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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1279808
審判番号 不服2012-22631  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-11-15 
確定日 2013-10-03 
事件の表示 特願2007-331447「健康管理支援システム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 7月16日出願公開、特開2009-157415〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は平成19年12月25日の出願であって,平成24年5月11日付けの拒絶理由通知に対して,同年7月17日に意見書と手続補正書が提出されたが,同年8月9日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年11月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成24年7月17日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「 【請求項1】
対象者の健康状態を表す健康指標を測定する健康指標測定手段と,前記対象者が使用するネットワーク端末と,健康管理装置とがネットワークを介して接続され,
対象者が前記ネットワーク端末を用いて入力した設定値が前記ネットワーク経由で入力されると前記設定値に基づいて前記対象者の体重の減量目標値を設定する目標値設定手段,前記健康指標測定手段から前記ネットワーク経由で前記健康指標を取得する健康指標取得手段,前記健康指標取得手段が取得した前記健康指標に基づいて前記減量目標値の減量を行う場合の運動による減量行動と食事による減量行動との割合を設定する行動割合設定手段,前記行動割合設定手段で設定された運動による減量行動と食事による減量行動との割合を前記ネットワーク経由で前記ネットワーク端末に出力する提示手段として,コンピュータを機能させるプログラムが,前記健康管理装置に組み込まれ,
コンピュータに前記プログラムを実行させることによって実現された前記目標値設定手段と前記健康指標取得手段と前記行動割合設定手段と前記提示手段とを前記健康管理装置が備え,
前記健康指標取得手段は,前記健康指標として血圧又は血糖値のうち少なくとも何れか1つを取得し,
前記行動割合設定手段は,血圧値が高いほど又は血糖値が高いほど,食事による減量行動の割合が高くなるように,運動による減量行動と食事による減量行動との割合を設定することを特徴とする健康管理支援システム。」

3.引用例
(1)引用例1
原査定の拒絶理由通知で引用された「特開2004-227522号公報」(以下「引用例1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,自己健康管理や生活習慣病の予防や医師が処方した運動療法の管理に用いる補助的なシステムであり,特に,日常活動における身体の消費カロリーを計測して,摂取カロリーと消費カロリーのバランスを評価し,結果を表示する健康管理システムに関する。」

(イ)「【0024】
図1は,本発明の一実施の形態に係る健康管理システムの構成を示す図である。
【0025】
図1に示すように,健康管理システムは,運動による消費カロリーを測定する運動測定装置3,運動測定装置3に搭載されているバッテリを充電するとともにパーソナルコンピュータ8との間で通信する充電・通信アダプタ4,複数の無線LAN端末との間でルートを開設してネットワークを構築する無線LANルータ5,無線LAN端末の1つとして身体の体重を測定する無線LAN体重計6,無線LAN端末の1つとして身体の体脂肪を測定する無線LAN体脂肪計7,充電・通信アダプタ4上に装着された運動測定装置3から運動パターンデータを受信して消費カロリー演算を行った後に健康管理に関するグラフをモニタ9に表示するパーソナルコンピュータ8から構成されている。」

(ウ)「【0032】
図1において,パーソナルコンピュータ8は,演算および制御を行うCPU31,BIOSを記憶するROM32,ハードディスクHD34からOSソフトウエアおよびアプリケーションソフトウエアをブートして書き込むRAM33,OSソフトウエアおよびアプリケーションソフトウエアを記憶するとともにソフトウエアからなるカロリー演算部34aと表示制御部34bを記憶するハードディスクHD34,VRAMに表示データを描画してモニタ9に表示する表示制御回路35,COMポートおよびUSBポートとの間でシリアル通信を制御する通信制御回路36,キー操作によりキーコードを入力するキーボード37,画面上に表示されたカーソル位置を移動するとともにクリック情報を入力するマウス38,無線LANルータ5との間で無線LAN通信を行う無線LAN制御回路39から構成されている。」

(エ)「【0069】
(システム動作)
図17,図18に示すフローチャート,図19?図23に示す表示画面を参照して,本発明の健康管理システムの一例を説明する。
(途中省略)
【0071】
一方,パーソナルコンピュータ8には電源が投入され,ハードディスクHD34に記憶されているOSソフトウエアがRAM33にブートされて起動され,さらに,ハードディスクHD34に記憶されている健康管理アプリケーションソフトウエアがRAM33に転送されて起動されたこととする。この結果,図19に示す表示画面90がモニタ9上に表示される。
【0072】
図19に示すように,表示画面90のツールバーには,「ユーザ登録」,「データ読込」,・・・,「日記帳」,「目標設定」,「結果参照」等のボタンが表示されている。」

(オ)「【0087】
(プランニング)
次に,マウスの操作により図19に示す表示画面90の「目標設定」ボタン上にカーソルが移動され1回クリックされた場合,モニタ9上に図21に示す「プランニング」画面95が表示される。
【0088】
図21に示すプランニング画面95において,「今のあなた」エリアに図20に示す画面91のユーザ登録で入力された身長と,運動測定装置3から受信された体重とこれらの値から算出されたBMI値が表示される。さらに,キャラクタの形状がBMI値に応じて変化する。
【0089】
目標日に対してはカレンダー上の日付をマウス38を用いてクリックすることで入力する。また,目標日での目標体重をキーボードから入力して目標を設定する。
【0090】
(アドバイス)
次に,マウスの操作により図21に示すプランニング画面95において,「OK」ボタン上にカーソルが移動され1回クリックされた場合,モニタ9上に図22に示す「アドバイス」画面93が表示される。
【0091】
図21に示す「プランニング」画面95において,既に,現在の体重と目標体重および目標期間等がわかっているので,目標カロリーバランスが式(5)で計算できて1日の目標カロリーに例えば「300kcal余分に消化してください」と表示される。なお,「プランニング」画面95においては,消費カロリーとともに現在の体重と目標体重とが横方向に伸びたバーグラフにより表示されている。
【0092】
【数5】
[摂取カロリーと消費カロリーのバランス] =( [目標の体重] - [現在の体重] ) * [単位体重あたりの体脂肪エネルギー]/ [目標期間] ・・・(5)となる。ここで,設定された目標について適正かどうかの判断は,一般的に2週間で1kg以下の減量となっているか否かにより判断する。
【0093】
さらに,「ダイエットするための運動方法を選んでください」エリアに対して,カーソルが移動され例えば「平常歩」が選択されている。
【0094】
ここで,平常歩のようなある運動パターンの目標運動時間を計算するには,式(6)を用いる。
【0095】
【数6】
[目標運動時間] = [摂取カロリーと消費カロリーのバランス] / ( [ある運動パターンの単位時間,単位体重あたりの消費エネルギー] * [体重] * [年齢・性別を考慮した係数] ) ・・・(6)上記式(6)で選択した運動パターンが激しい運動で,目標運動時間ではユーザの体力を超えている場合は,運動を軽めにするか,あるいは式(6)における目標の体重を現在の体重に近づける必要がある。
(途中省略)
【0097】
【数7】
[使用者の歩数] = [過去のデータの歩数平均] + ( [過去のデータの運動パターンの運動時間] + [目標運動時間] ) * [単位体重当たり運動パターンの歩数]・・・(7)
また,食事調整と運動調整を併用する場合は,まず,運動調整のみの方法で目標運動時間を計算し,その後で目標運動時間を調整し,その分を食事調整に当てる。食事制限をする分の摂取カロリーの計算を以下の式(8)に示す。
【0098】
【数8】
[食事制限摂取カロリー] = [摂取カロリーと消費カロリーのバランス] * (1-[修正後の目標運動時間] / [修正前の目標運動時間] ) ・・・(8)食事制限摂取カロリーが0以上の場合,そのカロリーに相当するメニューを「食事プラン」として表示し,摂取を控えるメッセージを表示する。食事制限摂取カロリーが0未満の場合,そのカロリーに相当する食事メニューを出力し,余計に摂取しても問題ない旨のメッセージを出力する。」

(カ)「【0128】
(目標設定処理)
目標設定処理では,目標体重と日程を決めると,摂取カロリーと消費カロリーの差分を計算する。そこから,運動メニューと食事制限メニューを表示する。目標が適正かどうかも評価・修正でき,最終的には本人が可否を判断する。
【0129】
目標体重を設定する場合には,ステップS110に示す目標設定処理を実行するためサブルーチンがコールされる。ステップS200からステップS205に進み,今の自分の状態を,図19に示すユーザ登録画面91および運動測定装置3または体重計6から入力された既知の身長,現在の体重,およびこれらから式(12)によって計算できるBMI値として表示する。すなわち,図21に示すプランニング画面95において,「今のあなた」エリアに身長として例えば「178cm」,体重として「83kg」,BMI値として「26.4 肥満1度」と表示される。
(途中省略)
【0132】
次いで,ステップS210では,目標日と目標日での体重をキーボードから入力して目標を設定する。すなわち,図21に示すプランニング画面において,「目標」エリアに体重として例えば「80kg」をキーボード37から入力する。また,目標日に対してはカレンダー上の日付をマウス38を用いてクリックすることで例えば「2003年1月11日(土)」と入力する。
(途中省略)
【0134】
以下,図22に示すアドバイス画面93を参照して説明する。
【0135】
次いで,ステップS215では,消費カロリーと摂取カロリーの差分値を算出する。次いで,ステップS220では,作成したプランを実行するために行う運動を選択する。
【0136】
次いで,ステップS225では,ステップS215で算出された差分値を消化するのに必要な運動時間をステップS220で選択した運動で計算する。次いで,ステップS230では,ステップS225で計算した運動時間を変更したか否かを判断する。運動時間を変更した場合には,ステップS235に進み,一方,運動時間を変更していない場合には,ステップS240に進む。
【0137】
ステップS235では,運動時間を変更した分を食事制限メニューにまわし,カロリーと代表的なメニューを食事プランエリアに表示する。次いで,ステップS240では,ステップS235で表示したカロリーを変更したか否かを判断する。このカロリーを変更した場合には,ステップS245に進み,一方,このカロリーを変更していない場合には,ステップS250に進む。
【0138】
ステップS245では,カロリーを変更した分を運動メニューにまわし,運動プランエリアに表示した運動時間を変更表示する。次いで,ステップS250では,運動プランエリアに表示した運動時間が適切か否かを判断する。運動時間が適切な場合には,ステップS255に進み,一方,運動時間が不適切な場合には,ステップS210に戻る。
【0139】
ステップS255では,目標は適切か否かを判断する。目標が適切な場合には,ステップS260に進み,一方,目標が不適切な場合には,ステップS210に戻る。ステップS260では,目標を決定する。」

(キ)図22には,「1日の目標カロリー」として「消費カロリーを300kcal余分に消費して下さい。」と表示され,「運動プラン」には,「普段より平常歩を30分増加,目標歩数7000歩,普段より2000歩増加」と記載され,「食事プラン」には,「普段より150kcal減少 食べ物にたとえるとシュークリーム1個分」と記載されている。

上記摘記事項(ア)?(キ)の記載及び図面の記載を総合すると,引用例1には,次のとおりの発明(以下,「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。

「日常活動における身体の消費カロリーを計測して,摂取カロリーと消費カロリーのバランスを評価し,結果を表示する健康管理システムであって,
健康管理システムは,複数の無線LAN端末との間でルートを開設してネットワークを構築する無線LANルータ5と,無線LAN端末の1つとして身体の体重を測定する無線LAN体重計6と,モニタ9を備え無線LANルータ5との間で無線LAN通信を行うパーソナルコンピュータ8とから構成されており,
パーソナルコンピュータ8に電源が投入されると,表示画面90がモニタ9上に表示され,
表示画面90のツールバーに表示された「目標設定」のボタンがクリックされるとモニタ9上に「プランニング」画面95が表示され,
プランニング画面95には,「今のあなた」エリアに,無線LAN体重計6から受信された現在の体重が例えば「83kg」と表示され,
カレンダー上の日付をクリックして目標日を入力し,また,目標日での目標体重,例えば「80kg」をキーボードから入力して目標を設定し,「OK」ボタンをクリックすると,モニタ9上に「アドバイス」画面93が表示され,
現在の体重と目標体重および目標期間から,摂取カロリーと消費カロリーの差分である目標カロリーバランスが式(5)で例えば「300kcal」と計算され,
次に,「ダイエットするための運動方法を選んでください」エリアで,例えば「平常歩」が選択されると,平常歩の運動パターンの目標運動時間を式(6)を用いて計算し,
このとき,選択した運動パターンが激しい運動で,目標運動時間ではユーザの体力を超えている場合には,運動を軽めにする必要があり,
食事調整と運動調整を併用する場合には,まず,運動調整のみの方法で目標運動時間を計算し,その後目標運動時間を調整し,すなわち目標運動時間を減らし,その分を食事調整に当て,食事制限をする分の摂取カロリーを式(8)で計算し,
例えば,「1日の目標カロリー」として「消費カロリーを300kcal余分に消化して下さい。」と表示し,「運動プラン」に,「普段より平常歩を30分増加,目標歩数7000歩,普段より2000歩増加」と表示し,「食事プラン」には,「普段より150kcal減少,食べ物にたとえるとシュークリーム1個分」と表示し,
上記式(5),式(6)及び式(8)は,
[摂取カロリーと消費カロリーのバランス]=([目標の体重]-[現在の体重])*[単位体重あたりの体脂肪エネルギー]/[目標期間]・・・式(5)
[目標運動時間]=[摂取カロリーと消費カロリーのバランス]/([ある運動パターンの単位時間,単位体重あたりの消費エネルギー]*[体重]*[年齢・性別を考慮した係数])・・・式(6)
[食事制限摂取カロリー]=[摂取カロリーと消費カロリーのバランス]*(1-[修正後の目標運動時間]/[修正前の目標運動時間])・・・式(8)
であるシステム。」

(2)引用例2
原査定の拒絶理由通知で引用された「特開2006-192255号公報」(以下「引用例2」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(ク)「【0061】
ここで,前記プログラム補正部56及びプログラム設定部57による減量プログラム設定について,図6及び図7を含めて説明する。図6は減量プログラム設定テーブルであり,図7は前記生体測定端末3において肥満度を判定するための肥満度判定テーブルである。
【0062】
まず,前記減量プログラム設定テーブルは,予め前記記憶部53に記憶しており,睡眠時無呼吸症候群の重症度合いに応じて分類されたAHIの各範囲と,前記体脂肪率に基づいて得られる各肥満度とをマトリクス上に配して分別した各セルから成り,前記各セルに対して各々一定期間の運動と食事の摂取量とからなる減量プログラムが設定されている。
(途中省略)
【0065】
本実施例1においては,前記減量プログラムは,30代男性をモデルとして設定した,2週間の歩行による運動と食事制限とによるプログラムであるとし,前記運動強度を歩行時間として定義した。例えば,睡眠時無呼吸症候群を発症していない30代男性の健常者が,本実施例1で高度肥満として定義される程度に肥満度が高い場合に,一般的に行なわれる減量プログラムの運動を,図6の0≦AHI<10で示される1行と高度肥満として示される1列との交差するセル内に定義してある運動強度1とするものであり,前記運動強度は一日の歩行時間20分で週3回行なうものである。同様にして,軽度肥満及び中度肥満として定義される程度の肥満であった場合,減量プログラムの運動強度は各々図6の各セル内に定義してある運動強度2及び運動強度3とする。前記運動強度1に対して運動強度2及び運動強度3は,各々歩行時間を10分及び20分増加したものとし,各肥満度における標準運動強度として定義し,運動強度+1の増加に対して歩行時間が10分増加して対応するものとする。
【0066】
ここで,上記のように一般的な肥満度と運動強度との関係において,肥満度が高くなるほど運動強度が小さくなるように設定されているのは,肥満度が高くなるほど高負荷の運動が被験者の身体に大きな負担となり,減量により身体を壊しかねないことを考慮したものである。」

(ケ)「【0068】
また,食事摂取量の設定においては,肥満度に応じて設定される。軽度肥満の場合には,運動強度が比較的高めに設定されることから,図6に「摂取:通常」として示すように,30代男性が一日に必要とする平均的な摂取量が設定される。また中度肥満の場合は「摂取:やや少」として示すように,例えば一般的な減食療法で定義されているような摂取カロリー1500(kcal/日)程度の摂取量を設定し,更に高度肥満の場合は「摂取:少」として示すように,例えば,一般的な低エネルギー食療法で定義されているような摂取カロリー1000(kcal/日)程度の摂取量を設定するものである。」

(コ)「【0098】
続いて,この判定結果に対して,前記アドバイス出力手段は,実施例1において図6に示した減量プログラム設定テーブルの「軽度肥満」,「中度肥満」及び「高度肥満」として設定された「肥満度」を,前記内臓脂肪面積の判定結果である「低」,「中」及び「高」に順に置き換えて,AHIとの関係から該当する減量プログラムを得る。
【0099】
更に,この減量プログラムを基に,前記内臓脂肪面積,血圧値及び血糖値の各判定結果により各々補正又はアドバイスを行なう。ここで,アドバイスは,各測定値が,「中」又は「高」と判定された場合に,各々の因子を改善させるべく減量プログラムを補正又はアドバイスをするものである。すなわち,各々次のような補正又はアドバイスがなされる。内臓脂肪面積が「中」又は「高」と判定された場合には,内臓脂肪の減少を優先した補正として,前記該当する減量プログラムの運動強度に対しては運動強度を上げるように補正すると共に,同摂取量に対しては抑制するように補正するものである。また,血圧値が「中」又は「高」と判定された場合には,塩分量を所定量減らし,ミネラル分の多い食品を摂取するように栄養バランスに関するアドバイスを提供する。また,血糖値が「中」又は「高」と判定された場合には,前記摂取量を抑制するように補正すると共に,糖類の摂取を制限してGI(Glycemic Index)値の低い食品を摂取するように栄養バランスに関するアドバイスを提供する。また,血中脂質料が「中」又は「高」と判定された場合には,前記摂取量を抑制するように補正すると共に,コレステロールを多く含む食品の摂取を制限するように栄養バランスに関するアドバイスを提供する。ただし,前述の該当する減量プログラムの運動強度又は摂取量の各補正に関しては,予め各々所定値を設定しておくものであるとし,前記各判定結果が「中」よりも「高」のときの方が,前記所定値を大きくして補正するものであるとする。図13の例においては,「高」と判定された内臓脂肪面積,「中」と判定された血糖値及び血中脂質量の全ての補正又はアドバイスを,減量プログラムに反映させて補正するものである。以上が終了すると,ステップS30に進み,以降実施例1と同様に動作するものであるとする。これによって,肥満の解消によるだけでなく,メタボリックシンドロームの危険性の回避を含んだ睡眠時無呼吸症候群の改善が可能である。」

上記摘記事項(ク)の記載及び図面の記載を総合すると,引用例2には,次の事項(以下,「引用例2記載事項A」という。)が記載されていると認められる。

「運動と食事の摂取量とからなる減量プログラムの運動強度を設定する際に,肥満度が高くなるほど高負荷の運動が被験者の身体に大きな負担となり減量により身体を壊しかねないことを考慮して,肥満度が高くなるほど運動強度が小さくなるように運動強度を設定する」

また,上記摘記事項(ケ)(コ)の記載及び図面の記載を総合すると,引用例2には,次の事項(以下,「引用例2記載事項B」という。)が記載されていると認められる。

「運動と食事の摂取量とからなる減量プログラムの摂取量を補正する際に,血糖値が「中」又は「高」と判定された場合には,摂取量を抑制するように補正する」

4.対比
本願発明と,引用例1発明とを比較する。

(a)引用例1発明の「無線LAN体重計6」は,「体重」を測定するものであり,「体重」は,「健康状態を表す健康指標」として一般的に用いられているものであるから,引用例1発明の「無線LAN体重計6」が本願発明の「対象者の健康状態を表す健康指標を測定する健康指標測定手段」に相当する。
引用例1発明の「パーソナルコンピュータ8」は,現在の体重と目標体重および目標期間から,摂取カロリーと消費カロリーの差分である目標カロリーバランスを計算し,当該目標カロリーバランスを運動と食事により消化するための運動プランと食事プランを表示するものであるから,引用例1発明の「パーソナルコンピュータ8」が本願発明の「健康管理装置」に相当する。
そして,無線LAN体重計6とパーソナルコンピュータ8とは,無線LANルータ5を介して無線LAN通信を行うことができるから,無線LAN体重計6とパーソナルコンピュータ8とが,「ネットワークを介して接続され」ていることは明らかである。
してみれば,引用例1発明と本願発明とは,後記する点で相違するものの,「対象者の健康状態を表す健康指標を測定する健康指標測定手段と,健康管理装置とがネットワークを介して接続され」ている点で共通している。

(b)
(b-1)引用例1発明では,プランニング画面95において,目標日での目標体重,例えば「80kg」をキーボードから入力して目標を設定しており,ここで入力される「80kg」との「数値」が,本願発明の「対象者が入力した設定値」に相当し,この数値に「基づいて」,目標体重,すなわち,「対象者の体重の減量目標値」が設定されるものであるから,引用例1発明のパーソナルコンピュータ8が,「対象者が入力した設定値が入力されると前記設定値に基づいて前記対象者の体重の減量目標値を設定する目標値設定手段」を備えていることは明らかである。
(b-2)引用例1発明では,プランニング画面95において,「今のあなた」エリアに,無線LAN体重計6,すなわち,「健康指標測定手段」から受信された現在の体重,すなわち「健康指標」が例えば「83kg」と表示されることから,引用例1発明のパーソナルコンピュータ8は,「健康指標測定手段からネットワーク経由で健康指標を取得する健康指標取得手段」を備えているということができる。
(b-3)引用例1発明では,現在の体重と目標体重および目標期間から,摂取カロリーと消費カロリーの差分である目標カロリーバランスが例えば「300kcal」と計算され,食事調整と運動調整を併用する場合には,まず,運動調整のみの方法で目標運動時間を計算し,その後目標運動時間を調整し,すなわち目標運動時間を減らし,その分を食事調整に当て,食事制限をする分の摂取カロリーを式(8)で計算している。
ここで,引用例1発明の「目標体重」「運動調整」「食事調整」が本願発明の「減量目標値」「運動による減量行動」「食事による減量行動」に相当し,式(8)によれば,目標カロリーバランスの300kcalが,運動調整によるものと食事調整によるものの合計となるように設定していること,すなわち,「運動による減量行動と食事による減量行動との内訳を設定」していることは明らかである。
してみれば,引用例1発明のパーソナルコンピュータ8と本願発明の健康管理装置とは,「減量目標値の減量を行う場合の運動による減量行動と食事による減量行動との内訳を設定する行動内訳設定手段」を備えている点で共通している。
(b-4)引用例1発明では,食事調整と運動調整を併用する場合には,まず,運動調整のみの方法で目標運動時間を計算し,その後目標運動時間を調整し,すなわち目標運動時間を減らし,その分を食事調整に当て,食事制限をする分の摂取カロリーを式(8)で計算し,例えば,「1日の目標カロリー」として「消費カロリーを300kcal余分に消化して下さい。」と表示し,「運動プラン」に,「普段より平常歩を30分増加,目標歩数7000歩,普段より2000歩増加」と表示し,「食事プラン」には,「普段より150kcal減少,食べ物にたとえるとシュークリーム1個分」と表示している。
そして,ここで表示される「運動プラン」と「食事プラン」は,上記(b-3)の「行動内訳設定手段」で「設定された」「運動による減量行動と食事による減量行動との内訳」に対応するものである。
してみれば,引用例1発明のパーソナルコンピュータ8と本願発明の健康管理装置とは,「行動内訳設定手段で設定された運動による減量行動と食事による減量行動との内訳を出力する提示手段」を備えている点で共通している。
(b-5)引用例1発明のパーソナルコンピュータ8が,「プログラム」によって動作することは自明のことであり,上記(b-1)?(b-4)の各手段として,パーソナルコンピュータ8(すなわち「コンピュータ」)を「機能させるプログラム」が,パーソナルコンピュータ8(すなわち「健康管理装置」)に「組み込まれ」ていることも自明のことである。
また,「目標値設定手段と健康指標取得手段と行動内訳設定手段と提示手段」がパーソナルコンピュータ8(すなわち「コンピュータ」)に,上記「プログラム」を「実行させることによって実現された」ものであることは自明のことであり,また,「目標値設定手段と健康指標取得手段と行動内訳設定手段と提示手段」が,パーソナルコンピュータ8(すなわち「健康管理装置」)に「備え」られていることも自明のことである。
(b-6)以上のことから,引用例1発明と本願発明とは,後記する点で相違するものの,「対象者が入力した設定値が入力されると前記設定値に基づいて前記対象者の体重の減量目標値を設定する目標値設定手段,健康指標測定手段からネットワーク経由で健康指標を取得する健康指標取得手段,前記減量目標値の減量を行う場合の運動による減量行動と食事による減量行動との内訳を設定する行動内訳設定手段,前記行動内訳設定手段で設定された運動による減量行動と食事による減量行動との内訳を出力する提示手段として,コンピュータを機能させるプログラムが,健康管理装置に組み込まれ,
コンピュータに前記プログラムを実行させることによって実現された前記目標値設定手段と前記健康指標取得手段と前記行動内訳設定手段と前記提示手段とを前記健康管理装置が備え」の点で共通している。

(c)引用例1発明の「健康管理システム」は,「運動プラン」や「食事プラン」を提示することによって,入力された目標体重とするためのダイエットを「支援」するものであるから,引用例1発明の「健康管理システム」が本願発明の「健康管理支援システム」に相当する。

そうすると,本願発明と引用例1発明とは,

「対象者の健康状態を表す健康指標を測定する健康指標測定手段と,健康管理装置とがネットワークを介して接続され,
対象者が入力した設定値が入力されると前記設定値に基づいて前記対象者の体重の減量目標値を設定する目標値設定手段,健康指標測定手段からネットワーク経由で健康指標を取得する健康指標取得手段,前記減量目標値の減量を行う場合の運動による減量行動と食事による減量行動との内訳を設定する行動内訳設定手段,前記行動内訳設定手段で設定された運動による減量行動と食事による減量行動との内訳を出力する提示手段として,コンピュータを機能させるプログラムが,前記健康管理装置に組み込まれ,
コンピュータに前記プログラムを実行させることによって実現された前記目標値設定手段と前記健康指標取得手段と前記行動内訳設定手段と前記提示手段とを前記健康管理装置が備える健康管理支援システム。」

の点で一致し,以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明では,「行動割合設定手段」が,運動による減量行動と食事による減量行動との「割合」を設定し,提示手段は,この「割合」を出力しているのに対し,引用例1発明では,目標カロリーの内訳を「数値」で設定しており,「割合」すなわち,パーセント等の比率で設定するものではない点。

[相違点2]
本願発明では,「対象者が使用するネットワーク端末」がネットワークを介して接続されており,減量目標値の設定値が,「ネットワーク端末を用いて」,「ネットワーク経由で」入力され,運動による減量行動と食事による減量行動との割合が「ネットワーク経由でネットワーク端末に」出力されるのに対して,引用例1発明では,そのような構成となっていない点。

[相違点3]
本願発明は,「健康指標取得手段が取得した健康指標に基づいて」,運動による減量行動と食事による減量行動との割合を設定するものであり,「健康指標取得手段は,健康指標として血圧又は血糖値のうち少なくとも何れか1つを取得し」,「行動割合設定手段は,血圧値が高いほど又は血糖値が高いほど,食事による減量行動の割合が高くなるように,運動による減量行動と食事による減量行動との割合を設定する」のに対して,引用例1発明は,そのような構成となっていない点。

5.判断
上記各相違点について,検討する。

[相違点1]について
引用例1発明の式(8)によれば,目標カロリーバランスの300kcalを,運動調整によるものと食事調整によるものに分配しているものであるから,その際に,300kcalを100%として,そのうちの何パーセントを運動調整によるものとし,残りの何パーセントを食事調整によるものとするかというように,運動調整によるものと食事調整によるものとの内訳をパーセント等の「割合」で設定するように構成することには何ら困難性がなく,当業者が適宜なし得ることである。

[相違点2]について
例えば特開2002-236756号公報には,センターサーバ12と,当該センターサーバ12とインターネット16を介して接続されたユーザの通信端末とから構成されるダイエット支援システムが記載され,また,特開2002-24400号公報には,ウェブサーバ10と,当該ウェブサーバ10とインターネット40を介して接続された携帯電話20とから構成されるダイエット情報提供システムが記載されているように,ダイエット等の健康管理に関する支援情報を,ウェブサーバと,当該ウェブサーバとネットワークを介して接続されたネットワーク端末とから構成されるシステムによって提供することは周知技術であるものと認められる。
してみれば,引用例1発明に当該周知技術を適用して,パーソナルコンピュータ8が備える健康管理装置の機能をウェブサーバが備えるように構成し,当該ウェブサーバに「対象者が使用するネットワーク端末」をネットワークを介して接続し,減量目標値の設定値を,「ネットワーク端末を用いて」,「ネットワーク経由で」入力し,運動による減量行動と食事による減量行動との割合を「ネットワーク経由でネットワーク端末に」出力するように構成することには何ら困難性がなく,当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点3]について
例えば,引用例1発明には,「ダイエットするための運動方法を選んでください」エリアで,運動方法が選択されて目標運動時間が計算されたとき,選択された運動パターンが激しい運動であり,計算された目標運動時間ではユーザの体力を超えている場合には,運動を軽めにする必要があることが記載され,また,引用例2には,「運動と食事の摂取量とからなる減量プログラムの運動強度を設定する際に,肥満度が高くなるほど高負荷の運動が被験者の身体に大きな負担となり減量により身体を壊しかねないことを考慮して,肥満度が高くなるほど運動強度が小さくなるように運動強度を設定する」との事項(引用例2記載事項A)が記載されているように,ダイエットの目標を設定する際に,ユーザの体力や体の状態を考慮して運動の量を設定することは周知の事項である。
そして,例えば「岩垂 信 外3名,運動処方の実際 VIII.本態性高血圧の治療-非薬物療法- 運動療法,日本臨牀(増刊)高脂血(下),株式会社日本臨牀社,1992年5月22日,第50巻,第639号,p160?167」の第164頁右欄第22?30行に,「高血圧症における運動療法において・・・運動療法に対する過信も危険であり,患者には,常に,その意義と過度の運動の危険性について十分に説明し教育する必要がある」と記載され,また,上記引用例2には,「運動と食事の摂取量とからなる減量プログラムの摂取量を補正する際に,血糖値が「中」又は「高」と判定された場合には,摂取量を抑制するように補正する」との事項(引用例2記載事項B)が記載されているように,血圧が高い場合には過度な運動は危険であることや,血糖値が高い場合にはカロリー摂取量を抑制することによる減量が効果的であることは,よく知られていることであるから,引用例1発明において,食事調整と運動調整を併用する場合に,「血圧値が高いほど」,高血圧で危険性の高い,「運動による減量行動」の割合がより低くなるように,すなわち,「食事による減量行動の割合が高くなるように」「運動による減量行動と食事による減量行動との割合を設定」し,また,「血糖値が高いほど」,より効果的である「食事による減量行動」の「割合が高くなるように」,「運動による減量行動と食事による減量行動との割合を設定する」ことには何ら困難性がなく当業者が適宜なし得たことである。
また,当該設定をユーザが入力して行うことに代えて,「行動割合設定手段」が,血圧値や血糖値の値に応じて自動的に設定するように構成することは,当業者が適宜なし得る設計的事項である。
また,引用例1発明のシステムには,複数の無線LAN端末との間でルートを開設してネットワークを構築する無線LANルータ5と,無線LAN端末の1つとして身体の体重を測定する無線LAN体重計6が備えられていることから,この無線LANのネットワークに,血圧や血糖値を測定する「健康指標取得手段」を備えるように構成し,それにより,健康指標取得手段が,「健康指標として血圧又は血糖値のうち少なくとも何れか1つを取得し」,「健康指標取得手段が取得した健康指標に基づいて」,運動による減量行動と食事による減量行動との割合を設定するように構成することにも何ら困難性がなく当業者が適宜なし得たことである。

そして,本願発明の作用効果も,引用例1発明,引用例2記載事項,周知技術,及び周知の事項から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって,本願発明は,引用例1発明,引用例2記載事項,周知技術,及び周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例1発明,引用例2記載事項,周知技術,及び周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-02 
結審通知日 2013-08-06 
審決日 2013-08-19 
出願番号 特願2007-331447(P2007-331447)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮地 匡人  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 清田 健一
須田 勝巳
発明の名称 健康管理支援システム  
代理人 北出 英敏  
代理人 坂口 武  
代理人 仲石 晴樹  
代理人 西川 惠清  

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