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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1279817
審判番号 不服2012-25598  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-25 
確定日 2013-10-03 
事件の表示 特願2008- 88687「電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成21年10月22日出願公開、特開2009-246551〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成20年3月28日の出願であって、平成24年9月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年12月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年5月7日付け手続補正書により補正された請求項1に記載された以下のとおりのものである。

「ねじ部材により互いに接合される第1ケース及び第2ケースを有する筐体と、
前記筐体に形成される凹部と、
前記筐体の内部に配置され外部装置と接続可能な接続部と、
前記凹部に形成され前記接続部を露出させる第1開口部と、
前記凹部に形成され前記ねじ部材が挿入されるねじ孔部と、
前記第1開口部及び前記ねじ孔部を被覆する蓋部材と、を備え、
前記蓋部材は、前記第1開口部及び前記ねじ孔部と嵌合しないことを特徴とする電子機器。」

3.引用例発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開2007-26823号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がある。

イ.「【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関し、特に、外部インターフェイスコネクタを有するデジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、及び携帯用情報端末等の電子機器に関する。」

ロ.「【0015】
本発明の目的は、電子機器が使用されているときにユーザが外部インターフェースコネクタカバーを取り外そうとしても容易に外れずに、外部インターフェースコネクタカバーを取り外す必要性が生じたときには取り外すことができる電子機器を提供することにある。」

ハ.「【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係る電子機器の構成を概略的に示す斜視図である。
【0020】
図1において、電子機器10は、外部機器に対して音声信号や映像信号等を入出力するための外部インターフェースコネクタ11と、外部インターフェースコネクタ11を収容すべく互いに接合された筐体13、14と、筐体14の縁から筐体13に向かって突出すると共に筐体13に重なり合うビス締結部14a(突出部)と、一端が筐体13及びビス締結部14aの重なり部分において、筐体13及びビス締結部14aに狭持され、他端が外部インターフェースコネクタ11を覆う外部インターフェースコネクタカバー12と、外部インターフェースコネクタカバー12の一端を共締めすべく筐体13及びビス締結部14aの重なり部分においてビス締結部14aを筐体13におけるネジ受け16にネジ止めする筐体締結ビス15とを備える。
【0021】
外部インターフェースコネクタカバー12は、外部インターフェースコネクタ11が使用されていないときには、外部インターフェースコネクタ11内部にゴミ等が侵入しないように外部インターフェースコネクタ11を保護するように覆い、外部インターフェースコネクタ11が使用されているときには、外部インターフェースコネクタ11を露出させてジャック等を挿入できるように開閉自在な状態に設置される。この外部インターフェースコネクタカバー12は熱可塑性エラストマから成る。
【0022】
図2は、図1の電子機器の構成を概略的に示す斜視図であり、(a)は外側から見た場合を示し、(b)は内側から見た場合を示す。
【0023】
図2(a)及び図2(b)において、外部インターフェイスコネクタカバー12は、一端にビス締結部14aが挿通される角穴形状の開口部12aを有する。この開口部12aにビス締結部14aが挿通された状態で筐体締結ビス15がビス孔14bを介してネジ受け16に挿入されることにより、外部インターフェイスコネクタカバー12の一端が筐体13及びビス締結部14aに挟持される。なお、ネジ受け16に挿入された筐体締結ビス15は外部インターフェイスコネクタカバー12により覆われている。
【0024】
開口部12aの長手方向長さAをビス締結部14aの幅Bの1.1倍以上とすることにより組み立て作業性を向上することができる。また、この開口部12aの周辺に、ビス締結部14aが当接する平坦部12bを設けることにより外部インターフェイスコネクタカバー12の浮上りを確実に規制することができる。更に、この平坦部12bを外観部12eよりも外側に形成することで金型構造も単純化することができる。
【0025】
また、平坦部12bを支える両端支持部12cの先端部12dを略円弧形状とすることにより、電子機器10が使用されているときに外部インターフェイスコネクタカバー12をユーザが引っ張ったときでも、両端支持部12cが筐体14から乗り上げて通常位置へ戻らなくなるといったトラブルを防止することができる。
【0026】
本実施の形態によれば、外部インターフェースコネクタカバー12の一端が筐体13及びビス締結部14aの重なり部分において筐体13及びビス締結部14aに狭持され、外部インターフェースコネクタカバー12の一端を共締めすべく重なり部分においてビス締結部14aを筐体13にネジ止めするので、電子機器10が使用されているときにユーザが外部インターフェイスコネクタカバー12を電子機器10本体から取り外そうとしても容易に外部インターフェイスコネクタカバー12が電子機器10本体から外れずに、組み立て工程等で筐体13、14や外部インターフェイスコネクタカバー12に傷が付いたときなど電子機器10本体から外部インターフェイスコネクタカバー12を外す必要があったときには筐体14を外すこと等により容易に電子機器10本体から外部インターフェイスコネクタカバー12を外すことができる。
【0027】
また、本実施の形態によれば、ビス締結部14aが開口部12aに挿通された状態で筐体締結ビス15がビス孔14bを介してネジ受け16に挿入されることにより、筐体13、14がネジ止め固定されているので、筐体13、14が浮き上がることがない。
【0028】
また、本実施の形態によれば、ネジ受け16に挿入された筐体締結ビス15は外部インターフェイスコネクタカバー12により覆われているので、ネジ受け16に挿入された筐体締結ビス15が外部から見えることがなく、外観品位を高く維持することができる」

上記摘記事項及び技術常識を考慮すると、
上記摘記事項ハ.段落【0020】、図1には、「筐体締結ビス15により互いに接合される筐体13、14」、及び、「前記筐体13、14の内部に配置され外部機器と接続可能な外部インターフェースコネクタ11」を備えた「電子機器10」が開示されている。
図1には、筐体13が記載されているところ、該筐体13の紙面側表面には、該筐体13が筐体14に接合された際(図2)に収容される外部インターフェースコネクタ11を露出させる開口部(図面中、縦方向に形成された円形、及び略方形状の開口)、及び、ネジ受け16を露出させ、筐体締結ビス15を挿通するビス孔(図面中、前記略方形状の開口の右側に形成された円形状の孔)が形成されていることを読み取ることができる。また、筐体14のビス締結部14aにも筐体締結ビス15を挿通するビス孔14bが形成されている。
以上によれば、図1には、「前記筐体13に形成され前記外部インターフェースコネクタ11を露出させる開口部」と、「前記筐体13、14のそれぞれに形成され前記筐体締結ビス15を挿通するビス孔」が開示されている。
上記摘記事項ハ.段落【0021】には、「前記開口部及び前記ビス孔を覆う外部インターフェースコネクタカバ-12」が記載されている。また、図2(b)には、コネクタカバー12の内面に前記開口部と嵌合する突状部材が形成されていることを読み取ることができる。更に、前記筐体締結ビス15は、前記筐体13に形成されたビス孔と筐体14のビス締結部14aに形成されたビス孔14bに挿通されてネジ受け16に締結されるものであるところ、図1、図2の記載からみて、コネクタカバー12は、前記筐体13のビス孔、及び筐体14のビス孔14bのいずれにも嵌合されないことが明らかである。

したがって、引用例には、
「筐体締結ビス15により互いに接合される筐体13、14と、
前記筐体13、14の内部に配置され外部機器と接続可能な外部インターフェースコネクタ11と、
前記筐体13に形成され前記外部インターフェースコネクタ11を露出させる開口部と、
前記筐体13、14のそれぞれに形成され前記筐体締結ビス15を挿通するビス孔と、
前記開口部及び前記ビス孔を覆うと共に、前記開口部と嵌合するが前記ビス孔とは嵌合しない外部インターフェースコネクタカバー12と、を備えた電子機器10。」
の発明(以下、「引用例発明」という。)が開示されていると認めることができる。

4.対比
本願発明と引用例発明とを対比する。
引用例発明の「筐体13、14」は、本願発明の「第1ケース及び第2ケースを有する筐体」に相当する。
引用例発明の「外部インターフェースコネクタ11」は、「前記筐体13、14の内部に配置され外部機器と接続可能」であるから、本願発明の「接続部」に相当する。
引用例発明の「開口部」は、「前記筐体13に形成され前記外部インターフェースコネクタ11を露出させる」ものであるから、「前記筐体に形成される凹部」に「形成され」る点は別として、「前記筐体に形成され前記接続部を露出させる」点で本願発明の「第1開口部」と一致する。
引用例発明の「ビス孔」は、「前記筐体13、14のそれぞれに形成され前記筐体締結ビス15を挿通する」ものであるから、「筐体に形成される凹部」に「形成され」る点は別として、「前記筐体に形成され前記ねじ部材が挿入される」点で本願発明の「ねじ孔部」と一致する。
引用例発明の「外部インターフェースコネクタカバー12」は、「前記開口部及び前記ビス孔を覆うと共に、前記開口部と嵌合するが前記ビス孔とは嵌合しない」ものであるから、「前記第1開口部と嵌合しない」点は別として、「前記第1開口部及び前記ねじ孔部を被覆する蓋部材」であって、「前記蓋部材は、前記ねじ孔部と嵌合しない」点で、本願発明の「蓋部材」と一致する。

したがって、本願発明と引用例発明とは、
「ねじ部材により互いに接合される第1ケース及び第2ケースを有する筐体と、
前記筐体の内部に配置され外部装置と接続可能な接続部と、
前記筐体に形成され前記接続部を露出させる第1開口部と、
前記筐体に形成され前記ねじ部材が挿入されるねじ孔部と、
前記第1開口部及び前記ねじ孔部を被覆する蓋部材と、を備え、
前記蓋部材は、前記ねじ孔部と嵌合しない電子機器。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明は、「筐体に形成される凹部」を備え、この凹部に「第1開口部」と「ネジ孔部」が形成されるのに対して、引用例発明は、この点について不明である点。
[相違点2]
本願発明は、「蓋部材」が「前記第1開口部と嵌合しない」のに対して、引用例発明は、嵌合する点。

5.当審の判断
まず、相違点1について検討する。
例えば、特開2006-49944号公報(段落【0015】、図1、図5等)、特開2004-127996号公報(段落【0025】、【0026】、図2?図4等)、特開2007-288322号公報(段落【0015】、図2等)、特開2007-88139号公報(段落【0015】、図2等)に記載されているように、筐体に形成された接続開口部や筐体締結用ねじ孔を覆う蓋部材を備えた電子機器において、前記接続開口部や筐体締結用ねじ孔の周囲に前記蓋部材と嵌り合う凹部を形成することは周知であるから、引用例発明において、筐体13に形成され前記外部インターフェースコネクタ11を露出させる開口部と、筐体13に形成され前記筐体締結ビス15を挿通するビス孔の周りに凹部を形成すること、すなわち、相違点1に係る構成とすることは、当業者にとって容易なことである。

次に、相違点2について検討する。
例えば、前掲の特開2004-127996号公報(段落【0025】、【0026】、図2?図4等)、国際公開第2007/013672号(5頁16行?6頁8行、図3、図4等)に記載されているように、筐体に形成された接続開口部を覆う蓋部材を備えた電子機器において、蓋部材が接続開口部と嵌合しないようにすることは周知であるから、引用例発明において、筐体13に形成され前記外部インターフェースコネクタ11を露出させる開口部にコネクタカバー12が嵌合しないようにすること、すなわち、相違点2に係る構成とすることは、当業者にとって容易なことである。

そして、本願発明の作用効果も、引用例発明及び周知事項から当業者が予測できる範囲のものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-07-31 
結審通知日 2013-08-06 
審決日 2013-08-21 
出願番号 特願2008-88687(P2008-88687)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 仲間 晃  
特許庁審判長 竹井 文雄
特許庁審判官 菅原 道晴
新川 圭二
発明の名称 電子機器  
代理人 正林 真之  

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