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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01D
管理番号 1279681
審判番号 不服2012-10066  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-31 
確定日 2013-09-25 
事件の表示 特願2005-169330「ガスタービンロータブレードを冷却するための方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年12月22日出願公開、特開2005-351277〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本件出願は、平成17年6月9日(パリ条約による優先権主張2004年6月10日、アメリカ合衆国)の出願であって、平成20年6月6日付けで特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、平成22年6月23日付けの拒絶理由通知に対して平成22年12月28日付けで意見書が提出されるとともに同日付けの手続補正書によって特許請求の範囲について補正する手続補正がなされ、平成23年4月1日付けの拒絶理由通知に対して平成23年10月5日付けで意見書が提出されたが、平成24年1月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年5月31日に拒絶査定不服の審判が請求され、平成24年7月12日付けで、審判請求書を補正する手続補正書(方式)が提出されたものであって、その請求項1ないし6に係る発明は、平成22年12月28日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲、並びに出願当初の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
前縁(48)と、
後縁(50)と、
先端プレート(54)と、
翼形部根元(52)と前記先端プレートとの間で半径方向スパンにわたって延びる第1の側壁(44)と、
前記翼形部根元と先端プレートとの間で半径方向スパンにわたって延びる第2の側壁(46)であって、前記前縁及び後縁において前記第1の側壁に結合し、かつ第1の側壁(44)と第2の側壁(46)との間に冷却空洞(56)を形成する第2の側壁(46)と、
前記第2の側壁(46)を貫通して縦列の形態で配置された複数の縦方向に間隔を置いた後縁冷却スロット(70)と
を含むガスタービン(20)用翼形部(42)であって、
前記スロットが、前記冷却空洞と流れ連通状態になっており、かつ前記後縁の少なくとも1つの部分(82)、(84)、(86)におけるインチ当たりのスロットの数が該後縁の異なる部分におけるインチ当たりのスロットの数よりも多くなるように、該後縁に沿って一様でない分布で配置されており、前記後縁(50)が複数の部分(82)、(84)、(86)を含んでいて、それらの部分の各々がその中に設置された前記後縁冷却スロット(70)のインチ当たりの数を含み、選択した部分における前記後縁冷却スロットのインチ当たりの数が、隣接する部分における該後縁冷却スロットのインチ当たりの数とは異なっており、前記後縁(50)が、前記後縁冷却スロット(70)のインチ当たりの第1の数を含む第1の部分(82)と、前記後縁冷却スロットのインチ当たりの第2の数を含む第2の部分(84)と、前記後縁冷却スロットのインチ当たりの第3の数を含む第3の部分(86)とを含み、前記第3の部分が、前記翼形部根元(52)から前記第1の部分まで延び、前記第1の部分が、前記第3の部分から前記第2の部分まで延び、前記第2の部分が、前記第1の部分から前記先端プレート(54)まで延びており、前記後縁冷却スロットのインチ当たりの第1の数が、前記後縁冷却スロットのインチ当たりの第2及び第3の数よりも多い、ガスタービン(20)用翼形部(42)。」

2.引用文献
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-149076号公報(以下、「引用文献1」という。)には、例えば、以下の記載がある。

ア.「本発明は、金属構成要素を溶接する方法に係り、特にガスタービンエンジンに使用される超合金製構成要素を溶接により修理する方法に係る。
従来の技術
中空の空冷式のブレードやベーンは現代のガスタービンエンジンに於て広く使用されている。かかる構成要素は内部キャビティを有し、該キャビティを経てエンジンの運転中に空気が流れるようになっている。この空気は冷却孔と呼ばれる孔を経て放出され、冷却孔はエーロフォイルセクションに設けられ、また場合によってはプラットフォームや先端にも設けられている。」(公報第2ページ左上欄欄第10行ないし右上欄第1行)

イ.「第1図に於て、タービンブレードが符号10にて全体的に示されている。ブレード10は米国特許第4,209.348号に記載された合金の如きニッケル基超合金にて形成されている。ブレード10はエーロフオイル部12とプラットフォーム14とルート部16とを有している。ブレードの先端20の表面18にはスクィーラポケット22が設けられている。第2図にも示されている如く、ブレード10は中空であり、ブレードのルート部16のベース26Aよりブレードの先端20の近傍まで延在するキャビティ24を有している。冷却孔がキャビティ24よりブレード10の外面まで延在している。エンジンの運転中には、空気がキャビティ24内へ流され、冷却孔を経てブレード10より流出する。幾つかの冷却孔26はキャビティ24よりエーロフオイル部12の表面まで延在しており、他の幾つかの冷却孔28はキャビティ24よりブレードの先端20の表面18まで延在しており、更に他の幾つかの冷却孔30はキャビティ24よりスクイーラポケット22まで延在している。図示のブレード10に於ては、冷却孔26及び30は拡散孔、即ち成形された孔の形状を有しており、冷却孔28は従来の(即ち一定のジオメトリ-の)形態を有している。また第1図に示されたブレード10はキャビティ24よりトレーリングエツジ33まで延在する冷却孔31を有している。」(公報第3ページ右下欄第2行ないし第4ページ左上欄第8行)

(2)引用文献1に記載された発明
上記(1)ア.、イ.及び図面の記載を参酌すると、以下のことが分かる。
ウ.ブレード10には、ブレード10の前縁部(以下、「前縁部A」という。)、及びブレード10の後縁部(以下、「後縁部B」という。)が有り、ブレード10の先端20にスクイーラポケット22が設けてあることから、スクイーラ(以下、「スクィーラC」という。)が有ることが分かる。

エ.エーロフォイル部12には、プラットフォーム14と接続する部位(以下、「エーロフォイル部12の接続部D」という。)とスクイーラCとの間で半径方向スパンにわたって延びるエーロフォイル部12の背側壁(以下、「背側壁E」という。)エーロフォイル部12の腹側壁(以下、「腹側壁F」という。)が有ることが分かる。

オ.エーロフォイル部12には、その腹側壁Fであって、前記前縁部A及び後縁部Bにおいて前記背側壁Eに結合し、かつ背側壁Eと腹側壁Fとの間にキャビティ24を形成する腹側壁Fが有ることが分かる。

カ.腹側壁Eを貫通して縦列の形態で配置された複数の縦方向に間隔を置いた冷却口31とを含むガスタービンエンジン用エーロフォイル部12であって、
前記冷却口31が、キャビティ24と流れ連通状態になっているガスタービンエンジン用エーロフォイル部12であることが分かる。

以上、上記(1)ア.、イ.及びウ.ないしカ.並びに図面の記載を参酌すると、引用文献1には以下の発明が記載されているといえる。
「ブレード10の前縁部Aと、
ブレード10の後縁部Bと、
スクイーラCと、
エーロフォイル部12の接続部Dと前記スクイーラCとの間で半径方向スパンにわたって延びる背側壁Eと、
前記接続部DとスクイーラCとの間で半径方向スパンにわたって延びる腹側壁Fであって、前記前縁部A及び後縁部Bにおいて前記背側壁Eに結合し、かつ背側壁Eと腹側壁Fとの間にキャビティ24を形成するエーロフォイル部12の腹側壁Fと、
前記腹側壁Eを貫通して縦列の形態で配置された複数の縦方向に間隔を置いた冷却口31と
を含むガスタービンエンジン用エーロフォイル部12であって、
前記冷却口31が、前記キャビティ24と流れ連通状態になっている、
ガスタービンエンジン用エーロフォイル部12。」(以下、「引用文献1に記載された発明」という。)

(3)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-14001号公報(以下、「引用文献2」という。)には、例えば、以下の記載がある。

ア.「【特許請求の範囲】
【請求項1】 翼内部に対流冷却用の冷却空気通路を有し、かつ翼外面と前記冷却空気通路とを連通する冷却空気噴出用の孔を有するガスタービン翼において、ガス通路内の主流ガスの温度分布に対応して前記冷却空気噴出用の孔から噴出する冷却空気の量を設定し、その設定値は相対的に、主流ガスの高温域で多量に、また低温域で少量にしたことを特徴とするガスタービン翼。
【請求項2】 翼内部に対流冷却用の冷却空気通路を有し、かつ翼外面と前記冷却空気通路とを連通する冷却空気噴出用の孔を有するガスタービン翼において、ガス通路内の主流ガスの温度分布に対応して前記冷却空気噴出用の孔から噴出する冷却空気の温度を設定し、その設定値は相対的に、主流ガスの高温域で低温に、また低温域で高温にしたことを特徴とするガスタービン翼。
【請求項3】 請求項1または2記載のガスタービン翼において、冷却空気通路および冷却空気噴出用の孔を複数の独立した組に区分したことを特徴とするガスタービン翼。
【請求項4】 請求項1または2記載のガスタービン翼において、冷却空気通路の上流側をガス通路内の主流ガスの高温域に、また下流側を主流ガスの低温域にそれぞれ対応させて配置したことを特徴とするガスタービン翼。
【請求項5】 請求項1から4までに記載のガスタービン翼において、冷却空気噴出用の孔のピッチをガス通路内の主流ガスの高温域で密に、かつ低温域で粗に設定し、または前記孔の径を主流ガスの高温域で大きく、かつ低温域で小さく設定したことを特徴とするガスタービン翼。
【請求項6】 翼外面に遮熱用のサーマルバリアコーティングを施したガスタービン翼において、サーマルバリアコーティングの熱抵抗を相対的にガス通路内の主流ガスの高温域で大きく、また低温域で小さく設定したことを特徴とするガスタービン翼。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はガスタービン翼に係り、特に翼冷却また遮熱手段を改良したガスタービン翼に関する。」(【特許請求の範囲】及び【発明の詳細な説明】の段落【0001】)

イ.「【0021】本発明の目的は、半径方向の温度分布に対して最適な冷却流量の配分、または最適な冷却空気の通過順序、もしくは最適なサーマルバリアコーティングによって翼の温度分布を極力均一なものにし、最小限の冷却空気で翼を冷却することによってガスタービンの効率上昇を図り、かつ熱応力を緩和して翼の信頼性を向上させることにある。」(段落【0021】)

ウ.「【0029】請求項5記載の発明によれば、冷却空気が翼外面に流出するフィルム冷却孔、シャワーヘッド孔、後縁吹き出し孔などのピッチ、面積などを翼通路中央部、翼通路先端部、翼通路根元部で変えることが有効である。これにより、冷却空気流量を半径方向温度分布に応じて制御し、最適化することが可能となる。」(段落【0029】)

エ.「【0033】この実施例では図1(a)に示すように、動翼1が、高温の主流ガスと接して回転力を得る翼本体部2と、ロータディスクに翼本体部2を固定するための植え込み部3とを有する構成とされている。静翼から出た主流ガス4には図1(b)に示すように、燃焼器で作られた半径方向温度分布5が存在し、この温度分布5は前述したように、燃焼器の特性により相対的に、翼本体先端部2aと翼本体根元部2cとで低温、翼本体中央部2bで最も高温の分布となる。
【0034】冷却空気通路6は独立した複数の通路、即ち前縁部冷却空気6a、翼本体先端部冷却空気通路6b、翼本体中央部冷却空気通路6cおよび翼本体根元部冷却空気通路6dに分岐されている。冷却空気は各通路6a?6dにそれぞれ個別に接続された供給管を介して独立に供給される。
【0035】図2は図1(a)のA-A断面を示している。動翼1の前縁10に主流ガス4に対向するようにシャワーヘッド孔9が横方向に複数列をなして穿設されている。背側11および腹側12には、主流ガス4の流れ方向に沿って冷却空気を噴出させるためのフィルム孔7が穿設されている。
【0036】そして、前縁部冷却空気通路6aでは、翼面圧力がよどみ点になる前縁10に向けて冷却空気が独立して供給され、多数のシャワーヘッド孔9から主流ガス4に対向する方向に流出する。
【0037】また、翼本体先端部冷却空気6b、翼本体中央部冷却空気通路6cおよび翼通路根元部冷却空気通路6dは植え込み部3を経由した後、翼本体部2内で蛇行流路を形成しており、極力広い範囲に亘って翼内面を冷却するようになっている。そして、冷却空気の一部は多数のフィルム孔7から翼外面に噴出し、主流ガス4に混入してフィルム上に翼外面を覆い、翼を保護するようになっている。このようにして、冷却空気は次第に流量を減じながら、いずれも最終的には後縁吹き出し孔8から外部に流出し、主流ガス4に合流する。
【0038】図3(a)は動翼1を腹側(図2の下側)から見た外形を示し、同図(b),(c)はフィルム孔7のピッチ関係を示している。これらの図に示したように、フィルム孔7のピッチは翼中央部と翼先端部もしくは翼根元部で異なったものになっている。即ち、図1(b)に示した主流ガス4の半径方向温度分布5に対応して、翼中央部における冷却孔ピッチ14aが、翼先端部と翼根元部における冷却孔ピッチ14bよりも小さく設定され、これにより主流ガス4の温度が高い部位に多くの冷却空気が流れる構造となっている。なお、フィルム孔7のみならず、シャワーヘッド孔9、後縁吹き出し孔8についても同様に翼中央部で密に配備されている。」(段落【0033】ないし【0038】)

オ.「【0044】本実施例においては、主流ガス温度4の高い部位に多量の冷却空気を供給するか、低温の冷却空気を供給して冷却効率を高め、逆に主流ガス4の温度の低い部位には少量の冷却空気を供給するか、高温の冷却空気を供給することで、前記の理想に近付くことができる。即ち、各冷却空気通路が独立していれば、冷却空気の流量を図1(b)に示した主流ガス4の温度の半径方向温度分布5に応じて調整することが可能である。
【0045】本実施例の場合、具体的には図3(b),(c)に示したように、フィルム孔7、後縁吹き出し孔8、シャワーヘッド孔9等のピッチを半径方向に変化させることで前記の調整が実現可能となる。即ち、半径方向温度分布5が高い翼本体中央部2bでは、翼中央部における冷却孔ピッチ14aを図3(c)の如く密にして、翼本体中央部冷却空気通路6cに使用する空気量を多くする。
【0046】これに対し、翼本体先端部2aや翼本体根元部2cでは図1(b)の半径方向温度分布5の如く、必ずしも主流ガス温度4は高くない。したがって、これらの部位では、翼先端側と翼根元側とにおける冷却孔ピッチ14bを図3(b)の如く粗にして、翼本体先端部冷却空気通路6bや翼本体根元部冷却空気通路6dに供給する空気量は比較的少ないものとする。」(段落【0044】ないし【0046】)

カ.「【0079】
【発明の効果】以上で詳述したように、本発明によれば、ガスタービンへの冷却空気の供給を主流ガスの温度分布に応じて分離独立させること、もしくは優先度の順に供給することで、翼面温度の均一化に非常に大きな効果がある。特に、前縁部、翼中央部、翼先端部および翼根元部の冷却空気通路を各々独立させ、もしくは冷却の優先度が高い前縁から翼中央部の順で冷却空気を供給するようにし、また冷却孔のピッチもしくは面積を各々の部位で謹啓方向温度分布が最も高い翼中央部に最も多量の冷却空気が流れるようにし、さらにサーマルバリアコーティングも翼中央部で最も厚くするか、気孔率や添加成分を制御して遮熱効果を当該部位で高くすることにより、主流ガスの半径方向温度分布に対して最適化した冷却方法を実現することができる。
【0080】したがって、ガスタービンの効率低下の大きな原因となる冷却空気の増加を最小限に止め、もって高効率のガスタービンを提供する効果がある。また、翼面温度分布を均一化することにより、翼内部の熱応力の緩和に寄与することができ、翼の信頼性も向上する。
【0081】さらに、冷却空気野流れを翼の回転中に作用する遠心力の方向のみに流す構成の場合には、冷却空気の反転部が存在しないため、冷却空気通路部内の流れ場を簡素化でき、しかも翼内部の熱伝達率の均一化により温度分布の均一化が図れる等の効果も奏される。」(段落【0079】ないし【0081】)

(4)引用文献2に記載された発明
上記(3)ア.ないしカ.及び図面の記載を参酌すると、以下のことが分かる。

キ.動翼1には、動翼の先端部(以下、「動翼先端部G」という。)と、動翼1の前縁10と、後縁13とが有り、翼本体根元部2cと前記動翼先端部Gとの間で半径方向スパンにわたって延びる動翼1の背側11と、前記翼本体根元部2cと動翼先端部Gとの間で半径方向スパンにわたって延びる動翼1の腹側12であって、前記前縁10及び後縁13において前記動翼1の背側11に結合し、かつ動翼1の背側11と動翼1の腹側12との間に冷却空気通路6を形成する動翼1の腹側12と、縦列の形態で配置された複数の縦方向に間隔を置いた後縁吹き出し孔8とを含むものであることが分かる。

ク.後縁吹き出し孔8が、冷却空気通路6と流れ連通状態になっており、かつ前記後縁13の少なくとも1つの部分である翼中央部、翼先端部、翼根本部におけるインチ当たりの吹き出し孔の数が該後縁13の異なる部分におけるインチ当たりの吹き出し孔の数よりも多くなるように、該後縁13に沿って一様でない分布で配置されており、前記後縁13が複数の部分である翼中央部、翼先端部、翼根本部を含んでいて、それらの部分の各々がその中に設置された前記後縁吹き出し孔8のインチ当たりの数を含み、選択した部分における前記後縁吹き出し孔8のインチ当たりの数が、隣接する部分における該後縁吹き出し孔8のインチ当たりの数とは異なっていることが分かる。

ケ.後縁13が、後縁吹き出し孔8のインチ当たりの第1の数を含む翼中央部と、前記後縁吹き出し孔8のインチ当たりの第2の数を含む翼先端部と、前記後縁吹き出し孔8のインチ当たりの第3の数を含む翼根本部とを含み、前記翼根本部が、前記翼本体根本部2cから前記翼中央部まで延び、前記翼中央部が、前記第翼根元部から前記翼先端部まで延び、前記翼先端部が、前記翼中央部から前記動翼先端部Gまで延びており、前記後縁吹き出し孔8のインチ当たりの第1の数が、前記後縁吹き出し孔8のインチ当たりの第2及び第3の数よりも多い、ガスタービン動翼1であることが分かる。

以上、上記(3)ア.ないしカ.及びキ.ないしケ.並びに図面の記載を参酌すると、引用文献2には以下の発明が記載されているといえる。
「前縁10と、
後縁13と、
動翼先端部Gと、
翼本体根元部2cと前記動翼先端部Gとの間で半径方向スパンにわたって延びる動翼1の背側11と、
前記翼本体根元部2cと動翼先端部Gとの間で半径方向スパンにわたって延びる動翼1の腹側12であって、前記前縁10及び後縁13において前記動翼1の背側11に結合し、かつ動翼1の背側11と動翼1の腹側12との間に冷却空気通路6を形成する動翼1の腹側12と、
縦列の形態で配置された複数の縦方向に間隔を置いた後縁吹き出し孔8とを含むガスタービン動翼1であって、
前記後縁吹き出し孔8が、前記冷却空気通路6と流れ連通状態になっており、かつ前記後縁の少なくとも1つの部分翼中央部、翼先端部 、翼根本部 におけるインチ当たりの吹き出し孔の数が該後縁の異なる部分におけるインチ当たりの吹き出し孔の数よりも多くなるように、該後縁に沿って一様でない分布で配置されており、前記後縁13が複数の部分翼中央部、翼先端部 、翼根本部を含んでいて、それらの部分の各々がその中に設置された前記後縁吹き出し孔8のインチ当たりの数を含み、選択した部分における前記吹き出し孔8のインチ当たりの数が、隣接する部分における該後縁吹き出し孔8のインチ当たりの数とは異なっており、前記後縁13が、前記後縁吹き出し孔8のインチ当たりの第1の数を含む翼中央部と、前記後縁吹き出し孔8のインチ当たりの第2の数を含む翼先端部と、前記後縁吹き出し孔8のインチ当たりの第3の数を含む翼根本部とを含み、前記翼根本部が、前記翼本体根本部2cから前記翼中央部まで延び、前記翼中央部が、前記第翼根元部から前記翼先端部まで延び、前記翼先端部が、前記翼中央部から前記先端プレートGまで延びており、前記後縁吹き出し孔8のインチ当たりの第1の数が、前記後縁吹き出し孔8のインチ当たりの第2及び第3の数よりも多い、ガスタービン動翼1。」(以下、「引用文献2に記載された発明」という。)

3.対比
本願発明と引用文献1に記載された発明とを対比すると、引用文献1に記載された発明における「ブレード10の前縁部A」は、その技術的意義からみて、本願発明における「前縁(48)」に相当し、以下同様に「ブレード10の後縁部B」は「後縁(50)」に、「スクイーラC」は「先端プレート(54)」に、「エーロフォイル部12の接続部D」は「翼形部根元(52)」に、「エーロフォイル部12の背側壁E」は「第1の側壁(44)」に、「エーロフォイルブ12の腹側壁F」は「第2の側壁(46)」に、「キャビティ24」は「冷却空洞(56)」に、「冷却口31」は「後縁冷却スロット(70)」に、「ガスタービンエンジン用エーロフォイル部12」は「ガスタービン(20)用翼形部(42)」に、各々相当する。よって、本願発明と引用文献1に記載された発明とは、
「前縁と、
後縁と、
先端プレートと、
翼形部根元と前記先端プレートとの間で半径方向スパンにわたって延びる第1の側壁と、
前記翼形部根元と先端プレートとの間で半径方向スパンにわたって延びる第2の側壁であって、前記前縁及び後縁において前記第1の側壁に結合し、かつ第1の側壁と第2の側壁との間に冷却空洞を形成する第2の側壁と、
前記第2の側壁を貫通して縦列の形態で配置された複数の縦方向に間隔を置いた後縁冷却スロットと
を含むガスタービン(20)用翼形部(42)であって、
前記スロットが、前記冷却空洞と流れ連通状態になっている、ガスタービン用翼形部。」の点で一致して、以下の点で相違する。
〈相違点〉
本願発明においては、「後縁の少なくとも1つの部分(82)、(84)、(86)におけるインチ当たりのスロットの数が該後縁の異なる部分におけるインチ当たりのスロットの数よりも多くなるように、該後縁に沿って一様でない分布で配置されており、前記後縁(50)が複数の部分(82)、(84)、(86)を含んでいて、それらの部分の各々がその中に設置された前記後縁冷却スロット(70)のインチ当たりの数を含み、選択した部分における前記後縁冷却スロットのインチ当たりの数が、隣接する部分における該後縁冷却スロットのインチ当たりの数とは異なっており、前記後縁(50)が、前記後縁冷却スロット(70)のインチ当たりの第1の数を含む第1の部分(82)と、前記後縁冷却スロットのインチ当たりの第2の数を含む第2の部分(84)と、前記後縁冷却スロットのインチ当たりの第3の数を含む第3の部分(86)とを含み、前記第3の部分が、前記翼形部根元(52)から前記第1の部分まで延び、前記第1の部分が、前記第3の部分から前記第2の部分まで延び、前記第2の部分が、前記第1の部分から前記先端プレート(54)まで延びており、前記後縁冷却スロットのインチ当たりの第1の数が、前記後縁冷却スロットのインチ当たりの第2及び第3の数よりも多い」のに対して、引用文献1に記載された発明においては、「スロット」に相当する「冷却口31」の数及び配置については、そのように特定されていない点(以下、「相違点」という。)。

4.判断
相違点について検討する。
本願発明と引用文献2に記載された発明とを対比すると、引用文献2に記載された発明における「前縁10」は、その技術的意義からみて、「前縁(48)」に相当し、以下同様に「後縁13」は「後縁(50)」に、「動翼先端部G」は「先端プレート(54)」に、「翼本体根本部2c」は「翼形部根元(52)」に、「動翼1の背側11」は「第1の側壁(44)」に「動翼1の腹側12」は「第2の側壁(46)」に、「冷却空気通路6」は「冷却空洞(56)」に、
「後縁吹き出し孔8」は「後縁冷却スロット(70)」に、「ガスタービン動翼1」は「ガスタービン(20)用翼形部(42)」に、「翼中央部」は「第1の部分(82)」に、「翼先端部」は「第2の部分(84)」に、「翼根本部」は「第3の部分(86)」に各々相当するから、
引用文献2に記載された発明を本願発明の用語を用いると
「前縁と、
後縁と、
先端プレートと、
翼形部根元と前記先端プレートとの間で半径方向スパンにわたって延びる第1の側壁と、
前記翼形部根元と先端プレートとの間で半径方向スパンにわたって延びる第2の側壁であって、前記前縁及び後縁において前記第1の側壁に結合し、かつ第1の側壁と第2の側壁との間に冷却空洞を形成する第2の側壁と、
縦列の形態で配置された複数の縦方向に間隔を置いた後縁冷却スロットと
を含むガスタービン用翼形部であって、
前記スロットが、前記冷却空洞と流れ連通状態になっており、かつ前記後縁の少なくとも1つの部分(82)、(84)、(86)におけるインチ当たりのスロットの数が該後縁の異なる部分におけるインチ当たりのスロットの数よりも多くなるように、該後縁に沿って一様でない分布で配置されており、前記後縁が複数の部分(82)、(84)、(86)を含んでいて、それらの部分の各々がその中に設置された前記後縁冷却スロットのインチ当たりの数を含み、選択した部分における前記後縁冷却スロットのインチ当たりの数が、隣接する部分における該後縁冷却スロットのインチ当たりの数とは異なっており、前記後縁が、前記後縁冷却スロットルのインチ当たりの第1の数を含む第1の部分と、前記後縁冷却スロットのインチ当たりの第2の数を含む第2の部分と、前記後縁冷却スロットのインチ当たりの第3の数を含む第3の部分とを含み、前記第3の部分が、前記翼形部根元から前記第1の部分まで延び、前記第1の部分が、前記第3の部分から前記第2の部分まで延び、前記第2の部分が、前記第1の部分から前記先端プレートまで延びており、前記後縁冷却スロットのインチ当たりの第1の数が、前記後縁冷却スロットのインチ当たりの第2及び第3の数よりも多い、ガスタービン用翼形部。」と表現できる。
そして、本願発明、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された発明は、ガスタービン用の翼の形状に関するものであって、翼の温度分布を均一にすることはガスタービンの技術分野においては周知の課題であることから、引用文献1記載の発明に引用文献2記載の発明を適用して相違点に係る発明のように特定することは、当業者が容易に推考し得るものである。

そして、本願発明の作用効果も、引用文献1及び2に記載された発明から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用文献1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-04-19 
結審通知日 2013-04-23 
審決日 2013-05-14 
出願番号 特願2005-169330(P2005-169330)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 寺町 健司  
特許庁審判長 小谷 一郎
特許庁審判官 柳田 利夫
久島 弘太郎
発明の名称 ガスタービンロータブレードを冷却するための方法及び装置  
代理人 黒川 俊久  
代理人 小倉 博  
代理人 田中 拓人  
代理人 荒川 聡志  

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