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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M
管理番号 1280245
審判番号 不服2012-10280  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-06-04 
確定日 2013-10-10 
事件の表示 特願2007-209399「通信装置、通信装置の制御方法、プログラム及び記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 2月26日出願公開、特開2009- 44618〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明の認定
本願は、平成19年8月10日の出願であって、平成24年3月29日付けで拒絶査定がなされ、同年6月4日に付けで審判請求がなされ、同日付で手続補正がなされたものであり、これに対して、平成25年4月19日付けで、当審から拒絶理由が通知され、さらにこれに対して、同年6月17日に意見書のみが提出されたものである。
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、平成24年6月4日付けで、審判請求書とともに提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下の通りのものと認める。
「【請求項1】
通信相手先の宛先データを格納する第1の宛先データベースを記憶する記憶手段と、
第2の宛先データベースを記憶する着脱可能な記憶媒体と、
装置の通信動作が行われる際、前記第1の宛先データベースから通信相手の宛先データを読み出し、前記宛先データを基に前記通信相手との通信を行うとともに、前記第2の宛先データベースに前記宛先データを格納させる制御を行う制御手段と、
を有し、
前記制御手段は、装置の通信動作が行われる際、前記第2の宛先データベースから、通信相手の宛先データを読み出し、前記宛先データを基に前記通信相手との通信を行うことを特徴とする通信装置。 」

2.引用発明の認定
一方、当審で平成25年4月19日付けの拒絶理由で引用した、特開2002-84359号公報(以下、「引用例1」と言う。)には、図面とともに以下の記載がある。
イ.「 【0040】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係る携帯情報端末を示す構成図である。同図において、本実施形態の携帯情報端末100は、送信および受信を司る送受信部110と、ユーザからの指示を受け付ける入力部120と、当該携帯情報端末100が持つ様々な機能を制御する制御部130と、制御部130における制御に基づいて出力する出力部140と、発信履歴および着信履歴(以下、履歴情報という)を記憶する記憶部150とを備えて構成されている。
【0041】
ここで、記憶部150は、例えば揮発性および不揮発性の半導体メモリ(RAM,ROM,EEPROM,フラッシュメモリ)等で実現される。なお、記憶部150内の所定の領域には、図2に示すようなユーザが登録した電話帳記憶テーブル、発信履歴記憶テーブルおよび着信履歴記憶テーブルが記憶されている。ここで、図2(a)は、記憶部150内における所定の領域に記憶された電話帳記憶テーブルを例示する説明図であり、図2(b)は、記憶部150内における所定の領域に記憶された発信履歴記憶テーブルを例示する説明図であり、図2(c)は、記憶部150内における所定の領域に記憶された着信履歴記憶テーブルを例示する説明図である。
【0042】
図2(a)に示すように、電話帳記憶テーブルには、ユーザがよく利用する電話番号を、その名前とともに数百件以上登録することができる。
また、図2(b)に示すように、着信時に、相手の電話番号が通知されてくると、その電話番号および着信した日時を着信履歴として着信履歴記憶テーブルに記憶される。なお、その電話番号が電話帳記憶テーブルに登録されている場合には、着信した日時、電話番号およびその名前が着信履歴記憶テーブルに記憶される。
さらに、図2(c)に示すように、発信時に、電話番号をキー入力して発信した場合には、発信した日時および電話番号が発信履歴として記憶され、また、電話帳記憶テーブルを呼び出し、電話番号を選択して発信した場合には、発信した日時、電話帳記憶テーブルから選択した電話番号およびその名前が、発信履歴として発信履歴記憶テーブルに記憶される。なお、発信時または着信時の日時は、携帯情報端末内の時計機能を用いる。」

ロ.「 【0047】
次に、ステップS303の判断において、待受け時に通話相手の履歴情報を保存する設定がなされているときは、ステップS304に進む。ステップS304では、通話相手の履歴情報を記憶部150に記憶する設定となっている旨を出力部140を介してユーザに通知する。ここで、出力部140によるユーザへの通知は、例えば、LCD表示パネルに表示される画像やテキスト、スピーカ等による警告音、LEDやレーザダイオード等による光、或いはモータによる振動等でユーザに通知するものである。このようなユーザへの通知により、ユーザが現時点で履歴情報を保存する/しないの何れかを選択しているかを確認することができる。次に、ステップS305では、電話番号をキー入力して発信するか、または電話帳記憶テーブルを呼び出し、所望の電話番号を選択して発信し、ステップS306で、相手との通話が行われることになる。このとき、バッファメモリ132には通話相手の電話番号、名前、日時のデータが書き込まれているが、電話番号はキー入力または選択されたものであり、名前は電話帳記憶テーブルに該電話番号に対応して登録されているものであり、該当する名前がなければ空白となる。さらに、日時のデータは、当該携帯情報端末が持つ時計機能により得られる。そして、ステップS307で、通話を終了すると、ステップS308では、バッファメモリ132に一時的に記憶されている通話相手の履歴情報を記憶部150の発信履歴記憶テーブルに保存する。 」

上記引用例1のイ.?ロ.の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、
上記イ.の記載から、携帯情報端末に関する発明であることは明らかである。
上記イ.の特に段落【0041】の記載から、図2(a)に記載されているような、NO.と、電話番号と、名前からなる電話帳記憶テーブルを、記憶部150内における所定の領域に記憶することは明らかであるし、NO.と、電話番号、名前、日時からなる発信履歴記憶テーブル及び着信履歴記憶テーブルを、記憶部150内における所定の領域に記憶していることも明らかである。
ここで、電話帳記憶テーブルが記憶された記憶部の所定の領域と、発信履歴記憶テーブルが記憶された記憶部の所定の領域は、別の領域であることは明らかである。(ここで、図2(b)の表記では、着信履歴記憶テーブルと記載されているが、これは、発信履歴記憶テーブルの誤記であって、逆に、図2(c)の表記では、発信履歴記憶テーブルと記載されているが、これは、着信履歴記憶テーブルの誤記であると当審で判断し、それぞれそのように認定した。)
また、上記イ.の特に段落【0042】には、「電話帳記憶テーブルを呼出し電話番号を選択して発信した場合には、発信した日時、電話帳記憶テーブルから選択した電話番号およびその名前が、発信履歴として発信履歴記憶テーブルに記憶される。」と記載されている。同様の動作を説明したものが、上記ロ.にも記載されている。
したがって、上記引用例1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が開示されていると認められる。
(引用発明1)
「携帯情報端末であって、
記憶部150における所定の領域に記憶された電話帳記憶テーブルを有し、
記憶部150における前記所定の領域とは別の領域に記憶された発信履歴記憶テーブルを有し、
電話帳記憶テーブルを呼出し電話番号を選択して発信した場合には、
発信した日時、電話帳記憶テーブルから選択した電話番号およびその名前が、発信履歴として、記憶部150における前記所定の領域とは別の領域に記憶された発信履歴記憶テーブルに記憶される携帯情報端末。」

(引用発明2の認定)
一方、当審で平成25年4月19日付けの拒絶理由で引用した、特開平11-234385号公報(以下、「引用例2」と呼ぶ。)には、図面とともに以下の記載がある。
ハ.「 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、IDコードやメモリダイヤルなどの特定情報を格納可能なICカードが電気的に接続可能に構成された通信装置に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
近年、電気通信技術の進歩に伴って、例えば車載用電話装置や携帯電話装置などの通信装置が広く普及しており、その一つとして、ICカードを利用した車載用電話装置が考えられている。このものは、ICカードとして加入者番号(IDコード)を含んでなる特定情報が格納されたSIM(Subscriber Identity Module)カードを採用し、例えば該SIMカードを車載用電話装置に挿入することによって、そのSIMカードの加入者番号に基づいて、通話やデータ通信が可能となるものである。
【0003】
この場合、上記した特定情報は、加入者番号の他に、メモリダイヤル、累積通話時間、累積通話料金、発信履歴、着信履歴ならびにカード製造番号などを含んで構成されている。しかして、使用者は、所定のキー操作を行うことによって、SIMカードに格納されている例えばメモリダイヤルを、車載用電話装置のメモリに転送し、ディスプレイに表示させる、つまり、メモリダイヤルを読出すことができ、その読出したメモリダイヤルに基づいて発信(発呼)することができるようになる。」

上記引用例2の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、
上記ハ.の特に段落【0002】には、「ICカードとして加入者番号(IDコード)を含んでなる特定情報が格納されたSIM(Subscriber Identity Module)カードを採用して」と記載され、段落【0003】には、「上記した特定情報は、加入者情報の他に・・(中略)・・発信履歴・・(中略)・・などを含んで構成されている。」と記載されており、また段落【0002】に「SIMカードは、車載用電話装置に挿入する」と記載されているように、SIMカードが、着脱可能な記憶媒体であることは明らかであるので、
上記引用例2には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が開示されていると認められる。
(引用発明2)
「ICカードとして加入者番号(IDコード)を含んでなる特定情報が格納されたSIM(Subscriber Identity Module)カード等の着脱可能な記憶媒体において、特定情報は、発信履歴を含んで構成される、着脱可能な記憶媒体。」

3.対比・判断
本願発明と、上記引用発明1とを対比すると、
引用発明1の「携帯情報端末」は、電話の発着信を行うものであるので、本願発明の「通信装置」に対応しており、引用発明1の「電話帳記憶テーブル」は、本願発明の「通信相手先の宛先データを格納する第1の宛先データベース」に相当する。
引用発明1の「電話帳記憶テーブルから選択した電話番号」は、電話発信時に、電話帳記憶テーブルから選択して、発信動作に利用するものであることは明らかなので、本願発明の「通信相手の宛先データ」に相当する。そして、引用発明1の「電話帳記憶テーブルを呼出し電話番号を選択して発信した場合」は、本願発明の「前記第1の宛先データベースから通信相手の宛先データを読み出し、前記宛先データを基に前記通信相手との通信を行う」ことに相当する。

さらに、引用発明1の「発信履歴記憶テーブル」は、発信した日時、電話帳記憶テーブルから選択した電話番号およびその名前が、発信履歴として記憶されているものなので、ある種の「宛先データベース」であると認められるから、本願発明の「第2の宛先データベース」に相当する。

以上のことより、引用発明1における「発信した日時、電話帳記憶テーブルから選択した電話番号およびその名前が、発信履歴として発信履歴記憶テーブルに記憶される」点が、本願発明の(前記第1の宛先データベースから通信相手の宛先データを読み出し、前記宛先データを基に前記通信相手との通信を行うとともに、)「第2の宛先データベースに前記宛先データを格納させる」点に相当する。
また、引用発明1の発信履歴の記憶にも、本願発明の宛先データの格納と同様に、そのような動作を行うための制御手段が存在することは、当業者にとって自明である。

また、引用発明1の2つの(記憶)「領域」で構成される「記憶部150」と、本願発明の「通信相手先の宛先データを格納する第1の宛先データベースを記憶する記憶手段」と「第2の宛先データベースを記憶する着脱可能な記憶媒体」とは、記憶手段と記憶媒体との2つに分かれている点を除けば、宛先データ等を記憶する構成である点で共通しており、引用発明1の「記憶部150」の「領域」のうち、「電話帳記憶テーブル」を記憶した「領域」が、本願発明の「通信相手先の宛先データを格納する第1の宛先データベースを記憶する記憶手段」の機能を果たし、引用発明1の「記憶部150」の「発信履歴記憶テーブル」を記憶した「別の領域」が、本願発明の「第2の宛先データベースを記憶する記憶手段」の機能を果たしていることは、明らかである。

したがって、本願発明と、上記引用発明1とは、以下の点で一致し、相違する。

(一致点)
「 通信相手先の宛先データを格納する第1の宛先データベースを記憶し、
第2の宛先データベースを記憶する構成と、
装置の通信動作が行われる際、前記第1の宛先データベースから通信相手の宛先データを読み出し、前記宛先データを基に前記通信相手との通信を行うとともに、前記第2の宛先データベースに前記宛先データを格納させる制御を行う制御手段と、
を有する通信装置。」

(相違点)
相違点1:宛先データベースを記憶するための構成に関して、本願発明が、「記憶手段」と、「着脱可能な記憶媒体」の2つで構成されているのに対して、引用発明1は、本願の上記2つの構成が果たす機能を有するものが、「記憶部150」という1つの構成であって、本願発明のように、記憶手段と記憶媒体という2つのものから構成されていない点。
相違点2:第2の宛先データベースの記憶に関して、本願発明が「着脱可能な記憶媒体」に記憶するのに対して、引用発明1の「発信履歴記憶テーブル」が記憶されるのは、記憶部150の(記憶)の「領域」であり、「着脱可能な記憶媒体」ではない点。
相違点3:第2の宛先データベースに関して、本願発明が「装置の通信動作が行われる際、前記第2の宛先データベースから、通信相手の宛先データを読み出し、前記宛先データを基に前記通信相手との通信を行う」のに対して、引用発明1は、第2の宛先データベースに対応する「発信履歴記憶テーブル」に基づいて、発信動作を行えるかどうか明らかでない点。

(相違点についての判断)
相違点1、相違点2について検討すると、引用発明1における「記憶部150」は、(記憶)「領域」を少なくとも2つ有しており、それぞれの(記憶)「領域」が、それぞれ、電話帳記憶テーブルを記憶する機能と、発信履歴記憶テーブルを記憶する機能を有していることは明らかである。2つの機能をそれぞれ有する(記憶)「領域」を、別々の記憶手段として構成することは、当業者が必要に応じて適宜行い得た程度のことであって、格別のものではない。また、引用発明の発信履歴の記憶先である、記憶部150の所定の領域と別の領域に記憶することに換えて、引用発明2の、ICカードとして加入者番号(IDコード)を含んでなる特定情報が格納されたSIM(Subscriber Identity Module)カード等の着脱可能な記憶媒体に記憶するような構成とすることは、引用発明1および引用発明2の双方が、携帯電話機等の技術分野に属することから、当該技術分野の当業者にとって容易に想到し得たものであって、発信履歴記憶テーブルを記憶するための構成を、「着脱可能な記憶媒体」とすることは、当業者にとって格別のものではない。
一方、相違点3について検討すると、
例えば、特開平11-41338号公報には、図面とともに以下の記載がある。
「【0002】
【従来の技術】
従来の携帯電話機としては電話帳機能を備えたものがあり、予め利用者が入力した名前及び電話番号を電話帳メモリに記憶しておき、検索の指示が入力された場合に、電話帳メモリを検索して所望の電話番号を読み出して表示し、発信指示が入力されると発信(発呼)するようになっていた。この電話帳機能を用いると 、頻繁に発信する相手先の場合、その都度電話番号を入力しなくてすみ、少ない操作で発信できるものである。」、
「【0005】
更に、従来の携帯電話機には、発信した番号(発信番号)を新しい順に数個記憶しておき、リダイヤル(再ダイヤル)の指示が入力されると、最新発信番号から順に発信番号を表示して、選択された電話番号に発信する機能を備えたものがあった。」

他に、特開2001-251413号公報には、図面とともに以下の記載がある。
「【0020】
○2発信履歴から発信することを選択した(307でY)場合は、キー操作により、発信履歴を表示(308)し、その中から発信相手を検索する(309)。発信履歴の中から該当者を検索できれば(314でY)、発信相手の電話番号を決定する(315)。もし、該当者が見つからなければ(314でN)、他の手段で発信する。」(ただし、”○2”は、○の中に2を記載したものを意味する。)

したがって、発信履歴データを基に通信相手との通信を行う(発信動作を行う)ことは、当業者に周知の技術である。

よって、前記引用発明1の「発信履歴記憶テーブル」において、上記周知技術の、発信履歴データを基に通信相手への発信動作を行うことを適用して、「発信履歴記憶テーブル」のデータを基に通信相手との通信を行うように構成することは、当業者が容易に想到し得るものであって、引用発明の「発信履歴記憶テーブル」が、本願発明の「第2の宛先データベース」に相当するから、本願発明のように「装置の通信動作が行われる際、前記第2の宛先データベースから、通信相手の宛先データを読み出し、前記宛先データを基に前記通信相手との通信を行う」ように構成することは、当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願発明の作用効果も、前記引用発明及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-12 
結審通知日 2013-08-13 
審決日 2013-08-28 
出願番号 特願2007-209399(P2007-209399)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高野 洋  
特許庁審判長 田中 庸介
特許庁審判官 山中 実
新川 圭二
発明の名称 通信装置、通信装置の制御方法、プログラム及び記録媒体  
代理人 机 昌彦  
代理人 下坂 直樹  

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