• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16B
管理番号 1280403
審判番号 不服2011-27871  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-26 
確定日 2013-10-09 
事件の表示 特願2000-302785号「位置決め装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年5月29日出願公開、特開2001-146911号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年10月2日(パリ条約による優先権主張 1999年9月30日 (US)アメリカ合衆国)の出願であって、平成23年8月23日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年8月26日)、これに対し、平成23年12月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。
そして、当審において、平成24年11月1日付けで、平成23年12月26日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶の理由が通知され、それに対して平成25年3月6日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年3月6日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「第一の部片を第二の部片に対し位置決めする装置であって、
前記第一の部片および第二の部片の一方から突出し、複数の面を有する予め確定された形状を規定しているタブ、および
前記第一の部片および第二の部片の他方に位置付けられ、複数の面を有する予め確定された形状を規定しているスロット、を備え、
前記面の少なくとも一つは概ね円弧形状によって規定されており、
前記タブの前記予め確定された形状の前記複数の面の少なくとも一つは、前記スロットの前記予め確定された形状の前記複数の面の少なくとも一つと摩擦接触関係にあり、
前記タブの前記予め確定された形状の前記複数の面および前記スロットの前記予め確定された形状の前記複数の面の少なくとも一つは、前記概ね円弧形状によって規定され、
前記第一の部片および第二の部片は交差部において取付けられ、前記第一の部片および第二の部片の前記交差部は、前記第一の部片および第二の部片の前記摩擦接触関係を規定する締り嵌めを形成し、前記摩擦接触関係は前記第一の部片および第二の部片を取外し可能で予め定められた位置に維持することを特徴とする位置決め装置。」

第3 引用例
当審で通知した拒絶の理由に引用された刊行物である、特開平8-128417号公報(以下「引用例」という。)には、「位置決め構造」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与。以下、同様。)

ア.段落【0001】?【0002】
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、複数の機構部品を組付ける時の位置決め構造に関する。
【0002】
【従来の技術】薄板鋼板を用いた複数の板金部材等を組付ける時、2個の部材の位置決め方法として色々あるが、よく用いられる方法として、一方の部材に孔を形成し、他方の部材に前記孔に係合する爪部を形成して係合させる位置決め方法がある。」
イ.段落【0006】?【0007】
「【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上述の位置決め構造では、位置決め孔51の幅Iと位置決め爪61の板厚との差即ち隙間(ガタ)Hが生じるので、ねじ止め孔等の位置が決まりにくく、ねじ止めがしにくい場合がある。本来位置決め孔51の幅Iは位置決め爪61と隙間(ガタ)Hがなく形成されるのが望ましいが、位置決め爪61の厚みに略等しい位置決め孔51をあけるのは孔抜金型の強度等の関係で問題があり、必然的に大きくする場合が多い。従って位置決め孔51と位置決め爪61との隙間(ガタ)Hが大きくなり位置決めが不安定となる等の問題がある。
【0007】そこで、本発明は上述の問題を解決するもので、現状の位置決め孔に対しても、隙間(ガタ)が無く確実に位置決めできる位置決め構造を提供することを目的とする。」
ウ.段落【0015】?【0018】
「【0015】次に、本発明の第2実施例を図2により説明する。図2は位置決め構造図で、(a)は組付け状態を示す平面図、(b)はD矢視図である。尚、本発明は第1実施例の位置決め爪21の形状を変更したもので、その他については第1実施例と略同じであるので、同じ構成については同じ符号を付し説明を省略する。
【0016】30は取付部材で、位置決め孔11に係合して所定の位置を決める位置決め爪31及びねじ孔32等が形成されている。尚、位置決め爪31は本体部材10との合わせ面33方向に対し直角(D矢視図上方向)に、また略中央部で浅いV形状に形成され、位置決め時に位置決め爪31の頂点となる部分(c、d、e)が位置決め孔11の長辺に当接、係合するようになっている。材料には薄板鋼板等が用いられプレス加工により形成される。
【0017】次に組立を説明する。先ず、本体部材10の位置決め孔11に取付け部材30の位置決め爪31を挿入する。それにより、長方形の位置決め孔11の幅方向Eは位置決め爪31の3点(c、d、e)により、また長さ方向Fは位置決め爪31の2点(c、d)が当接し、本体部材10と取付け部材30が位置決めされ、取付孔12とねじ孔32の中心が一致する。
【0018】次に、ねじ40を用いて本体部材10の方向から本体部材10と取付け部材30を螺結する。以上説明したように、本実施例によれば、位置決め孔11と位置決め爪31が3点で当接して位置決めしているので、より精度の高い位置決めが可能となる。尚、本実施例ではV曲げ方向を右開き(平面図右)に形成したが、逆方向に形成してもよい。また、V頂部に丸み又は平部を設けてU形状またはコ形状等にしても同じ効果を得ることができる。」
エ.段落【0019】
「【0019】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、本体部材の位置決め孔に対し取付け部材の位置決め爪が全方向に対し、隙間(ガタ)無く係合するので正確な位置決めができる。従って、ねじ止めが容易になり作業効率が向上する。」
オ.図2には、本体部材10に矩形状の位置決め孔11が形成され、取付け部材30には位置決め爪31が形成され、位置決め孔11に位置決め爪31を挿入する位置決め構造が図示されている。ここで、位置決め孔11は、本体部材10の厚みがあるから、複数の面を有するものであって、複数の面を有する予め確定された形状を規定しているといえ、また、位置決め爪31も位置決め孔11の前記複数の面に当接、係合する複数の面を有するものであって、複数の面を有する予め確定された形状を規定しているといえる。

上記記載事項及び図示内容を総合して、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「取付部材30を本体部材10に対し位置決めする構造であって、
前記取付部材30から突出し、複数の面を有する予め確定された形状を規定している位置決め爪31、および
前記本体部材10に位置付けられ、複数の面を有する予め確定された形状を規定している位置決め孔11、を備え、
位置決め爪31は略中央部で浅いV形状に形成されたV頂部を有しており、
前記位置決め爪31は頂点となる部分の3点(c,d,e)が前記位置決め孔11の長辺に当接、係合し、
位置決め孔11と位置決め爪31が3点で当接して位置決めする位置決め構造。」

第4 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、その機能又は作用からみて、後者の「取付部材30」は前者の「第一の部片」又は「前記第一の部片および第二の部片の一方」に相当し、以下同様に、「本体部材10」は「第二の部片」又は「前記第一の部片および第二の部片の他方」に、「位置決めする構造」は「位置決めする装置」に、「位置決め爪31」は「タブ」に、「位置決め孔11」は「スロット」に、「位置決め構造」は「位置決め装置」に、それぞれ相当する。
そして、後者の「位置決め爪31は略中央部で浅いV形状に形成されたV頂部を有して」いることは、前者の「前記面の少なくとも一つは概ね円弧形状によって規定されて」いること及び「前記タブの前記予め確定された形状の前記複数の面および前記スロットの前記予め確定された形状の前記複数の面の少なくとも一つは、前記概ね円弧形状によって規定され」ていることと、「前記面の少なくとも一つは特定の形状によって規定されて」いること及び「前記タブの前記予め確定された形状の前記複数の面および前記スロットの前記予め確定された形状の前記複数の面の少なくとも一つは、前記特定の形状によって規定され」ていることで共通する。
また、後者の位置決め爪の頂点の3点と位置決め孔の当接、係合は、当接関係ということができ、また、当接、係合する部分は、位置決め爪と位置決め孔の交差部ということができるから、後者の「前記位置決め爪31は頂点となる部分の3点(c,d,e)が前記位置決め孔11の長辺に当接、係合し、位置決め孔11と位置決め爪31が3点で当接して位置決めする」ことは、前者の「前記タブの前記予め確定された形状の前記複数の側面の少なくとも一つは、前記スロットの前記予め確定された形状の前記複数の面の少なくとも一つと摩擦接触関係にあ」ること及び「前記第一の部片および第二の部片は交差部において取付けられ、前記第一の部片および第二の部片の前記交差部は前記第一の部片および第二の部片の前記摩擦接触関係を規定する締り嵌めを形成し、前記摩擦接触関係は前記第一の部片および第二の部片を取外し可能で予め定められた位置に維持する」ことと、「前記タブの前記予め確定された形状の前記複数の側面の少なくとも一つは、前記スロットの前記予め確定された形状の前記複数の面の少なくとも一つと当接関係にあ」ること及び「前記第一の部片および第二の部片の交差部は前記第一の部片および第二の部片の前記当接関係を規定する」ことで共通する。

したがって、両者は、次の一致点及び相違点を有する。

[一致点]
「第一の部片を第二の部片に対し位置決めする装置であって、
前記第一の部片および第二の部片の一方から突出し、複数の面を有する予め確定された形状を規定しているタブ、および
前記第一の部片および第二の部片の他方に位置付けられ、複数の面を有する予め確定された形状を規定しているスロット、を備え、
前記面の少なくとも一つは特定の形状によって規定されており、
前記タブの前記予め確定された形状の前記複数の面の少なくとも一つは、前記スロットの前記予め確定された形状の前記複数の面の少なくとも一つと当接関係にあり、
前記タブの前記予め確定された形状の前記複数の面および前記スロットの前記予め確定された形状の前記複数の面の少なくとも一つは、前記特定の形状によって規定され、
前記第一の部片および第二の部片の交差部は、前記第一の部片および第二の部片の前記当接関係を規定する位置決め装置。」

[相違点]
本願発明は、複数の面の少なくとも一つが「概ね円弧形状」であり、タブとスロットの当接関係が「摩擦接触関係」であって、「前記第一の部片および第二の部片は交差部において取付けられ、前記第一の部片および第二の部片の前記交差部は、前記第一の部片および第二の部片の前記摩擦接触関係を規定する締り嵌めを形成し、前記摩擦接触関係は前記第一の部片および第二の部片を取外し可能で予め定められた位置に維持する」のに対して、引用発明は、複数の面の少なくとも一つが「略中央部で浅いV形状に形成されたV頂部を有」するものであり、タブ(位置決め爪31)とスロット(位置決め孔11)の当接関係が「当接、係合」であって、「前記位置決め爪31は頂点となる部分の3点(c,d,e)が前記位置決め孔11の長辺に当接、係合し、位置決め孔11と位置決め爪31が3点で当接して位置決めする」点。

第5 当審の判断
まず、複数の面の少なくとも一つの形状については、引用例には、位置決め爪の形状として「V頂部に丸み又は平部を設けてU形状またはコ形状等にしても同じ効果を得ることができる。」(摘記事項ウの段落【0018】参照。)と記載されているから、引用発明において、V頂部に丸みをつけて円弧形状として、複数の面の少なくとも一つの形状を、相違点に係る形状とすることは、当業者が容易に想到できたことである。
次に、引用発明は、位置決め爪31と位置決め孔11は「当接、係合」するものであって、「本体部材の位置決め孔に対し取付け部材の位置決め爪が全方向に対し、隙間(ガタ)無く係合する」(摘記事項エ参照。)のであるから、通常は多少の摩擦接触関係にあるものである。また、引用例には「位置決め孔51の幅Iと位置決め爪61の板厚との差即ち隙間(ガタ)Hが生じるので、ねじ止め孔等の位置が決まりにくく、ねじ止めがしにくい場合がある」(摘記事項イの段落【0006】参照。)と記載されているように、引用発明において、2つの部材が固定時に移動することは避けなければならないことである。そうすると、引用発明の「当接、係合」について、2つの部材の仮固定、すなわち、定められた位置に維持するような摩擦接触関係とすることは、当業者が当然考慮する事項である。そして、2つの部材の仮固定に際して、必要な保持強さの程度に応じて、摩擦接触関係として締り嵌めを選択することは、当業者における設計上の事項といえるから、上記相違点に係る摩擦接触関係とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

以上を総合すると、相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

そして、本願発明の奏する効果についてみても、引用発明から当業者が予測できた効果の範囲内のものである。

したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 まとめ
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-09 
結審通知日 2013-05-14 
審決日 2013-05-27 
出願番号 特願2000-302785(P2000-302785)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F16B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平城 俊雅  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 島田 信一
山岸 利治
発明の名称 位置決め装置  
復代理人 佐野 泰彦  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
復代理人 伊藤 勝久  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ