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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1279786
審判番号 不服2012-3419  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-02-22 
確定日 2013-10-03 
事件の表示 特願2008- 26546「ボード間接続監視装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 8月20日出願公開、特開2009-187284〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成20年2月6日の特許出願であって、平成23年8月22日付けで拒絶理由の通知がなされ、平成23年10月31日付けで手続補正書の提出がなされ、平成23年11月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成24年2月22日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。



2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成23年10月31日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下「本願発明」という)。

「【請求項1】
第1のボードと第2のボードとの間の接続状況を監視する第1及び第2のプログラマブルデバイスを有するボード間接続監視装置であって、
前記第1のプログラマブルデバイスは、前記第1のボードに搭載され、前記両ボード間を接続する信号線のそれぞれを介して前記第2のプログラマブルデバイスへテスト信号を送信するとともに、前記信号線それぞれの接続状況の検査結果を前記第2のプログラマブルデバイスから受信して出力するように構成され、
前記第2のプログラマブルデバイスは、前記第2のボードに搭載され、前記第1のプログラマブルデバイスから送信された前記テスト信号を受信し、前記信号線それぞれの接続状況を検査するとともに、その検査結果を前記第1のプログラマブルデバイスへ送信するように構成され、
前記両プログラマブルデバイスは、それぞれ前記検査結果に基づいて自身の搭載されたボードにおける前記信号線の接続構成を変更することによって前記両ボード間の接続を維持することができるか否かを判定し、維持することができるものと判定した場合には、前記信号線の接続構成を動的に再構成することを特徴とするボード間接続監視装置。」



3.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-305748号公報(以下、「引用文献」という)には、下記の事項が記載されている。

(あ)「【0007】
【作用】本発明の高信頼性バスにおいては、障害検出手段により、バスの障害を検出すると、障害特定手段により、当該バス中で障害の発生した信号線が特定される。この後、信号切換手段により、当該障害の発生した信号線と前記予備信号線とが切り替えられる。」

(い)「【0014】次に上述した情報伝送部の動作を説明する。通常の動作においては、装置間バス信号線20?2nでA装置とB装置間の情報転送が行なわれている。装置間バス上で障害が発生すると、エラー検出部12の障害検出手段12aでデータエラーを検出する。このエラーは、例えば、パリティエラーとして検出される。即ち、装置間バス信号線20?2nのいずれかをパリティビットの送受信に用いる。エラー検出部12は、エラーを検出すると、診断動作に入る。
【0015】即ち、障害特定手段12bによりバス上のどの信号線に障害が発生したかを特定する診断を行なう。この診断を行なうには、例えば、まず、 all“0”や all“1”のビットパターンを送出する。そして、相手側の装置で正しい値を受信したかを調べる。相手側の装置で受信したビットパターンが送出したビットパターンと異なるビットが障害ビットである。ここで、装置間バス信号線21が障害であったと仮定する。
【0016】次に、エラー検出部12は、エラー検出信号5を出力し、切換制御部13へ装置間バス信号線21が障害であったことを通知する。切換制御部13は、この通知により装置内部バス信号線31と装置間バス信号線21との接続を切り、装置内部バス信号線31を予備信号線2n+1に切り換えるように自装置の信号切換手段13へ切換信号8を出力する。そして、これと同時に相手側のB装置の切換制御部23にも切換通知信号7で予備信号線2n+1へ切り換える旨を通知する。
【0017】これにより、相手側の信号切換手段23も信号切換手段21へ切換信号9で装置内部バス信号線41を予備信号線2n+1に切り換えるように指示する。
このようにして、信号切換手段11及び21の信号切換スイッチ51及び81は、図3に示す状態となる。以後、障害のある装置間バス信号線21は、使用されず、予備信号線2n+1が代わりに使用されるようになる。これにより、バスの障害発生前と同様の動作に戻ることができる。」

(う)「【0020】図5は、信号切換手段の内部構成のさらに他の例を示す図である。図示のように、予備信号線、予備のドライバ及びレシーバは、1つの場合に限らず、複数設けてもよい。この場合、信号切換手段11″及び21″の信号切換スイッチ50′?5n′及び60′?6n′は、3つ以上の端子が必要となる。また、パリティエラーの検出のため、2本以上の信号線が必要となる。これにより、予備信号線2n+1を使用中に、さらに別の装置間バス信号線に障害を生じた場合、予備信号線2n+2を使用することにより対処することができる。尚、設けられているすべての予備信号線を使い果たしたときは、そのバスは使えなくなる。」

(え)図1には、装置間バス信号線で接続されたA装置とB装置のそれぞれが、エラー検出部、切換制御部、信号切換手段を備え、各エラー検出部は障害検出手段と障害特定手段を有することが記載されている。

(お)上記(あ)には、高信頼性バスが、バス中で障害の発生した信号線を特定し、前記障害の発生した信号線と予備信号線とを切り替えるものであることが記載されている。

(か)上記(え)及び(お)の記載から、引用文献には、A装置とB装置との間の装置間バス信号線の中で障害の発生した信号線を特定し、前記障害の発生した信号線を予備信号線に切り替える高信頼性バスが記載されているといえる。

(き)上記(い)の段落【0014】?【0015】には、障害の発生した信号線を特定する診断動作は、A装置のエラー検出部12内の障害特定手段12bにより行われること、及び、該診断動作では、all“0”や all“1”のビットパターンが送出され、相手側の装置で正しい値を受信したかが調べられ、相手側の装置で受信したビットパターンが送出したビットパターンと異なるビットが障害ビットとされることが記載され、障害があった信号線を特定するエラー検出信号がエラー検出部から出力されることが記載されている。

(く)段落【0015】に記載された「相手側の装置」とはA装置に対する相手側の装置であるから「B装置」を意味するものであると解されること、及び上記(き)の記載から、引用文献には、A装置のエラー検出部は、all”0”やall”1”のビットパターンを送出し、B装置で正しい値を受信したかを調べ、前記B装置で受信したビットパターンが送出したビットパターンと異なるビットを障害ビットとし、障害があった信号線を特定してエラー検出信号を出力することが記載されているといえる。

(け)上記(い)の段落【0016】には、A装置の切換制御部は、エラー検出信号を受けると、前記A装置の信号切換手段の装置内部バス信号線を装置間バス信号線から予備信号線に切り替えさせると同時にB装置の切換制御部に切換通知信号を通知することが記載されている。

(こ)上記(い)の段落【0017】には、「相手側の信号切換手段23も信号切換手段21へ切換信号9で装置内部バス信号線41を予備信号線2n+1に切り換えるように指示する」と記載されているが、該記載では、「信号切換手段23」が同じ「信号切換手段」である「信号切換手段21」へ指示することになり文意が不明りょうではあるが、前記「信号切換手段23」の番号「23」については図1にB装置内の「切換制御部23」と記載され、かつ、B装置の「切換制御部23」はそもそもB装置の「信号切換手段21」を制御するものであることを考慮すれば、前記「信号切換手段23」はB装置の「切換制御部23」であることは明らかである。
よって、上記(い)の段落【0017】の記載から引用文献には、B装置の切換制御部は、通知を受けると、前記B装置の信号切換手段の装置内部バス信号線を装置間バス信号線から予備信号線に切り替えさせることが記載されている。

よって、上記(あ)乃至(こ)及び関連図面から、引用文献には下記の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。

「A装置とB装置との間の装置間バス信号線の中で障害の発生した信号線を特定し、前記障害の発生した信号線を予備信号線に切り替える高信頼性バスであって、
A装置とB装置は、それぞれエラー検出部、切換制御部、信号切換手段を備え、
前記A装置の前記エラー検出部は、all”0”やall”1”のビットパターンを送出し、前記B装置で正しい値を受信したかを調べ、前記B装置で受信したビットパターンが送出したビットパターンと異なるビットを障害ビットとし、障害があった信号線を特定してエラー検出信号を出力し、
前記A装置の前記切換制御部は、前記エラー検出信号を受けると、前記A装置の信号切換手段の装置内部バス信号線を装置間バス信号線から予備信号線に切り替えさせると同時に前記B装置の切換制御部に切換通知信号を通知し、
前記B装置の切換制御部は、前記通知を受けると、前記B装置の信号切換手段の装置内部バス信号線を装置間バス信号線から予備信号線に切り替えさせる、
高信頼性バス。」



4.対比
(1)本願発明と引用発明との対応関係について
(ア)引用文献の段落【0001】には、「本発明は、情報処理装置の各モジュール間や各モジュール内で情報の伝送を行なうバスの信頼性の向上を図った高信頼性バスに関するものである。」と記載されていることから、引用発明の「装置」は「ボード」をも含み得るものとなっているので、引用発明の「A装置」、「B装置」は、本願発明の「第1のボード」、「第2のボード」に相当している。

(イ)引用発明の「all”0”やall”1”のビットパターン」は、A装置からB装置へ送信されて、「装置間バス信号線の中で障害の発生した信号線を特定」することに利用されるもの、即ち、装置間バス信号線のそれぞれの信号線に障害が発生していないかの接続状況を検査するものであるところ、本願発明の「テスト信号」も、第1のボードから第2のボードへ送信されて信号線それぞれの接続状況の検査を行うものであるから、引用発明の「all”0”やall”1”のビットパターン」は、本願発明の「テスト信号」に相当している。

(ウ)引用発明の「エラー検出信号」は障害があった信号線を特定するものであり、本願発明の「検査結果」は信号線それぞれの接続状況の検査結果であるから、引用発明の「エラー検出信号」は本願発明の「検査結果」に相当している。

(エ)引用発明では、B装置の信号切換手段に装置間バス信号線が接続された構成となることから、A装置から送出されたビットパターンは、B装置の信号切換手段において受信されるものといえる。

(オ)引用発明の「前記A装置の前記切換制御部は、前記エラー検出信号を受けると、前記A装置の信号切換手段の装置内部バス信号線を装置間バス信号線から予備信号線に切り替えさせる」ことは、A装置においてエラー検出信号に基づき信号線の接続構成を変更することであり、また、引用発明の「前記B装置の切換制御部は、前記通知を受けると、前記B装置の信号切換手段の装置内部バス信号線を装置間バス信号線から予備信号線に切り替えさせる」ことは、「前記通知」がA装置の「エラー検出信号」に対応したものであることを考慮すると、B装置においてエラー検出信号に基づき信号線の接続構成を変更することであるといえる。

(カ)引用発明のA装置に備えられたエラー検出部、切換制御部、信号切換手段は、それぞれ何らかのデバイスで構成されてA装置に搭載されたものであり、また、引用発明のB装置に備えられたエラー検出部、切換制御部、信号切換手段も、それぞれ何らかのデバイスで構成されてB装置に搭載されたものであるといえる。

(キ)上記(ア)、(イ)、(カ)の記載から、本願発明の第1のプログラマブルデバイスと引用発明のA装置に備えられたエラー検出部、切換制御部、信号切換手段とは、「第1のボードに搭載されたデバイスは、両ボード間を接続する信号線のそれぞれを介して第2のボードに搭載されたデバイスへテスト信号を送信するように構成され」ている点で共通している。

(ク)上記(ア)、(エ)、(カ)の記載から、本願発明の第2のプログラマブルデバイスと引用発明のB装置に備えられたエラー検出部、切換制御部、信号切換手段とは、「第2のボードに搭載されたデバイスは、第1のボードに搭載されたデバイスから送信されたテスト信号を受信するように構成され」ている点で共通している。

(ケ)上記(ウ)、(オ)、(キ)、(ク)の記載から、本願発明と引用発明は、「第1及び第2のボードに搭載されたデバイスは、それぞれ検査結果に基づいて信号線の接続構成を動的に再構成する」点で共通しているといえる。

(コ)本願発明の「ボード間接続監視装置」は、それぞれの信号線の接続状況の検査と、検査結果に基づく信号線の接続構成の変更を行うものであるところ、上記(ウ)、(オ)に記載したように引用発明も装置間バス信号線のそれぞれの接続状況の検査と検査結果に基づく信号線の接続構成の変更を行うものであること、及び、上記(キ)、(ク)の記載を鑑みれば、引用発明の「高信頼性バス」は、「第1のボードと第2のボードとの間の接続状況を監視する第1及び第2のボードに搭載されたデバイスを有するボード間接続監視装置」と呼び得るものである。


(2)本願発明と引用発明の一致点について
上記の対応関係から、本願発明と引用発明は、

「第1のボードと第2のボードとの間の接続状況を監視する第1及び第2のボードに搭載されたデバイスを有するボード間接続監視装置であって、
前記第1のボードに搭載されたデバイスは、前記両ボード間を接続する信号線のそれぞれを介して前記第2のボードに搭載されたデバイスへテスト信号を送信するように構成され、
前記第2のボードに搭載されたデバイスは、前記第1のボードに搭載されたデバイスから送信された前記テスト信号を受信するように構成され、
前記第1及び第2のボードに搭載されたデバイスは、それぞれ検査結果に基づいて自身の搭載されたボードにおける前記信号線の接続構成を変更することによって、前記信号線の接続構成を動的に再構成することを特徴とするボード間接続監視装置。」

の点で一致している。


(3)本願発明と引用発明の相違点について
本願発明と引用発明とは、下記の点で相違する。
(相違点1)
本願発明の第1のボードに搭載されたデバイス及び第2のボードに搭載されたデバイスは「プログラマブルデバイス」であるのに対し、引用発明はそのようなデバイスで構成されてはいない点。

(相違点2)
本願発明の第1のボードに搭載されたデバイスは、「前記信号線それぞれの接続状況の検査結果を前記第2のプログラマブルデバイスから受信して出力する」ものであり、第2のボードに搭載されたデバイスは、「前記信号線それぞれの接続状況を検査するとともに、その検査結果を前記第1のプログラマブルデバイスへ送信する」ものであるのに対し、引用発明は接続状況の検査をどちらのデバイスで行っているか定かではないため、そのような構成とはなっていない点。

(相違点3)
本願発明の第1及び第2のボードに搭載されたデバイスは、「それぞれ前記検査結果に基づいて自身の搭載されたボードにおける前記信号線の接続構成を変更することによって前記両ボード間の接続を維持することができるか否かを判定し、維持することができるものと判定した場合には、前記信号線の接続構成を動的に再構成する」ような制御を行うものであるのに対し、引用発明はそのような判定による制御を行っていない点。



5.当審の判断
(1)相違点1について
接続状況を監視するためのデバイスとしてFPGAのようなプログラマブルデバイスを用いることは、例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-43202号公報(段落【0036】乃至【0038】及び図9には、CPU113から配線の断線を検査するための信号Sb1が送信されることが記載され、段落【0049】には、前記CPU113をFPGA117で構成できることが記載されている)や特開2002-9156号公報(図12には、FPGA間の配線の欠陥を救済する構成として、一方のFPGA2においてテストデータを生成して送信し、他方のFPGAにおいて受信したテストデータを期待値と比較する構成が記載されている)に記載されているように周知技術にすぎない。
してみると、引用発明の接続状況を監視するデバイスとして、FPGAのようなプログラマブルデバイスを用いることは、当業者が格別困難なくなし得たことである。


(2)相違点2について
引用文献には、上記(い)の段落【0015】に、「障害特定手段12bによりバス上のどの信号線に障害が発生したかを特定する診断を行なう。この診断を行なうには、例えば、まず、 all“0”や all“1”のビットパターンを送出する。そして、相手側の装置で正しい値を受信したかを調べる。相手側の装置で受信したビットパターンが送出したビットパターンと異なるビットが障害ビットである。」ことが記載されているので、引用文献では、A装置ではテスト信号に相当するビットパターンを送信し、B装置では該ビットパターンを受信するものであることは明らかであるものの、「相手側の装置で正しい値を受信したかを調べる」こと、即ち、それぞれの信号線でテスト信号を正しく受信したかを検査することをA装置とB装置のどちらの装置で行っているかは定かでない。

しかしながら、信号線の接続状況を監視するために、一方からテスト信号を送信し、テスト信号を受信した他方で接続状況の検査を行い、該検査結果を一方へ返信することは、上記特開2005-43202号公報(段落【0036】乃至【0038】及び図9には、基板1から配線の断線を検査するための信号Sb1が送信され、基板1からの信号を受信した基板2では故障検査処理を行って検査結果信号が送信され、該検査結果信号は基板1で受信されることが記載されている)や上記特開2002-9156号公報(段落【0024】には、FPGA2内に欠陥データ記憶回路を搭載することが記載され、図12には、FPGA間の配線の欠陥を救済する構成として、一方のFPGA2においてテストデータを生成して送信し、他方のFPGAにおいて受信したテストデータを期待値と比較して生成した欠陥データを欠陥データ記憶回路へ送信することが記載されている)に記載されているように周知技術にすぎない。

してみると、信号線の接続状況を監視する引用発明に周知技術を適用することで、B装置側では受信したテスト信号に相当するビットパターンからそれぞれの信号線でテスト信号を正しく受信したかを検査した検査結果をA装置へ返信し、A装置では該検査結果を受信するようにすること、換言すれば、引用発明において相違点2の「第1のボードに搭載されたデバイスは、『前記信号線それぞれの接続状況の検査結果を前記第2のプログラマブルデバイスから受信して出力する』ものであり、第2のボードに搭載されたデバイスは、『前記信号線それぞれの接続状況を検査するとともに、その検査結果を前記第1のプログラマブルデバイスへ送信する』ものである」とするような構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。


(3)相違点3について
引用文献には、上記(う)の段落【0020】に、「図5は、信号切換手段の内部構成のさらに他の例を示す図である。図示のように、予備信号線、予備のドライバ及びレシーバは、1つの場合に限らず、複数設けてもよい。この場合、信号切換手段11″及び21″の信号切換スイッチ50′?5n′及び60′?6n′は、3つ以上の端子が必要となる。また、パリティエラーの検出のため、2本以上の信号線が必要となる。これにより、予備信号線2n+1を使用中に、さらに別の装置間バス信号線に障害を生じた場合、予備信号線2n+2を使用することにより対処することができる。尚、設けられているすべての予備信号線を使い果たしたときは、そのバスは使えなくなる。」と記載されているので、障害のある信号線の数が予備信号線の数より多い場合には対処することができないことが示唆されているといえる。

してみると、引用文献には検査結果に基づいて接続を維持することができるか否かを判定することが明記されてはいないものの、上記引用文献の記載に接した当業者であれば、引用発明において、エラー検出信号から特定される障害があった信号線の数が切り替えできる予備信号線の数より多いかを判断し、多くなければ予備信号線に切り替えることで動作を継続できると判断して、信号線の接続構成を動的に再構成することは、容易に想到し得たものであるといえる。

よって、引用発明において相違点3の「それぞれ前記検査結果に基づいて自身の搭載されたボードにおける前記信号線の接続構成を変更することによって前記両ボード間の接続を維持することができるか否かを判定し、維持することができるものと判定した場合には、前記信号線の接続構成を動的に再構成する」ように構成することは、当業者にとって容易であったといえる。


(4)本願発明の作用効果について
審判請求人は、審判請求書の【請求理由】3.(3.2)(3.2.1)において、
「上記(2.2)において『引用文献1には、接続構成を動的に再構成することが開示されている』と指摘されていますが、引用文献1に記載された『予備信号線を使用するようにスイッチで切り替えること』が『接続構成を再構成すること』に該当するとしても、引用文献1には『プログラマブルデバイスが』接続構成を動的に再構成することが記載されているわけではありません。」、「引用文献2においては、プログラマブルデバイスが、『故障した配線を特定する』ことが記載されているに過ぎず、プログラマブルデバイスが『故障した配線の接続構成を動的に再構成する』ことが記載されているわけではありません。」、「したがって、引用文献1と引用文献2とを組み合わせたところで、『プログラマブルデバイスを用いて故障した配線を特定するとともに、当該プログラマブルデバイス自身が接続構成を動的に再構成することで故障した配線と予備配線とを切り替える』という本願発明1の構成は得られず、『接続状況の検査および接続構成の動的再構成という2つの機能が単一のプログラマブルデバイスを共用して実現される』本願発明1の技術的特徴を導き出すことはできません。」
と主張している。

そこで、上記主張について検討する。
上記「引用文献1」とされた当審決の引用文献には、そもそもプログラマブルデバイスを用いて構成することが記載されてはいないものの、引用発明の「前記B装置で正しい値を受信したかを調べ」ることは「接続状況の検査」を行うことに相当し、上記4.(1)(ケ)に記載したように、引用発明は「前記信号線の接続構成を動的に再構成する」ものであることから、引用発明も「接続状況の検査および接続構成の動的再構成という2つの機能」を有しているといえる。
また、「接続状況の検査および接続構成の動的再構成」にFPGAのようなプログラマブルデバイスを用いることは、上記5(1)、(2)に記載したように周知技術である。
してみると、引用発明の「接続状況の検査および接続構成の動的再構成という2つの機能」をプログラマブルデバイスを用いて実現することには格別の困難性は認めらないので、上記主張を採用することはできない。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明、引用文献に記載された事項及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。



6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-02 
結審通知日 2013-08-06 
審決日 2013-08-21 
出願番号 特願2008-26546(P2008-26546)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和田 財太間野 裕一  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 山崎 達也
田中 秀人
発明の名称 ボード間接続監視装置  
代理人 加藤 朝道  

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