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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01Q
管理番号 1279989
審判番号 不服2011-20628  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-09-26 
確定日 2013-09-30 
事件の表示 特願2008-228002「ノッチアンテナおよび無線装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 3月18日出願公開、特開2010- 62976〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本願は、平成20年9月5日の出願であって、平成23年7月22日に拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月26日に審判請求がなされたが、当審において平成25年1月23日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対し、同年4月4日付けで意見書が提出されたものであって、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年5月23日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】
スリットを有する地導体と、
前記スリットの開放端の近傍に前記スリットを跨ぐように前記地導体に接続された、容量性リアクタンス素子および誘導性リアクタンス素子を含むリアクタンス回路とを備え、
前記スリットの根本側に給電を行い、前記リアクタンス回路は、第1の周波数で第1のアンテナ共振点をもたらす容量値を示し、第2の周波数で第2のアンテナ共振点をもたらす容量値を示すよう前記容量性リアクタンス素子および誘導性リアクタンス素子の各値が設定された
ノッチアンテナ。」

2.引用例
(1)当審の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開平5-110332号公報(以下、「引用例1」という。)には、「スロットアンテナ」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0003】以下、同軸ケーブル104の他端が送信機に接続されいる場合を例にスロットアンテナ101の動作を説明する。送信機から同軸ケーブル104を介してスロットアンテナ101に給電が行われると、スロット103内に図14に矢印によって示す電界分布が得られる。スロット長を約0.5λとしたことにより、スロット103は波長がλに対応する周波数の信号によって共振する。ここで、最も高い電界強度が得られるスロット103の中央部における入力抵抗は約500Ωになる。また、電界強度が0であるスロット103の各端部103a、103bにおける入力抵抗は0Ωである。さらにスロット103の長手方向の一端部103aから距離S≒0.05λの位置における入力抵抗は50Ωである。従ってこの位置に同軸ケーブル104を接続することにより、同軸ケーブルとスロットアンテナのインピーダンスを整合させることができる。なお、同軸ケーブル104は、他の端部103b側から距離Sだけ隔たった位置に接続しても同等の特性が得られる。また、スロットアンテナは可逆性を有するため、同軸ケーブル104の他端が受信機である場合においても、上述と全く同様な特性が得られる。」(2頁2欄?3頁3欄)

ロ.「【0022】この実施例においても、第1実施例と同様、スロット3a,3bの各水平部分およびスロット3cから垂直偏波が放射され、スロット3aおよび3bの各垂直部分から水平偏波が放射される。図7に水平面(X-Y面)におけるスロットアンテナ1aの放射指向性を示す。この図において、実線Pは垂直偏波成分に対する放射指向性、破線Sは水平偏波成分に対する放射指向性であり、各々、半波長ダイポールアンテナの利得で正規化した値が示されている。この図に示すように、垂直偏波成分の放射指向性は、水平面内でほぼ一様になる。また、この実施例によれば、スロット3に導体凸部を形成することによってコンデンサを形成したので、送受信波長λに対応したスロット長を短くすることができる。従って、この実施例によれば、第1実施例よりもさらにスロットアンテナを小型化することが可能であり、従来のスロットアンテナの1/60に小型化することができる。」(5頁7欄)

ハ.「【0023】図8はこの発明の第3実施例によるスロットアンテナ1bの構成を示すものであり、図8(a)は同軸ケーブル4が接続される側の面を見た斜視図、図8(b)はその裏側の面を見た斜視図である。なお、この図において、上述した図1および図4と対応する部分には同一の符号が付けられている。このスロットアンテナ1bにおいては、導体面2aの側端部近傍のスロット3aの両側に、チップコンデンサ6の各電極が半田付け等の手段で接続されている。このスロットアンテナ1bは、第2実施例のスロットアンテナ1aにおいて導体凸部5a,5bを設置する代わりにチップコンデンサ6を取り付けたものであり、誘電体基板2の厚さ、スロット3a,3bの幅および長さ、同軸ケーブル4の接続点等の条件は第2実施例と同様である。したがって、この実施例においても、第2実施例と同様な効果が得られる。なお、チップコンデンサ6は、誘電体基板2の2a面に限らず、2b面または2c面に取り付けてもよい。また、チップコンデンサ6は、1個のみに限定することはなく、複数個取り付けてもよい。」(5頁7欄?8欄)

上記イ.?ハ.の記載及び関連する図面である図8の記載並びにこの分野における技術常識を考慮すると、
上記ハ.に記載のように、第3実施例に係るスロットアンテナ1bの導体面2aにはスロット3aが設けられているから、引用例1には、『スロット3aを有する導体面2a』を備えたスロットアンテナ1bが記載されている。
また、スロット3aの側端部近傍(図8の記載も参照すればスロット3aの開放端の近傍である。)の両側にはチップコンデンサがスロットを跨いで導体面2aに接続されており、技術常識からチップコンデンサは容量性リアクタンス素子であり、そして、「チップコンデンサ6は、1個のみに限定することはなく、複数個も受けてもよい。」の記載も考慮すれば、1個以上のチップコンデンサからリアクタンス回路が構成されているといえるから、引用例1には、『スロット3aの開放端の近傍に前記スロットを跨ぐように前記導体面2aに接続された、容量性リアクタンス素子を含むリアクタンス回路』が記載されているといえる。
また、スロット3aの垂直部下端(図8の記載も参照すればスロット3aの根本側である。)において同軸ケーブル4の内部導体と外部導体がそれぞれスロットの両端に接続されており、そして、上記イ.に記載されるように、前記同軸ケーブルにより前記スロットに給電が行われているから、引用例1には、『スロットの根本側に給電を行』う構成が記載されている。
また、上記イ.の「スロット長を約0.5λとしたことにより、スロット103は波長がλに対応する周波数の信号によって共振する。」に記載のように、スロットアンテナはスロット長に応じた所定の周波数で共振するアンテナであり、そして、上記ロ.の「スロット3に導体凸部を形成することによってコンデンサを形成したので、送受信波長λに対応したスロット長を短くすることができる。」に記載のように、コンデンサにより前記スロット長を短くすることができる。このことから、スロットアンテナ1bは、スロット長とチップコンデンサの設定容量値により、所定の周波数で共振するアンテナであるといえるから、引用例1には、『前記リアクタンス回路は、所定の周波数で所定のアンテナ共振点をもたらす容量値を示すよう前記容量性リアクタンス素子の値が設定された』構成が記載されているといえる。

したがって、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。

(引用発明)
「スロット3aを有する導体面2aと、
前記スロット3aの開放端の近傍に前記スロットを跨ぐように前記導体面2aに接続された、容量性リアクタンス素子を含むリアクタンス回路とを備え、
前記スロットの根本側に給電を行い、前記リアクタンス回路は、所定の周波数で所定のアンテナ共振点をもたらす容量値を示すよう前記容量性リアクタンス素子の値が設定された
スロットアンテナ1b。」

(2)当審の拒絶の理由に引用文献2として引用された特開2005-167730号公報(以下、「引用例2」という。)には、「多周波アンテナおよびそれを備えた情報端末機器」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

ニ.「【0035】
図1は、本発明の好適実施の形態である多周波アンテナを示す斜視図である。
【0036】
多周波アンテナ31は、リン青銅等からなるアンテナ素子としての導体板1と、ABS-PC(ABS樹脂)などの誘電体材料からなるアンテナ保持体6と、ガラスエポキシ材料等により形成された回路基板であるプリント配線基板7とを備えて構成される。
【0037】
プリント配線基板7は、機器のケースに設置されており、アースパターンとしての地板7aの層も併せて有している。プリント配線基板7上には、アンテナ外部から送受信する高周波信号を給電する給電端子2と、送受信を行うための給電源である高周波信号発信源21と、地板7aに接地するための接地端子3と、給電端子2より入力された高周波信号の位相をコントロールするための位相制御手段4と、位相制御手段4と導体板1を接続するための装置接続端子5とを備えた構成がなされている。
【0038】
導体板1の大きさは、標準的な携帯電話に適用される大きさに相当し、具体的にはデュアルバンド対応の内蔵アンテナ程度の大きさである。導体板1は、スリット9が設けられた片仮名コの字型のアンテナ素子であり、導体板1はアンテナ保持体6に融着により固定されている。
【0039】
アンテナ保持体6は、プリント配線基板7にネジ止めして固定されており、導体板1と、地板7aを有したプリント配線基板7とは対向して配置されている。なお導体板1は、地板7a(プリント配線基板7)に対向して配置される代わりに、必要に応じて地板7aの近傍に配置されることでも同じ導体板1としての機能を有する。
【0040】
アンテナ保持体6は、誘電体材料からなる保持体であり、小型化した導体板1の機械的な強度を補強するためにある。
【0041】
図示したように、アンテナ保持体6の側面には、3本の導電性の配線パターン32、33、35が形成されており、プリント配線基板7上に形成された給電端子2、接地端子3、装置接続端子5の各々が導体板1と電気的に接続されるようになっている。すなわち、アンテナ保持体6がプリント配線基板7に固定された状態では、導体板1と配線パターン32、33、35とが電気的に接続されており、配線パターン32と給電端子2が、配線パターン33と接地端子3が、また配線パターン35と装置接続端子5とが、各々電気的に接続される構造となっている。」(5頁?6頁)

ホ.「【0071】
図7は、図1に示した位相制御手段4にLC共振回路を用いた多周波アンテナ41の例である。
【0072】
LC共振回路24は、2つのインダクタ11a、11bと1つのキャパシタ12とを備えて構成される。LC共振回路24は、インダクタ11bとキャパシタ12を並列接続し、更にインダクタ11aを直列接続させた回路であり、インダクタ11aの一端は装置接続端子5に接続され、インダクタ11bとキャパシタ12の並列回路側の端子は接地されている。
【0073】
ここで使用するLC共振回路24は、使用する周波数の低域側において高抵抗であり、高域側においては低抵抗である特性を持つ等価的可変抵抗回路(等価的可変抵抗素子)としてのはたらきを有する。このため、LC共振回路24は、装置接続端子5に反射される電圧信号の位相を制御するはたらきを有する。
【0074】
低域側であるGSM850MHz帯及びGSM900MHz帯における共振周波数では、装置接続端子5で反射される高周波信号を電圧同位相(この高周波信号を電流で見た場合には概ね逆位相)で反射する。このとき、装置接続端子5では開放となり、遮断の状態になる。したがって、多周波アンテナ41は、給電端子2と接地端子3とにより、通常の板状逆Fアンテナと同様に1/4波長で共振する。
【0075】
高域側であるDCS1800MHz及びUS-PCS1900MHz帯の共振周波数では、LC共振回路24は、装置接続端子5で反射される高周波信号を電圧逆位相(この高周波信号を電流で見た場合には概ね同位相)で反射している。このとき、装置接続端子5は短絡となり、導通の状態になる。
【0076】
したがってこのとき多周波アンテナ41は、接地端子3に加えて装置接続端子5も共に接地されているため、接地端子3と装置接続端子5の両端を電位的な固定端として1/2波長で共振する。すなわち通常の板状逆Fアンテナの凡そ2倍の周波数で共振することになる。
【0077】
LC共振回路24を用いることにより、図2に示したスイッチ8のような駆動のための外部制御回路は必要としない。そのため、アンテナ周辺の設計が容易になる利点や、低価格化できるという利点がある。」(8頁?9頁)

上記ニ.?ホ.の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、
引用例2には、上記ホ.及び、図7に示されるような多周波アンテナ41について記載がある。ここで、前記多周波アンテナ41は、位相制御手段にLC共振回路を用いる以外は図1に示されるような多周波アンテナ31をベースとしているので、上記ニ.及び図1の記載を参酌すれば、前記多周波アンテナ41は、導体板1と地板7aが配線パターン33で短絡され、前記配線パターン33の近傍の開放端側(図1の斜め右下側)にて給電が行われる、いわゆる『逆Fアンテナ』である。
そして、上記ホ.の記載によれば、逆Fアンテナである多周波アンテナ41における開放端の近傍に位相制御手段としてLC共振回路が設けられている。前記LC共振回路は、2つのインダクタ、すなわち『誘導性リアクタンス素子』と1つのキャパシタ、すなわち『容量性リアクタンス素子』を含んで構成される『リアクタンス回路』であり、多周波アンテナ41は、前記『リアクタンス回路』の各素子の値により、低域側であるGSM850MHz帯及びGSM900MHz帯における共振周波数と、高域側であるDCS1800MHz及びUS-PCS1900MHz帯の共振周波数で共振するようにされている。

したがって、引用例2には以下の技術事項が開示されている。

「逆Fアンテナの開放端の近傍に、容量性リアクタンス素子と誘導性リアクタンス素子を含むリアクタンス回路を備え、前記リアクタンス回路の前記容量性リアクタンス素子と前記誘導性リアクタンス素子の各値を設定することにより、低域側の周波数及び高域側の周波数で共振するようにする技術。」

(3)当審の拒絶の理由に引用文献3として引用された特開2004-336328号公報(以下、「引用例3」という。)には、「アンテナ装置及び無線装置」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

ヘ.「【0036】
スリット13のギャップ部14に容量性リアクタンス素子16を設けたことによって、図6に示すようなインピーダンス軌跡が生じる原理を、図7から図10を参照して説明する。先ず、ノッチアンテナは、図7に示すように、図22の板状逆Fアンテナ(図7の左上の図は、図22の板状逆Fアンテナを横から見た場合の図である)のグランド201、短絡導体部203の幅、グランド201と放射導体202間のギャップ部を大きく変形した、いわば変形逆Fアンテナとも解釈できる。
【0037】
そうすると、図7の左下の矢印Cは、短絡導体部203の変形と考えられるため、図8の等価回路で示すように、コイル17を備えた誘導性リアクタンス分Cと見なせる。また、このノッチアンテナは、図9左上に示したようなインピーダンス特性を持つλ/4系のアンテナ(直列共振型アンテナ)に対し、並列に誘導性リアクタンス素子(コイル17)が装荷されているアンテナと解釈することができる。」(6頁)

上記ヘ.の記載及び関連する図面である図7の記載並びにこの分野における技術常識を考慮すると、
上記ヘ.には、図7の左下に示されたノッチアンテナが、図7の左上に示された「板状逆Fアンテナ」を変形したものとできることが記載されており、ここでノッチアンテナはスロットアンテナに相当するので、引用例3には、以下の技術事項が記載されている。

「スロットアンテナは、逆Fアンテナを変形したものに相当するから、スロットアンテナの開放端は逆Fアンテナの開放端に相当する。」

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「スロット3a」、「導体面2a」、「スロットアンテナ1b」は、明らかにそれぞれ本願発明の「スリット」、「地導体」、「ノッチアンテナ」に相当する。
引用発明の「リアクタンス回路」は、「容量性リアクタンス素子を含む」のみであるのに対し、本願発明の「リアクタンス回路」は、「容量性リアクタンス素子および誘導性リアクタンス素子を含む」点で相違するものの、両発明の「リアクタンス回路」は、「特定のリアクタンス素子を含む」点で共通する。
リアクタンス回路に含まれる前記特定のリアクタンス素子の各値の設定に関し、引用発明が「所定の周波数で所定のアンテナ共振点をもたらす容量値を示すよう」に各値が設定されているのに対し、本願発明では、「第1の周波数で第1のアンテナ共振点をもたらす容量値を示し、第2の周波数で第2のアンテナ共振点をもたらす容量値を示すよう」に各値が設定されている点で相違するものの、両発明は、「特定の周波数で特定のアンテナ共振点をもたらす容量値を示すよう」に各値が設定されている点で共通する。
したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「スリットを有する地導体と、
前記スリットの開放端の近傍に前記スリットを跨ぐように前記地導体に接続された、特定のリアクタンス素子を含むリアクタンス回路とを備え、
前記スリットの根本側に給電を行い、前記リアクタンス回路は、特定の周波数で特定ののアンテナ共振点をもたらす容量値を示すよう前記特定のリアクタンス素子の各値が設定された
ノッチアンテナ。」

(相違点)
(1)「リアクタンス回路」が含む「特定のリアクタンス素子」に関し、本願発明では「容量性リアクタンス素子および誘導性リアクタンス素子」であるのに対し、引用発明では、「容量性リアクタンス素子」のみであって誘導性リアクタンス素子を含んでいない点
(2)リアクタンス回路に含まれる特定のリアクタンス素子の各値の設定に関し、本願発明では、「第1の周波数で第1のアンテナ共振点をもたらす容量値を示し、第2の周波数で第2のアンテナ共振点をもたらす容量値を示すよう」に各値が設定されているのに対し、引用発明では「所定の周波数で所定のアンテナ共振点をもたらす容量値を示すよう」に各値が設定されている点

そこで、上記相違点(1)及び(2)について検討する。
引用発明のスロットアンテナ1bは、リアクタンス回路に容量性リアクタンスのみを有し、前記容量性リアクタンスの各値を設定することで所定の周波数で所定のアンテナ共振点を得る、いわば、単一の周波数(帯域)対応のアンテナであり、これに対して、本願発明のノッチアンテナは、リアクタンス回路に容量性リアクタンス及び誘導性リアクタンス素子を有し、前記容量性リアクタンスおよび誘導性リアクタンス素子の各値を設定することで第1および第2の周波数でそれぞれ第1および第2のアンテナ共振点を得る、いわば、複数周波数(帯域)対応のアンテナである。

ここで、アンテナを2以上の複数周波数(帯域)で共振させて複数周波数(帯域)対応のアンテナにすることは、当該分野において周知の課題にすぎず、引用発明の単一周波数(帯域)対応のスロットアンテナ1bを2以上の複数周波数(帯域)対応のスロットアンテナとすることは当業者が適宜想到し得ることであり、当業者であれば、上述した引用例2に記載される「逆Fアンテナの開放端の近傍に、容量性リアクタンス素子と誘導性リアクタンス素子を含むリアクタンス回路を備え、前記リアクタンス回路の前記容量性リアクタンス素子と前記誘導性リアクタンス素子の各値を設定することにより、低域側の周波数及び高域側の周波数で共振するようにする技術」を、上述した引用例3に示される技術事項である「スロットアンテナは、逆Fアンテナを変形したものに相当するから、スロットアンテナの開放端は逆Fアンテナの開放端に相当する」ことに基づき引用発明に適用して、スロット3a(スリット)の開放端のリアクタンス回路を「容量性リアクタンス素子および誘導性リアクタンス素子」を含むものとして、低域側の周波数、すなわち「第1の周波数」で「第1のアンテナ共振点をもたらす容量値を示」すように、また、高域側の周波数、すなわち「第2の周波数」で「第2のアンテナ共振点をもたらす容量値を示すよう」に前記「容量性リアクタンス素子および誘導性リアクタンス素子」の各値を設定することは適宜為し得ることにすぎない。

このように上記相違点は格別なものでない。そして、本願発明の作用効果は、引用発明及び引用例2、3記載の技術事項から当業者が予測し得る範囲のものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2、3記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-04-30 
結審通知日 2013-05-07 
審決日 2013-05-21 
出願番号 特願2008-228002(P2008-228002)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 米倉 秀明  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 山中 実
菅原 道晴
発明の名称 ノッチアンテナおよび無線装置  
代理人 山野 睦彦  

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