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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1280466
審判番号 不服2011-23179  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-10-27 
確定日 2013-10-11 
事件の表示 特願2006-513341「分散型検索方法、アーキテクチャ、システム、およびソフトウェア」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月11日国際公開、WO2004/097685、平成18年11月 2日国内公表、特表2006-524872〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2004年4月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年4月25日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成21年11月30日付けで拒絶理由通知がなされ、平成22年6月1日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年同月17日付けで最後の拒絶理由通知がなされ、同年12月21日付けで意見書が提出されたが、平成23年6月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月27日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ、平成24年1月11日付けで審査官による前置報告がなされ、同年7月23日付けで当審より審尋がなされ、平成25年1月24日付けで回答書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成23年10月27日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。)

「オンライン検索システム(100)であって、
少なくとも1組の命令を格納するコンピュータ読み取り可能な格納手段であって、該少なくとも1組の命令は、プロセッサによって実行されると、検索エンジンとして動作することを該プロセッサに行わせ、該検索エンジンは、特定のデータに対する要求に応答して、該コンピュータ読み取り可能な格納手段に格納されている該特定のデータを取り出すことが可能である、コンピュータ読み取り可能な格納手段と、
該格納された1組の命令に基づいて、複数の検索エンジン(106)として機能する1つ以上のプロセッサと、
複数の構成要素要求に分割することが可能な検索要求を要求者から受信する手段と、
該受信された検索要求を該複数の構成要素要求に分割し、該複数の構成要素要求のそれぞれを該複数の検索エンジン(106)のうちの対応する1つに割り当てる手段と、
該複数の構成要素要求に応答して該複数の検索エンジン(106)によって提供された複数の検索結果を連結することにより、連結された検索結果を生成する手段と、
該連結された検索結果を該要求者に提供する手段と
を含み、
該コンピュータ読み取り可能な格納手段に格納されたデータに対して提供されるインデックスが、複数のインデックスセットに分割され、該複数のサーチエンジン(106)のそれぞれが、該複数のインデックスセットのうちの少なくとも1つを用いて該コンピュータ読み取り可能な格納手段に格納された該データを検索するために割り当てられており、
該複数の検索エンジン(106)が、構成要素要求と特定のインデックスセットとを受信する手段と、該要求によって特定された該インデックスセットに対して検索が実行されるようにする手段とを含むことを特徴とする、システム。」

3.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用され、本願優先日前に頒布された特開2001-160039号公報(以下,「引用文献」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、当審において付与したものである。)

ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、分散処理技術に関し、特に、利用者からの処理要求を複数の計算機が独立に処理し、複数の計算機の処理結果を統合して利用者に返答する分散並列型データ処理システムの負荷分散に好適とされるシステム、装置、方法並びに記録媒体に関する。」

イ.「【0076】利用者は、検索や集計などの処理要求を、外部通信網3を通じて任意の計算機1_a(但し、aは1以上n以下の整数)の要求受付手段111に送信する(図7のステップS11)。
【0077】要求受付手段111は、受け付けた処理要求について、処理対象となる分割データを指定したm×n個の部分処理を作成し、負荷分散手段123に渡す(図7のステップS12)。」

ウ.「【0085】依頼元の計算機1_aの部分結果統合手段114は、部分処理の結果を受け付けて保持しておき、m×n個の分割データに対する部分結果がすべてそろった時点で統合・編集し、外部通信網3を介して利用者に応答する(図7のステップS16、S17)。」

エ.「【0128】[第3の実施の形態]次に、本発明の第3の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図15は、本発明の第3の実施の形態の構成を示す図である。図15を参照すると、本発明の第3の実施の形態は、前記第1および第2の実施の形態と同様に、計算機1_1?1_n、二次記憶装置2_1?2_n、外部通信網3を備え、さらに、制御プログラムを記録した記録媒体4を備える。この記録媒体4は磁気ディスク、半導体メモリ、CD-ROM、DVD、MTその他の記録媒体であってよい。
【0129】制御プログラムは記録媒体4から計算機1_1に読み込まれ、さらに外部通信網3を通じて計算機1_2?1_nに読み込まれる。また、制御プログラムは計算機1_1?1_nの動作を制御し、二次記憶装置2_1?2_nに分割データを分散冗長格納する。計算機1_1?1_nは、制御プログラムの制御により、第1および第2の実施の形態における計算機1_1?1_nによる処理と同一の処理を実行する。本発明においては、記録媒体4は、他のサーバ装置等からプログラムをダウンロードする場合における通信媒体であってもよい。」

オ.「【0130】
【実施例】次に上記した本発明を具体的なシステムに適用した実施例に即して説明する。【0131】大規模な文書群からキーワードなどの条件に一致した文書群を応答する全文検索システムに本発明を適用した実施例について説明する。図16は、本発明の第1の実施例をなす全文検索システムに適用した構成を示す図である。図16を参照すると、本実施例は、それぞれローカルな二次記憶装置を所有した計算機として、汎用のパーソナル・コンピュータP1_1、P1_2、P1_3と、それをつなぐ外部通信網として、イーサネット(Ethernet)から構成されている。ここでは、計算機の台数n=3の場合について説明する。
【0132】パーソナル・コンピュータ1_1?1_3は、受付処理部11と、負荷管理部12と、データ処理部13とを備えた中央演算装置と、二次記憶装置としてハードディスク装置P2を備えている。」

カ.「【0134】図17を参照して、ハードディスクへの分割データの分散および冗長格納方法について、粒度m=2、冗長度r=1の場合について説明する。また、本実施例例では、検索対象文書として、一例として、6万件の大規模文書群があるものとする。検索対象文書にはそれぞれID00001?ID60000の文書番号を付与してある。
【0135】まず、6万件の大規模文書群を、10000件ずつm×n=2×3=6個に分割する。ここでは、分割文書群D11にはID00001?ID10000の文書が含まれ、分割文書群D12にはID10001?ID20000の文書が含まれている。以下同様に、分割文書群Dij(但し、iは1以上3以下の整数、jは1以上2以下の整数)には、ID((k-1)×10000+1)?ID(k×10000)(但し、k=(i-1)×2+j)の文書が含まれている。ここでは、文書数を基準に分割したが、他にも文書容量を基準にして分割を行うなどの方法がある。
【0136】分割文書群D11?D32を分散格納し、各分割文書群に対して線形探索による検索を行ってもよいが、通常は検索速度を向上させるために、予め各文書群からインデックスを作成しておくことが一般的である。ここで、「インデックス」とは、文書群中に出現する全ての文字列あるいは単語について、それが出現する文書番号の一覧を作成したファイルのことをいう。
【0137】このインデックスファイルを用いることによって、検索時にすべての文書群を読み出すことなく、指定された単語が出現する文書群の一覧を得ることができる。
【0138】図17では、分割文書群D11から分割インデックスX11が作成され、分割文書群D12から分割インデックスX12が作成されている。以下、同様に分割文書群Dij(但し、iは1以上3以下の整数、jは1以上2以下の整数)から、分割インデックスXijが作成される。作成した分割インデックスを、原本分割インデックスとする。
【0139】原本分割インデックスXi1?Xim(但し、iは1以上3以下の整数)がハードディスク装置2_iに格納される。具体的には、原本分割インデックスX11、X12をハードディスク装置P2_1に格納し、原本分割インデックスX21、X22をハードディスク装置P2_2に格納し、原本分割インデックスX31、X32をハードディスク装置P2_3に格納する。」
キ.「【0143】次に、正常時の動作について説明する。ある時点で、イーサネット(Ethernet)を通じて利用者から検索処理の要求が、パーソナル・コンピュータP1_3に送信されたとする。パーソナル・コンピュータP1_3の中央演算装置が有する要求受付手段は、この検索要求を受け取って分割インデックスX11?X32を検索対象とする6つの部分処理を作成する。
【0144】次に、パーソナル・コンピュータP1_3の中央演算装置が有する負荷分散手段が、後述する方法にしたがってキャッシュヒット予測手段121、負荷監視手段122と連携して6つの部分処理の依頼先を決定する。
【0145】仮に、パーソナル・コンピュータ1_3の中央演算装置が有する負荷分散手段123が、検索語「占い」について分割インデックスX22を検索対象とする部分処理(占い,X22)を、パーソナル・コンピュータ1_2に依頼することに決定したとする。依頼先が決定された部分処理(占い,X22)は、パーソナル・コンピュータP1_3の中央演算装置が有する要求分配手段によって、イーサネット(Ethernet)を通じて指定されたパーソナル・コンピュータP1_2の中央演算装置が有する要求処理手段に依頼される。
【0146】同時に、パーソナル・コンピュータP1_3の中央演算装置が有する依頼処理管理手段が、部分処理(占い,X22)をどのパーソナル・コンピュータに依頼したかを依頼処理管理表に記録する。ある時点での、依頼処理管理表の一例を図21に示す。
【0147】部分処理(占い,X22)を依頼されたパーソナル・コンピュータP1_2は、中央演算装置が有する要求処理手段131によって検索対象の分割インデックスX22を検索して、検索語「占い」を含む文書群の一覧を得る。これを部分結果とし、イーサネット(Ethernet)を介して依頼元であるパーソナル・コンピュータP1_3の中央演算装置が有する部分結果統合手段114に送信する。」

ク.「【0149】次に、パーソナル・コンピュータP1_3の中央演算装置が有する負荷分散手段123が、キャッシュヒット予測手段121、負荷監視手段122と連携して6つの部分処理の依頼先を決定する方法について説明する。
・・・(中略)・・・
そこで、負荷分散手段123は、依頼先計算機管理表に記録されているパーソナルコンピュータを部分処理の依頼先として決定する。具体的には、分割インデックスX12、X32を検索する部分処理をパーソナル・コンピュータP1_1に依頼し、分割インデックスX11、X21、X22を検索する部分処理をパーソナル・コンピュータP1_2に依頼し、インデックスX31を検索する部分処理をパーソナル・コンピュータP1_3に依頼する。」

上記ア.?ク.の記載から、次のことがいえる。

(ア)上記ア.の「分散並列型データ処理システム」との記載、及び、上記イ.の「利用者は、検索や集計などの処理要求を、外部通信網3を通じて任意の計算機1_a・・・の要求受付手段111に送信する」、「要求受付手段111は、受け付けた処理要求について、・・・」との記載から、引用文献には、「外部通信網を通じての検索要求を受け付ける分散並列型データ処理システム」が記載されているといえる。

(イ)上記エ.の「制御プログラムを記録した記録媒体4を備える。」との記載から、引用文献のものは、構成要件として、「制御プログラムを記録した記録媒体」を備えているといえる。
そして、上記オ.?ク.に記載の「パーソナル・コンピュータ」を用いた「具体的なシステムに適用した実施例」は、「大規模な文書群からキーワードなどの条件に一致した文書群を応答する全文検索システムに本発明を適用した実施例」であり、該実施例においては、上記「制御プログラム」が「パーソナル・コンピュータ」によって実行されることによって、上記「パーソナル・コンピュータ」が「検索手段」として動作するものと解される。
また、上記エ.の「二次記憶装置2_1?2_nに分割データを分散冗長格納する。」、上記オ.の「二次記憶装置としてハードディスク装置P2を備えている。」との記載から、「具体的なシステムに適用した実施例」では、「検索対象文書」は「ハードディスク装置」に格納されているものと解され、上記「検索手段」は、「検索対象文書に対する検索要求に応答して、ハードディスク装置に格納されている該検索対象文書を取り出すことが可能である」ものであるといえる。

(ウ)上記オ.の「汎用のパーソナル・コンピュータP1_1、P1_2、P1_3」は、「記録された制御プログラムに基づいて、複数の検索手段として機能する1つ以上のパーソナル・コンピュータ」であるといえる。

(エ)上記イ.の「利用者は、検索や集計などの処理要求を、外部通信網3を通じて任意の計算機1_a(但し、aは1以上n以下の整数)の要求受付手段111に送信する」との記載、及び「要求受付手段111は、受け付けた処理要求について、処理対象となる分割データを指定したm×n個の部分処理を作成し」との記載から、引用文献のものは、「複数の部分処理を作成する元となる検索要求を、外部通信網を通じて利用者から受信する要求受付手段」を備えているといえる。

(オ)上記キ.の「イーサネット(Ethernet)を通じて利用者から検索処理の要求が、パーソナル・コンピュータP1_3に送信されたとする。パーソナル・コンピュータP1_3の中央演算装置が有する要求受付手段は、この検索要求を受け取って分割インデックスX11?X32を検索対象とする6つの部分処理を作成する。」、「パーソナル・コンピュータP1_3の中央演算装置が有する負荷分散手段が、後述する方法にしたがってキャッシュヒット予測手段121、負荷監視手段122と連携して6つの部分処理の依頼先を決定する。」との記載、及び、上記(イ)から「パーソナル・コンピュータ」は「検索手段」として動作するものと解されることから、引用文献のものは、「受信された検索要求に基づいて複数の部分処理を作成し、該複数の部分処理のそれぞれを複数の検索手段のうちの対応する1つに依頼する手段」を備えているといえる。

(カ)上記キ.の「部分処理(占い,X22)を依頼されたパーソナル・コンピュータP1_2は、中央演算装置が有する要求処理手段131によって検索対象の分割インデックスX22を検索して、検索語「占い」を含む文書群の一覧を得る。これを部分結果とし、イーサネット(Ethernet)を介して依頼元であるパーソナル・コンピュータP1_3の中央演算装置が有する部分結果統合手段114に送信する。」、及び、上記ウ.の「依頼元の計算機1_aの部分結果統合手段114は、部分処理の結果を受け付けて保持しておき、m×n個の分割データに対する部分結果がすべてそろった時点で統合・編集し、外部通信網3を介して利用者に応答する」との記載から、引用文献のものは、「複数の部分処理を依頼された複数の検索手段から送信された検索の部分処理の結果を統合することにより、統合された検索結果を生成する部分結果統合手段」及び「統合された検索結果を利用者に応答する手段」を備えているといえる。

(キ)上記カ.?ク.の記載から、引用文献には、「ハードディスク装置に格納された検索対象文書から分割インデックスが作成され、複数の検索手段のそれぞれが、複数の分割インデックスのうちの少なくとも1つを用いて該ハードディスク装置に格納された該検索対象文書を検索するために割り当てられている」こと、及び「複数の検索手段が、分割インデックスに対して検索が実行されるようにする手段を含む」ことが記載されているといえる。

上記(ア)?(キ)より、引用文献には以下の発明が記載されているといえる。(以下、「引用発明」という。)

「外部通信網を通じての検索要求を受け付ける分散並列型データ処理システムであって、
制御プログラムを記録した記録媒体であって、該制御プログラムは、パーソナル・コンピュータによって実行されると、検索手段として動作することを該パーソナル・コンピュータに行わせ、該検索手段は、検索対象文書に対する検索要求に応答して、ハードディスク装置に格納されている該検索対象文書を取り出すことが可能である、記録媒体と、
該記録された制御プログラムに基づいて、複数の検索手段として機能する1つ以上のパーソナル・コンピュータと、
複数の部分処理を作成する元となる検索要求を、外部通信網を通じて利用者から受信する要求受付手段と、
該受信された検索要求に基づいて該複数の部分処理を作成し、該複数の部分処理のそれぞれを該複数の検索手段のうちの対応する1つに依頼する手段と、
該複数の部分処理を依頼された該複数の検索手段から送信された検索の部分処理の結果を統合することにより、統合された検索結果を生成する部分結果統合手段と、
該統合された検索結果を利用者に応答する手段と
を含み、
該ハードディスク装置に格納された検索対象文書から複数の分割インデックスが作成され、該複数の検索手段のそれぞれが、複数の分割インデックスのうちの少なくとも1つを用いて該ハードディスク装置に格納された該検索対象文書を検索するために割り当てられており、
該複数の検索手段が、該分割インデックスに対して検索が実行されるようにする手段を含む、システム。」

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

(ア)引用発明における「外部通信網を通じての検索要求を受け付ける分散並列型データ処理システム」は、本願発明における「オンライン検索システム」に相当する。

(イ)引用発明における「制御プログラム」は、本願発明における「少なくとも1組の命令」に相当し、引用発明における「(制御プログラムを)記録した記録媒体」は、本願発明における「(少なくとも1組の命令を)格納するコンピュータ読み取り可能な格納手段」に相当する。
また、引用発明における「パーソナル・コンピュータ」、「検索手段」は、それぞれ、本願発明における「プロセッサ」、「検索エンジン」に相当する。
さらに、引用発明における「検索対象文書に対する検索要求」、「格納されている検索対象文書を取り出すこと」は、それぞれ、本願発明における「特定のデータに対する要求」、「格納されている特定のデータを取り出すこと」に相当する。
よって、本願発明と引用発明とは、「少なくとも1組の命令を格納するコンピュータ読み取り可能な格納手段であって、該少なくとも1組の命令は、プロセッサによって実行されると、検索エンジンとして動作することを該プロセッサに行わせ、該検索エンジンは、特定のデータに対する要求に応答して、格納されている該特定のデータを取り出すことが可能である、コンピュータ読み取り可能な格納手段」を備える点において、共通するものである。

(ウ)引用発明における「記録された制御プログラムに基づいて、複数の検索手段として機能する1つ以上のパーソナル・コンピュータ」は、本願発明における「格納された1組の命令に基づいて、複数の検索エンジンとして機能する1つ以上のプロセッサ」に相当する。

(エ)引用発明における「部分処理」、「利用者」は、それぞれ、本願発明における「構成要素要求」、「要求者」に相当する。
そして、本願発明における「複数の構成要素要求に分割することが可能な検索要求」と、引用発明における「複数の部分処理を作成する元となる検索要求」とは、「複数の構成要素要求の元となる検索要求」である点において、共通するといえる。
よって、本願発明における「複数の構成要素要求に分割することが可能な検索要求を要求者から受信する手段」と、引用発明における「複数の部分処理を作成する元となる検索要求を、外部通信網を通じて利用者から受信する要求受付手段」とは、「複数の構成要素要求の元となる検索要求を要求者から受信する手段」である点において、共通するものである。

(オ)本願発明において「受信された検索要求を複数の構成要素要求に分割」することと、引用発明において「受信された検索要求に基づいて複数の部分処理を作成」することは、「受信された検索要求から複数の構成要素要求を作る」ことである点において、共通するといえる。
よって、本願発明における「受信された検索要求を複数の構成要素要求に分割し、該複数の構成要素要求のそれぞれを複数の検索エンジンのうちの対応する1つに割り当てる手段」と、引用発明における「受信された検索要求に基づいて複数の部分処理を作成し、該複数の部分処理のそれぞれを複数の検索手段のうちの対応する1つに依頼する手段」とは、「受信された検索要求から複数の構成要素要求を作り、該複数の構成要素要求のそれぞれを複数の検索エンジンのうちの対応する1つに割り当てる手段」である点において、共通するものである。

(カ)引用発明における「複数の部分処理を依頼された該複数の検索手段から送信された検索の部分処理の結果を統合することにより、統合された検索結果を生成する部分結果統合手段」、「統合された検索結果を利用者に応答する手段」は、それぞれ、本願発明における「複数の構成要素要求に応答して該複数の検索エンジンによって提供された複数の検索結果を連結することにより、連結された検索結果を生成する手段」、「連結された検索結果を要求者に提供する手段」に相当する。

(キ)引用発明における「分割インデックス」は、本願発明における「インデックスセット」に相当する。
そして、本願発明において「コンピュータ読み取り可能な格納手段に格納されたデータに対して提供されるインデックスが、複数のインデックスセットに分割され」ることと、引用発明において「ハードディスク装置に格納された検索対象文書から複数の分割インデックスが作成され」ることは、「格納されたデータから複数のインデックスセットが作られ」ることである点において、共通するといえる。
また、本願発明において「複数のサーチエンジンのそれぞれが、複数のインデックスセットのうちの少なくとも1つを用いてコンピュータ読み取り可能な格納手段に格納されたデータを検索するために割り当てられて」いることと、引用発明において「複数の検索手段のそれぞれが、複数の分割インデックスのうちの少なくとも1つを用いてハードディスク装置に格納された検索対象文書を検索するために割り当てられて」いることは、「複数のサーチエンジンのそれぞれが、複数のインデックスセットのうちの少なくとも1つを用いて格納されたデータを検索するために割り当てられて」いることである点において、共通するといえる。

(ク)本願発明における「要求によって特定されたインデックスセットに対して検索が実行されるようにする手段」と、引用発明における「分割インデックスに対して検索が実行されるようにする手段」とは、「インデックスセットに対して検索が実行されるようにする手段」である点において、共通するものである。

上記(ア)?(ク)から、本願発明と引用発明とは、次の点で一致し、また、相違するものと認められる。

[一致点]
「オンライン検索システムであって、
少なくとも1組の命令を格納するコンピュータ読み取り可能な格納手段であって、該少なくとも1組の命令は、プロセッサによって実行されると、検索エンジンとして動作することを該プロセッサに行わせ、該検索エンジンは、特定のデータに対する要求に応答して、格納されている該特定のデータを取り出すことが可能である、コンピュータ読み取り可能な格納手段と、
該格納された1組の命令に基づいて、複数の検索エンジンとして機能する1つ以上のプロセッサと、
複数の構成要素要求の元となる検索要求を要求者から受信する手段と、
該受信された検索要求から該複数の構成要素要求を作り、該複数の構成要素要求のそれぞれを該複数の検索エンジンのうちの対応する1つに割り当てる手段と、
該複数の構成要素要求に応答して該複数の検索エンジンによって提供された複数の検索結果を連結することにより、連結された検索結果を生成する手段と、
該連結された検索結果を該要求者に提供する手段と
を含み、
格納されたデータから複数のインデックスセットが作られ、該複数のサーチエンジンのそれぞれが、該複数のインデックスセットのうちの少なくとも1つを用いて格納されたデータを検索するために割り当てられており、
該複数の検索エンジンが、インデックスセットに対して検索が実行されるようにする手段を含む、システム。」
である点。

[相違点1]
本願発明においては、「特定のデータ」あるいは「データ」が、「(少なくとも1組の命令を格納する)コンピュータ読み取り可能な格納手段」に格納されているのに対し、引用発明においては、「検索対象文書」が、「(制御プログラムを記録した)記録媒体」とは別の「ハードディスク装置」に格納されている点。

[相違点2]
本願発明においては、「検索要求を要求者から受信する手段」の「検索要求」が「複数の構成要素要求に『分割』することが可能な検索要求」であるとともに、「複数の構成要素要求のそれぞれを該複数の検索エンジンのうちの対応する1つに割り当てる手段」の「複数の構成要素要求」が「受信された検索要求を複数の構成要素要求に『分割』」したものであるのに対し、引用発明においては、そのようなものではない点。

[相違点3]
「格納されたデータから複数のインデックスセットが作られ」る態様が、本願発明においては、「格納されたデータに対して提供されるインデックスが、複数のインデックスセットに分割され」るようなものであるのに対し、引用発明においては、そのようなものではない点。

[相違点4]
本願発明においては、「複数の検索エンジン」が「構成要素要求と特定のインデックスセットとを受信する手段」を含むとともに、「インデックスセットに対して検索が実行されるようにする手段」の「インデックスセット」が「(構成要素)要求によって特定された」ものであるのに対し、引用発明においては、そのようなものではない点。

5.判断
そこで、上記相違点1?4について検討する。

ア.相違点1について
一般に、情報処理分野において、一つの記憶媒体にどのような情報を記憶させるようにするかは、当業者が適宜に選択設計できる事項にすぎない。
してみれば、引用発明において、「検索対象文書」(「特定のデータ」あるいは「データ」)を、「(制御プログラムを記録した)記録媒体」とは別の「ハードディスク装置」ではなく、上記「(制御プログラムを記録した)記録媒体」(「(少なくとも1組の命令を格納する)コンピュータ読み取り可能な格納手段」)に記憶(格納)させるようにすることは、当業者が適宜になし得ることにすぎない。

イ.相違点2について
本願出願日前に頒布された、特開平10-40146号公報(以下、「参考文献1」という。)、特開平8-272806号公報(以下、「参考文献2」という。)には、それぞれ、以下の記載がなされている。

(参考文献1)
「【0028】図4は、実施例における図1の表分割情報123の例である。表分割情報123はデータベースシステム内の各表に対し、表の識別子と、その表の分割されているデータベース操作サーバの識別子を有する。図4の例の場合、表T1はデータベース処理サーバ1、サーバ2、サーバ3に、表T2はデータベース処理サーバ1、サーバ2に、表T3はデータベース処理サーバ2、サーバ3に表T4はデータベース処理サーバ1に分割している。分割の種類が分割列のキー範囲やハッシュ値による分割の場合はサーバごとに分割範囲を有する。SQL文のWHERE句に分割列の条件がある場合に分割範囲によって実行するサーバを限定する改良案を適用できる。」

「【0033】図8は、実施例の図1のグループ分割決定(107)の処理説明図である。この処理は、1回の起動要求で実行できるものとしてグループ化されているSQL文に対して、表分割情報123を見て、処理手順内部形式の行き先別のリストを作成する。行き先別に内部形式を変えるのは、データベース操作サーバにより実行するSQL文が異なるため無駄なSQL文内部形式の転送を押さえるためである。
【0034】まず、1回の起動要求で実行可能なものとしてグループ化されているSQL文を1つずつ取り出す(801)、(802)。表分割情報123を見て、そのSQLがアクセスする表が存在するデータベース操作サーバ13の識別子を取り出す(804)。そのデータベース操作サーバについての行き先別のSQL文のリスト124が存在すれば(805)、SQL文の識別子を登録し(807)、存在しなければ、そのデータベース操作サーバについての行き先別のSQL文のリスト124を作成し(806)、登録する(807)。グループ内の全てのSQLについて分割したならば(809)、行き先別にSQL文をまとめる。ただし、2表以上の表にアクセスするSQL文については、各表のアクセス用に異なる内部形式の処理手順を作成する方式をとる場合には、SQL文では無く、処理手順ごとに行き先別のリストを作成し、以下、各表のアクセス用の処理手順を部分的なSQL文として1表にアクセスするSQL文と同等に扱うことで本発明を適用できる。」

(参考文献2)
「【0008】本発明の第2のデータベース検索システムは、検索式を入力する入力手段と、異なる検索方法によってデータベースを検索する複数の検索手段と、前記各検索方法に適合するように前記検索式を分割して部分検索式とし前記各部分検索式をそれぞれ対応する検索手段に割り当てる分割割り当て手段と、前記各検索手段が前記データベースを検索して得た結果を前記検索式に基づいて演算し前記検索式に対応する検索結果として出力する演算手段とを有し、前記各検索手段が前記分割割り当て手段によってその検索手段に割り当てられた部分検索式に基づいて前記データベースを検索する。
【0009】本発明において、検索対象範囲設定手段を設けて各検索手段に共通の検索対象範囲を設定し、各検索手段はこの検索対象範囲内で検索を実行するようにしてもよい。また、複数の検索手段としては、例えば、インデックス検索を行なう検索手段と全文検索を行なう検索手段とが挙げられる。」

上記参考文献1及び参考文献2に記載されているように、一般に、複数のデータベースを対象に検索を行う場合、検索式を複数の部分検索式に「分割」して検索を行うようにすることは、周知技術にすぎない。
してみれば、引用発明において、上記参考文献1及び参考文献2に記載の周知技術を参酌することにより、「検索要求を要求者から受信する手段」の「検索要求」を「複数の構成要素要求に『分割』することが可能な検索要求」とするとともに、「複数の構成要素要求のそれぞれを該複数の検索エンジンのうちの対応する1つに割り当てる手段」の「複数の構成要素要求」を「受信された検索要求を複数の構成要素要求に『分割』」したものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

ウ.相違点3、4について
上記参考文献1に記載されているように、並列データベースにおいて、検索対象をキー範囲によって分割することは、周知技術にすぎないから、引用文献記載のものにおける検索対象であるインデックスをインデックスの値の範囲で分割し、並列に検索するよう構成することは、当業者が適宜になし得ることである。そして、このような構成をとる場合、インデックスを生成してから、分割する必要があることは明らかであるから、引用発明において、インデックスを生成してから、該インデックスを分割するよう構成すること、すなわち、「格納されたデータに対して提供されるインデックスが、複数のインデックスセットに分割され」るようなものとすることに、特段の困難性は認められない。
また、上記のように、検索対象であるインデックスをインデックスの値の範囲で分割し、並列に検索するよう構成し、「格納されたデータに対して提供されるインデックスが、複数のインデックスセットに分割され」るようなものとした場合に、処理対象は、「構成要素要求」に対応した「インデックスセット」となるのであるから、「複数の検索エンジン」を「構成要素要求と特定のインデックスセットとを受信する手段」を含むようなものとするとともに、「インデックスセットに対して検索が実行されるようにする手段」の「インデックスセット」を「(構成要素)要求によって特定された」ものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
よって、相違点3、4は格別のものではない。

(本願発明の作用効果について)
そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用発明及び参考文献1,2に記載の周知技術から当業者が容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び参考文献1,2に記載の周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-13 
結審通知日 2013-05-14 
審決日 2013-06-03 
出願番号 特願2006-513341(P2006-513341)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 梅本 達雄上嶋 裕樹岩間 直純  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 山崎 達也
原 秀人
発明の名称 分散型検索方法、アーキテクチャ、システム、およびソフトウェア  
代理人 森下 夏樹  
代理人 安村 高明  
代理人 山本 秀策  

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