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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1280584
審判番号 不服2012-15433  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-08-08 
確定日 2013-10-17 
事件の表示 特願2011-126562「タッチパネル付き無線端末の制御方法及びタッチパネル付き無線端末」拒絶査定不服審判事件〔平成23年10月 6日出願公開、特開2011-198382〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年9月28日に出願された特願2006-264866号の一部を、平成23年6月6日に新たな特許出願としたものであって、平成23年7月1日付けで手続補正がなされ、平成23年7月29日付けで拒絶理由通知がなされ、同年9月8日けで手続補正がなされ、同年11月30日付けで最後の拒絶理由通知がなされ、平成24年2月6日付けで手続補正がなされ、同年4月27日付けで、平成24年2月6日付けの手続補正による補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、平成24年8月8日付けで、拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。


第2 平成24年8月8日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年8月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」と呼ぶ。)を却下する。

[理由]
1.補正内容
本件補正は、特許請求の範囲の補正を含むものであって、請求項1を、
「 【請求項1】
タッチパネル付き無線端末の制御方法であって、
前記無線端末が、表示しているメール文章中の視覚的に区別された番号にタッチされると、当該視覚的に区別された番号を電話番号として発呼を可能とするステップを含む、
ことを特徴とするタッチパネル付き無線端末の制御方法。」
から、
「 【請求項1】
タッチパネル付き無線端末の制御方法であって、
画面がタッチされた状態で、表示している文章中の視覚的に区別された番号にタッチされると、当該視覚的に区別された番号を電話番号として発呼しない前記無線端末が、画面がタッチされていない状態で、前記表示している文章中の視覚的に区別された番号にタッチされると、当該視覚的に区別された番号を電話番号として発呼を可能とするステップを含む、
ことを特徴とするタッチパネル付き無線端末の制御方法。」

に変更する補正事項を含むものである。なお、下線は補正箇所を表している。

2.本件補正に対する判断
本件補正の内の上記補正事項は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」と呼ぶ。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(上記改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下検討する。
2-1.本願補正発明
本願補正発明は、上記「1.」に本件補正後の請求項1として転記したとおりのものである。

2-2.本件補正後の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているといえるか否か(本願補正発明が発明の詳細な説明に記載された発明であるといえるか否か)について

(1)一般に、特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明であるといえるか否かは、請求項に係る発明が、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以上の観点から、以下、本願補正発明について検討する。

(2)まず、本願補正発明は、上記本件補正後の請求項1の記載から明らかなように、「画面がタッチされた状態」で、「表示している文章中の視覚的に区別された番号にタッチされる」という操作が為された場合には、当該視覚的に区別された番号を電話番号として発呼しないが、「画面がタッチされていない状態」で、同様の操作がなされた場合には、当該視覚的に区別された番号を電話番号として発呼を可能とするように動作するという構成(以下、「構成A」と呼ぶ。)を要件とするものであるが、その「画面がタッチされた状態」にあるか否かを区別するタッチと「表示している文章中の視覚的に区別された番号にタッチされる」という操作がなされたか否かを区別するタッチとが、相互に異なる入力種別(本願明細書の段落【0005】でいう入力種別;ペンか指か)であるという構成(以下、「構成B」と呼ぶ。)は要件としないものである。
したがって、本願補正発明は、上記「『画面がタッチされた状態』にあるか否かを区別するタッチ」の入力種別と「『表示している文章中の視覚的に区別された番号にタッチされる」という操作がなされたか否かを区別するタッチ」の入力種別とを区別しない発明(以下、「発明A」と呼ぶ。)を含むものである。

(3)一方、本願の発明の詳細な説明には、本願の発明の詳細な説明に記載された発明の課題に関する記載(課題と表裏を為すものともいえる効果に関する記載を含む)としては、下記ア.、イ.、オ.の記載があるのみであり、また、そこに示される課題に対応する課題の解決手段であって、上記構成Aに対応する技術的事項を具備するものに関する記載としては、特許請求の範囲の記載を単に引き写したにすぎない段落【0009】、【0010】の記載を除けば、下記ウ.、エ.の記載があるのみである。
なお、特許請求の範囲の記載要件として特許法第36条第6項第1号の要件が設けられている趣旨に鑑みれば、発明の詳細な説明における特許請求の範囲を単に引き写したに過ぎない上記段落【0009】、【0010】記載が、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしていることの根拠となりえないことは明らかである。

ア.
「【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネルを利用した携帯端末が増加するとともに、携帯端末の小型化が進んでいる。また、PDA(パーソナルデジタルアシスタンス)のようなタッチパネルを利用する携帯端末には、メールアプリケーションが装備されていることが多い。このようなメールアプリケーションを操作する場合には、一般的に端末のハードキーのキー操作や、タッチパネルに表示されたタッチペンによるソフトキーの操作が行われている。
【0003】
タッチパネルを用いてメールアプリケーションを操作する場合には、メール作成から送信するまでの間に多くの画面切替操作及び入力操作が必要となる。メールを作成する場合に、できるだけ少ないキーを用いて迅速な入力を行うために、例えば、ソフトキー文字列の表示する手法(例えば、特許文献1)や、文字入力時にタッチペンを接触し、タッチペンを動かす方向によりソフトキー表示に対して多くの文字を入力する手法(例えば、特許文献2)が提案されている。また、狭いスペースで表示しているソフトキーの誤動作を防ぐために、ユーザのソフトキーの使用頻度を算出し、使用頻度の高いソフトキーのサイズを大きくすることによってユーザの誤動作を防ぐ手法(例えば、特許文献3)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-84086号公報
【特許文献2】特開2003-157144号公報
【特許文献3】特開平11-265240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、タッチパネルを利用した従来の携帯端末では、オブジェクト(ソフトキー等)の機能は、入力種別(ペン又は指)に関係なく入力に対して1対1対応である、すなわち、入力種別によらず入力に応じたオブジェクトが有する機能が表現されるので、他の機能を実現するためには、その機能を実現するためのオブジェクトを新たに生成する必要がある。したがって、表示部のスペースが小さい場合には、目的を達成するために必要な操作数が増大するという不都合がある。
【0006】
また、特許文献1及び2で提案されているような手法では、メール作成時の文字入力回数が減少するものの、入力操作以外では従来のメールアプリケーションと同様にタッチパネルの操作による画面切替を何回も行う必要がある。
【0007】
また、特許文献3で提案されているような手法では、使用頻度の低いソフトキーを使用するときにユーザは意識して操作をする必要があるため、操作性においてユーザの満足できるものであるとは言い難い。
【0008】
本発明の目的は、タッチパネルを利用したメールアプリケーションにおいて、目的を達成するまでの操作数を増加することなく、一般的な入力装置を利用して限られた表示スペースで多機能の動作を実現することができる携帯端末及びその制御方法を提供することである。」
イ.
「【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、タッチパネルへの入力が第1の入力手段と第2の入力手段のいずれによる入力であるかを判別し、入力手段に応じて表示されているオブジェクト以外の機能を実現するので、タッチパネルを利用したUIを実現する場合に、目的を達成するまでの操作数を増加することなく、一般的な入力装置を利用して限られた表示スペースで多機能の動作を実現することができる。」
ウ.
「【0027】
図3Aは、入力状態を判定するフローチャートであり、図3Bは、入力手段を判定するフローチャートである。図3Aにおいて、電源投入等により携帯端末1が起動されると、タッチパネル5における入力検知箇所をカウントするカウンターnを初期化して(n=0)(ステップS101)、タッチパネル5への入力待ち状態になる(ステップS102で接触なし)。
【0028】
タッチパネル5への入力を新たに検知すると(タッチパネル5にペン又は指が接触すると)(ステップS102で接触)、タッチパネル5での入力検知箇所数をカウントするカウンターnをインクリメントし(n=n+1)(ステップS103)、入力座標(Xn,Yn)を検出するとともに(ステップS104)、当該入力によるタッチパネル5への接触面積Znを算出する(ステップS105)。続いて、ステップS105において算出した接触面積Znに基づき、当該入力がペンによるものか指によるものか等の入力手段を判別する(ステップS106)。なお、ステップS106における入力手段の判別方法は、図3Bに示す。以上、判定した入力座標(Xn,Yn)及び入力手段(Tn)に基づき、当該入力の入力状態Lnを決定する(Ln=(Tn,Xn,Yn))(ステップS107)。
【0029】
図3Bにおいて、接触面積Znが指の面積閾値Aより大きいか否か判定し(ステップS201)、面積閾値A以上の場合には(ステップS201でYes)、入力種別が指であると判定し(Tn=YUBI)(ステップS202)、面積閾値がA未満である場合には(ステップS201でNo)、入力種別がペンであると判定する(Tn=PEN)(ステップS203)。
【0030】
一方、タッチパネル5への入力が解除されると(タッチパネルからペン又は指が離れると)(ステップS102で接触解除)、当該解除された入力に対応して保持されている入力状態Lnを消去し(ステップS108)、入力検知箇所が1ヶ所減るため、カウンターnをデクリメントする(ステップS109)。
【0031】
上述の処理により、ペンによるメイン入力であると判別された場合、メイン入力の入力座標により特定されるアプリケーションの画面上の領域に予め割り当てられたアプリケーションの機能(オブジェクト)を、メイン入力に基づいて実行し、指によるサブ入力であると判別された場合、アプリケーションの画面上に予め割り当てられたアプリケーションの機能(オブジェクト)の実行を禁止し、アプリケーションの画面上の領域に割り当てられていない所定の機能をサブ入力に基づいて実行する。また、指によるサブ入力とペンによるメイン入力とが同時に検出された場合、アプリケーション画面上に予め割り当てられた機能の実行を禁止し、アプリケーション画面に割り当てられていない所定の機能をメイン入力に基づいて実行する。」
エ.
「【0036】
図8に示すように、Aさんからの受信メールを閲覧している画面においてリンクがある場合には、通常、ペンでリンク部分をタッチすることによりリンク先に遷移する。図8では、電話番号にタッチすることにより、この電話番号への発呼モードに切り替わっている
。一方、図9に示すように、指で画面を押下した状態で、ペンによりリンク部分をタッチすると、リンク先には飛ばず、範囲指定が行われる。つまり、サブ入力によって画面に表示されている機能(この場合、リンク)は禁止され、その状態(サブ入力中)でメイン入力を行うと、メイン入力に応じて画面には表示されていない機能(この場合は範囲指定)が実行される。」
オ.
「【0039】
上記実施の形態によれば、タッチパネルに対して、指によるタッチパネルの接触によって画面の操作ができるので、携帯端末によって受信されたメールを、指によるタッチパネルへの接触のみで閲覧可能となる。したがって、受信メールを閲覧するために表示切替やソフトキーの表示領域を設ける必要がないので、狭いスペースを有効に活用でき、かつ、ユーザの操作数が少なくなる。
【0040】
また、タッチパネルへの入力手段(ペン又は指)を判定し、メイン入力、サブ入力及びこれらの組合せによって実行する機能を区別しているので、特別なハードウェアを必要とせず、かつ、入力装置に対する切替動作なども発生しないため、限られたスペース内でユーザが直感的かつ誤動作の少ない操作を行うことができる。特に、本発明のようにメールアプリケーションに使用した場合には、従来のように特別なキーを割り当てたり、複数回のメニュー操作で実現した受信メールの閲覧動作やスクロール動作が、特別なデバイスを必要とすることなく実現することができる。」

(上記記載中の下線は、下記(4)の説明の理解の便宜のために当審において付したものである。)

(4)以上を前提に、上記(2)で言及した発明Aが、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲内にあるといえるか否かについて検討するに、当審は、発明Aは、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲内にあるとはいえないと判断する。理由は以下のとおりである。
ア.本願の発明の詳細な説明に開示された発明の特定の実施形態ではなく全体に係る記載であると解される段落【0005】及び【0021】の記載は、各タッチの入力種別を区別するようにしたことが、発明の課題を解決することができた理由の核心であることを表していると解される。
イ.その他のいずれの箇所の記載も、一貫して、本願の発明の詳細な説明に開示された発明においては、各タッチの入力種別が区別されることが前提とされているような記載ぶりとなっている。
ウ.本願の発明の詳細な説明には、各タッチの入力種別が区別されなくても課題を解決し得ると解し得る具体的記載はない。
エ.審判請求人は、平成25年5月7日付けの回答書において、本願明細書の段落【0041】の記載と「発明が解決しようとする課題」の欄の記載を根拠に、本願補正発明は発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる旨主張しているが、本願明細書の段落【0041】には、メイン入力とサブ入力を区別しないようにしても発明の詳細な説明に記載された発明が解決しようとした課題を解決し得ると解し得る記載はないし、「発明が解決しようとする課題」の欄(段落【0005】?【0008】)にも、各タッチの入力種別が区別されなくても課題を解決し得ると解し得る記載があるとはいえない。
オ.以上のことは、発明Aが、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲内にある発明ではないことを意味している。

(5)以上のとおり、発明Aは、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲内にあるものとはいえず、本願補正発明は発明Aを含むものであるから、結局、本願補正発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。
したがって、本件補正後の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

2-3.むすび
よって、本件補正は、上記改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


第3 上記補正却下の決定を踏まえた本願についての検討

1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」と呼ぶ。)は、上記「第2」の「1.」の欄に本件補正前のものとして転記したとおりのものである。

2.引用例記載発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-336346号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の記載がある。

「【0010】従って、本発明の目的は、かかる手動入力による電話呼び出し操作の煩雑さを取り除き、電話番号情報が含まれる各種情報から直接電話発呼し通話可能な情報処理装置及び情報処理方法、更にはそれを情報処理装置に実行可能とさせるソフトウェア・プログラムが格納された媒体を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】従って、本発明によると、通信網に接続するための通信接続手段と、所定のアプリケーション・ソフトウェアを実行する際に取扱われる情報の中から電話番号を検出する検出手段と、前記検出手段によって電話番号が検出された際に、その旨を表示する表示手段と、前記検出手段によって検出された電話番号に基づき前記通信接続手段を介して電話発呼する電話発呼手段と、を有することを特徴とする。
【0012】
【作用】前記情報処理装置において、検出手段は、処理する情報の中からユーザの電話番号を自動的に検出し、前記電話発呼手段は、表示手段に示された表示情報の選択に応答して、自動的に電話発呼することにより相手方との通信接続を行うことができ、ユーザによる電話番号の手入力の必要性を解消する。」

「【0020】情報中の中から電話番号を検出し、その電話番号の相手方に電話をかけるまでの過程を順を追って説明する。電話番号を特定するための識別子を中に含んだ情報を情報処理装置10が読み取ると、検出手段30は、特定手段32で定義された識別子となる記述形式、いわゆる特定コードを探しだし、そのコードを検出したら、そのコードに引き続く番号を電話番号と認識する。そして、その認識された電話番号を、表示手段36に対して強調(ハイライト)、アンダーライン又はカラーにより表示するか、又は電話番号を表示するかわりに、表示手段の一部の点灯や点滅等、若しくは電話番号が検出された等のコメントを行うことによって、ユーザに対して電話番号を検出したことを知らせる。
【0021】図3は、表示手段36への表示の一例を表したものであり、図2の識別子44、46により囲まれた電話番号48がアンダーラインとハイライトによって表示される。ユーザが、その強調された電話番号48の部分にマウス等の入力手段でカーソル49を移動させ、その位置でマウスのクリック等による電話番号の選択を行うと、電話発呼手段34が起動される。」

「【0033】次に、図1で示した情報処理装置10に、簡易型携帯電話システム(以下、PHS(Personal Handy Phone System)という)を適用した場合の例を示す。今日では、PHSによる通話機能及び個人用情報機器(PDA(Personal DigitalAssistants)という)としての機能の両方を併せ持つ、いわゆるPHS内蔵型情報処理装置が出現している。」

「【0035】PHS内蔵型情報処理装置70は、図6で示したハードウェア構成から、電子メールや、WWWサーバ等のインターネットが供給する情報に対しての処理を可能とする各種アプリケーション・ソフトウェアの実行を可能とする。同様に、PHS内蔵型情報処理装置70は、図1に従って説明した各ブロックの機能を実行するためのハードウェア構成でもある。
【0036】通信情報端末としての機能を有しているPHS内蔵型情報処理装置70によって情報を交換する場合のネットワーク構成の概要を図7を使用して説明する。図7は、PHS70がISDN通信網84と、そのPHS内蔵型情報処理装置70の使用者が加入しているインターネット・サービス・プロバイダ(以下、プロバイダという)85の所有する通信網86とを介してインターネット92と接続される。
【0037】PHS内蔵型情報処理装置70は、プロバイダ85との通信を確立するために図6のアンテナ79を介して複数の基地局82の内の所定の基地局と通信リンクを行う。通信リンクが行われたPHS内蔵型情報処理装置70は、プロバイダ85が使用するゲートウェイ88を通ってインターネット92にアクセス可能となる。従って、PHS内蔵型情報処理装置70は、インターネット92に接続されたWWWサーバ94のいずれかのWWWサーバの提供する情報の検索が可能となり、又インターネット92に接続された他の処理装置96との電子メール等による情報交換も可能となる。尚、プロバイダ通信網86に接続されたサーバ90は、PHS内蔵型情報処理装置70がプロバイダ85を経由してインタネット接続を行うためのアドレス管理するDNSサーバや、PHS内蔵型情報処理装置70に対して、メールやニュース、その他の情報の提供を行うメール・サーバ、ニュース・サーバ等のサーバである。
【0038】PHS内蔵型情報処理装置70がWWWサーバ94の情報を検索し、その情報の中に組み入れられた電話番号からWWWサーバ情報を提供する提供者に直接電話をする場合、情報のなかに、本発明による電話識別のための手段を有していなければならない。ここで、図2を例として説明した識別子とともに電話番号を付加する場合、HTML(HyperText Markup Language)で使用するタグを利用することがより有利であり且つ便利でもある。
【0039】HTMLのタグとは、HTMLファイルをテキスト形式で記述する際の、基本的記述形式であり、<>記号で囲まれている文字列である。その構成は<タグ名>文字列</タグ名>となっており、そのタグ名の与えられる機能が、囲まれたその文字列に影響する。例えば、<B>SONY</B>のタグは、表示部へのSONYという文字列をボールドスタイル(太字)で表示する機能を有する。尚、<タグ名>を開始タグといい、</タグ名>を終了タグという。但し、一部のタグには開始タグだけで終了タグがないものもある。
【0040】ここで、各WWWブラウザは、基本的なタグの他、基本的タグ以外の新たな機能を有するタグを別途拡張した複数のタグを用意し、機能の充実を図っている。従って、これに更に拡張した新たなタグを定義し、特定手段32(図1参照)の一つである識別子(図2参照)として利用することができる。例えば、特定手段32において、識別子として<TEL></TEL>タグを定義し、その間に電話番号が入るようにする。これにより、検出手段30(図1参照)は、容易に電話番号を認識することが可能となる。さらに、電話発呼手段34(図1参照)は、<TEL></TEL>によって表示された箇所が選択されたとき、その間に挿入された番号へ電話をかけるように設定される。これによって、ユーザは何ら電話番号を入力することなく、相手方に電話をかけることができる。以上から、検出手段30、特定手段32、及び電話発呼手段34は、WWWブラウザにタグ形式で組み込まれているため、アプリケーション処理手段が、WWWブラウザと別に存在する必要はない。」

ここで、上記記載を関連図面と技術常識に照らせば、以下のことがいえる。
ア.段落【0035】等でいう「PHS内蔵型情報処理装置70」は、「無線端末」の一種であり、当該「PHS内蔵型情報処理装置70」上で実行される方法は、「無線端末の制御方法」ともいい得る。
イ.段落【0020】、【0021】、【0035】?【0040】等の記載によれば、上記「PHS内蔵型情報処理装置70」上で実行される方法は、「無線端末が、表示しているメール文章中の視覚的に区別された番号が選択されると、当該視覚的に区別された番号を電話番号として発呼を可能とするステップ」といい得るステップを有している。

したがって、引用例1には、次の発明(以下、「引用例1記載発明」と呼ぶ。)が記載されているといえる。
「無線端末の制御方法であって、
前記無線端末が、表示しているメール文章中の視覚的に区別された番号が選択されると、当該視覚的に区別された番号を電話番号として発呼を可能とするステップを含む、
無線端末の制御方法。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-155038号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の記載がある。

「【要約】
【課題】 電子メール内の電話番号に容易に発信できるとともに、電子メール内の電話番号を電話帳に容易に登録できる情報通信端末を提供する。
【解決手段】 通信処理部10により受信された電子メールは、メールデータ保持部15に保持されるとともに、表示部20に表示される。電話番号検索部16は、電話番号判断部17により電子メール内の電話番号を抽出し、抽出した電話番号を電話番号選択バッファ18に格納する。制御部19は、電子メールの送信メールアドレスに基づいて、対応する相手の情報が電話帳データ保持部14の電話帳データに登録されているか検索し、上記電話番号選択バッファ18に格納されている電話番号とともに、登録されている電話番号を表示部20に表示する。通信処理部10は、電話番号が1つだけの場合には、その電話番号に対して発呼し、一方、複数の場合には、ユーザに選択された電話番号に発呼する。」

「【0024】タッチパネル入力部9は、後述する表示部20の表面に配設され、表面をペン8でタッチすることで、タッチ位置を入力信号として制御部19に供給する。これにより、表示部20に表示されたデータをペン8によりタッチすることで選択することができるようになっている。特に、本実施例では、表示部20に表示された電子メール内の電話番号をペン8により指示されると、その電話番号を取り込むようになっている。また、複数の電話番号を表示しておき、ユーザにどの電話番号に発呼するかを選択させるようになっている。
【0025】通信処理部10は、例えば、PHSによる通信を実現するための回路であり、制御部19から供給される電話番号に対して発呼したり、通話においては、アンテナ11によって受信した受信信号を復調し、音声信号をスピーカ12から出力したり、マイク13から入力された音声信号を変調し、アンテナ11から出力したりする。また、通信処理部10は、受信信号にデータ(例えば電子メール)が含まれる場合には、データを取り出して制御部19に供給する。」

「【0032】また、電子メールが表示部20に表示された状態で、ペン8により電子メールの特定箇所(電話番号)がダブルタップ(ペンにより所定箇所が2度たたかれること)されると、ステップS16を介してステップS18に進む。ステップS18では、ダブルタップされた箇所から電話番号を抽出し、該電話番号を通信制御部10に供給して発呼させる。すなわち、ユーザは、表示部20に表示されている電子メールに記述されている電話番号を直接指示することにより、発呼させることができる。なお、電話番号の直接入力処理の詳細については後述する。」

そして、上記記載事項を引用例2の関連図面と技術常識に照らせば、引用例2には次の発明(以下、「引用例2記載発明」と呼ぶ。)が記載されているといえる。
「電子メール内の電話番号に容易に発信できるタッチパネル付き無線端末であって、表示された番号にタッチすることで当該番号が選択されるように構成されている無線端末。」

3.対比
本願発明と引用例1記載発明を対比すると、引用例1記載発明における「メール文章中の視覚的に区別された番号が選択される」ことと本願発明における「メール文章中の視覚的に区別された番号にタッチされる」こととは、「メール文章中の視覚的に区別された番号が選択される」ことである点で共通するといえるから、両者の間には、以下の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「無線端末の制御方法であって、
前記無線端末が、表示しているメール文章中の視覚的に区別された番号が選択されると、当該視覚的に区別された番号を電話番号として発呼を可能とするステップを含む、
無線端末の制御方法。」である点。

〈相違点〉
本願発明の無線端末は「タッチパネル付き」の無線端末であり、本願発明における「メール文章中の視覚的に区別された番号が選択される」ことは、「メール文章中の視覚的に区別された番号にタッチされる」ことであるのに対し、引用例1記載発明の無線端末は「タッチパネル付き」の無線端末ではなく、引用例1記載発明の「メール文章中の視覚的に区別された番号が選択される」ことは、「メール文章中の視覚的に区別された番号にタッチされる」ことではない点。

4.判断
(1)(相違点)について
以下の事情を勘案すると、引用例1記載発明の無線端末を「タッチパネル付き」の無線端末とし、引用例1記載発明の「メール文章中の視覚的に区別された番号が選択される」ことを「メール文章中の視覚的に区別された番号にタッチされる」こととすることは、当業者が容易に推考し得たことというべきである。
ア.引用例1記載発明と引用例2記載発明は、技術分野と解決しようとした課題が共通しており、引用例1記載発明においても引用例2記載発明が有用かつ採用可能であることは当業者に明らかであるから、引用例1記載発明に引用例2記載発明を適用することは、当業者が容易に推考し得たことである。
イ.引用例1記載発明に引用例2記載発明を適用すれば、引用例1記載発明の無線端末は当然に「タッチパネル付き」の無線端末となり、引用例1記載発明の「メール文章中の視覚的に区別された番号が選択される」ことは当然に「メール文章中の視覚的に区別された番号にタッチされる」こととなる。

(2)本願発明の効果について
本願発明の構成によってもたらされる効果は、引用例1、2の記載事項から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

(3)まとめ
以上によれば、本願発明は、引用例1記載発明及び引用例2記載発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1記載発明及び引用例2記載発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願は、他の拒絶の理由について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-19 
結審通知日 2013-08-20 
審決日 2013-09-02 
出願番号 特願2011-126562(P2011-126562)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 537- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 遠藤 尊志  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 衣川 裕史
清水 稔
発明の名称 タッチパネル付き無線端末の制御方法及びタッチパネル付き無線端末  
代理人 大倉 昭人  
代理人 杉村 憲司  

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