• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C07C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C07C
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C07C
管理番号 1279771
審判番号 不服2009-25098  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-18 
確定日 2013-10-07 
事件の表示 特願2003-512197「抗炎症剤、免疫調製剤及び増殖防止剤としての新規化合物」拒絶査定不服審判事件〔平成15年1月23日国際公開、WO03/06425、平成16年12月2日国内公表、特表2004-536122〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2002年7月9日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2001年7月10日 欧州特許庁(EP))を国際出願日とする出願であって、平成16年1月9日に特許協力条約第34条補正の翻訳文が提出され(補正書の提出日平成15年7月8日)、平成21年1月15日付けで拒絶理由が通知され、同年6月19日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年8月3日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年12月18日に審判請求がされるとともに手続補正書が提出され、平成23年8月29日付けで審尋が通知され、同年11月30日に回答書が提出されたものである。

第2 平成21年12月18日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成21年12月18日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
平成21年12月18日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1、14、15、21である、
「【請求項1】
式(I)
【化1】

{式中、
Aは、炭素原子5個を有する非芳香族環であり、前記環は、少なくとも1個の二重結合を有しており、そして前記環中の1個以上の炭素原子は、XがS、O、N、NR4、SO又はSO2から成る群から選択される基Xで置換することができ、そして前記環の1個以上の炭素原子は、置換基R1を持つことができ、
Dは、O、S、SO2、NR4又はCH2であり、
Z1及びZ2は互いに独立してO、S又はNR5であり、
R1は互いに独立してH、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルキルオキシ又はアルキルであり、
R2はH、OR6又はNHR7であり、
R3はH、アルキル、シクロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、O-アリール、O-シクロアルキル、ハロゲン、アミノアルキル、アルキルアミノ、ヒドロキシルアミノ、ヒドロキシルアルキル、ハロアルキル、ハロアルキルオキシ、ヘテロアリール、アルキルチオ、S-アリール又はS-シクロアルキルであり、
R4はH、アルキル、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、
R5はH、OH、アルコシキ、O-アリール、アルキル又はアリールであり、
R6はH、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アルコキシアルキル、アシルメチル、(アシルオキシ)アルキル、非対掌(アシルオキシ)アルキルジエステル又はジアルキルホスフェートであり、
R7はアルキル、アリール、アルコキシ、O-アリール、シクロアルキル又はO-シクロアルキルであり、
R8は水素又はアルキルであり、
Eはアルキル又はシクロアルキル基であるかあるいは1個以上の基Xを含有してもよくそして少なくとも1個の芳香族環を含有する単環式、多環式置換又は未置換環系であり、
Yは、シクロアルキル、1個以上の基Xを含有してもよくそして少なくとも1個の芳香族環を含有する単環式、多環式置換又は未置換環系であり、
【化2】

mは0又は1であり、
nは0又は1であり、
pは0又は1であり、
rは0又は1であり、そして
qは0から10で表される化合物またはその塩であって、
式中、
アルキルは、所望に応じて1個以上のR’で置換される飽和又は不飽和アルキル基を表し、
R’は、互いに独立してH、-NO2、-CO2R”、-CONHR”、-CR”O、-SO2NR”、-NR”-CO-ハロアルキル、-NR”-SO2-ハロアルキル、-NR”-SO2-アルキル、-SO2-アルキル、-NR”-CO-アルキル、-CN、アルキル、シクロアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノ、アルコキシ、-OH、-SH、アルキルチオ、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルキルオキシ、又はアリールアルキルであり、
R”は、互いに独立して水素、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール又はアミノアルキルであり、
シクロアルキル基は、環中の1個以上の炭素原子が基X(Xは前記に定義した通りである)で置換されることができる炭素原子2?8個を有する非芳香族環系を表し、
アルキルオキシ基は、O-アルキル基を表し、アルキル基は前記に定義した通りであり、
アルキルチオ基は、S-アルキル基を表し、アルキル基は前記に定義した通りであり、
ヒドロキシアルキル基は、HO-アルキル基を表し、アルキル基は前記に定義した通りであり、
ハロアルキル基は、1個から5個のハロゲン原子で置換されたアルキル基を表し、アルキル基は前記に定義した通りであり、
ハロアルコキシ基は、1個から5個のハロゲン原子で置換されたアルコキシ基を表し、アルコキシ基は前記に定義した通りであり、
ヒドロキシアルキルアミノ基は、(HO-アルキル)2-N-基又はHO-アルキル-NH-基を表し、アルキル基は前記に定義した通りである。
アルキルアミノ基は、-NH-アルキル又はN-ジアルキル基を表し、アルキル基は前記に定義した通りであり、
アミノアルキル基は、H2N-アルキル、モノアルキルアミノアルキル又はジアルキルアミノアルキル基を表し、アルキル基は前記に定義した通りであり、
ハロゲン基は、塩素、臭素、フッ素又はヨウ素であり、
アリール基は、所望に応じて1個以上の置換基R’( R’は前記に定義した通りである)で置換された炭素原子5?15個を有する芳香族基であり、
アリールアルキル基は、1個から3個のアリール基で置換されたアルキル基を表し、アルキル及びアリール基は前記に定義した通りであり、
ヘテロアリール基は、他の環と融合してもよくそして所望に応じて1個以上の置換基R’( R’は前記に定義した通りである)で置換された少なくとも1個のO、N、S等のヘテロ原子を含む5-又は6員ヘテロ環式基を表す}
で表される化合物またはその塩
[但し、環Aが炭素原子数5を有し、そしてCZ1とCZ2との間の二重結合を有する未置換の炭素環であり、Z1=Z2=0であり、R2=OHであり、r=1である場合、
q=0、Y=フェニル、E=ハロゲン、炭素原子が1から5個のアルキル、炭素原子が1から5個のアルコキシ、フェニル、またはシアノ基で置換されたフェニレンである化合物、
q=1、m=1、n=1、R3=H、E=フェニレン、Y=ハロゲン原子で置換されていてもよいアリール、D=O、Sである化合物は除く]。」
「【請求項14】
遊離形態又は薬学的に認容可能な塩及び生理学的官能誘導体の形態の請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載の化合物を、薬学的に許容可能な稀釈剤及びキャリアとともに含む薬学的組成物」
「【請求項15】
医薬品として使用するための請求項1に記載の化合物。」
「【請求項21】
請求項1ないし請求項13のいずれか1項に定義された化合物より成るDHOD抑制剤。」(以下、補正前の請求項1、14、15、21をまとめて「(あ)」という。)
を、それぞれ、補正後の特許請求の範囲の請求項1、14、15、21である、
「【請求項1】
式(I)
【化1】

{式中、
Aは、炭素原子5個を有する非芳香族環であり、前記環は、少なくとも1個の二重結合を有しており、そして前記環中の1個以上の炭素原子は、XがS、O、SO又はSO_(2)から成る群から選択される基Xで置換することができ、そして前記環の1個以上の炭素原子は、置換基R^(1)を持つことができ、
Dは、O、S、SO_(2)、NR_(4)又はCH_(2)であり、
Z_(1)及びZ_(2)は互いに独立してOであり、
R_(1)は互いに独立してH、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルキルオキシ又はアルキルであり、
R_(2)はH、OR_(6)又はNHR_(7)であり、
R_(3)はHであり、
R_(5)はH、OH、アルコキシ、O-アリール、アルキル又はアリールであり、
R_(6)はH、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アルコキシアルキル、アシルメチル、(アシルオキシ)アルキル、非対掌(アシルオキシ)アルキルジエステル又はジアルキルホスフェートであり、
R_(7)はアルキル、アリール、アルコキシ、O-アリール、シクロアルキル又はO-シクロアルキルであり、
R_(8)は水素又はアルキルであり、
Eはアルキル又はシクロアルキル基であるかあるいは1個以上の基Xを含有してもよくそして少なくとも1個の芳香族環を含有する単環式、多環式置換又は未置換環系であり、
Yは、シクロアルキル、1個以上の基Xを含有してもよくそして少なくとも1個の芳香族環を含有する単環式、多環式置換又は未置換環系又は
【化2】

であり、
mは0又は1であり、
nは0又は1であり、
pは0又は1であり、
rは1であり、そして
qは0から10で表される化合物またはその塩であって、
式中、
アルキルは、所望に応じて1個以上のR’で置換される飽和又は不飽和アルキル基を表し、
R’は、互いに独立してH、-NO_(2)、-CO_(2)R”、-CONHR”、-CR”O、-SO_(2)NR”、-NR”-CO-ハロアルキル、-NR”-SO_(2)-ハロアルキル、-NR”-SO_(2)-アルキル、-SO_(2)-アルキル、-NR”-CO-アルキル、-CN、アルキル、シクロアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノ、アルコキシ、-OH、-SH、アルキルチオ、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルキルオキシ、又はアリールアルキルであり、
R”は、互いに独立して水素、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール又はアミノアルキルであり、
シクロアルキル基は、環中の1個以上の炭素原子が基X(Xは前記に定義した通りである)で置換されることができる炭素原子2?8個を有する非芳香族環系を表し、
アルコキシ基は、O-アルキル基を表し、アルキル基は前記に定義した通りであり、
アルキルチオ基は、S-アルキル基を表し、アルキル基は前記に定義した通りであり、
ヒドロキシアルキル基は、HO-アルキル基を表し、アルキル基は前記に定義した通りであり、
ハロアルキル基は、1個から5個のハロゲン原子で置換されたアルキル基を表し、アルキル基は前記に定義した通りであり、
ハロアルキルオキシ基は、1個から5個のハロゲン原子で置換されたアルコキシ基を表し、アルコキシ基は前記に定義した通りであり、
ヒドロキシアルキルアミノ基は、(HO-アルキル)_(2)-N-基又はHO-アルキル-NH-基を表し、アルキル基は前記に定義した通りである。
アルキルアミノ基は、-NH-アルキル又はN-ジアルキル基を表し、アルキル基は前記に定義した通りであり、
アミノアルキル基は、H_(2)N-アルキル、モノアルキルアミノアルキル又はジアルキルアミノアルキル基を表し、アルキル基は前記に定義した通りであり、
ハロゲン基は、塩素、臭素、フッ素又は沃素であり、
アリール基は、所望に応じて1個以上の置換基R’( R’は前記に定義した通りである)で置換された炭素原子5?15個を有する芳香族基であり、
アリールアルキル基は、1個から3個のアリール基で置換されたアルキル基を表し、アルキル及びアリール基は前記に定義した通りであり、
ヘテロアリール基は、他の環と融合してもよくそして所望に応じて1個以上の置換基R’( R’は前記に定義した通りである)で置換された少なくとも1個のO、N、S等のヘテロ原子を含む5-又は6員ヘテロ環式基を表す}
で表される化合物またはその塩
[但し、環Aが炭素原子数5を有し、そしてCZ_(1)とCZ_(2)との間の二重結合を有する未置換の炭素環であり、Z_(1)=Z_(2)=0であり、R_(2)=OHであり、r=1である場合、
q=0、Y=フェニル、E=ハロゲン、炭素原子が1から5個のアルキル、炭素原子が1から5個のアルコキシ、フェニル、またはシアノ基で置換されたフェニレンおよび非置換のフェニレンである化合物、
q=1、m=1、n=1、R_(3)=H、E=フェニレン、Y=ハロゲン原子で置換されていてもよいアリール、D=O、Sである化合物は除く]。」
「【請求項14】
遊離形態又は薬学的に認容可能な塩及び生理学的官能誘導体の形態の請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載の化合物を、薬学的に許容可能な稀釈剤及びキャリアとともに含む薬学的組成物」
「【請求項15】
医薬品として使用するための請求項1に記載の化合物。」
「【請求項21】
請求項1ないし請求項13のいずれか1項に定義された化合物より成るDHOD抑制剤。」(以下、補正後の請求項1、14、15、21をまとめて「(い)」という。)
とする補正を含むものである。

2 補正の目的
上記請求項1についての補正は、補正前の請求項1に記載された「X」について「S、O、N、NR4、SO又はSO2から成る群から選択される基」であったものを「S、O、SO又はSO_(2)から成る群から選択される基」とし、同「R3」について「H、アルキル、シクロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、O-アリール、O-シクロアルキル、ハロゲン、アミノアルキル、アルキルアミノ、ヒドロキシルアミノ、ヒドロキシルアルキル、ハロアルキル、ハロアルキルオキシ、ヘテロアリール、アルキルチオ、S-アリール又はS-シクロアルキル」であったものを「R_(3)はH」とするものであって、これらの基を限定するものであり、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、請求項14、15、21についての補正は、これらの請求項で引用している請求項1が、上記のとおり特許請求の範囲の減縮を目的として補正するものであるから、同様に、同法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1、14、15、21に記載された発明(以下、順に「本願補正発明1」、「本願補正発明14」、「本願補正発明15」、「本願補正発明21」といい、まとめて「本願補正発明」ということもある。また、本件補正後の明細書を「本願補正明細書」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

3 独立特許要件(特許法第29条第1項第3号)の検討
(1)本願補正発明1
本願補正発明1は、「1(い)」の請求項1に記載したとおりのものである。
ただし、本願補正発明1における「但し、環Aが炭素原子数5を有し、そしてCZ_(1)とCZ_(2)との間の二重結合を有する未置換の炭素環であり、Z_(1)=Z_(2)=0であり」との記載のうち、「Z_(1)=Z_(2)=0」(ゼロ)については、「Z_(1)=Z_(2)=O」(オー)の誤記と認める。

(2)刊行物5及び記載事項
刊行物5(原査定における刊行物5であって、原審の拒絶理由通知における引用文献5と同じである。)は次のとおりであり、以下の事項が記載されている。
刊行物5:Lack, Leon; Weiner, Irwin M.,Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics,1963,139,248-258

(5a)「

」(252頁、表)

(3)刊行物5に記載された発明
刊行物5には、(5a)に摘示した表が記載され、その中に化合物番号20で示される化合物(以下、「化合物20」という。)が記載されている。
この化合物20は、シクロペンテン環(シクロペント-1-エン)の2位に結合するカルボニル基(>C=O)に基R’が結合しており、基R’は、この表の上から3行目に記載されている化学構造のものであり、シクロペンテン環の1位にはCOOH(カルボン酸)が結合している化合物である。ここで、基R’のうちの

p-Cl-C_(6)H_(5)-CHCH(CH_(3))-

p-Cl-C_(6)H_(5)-CH_(2) 」
の基を「置換基」とすると、「-NH-CO-」のNに上記置換基が付いたもの(N-置換カルバモイル)であるといえ、そうすると、この化合物20は、「2-N-置換カルバモイル-シクロペント-1-エンカルボン酸」であるといえる。

よって、刊行物5には、化合物20として、

p-Cl-C_(6)H_(5)-CHCH(CH_(3))-

p-Cl-C_(6)H_(5)-CH_(2)
をN-置換基とし、

の式で示される、2-N-置換カルバモイル-シクロペント-1-エンカルボン酸」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

(4)対比
本願補正発明1と引用発明とを対比する。
引用発明における「シクロペント-1-エン」(シクロペンテン環)は、「炭素原子5個を有する非芳香族環であり、1個の二重結合を有して」いるから、本願補正発明1における式(I)の「A」であって、「Aは、炭素原子5個を有する非芳香族環であり、前記環は、少なくとも1個の二重結合を有して」いるものに相当し、引用発明における「カルボン酸」は、「-C=O(OH)」を意味するから、本願補正発明1における式(I)の「Z_(1)がO、R_(2)がOR_(6)、R_(6)がH」のものに相当し、引用発明における「カルバモイル」は、本願補正発明1における「Z_(2)がO、rが1、R_(8)が水素」のものに相当するから、両者は、
「式

{式中、
Aは、炭素原子5個を有する非芳香族環であり、前記環は、少なくとも1個の二重結合を有しており、Z_(1)はO、R_(2)はOR_(6)、R_(6)がH、Z_(2)はO、rは1、R_(8)が水素}で表される化合物」(2-N-置換カルバモイル-シクロペント-1-エンカルボン酸)である点で一致し、次の点で一応相違する。
(i)本願補正発明1においては、N-置換基が「-E-[D_(m)-(CHR^(3))_(n)]_(q)-Y」であり、かつ、「環Aが炭素原子数5を有し、そしてCZ_(1)とCZ_(2)との間の二重結合を有する未置換の炭素環であり、Z_(1)=Z_(2)=Oであり、R_(2)=OHであり、r=1である場合、
q=0、Y=フェニル、E=ハロゲン、炭素原子が1から5個のアルキル、炭素原子が1から5個のアルコキシ、フェニル、またはシアノ基で置換されたフェニレンおよび非置換のフェニレンである化合物は除く」のに対し、
引用発明においては、N-置換基が

p-Cl-C_(6)H_(5)-CHCH(CH_(3))-

p-Cl-C_(6)H_(5)-CH_(2) 」である点

(5)判断
相違点(i)について検討する。
本願補正発明1における「-E-[D_(m)-(CHR^(3))_(n)]_(q)-Y」は、「q=0」の場合「-E-Y」となる。
そして、「E」は、請求項1の定義によれば、「アルキル」であって、「アルキルは、所望に応じて1個以上のR’で置換される飽和・・・アルキル基を表し」、「R’は、互いに独立して・・・ハロゲン、・・・アリールアルキルであり」、「ハロゲン基は、塩素・・・であり」、「アリールアルキル基は、1個から3個のアリール基で置換されたアルキル基」であり、「アリール基は、所望に応じて1個以上のR’(R’は前記に定義した通りである)で置換された炭素原子5?15を有する芳香族基で」あるから、「-E-」は、「1個の塩素」で「置換された炭素原子6個を有する芳香族」を「アリール」とし、その「1個のアリール基で置換されたアルキル基」(p-Cl-C_(6)H_(5)-CH_(2)-)で置換される「飽和アルキル基」(-CHCH(CH_(3))-)を含む。
また、「Y」は請求項1の定義によれば、「少なくとも1個の芳香族環を含有する単環式・・・置換・・・環系」であるから、「1個の芳香族環を含有する単環式置換環系」である「p-クロロフェニル」(p-Cl-C_(6)H_(5)-)を含む。
すなわち、本願補正発明1において「q=0」、「Eは1個の塩素で置換された炭素原子6個を有する芳香族である1個のアリール基で置換されたアルキル基で置換される飽和アルキル基」、「Yは1個の芳香族環を含有する単環式置換環系」のとき、本願補正発明1の「-E-[D_(m)-(CHR^(3))_(n)]_(q)-Y」と引用発明の

p-Cl-C_(6)H_(5)-CHCH(CH_(3))-

p-Cl-C_(6)H_(5)-CH_(2) 」とは、化合物の構造が一致するといえる。
さらに、引用発明は、本願補正発明1の「但し、・・・化合物は除く」における「環Aが炭素原子数5を有し、そしてCZ_(1)とCZ_(2)との間の二重結合を有する未置換の炭素環であり、Z_(1)=Z_(2)=Oであり、R_(2)=OHであり、r=1である場合、q=0」には該当するが、「E」は、上述のように「1個の塩素で置換された炭素原子6個を有する芳香族である1個のアリール基で置換されたアルキル基で置換される飽和アルキル基」であって、上記但し書きで本願補正発明1から除かれる化合物の「E」である「ハロゲン、炭素原子が1から5個のアルキル、炭素原子が1から5個のアルコキシ、フェニル、またはシアノ基で置換されたフェニレンおよび非置換のフェニレン」のいずれにも該当しないから、引用発明は本願補正発明1に含まれるものである。
そうすると、相違点(i)は実質的な相違点ではない。

(6)請求人の主張
請求人は、審判請求書において、
「請求項1に記載された式(I)で表される化合物から除外する化合物を記した但し書き部分は、「q=0、Y=フェニル、E=ハロゲン、炭素原子が1から5個のアルキル、炭素原子が1から5個のアルコキシ、フェニル、またはシアノ基で置換されたフェニレンおよび非置換のフェニレンである化合物は除く」と記載される。従って、E=非置換のフェニレンである化合物も除かれるので、請求項1の式(I)の化合物には刊行物5の化合物20は含まれない。
また、R_(3)はHでありアリールアルキルは含まれないので、請求項1の式(I)の化合物には刊行物5の化合物20は含まれない。」(第6頁第6?13行)
と主張する。
しかしながら、上記(5)で述べたように、刊行物5の化合物20である引用発明において、「E」は「1個の塩素で置換された炭素原子6個を有する芳香族である1個のアリール基で置換されたアルキル基で置換される飽和アルキル基」であって、「非置換のフェニレン」には該当しない。
また、「R_(3)はHでありアリールアルキルは含まれない」とも主張しているが、本願補正発明1において、「q=1、m=1、n=1、R_(3)=H、E=フェニレン、Y=ハロゲン原子で置換されていてもよいアリール、D=O、Sである化合物は除く」と記載されるように、「q=1」の場合にのみ、「R_(3)はHでありアリールアルキルは含まれない」化合物が除かれるのであるから、「q=0」である引用発明においては、R_(3)がどのような基であっても、両者は一致するといえる。
なお、回答書に添付した「(補正案)」によっても、(5)で述べたように、本願補正発明1は引用発明と依然として化学構造が一致するものを包含するから、拒絶理由は解消しない。
したがって、請求人の主張は採用することができない。

(7)まとめ
以上のとおり、本願補正発明1は、本願の優先日前に頒布された刊行物5に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当する。

4 独立特許要件(特許法第36条第6項第1号)の検討
(1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1、14、15、21の記載
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1、14、15、21(以下、「第2」においては、「本件補正後の」を省き、単に「請求項1」等という。)には、「1(い)」に記載したとおりの記載がある。
ただし、請求項1の「但し、環Aが炭素原子数5を有し、そしてCZ_(1)とCZ_(2)との間の二重結合を有する未置換の炭素環であり、Z_(1)=Z_(2)=0であり」との記載のうち、「Z_(1)=Z_(2)=0」(ゼロ)については、「Z_(1)=Z_(2)=O」(オー)の誤記と、請求項21の「DHOD抑制剤」については「DHODH抑制剤」の誤記とそれぞれ認める。

(2)発明の詳細な説明の記載
本願補正明細書の発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。
(a)「【0001】
本発明は、抗炎症剤、免疫調製剤及び増殖防止剤として使用できる新規化合物に関する。特に、本発明は、ジヒドロオロテートデヒドロゲナーゼ(DHODH)を抑制する新規化合物、これらの製造方法、これらを含有する薬学的組成物及びこれらを疾病の治療及び予防に使用する方法、特にジヒドロオロテートデヒドロゲナーゼ(DHODH)を抑制する利益がある疾病に使用する方法に関する。」
(b)「発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、DHODHの抑制を要求する疾病の治療に使用できる別の有効な薬剤を提供することである。」
(c)「【課題を解決するための手段】
【0012】
これに対して、DHODH、特にヒトDHODHに対する抑制効果を有する新規の群の化合物を見出した。」
(d)「【0013】
従って、本発明は、式(1)
【0014】
【化5】

【0015】
{式中、
Aは、炭素原子5個を有する非芳香族環であり、前記環は、少なくとも1個の二重結合を有しており、そして前記環中の1個以上の炭素元素は、基X(Xは、S、O、N、NR^(4)、SO又はSO_(2)から成る群から選択される)で置換することができ、そして前記環の1個以上の炭素原子は、置換基R^(1)を持つことができ、
Dは、O、S、SO_(2)、NR^(4)又はCH_(2)であり、 Z^(1)及びZ^(2)は互いに独立してO、S又はNR^(5)であり、
R^(1)は互いに独立してH、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルキルオキシ又はアルキルであり、
R^(2)はH,OR^(6)又はNHR^(7)であり、
R^(3)はH、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アルコキシ、O-アリール、O-シクロアルキル、ハロゲン、アミノアルキル、アルキルアミノ、ヒドロキシルアミノ、ヒドロキシルアルキル、ハロアルキル、ハロアルキルオキシ、ヘテロアリール、アルキルチオ、S-アリール又はS-シクロアルキルであり、
R^(4)はH、アルキル、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、
R^(5)はH、OH、アルコキシ、O-アリール、アルキル又はアリールであり、
R^(6)はH、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アルコキシアルキル、アシルメチル、(アシルオキシ)アルキル、非対掌(アシルオキシ)アルキルジエステル又はジアルキルホスフェートであり、
R^(7)はH、アルキル、アリール、アルコキシ、O-アリール、シクロアルキル又はO-シクロアルキルであり、
R^(8)は水素又はアルキルであり、
Eはアルキル又はシクロアルキル基であるかあるいは1個以上の基Xを含有してもよくそして少なくとも1個の芳香族環を含有する単環式、多環式置換又は未置換環系であり、
Yは、1個以上の基Xを含有してもよくそして少なくとも1個の芳香族環を含有する単環式、多環式置換又は未置換環系又は
【0016】
【化6】

【0017】
(mは0又は1であり、nは0又は1であり、pは0又は1であり、rは0又は1であり、そしてqは0から10である)}で表される化合物またはその塩[但し、環Aが炭素原子数5を有し、そしてCZ^(1)とCZ^(2)との間の二重結合を有する未置換の炭素環である場合(Z^(1)=Z^(2)=0であり、R^(2)=OHであり、r=1である場合、以下の化合物:q=0、Y=水素、E=フェニレン又はナフチレン、E=1個又は2個の塩素原子であるいは2-メチル、4-メチル、4-メトキシ、4-エトキシ、2,6-ジエチル、2-クロロー4-メチル、4-ブロモ、4-シアノ、2,3-ジフロロ、2,6-ジフロロ、2,3,4-トリフロロで置換されたフェニレンである化合物、q=0、Y=フェニル、E=フェニレン、q=1、m=1、n=1、R3=H、E=フェニレン、Y=4-クロロ-フェニル、D=O、Sである化合物、q=1、m=1、n=1、R^(3)=H、E=フェニレン、Y=4-フェニル、D=Oである化合物]は除く]に関する。
・・・
【0024】
式(I)又は式(Ia)におけるアルキル基は、所望に応じて1以上の置換基R’、好ましくはハロゲンにより置換することができる。
【0025】
R’は、互いに独立してH、-CO_(2)R”、-CONHR”、-CR”O、-SO_(2)NR”、-NR”-CO-ハロアルキル、-NO_(2)、-NR”-SO_(2)-アルキル、-SO_(2)-アルキル、-NR”-CO-アルキル、-CN、アルキル、シクロアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノ、アルコキシ、-OH、-SH、アルキルチオ、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノ、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルキルオキシ、アリール、アリールアルキル又はヘテロアロールであり、
R”は、互いに独立して水素、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール又はアミノアルキルである。
【0026】
シクロアルキル基は、環中の1個以上の炭素原子が基X(Xは前記に定義した通りである)で置換されることができる炭素原子2?8個を有する非芳香族環系を表す。
【0027】
アルキルオキシ基は、O-アルキル基を表し、アルキル基は前記に定義した通りである。
【0028】
アルキルチオ基は、S-アルキル基を表し、アルキル基は前記に定義した通りである。
【0029】
ヒドロキシアルキル基は、HO-アルキル基を表し、アルキル基は前記に定義した通りである。
【0030】
ハロアルキル基は、1個から5個、好ましくは3個のハロゲン原子で置換されたアルキル基を表し、アルキル基は前記に定義した通りであり、CF_(3)が好ましい。
【0031】
ハロアルアルコキシ基は、1個から5個、好ましくは3個のハロゲン原子で置換されたアルコキシ基を表し、アルコキシ基は前記に定義した通りであり、OCF_(3)が好ましい。
【0032】
ヒドロキシアルキルアミノ基は、(HO-アルキル)_(2)-N-基又はHO-アルキル-NH-基を表し、アルキル基は前記に定義した通りである。
【0033】
アルキルアミノ基は、-NH-アルキル又はN-ジアルキル基を表し、アルキル基は前記に定義した通りである。
【0034】
アミノアルキル基は、H_(2)N-アルキル、モノアルキルアミノアルキル又はジアルキルアミノアルキル基を表し、アルキル基は前記に定義した通りである。
【0035】
ハロゲン基は、塩素、臭素、フッ素又は沃素であり、フッ素が好ましい。
【0036】
アリール基は、好ましくは炭素原子5?15個を有する芳香族基であり、特にフェニル基である。このアリール基は、所望に応じて1個以上の置換基R’(R’は前記に定義した通りである)、好ましくはハロアルキルオキシで置換することができる。
【0037】
アリールアルキル基は、1個から3個、好ましくは1個のアリール基で置換されたアルキル基を表し、アルキル及びアリール基は前記に定義した通りである。
【0038】
ヘテロアリール基は、少なくとも1個のO、N、S等のヘテロ原子を含む5-又は6員ヘテロ環式基を表す。このヘテロ環式基は、他の環と融合することができる。・・・このヘテロ環式基は、所望に応じて1個以上の置換基R’(R’は前記に定義した通りである)で置換することができる。
【0039】
Eの意義には、1個以上の置換基R’により所望に応じて置換されたアルキル基(アルキルは前記に定義した通りであるかあるいは1個以上の置換基R’により所望に応じて置換されたシクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、又は炭環式芳香族基、例えばフェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、2-ナフチル、アントラセニル、特に1-アントラセニル及び2-アントラセニル及びヘテロ環式芳香族基、例えばN-イミダゾーリル、2-イミダゾーリル、2-チオエニル、3-チオエニル、2-フラニル、3-フラニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、2-ピラニル、3-ピラニル、4-ピラニル、3-ピラゾーリル、4-ピラゾーリル、5-ピラゾーリル、2-ピラジニル、2-チアゾーリル、4-チアゾーリル、5-チアゾーリル、2-オキサゾーリル、4-オキサゾーリル及び5-オキサゾーリルが包含される。また、Eは、炭環式芳香族環又はヘテロ環式芳香族環が1個以上のヘテロアリール環に融合した融合多環式芳香族環系、例えば9H-チオキサンテン-10,10-ジオキサイドも含む。」
(e)「【0040】
本発明はまた、遊離形態であるいは薬学的に認容可能な塩及び生理学的官能性の誘導体の形態の請求項1においてディスクレーマーにより排除した化合物を含む式(I)で表される化合物又は式(Ia)で表される化合物を薬学的に認容可能な稀釈剤又はキャリアととも含む薬学的組成物を提供する。
【0041】
本明細書において使用する用語「生理学的官能性の誘導体」は、それ自身は薬学的に活性ではないが、生体内、すなわち化合物を投与される患者中でその薬学的に活性形態に形質転換する化合物を言う。生理学的官能性の誘導体の例は、本明細書中で以下に記載するもの等のプロドラッグである。
【0042】
他の実施形態において、本発明は、ジヒドロオロテートデヒドロゲナーゼ(DHODH)の抑制に有利である兆候の治療又は予防方法であって、有効量の式(I)又は式(Ia)で表される化合物及びその薬学的に認容可能な塩または生理学的官能性の誘導体を投与することを含む方法に関する。
【0043】
本発明はまた、式(I)又は式(Ia)で表される化合物及びその薬学的に認容可能な塩または生理学的官能性の誘導体をピリミジン生体合成の抑制が有利である疾病の予防及び治療に使用する方法に関する。」
(f)「【0101】
本発明の化合物は、ピリミジン代謝が有益である種々のヒト及び動物疾病、特にヒトの疾病に使用することができる。かかる疾病は、下記の通りである。・・・
【0102】
本発明による化合物及びこれを用いて調製された薬剤は、一般に細胞増殖疾患の治療、免疫疾患及び兆候(例えば炎症性疾患、神経免疫学的疾患、自動免疫疾患等)の治療及び予防に有効である。
【0103】
また、本発明による化合物は、免疫調節薬剤及び抗炎症薬剤の開発、より一般にはピリミジン生体合成が有益である疾患の治療に有効である。
【0104】
また、本発明の化合物は、悪性細胞増殖により引き起こされる疾病、例えば全ての種類の血液性又は固形ガンの治療に有効である。従って、本発明による化合物及びこれを用いて調製された薬剤は、一般に細胞活性、細胞増殖、細胞生存、細胞分化、細胞サイクル、細胞成熟及び細胞死を調整するのにあるいは代謝の系変化、例えば糖、脂質又は蛋白質代謝の変化を誘導するのに有効である。また、これらを使用して、例えば毒性薬剤、放射、免疫治療、成長欠陥、栄養不良、吸収不良、免疫調節不全、貧血等により引き起こされた細胞の消耗又は破壊後の血液細胞成長及び発生(造血促進作用)を含む細胞発生・生成(poiesis)を補助すること又は組織発生及び分解の治療制御及び細胞及び組織維持及び血液細胞恒常性の治療変更を提供することができる。
・・・
【0107】
本発明の化合物は、更にヒト及び動物における原生動物感染によって引き起こされる疾病に使用することができる。・・・
【0108】
本発明の化合物は、更にウイルス感染又は例えばニューモシスティスカリニによるその他の感染にも使用できる。
【0109】
式(I)で表される又は式(Ia)で表される化合物及びその薬学的に認容可能な塩は、動物、好ましくは哺乳類、特に、ヒト、イヌ及びニワトリに、それ自身治療薬として、互いの混合物又は腸管又は非経口使用を認め、そして活性成分として有効投薬量の式(I)で表される又は式(Ia)で表される化合物又はその塩少なくとも1種を薬学的に無害の賦形剤又は添加剤とともに含有する薬学的調製剤の形態の混合物として投与することができる。式(I)で表される又は式(Ia)で表される化合物はまた、対応する化合物と生理学的認容可能な酸又は塩基とを反応させることによって得られるこれらの塩の形態で投与することもできる。」
(g)「【0117】
本発明を、以下の限定しない実施例、表1及び図1により更に説明する。
【0118】
図1は、100μMの濃度で使用した2-(ビフェニル-4-イルカルバモイル)-シクロペント-1-エンカルボン酸によるリンパ球細胞増殖の抑制を示す。
【0119】
以下の実施例は、本発明の化合物の合成の例を示し、そしてこれらのDHODH抑制効果を表す。
【実施例】
【0120】
1 式(I)で表される化合物の合成
式(I)で表される化合物を合成経路(A)又は(B)により得た。・・・
【0121】
化合物1及び2を方法A及びBに記載の通り合成した。化合物13?52を方法Cにより合成した。その他全ての化合物は、方法Bに記載の通り合成した。
・・・
【0127】
4-シアノ-2,5-ジヒドロフラン3-カルボン酸メチルエステル1.1gを濃HCl 6ml中で3時間還流した。この溶液を5℃で一晩放置した。次いで、沈殿物(0.55g)を濾別し、そして水溶液を真空下で蒸発させ、そして残留物をEtOAcで処理した。有機溶液を乾燥し、そして真空下で蒸発して沈殿物0.4gを得た。合わせた沈殿物をシリカゲルで精製して2,5-ジヒドロフラン-3,4-ジカルボン酸(0.8g)を得た。
1a 式(Ia)で表される化合物の合成
化合物11を方法Bに記載の通り合成した。
2 DHODH活性の抑制検定
標準検定混合物は、デシクロユビキノン50μM、ジヒドロオロテート100μM、2,6-ジクロロインドフェノール 60μM並びにDHODH 20mUを含有した。使用した組換え酵素の容量活性は30U/mlであった。測定を、トリスHCl 50mM(KCl 150mM、0.1%トリトンX-100、pH8.0)中で30℃において最終容量1mlで行った。成分を混合し、そしてジヒドロオロテートを添加することによって反応を開始した。反応の経過に続いて600nmで2分間での吸収の減少を分光光度測定した。
【0128】
抑制研究を付加的な可変量の抑制剤の添加を用いて標準検定で行った。IC_(50)値(50%抑制に必要とされる抑制剤の濃度)の決定については、少なくとも5つの異なる抑制濃度を適用した。
・・・
抑制の結果を以下の表1に示す。本発明で使用した化合物がレフノマイドの活性代謝物と匹敵するあるいはよりよいヒト酵素に対する抑制効果を有しているだけでなく、ヒト酵素に対してより高い特異性を有していることがIC_(50)値の比較から明らかである。
【表1】
(表1)
(表は省略)
・・・
【0155】
3.ヒトT細胞の増殖活性
・・・
【0156】
2-(ビフェニル-4-イルカルマモイル)-シクロペント-1-エンカルボン酸(100μM)は、ヒトリンパ球細胞増殖の40%の減少を引き起こし、この化合物が生体内でDHODHに対して抑制効果を有していることを示す(図1参照)。」

(3)本願補正発明の課題
本願補正発明の課題は、「DHODHの抑制を要求する疾病の治療に使用できる別の有効な薬剤を提供すること」(摘記b参照)と記載され、また、「本発明は、ジヒドロオロテートデヒドロゲナーゼ(DHODH)を抑制する新規化合物、これらの製造方法、これらを含有する薬学的組成物及びこれらを疾病の治療及び予防に使用する方法、特にジヒドロオロテートデヒドロゲナーゼ(DHODH)を抑制する利益がある疾病に使用する方法に関する」(摘記a参照)と記載されているので、本願補正発明1の課題は、「ジヒドロオロテートデヒドロゲナーゼ(DHODH)を抑制する活性が期待できる新規物質」の提供であり、本願補正発明14、15、21の課題は「DHODHの抑制を要求する疾病の治療に使用できる有効な薬剤」の提供にあるものと認められる。

(4)請求項1に記載された発明と、発明の詳細な説明に記載された発明との対比
発明の詳細な説明には、請求項1の式(I)に対応する化合物の構造が一応記載され(摘記d参照)、その薬理的な効果についても、一応記載されている(摘記e、f参照)。
しかしながら、請求項1に記載された発明は、新規化合物に関する発明であるから、発明の詳細な説明には、上述のように単に請求項1の式(I)に対応する化学物の構造が記載されているだけではなく、少なくとも、請求項1に記載された式(I)に含まれる化合物がそのすべての範囲において、実際に製造されているか、技術常識からしてこのような化合物を製造できることが当業者に理解できる程度に記載されていることが必要と認められる。
さらに、上述のように本願補正発明1の課題は、その新規化合物がDHODHを抑制する活性が期待できるというものであり、一般に化合物の基本骨格、置換基等が異なれば、その薬理活性も異なるもので、それを予測することは通常困難であるから、薬理効果についても、発明の詳細な説明に、上述のように新規化合物の薬理効果が単に記載されているだけではなく、実際に化合物を製造してDHODHを抑制する効果を実験等で確認するか、技術常識から、実際に製造されてDHODHを抑制する効果を確認した化合物と化学構造が類似し、同様のDHODHを抑制する活性を奏すると期待できる化合物であることが当業者に理解できる程度に記載されていることが必要と認められる。

そこで、本願補正明細書の発明の詳細な説明をみると、実際に請求項1の式(I)に対応する化合物として製造されているのは、実施例の(表1)に示される化合物1?76(ただし、一部の化合物は「本願補正発明1」の範囲外である。)だけである(摘記g参照)。
これらの化合物は、いずれも、請求項1の「式(I)で表される化合物」ではあるが、「環Aがシクロペンテン又はそのうちのCZ_(1)が結合した炭素原子からみて3番目の炭素原子(シクロペンテンの4位)がO、S又はSO_(2)で置換されたものであり、置換基R_(1)を持つ炭素原子はなく、CZ_(1)R_(2)がカルボン酸」である化合物のみに限られ、さらに、「E」、「Y」についても、Eが置換又は非置換のフェニル基であるか、ブチレン又はシクロプロピレンで、かつ、Yが置換又は非置換のフェニル、【化2】で表される化合物のみである。
請求項1の式(I)の定義によれば、環Aの環中の炭素原子はどこでも、またいくつでもO、S又はSO_(2)による置換が可能であり、環中の炭素原子が置換基R_(1)を持つことができるところ、環Aの環中の炭素原子がO、S又はSO_(2)による置換位置は1箇所に限られ、また、R_(1)が置換された化合物は記載されておらず、また、R_(2)としては、H、OR_(6)(R_(6)はシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アルコキシアルキル、アシルメチル、(アシルオキシ)アルキル、非対掌(アシルオキシ)アルキルジエステル又はジアルキルホスフェート)、NHR_(7)(R_(7)はアルキル、アリール、アルコキシ、O-アリール、シクロアルキル又はO-シクロアルキル)の範囲から選択できるところ、R_(2)がOR_(6)でR_(6)がHのみの化合物しか記載されていない。
また、請求項1の式(I)の定義によれば、Yはシクロアルキル、1個以上の基Xを含有してもよくそして少なくとも1個の芳香族環を含有する単環式、多環式置換又は未置換系、又は【化2】で表されるものから選択しうるところ、置換又は非置換のフェニルか、【化2】で表される化合物しか記載されていない。
さらに、請求項1の式(I)の定義によれば、E、基R_(1)、R_(7)、R_(8)はアルキル、アリールが選択でき、アルキルはR’で置換されていてよいことが定義され、そのR’の定義には、C、O、N、Sを含む多種の基が包含されるとともに、アルキル、アルキルアリールも含まれており、この定義では化合物の範囲は、実施例の(表1)で示された実際に製造された化合物のみならず、きわめて広範な範囲の化合物も含まれることになる。
そうすると、請求項1の式(I)で定義されるこのように広範な範囲の化合物においては、技術常識を参酌しても、実際に製造された化合物と環Aの構造や置換基が大きく異なる、例えば、環AのO、S又はSO_(2)による置換の位置が異なる化合物や、CZ_(1)R_(2)をカルボン酸以外のアミドやエステル、アルデヒドに変えた化合物や、E、基R_(7)、R_(8)のR’で示される基がC、O、N、Sを含む多種の基が様々にいくつも結合した化合物についてまで、実際に製造できることが当業者に理解できる程度に、発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。
さらに、実施例に示される実際に製造した化合物については、DHODHを抑制する活性を有することが、発明の詳細な説明の(表1)(摘記g参照)の記載から読み取れるが、このような活性を有する性質を有する化合物であるために、化学構造上、どのような基本骨格、置換基を有していればよいのかその理論的な根拠ついては、発明の詳細な説明に記載されていない。
そうすると、請求項1の式(I)で定義されるこのように広範な範囲の化合物においては、技術常識を参酌しても、実際に製造されてDHODHを抑制する活性が確認された化合物と環Aの構造や置換基が大きく異なる、上述の化合物についてまで、同様にDHODHを抑制する活性をもつとは認められない。
よって、発明の詳細な説明には、請求項1の式(I)で表される化合物として、実際に製造することができる化合物と認められないものが含まれるだけでなく、DHODHを抑制する活性を期待できるとはいえないものまでもが含まれ、DHODHを抑制する活性を期待できる新規化合物を提供するとの本願補正発明1の課題を解決できると当業者が認識できるように記載されていないし、また、技術常識を参酌しても、同様に本願発明1の課題が解決できると当業者が認識できる範囲のものとも認められない。
よって、請求項1に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載された発明を超えるものであって、発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。

(5)請求項14、15、21に記載された発明と、発明の詳細な説明に記載された発明との対比
請求項14は、請求項1の化合物を含む薬学的組成物に関するものであり、請求項15は、医薬品として使用するための請求項1の化合物に関するものであり、さらに、請求項21は、請求項1の化合物より成るDHODH抑制剤に関するものであって、これらはいずれも、請求項1の化合物の薬理作用を利用して、医薬の有効成分として用いる点に技術的特徴を有する医薬用途発明であると認められる。したがって、これら発明が上記(3)で指摘した「DHODHの抑制を要求する疾病の治療に使用できる有効な薬剤の提供」という課題を解決することができるためには、有効成分として用いる請求項1の化合物が入手できるものであり、さらに、この化合物が実際にDHODHを抑制する作用を示し、治療効果を発揮するものでなければならない。
しかし、上記(4)で指摘したように、請求項1の式(I)で表される化合物は、実施例に示される実際に製造した化合物と環Aの構造や置換基が大きく異なるものも含まれており、このようなものについてまでも、実際に製造できるとはいえないから、請求項1の化合物は入手可能でない化合物も含まれていると認められる。
また、化合物の薬理作用は、化合物の化学構造に大きく影響されることが技術常識であるが、上記(4)で指摘したように、請求項1の化合物は、実際にDHODHを抑制する作用を確認して明細書に記載された化合物とは化学構造が大きく異なる多種多様な化合物を包含するから、技術常識を考慮しても、そのようなものまでもがDHODH抑制作用を示し、医薬の有効成分としたときに治療効果を発揮するとは推認できない。
そうすると、本願補正発明14、15、21については、本願補正明細書の発明の詳細な説明に、「DHODHの抑制を要求する疾病の治療に使用できる有効な薬剤」の提供という、本願補正発明14、15、21の課題を解決できると当業者が理解できるように記載されているとは認められず、また、技術常識を考慮しても、このような課題を解決できると当業者が認識できる範囲にあるとも認められない。
よって、請求項14、15、21に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載された発明を超えるものであって、発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。

(6)請求人の主張
請求人は、審判請求書において、「請求項1および請求項2記載される、式(I)で表される化合物は、薬理効果に必要なDHODH抑制活性を有する構造的特徴を有し、さらに、明細書中段落「0155」乃至段落「0157」および図1に、このDHODH抑制活性に基づく細胞増殖抑制効果を有することが記載されている。このことから、上記式(I)で表される化合物またはその薬学的組成物が薬理効果を有する構造をもつことは明確である。」(第9頁第10?18行)と主張する。
請求人の指摘する箇所には、「2-(ビフェニル-4-イルカルバモイル)-シクロペント-1-エンカルボン酸」について記載されており、当該化合物は本願補正発明1からは除外されているものとはいえ、この構造を有する化合物が所定の薬理効果を示すものであることはわかる。
しかしながら、請求項1には、「2-(ビフェニル-4-イルカルバモイル)-シクロペント-1-エンカルボン酸」以外の、さらには、実施例で示された化合物の範囲を遙かに超える範囲の化合物が定義されていることは、上記(4)に示したとおりである。
したがって、「2-(ビフェニル-4-イルカルバモイル)-シクロペント-1-エンカルボン酸」の薬理効果をもって、「式(I)で表される化合物またはその薬学的組成物が薬理効果を有する構造をもつことは明確である」とまではいうことができず、請求人の主張は採用できない。

(7)まとめ
以上のとおり、本件補正後の請求項1、14、15、21の記載は、発明の詳細な説明に記載された発明の範囲を超えるものであって、発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえず、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。

4 むすび
本願補正発明1は特許法第29条第1項第3号に該当し、また、本件補正後の請求項1、14、15、21の記載は同法第36条第6項に規定する要件を満たしていないから、本願補正発明1、14、15、21は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
したがって、上記補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、その余のことを検討するまでもなく、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
平成21年12月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成21年6月19日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?27に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1、14、15、21に係る発明(以下、順に「本願発明1」、「本願発明14」、「本願発明15」、「本願発明21」といい、まとめて「本願発明」ということもある。)は、「第2 1(あ)」に記載したとおりのものである。
ただし、請求項1の「但し、環Aが炭素原子数5を有し、そしてCZ1とCZ2との間の二重結合を有する未置換の炭素環であり、Z1=Z2=0であり」との記載のうち、「Z1=Z2=0」(ゼロ)については、「Z1=Z2=O」(オー)の誤記と、請求項21の「DHOD抑制剤」については、「DHODH抑制剤」の誤記とそれぞれ認める。

第4 原査定の拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は、
[理由1]本願発明1は、本願の優先日前に頒布された刊行物5に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、
[理由2]請求項1、14、15、21の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に適合しない、
という理由を含むものである。

第5 [理由1]についての当審の判断
1 刊行物、その記載事項及び刊行物に記載された発明
原査定における刊行物5、その記載事項は「第2 2(2)」に示したとおりであり、刊行物5に記載された「引用発明」は「第2 2(3)」に示したとおりである。

2 対比・判断
本願発明1と引用発明とを対比すると、両者は、「第2 2(4)」に示したのと同様に、「式

{式中、
Aは、炭素原子5個を有する非芳香族環であり、前記環は、少なくとも1個の二重結合を有しており、Z1はO、R2はOR6、R6がH、Z2はO、rは1、R8が水素}で表される化合物」(2-N-置換カルバモイル-シクロペント-1-エンカルボン酸)である点で一致し、次の点で一応相違する。
(i’)本願発明1においては、N-置換基が「-E-[D_(m)-(CHR^(3))_(n)]_(q)-Y」であり、「環Aが炭素原子数5を有し、そしてCZ1とCZ2との間の二重結合を有する未置換の炭素環であり、Z1=Z2=Oであり、R2=OHであり、r=1である場合、
q=0、Y=フェニル、E=ハロゲン、炭素原子が1から5個のアルキル、炭素原子が1から5個のアルコキシ、フェニル、またはシアノ基で置換されたフェニレンである化合物は除く」のに対し、引用発明においては、N-置換基が

p-Cl-C_(6)H_(5)-CHCH(CH_(3))-

p-Cl-C_(6)H_(5)-CH_(2) 」である点

相違点(i’)について検討すると、「第2 2(4)」に示した相違点(i)とは、「E=非置換のフェニレン」である化合物が本願発明1から除かれていない点以外は同じであるから、「第2 2(5)」で述べたのと同様に、相違点(i’)は実質的な相違点ではない。
また、「第2 2(5)」に示したように、本願補正発明1と引用発明とは化学構造が一致し、本願発明1は本願補正発明1を包含しているのであるから、引用発明も本願発明1に包含されるものである。
したがって、このことからも、本願発明1は引用発明と実質的に相違しないといえる。

3 まとめ
以上のとおり、本願発明1は、本願の優先日前に頒布された刊行物5に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当する。

第6 [理由2]についての当審の判断
1 特許請求の範囲の請求項1、14、15、21の記載
特許請求の範囲の請求項1、14、15、21には、「第2 1(あ)」に記載したとおりの記載がされている。
ただし、請求項1の「但し、環Aが炭素原子数5を有し、そしてCZ1とCZ2との間の二重結合を有する未置換の炭素環であり、Z1=Z2=0であり」との記載のうち、「Z1=Z2=0」(ゼロ)については、「Z1=Z2=O」(オー)の誤記と、請求項21の「DHOD抑制剤」については、「DHODH抑制剤」の誤記とそれぞれ認める。

2 発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明は本件補正によって補正されていないから、「第2 3(2)」に記載したとおりである。

3 本願発明の課題
「第2 3(3)」に示したとおり、本願発明1の課題は、「ジヒドロオロテートデヒドロゲナーゼ(DHODH)を抑制する活性を期待できる新規物質」の提供であり、本願発明14、15、21の課題は「DHODHを要求する疾病の治療に使用できる有効な薬剤」の提供にあるものと認められる。

4 請求項1に記載された発明と、発明の詳細な説明に記載された発明との対比
請求項1は本件補正後の請求項1を包含するから、「第2 3(4)」に示したのと同様に、請求項1に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載された発明を超えるものであって、発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。

5 請求項14、15、21に記載された発明と、発明の詳細な説明に記載された発明との対比
請求項14、15、21は、それぞれ本件補正後の請求項14、15、21を包含するから、「第2 3(5)」に示したのと同様に、請求項14、15、21に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載された発明を超えるものであって、発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。

6 まとめ
以上のとおり、請求項1、14、15、21の記載は、発明の詳細な説明に記載された発明の範囲を超えるものであって、発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえず、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。

第7 むすび
本願発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、本願の特許請求の範囲の請求項1、14、15、21の記載は同法第36条第6項に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができないので、本願は、その余の請求項に係る発明を検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-05-11 
結審通知日 2012-05-15 
審決日 2012-05-28 
出願番号 特願2003-512197(P2003-512197)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C07C)
P 1 8・ 537- Z (C07C)
P 1 8・ 113- Z (C07C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木村 敏康井上 千弥子松本 直子  
特許庁審判長 井上 雅博
特許庁審判官 齋藤 恵
東 裕子
発明の名称 抗炎症剤、免疫調製剤及び増殖防止剤としての新規化合物  
代理人 磯野 道造  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ