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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60H
管理番号 1279805
審判番号 不服2012-19159  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-01 
確定日 2013-10-03 
事件の表示 特願2008-161419号「車両用空調装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年1月7日出願公開、特開2010-904号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成20年6月20日の出願であって、平成24年8月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成24年10月1日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
その後、当審において、平成25年5月8日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、平成25年7月16日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年7月16日付けで手続補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
「空気が流れる空調ケーシング(2)と、前記空調ケーシング(2)内に配置され、かつ前記空気を加熱する熱交換コア(51)を有する加熱用熱交換器(5)とを備える車両用空調装置であって、
前記熱交換コア(51)は、
圧縮機(7)から吐出された冷媒が流通し、この流通した冷媒により前記空気を加熱する複数本のチューブ(56)と、
通電により発熱して前記空気を加熱する電気発熱体(14)と、を備え、
前記複数本のチューブ(56)は、それぞれ、前記空気の流れ方向に交差する方向に延びるように形成されており、
前記電気発熱体(14)と前記複数本のチューブ(56)とが積層されて前記熱交換コア(51)を構成しており、
前記熱交換コア(51)には、前記複数本のチューブ(56)の外表面に配置され、かつ前記冷媒が前記空気に放熱することを促進する熱交換フィン(57)が設けられており、
さらに、当該車両用空調装置は、
外気温を検出する温度センサ(91)と、
前記温度センサ(91)の検出温度が所定温度以下であるとき、および前記加熱用熱交換器(5)に冷媒が流れていないときの少なくとも一方のときに、前記電気発熱体(14)に通電して前記電気発熱体(14)を発熱させる通電制御手段(S100、S110、S130)と、
前記空調ケーシング(2)内に配置され、走行用エンジンのエンジン冷却水を熱源として前記空気を加熱するヒータ(4)と、を備えており、
前記電気発熱体(14)は、PTCヒータ素子であり、
前記加熱用熱交換器(5)は、前記ヒータ(4)の空気の流れ下流側に配置されていることを特徴とする車両用空調装置。」

3.引用例
これに対して、当審で通知した拒絶理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平11-235919号公報(以下「引用例1」という。)及び特開2001-97028号公報(以下「引用例2」という。)には、それぞれ以下の各事項が記載されている。

[引用例1について]
(1a)「【請求項1】 ファン(F)により取り入れた空気を車室内に向けて送るユニットケース(11)と、
前記ユニットケース(11)の風路(13)内に配置されるエバポレータ(19)と、
前記風路(13)内で前記エバポレータ(19)の空気流れ下流側に配置される第1コンデンサ(16)と、
前記風路(13)外に配置されると共に前記第1コンデンサ(16)に接続される第2コンデンサ(15)と、
前記第1コンデンサ(16)から流下した冷媒を断熱膨張する冷媒膨張部材(18)と、
コンプレッサ(14)から吐出された冷媒をバイパス回路(21)を介して前記第1コンデンサ(16)に導く暖房運転用回路と、前記冷媒を前記第2コンデンサ(15)に導く冷房運転用回路とを選択的に切り替える回路切換弁(30)と、
前記第1コンデンサ(16)の空気流れ上流側に配置される電気加熱ヒータ(35)と、を備えたヒートポンプ式自動車用空気調和装置において、
前記コンプレッサ(14)の吐出圧力が10kg/cm2(ゲージ圧)以上になったときに、前記電気加熱ヒータ(35)を通電状態から作動停止状態に切り換える制御手段(39)を有することを特徴とするヒートポンプ式自動車用空気調和装置。
【請求項2】 前記風路(13)内で、前記エバポレータ(19)の空気流れ下流側かつ前記電気加熱ヒータ(35)の空気流れ上流側位置に、エンジン冷却水が内部を流通するヒータコア(36)を配置したことを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ式自動車用空気調和装置。」

(1b)「【0010】本発明は、電気加熱ヒータを所定の制御の下で作動させることにより、即暖性および暖房性能を高めるとともに、乗員の温感を快適な状態に維持しつつ通常のヒートポンプによる暖房運転に移行し得るようにしたヒートポンプ式自動車用空気調和装置を提供することを目的とする。」

(1c)「【0017】このヒートポンプ式空気調和装置は、ファンFにより取り入れた空気を車室内に向けて送るユニットケース11を有し、このユニットケース11の風路13内で、インテークドア(図示せず)やブロワモータMを有する空気導入部であるインテークユニット12から導入された空気の流れ方向(白抜き矢印で示す)の上流側から順に、エバポレータ19と第1コンデンサ16とが配置されている。また、風路13外には、第1コンデンサ4に接続される第2コンデンサ15が配置されている。風路13内の第1コンデンサ16は主として暖房運転時に機能し、風路13外の第2コンデンサ15は主として冷房運転時に機能する。」

(1d)「【0022】また、風路13内の第1コンデンサ16の空気流れ上流側近傍には、電気加熱ヒータとしてのPTCヒータ35が設置されている。・・・
【0023】さらに、風路13内には、エバポレータ19の下流側かつPTCヒータ35の上流側位置に、エンジン冷却水が内部を流通するヒータコア36を配置してある。エンジン冷却水は温水コック37を通ってヒータコア36に導入される。・・・
【0024】前記PTCヒータ35に通電すれば、ヒータコア36を通過した空気が加熱され、第1コンデンサ16に送り込まれる空気の温度が上昇することになる。PTCヒータ35の通電状態(オン)と作動停止状態(オフ)との切換制御はマイクロコンピュータなどから構成される制御手段39によりなされており、特に、制御手段39は、コンプレッサ14の吐出圧力Pdが10kg/cm2(ゲージ圧)以上のときに、PTCヒータ35をオン状態からオフ状態に切り換え制御している。」

(1e)「【0029】次に、実施の形態の作用を説明する。
《暖房運転》暖房運転の開始時に、外気温度が低い場合(例えば、-10℃?+5℃程度)とか、エンジン始動直後、エンジン低負荷時あるいはアイドリング時のようにエンジン冷却水温が暖房用として使用できない程度に低い場合には、四方弁30を図1に示すように作動させて冷媒を回収する。さらに、制御手段39により、PTCヒータ35を通電状態(オン)とする。」

(1f)「【0049】
【発明の効果】以上説明したように請求項1に記載の発明によれば、コンプレッサの吐出圧力が10kg/cm2(ゲージ圧)以上になったときに、電気加熱ヒータを通電状態から作動停止状態に切り換えるようにしたので、第1コンデンサに入る空気の温度を昇温して起動時や低負荷時の暖房性能不足を補うことができるのみならず、乗員の温感を快適な状態に維持しつつ、通常のヒートポンプによる暖房運転に移行することができる。」

以上の記載によると、引用例1には、
「ファン(F)により取り入れた空気を車室内に向けて送るユニットケース(11)と、前記ユニットケース(11)の風路(13)内に配置されるエバポレータ(19)と、前記風路(13)内で前記エバポレータ(19)の空気流れ下流側に配置される第1コンデンサ(16)と、前記風路(13)外に配置されると共に前記第1コンデンサ(16)に接続される第2コンデンサ(15)と、前記第1コンデンサ(16)から流下した冷媒を断熱膨張する冷媒膨張部材(18)と、コンプレッサ(14)から吐出された冷媒をバイパス回路(21)を介して前記第1コンデンサ(16)に導く暖房運転用回路と、前記冷媒を前記第2コンデンサ(15)に導く冷房運転用回路とを選択的に切り替える回路切換弁(30)と、前記第1コンデンサ(16)の空気流れ上流側に配置される電気加熱ヒータ(35)と、を備えたヒートポンプ式自動車用空気調和装置において、
前記風路(13)内で、前記エバポレータ(19)の空気流れ下流側かつ前記電気加熱ヒータ(35)の空気流れ上流側に、エンジン冷却水が内部を流通するヒータコア(36)を配置し、
前記電気加熱ヒータ(35)はPTCヒータであり、暖房運転の開始時に、外気温度が低い場合には、制御手段(39)により、PTCヒータを通電状態とするヒートポンプ式自動車用空気調和装置。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用例2について]
(2a)「【請求項1】 自動車室内の暖房に供する為の空気を流通させる為のダクトと、このダクト内に送風する為の送風機と、このダクト内に設けられて上記空気を加温する為の暖房用熱交換器とを備え、この暖房用熱交換器は、互いに間隔をあけて配置した1対のヘッダと、それぞれの両端開口部をこれら各ヘッダ内に通じさせた複数の伝熱管を有し、上記両ヘッダ同士の間に設けられたコア部と、このコア部を構成する何れかの伝熱管同士の間に配置された電熱ヒータとを備えたものである自動車用暖房装置に於いて、上記ダクト内で上記コア部の風下側部分に設けられ、このコア部を通過した空気の温度を検出する温度センサと、この温度センサの検出信号に基づいて上記電熱ヒータへの通電を制御する制御器とを備え、この制御器は、上記コア部を通過した空気の温度が高い場合に、上記電熱ヒータへの通電量を減少させるか若しくはこの電熱ヒータへの通電を停止する事を特徴とする自動車用暖房装置。
【請求項2】 外気温度を検出する外気温度センサの検出信号を制御器に入力し、この制御器は、外気温度が所定値未満の場合にのみ電熱ヒータへの通電を可能とする、請求項1に記載した自動車用暖房装置。
・・・
【請求項7】 暖房用熱交換器がヒートポンプサイクルを構成するコンデンサであり、各伝熱管内を流れる流体が冷媒蒸気である、請求項1?5の何れかに記載した自動車用暖房装置。」

(2b)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、自動車室内の暖房をする為の自動車用暖房装置の改良に関する。特に本発明は、空気を加温する為の暖房用熱交換器として、主としてエンジンの冷却水によりこの空気を加温するが、この冷却水の温度が低い場合には電熱ヒータによりこの空気の加温を行なう構造のものを使用した自動車用暖房装置で、バッテリーに過度の負担をかける事のない構造を実現するものである。」

(2c)「【0011】先ず、本発明の自動車用暖房装置に組み込む暖房用熱交換器1a並びにこの暖房用熱交換器1aを構成する電熱ヒータ5aに就いて、図1?8により説明する。この暖房用熱交換器1aは、図1に示す様に、互いに間隔をあけて配置した1対のヘッダ7a、7b同士の間に設けられたコア部2を有する。このコア部2は、それぞれの両端開口部をこれら各ヘッダ7a、7b内に通じさせた複数の伝熱管3、3と、隣り合う伝熱管3、3同士の間に挟持したコルゲート型のフィン4、4とから成る。そして、これら各伝熱管3、3の両端開口を、上記各ヘッダ7a、7b内に通じさせている。更に、上記コア部2を構成する何れかの伝熱管3、3同士の間に、それぞれがプレート状である複数枚(図示の例では3枚)の電熱ヒータ5a、5aを配置している。そして、これら各電熱ヒータ5a、5aの両面と隣り合う伝熱管3、3との間にも、それぞれフィン4、4を挟持している。・・・」

(2d)「【0022】特に、本発明の自動車用空気調和装置の場合には、・・・又、図示の例の場合には上記制御器31に、自動車室外の外気温度を検出する外気温度センサ32の検出信号と、・・・とを入力している。・・・」

(2e)「【0038】更に、図19は、請求項7に対応する、本発明の実施の形態の第6例を示している。本例の場合には、暖房用熱交換器1cがヒートポンプサイクルを構成するコンデンサであり、各伝熱管3、3内を流れる流体が冷媒蒸気である。この様な暖房用熱交換器1cは、例えば電気自動車の室内暖房に使用する事が考えられる。本発明の自動車用暖房装置は、この様な暖房用熱交換器1cを組み込んだ構造でも実施できる。この場合に、ヒートポンプサイクルに組み込むコンプレッサが小型であっても、低温時に十分な暖房効果を得られる。尚、従来は、図20に示す様な構造により、ヒートポンプサイクルを構成するコンデンサ45に補助ヒータ46を組み付けていたが、この様な従来構造に比べて、図19に示した構造は、全体を小型・軽量化できる。」

以上の記載によると、暖房用熱交換器は、ヒートポンプサイクルを構成するコンデンサであり、
「互いに間隔をあけて配置した1対のヘッダ7a、7b同士の間に設けられたコア部2を有し、このコア部2は、それぞれの両端開口部をこれら各ヘッダ7a、7b内に通じさせた複数の伝熱管3、3と、隣り合う伝熱管3、3同士の間に挟持したコルゲート型のフィン4、4とから成り、そして、これら各伝熱管3、3の両端開口を、上記各ヘッダ7a、7b内に通じさせ、更に、上記コア部2を構成する何れかの伝熱管3、3同士の間に、それぞれがプレート状である複数枚の電熱ヒータ5a、5aを配置し、そして、これら各電熱ヒータ5a、5aの両面と隣り合う伝熱管3、3との間にも、それぞれフィン4、4を挟持し、各伝熱管3、3内を冷媒蒸気が流れる」構成であることが記載されている。

4.対比
本願発明と引用発明(「暖房運転」時)とを対比すると、
引用発明の「ユニットケース」、「第1コンデンサ」、「ヒータコア」、「電気加熱ヒータ」、「PTCヒータ」、「外気温度」、「制御手段」及び「ヒートポンプ式自動車用空気調和装置」は、それぞれ本願発明の「空調ケーシング」、「加熱用熱交換器」、「ヒータ」、「電気発熱体」、「PTCヒータ素子」、「外気温」、「通電制御手段」及び「車両用空調装置」に相当し、
また、引用発明の「第1コンデンサ」は、空気を加熱することは明らかであり、
引用発明の「外気温度が低い場合」とは、本願発明でいう「外気温」が「所定温度以下であるとき」に相当し、
引用発明の「ヒータコア」は、エンジン冷却水が内部を流通することより、本願発明の「走行用エンジンのエンジン冷却水を熱源として空気を加熱する」ものといえ、
引用発明の「電気加熱ヒータ」は、本願発明でいう「通電により発熱して空気を加熱する」ことは明らかであり、
引用発明において、「電気加熱ヒータ」は「第1コンデンサ」の空気流れ上流側に配置され、また、「ヒータコア」は「電気加熱ヒータ」の空気流れ上流側に配置されていることから、「第1コンデンサ」及び「電気加熱ヒータ」はともに、「ヒータコア」の空気流れ下流側に配置されているといえ、そして、本願発明においても、「電気発熱体」は「加熱用熱交換器」の熱交換コアに備えられるものであるので、「加熱用熱交換器」及び「電気発熱体」はともに、ヒータの空気の流れ下流側に配置されているといえることより、この点においては本願発明と引用発明とは一致している。
よって、両者は、
「空気が流れる空調ケーシングと、前記空調ケーシング内に配置され、かつ前記空気を加熱する加熱用熱交換器とを備える車両用空調装置であって、
通電により発熱して前記空気を加熱する電気発熱体を備え、
さらに、当該車両用空調装置は、
外気温が所定温度以下であるときに、前記電気発熱体に通電して前記電気発熱体を発熱させる通電制御手段と、
前記空調ケーシング内に配置され、走行用エンジンのエンジン冷却水を熱源として前記空気を加熱するヒータと、を備えており、
前記電気発熱体は、PTCヒータ素子であり、
前記加熱用熱交換器及び前記電気発熱体はともに、前記ヒータの空気の流れ下流側に配置されている車両用空調装置。」
である点で一致し、以下の各点で相違する。

相違点1;本願発明では、加熱用熱交換器は、熱交換コアを有し、熱交換コアは、圧縮機から吐出された冷媒が流通し、この流通した冷媒により空気を加熱する複数本のチューブと、電気発熱体と、を備え、前記複数本のチューブは、それぞれ、前記空気の流れ方向に交差する方向に延びるように形成されており、前記電気発熱体と前記複数本のチューブとが積層されて前記熱交換コアを構成しており、前記熱交換コアには、前記複数本のチューブの外表面に配置され、かつ前記冷媒が前記空気に放熱することを促進する熱交換フィンが設けられているのに対し、引用発明では、電気加熱ヒータは第1コンデンサとは別体であり、また、第1コンデンサの具体的な構成が特定されていない点。

相違点2;本願発明では、外気温を温度センサにより検出するのに対し、引用発明では、外気温度の検出手段が特定されていない点。

相違点3;本願発明では、電気発熱体に通電するのを、外気温が所定温度以下であるときに加え、加熱用熱交換器に冷媒が流れていないときとしているのに対し、引用発明では、電気加熱ヒータ(PTCヒータ)の通電状態には、そのような特定がない点。

5.判断
上記各相違点について検討すると、
・相違点1について
引用例2に記載された暖房用熱交換器において、「コア部」、「伝熱管」、「電熱ヒータ」、「フィン」、「冷媒蒸気」及び「暖房用熱交換器」は、それぞれ本願発明の「熱交換コア」、「チューブ」、「電気発熱体」、「熱交換フィン」、「圧縮機から吐出された冷媒」及び「加熱用熱交換器」に相当し、引用例2の複数の「伝熱管」は、本願発明でいう「空気の流れ方向に交差する方向に延びるように形成され」ていることは明らかであり、引用例2の「電熱ヒータ」は「伝熱管」同士の間に配置されていることから、「電熱ヒータ」と複数の「伝熱管」とは、本願発明でいう「積層」されているものといえ、引用例2の「フィン」は、冷媒蒸気が空気に放熱することを促進することは明らかであるので、引用例2に記載された暖房用熱交換器は、上記相違点1の本願発明に係る加熱用熱交換器の構成を備えているものといえる。そして、引用例2に記載された暖房用熱交換器は、上記構成により記載事項(2e)にあるように、全体を小型・軽量化するものである。
また、熱交換器において、小型・軽量化は一般に求められる課題であり、引用発明においても、別体に設けられている電気加熱ヒータと第1コンデンサとを一体化することにより、小型・軽量化が図れることは当業者が容易に想到し得る事項である。
そして、引用例2に記載された暖房用熱交換器は、自動車室内を暖房するためのヒートポンプサイクルを構成するコンデンサであり、低温時に十分な暖房効果を得るために電熱ヒータを備えている点において引用発明と共通するものである(記載事項(1b)、(1e)、(2a)、(2b)参照。)ことから、
引用発明の第1コンデンサ及び電気加熱ヒータにおいて、小型・軽量化するために、引用例2に記載された暖房用熱交換器の構成を採用することにより一体化し、上記相違点1の本願発明のようになすことは、当業者が容易になし得たことである。

・相違点2について
引用発明は、外気温度が低い場合に制御手段によりPTCヒータを通電状態とするものであり、このような制御手段により温度に応じて制御するために温度センサを用いることは、本願出願前周知の技術(例えば、引用例2の記載事項(2d)参照。)である。
よって、引用発明において、上記周知の技術を適用し、上記相違点2の本願発明のようになすことは、当業者が容易になし得たことである。

・相違点3について
引用発明において、電気加熱ヒータは、記載事項(1f)にあるように、第1コンデンサに入る空気の温度を昇温して起動時や低負荷時の暖房性能不足を補うものではあるが、暖房運転時に何らかの要因によりヒートポンプサイクルの運転を停止している等、第1コンデンサに冷媒が流れていないときに、暖房機能を維持するために上記電気加熱ヒータを通電状態とすることは、当業者が容易に想到し得る事項と認められる。
また、冷凍サイクル及び補助ヒータを備えた自動車用空調装置の暖房運転時において、冷凍サイクルによる暖房が停止しているときに、補助ヒータのみにより暖房運転することは、本願出願前周知の技術でもある(例えば、特開平5-178069号公報の段落【0014】、特開2003-136945号公報の段落【0026】及び【0037】参照。)。
よって、引用発明において、上記周知の技術も考慮し、上記相違点3の本願発明のようになすことは、当業者が容易になし得たことである。

なお、請求人は、平成25年7月16日付け意見書において、「本願発明では、加熱用熱交換器に冷媒が流れていない状態で、電気発熱体を発熱させるようにしている。これによれば、加熱用熱交換器に流れる冷媒に熱を奪われることがないので、暖房の即効性を得ることができる。」と主張しているが、上記作用効果については本願明細書に何ら記載されているものではなく、請求人の上記主張は、本願明細書の記載に基づかない主張である。また、本願明細書の記載によれば、段落【0060】に記載されているように、暖房モードでは、基本的には「電磁弁12b」は開弁するもの、すなわち加熱用熱交換器に冷媒が流れる状態とされるものであり、本願発明において、どのような条件で上記「電磁弁12b」が閉弁され、加熱用熱交換器に冷媒が流れないようにされるかは特定されているものではない(本願明細書にもそれに係る記載はない。)。よって、本願発明において、電気発熱体の発熱が、上記「加熱用熱交換器に流れる冷媒に熱を奪われることがない」、すなわち冷媒の温度が低い状態において行われることが特定されているものではないことより、請求人の上記主張は、特許請求の範囲の記載に基づかない主張であり、採用できるものではない。

したがって、本願発明は、引用発明、引用例2に記載された発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-02 
結審通知日 2013-08-06 
審決日 2013-08-20 
出願番号 特願2008-161419(P2008-161419)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B60H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松井 裕典小野田 達志  
特許庁審判長 竹之内 秀明
特許庁審判官 鳥居 稔
平上 悦司
発明の名称 車両用空調装置  
代理人 特許業務法人ゆうあい特許事務所  

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