理由が通知されたが,これに対する応答はなく,平成22年10月26日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成23年3月2日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2. 本願に係る発明について

本願に係る発明は,出願時の特許請求の範囲の請求項1?22に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明は,次のとおりのものである。

「【請求項1】
エリスロポイエチン(EPO)の安定な薬剤組成物において、当該組成物が:
a.治療学的に有効量のEPO、
b.薬学的に許容し得るpH緩衝系、
c.ポロキサマーポリオール及び
d.多価アルコール
を含む、EPOの安定な薬剤組成物。」(以下,「本願発明」ともいう。)

3. 引用例

平成21年7月7日付け拒絶理由通知書で引用された本願優先日前に頒布された刊行物である「国際公開第01/087329号」(「引用例」ともいう。)には,次のことが記載されている(以下において,下線は当審で付した。また,引用例は英文で記載されているため,以下に引用例の対応する日本語ファミリー文献である特表2003-533487号公報(以下,「対応公報」ともいう。)の記載に基づく訳文を記載する。)。

(1-1)CLAIMS(対応公報の【特許請求の範囲】)
「 【請求項1】 エリトロポエチンタンパク質、約5.5?約7.0の範囲に溶液pHを保持するのに適した薬剤学的に許容しうる緩衝液中の多価の荷電無機アニオン、及び場合により1つ以上の薬剤学的に許容しうる賦形剤を含むことを特徴とする、液体薬剤組成物。

【請求項42】 1ml当たり10μg?10000μgのエリトロポエチンタンパク質、10?200mmol/lの硫酸塩、及び10?50mmol/lのリン酸塩(pH6.0?6.5)を含むことを特徴とする、請求項1?41記載の組成物。

【請求項44】 1ml当たり10μg?10000μgのエリトロポエチンタンパク質、40mmol/lの硫酸塩、10mmol/lのリン酸塩、3%のマンニトール(w/v)、10mMのメチオニン、0.01%のプルロニックF68(w/v)(pH6.2)を含むことを特徴とする、請求項42又は43記載の組成物。」

(1-2)1頁3行?7行(対応公報の【0001】)
「本発明は、エリトロポエチンタンパク質、約5.5?約7.0の範囲に溶液pHを保持するのに適した薬剤学的に許容しうる緩衝液中の多価の荷電無機アニオン、及び場合により1つ以上の薬剤学的に許容しうる賦形剤を含むことを特徴とする、液体薬剤組成物に関する。この組成物は、赤血球新生に関連する疾患の予防及び治療に特に有用である。」

(1-3)3頁17行?26行(対応公報の【0007】,【0008】)
「この問題は、本発明により、エリトロポエチンタンパク質、約5.5?約7.0のpHの緩衝液中の多価の荷電無機アニオン、及び場合により1つ以上の薬剤学的に許容しうる賦形剤を含むことを特徴とする、薬剤組成物を提供することによって解決される。

驚くべきことに、エリトロポエチンをこの組成物に処方すると、冷蔵庫温度(2?8℃)を超える温度、特に室温(即ち、25℃未満)そして更に高温、例えば、40℃でも、その安定性が改善されることが見い出された。このことは、長期にわたり冷却することなく、活性の有意量を失うことなく、そして有意に分解することなく、組成物を貯蔵できることを意味する。」

(1-4)3頁下から3行?4頁2行(対応公報の【0010】)
「「多価の荷電無機アニオン」という用語は、1分子当たり2個以上の負電荷を有する無機アニオン、例えば、硫酸イオンSO_(4)^(2-)、又はリン酸アニオン、即ち、リン酸水素イオンHPO_(4)^(2-)を意味する。多価の荷電無機アニオンは、対応する塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩及びこれらの混合物の形態で、及び/又は緩衝剤、例えば、リン酸緩衝剤の形態で添加してよい。」

(1-5)6頁20行?7頁5行(対応公報の【0024】,【0025】)
「本発明においてpHを約5.5?約7.0の範囲、好ましくは5.8?6.7の範囲、更に好ましくは6.0?6.5の範囲、そして最も好ましくは約pH6.2に維持するために使用すべき緩衝液は、有機又は無機酸の従来の緩衝液(例えば、リン酸緩衝液、アルギニン/H_(2)SO_(4)/Na_(2)SO_(4)緩衝液、又は他の任意の薬剤学的に許容しうる緩衝系)であってよい。好ましい実施態様において、本組成物は、リン酸又はアルギニン/H_(2)SO_(4)/Na_(2)SO_(4)緩衝液、更に好ましくは10?50mmol/lのリン酸緩衝液を含むことを特徴とする。当然ながら、これらの緩衝系の組合せもまた、本発明の一部である。pH値は、それぞれ、対応する塩基、例えば、リン酸緩衝系中のNaOH、及び対応する酸、例えば、アルギニン緩衝系中の硫酸で調整することができる。

本発明の組成物は、1つ以上の薬剤学的に許容しうる賦形剤を含むことを特徴としてよい。これらの薬剤学的に許容しうる賦形剤は、薬剤学的に許容しうる塩、希釈剤及び/又は溶媒及び/又は保存料など、例えば、張度剤(等張化剤)、ポリオール類、酸化防止剤又は非イオン性界面活性剤から選択することができる。これらの物質の例は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、ソルビトール、マンニトール、グリセロール、サッカロース、トレハロース、アセチルシステイン、ポリソルベート20、ポリソルベート80、又はプルロニックF68である。」

(1-6)7頁21行?22行(対応公報の【0030】)
「本発明は、薬剤学的活性成分としてエリトロポエチンを含むことを特徴とする薬剤組成物の製造に特に有用である。」

上記摘示事項(1-1)において,請求項44は請求項42を引用し,請求項42は請求項1を引用している。これらの引用関係を考慮しつつ,請求項44を請求項1,42を引用しない形式で書き直すと以下のように記載できる。

「1ml当たり10μg?10000μgのエリトロポエチンタンパク質、40mmol/lの硫酸塩、10mmol/lのリン酸塩、3%のマンニトール(w/v)、10mMのメチオニン、0.01%のプルロニックF68(w/v)(pH6.2)を含む液体薬剤組成物。」(以下,「引用発明」ともいう)

4. 対比

本願発明(以下,「前者」ともいう)と引用発明(以下,「後者」ともいう)を対比する。後者における「エリトロポエチンタンパク質」,「マンニトール」,「プルロニックF68」,「液体薬剤組成物」が,それぞれ,前者における「エリスロポイエチン(EPO)」,「多価アルコール」,「ポロキサマーポリオール」,「薬剤組成物」に相当することは当業者に明らかである(ここで,後者における「マンニトール」,「プルロニックF68」が,それぞれ,前者における「多価アルコール」,「ポロキサマーポリオール」に相当することについて,要すれば,本願明細書【0037】を参照されたい。)。

そして,請求項44が従属する請求項1に,「約5.5?約7.0の範囲に溶液pHを保持するのに適した薬剤学的に許容しうる緩衝液中の多価の荷電無機アニオン」と記載されることに加え,摘示事項(1-4)および(1-5)を考慮すると,後者における「硫酸塩」,「リン酸塩」は,緩衝液の成分であるということができ,また,これらは液体薬剤組成物に配合されることから薬学的に許容し得るものというべきである。
してみれば,後者における「硫酸塩」,「リン酸塩」は前者における「薬学的に許容し得るpH緩衝系」に相当する。

また,上記摘示事項(1-2)によれば,後者の組成物は,赤血球新生に関連する疾患の治療に有用なものであるところ,摘示事項(1-3)および(1-6)の記載より,「エリトロポエチンタンパク質」は薬剤学的活性成分であり,活性の有意量で含有されているといえるから,後者の「エリトロポエチンタンパク質」は,前者でいうところの「治療学的に有効量」で含有されているものといえる。
そして,摘示事項(1-3)によれば,後者の組成物は「エリトロポエチンタンパク質」の安定性が改善されたものであるので,後者の組成物は,前者でいうところの「安定な薬剤組成物」であるといえる。

そうすると,本願発明と引用発明は,
「エリスロポイエチン(EPO)の安定な薬剤組成物において、当該組成物が:
a.治療学的に有効量のEPO、
b.薬学的に許容し得るpH緩衝系、
c.ポロキサマーポリオール及び
d.多価アルコール
を含む、EPOの安定な薬剤組成物。」
である点で一致し,両者に相違点はなく,本願発明と引用発明は同一であるというべきである。
したがって,本願発明は,特許法第29条第1項第3号の規定に該当し特許を受けることができない。

なお,請求人は,審判請求の理由について補正する平成23年5月18日付け手続補正書(方式)において,「引用文献1は、…グリセロール、ポロキサマーポリオール、塩化ナトリウム、燐酸塩緩衝剤の具体的な組み合わせを開示しない。」と主張している(ここで,「引用文献1」は,当該審決における「引用例」を意味する。)。

しかしながら,本願請求項1には,薬剤組成物中に「塩化ナトリウム」を含む旨の記載はなく,また,「多価アルコール」を「グリセロール」に特定し,「薬学的に許容し得るpH緩衝系」を「燐酸塩緩衝剤」に特定する旨の記載もない。してみれば,請求人の上記主張は請求項1の記載に基づいたものでなく,採用できない。
仮に,上記主張が,引用例は,多価アルコール,ポロキサマーポリオール,薬学的に許容し得るpH緩衝系の具体的な組み合わせを開示しないとの意味であったとしても,上述のように,引用例には,エリスロポイエチン,薬学的に許容し得るpH緩衝系,ポロキサマーポリオール,及び多価アルコールを組み合わせた態様も具体的に開示されているということができ,いずれにしても請求人の上記主張は採用できない。

5. むすび

以上のとおり,本願請求項1に係る発明は,特許法第29条第1項第3号の規定に該当し特許を受けることができない。
したがって,その余の請求項について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-04-26 
結審通知日 2013-04-30 
審決日 2013-05-13 
出願番号 特願2004-521371(P2004-521371)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中尾 忍  
特許庁審判長 内田 淳子
特許庁審判官 岩下 直人
渕野 留香
発明の名称 エリスロポイエチンを含む安定な薬剤組成物  
代理人 大崎 勝真  
代理人 特許業務法人川口國際特許事務所  
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