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審決分類 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 A47G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47G
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 A47G
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A47G
管理番号 1280350
審判番号 不服2011-27256  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-16 
確定日 2013-10-15 
事件の表示 特願2011- 36862号「制電性多機能カーペット」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 7月21日出願公開、特開2011-139908号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成21年8月11日に出願した特願2009-186390号の一部を平成23年2月23日に新たな特許出願したものであって、平成23年9月2日付けで手続補正がなされた後、同年9月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年12月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

2.平成23年12月16日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[結論]
平成23年12月16日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)本件補正
本件補正は、特許請求の範囲の補正を含むものであって、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1、すなわち、
「【請求項1】
アクリル繊維又はナイロン繊維の表面に硫化銅を被膜して形成した導電性繊維からなる制電糸をパイル糸に含ませると共に、アンモニアやトリメチルアミンをイオン結合で消臭するカルボキシル基を導入した消臭糸をパイル糸に含ませてなるタフテッドカーペットにおいて、
該タフテッドカーペットのパイル糸に、アクリル繊維或はナイロン繊維の表面に硫化銅を被膜して形成した導電性繊維からなる制電糸を0.2%含ませると共に、消臭糸を10%含ませたことを特徴とする制電性多機能カーペット。」
を、本件補正後の請求項1、すなわち、
「【請求項1】
アクリル繊維又はナイロン繊維の表面に硫化銅を被膜して形成した導電性繊維からなる制電糸をパイル糸に含ませると共に、アンモニアやトリメチルアミンをイオン結合で消臭するカルボキシル基を導入した消臭糸をパイル糸に含ませてなるタフテッドカーペットにおいて、該タフテッドカーペットのパイル糸に含ませた制電糸はアクリル繊維又はナイロン繊維に硫化銅としてダイジェナイト(CU_(9)S_(5))を化学結合して極薄の被膜層を形成した導電性繊維を用いて形成し、且つパイル糸に含ませた消臭糸は二酸化チタンの光触媒を付着させてなることを特徴とする制電性多機能カーペット。」(下線は、補正箇所を示す。)
とする補正事項を含むものである。

つまり、本件補正は、補正前の請求項1の「・・・該タフテッドカーペットのパイル糸に、アクリル繊維或はナイロン繊維の表面に硫化銅を被膜して形成した導電性繊維からなる制電糸を0.2%含ませると共に、消臭糸を10%含ませた・・・」を、補正後の請求項1の「・・・該タフテッドカーペットのパイル糸に含ませた制電糸はアクリル繊維又はナイロン繊維に硫化銅としてダイジェナイト(CU_(9)S_(5))を化学結合して極薄の被膜層を形成した導電性繊維を用いて形成し、且つパイル糸に含ませた消臭糸は二酸化チタンの光触媒を付着させてなる・・・」とする補正事項を含むものである。

(2)本件補正の目的
本件補正の上記補正事項は、補正前の請求項1の「制電糸を0.2%含ませると共に、消臭糸を10%含ませた」を削除し、補正後の請求項1の記載を、「制電糸を0.2%含ませると共に、消臭糸を10%含ませた」ことを発明特定事項として含まないものにするものであるから、特許請求の範囲を拡張するものであって、特許請求の範囲の限定的減縮を目的としたものとは認められない。

また、本件補正の上記補正事項は、請求項の削除、誤記の訂正、あるいは明りょうでない記載の釈明のいずれを目的としたものとも認められない。

したがって、上記補正事項を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項各号に掲げる何れの事項を目的とするものではないので、同法第17条の2第5項の規定に違反する。

(3)まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年9月2日付け手続補正書により補正された、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「アクリル繊維又はナイロン繊維の表面に硫化銅を被膜して形成した導電性繊維からなる制電糸をパイル糸に含ませると共に、アンモニアやトリメチルアミンをイオン結合で消臭するカルボキシル基を導入した消臭糸をパイル糸に含ませてなるタフテッドカーペットにおいて、
該タフテッドカーペットのパイル糸に、アクリル繊維或はナイロン繊維の表面に硫化銅を被膜して形成した導電性繊維からなる制電糸を0.2%含ませると共に、消臭糸を10%含ませたことを特徴とする制電性多機能カーペット。」

4.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の原出願の出願前に日本国内に頒布された刊行物である特開2002-10900号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(ア)「・・・
【請求項3】 タフテッドパイル布帛のバックステッチ面の全面に接着剤16を塗布して仕上げられたタフテッドカーペットにおいて、全てのパイル13が熱可塑性合成繊維を主材とし1重量%未満となる導電性繊維11が混在するパイル糸によって構成されており、その導電性繊維11が硫化銅の導入されたシアノ基を有する熱可塑性合成繊維であり、接着剤16がガラス転移温度-20℃?-45℃のカルボキシル化変性スチレン・ブタジエン・ゴムラテックスを主材とし、その固形分100重量部に対して20?60重量部となる帯電防止剤と60重量部以下の固形微粉末を配合して調製されており、その帯電防止剤が比表面積が500g/m^(2)以上、長さが0.5?3.0mm、直径が20μm以下の繊維状カーボンブラックであることを特徴とする制電性カーペット。
【請求項4】 前掲請求項3に記載の導電性繊維11が硫化銅の導入された導電性アクリル繊維であることを特徴とする前掲請求項3に記載の制電性カーペット。」(特許請求の範囲)
(イ)「【発明の属する技術分野】本発明は、パイル面が静電気を帯び難い制電性カーペットに関するものである。」(段落【0001】)
(ウ)「本発明に係るカーペットは、タフテッドパイル布帛のバックステッチ面の全面に接着剤16を塗布して仕上げられたタフテッドカーペットであり、全てのパイル13が熱可塑性合成繊維を主材とし1重量%未満となる導電性繊維11が混在するパイル糸によって構成されており、その導電性繊維11が硫化銅の導入されたシアノ基を有する熱可塑性合成繊維であり、接着剤16がガラス転移温度-20℃?-45℃のカルボキシル化変性スチレン・ブタジエン・ゴムラテックスを主材とし、その固形分100重量部に対して20?60重量部となる帯電防止剤と60重量部以下の固形微粉末を配合して調製されており、その帯電防止剤が、比表面積が500g/m^(2)以上、長さが0.5?3.0mm、直径が20μm以下の繊維状カーボンブラックであることを第3の特徴とする。
本発明に係るカーペットの第4の特徴は、上記の第3の特徴に加え、上記の導電性繊維11を硫化銅の導入された導電性アクリル繊維としたことにある。」(段落【0008】?【0009】)
(エ)「【発明の実施の形態】導電性繊維11は、基布12を構成する経糸や緯糸にも混用するとよい。ダブルラッシェル経編カーペットでは、パイル糸のバックステッチ15が基布12を構成する地経糸と一体になったニードルループを形成しており、パイル糸に混用された導電性繊維11は基布12の表裏に露出することになり、その基布12の表側(パイル面側)に露出した導電性繊維11がパイル面の制電に大きく寄与することになる。従って、好ましくは、ダブルラッシェル経編パイル布帛に本発明を適用する。
パイル糸の主材となる熱可塑性合成繊維、及び、導電性繊維の素材となる熱可塑性合成繊維は、それらの合成繊維が同質となるポリエステル繊維又はアクリル繊維、好ましくは、シアノ基を保有していて硫化銅の導入が容易であり、スチレン・ブタジエン・ゴムラテックスに馴染み易く接着性のよいアクリル繊維を使用する。ポリエステル繊維やアクリル繊維への硫化銅の導入方法については、特公昭62-52071、特公昭63-14112、特公昭63-19629、特公昭63-47824、特公平1-37513等に開示されている。」(段落【0010】?【0011】)
(オ)「【発明の効果】本発明(請求項1と請求項3)によると、導電性繊維11が、一部のパイルだけではなく全てのパイル13に混在するのでパイル面に違和感を与えない。そして、そのように全てのパイル13に混在させるときは、各パイル13に占める導電性繊維11の混用比率を少なくすることが出来、導電性繊維11によってパイル面の外観や風合いが損なわれない。而も、そのように全てのパイル13に混在させるときは、その混用比率を0.01?0.2重量%前後と極僅かにする場合でも、それによる制電効果がパイル面全体に均一に生じ、そのように混用比率を少なくすることが出来るので、導電性繊維11によってパイル面の外観や風合いが損なわれることは殆どなくなる。」(段落【0016】)
(カ)図1には、パイル13(パイル糸)に導電性繊維11(導電性アクリル繊維)を含ませた制電性カーペットが示されている。

以上の記載事項及び図示内容を総合すると、上記引用刊行物1には、以下の発明が記載されている。(以下「引用発明1」という。)
「アクリル繊維に硫化銅を導入して形成した導電性繊維からなる導電性アクリル繊維をパイル糸に含ませたタフテッドカーペットにおいて、
該タフテッドカーペットのパイル糸に、アクリル繊維に硫化銅を導入して形成した導電性繊維からなる導電性アクリル繊維を含ませた制電性カーペット。」

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の原出願の出願前に日本国内に頒布された刊行物である特開2001-271252号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(キ)「【請求項1】ダイジェナイトを極薄の被膜層によりアクリルあるいはナイロン繊維の表面に被膜して形成された導電性繊維10?14重量%と、アクリル繊維72?78重量%およびポリエステル繊維11?15重量%とをそれぞれ合糸してパイル糸を形成し、且つ該パイル糸の毛羽を生地の表面に所定間隔で織り込んで密生して両側を起立させると共に、前記起立した毛羽のうち導電性繊維の先端に切断端面を設けてコロナ放電を可能としたことを特徴とする静電気防止効果および抗菌・消臭効果を有するパイル織物。」(特許請求の範囲)
(ク)「【発明の属する技術分野】本発明は、静電気防止効果および抗菌・消臭効果を有するパイル織物に関するものである。」(段落【0001】)
(ケ)「【課題を解決するための手段】本発明は、ダイジェナイトを極薄の被膜層によりアクリルあるいはナイロン繊維の表面に被膜して形成された導電性繊維10?14重量%と、アクリル繊維72?78重量%およびポリエステル繊維11?15重量%とをそれぞれ合糸してパイル糸を形成し、且つ該パイル糸の毛羽を生地の表面に所定間隔で織り込んで密生して両側を起立させると共に、前記起立した毛羽のうち導電性繊維の先端に切断端面を設けてコロナ放電を可能とするという手段を採用することにより、上記課題を解決した。」(段落【0005】)
(コ)「【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明すると、本発明パイル織物は、アクリルあるいはナイロン繊維の表面に銅金属であるダイジェナイト(Cu_(9)S_(5))を1μm前後の極薄の被膜層により被膜して形成した導電性繊維を素材の一部に含んでいる。
そして、前記銅金属であるダイジェナイトを極薄の被膜層によりアクリルあるいはナイロン繊維の表面に被膜した導電性繊維は、プラスまたはマイナスに帯電した物体の静電気が近づくと、前記被膜層の外周面より外方へ突出した多数の超微細な細毛の端面よりコロナ放電してマイナスまたはプラスの逆の負荷を発生して瞬時に中和する。すなわち、前記導電性繊維はコロナ放電によって静電気を中和させて除去するという優れた静電気防止効果を有する。
また、前記銅金属であるダイジェナイトを極薄の被膜層によりアクリルあるいはナイロン繊維の表面に被膜した導電性繊維は、銅イオンにより黄色ブドウ球菌、肺炎桿菌、大腸菌、緑膿菌あるいはMRSA等に対して抗菌効果があり、更に前記導電性繊維はアルカリ臭(アンモニア、トリメチルアミン)や酸性臭(硫化水素、メチルメルカプタン)に対して消臭効果がある。」(段落【0006】?【0008】)

以上の記載事項及び図示内容を総合すると、上記引用刊行物2には、以下の発明が記載されている。(以下「引用発明2」という。)
「硫化銅(ダイジェナイト)を極薄の被膜層によりアクリルあるいはナイロン繊維の表面に被膜して形成された導電性繊維と、アクリル繊維およびポリエステル繊維とをそれぞれ合糸してパイル糸を形成した静電気防止効果および抗菌・消臭効果を有するパイル織物。」

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の原出願の出願前に日本国内に頒布された刊行物である特開平5-199931号公報(以下「引用刊行物3」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(サ)「【請求項1】有色の金属フタロシアニン誘導体をもつ消臭繊維を含む基布に、無色または淡色の金属イオンをもつ消臭繊維を含むパイルを織り込んでなる消臭カーペット。」(特許請求の範囲)
(シ)「【産業上の利用分野】本発明は消臭性を有するカーペットに関する。」(段落【0001】)
(ス)「【実施例】以下本発明の一実施例について図1を参照しながら説明する。図に示すように、コバルトフタロシアニン誘導体をレーヨン繊維に付着した青色の消臭繊維A5を含む不織布の基布1に、レーヨン繊維に亜鉛イオンを結合した無色の消臭繊維B6を含むパイル2を織り込み、パイル2の抜けやカーペットの引張強度を保つためのラテックス層3およびラテックス層3に張られる裏張り布4より構成されている。」(段落【0009】)
(セ)「消臭繊維A5、B6は、下記のメカニズムが提案され、アンモニア、硫化水素等の悪臭を消臭することが確認されている。
消臭繊維A5(コバルトフタロシアニン誘導体をレーヨン繊維に付着)
1)アンモニアの消臭(周辺の-COOHによる中和除去・吸着)
【化1】・・・」(段落【0010】?【0012】)

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の原出願の出願前に日本国内に頒布された刊行物である特開平9-262170号公報(以下「引用刊行物4」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(ソ)「【発明の属する技術分野】本発明は、基布に消臭性のあるクッション材が貼り合わせられたクッションカーペットに関するものであり、さらに詳しくはパイル、基布、目止め材および消臭性のあるクッション材にいずれも同一系のポリマを使用することによってリサイクルを容易にするクッションカーペット及びその製造方法に関するものである。」(段落【0001】)
(タ)「【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、消臭性や透湿性があって快適な使用感を有し、しかもリサイクル容易なクッションカーペットおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】本発明のクッションカーペットは、前記の課題を解決するために、以下の構成を有する。
すなわち、基布にパイル繊維が植設、目止めされ基布の裏面にクッション材が貼り合わされてなるクッションカーペットにおいて、クッション材が低融点繊維Aおよび消臭繊維Bを含む2種以上の繊維で構成され、低融点繊維Aの融点がパイル繊維、基布繊維およびクッション材を構成する低融点繊維A以外の繊維のうち最も低い融点の繊維より50℃以上低く、かつ低融点繊維Aがクッション材中に20?60重量%含まれることを特徴とするクッションカーペットである。」(段落【0009】?【0011】)
(チ)「【発明の実施の形態】以下、図面を参照しつつ、本発明を実施例を挙げながら詳細に説明する。
本発明の目的の一つは消臭性の付与である。
図1は基布にクッション材が貼り合わせられ、該クッション材が消臭性を有するクッションカーペットの一例を示す概略図である。図1中の1はパイル、2は基布、3は目止め材、4は消臭繊維を含むクッション材を示す。
本発明に用いるクッション材は低融点繊維Aと消臭繊維Bまたは、低融点繊維A、消臭繊維Bおよび消臭性を有さないその他の繊維Cとから構成されるのが好ましく、低融点繊維A相互間および低融点繊維Aと消臭繊維Bやその他の繊維Cとの間の接触点の少なくとも一部が接着して成形されてなるのが好ましい。」(段落【0014】?【0017】)
(ツ)「本発明で用いる消臭繊維Bは、特開平3-124809号公報に記載されているようにポリマに消臭成分を練りこむ形のものでもよいし、特開昭62-6978号公報に記載されているように消臭成分を後加工で付与する方法で得られるものでもよい。消臭繊維Bは、例えば、消臭成分を後加工で付与する方法として、グラフト重合により遊離の酸性基をグラフトすることによっても得られる。この方法における酸性基はカルボキシル基やスルホン酸基を意味し、酸性基の含有量は、耐久性のある消臭性能を付与するために3.2×10^(-4)グラム当量/グラム・ファイバー以上が好ましく、より好ましくは9.3×10^(-4)グラム当量/グラム・ファイバー以上である。なお、グラフト重合により導入された酸性基の末端は-COOH、あるいは-SO_(3)Hの状態のものが好ましいが、一部アルカリ金属やアルカリ土類金属、さらには一般の金属や第4級アンモニウム塩などのイオン性有機物によって置換されていてもよい。このようなグラフト重合で多量の酸性基を繊維の表面により多く分布させることは、悪臭の根源といわれているアンモニア、硫化水素、メルカプタン類等の悪臭を効率よく吸収させることができ好ましい。」(段落【0018】)

5.対比・判断
本願発明と引用発明1を対比すると、その機能及び構成からみて、後者の「アクリル繊維」は前者の「アクリル繊維又はナイロン繊維」に、相当する。
また、後者の「アクリル繊維に硫化銅を導入して形成した導電性繊維からなる導電性アクリル繊維をパイル13に含ませた」と前者の「アクリル繊維又はナイロン繊維の表面に硫化銅を被膜して形成した導電性繊維からなる制電糸をパイル糸に含ませてなる」は、「アクリル繊維又はナイロン繊維に硫化銅を付与して形成した導電性繊維からなる制電糸をパイル糸に含ませてなる」という点で共通する。
また、後者の「制電性カーペット」と前者の「制電性多機能カーペット」は、「制電性カーペット」という点で共通する。

そうすると、両者は、
「アクリル繊維又はナイロン繊維に硫化銅を付与して形成した導電性繊維からなる制電糸をパイル糸に含ませてなるタフテッドカーペットにおいて、
該タフテッドカーペットのパイル糸に、アクリル繊維或はナイロン繊維に硫化銅を付与して形成した導電性繊維からなる制電糸を含ませた制電性カーペット。」
の点で一致しており、以下の点で相違している。

(相違点1)
制電糸を構成する導電性繊維は、本願発明は、アクリル繊維又はナイロン繊維の表面に硫化銅を被膜して形成しているのに対し、引用発明1は、アクリル繊維に硫化銅を導入して形成する点。
(相違点2)
本願発明は、アンモニアやトリメチルアミンをイオン結合で消臭するカルボキシル基を導入した消臭糸をパイル糸に含ませてた「多機能」制電性カーペットであるのに対し、引用発明1は、そのような発明特定事項を有さない点。
(相違点3)
本願発明は、制電糸を0.2%含ませると共に、消臭糸を10%含ませたとしているのに対し、引用発明1は、制電糸をどの程度含むはっきりしない点。

上記相違点について検討する。
(相違点1について)
引用発明2は、「硫化銅(ダイジェナイト)を極薄の被膜層によりアクリルあるいはナイロン繊維の表面に被膜して形成された導電性繊維と、アクリル繊維およびポリエステル繊維とをそれぞれ合糸してパイル糸を形成した静電気防止効果および抗菌・消臭効果を有するパイル織物」あるので、引用発明2において、「制電糸を構成する導電性繊維は、アクリル繊維又はナイロン繊維の表面に硫化銅を被膜して形成している」といえ、引用発明1と引用発明2とは導電性繊維を含むパイル糸という同一の技術分野に属するから、引用発明2を引用発明1に適用して、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点2について)
上記記載事項(セ)より、引用刊行物3には、パイルに消臭繊維(消臭糸)を含ませカルボキシル基でアンモニアをイオン結合して消臭する点が記載されており、上記記載事項(ツ)より、引用刊行物4には、カーペットにおいてアンモニアを消臭するカルボキシル基(-COOH)を導入した消臭繊維(消臭糸)を用いる点が記載されており、引用発明1と引用刊行物3に記載された発明及び引用刊行物4に記載された発明とはカーペットという同一の技術分野に属するから、引用刊行物3に記載された発明及び引用刊行物4に記載された発明を引用発明1に適用して、アンモニアをイオン結合で消臭するカルボキシル基を導入した消臭糸をパイル糸に含ませて、消臭機能を兼備せしめ、カーペット自体を多機能化することは当業者が容易に成し得たことにすぎない。

(相違点3について)
制電糸及び消臭糸をどの程度含むかは、当業者が価格等を考量して適宜決定しうる事項にすぎず、かつ制電糸を0.2%含ませると共に、消臭糸を10%含ませたことによる数値限定に臨界的技術意義は認められないので、引用発明1において上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願発明による効果も、引用発明1、引用発明2、引用刊行物3に記載された発明及び引用刊行物4に記載された発明から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び引用刊行物3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、引用発明2、引用刊行物3に記載された発明及び引用刊行物4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-24 
結審通知日 2012-08-27 
審決日 2012-09-07 
出願番号 特願2011-36862(P2011-36862)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47G)
P 1 8・ 574- Z (A47G)
P 1 8・ 573- Z (A47G)
P 1 8・ 572- Z (A47G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平田 慎二  
特許庁審判長 村田 尚英
特許庁審判官 高田 元樹
蓮井 雅之
発明の名称 制電性多機能カーペット  
代理人 谷山 守  

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