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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1279676
審判番号 不服2012-3696  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-02-27 
確定日 2013-09-25 
事件の表示 特願2007-513811「データの複製、集約、統合およびモバイル化のためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年12月15日国際公開、WO2005/120011、平成20年 1月10日国内公表、特表2008-500618〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2005年5月27日(パリ条約による優先権主張2004年5月28日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成23年1月25日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成23年6月29日付けで手続補正書が提出されたが、平成23年10月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年2月27日に拒絶査定不服の審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成24年2月27日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年2月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正前及び本件補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲についてするもので、本件補正前の請求項1について、「データの集約を容易にするために、共通のデータ構造が、前記データコネクタと前記複製サーバと前記通信サーバとによって用いられる」との限定を付加するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とするものである。

そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かを、請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)について以下に検討する。

本願補正発明は次のとおりのものである。
「データの複製、集約、統合およびモバイル化のうちの少なくとも1つのためのシステムであって、前記システムは、
複製サーバを含み、前記複製サーバは、
(i) 少なくとも2つのバックエンドデータソース間で、および/または
(ii) 少なくとも1つのバックエンドデータソースと少なくとも1つの入力/出力装置との間で、および/または
(iii) 少なくとも2つの入力/出力装置の間で、
データの複製を管理するためのものであり、前記データの複製の管理は、データへのアクセスの制御および配信の制御を含み、前記システムはさらに、
構造化されたデータに接続するためのデータコネクタと、
通信リンク上での前記入力/出力装置へのアクセスおよび前記入力/出力装置からのアクセスのための通信サーバと、
前記複製サーバおよび前記データコネクタおよび前記通信サーバに共通の管理部とを含み、
データの集約を容易にするために、共通のデータ構造が、前記データコネクタと前記複製サーバと前記通信サーバとによって用いられる、システム。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、国際公開第03/102778号(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。
(以下の翻訳は、引用例1のパテントファミリーである、特表2005-535947号公報による。)
(ア)「The present invention relates to a method and system for exchange or synchronization of data between different clients, and in particular to synchronization of data between clients by using a central synchronization server linked with different types of Backend data store.」(第1頁第4?8行)(翻訳:本発明は、異なるクライアント間でデータを交換または同期化するための方法およびシステムに関し、より詳細には、異なるタイプのバックエンド・データ・ストアとリンクする中央同期サーバを使用したクライアント間でのデータの同期化に関する。」

(イ)「The present invention discloses a framework that allows a synchronization engine to synchronize data between a mobile device and Back End data stores independently from the architecture and data formats of that back-end store. The framework introduces content adapters, which access synchronization data from Back End data stores. These adapters convert the data into a Back End data store independent representation, which can be used by all applications or modules which need to access different back-ends in a generic manner. A generic synchronization engine for the purpose of conflict detection and resolution is one example for a module of this kind. Other applications that could use the content adapter are Notification Frameworks or Portals and all other applications aggregating data. Any Back End data store specific issues are handled by the Back End dependent part of the content adapters, which can easily provided by third parties and plugged into the framework.」(第3頁第19行?第4頁第6行)(翻訳:本発明は、同期エンジンが移動デバイスとバックエンド・データ・ストアとの間で、そのバックエンド・ストアのアーキテクチャおよびデータ・フォーマットとは無関係にデータを同期化できるようにするフレームワーク(枠組み)を開示するものである。このフレームワークは、バックエンド・データ・ストアから同期データにアクセスするコンテンツ・アダプタを導入する。これらのアダプタはデータをバックエンド・データ・ストアから独立した表現に変換し、一般的な方法で異なるバックエンドにアクセスする必要のあるすべてのアプリケーションまたはモジュールは、これを使用することができる。競合の検出および解決を目的とする汎用同期エンジンは、この種のモジュールの一例である。コンテンツ・アダプタを使用することのできる他のアプリケーションは、通知のフレームワークまたはポータル、およびデータを集約するすべての他のアプリケーション、である。いずれのバックエンド・データ・ストア特有の問題もコンテンツ・アダプタのバックエンドに依存した部分によって処理され、その部分は、第三者によって容易に提供され、フレームワークにプラグインすることが可能である。)

(ウ)「FIG.5 shows the basic architecture of the inventive content adapter framework (CAF) used in a communication architecture between mobile clients and different Back End data store types .

The different mobile Clients 2,4,6 access the Sync Engine 12 via a wireless or wired gateway 8 and through a Web Server 10 and the Sync Engine 12 talks via CAF 20 to the different Back End data store types 24,26. The CAF 20 provides the infrastructure to access data of different Back End data stores 24,26 through a single backend neutral interface (CAF- interface 22) and to easily add new Back End data stores. The CAF 20 consists of at least a single CAF-interface 22 and one or more content adapters 28,30.」(第6頁第14?26行)(翻訳:図5は、モバイル(移動式)・クライアントと、これらと異なるバックエンド・データ・ストアのタイプとの間の通信アーキテクチャで使用される、本発明のコンテンツ・アダプタ・フレームワークの基本アーキテクチャを示す図である。
異なるモバイル・クライアント2、4、6は、無線または有線のゲートウェイ8を介しウェブ・サーバ10を通って同期エンジン12にアクセスし、さらに当該同期エンジン12はCAF20を介して異なるバックエンド・データ・ストアのタイプ24、26と対話する。CAF20は、新しいバックエンド・データ・ストアを容易に追加するために、単一のバックエンド中立インターフェース(CAFインターフェース22)を介して異なるバックエンド・データ・ストア24、26のデータにアクセスする基盤を提供する。CAF20は、少なくとも単一のCAFインターフェース22と、1つまたは複数のコンテンツ・アダプタ28、30とからなる。)

(エ)「The content adapter provide fast read/write access, adaptable to different backend systems (e.g. Domino, DB2 , Exchange), support multiple SyncML messages, always have consistent data, and adaptable to different content formats.」(第8頁第8?11行)(翻訳:コンテンツ・アダプタは、高速読取り/書込みアクセスを提供し、異なるバックエンド・システム(たとえばDomino、DB2、Exchange)に適応可能であり、複数のSyncMLメッセージをサポートし、常に一貫したデータを有し、異なるコンテンツ・フォーマットに適応可能である。)

(オ)「The Back End Monitor 60 trickles updates that occur in the Back End data store 24 from outside the sync server (e.g. a regular Lotus Notes client updating a database) into the cache 50. This allows sync Clients to synchronize always with the latest back end data without requiring the overhead of a full replication for each sync session. The Back End specific part 60' of the Back End Monitor 60 is specific for each Back End data store and translates the content storage specific format (e.g. Lotus Domino or MS Exchange) into CAF Sync Objects.」(第11頁第5?13行)(翻訳:バックエンド・モニタ60は、バックエンド・データ・ストア24内で発生する更新(たとえば、正規のLotus Notesクライアントがデータベースを更新する)を、同期サーバの外部からキャッシュ50にトリクルする。これによって同期クライアントは、各同期セッションに対する完全な複製のオーバヘッドを必要とせずに、常に最新のバックエンド・データと同期をとることができる。バックエンド・モニタ60のバックエンド特有部分60’は、各バックエンド・データ・ストアに特有であり、コンテンツ・ストレージ特有のフォーマット(たとえばLotus DominoまたはMS Exchange)をCAF同期オブジェクトに変換する。)

(カ)「FIG.8 shows a synchronization flow for a two-way synchronization with session authentication preferably applied by the inventive CAF.

A two-way synchronization between Client and Server is performed where the Client as updated item A,B and F, deleted C and created a new item D. Via an external client (e.g.Notes client) E was created on the Back End and B, C and F were updated .

Package 1 from client sends the credential for the Back End data store. The Sync Engine forwards these credentials to the CAF for verification. CAF asks the responsible Back End to verify the credentials and returns an authentication token valid for a synchronization session to the Sync Engine. This token needs to be included into any future request to the CAF for this synchronization session.

In package 3 the clients sends its updates to the Sync server. The Sync Engine requests the Back End updates from the CAF by presenting the authentication token. Now the Sync Engine compares the lists, resolves the conflicts, and populates the updated entries to the CAF and client. CAF stores these updates in its cache and replicate these changes later to the Back End system.」(第16頁第23行?第17頁第15行)(翻訳:図8は、好ましくは本発明のCAFによって適用されるセッション認証を使用した、双方向の同期化に関する同期流れを示す図である。
クライアントを、更新済み項目A、B、およびF、削除済みC、ならびに新しく作成された項目Dとして、クライアントとサーバとの間の双方向の同期化が実行される。外部クライアント(たとえばNotesクライアント)を介して、バックエンド上でEが作成され、B、C、およびFが更新された。
クライアントからのパッケージ1は、バックエンド・データ・ストアに関する証明書を送信する。同期エンジンは、これらの証明書を検証のためにCAFに転送する。CAFは担当のバックエンドに証明書の検証を依頼し、同期セッションに有効な認証トークンを同期エンジンに戻す。このトークンを、この同期セッションのためのCAFに対する任意の今後の要求に含めることが必要である。
パッケージ3で、クライアントはその更新を同期サーバに送信する。同期エンジンは、認証トークンを提示することによってCAFにバックエンド更新を要求する。次に同期エンジンはリストを比較し、競合を解決し、更新済みのエントリをCAFおよびクライアントに読み込む。CAFはこれらの更新をそのキャッシュに格納し、後にこれらの変更をバックエンド・システムに複製する。」

また、FIG.8には、
(1)「Package 1」(パッケージ1) で、「Device」(デバイス)から「Sync Engine」(同期エンジン)に「Credentials」(証明書)が送られ、「Sync Engine」(同期エンジン)から「CAF」に「Authentication of user」(ユーザの認証)が送られ、「CAF」から「Back end」(バックエンド)に「check authentication with back end」(バックエンドを使用して認証をチェック)が送られ、「Back end」(バックエンド)から「CAF」にその応答が返され、「CAF」から「Sync Engine」(同期エンジン)に「CAF AuthToken」(CAF認証トークン)が送られ、「Sync Engine」(同期エンジン)から「CAF」に「Get sync anchor next per db」(次のデータベースごとに同期アンカーを取得)が送られ、「CAF」から「Back end」(バックエンド)に「get sync anchor from back end」(バックエンドから同期アンカーを取得)が送られ、「Back end」(バックエンド)から「CAF」にその応答が返され、「CAF」から「Sync Engine」(同期エンジン)に「sync anchor」(同期アンカー)が送られ、
(2)「Package 2」(パッケージ2)で、「Sync Engine」(同期エンジン)から「Device」(デバイス)に送信がなされ、
(3)「Package 3」(パッケージ3)で、「Device」(デバイス)から「Sync Engine」(同期エンジン)に「Sync A,B,C,D,F」(同期 A,B,C,D,F)が送られ、「Sync Engine」(同期エンジン)から「CAF」に「Get updates(CAF AuthToken, synchAnchors)」(更新を取得(CAF 認証トークン,同期アンカー))が送られ、「CAF」から「Sync Engine」(同期エンジン)に「B,C,E,F」(B,C,E,F)が送られ、「Sync Engine」(同期エンジン)で「Perform conflict resolution」(競合の解決を実行)が行われ、「Updates for client: E」(クライアントについての更新:E)、「Updates for CAF: A, D」(CAFについての更新:A,D)、「Conflicts: B,C,F」(競合 B,C,F)について「B: client wins; C: server wins; F :merge」(B:クライアントの勝利、C:サーバの勝利;F:マージ)とされ、「Final updates lists」(最終更新リスト)として「Upadtes for client: E,C,F'」(クライアントについての更新:E,C,F’)「Upadtes for CAF: A,D,B,F'」(CAFについての更新:A,D,B,F’)とされ、「Sync Engine」(同期エンジン)から「CAF」に「Populate updates(CAF AuthToken, syncAnchor,A,D,B,F')」(更新の読み込み(CAF認証トークン,同期アンカー,A,D,B,F’))が送られ、「CAF」から「Sync Engine」(同期エンジン)に「Status on updates」(更新の状況)が送られ、
(4)「Package 4」(パッケージ4)では、「Sync Engine」(同期エンジン)から「Device」(デバイス)に「E,C,F'」「Status Codes」(状況コード)が送られるとともに、「CAF」から「Back end」(バックエンド)に「write updates A,D,B,F' to back end」(更新A,D,B,F’をバックエンド書込)が送られ、「Back end」(バックエンド)から「CAF」にその応答が返され、
(5)「Package 5」(パッケージ5)では、「Device」(デバイス)から「Sync Engine」(同期エンジン)に「Mapping Table」(マッピング・テーブル)が送られ、
(6)「Package 6」(パッケージ6)で、「Sync Engine」(同期エンジン)から「Device」(デバイス)に送信がなされることが示されている。

上記引用例1の記載事項及び図面の記載を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「異なるクライアント間でデータを交換または同期化するための方法およびシステムに関し、より詳細には、異なるタイプのバックエンド・データ・ストアとリンクする中央同期サーバを使用したクライアント間でのデータの同期化に関し、
同期エンジンが移動デバイスとバックエンド・データ・ストアとの間で、そのバックエンド・ストアのアーキテクチャおよびデータ・フォーマットとは無関係にデータを同期化できるようにするフレームワーク(枠組み)を開示するものであり、
このフレームワークは、バックエンド・データ・ストアから同期データにアクセスするコンテンツ・アダプタを導入し、これらのアダプタはデータをバックエンド・データ・ストアから独立した表現に変換し、一般的な方法で異なるバックエンドにアクセスする必要のあるすべてのアプリケーションまたはモジュールは、これを使用することができ、競合の検出および解決を目的とする汎用同期エンジンは、この種のモジュールの一例であり、コンテンツ・アダプタを使用することのできる他のアプリケーションは、通知のフレームワークまたはポータル、およびデータを集約するすべての他のアプリケーション、であり、
異なるモバイル・クライアントは、無線または有線のゲートウェイを介しウェブ・サーバを通って同期エンジンにアクセスし、さらに当該同期エンジンはCAFを介して異なるバックエンド・データ・ストアのタイプと対話し、CAFは、新しいバックエンド・データ・ストアを容易に追加するために、単一のバックエンド中立インターフェース(CAFインターフェース)を介して異なるバックエンド・データ・ストアのデータにアクセスする基盤を提供し、CAFは、少なくとも単一のCAFインターフェースと、1つまたは複数のコンテンツ・アダプタとからなり、
コンテンツ・アダプタは、高速読取り/書込みアクセスを提供し、異なるバックエンド・システム(たとえばDomino、DB2、Exchange)に適応可能であり、たとえばLotus DominoまたはMS Exchangeは、コンテンツ・ストレージ特有のフォーマットを有し、
同期クライアントは、各同期セッションに対する完全な複製のオーバヘッドを必要とせずに、常に最新のバックエンド・データと同期をとることができ、
CAFによって適用されるセッション認証を使用した、双方向の同期化データに関する同期流れでは、クライアントを、更新済み項目A、B、およびF、削除済みC、ならびに新しく作成された項目Dとして、クライアントとサーバとの間の双方向の同期化が実行され、外部クライアント(たとえばNotesクライアント)を介して、バックエンド上でEが作成され、B、C、およびFが更新されたとすると、
クライアントからのパッケージ1は、バックエンド・データ・ストアに関する証明書を送信し、同期エンジンは、これらの証明書を検証のためにCAFに転送し、CAFは担当のバックエンドに証明書の検証を依頼し、同期セッションに有効な認証トークンを同期エンジンに戻し、このトークンを、この同期セッションのためのCAFに対する任意の今後の要求に含めることが必要であり、
パッケージ3で、クライアントはその更新を同期サーバに送信し、同期エンジンは、認証トークンを提示することによってCAFにバックエンド更新を要求し、次に同期エンジンはリストを比較し、競合を解決し、
更新済みのエントリをCAFおよびクライアントに読み込み、CAFはこれらの更新をそのキャッシュに格納し、後にこれらの変更をバックエンド・システムに複製し、
パッケージ4では、同期エンジンからデバイスに、更新済みのエントリが送られる、
システム。」

3.対比
本願補正発明と引用発明1とを比較する。
引用発明1の「システム」は、「データの同期化」、及び「通知のフレームワークまたはポータル、およびデータを集約する」ためのものであるから、本願補正発明の「データの複製、集約、統合およびモバイル化のうちの少なくとも1つのためのシステム」に相当する。
次に、引用発明1の「異なるモバイル・クライアント」が、本願補正発明の「少なくとも1つの入力/出力装置」に相当する。
次に、引用発明1の「バックエンド・データ・ストア」が、本願補正発明の「バックエンドデータソース」に相当する。
次に、引用発明1の「異なるタイプのバックエンド・データ・ストアとリンクする中央同期サーバ」(以下、「同期サーバ」ということがある。)は、「クライアント間でデータを」「同期化する」、または「同期エンジンが移動デバイスとバックエンド・データ・ストアとの間」で「データを同期化」するためのものであって、「同期クライアント」は、「常に最新のバックエンド・データと同期をとることができ」るから、引用発明1の該「同期サーバ」が、本願補正発明の
「(i) 少なくとも2つのバックエンドデータソース間で、または
(ii) 少なくとも1つのバックエンドデータソースと少なくとも1つの入力/出力装置との間で、および/または
(iii) 少なくとも2つの入力/出力装置の間で、
データの複製を管理するための」「複製サーバ」に相当する。
次に、引用発明1の「CAFによって適用されるセッション認証を使用した、双方向の同期化に関する同期流れ」において、「同期エンジン」は「クライアント」が送信した「バックエンド・データ・ストアに関する証明書」を「検証のためにCAFに転送し、CAFは担当のバックエンドに証明書の検証を依頼」し、「同期セッションに有効な認証トークン」が「同期エンジンに戻」されると、「このトークンを、この同期セッションのためのCAFに対する任意の今後の要求に含め」、「同期エンジン」は「更新済みのエントリをCAFおよびクライアントに読み込」ませているから、「同期エンジン」のかかる制御が、本願補正発明の「前記データの複製の管理は、データへのアクセスの制御および配信の制御」に相当する。
次に、引用発明1の「異なるバックエンド・システム(たとえばDomino、DB2、Exchange)」が有する「コンテンツ・ストレージ特有のフォーマット」が、本願補正発明の「構造化されたデータ」に相当する。
次に、引用発明1の「CAF」は、「少なくとも単一のCAFインターフェースと、1つまたは複数のコンテンツ・アダプタとからなり」、「コンテンツ・アダプタは、高速読取り/書込みアクセスを提供し、異なるバックエンド・システム(たとえばDomino、DB2、Exchange)に適応可能であ」るから、引用発明1の「コンテンツ・アダプタ」を含む「CAF」が、本願補正発明の「構造化されたデータに接続するためのデータコネクタ」に相当する。
次に、引用発明1では、「異なるモバイル・クライアントは、無線または有線のゲートウェイを介しウェブ・サーバを通って同期エンジンにアクセス」しているから、引用発明1の「ウェブ・サーバ」は、「無線または有線」を介して「異なるモバイル・クライアント」との通信機能を有している点で、本願補正発明の「通信リンク上での前記入力/出力装置へのアクセスおよび前記入力/出力装置からのアクセスのための通信サーバ」に相当する。
次に、引用発明1において、「同期エンジン」や「通知のフレームワークまたはポータル、およびデータを集約する」「アプリケーション」が、「コンテンツ・アダプタを使用」することで、「データをバックエンド・データ・ストアから独立した表現に変換し、一般的な方法で異なるバックエンドにアクセスする」ことが、本願補正発明の「データの集約を容易にする」ことに相当する。

そして、「Aおよび/またはB」という要件が満たされるためには、「A」「B」のどちらか一方の要件が満たされることを示せば十分であるから、本願補正発明と引用発明1とは、次の点で一致する。
(一致点)
「データの複製、集約、統合およびモバイル化のうちの少なくとも1つのためのシステムであって、前記システムは、
複製サーバを含み、前記複製サーバは、
(i) 少なくとも2つのバックエンドデータソース間で、および/または
(ii) 少なくとも1つのバックエンドデータソースと少なくとも1つの入力/出力装置との間で、および/または
(iii) 少なくとも2つの入力/出力装置の間で、
データの複製を管理するためのものであり、前記データの複製の管理は、データへのアクセスの制御および配信の制御を含み、前記システムはさらに、
構造化されたデータに接続するためのデータコネクタと、
通信リンク上での前記入力/出力装置へのアクセスおよび前記入力/出力装置からのアクセスのための通信サーバとを含み、
データの集約を容易にする、システム。」

また、両者は、次の点で相違する。
(相違点1)
本願補正発明のシステムは、「前記複製サーバおよび前記データコネクタおよび前記通信サーバに共通の管理部」を含んでいるのに対し、引用発明1のシステムは、「同期サーバ」(複製サーバ)及び「コンテンツ・アダプタ」を含む「CAF」(データコネクタ)及び「ウェブ・サーバ」(通信サーバ)に「共通の管理部」を備えいているか、明らかでない点。

(相違点2)
本願補正発明では、「データの集約を容易にする」ために、「共通のデータ構造が、前記データコネクタと前記複製サーバと前記通信サーバとによって用いられる」のに対し、引用発明1では、「同期エンジン」や「通知のフレームワークまたはポータル、およびデータを集約する」「アプリケーション」が、「コンテンツ・アダプタを使用」することで、「データをバックエンド・データ・ストアから独立した表現に変換し、一般的な方法で異なるバックエンドにアクセスする」(データの集約を容易にする)ものの、「共通のデータ構造」が、「コンテンツ・アダプタ」を含む「CAF」(データコネクタ)と「同期サーバ」(複製サーバ)と「ウェブ・サーバ」(通信サーバ)とによって用いられることは明らかでない点。

4.判断
そこで、上記相違点について検討すると、
(相違点1)について:
例えば、高城 涼、pcAnywhere Version 9.2 シマンテック、Windows2000に完全対応したリモートコントロールソフトの定番、月刊ウィンドウズ・2000・ワールド、第5巻、第9号、株式会社IDGジャパン、2000年9月1日発行、p.155、には、
「あらゆる通信手段に対応したリモコンソフトの標準
シマンテックの「pcAnywhere Version 9.2」(以下、pcAnywhere 9.2)は、手もとのコンピュータから別の場所にあるコンピュータを操作するためのリモートコントロールソフトである。リモート制御のほかにもファイル転送やリモートネットワークなどの機能を備えた総合的な通信ソフトウェアという構成になっている。」(第155頁左欄第1?10行)」、「これによって企業内に散在するクライアントマシンやサーバマシンの保守あるいはトラブルを遠隔操作で解決できるようになる。」(第155頁左欄第16?19行)と記載されているように、「手もとのコンピュータ」から、「企業内に散在する」「クライアントマシンやサーバマシンの保守」を行うことは、周知の事項である。
よって、引用発明1のシステムが、「同期サーバ」(複製サーバ)および「コンテンツ・アダプタ」を含む「CAF」(データコネクタ)および「ウェブ・サーバ」(通信サーバ)といった「企業内に散在するクライアントマシンやサーバマシン」の保守を行う「手もとのコンピュータ」(共通の管理部)を含むようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点2)について:
例えば、鈴木浩之、本格導入期直前! インターネットビジネスにおけるXMLの活用状況と導入のポイント、月刊DB Magazine、第10巻、第5号、株式会社翔泳社、2000年8月1日発行、p.92?96に「COLUMN XMLのその他の活用例(1)XMLによるコンテンツ配信サービス
企業にはさまざまな情報が蓄積されている。その形式(文書の形式)はグループウェアであったり、ワープロソフトの文書形式であったり、いろいろである。それらは、いわゆるナレッジの塊で、こうした情報資源をいかに有効活用できるかが企業にとって重要なテーマになってきている。」(第95頁の「COLUMN」、左欄第1?7行)(なお、丸数字の1を「(1)」と表記した。)、「右図は、社内に蓄積されている情報をそれぞれXML形式に変換・抽出し、Webを利用した統合的なデータ配信を実現可能としている。共通のデータ形式であるXMLに変換することで、データベースに格納されているデータを再加工する必要はまったくない。また、大規模なシステム変更を行なわずに、将来の拡張性を備えたシステムとすることができる。」(第95頁の「COLUMN」、左欄第18行?右欄第2行)と記載され、また、同「COLUMN」の「図:XMLコンテンツ配信サービスの例」には、複数の「XMLデータ」が「配信用XMLコンテンツ」に集められ、「Webサーバー」を利用して「ポータル」や「情報ベンダ」に配信されることが示されている。
このように、いろいろな形式の情報を、共通のデータ形式であるXMLに変換することで、さまざまな情報についてWebサーバーを利用した統合的なデータ配信を実現可能とすることは周知の事項である。
よって、引用発明1において、「同期エンジン」や「通知のフレームワークまたはポータル、およびデータを集約する」「アプリケーション」によって、さまざまな情報についてWebサーバーを利用した統合的なデータ配信を実現可能とするため、「コンテンツ・アダプタ」を含む「CAF」(データコネクタ)と「同期サーバ」(複製サーバ)と「ウェブ・サーバ」(通信サーバ)とによって、「バックエンド・データ・ストアから独立した表現」である「共通のデータ形式であるXML」(共通のデータ構造)が用いられるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

また、本願補正発明の作用効果も、引用発明1及び周知の事項に基づいて当業者が予測し得たものである。

よって、本願補正発明は引用発明1及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.本件補正発明についての結び
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成24年2月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?29に係る発明は、平成23年6月29日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?29に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
データの複製、集約、統合およびモバイル化のうちの少なくとも1つのためのシステムであって、前記システムは、
複製サーバを含み、前記複製サーバは、
(i) 少なくとも2つのバックエンドデータソース間で、および/または
(ii) 少なくとも1つのバックエンドデータソースと少なくとも1つの入力/出力装置との間で、および/または
(iii) 少なくとも2つの入力/出力装置の間で、
データの複製を管理するためのものであり、前記データの複製の管理は、データへのアクセスの制御および配信の制御を含み、前記システムはさらに、
構造化されたデータに接続するためのデータコネクタと、
通信リンク上での前記入力/出力装置へのアクセスおよび前記入力/出力装置からのアクセスのための通信サーバと、
前記複製サーバおよび前記データコネクタおよび前記通信サーバに共通の管理部とを含む、システム。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、前記「第2[理由]2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2[理由]」で検討した本願補正発明から、「データの集約を容易にするために、共通のデータ構造が、前記データコネクタと前記複製サーバと前記通信サーバとによって用いられる」との限定を省いたものに相当する。
すると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の要件を付加したものに相当する本願補正発明が前記「第2[理由]4.」に記載したとおり、引用例1に記載された発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
従って、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-04-19 
結審通知日 2013-04-23 
審決日 2013-05-14 
出願番号 特願2007-513811(P2007-513811)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田川 泰宏  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 五十嵐 努
山田 正文
発明の名称 データの複製、集約、統合およびモバイル化のためのシステムおよび方法  
代理人 森田 俊雄  
代理人 堀井 豊  
代理人 深見 久郎  
代理人 仲村 義平  
代理人 野田 久登  

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