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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K |
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管理番号 | 1279885 |
審判番号 | 不服2010-25940 |
総通号数 | 167 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-11-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-11-17 |
確定日 | 2013-10-04 |
事件の表示 | 特願2006- 74684「鎮痛剤、痔治療剤、糖尿病治療剤または褥瘡治療剤」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 9月27日出願公開、特開2007-246469〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成18年3月17日の出願であって、平成22年8月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年11月17日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 その後、当審において、平成25年2月14日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成25年4月16日に意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされた。 2.本願発明 本願の請求項1?3に係る発明は、平成25年4月16日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 「【請求項1】 A.大豆イソフラボンまたは大豆イソフラボン配糖体、 B.クルクミン、 C.シムノールまたはシムノール硫酸エステル、 のABCを含むことを特徴とする褥瘡治療剤。」 3.引用例に記載された事項 (1)当審の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2004-182600号公報(以下「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。 (ア)「イソフラボンおよび/またはアシルイソフラボンおよび/またはイソフラボン配糖体、およびコール酸、または、シムノールおよび/またはシムノールエステル含むことを特徴とする皮膚用剤。」(請求項1) (イ)「辛味物質、苦味物質又は酸味物質を含むことを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の皮膚用剤。」(請求項4) (ウ)「辛味物質がクルクミンであることを特徴とする請求項6に記載の皮膚用剤。」(請求項7) (エ)「イソフラボン、アシルイソフラボンおよびイソフラボン配糖体が大豆イソフラボン、アシル大豆イソフラボンおよび大豆イソフラボン配糖体であることを特徴とする請求項1?7のいずれかに記載の皮膚用剤。」(請求項8) (オ)「医薬が、美肌作用、アトピー性皮膚炎治療作用、皮膚炎群治療作用、皮膚真菌治療作用、疣贅治療作用、色素沈着症治療作用、尋常性乾癖治療症、老人性乾皮症、老人性角化腫治療作用、皮膚損傷治療作用、発毛促進作用、消化液分泌促進作用、発汗促進作用、便通促進作用、内出血治療作用及び利尿作用であることを特徴とする請求項14に記載の皮膚用剤。」(請求項15) (カ)「実施例7 ・・・中略・・・ (B)内溶液処方 クルクミン 2.0部 シムノール硫酸エステルNa 0.1部 大豆イソフラボン 10.4部 タラ肝油 6.7部 酢酸トコフェロール 0.4部 ヘプタデカン酸 2.5部 イノシン酸 8.3部 人参エキス 16.7部 ミツロウ 4.6部 サフラワー油 49.3部」(【0025】) (キ)「実施例7のカプセル剤を16週間投与したところ、例えば、毛髪に関しては、つぎのような効果があった。 銀髪の62才の男性の額の生え際に沿って黒髪が発毛した。61才男性の“もみあげ”と額中央の髪が黒くなった。55才の男性の太い黒髪が2本前頭部に生えた。68才の女性の額に沿って黒い髪が生え、前腕の毛が異常に長くなった。発毛現象は左半身に著明であった。68才の女性の額に沿ってカツラの様に髪の毛が黒くなった。82才の女性の眉毛が濃くなった。55才の男性の後退した額の生え際に、黒髪が9?12本生えた。64才の女性の髪の毛が生え、疣が消えた。74才の女性の眉毛が黒くなった。甲状腺昨機能低下症で脱毛症の64才の女性が16週間服用することにより治った。健康体の74才の女性が16週間服用することにより脱毛症が治った。肺癌、脳腫瘍の34才の女性の副作用による脱毛症が著しく改善された。白斑の69才の女性が2週間服用することにより皮膚に赤みが差してきた。55才の白斑の女性が4週間服用することにより良くなってきた。同様に、美肌作用、アトピー性皮膚炎治療作用、皮膚炎群治療作用、皮膚真菌治療作用、疣贅治療作用、色素沈着症治療作用、尋常性乾癖治療症、老人性乾皮症、老人性角化腫治療作用、皮膚損傷治療作用、発毛促進作用、消化液分泌促進作用、発汗促進作用、便通促進作用、及び利尿作用等についても効果が確認された。」(【0035】) 同じく、当審の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である医学大事典(豪華版)、1998年、株式会社南山堂(以下「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている (ク)「褥瘡・・・長時間臥床しているときに,骨と病床との間で長時間の圧迫のために循環障害を起こし,壊死となった状態。・・最初は皮膚に浮腫性の紅斑湿潤面を生じ、・・・壊死となり・・・」(第998ページ左欄) 記載事項(ア)によれば、「コール酸」と「シムノールおよび/またはシムノールエステル」は、それらのいずれかが「イソフラボンおよび/またはアシルイソフラボンおよび/またはイソフラボン配糖体」と組み合わせて「皮膚用剤」に含まれるものであると解されるから、引用例1の請求項1には、イソフラボンおよび/またはアシルイソフラボンおよび/またはイソフラボン配糖体、および、シムノールおよび/またはシムノールエステルを含むことを特徴とする皮膚用剤が記載されているということができる。また、記載事項(イ)、(ウ)によれば、請求項1に記載の皮膚用剤には、さらに、クルクミンが含まれることが記載され、記載事項(エ)によれば、請求項1に記載のイソフラボン、イソフラボン配糖体が大豆イソフラボンや大豆イソフラボン配糖体であることが記載されている。また、記載事項(オ)によれば、請求項1に記載の皮膚用剤は皮膚損傷治療に用いられるものであることが記載されており、記載事項(カ)によれば、請求項1に記載の皮膚用剤の実施例7として、クルクミン、シムノール硫酸エステルNa、大豆イソフラボンほかを含む処方が記載されており、記載事項(キ)によれば、上記実施例7のカプセル剤を投与してみたところ、皮膚損傷治療について効果が確認されたことが記載されている。 そうすると、これら引用例1の記載を総合すれば、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「大豆イソフラボンおよび/または大豆イソフラボン配糖体、 クルクミン、 シムノールおよび/またはシムノール硫酸エステルNaを実施例とするシムノールエステル を含むことを特徴とする皮膚損傷治療剤」 4.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、両者は、成分において重複する治療剤である。そうすると、両者は、 「A.大豆イソフラボンまたは大豆イソフラボン配糖体、 B.クルクミン、 C.シムノールまたはシムノール硫酸エステル のABCを含むことを特徴とする治療剤。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 ・治療剤の用途が、本願発明では褥瘡治療剤であるのに対し、引用発明では皮膚損傷治療剤である点(以下「相違点」という。)。 5.判断 上記相違点について検討する。 記載事項(ク)によれば、引用例2には、褥瘡は、皮膚が壊死した状態であることが記載されている。ここで、壊死とは、細胞や組織の損傷の一種であるといえるから、褥瘡は皮膚の損傷が起こっている状態といえる。そうすると、引用発明は皮膚損傷治療に有効な治療剤であるところ、これを皮膚損傷の一種である褥瘡の治療に適用してみることに、当業者が格別の創意を要したものとはいえない。 また、本願発明の効果について検討するに、本願明細書には、本願発明の効果について、「実施例6、15のソフトカプセルを投与したところ、鎮痛剤、痔治療剤、糖尿病治療剤または褥瘡治療剤として有効であった。」(【0089】)と記載されている。 しかしながら、かかる記載は、褥瘡に対し、本願発明の治療剤がなんらかの効果があったことを示すものというほかはなく、そのような効果が、引用例1の記載を見た当業者にとって格別予想外のものであったとはいえない。 また、審判請求人は、平成25年4月16日付け意見書の中で、本願明細書【0089】の上記の記載、および当審の審尋に対する平成24年3月29日付けの回答書中に添付された、医師による以下の証明書 「証明書 有限会社大長企画の気血水が、以下の医薬効果を有することを証明します。 褥瘡 ニキビ(尋常性ざそう) ヘルペス(単純性疱疹) 単純性疱疹 帯状疱疹 脂漏性湿疹 魚の目 外陰部の湿疹 主婦湿疹(進行性指掌角皮症) 平成24年3月23日 (以下省略)」 との記載を引用し、本願発明は優れた効果を得ることができたものであり、このような効果は実際にヒトに投与して初めて確認できるものである旨主張する。 しかしながら、上記証明書の記載も本願明細書【0089】の上記記載と同様のものというほかはなく、引用例1を見た当業者にとって格別予想外のものであったとはいえない。したがって、審判請求人の上記主張は採用できない。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1?2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-07-19 |
結審通知日 | 2013-07-30 |
審決日 | 2013-08-14 |
出願番号 | 特願2006-74684(P2006-74684) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A61K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岩下 直人 |
特許庁審判長 |
内藤 伸一 |
特許庁審判官 |
前田 佳与子 増山 淳子 |
発明の名称 | 鎮痛剤、痔治療剤、糖尿病治療剤または褥瘡治療剤 |
代理人 | 熊田 和生 |