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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1280247
審判番号 不服2012-12375  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-06-29 
確定日 2013-10-10 
事件の表示 特願2007- 50404「移動機の制御方法及び移動機」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 9月18日出願公開、特開2008-219169〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成19年2月28日の出願であって、平成25年4月23日付けで当審から拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、これに対して平成25年7月4日に手続補正がなされたものである。


第2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年7月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次の事項により特定されるものであると認める。

「【請求項1】
移動機を識別するために基地局から割り当てられた移動機識別子を保持したまま、該移動機を省電力にする半接続状態への遷移要求を前記基地局に送信し、
該要求に対する応答を前記基地局から受信し、
該受信した応答が前記半接続状態への遷移要求に対して許可できない旨を示している場合、前記応答に付されている許可できない理由に応じて、前記遷移要求の再送を禁止し、前記応答に付されている許可できない理由が、ネットワークがサポートしていないことである場合、前記遷移要求の再送を禁止することを特徴とする移動機の制御方法。」


第3.引用発明
当審拒絶理由に引用された刊行物1(Connection Control Plane for Ultra Mobile Broadband (UMB) Air Interface Specification、3GPP2 C.P0084-0-06 Version 0.60、その他、2007.02.15掲載、pp.5-52-5-71、Retrieved from the Internet : URL : http://ftp.3gpp2.org/TSGC/Working/2007/2007-02-Seoul/TSG-C-2007-02-Seoul/WG2/SWG22/C22-20070212-018R2_ConnectionPlane_RF%20Resolution.doc)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(a)第5-67頁第23-25行
「5.7.5 Semi Connected Request
This message shall be sent by the access terminal to the access network to request Semi-Connected Operation.」
(当審訳:5.7.5 半接続要求
このメッセージは、半接続オペレーションを要求するために、アクセス端末によって、アクセスネットワークに送信される。)

(b)第5-68頁第3-8行
「Message Sequence
The access terminal shall set this field to the sequence number of this message. The sequence number of this message is 1 more than the sequence number of the last SemiConnectedRequest message (modulo 65536) sent by this access terminal. If this is the first SemiConnectedRequest message sent by the access terminal, it shall set this field to 0x00. 」
(当審訳:メッセージ・シーケンス
アクセス端末は、この項目にこのメッセージの通し番号を設定する。このメッセージの通し番号は、このアクセス端末によって送信された直近の半接続要求メッセージの通し番号(モジュロ65536)よりも、1だけ大きい。もし、これが、そのアクセス端末によって送信される最初の半接続要求メッセージならば、この項目は0X00に設定される。)

(c)第5-69頁第2-4行
「5.7.6 Semi Connected Response
This message shall be sent by the access network to control transitions between Open State and Semi-Connected State.」
(当審訳:5.7.6 半接続応答
このメッセージは、オープン状態と半接続状態との間の遷移を制御するために、アクセスネットワークによって送信される。)

(d)第5-69頁第10-13行
「Semi Connected Status
The access network shall set this field to one to indicate successful transition to Semi-Connected State. The access network shall set this field to zero to indicate transition to Connected State.」
(当審訳:半接続ステータス
アクセスネットワークは、半接続状態への遷移に成功したことを示すために、この項目を1に設定する。アクセスネットワークは、接続状態への遷移を示すために、この項目を零に設定する。)

(e)第5-69頁第14-18行
「Semi Connected Failure Code
This field shall be set to '00' if SemiConnectedStatus is equal to '1', and to a failure code value otherwise.The failure code values are '01' for Semi-Connected Mode not supported, '10' for failure due to non-empty buffer and '11' for general failure. 」
(当審訳:半接続失敗コード
半接続ステータスが「1」ならば、この項目は「00」に設定される。半接続ステータスが「1」でなければ、この項目には失敗コードが設定される。半接続モードがサポートされてなければ、失敗コードの値は「01」であり、空きバッファがなければ、失敗コードの値は「10」であり、一般的な失敗の場合は、失敗コードの値は「11」である。)

したがって、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「アクセス端末は、半接続オペレーションを要求するために、半接続要求をアクセスネットワークに送信し、
半接続要求のメッセージ・シーケンスという項目には、このアクセス端末によって送信された直近の半接続要求メッセージの通し番号よりも、1だけ大きい通し番号が設定され、
アクセスネットワークは、半接続応答を送信し、
半接続応答の半接続ステータスという項目は、半接続状態への遷移に成功したことを示すために、1に設定され、接続状態への遷移を示すために、零に設定され、
半接続応答の半接続失敗コードという項目には、半接続ステータスが「1」でなければ、失敗コードが設定され、
半接続失敗コードは、半接続モードがサポートされてなければ、「01」に設定される、
アクセス端末の制御方法。」


第4.本願発明と引用発明の一致点・相違点
引用発明のアクセス端末が、本願発明の「移動機」に相当する。
「半接続状態」が「移動機を識別するために基地局から割り当てられた移動機識別子を保持したまま、該移動機を省電力にする」状態であることは、技術常識である。
引用発明の半接続要求をアクセスネットワークに送信することが、本願発明の「半接続状態への遷移要求を前記基地局に送信し、」に相当する。

引用発明のアクセス端末は、アクセスネットワークから送信される半接続応答を受信するから、本願発明と引用発明とは、「該要求に対する応答を前記基地局から受信」する点で一致している。
引用発明の半接続応答の半接続ステータスが零である場合が、本願発明の「該受信した応答が前記半接続状態への遷移要求に対して許可できない旨を示している場合、」に相当する。
引用発明の半接続応答の半接続失敗コードが「01」である場合が、本願発明の「前記応答に付されている許可できない理由が、ネットワークがサポートしていないことである場合、」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明の一致点・相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「移動機を識別するために基地局から割り当てられた移動機識別子を保持したまま、該移動機を省電力にする半接続状態への遷移要求を前記基地局に送信し、
該要求に対する応答を前記基地局から受信し、
該受信した応答が前記半接続状態への遷移要求に対して許可できない旨を示している場合、前記応答に付されている許可できない理由が、ネットワークがサポートしていないことである場合がある、
移動機の制御方法。」

[相違点]
本願発明では、応答に付されている許可できない理由に応じて、遷移要求の再送を禁止し、応答に付されている許可できない理由が、ネットワークがサポートしていないことである場合、遷移要求の再送を禁止するのに対して、引用発明では、応答に付されている許可できない理由が、ネットワークがサポートしていないことである場合、どのようにするのか特定されていない点。


第5.相違点についての検討
引用発明では、半接続要求のメッセージ・シーケンスという項目には、このアクセス端末によって送信された直近の半接続要求メッセージの通し番号よりも、1だけ大きい通し番号が設定する。したがって、引用発明では、アクセス端末が複数回の半接続要求を送信することを前提としてシステムが構築されている。このことは、引用発明では、半接続要求が拒絶された場合、アクセス端末は、基本的に再度、半接続要求を送信することを意味しているといえる。

当審拒絶理由に引用された刊行物2(特開2001-54174号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(f)段落番号【0009】
「無線通信システムを運用するための方法が、この方法によって動作するシステムと同様に開示される。当該方法には、(a)特定の加入者のためにネットワークにより提供されるかまたはもう1人の側により提供される、特定のタイプのサービス(高度パーソナルサービスまたはAPS要求)について、移動局内で要求を表明する段階、(b)その要求を無線チャネル上で該ネットワークに伝送する段階、」

(g)段落番号【0024】
「図3?図8は、本発明の種々の実現方法に基づくシグナリングを表す図である。より特定的に言うと、図3?図5は、まず最初に述べる本発明のI-シグナリング実現に関する。ネットワーク32が、System Info Message 内でかまたは Cell Broadcastingによってか、のいずれかによりAPSをサポートしているのか、を指示することができる場合には、後続する対話は発生しないということに留意されたい。APSがネットワーク32によりサポートされていないことを移動局10が知っている場合には、移動局10がAPS呼を発しないことが好ましい。」

刊行物2は、ネットワーク32によって送信される各種メッセージによって、APSがネットワーク32によりサポートされていないことを移動局10が事前に知っている場合には、移動局10が最初のAPS呼を発しないものであり、最初のAPS呼を発した後にAPS呼を許可できない旨の応答に応じて再度のAPS呼を禁止する技術ではない。
また、刊行物2は、APS呼を許可できない旨の応答に付されている理由が、APSがネットワーク32によりサポートされていないことであった場合に、APS呼の再送を禁止するものではない。しかし、「刊行物2が、APS呼を許可できない旨の応答に付されている理由が、APSがネットワーク32によりサポートされていないことであった場合に、APS呼の再送を禁止するものであること。」は、本願発明の進歩性を否定するために必要不可欠な事項ではない。その理由は、以下の論理を参照すれば明らかである。

刊行物2の「APSがネットワーク32によりサポートされていないことを移動局10が知っている場合には、移動局10がAPS呼を発しないことが好ましい。」という文章に、当業者が接すれば、「APSがネットワーク32によりサポートされていないことを移動局10が知っている場合に、移動局10がAPS呼を発しないことが、なぜ好ましいのか。」という理由を考えるはずである。そしてその答えが、「APSがネットワーク32によりサポートされていなければ、仮に移動局10がAPS呼を発しても拒否されることは明白であり、移動局10のAPS発呼は無駄な動作となるから。」であることは明らかである。そして、この「APSがネットワーク32によりサポートされていなければ、仮に移動局10がAPS呼を発しても拒否されることは明白であり、移動局10のAPS発呼は無駄な動作となること。」が、「APSがネットワーク32によりサポートされていないこと。」に依るものであり、「APSがネットワーク32によりサポートされていないこと。」を移動局10が知るに至った経緯には依存していないことも明らかである。
したがって、刊行物2の「APSがネットワーク32によりサポートされていないことを移動局10が知っている場合には、移動局10がAPS呼を発しないことが好ましい。」という文章に、当業者が接すれば、当業者は「サポートされていないサービスを要求しても、その要求は拒否され、該要求は無駄な要求となるから、そのような要求をすべきではない。」という教訓を得る。

この教訓を得た当業者が引用発明に接すれば、半接続失敗コードが「01」に設定され、半接続モードがサポートされていないことを示す半接続応答を受信した後は、無駄となることが明らかな半接続要求を送信すべきではないと考えることは、当然である。
したがって、引用発明において、応答に付されている許可できない理由が、ネットワークがサポートしていないことである場合、半接続要求の再送を禁止して、相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び刊行物2に記載された発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び刊行物2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-07-31 
結審通知日 2013-08-13 
審決日 2013-08-28 
出願番号 特願2007-50404(P2007-50404)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 阿部 圭子  
特許庁審判長 江口 能弘
特許庁審判官 佐藤 聡史
加藤 恵一
発明の名称 移動機の制御方法及び移動機  
代理人 杉村 憲司  
代理人 大倉 昭人  

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