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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1280599
審判番号 不服2012-25643  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-25 
確定日 2013-10-17 
事件の表示 特願2006-317572「携帯端末装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 6月 5日出願公開,特開2008-130040〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は平成18年11月24日の出願であって,平成24年2月16日付けの拒絶理由通知に対して,平成24年4月23日に意見書と手続補正書が提出されたが,平成24年9月25日付けで拒絶査定がされ,これに対し,平成24年12月25日に審判が請求されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成24年4月23日の手続補正書により補正された明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。
「電子マネーの残高を格納し,外部装置と非接触通信により会計処理を行う非接触ICカード機能部と,
外部音声出力機器と接続して音声を出力する音声出力インタフェースと,
前記非接触ICカード機能部に格納されている前記電子マネーの残高が所定の残高以下になるイベントが発生した場合,前記音声出力インタフェースに外部音声出力機器が接続されているときには前記音声出力インタフェースを介して音声により前記イベントの発生を通知し,前記音声出力インタフェースに外部音声出力機器が接続されていないときには前記音声出力インタフェースを介して音声により前記イベントの発生を通知しない通知部と,
を有することを特徴とする携帯端末装置。」

3 引用例
(1)引用例1
ア 原査定の拒絶の理由に引用された,本願出願前の平成17年2月24日に頒布された,特開2005-50262号公報(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに,以下の記載がある。
「【0001】
本発明は,携帯端末(携帯電話,PDA等)に,ICモジュールを含むICカードを装着するか,もしくは,ICカードの機能を実現するICモジュールを内蔵させることにより,携帯端末を利用した様々なサービスを提供する技術に関する。ここで,ICモジュールとは,一つ又は複数のICチップにより構成されたモジュールであり,プロセッサとメモリを備え,プロセッサがメモリに格納されたプログラムを実行することにより所定の機能を実現するものであればよく,その具体的構造は問わないものとする。」
「【0009】
本発明は,上記した背景に鑑み,携帯端末に搭載されたICモジュールが,サービス端末との間の非接触通信により行なった処理について,ICモジュールと接触インタフェースを介して接続されている携帯端末の表示部等のユーザインタフェース機能を使って,ユーザに適切な通知を行なうことができる機構を提供することを目的とする。」
「【0048】
本実施形態において,ICモジュールは,ICカード機能に対して要求される耐タンパ性を有し,ICモジュール内に閉じ込められたプログラムや重要なデータの機密性を保つことができるものとする。このため,本実施形態におけるICモジュールは,セキュアエレメント(SE)と呼ばれる。
【0049】
図1は,本実施形態に係るセキュアエレメント(SE)100,サービス端末120,及び携帯端末140の構成例を示す。なお,SE100は,携帯端末140に着脱可能なICカードに搭載されても良いし,携帯端末に内蔵されていても良い。前者の場合,SE100がICカードを構成することになり,後者の場合,SE100と携帯端末140とを合わせた全体を携帯端末と呼ぶことになる。
【0050】
SE100は,SE内のアプリケーションプログラムの動作制御や他装置との通信の制御を行なう制御部102と,サービスを受けるためのアプリケーションプログラムやサービスに関するデータ等を格納するメモリ104とを備える。制御部102は,機能的なブロックを示し,実際にはCPU及びEEPROM等により実現される。SE100はまた,サービス端末120と非接触通信を行なうためのインタフェース(非接触I/F)106と,携帯端末140と接続されるためのインタフェース(接触I/F)108とを有する。処理判断部110は,後に詳述するように,SE内のアプリケーションプログラムによる処理を監視,判断して,接触I/F108を介して携帯端末140に通知する機能を有する。
【0051】
サービス端末120は,自動販売機,精算カウンター,駅の改札や空港のチェックインカウンター,コンサート会場の出入口,オフィスや工場のゲートなどの,所定の場所に設置されており,サービス端末内のアプリケーションプログラムの動作制御や他装置との通信の制御を行なう制御部122と,サービスを提供するためのアプリケーションプログラムや必要なデータ等を格納するメモリ124とを備える。サービス端末120はまた,SE100と非接触通信を行なうことができるインタフェース126を有し,ユーザが所定の場所を通過するときに,携帯しているSE100をサービス端末120に近づけることにより,所定のサービスを受けることができる。
【0052】
携帯端末140は,携帯端末の動作や他装置との通信を制御する制御部142,携帯端末に様々な動作をさせるためのアプリケーションプログラムや必要なデータ等を格納するメモリ144,携帯電話網への通信を行なう通信部148,及びSE100の接触I/F108と接続可能な接触I/F146とを備える。携帯端末140はまた,キーパッドやボタン,マイクロホンなどによりユーザの操作を受け付ける操作部152と,携帯端末の表示画面や着信表示LED,その他専用の表示灯などによりユーザに対する出力を行なう表示部150とを備える。表示部150は,ユーザの視覚に対する出力に限らず,聴覚に対する出力(スピーカやヘッドホンジャック)でもよいし,触覚に対する出力(バイブレーション機能)でもよい。」
「【0069】
そして,バリューの残高を閾値以下に下げる処理であった場合には携帯端末の表示部を点灯させるが,そうでない場合には消灯したままとするという判断手法もある。図6には,この判断手法を採る処理判断部110を備えた制御部102の動作を,改札アプリを例にとり説明する。判断の基準となる閾値は,例えば図7(a)に示されるように処理判断部110により保持され,これらの数値は,ユーザがサービス毎又は処理毎に設定することとしても良いし,サービス提供事業者等が予め設定しておくこととしても良い。なお,図7(a)に示す閾値管理表は,TLV構造のデータとして保持されていても良い。
【0070】
ユーザがSEを搭載した携帯端末をサービス端末にかざすと,SEの制御部102は,そのサービス端末がある鉄道の改札に設置されたものであることを知り,そのサービスに対応するA鉄道用の改札アプリ(例えばアプリ112)を起動する(S601)。そして,サービス端末との非接触通信により改札処理命令を受信し(S603),この命令に従って改札処理(例えば乗車駅と定期券データをサービス端末へ送信し,これに応答してサービス端末から返信される精算金額をSE内のその鉄道用のバリューから減算する等)を行なう(S605)。」
「【0072】
さて,上記改札処理は,制御部102の制御の下でアプリ112により行なわれるが,これによりSE内のバリューの残高が,上記のように設定された閾値を下回ったか否かを,処理判断部110が判断する(S609)。閾値を下回ったと判断した場合は,携帯端末のLED等を点灯してユーザの注意を喚起し(S611),下回っていないと判断した場合は,何もせずに,改札処理を終了する(S615)。いずれの判断をした場合も,改札処理終了の前に,オプショナルで,改札結果を携帯端末の表示画面等に表示するようにしても構わない(S613)。」

イ 上記記載によれば,引用例1には以下の技術的事項が記載されている。
(ア)引用例1に記載された発明は,ICカードの機能を実現するICモジュールを内蔵し,所定の機能を実現する携帯端末(携帯電話,PDA等)において(【0001】),ICモジュールが、サービス端末との間の非接触通信により行なった処理について、ユーザに適切な通知を行なうことができる機構を提供することを目的とするものである(【0009】)。
(イ)携帯端末140は,ICカードを構成するICモジュール(セキュアエレメントSE100)を搭載し(【0049】),SE100は、処理判断部110を備えた制御部102、サービスに関するデータ等を格納するメモリ104、サービス端末120と非接触通信を行なうためのインタフェース(非接触I/F)106,及び携帯端末140と接続するためのインタフェース(接触I/F)108とを有する(【0050】)。
サービス端末120は、駅の改札などの所定の場所に設置されており、SE100と非接触通信を行なうインタフェース126を有し、ユーザが所定の場所を通過するときに、携帯しているSE100をサービス端末120に近づけることにより、所定のサービスを受けることができる(【0051】)。
携帯端末140は、制御部142、メモリ144、通信部148、SE100と接続可能な接触I/F146,操作部152、及び表示部150を備え,ここで,表示部150による表示は、ユーザの視覚に対する出力に限らず、スピーカやヘッドホンジャックによる聴覚に対する出力を含み(【0052】),制御部102の処理判断部110は,判断の基準となる閾値を保持している(【0069】)。
(ウ)ユーザがSE100を搭載した携帯端末をサービス端末にかざすと、SE100の制御部102は改札アプリを起動し、サービス端末との非接触通信により改札処理命令を受信し、サービス端末から返信される精算金額をSE内のバリューから減算する処理を行なう(【0070】)。
処理判断部110は,SE内のバリューの残高が設定された閾値を下回ったか否かを判断し,閾値を下回ったと判断した場合は、携帯端末に表示し,ユーザの注意を喚起する(【0072】)。

ウ 以上のことから,引用例1には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。
「ICカードの機能を実現するICモジュールを内蔵し,所定の機能を実現する携帯端末(携帯電話,PDA等)において,
携帯端末は,ICカードを構成するICモジュール(セキュアエレメントSE)を搭載し,表示部を備え,
ここで,表示部による表示は,ヘッドホンジャックによる聴覚に対する出力を含み,SEの処理判断部は,判断の基準となる閾値を保持し,
ユーザが携帯端末をサービス端末にかざすと,携帯端末に搭載されたSEは,サービス端末との非接触通信により,サービス端末から返信される精算金額をSE内のバリューから減算する処理を行ない,
処理判断部は,SE内のバリューの残高が設定された閾値を下回ったか否かを判断し,閾値を下回ったと判断した場合は,携帯端末に表示し,ユーザの注意を喚起する,
携帯端末。」

(2)引用例2
ア 原査定の拒絶の理由に引用された,本願出願前の平成18年2月9日に頒布された,特開2006-41880号公報(以下,「引用例2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
「【0001】
本発明は,例えば,デジタル放送を受信可能な携帯電話やPDA(Personal digital assistant),専用受信機等の携帯端末に関する。」
「【0003】
ところで,一般に,デジタル放送を受信する機器は,放送される番組の視聴予約を行うことができ,予約時刻になると該予約した番組を受信して表示する。
しかしながら,デジタル放送を受信することができる携帯端末に視聴予約機能を搭載しても,該携帯端末がユーザのポケットやカバン等の中に入れられその位置が移動しているため,視聴予約の開始時刻に番組視聴が困難な場所にいる場合がある。例えば,電車の車内,会議の途中等静寂にしなければならない場所や番組を視聴するのに好ましくない場所に居る場合などが考えられる。このような視聴困難な場所に居る場合,ユーザはリアルタイムの番組視聴を諦めこの番組を録画して後で楽しむことも出来るが,(1)録画操作に手間取って開始時刻に間に合わなかったり,(2)上記場所で録画までの操作が行えずその録画自体を諦めなければならなかったり,など結果として視聴予約をしていた番組を見逃すという問題がある。
また,ポケットやカバン等の中に入れていたために視聴開始時刻に気付かず視聴予約をしていた番組を見逃すという問題もある。」
「【0004】
前記目的を達成するために,本発明の第1の観点の携帯端末は,デジタル放送において放送される番組を受信する受信手段と,該受信手段により受信される番組を記録する記録手段と,放送予定の番組を視聴予約する予約手段と,該予約手段で予約した番組の放送開始前に予約した番組が放送開始される旨の報知を行い,該報知に対して予め定められた応答がない場合は,当該視聴予約がされている番組を前記記録手段に記録する制御手段とを備える。」
「【0080】
ステップST74の判別において,事前通知動作(報知)後,計時部104が計時する現時刻が開始時刻であると判別した場合には,つまり報知後開始時刻までに再生指示が入力されない場合には,制御部113は,予約情報に基づいて受信部101が受信する放送波に含まれるコンテンツデータをメモリ112に記録する(ST75)。つまり視聴予約番組の放送記録を行う。」
「【0086】
また,制御部113は,上述した入力部106からの再生指示の他に,例えばユーザによる下記の動作を再生指示としてもよい。」
「【0088】
詳細には,装置の形状が上述したように折りたたみタイプの場合,閉状態(折り畳んでいる状態)から開状態(折り畳みを展開した状態)に遷移した動作を再生指示とする。また,装置形状がターンタイプの場合,第1筐体と第2筐体が重なり合った状態(閉状態)から連結部を中心に回転させて展開(開状態)させる動作を再生指示としてもよい。尚,閉状態でも視聴可能であれば,開状態から閉状態に遷移する動作も予め定められた応答としてもよい。また,着脱式の視聴用イヤホンを有する場合,イヤホンの接続を検出した場合に,その検出結果を示す信号を再生指示としてもよい。また,着脱式の視聴用アンテナを有する場合,アンテナの接続を検出した場合に,その検出結果を示す信号を再生指示としてもよい。」

イ 上記記載によれば,引用例2には,以下の発明が記載されている。
「デジタル放送を受信,記録,再生可能な携帯端末であって,視聴困難な状況にある場合に視聴予約していた番組の見逃し防止のために,視聴予約時間の報知時に再生指示が入力された場合には再生が行われ,再生指示が入力されない場合は番組の記録が行われ,視聴用イヤホンの接続が検出された場合における検出信号を前記再生指示とする,携帯端末。」

4 対比
(1)本願発明と引用発明とを比較する。
ア 本願発明と引用発明とは,いずれも「携帯端末装置」に関する技術分野に属するものである。
イ 引用発明は,ICモジュール(セキュアエレメントSE)を搭載した携帯端末とサービス端末との非接触通信により,SE内のバリューから精算金額を減額するものであり,一方,本願発明の携帯端末装置は,外部装置との非接触通信により会計処理を行うICカード機能部を有するものである。
ここで,引用発明の「ICモジュール(セキュアエレメントSE)」,「サービス端末」は,その機能及び構成からみて,本願発明の「非接触ICカード機能部」,「外部装置」にそれぞれ相当し,また,引用発明の「サービス端末との非接触通信により,サービス端末から返信される精算金額をSE内のバリューから減算する」は,外部装置との非接触通信を利用したサービスを受けるためのSE内の電子的価値であるバリューに対する会計処理であって,本願発明の「電子マネーの残高」に対する「会計処理」に相当する。
本願発明と引用発明とは,「電子マネーの残高を格納し,外部装置と非接触通信により会計処理を行う非接触ICカード機能部」を有する点で共通する。
ウ 引用発明の「表示部」は,「ヘッドホンジャックによる聴覚に対する出力」を含むものであって,一般的な音声出力のための機器であるヘッドホン,イヤホン等と接続可能であることから,本願発明の「外部音声出力機器」が接続される「音声出力インタフェース」に相当する。
本願発明と引用発明とは,「外部音声出力機器と接続して音声を出力する音声出力インタフェース」を有する点で共通する。
エ 引用発明の「SEの処理判断部」は,「ユーザが携帯端末をサービス端末にかざすと,携帯端末に搭載されたSEは,サービス端末との非接触通信により,サービス端末から返信される精算金額をSE内のバリューから減算する処理を行」うものであって,当該処理判断部が保持する「判断の基準となる閾値」と「SE内のバリューの残高」とを比較し,残高が,「設定された閾値を下回ったか否かを判断し,閾値を下回ったと判断した場合は,携帯端末に表示し,ユーザの注意を喚起する」ものである。
ここで,引用発明における,「SE内のバリューの残高が設定された閾値を下回ったか否かを判断し,閾値を下回ったと判断した場合」は,本願発明の「非接触ICカード機能部に格納されている電子マネーの残高が所定の残高以下になるイベントが発生した場合」に相当する。
また,「表示部による表示」が,「ヘッドホンジャックによる聴覚に対する出力」である場合において,「携帯端末に表示し,ユーザの注意を喚起する」ためには,ヘッドホンジャックにヘッドホン,イヤホン等の音声出力機器が接続されていることが前提であるから,引用発明は,本願発明の「音声出力インタフェースに外部音声出力機器が接続されているときには音声出力インタフェースを介して音声によりイベントの発生を通知」する構成を備える。
本願発明と引用発明は,「非接触ICカード機能部に格納されている電子マネーの残高が所定の残高以下になるイベントが発生した場合,音声出力インタフェースに外部音声出力機器が接続されているときには前記音声出力インタフェースを介して音声により前記イベントの発生を通知」する「通知部」を有する点で共通する。

(2)以上のことから,本願発明と引用発明との一致点,相違点は次のとおりである。

[一致点]
「電子マネーの残高を格納し,外部装置と非接触通信により会計処理を行う非接触ICカード機能部と,
外部音声出力機器と接続して音声を出力する音声出力インタフェースと,
前記非接触ICカード機能部に格納されている前記電子マネーの残高が所定の残高以下になるイベントが発生した場合,前記音声出力インタフェースに外部音声出力機器が接続されているときには前記音声出力インタフェースを介して音声により前記イベントの発生を通知する通知部と,
を有する携帯端末装置。」

[相違点]
本願発明は,「通知部」が,「音声出力インタフェースに外部音声出力機器が接続されていないときには前記音声出力インタフェースを介して音声によりイベントの発生を通知しない」のに対して,引用発明はそのような構成は特定されていない点。

5 判断
(1)本願発明の相違点に係る発明特定事項「前記音声出力インタフェースに外部音声出力機器が接続されていないときには前記音声出力インタフェースを介して音声により前記イベントの発生を通知しない」の技術的意義に関連して,本願の特許請求の範囲の請求項5には,次のとおり記載されている。
「【請求項5】
請求項1?4のいずれか1項に記載の携帯端末装置において,
前記イベントが発生した場合に,前記音声出力インタフェースに外部音声出力機器が接続されていないと,前記音声出力インタフェースを介して音声によりイベントが発生した旨を通知せずに,当該イベントが発生した旨を示す情報を格納する記憶部をさらに有し,
前記通知部は,前記イベントが発生した旨を示す情報が前記記憶部にされていると,前記音声出力インタフェースに外部音声出力機器が接続され,該外部音声出力機器から音声データを出力する際に,前記音声出力インタフェースを介して音声により当該イベントの発生を通知する,ことを特徴とする携帯端末装置。」
また,本願明細書の記載を参照すれば,次の記載がある。
「【0004】
携帯端末装置における乗車券機能の残高管理方法としては,ユーザが乗車しようと入札ゲート(改札口)を通過するときに携帯端末装置と入札ゲートとの間で非接触通信を行って位置データを取得し,乗車中の位置データと料金データベースから自端末の電子マネーの残高不足を判定して,残高不足の場合ユーザに報知するものがある。・・・」
「【0009】
以上のようにイヤホンを利用している状態では,音楽に集中しているので改札口の表示を確認せず,携帯端末装置は閉じられた状態なので表示を見ることはない。もし,改札ゲート通過時に改札ゲート側から音声報知があったとしてもイヤホンを利用している状態では聞こえないことが多く,また周囲の人に聞かれてしまうと言った,本人に不具合で有るばかりでなく周囲に迷惑な現象が起きることが容易に想像できる。
【0010】
したがって,係る点に鑑みてなされた本発明の目的は,電子マネー及び定期乗車券の機能を搭載した携帯端末装置であって,電子マネーの残高を確認すると共に常時一定金額を保有させ,定期乗車券やポイントカードのポイントの有効期限を,周囲に迷惑を及ぼすことなく事前にユーザが設定した方法で報知する携帯端末装置を提供することにある。」
「【0018】
このように,ユーザが電子マネー,定期券機能付き携帯端末装置にイヤホンを装着して音楽や音声を楽しめる機器であって,定期券の有効期限が近づいた場合や残高不足の時に音楽や音声等を中断して,または音楽や音声等に重ねてアナウンスさせることを特徴とするものである。
【0019】
また,定期券の有効期限が近づいた場合や残高不足の時にイヤホンを装着していない場合は一度情報を記憶部に保存することで,イヤホン装着後音楽や音声等の前に報知音を流すことを特徴とするものである。」
「【0024】
比較部123は,非接触ICカード機能部110の記憶部114に記憶された電子マネーの残高と設定情報記憶部132に格納された最低残高とを比較し,設定情報記憶部132の最低残高よりも記憶部114の電子マネー残高が少ない場合はステップS24へ,記憶部114の電子マネー残高が多い場合はステップS21へ移行する(ステップS23)。記憶部114の電子マネー残高が少ないと判定された場合,ステップS24にて,接続監視部122は音声出力I/F190に外部音声出力機器(イヤホン,ヘッドホン等)300が接続されているか否かを判定する。外部音声出力機器300が接続されていない場合はステップS27へ移行し,報知情報記憶部133に電子マネー残高が最低残高以下になったという情報が格納される。」
「【0033】
ユーザは携帯端末装置100に外部音声出力機器300を装着せずに,外部装置200への支払処理,または改札口の通過を行い,このときに携帯端末装置100では電子マネーの残高が最低残高以下となったことや定期券の有効期日が間近であることを検出し,報知情報記憶部133にその旨を記憶していたとする。その状態で,ユーザがラジオ,TVの音声または音楽などを楽しもうと,外部音声出力機器300を装着すると,報知処理が開始される。・・・」

これらの記載を総合すれば,相違点に係る構成は,イヤホンを装着して音楽や音声を楽しめる携帯端末装置において,ユーザに,定期券の有効期限が近づいた場合や残高不足に係る情報を報知する際に,前記情報の聴き逃しを防止することを課題とし,その解決手段として,音声出力インタフェースに外部音声出力機器が接続されていないときは,その間に発生した情報を出力することなく記憶部に保存し,イヤホン装着後に当該情報を出力することを前提としたものと解される。

(2)引用発明は,SE内のバリューの残高が,SEの処理判断部に設定された閾値を下回ったか否かを判断し,閾値を下回ったと判断した場合に,携帯端末に表示し,ユーザの注意を喚起するものであって,前記表示には,「ヘッドホンジャックによる聴覚に対する出力」である場合が含まれるところ,この場合,ヘッドホンジャックにヘッドホン,イヤホン等の外部音声出力機器が接続されていなければ,ユーザが注意喚起を聴き逃してしまうという課題が生じることは,当業者にとって自明のことである。
一方,引用例2には,前記のとおり,「デジタル放送を受信,記録,再生可能な携帯端末であって,視聴困難な状況にある場合に視聴予約していた番組の見逃し防止のために,視聴予約時間の報知時に再生指示が入力された場合には再生が行われ,再生指示が入力されない場合は番組の記録が行われ,視聴用イヤホンの接続が検出された場合における検出信号を前記再生指示とする,携帯端末」の発明,すなわち,携帯端末において,視聴困難な状況にある場合に視聴予約していた番組を見逃すことを防止するために,視聴用イヤホンの接続が検出されない場合には番組を再生することなく番組を記録する技術が記載されており,「視聴困難な状況」として,イヤホンが接続されていない場合が含まれることは,明らかである。
そうすると,引用発明において,表示が「ヘッドホンジャックによる聴覚に対する出力」である場合に,ヘッドホンジャックにヘッドホン,イヤホン等の外部音声出力機器が接続されていなければ,ユーザが注意喚起を聴き逃してしまうという課題を解決するために,引用例2に記載された発明を採用し,ヘッドホンジャックにヘッドホン,イヤホン等の外部音声出力機器が接続されていないときは,その間に発生した情報を出力することなく記憶部に保存する構成,すなわち,相違点に係る「音声出力インタフェースに外部音声出力機器が接続されていないときには前記音声出力インタフェースを介して音声によりイベントの発生を通知しない」構成とすることは,当業者であれば容易に想到し得たことである。

(3)そして,本願発明の奏する作用効果は,引用例1及び引用例2に記載された発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
したがって,本願発明は,引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないことから,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-19 
結審通知日 2013-08-20 
審決日 2013-09-04 
出願番号 特願2006-317572(P2006-317572)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 雅士  
特許庁審判長 西山 昇
特許庁審判官 清田 健一
須田 勝巳
発明の名称 携帯端末装置  
代理人 杉村 憲司  
代理人 大倉 昭人  

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