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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01G |
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管理番号 | 1280602 |
審判番号 | 不服2013-2152 |
総通号数 | 168 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-12-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-02-05 |
確定日 | 2013-10-17 |
事件の表示 | 特願2008-202564「積層セラミックコンデンサ」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 2月18日出願公開、特開2010- 40798〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成20年8月6日の出願であって、平成24年11月26日付けで拒絶査定がなされ、平成25年2月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 第2 本願発明について 1 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年8月6日の出願時の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「結晶粒子と結晶粒界とを有する誘電体セラミックからなる、積層された複数の誘電体セラミック層、および前記誘電体セラミック層間の特定の界面に沿って形成された複数の内部電極をもって構成される、コンデンサ本体と、 前記コンデンサ本体の外表面上の互いに異なる位置に形成され、かつ前記内部電極の特定のものに電気的に接続される、複数の外部電極と を備え、 前記内部電極の積層方向に隣り合うものの間に位置する前記誘電体セラミック層の厚みをtとし、かつ前記誘電体セラミックの前記結晶粒子の平均粒径をrとしたとき、 前記厚みtは1μm未満であり、かつ N=t/r-1(ただし、tの単位およびrの単位は互いに同じである。)で定義される平均粒界個数Nは、0<N≦2であり、 前記誘電体セラミックは、ABO_(3)(Aは、Ba、またはBaならびにCaおよびSrの少なくとも一方を含む。Bは、Ti、またはTiならびにZrおよびHfの少なくとも一方を含む。)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とし、かつMnおよびVを副成分として含む組成を有し、前記主成分100モル部に対して、Mnの含有量は0.05モル部以上かつ0.75モル部以下であり、Vの含有量は0.05モル部以上かつ0.75モル部以下であり、MnおよびVの合計含有量は0.10モル部以上かつ0.80モル部以下である、 積層セラミックコンデンサ。」 2 刊行物に記載された発明 (1)刊行物1:特開2007-197233号公報 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物1には、「誘電体セラミック及び該誘電体セラミックの製造方法、並びに積層セラミックコンデンサ」(発明の名称)に関して、図1,2とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線は、引用箇所のうち特に強調する部分に付加した。以下、同様。) 「【0001】 本発明は誘電体セラミック及び該誘電体セラミックの製造方法、並びに積層セラミックコンデンサに関し、より詳しくは小型・大容量の積層セラミックコンデンサ用誘電体材料に適した誘電体セラミック、及びその製造方法、並びに該誘電体セラミックを使用して製造された積層セラミックコンデンサに関する。」 「【0008】 しかしながら、特許文献1のような従来の誘電体セラミックでは、誘電体セラミック層を1μm以下に薄層化すると、絶縁性や高温負荷時の故障寿命が低下し、このため所望の信頼性を確保することができなくなるという問題点があった。 【0009】 すなわち、積層セラミックコンデンサでは、一般に、内部電極間に存在する結晶粒子の個数が多くなるほど絶縁性が向上し、故障寿命も長くなる。この現象は、内部電極間に存在する結晶粒子の個数が多くなると結晶粒界の割合も増加することから、結晶粒界の方が結晶粒子よりも比抵抗が高いことを示している。したがって、従来のこの種の誘電体セラミックでは、結晶粒界の方が結晶粒子よりも比抵抗が高く、絶縁性が高いため、結晶粒界に印加される電界は、結晶粒子に印加される電界よりも高い。 【0010】 しかしながら、上記従来の誘電体セラミックでは、誘電体セラミック層の厚みを1μm以下に薄層化すると、内部電極間に存在する結晶粒子の個数が減少してくるため、結晶粒界に高電界が印加されることとなり、その結果故障寿命が低下し、所望の信頼性を確保することができないという問題点があった。 【0011】 本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、誘電体セラミック層の厚みを1μm以下に薄層化しても温度特性を損なうことなく、良好な誘電特性を有し、かつ所望の良好な信頼性を得ることができる誘電体セラミック、及びその製造方法、並びに該誘電体セラミックを使用した小型・大容量の積層セラミックコンデンサを提供することを目的とする。」 「【0021】 本発明の誘電体セラミックによれば、(Ba,Ca)_(m)TiO_(3)を主成分とし、SiO_(2)、V_(2)O_(5)、MnO、MgO、及びR_(x)O_(y)を含む誘電体セラミックにおいて、V成分が結晶粒界に均一に分散し、かつ結晶粒子には殆ど存在しないように形成されているので、結晶粒界の比抵抗が低くなって該結晶粒界に印加される電界強度を低下させることが可能となる。したがって、誘電体セラミック層の厚みを1μm以下に薄層化しても、誘電体セラミックとしての諸特性(比誘電率、誘電損失、温度特性、DCバイアス特性)が良好で、しかも信頼性の優れた誘電体セラミックを得ることができる。」 「【0027】 本発明に係る誘電体セラミックは、所定比率に配合されたペロブスカイト型結晶構造(一般式ABO_(3))を有する(Ba,Ca)_(m)TiO_(3)を主成分とし、副成分としてSiO_(2)、V_(2)O_(5)、MnO、MgO、及びR_(x)O_(y)(特定の希土類酸化物)を所定範囲で含有し、V成分が結晶粒界中に均一に分散されると共に、前記主成分中にV成分が殆ど固溶しないように形成されている。」 「【0065】 図2は本発明に係る誘電体セラミックを使用して製造された積層セラミックコンデンサの一実施の形態を模式的に示した断面図である。 【0066】 該積層セラミックコンデンサは、本発明の誘電体セラミックからなるセラミック焼結体1に内部電極2(2a?2f)が埋設されると共に、該セラミック焼結体1の両端部には外部電極3a、3bが形成され、さらに該外部電極3a、3bの表面には第1のめっき皮膜4a、4b及び第2のめっき皮膜5a、5bが形成されている。 【0067】 すなわち、セラミック焼結体1は、複数の誘電体セラミック層1a?1gの積層焼結体からなり、また、誘電体セラミック層1a?1gと内部電極2a?2fとが交互に積層された構造とされ、内部電極2a、2c、2eは外部電極3aと電気的に接続され、内部電極2b、2d、2fは外部電極3bと電気的に接続されている。そして、内部電極2a、2c、2eと内部電極2b、2d、2fとの対向面間で静電容量を形成している。 【0068】 上記積層セラミックコンデンサは、上記配合物を使用して以下のような方法で製造される。 【0069】 すなわち、上記配合物を有機バインダや有機溶剤、粉砕媒体と共にボールミルに投入して湿式混合し、セラミックスラリーを作製し、ドクターブレード法等によりセラミックスラリーに成形加工を施し、焼成後の厚みが1μm程度又はそれ以下となるようにセラミックグリーンシートを作製する。 【0070】 次いで、内部電極用導電性ペーストを使用してセラミックグリーンシート上にスクリーン印刷を施し、前記セラミックグリーンシートの表面に所定パターンの導電膜を形成する。 【0071】 尚、内部電極用導電性ペーストに含有される導電性材料としては、特に限定されるものではないが、低コスト化の観点からは、Ni、Cuやこれら合金を主成分とした卑金属材料を使用するのが好ましい。 【0072】 次いで、導電膜が形成されたセラミックグリーンシートを所定方向に複数枚積層し、導電膜の形成されていないセラミックグリーンシートで挟持し、圧着し、所定寸法に切断してセラミック積層体を作製する。そしてこの後、温度300?500℃で脱バインダ処理を行ない、さらに、酸素分圧が10^(-9)?10^(-12)MPaに制御されたH_(2)-N_(2)-H_(2)Oガスからなる還元性雰囲気下、温度1100?1300℃で約2時間焼成処理を行なう。これにより導電膜とセラミック材とが共焼結され、内部電極2が埋設されたセラミック焼結体1が得られる。 【0073】 次に、セラミック焼結体1の両端面に外部電極用導電性ペーストを塗布し、焼付処理を行い、外部電極3a、3bを形成する。 【0074】 尚、外部電極用導電性ペーストに含有される導電性材料についても、特に限定されるものではないが、低コスト化の観点から、AgやCu、或いはこれらの合金を主成分とした材料を使用するのが好ましい。 【0075】 また、外部電極3a、3bの形成方法としては、セラミック積層体の両端面に外部電極用導電性ペーストを塗布した後、セラミック積層体と同時に焼成処理を施すようにしてもよい。 【0076】 そして、最後に、電解めっきを施して外部電極3a、3bの表面にNi、Cu、Ni-Cu合金等からなる第1のめっき皮膜4a、4bを形成し、さらに該第1のめっき皮膜4a、4bの表面にはんだやスズ等からなる第2のめっき皮膜5a、5bを形成し、これにより積層セラミックコンデンサが製造される。 【0077】 このように本積層セラミックコンデンサは、上述した誘電体セラミックを使用して製造されているので、誘電体セラミック層1a?1gが1μm以下、例えば0.7μm程度に薄層化されても高比誘電率を有し、低誘電損失で、静電容量の温度特性を損なうことなく、静電容量のDCバイアス特性も良好で、絶縁性や高温負荷時における故障寿命が長く、信頼性の優れた積層セラミックコンデンサを容易に得ることができる。」 「【0082】 〔主成分の作製〕 まず、セラミック素原料として、高純度のCaCO_(3)、平均粒径が10?50nmのTiO_(2)及びBaCO_(3)を用意し、表1に示すような組成を有するようにこれらセラミック素原料を秤量した。そして、これら秤量物をPSZボール及び純水と共にボールミルに投入し、24時間湿式で混合粉砕し、乾燥させた後、温度1000℃で2時間、熱処理を施し、平均粒径0.1?0.2μmの(Ba、Ca)_(m)TiO_(3)で表される主成分A?Uを作製した。」 「【0088】 〔積層セラミックコンデンサの作製〕 (試料番号1?5、7?15、18?83) SiO_(2)及びV_(2)O_(5)を用意し、これらSiO_(2)及びV_(2)O_(5)の含有モル量がTi成分100モル部に対し、表2?4に示す配合比率となるように秤量し、これら秤量物をPSZボールや有機溶剤としてのエタノールと共にボールミルに投入し、該ボールミル内で36時間湿式で混合粉砕した後、乾燥させて配合物を得た。次いで、この配合物を、温度1000℃で2時間熱処理を施し、溶融させて溶融物とした後、該溶融物を液体窒素(-196℃)に投入して急冷し、固化物を作製した。そしてこの後、この固化物を、再度、PSZボール及びエタノールと共にボールミルに投入し、該ボールミル内で24時間混合粉砕した後、乾燥させ、SiO_(2)-V_(2)O_(5)混晶物を作製した。 【0089】 次に、他の添加成分としてMgCO_(3)、MnCO_(3)、及びR_(x)O_(y)(ただし、R_(x)O_(y)はY_(2)O_(3)、La_(2)O_(3)、CeO_(2)、Nd_(2)O_(3)、Sm_(2)O_(3)、Eu_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Tb_(2)O_(3)、Dy_(2)O_(3)、Ho_(2)O_(3)、Er_(2)O_(3)、Tm_(2)O_(3)、Yb_(2)O_(3)、又はLu_(2)O_(3))の各粉末を用意した。そして、上記主成分、SiO_(2)-V_(2)O_(5)混晶物、及び上記各添加成分を表2?4に示す配合比率となるように秤量し、該秤量物をPSZボール及び純水と共にボールミルに投入し、8時間湿式で混合粉砕し、配合物を得た。 【0090】 次に、該配合物に有機バインダとしてのポリビニルブチラール樹脂及び有機溶剤としてのエタノールを添加し、ボールミル内で湿式混合し、これによりセラミックスラリーを得た。そしてこの後、ドクターブレード法を使用してセラミックスラリーに成形加工を施し、厚みが0.85μmの矩形状のセラミックグリーンシートを作製した。 【0091】 次いで、Niを主成分とした内部電極用導電性ペーストを用意し、該内部電極用導電性ペーストを使用して前記セラミックグリーンシートにスクリーン印刷を施し、内部電極となるべき導電膜をセラミックグリーンシートの表面に形成した。 【0092】 次いで、導電膜が形成されたセラミックグリーンシートを所定方向に複数枚積層し、導電膜の形成されていないセラミックグリーンシートで挟持し、圧着し、所定寸法に切断してセラミック積層体を作製した。そしてこの後、窒素雰囲気下、温度350℃で脱バインダ処理を行ない、さらに、酸素分圧が10^(-10)MPaに制御されたH_(2)-N_(2)-H_(2)Oガスからなる還元性雰囲気下、温度1100?1250℃で2時間焼成処理を施し、内部電極が埋設されたセラミック焼結体(誘電体セラミック)を作製した。 【0093】 その後、B_(2)O_(3)-Li_(2)O-SiO_(2)-BaO系ガラス成分を含有したAgを主成分とする外部電極用導電性ペーストを用意し、該外部電極用導電性ペーストをセラミック焼結体の両端面に塗布し、窒素雰囲気下、温度600℃で焼付処理を施し、外部電極を形成し、試料番号1?5、7?15、18?83の積層セラミックコンデンサを作製した。 【0094】 尚、各積層セラミックコンデンサは、外形寸法が、縦2.1mm、横1.3mm、厚み2.0mm、内部電極間に介在する誘電体セラミック層の厚みは0.7μmであった。また、有効誘電体セラミック層の積層数は50であり、1層あたりの対向電極面積は1.4×10^(-6)m^(2)であった。」 「【0108】 表2?4は試料番号1?83の組成成分及び焼成温度を示し、表5?7は各測定結果を示している。尚、表5?7中、温度変化率は+85℃のときの温度変化率ΔC_(85℃)のみを掲載している。」 「【0111】 【表4】 」 以上の記載及びこの技術分野における技術常識を考慮すると、 まず、刊行物1の【0001】にあるように、刊行物1には、「誘電体セラミック」を使用して製造された「積層セラミックコンデンサ」の記載があり、 刊行物1の【0009】にも記載があるように「誘電体セラミック」が、「結晶粒子」と「結晶粒界」とを有するのは、技術常識である。 また、刊行物1の【0065】?【0067】及び図2にあるように、 該「積層セラミックコンデンサ」は、「積層された複数の誘電体セラミック層(1a?g)」、および「前記誘電体セラミック層間の特定の界面に沿って形成された、複数の内部電極(2a?f)」をもって構成される『コンデンサ本体』と、 「前記コンデンサ本体の外表面上の互いに異なる位置に形成され、かつ前記内部電極の特定のものに電気的に接続される2つの外部電極(3a,3b)」とを備えている。 また、刊行物1の【0069】,【0077】などの記載によれば、前記「誘電体セラミック層」の厚みは「1μm以下」であり、 【0027】によれば、前記「誘電体セラミック」は、「ペロブスカイト型結晶構造(一般式ABO_(3))を有する(Ba,Ca)_(m)TiO_(3)」を主成分とし、 副成分として「V_(2)O_(5),MnO」なども含んでおり、 特に【0088】,【0111】,表4の試料No.58に注目すると、主成分であるTi100モル部に対しV_(2)O_(5)及びMnOの含有量がモル部でそれぞれ0.05及び0.200であるから、Vの含有量は0.1モル部、Mnの含有量は0.2モル部、Mn及びVの合計含有量は0.3モル部となる。 したがって、刊行物1には、「結晶粒子と結晶粒界とを有する誘電体セラミックからなる、積層された複数の誘電体セラミック層、および誘電体セラミック層間の特定の界面に沿って形成された複数の内部電極をもって構成される、コンデンサ本体と、 前記コンデンサ本体の外表面上の互いに異なる位置に形成され、かつ前記内部電極の特定のものに電気的に接続される2つの外部電極と を備え、 誘電体セラミック層の厚みは1μm以下であり、かつ 前記誘電体セラミックはペロブスカイト型結晶構造(一般式ABO_(3))を有する(Ba,Ca)_(m)TiO_(3)を主成分とし、主成分100モル部に対してMnの含有量は0.2モル部であり、Vの含有量は0.1モル部であり、Mn及びVの合計含有量は0.3モル部である、積層セラミックコンデンサ。」(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 (2)刊行物2:特開平11-317322号公報 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物2には「積層セラミックコンデンサ」(発明の名称)に関して、図2とともに以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 誘電体層と内部電極とが交互に積層されている積層セラミックコンデンサにおいて、該誘電体層一層中に一のセラミック粒子で形成されている一層一粒子の部分の割合が20%以上であることを特徴とする積層セラミックコンデンサ。 【請求項2】 前記誘電体層が5μm以下の厚さを有し、該誘電体層を形成しているセラミック粒子が3.5μm以上の平均粒径を有していることを特徴とする請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。」 3 本願発明と引用発明との対比・判断 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「誘電体セラミック層の厚みは1μm以下であり」は、本願発明の「誘電体セラミック層の厚みをtとし」「前記厚みtは1μm未満であり」に相当する。 また、引用発明の「前記誘電体セラミックはペロブスカイト結晶構造(一般式ABO_(3))を有する(Ba,Ca)_(m)TiO_(3)を主成分とし」は、本願発明の「ABO_(3)(Aは、Ba、またはBaならびにCaおよびSrの少なくとも一方を含む。Bは、Ti、またはTiならびにZrおよびHfの少なくとも一方を含む。)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とし」に相当する。 また、引用発明の「2つの外部電極」は、本願発明の「複数個の外部電極」に含まれる。 さらに、引用発明の「主成分100モル部に対してMnの含有量は0.2モル部であり、Vの含有量は0.1モル部であり、Mn及びVの合計含有量は0.3モル部である」は、本願発明の「主成分100モル部に対して、Mnの含有量は0.05モル部以上かつ0.75モル部以下であり、Vの含有量は0.05モル部以上かつ0.75モル部以下であり、MnおよびVの合計含有量は0.10モル部以上かつ0.80モル部以下である」に含まれる。 ゆえに、両者は、 「結晶粒子と結晶粒界とを有する誘電体セラミックからなる、積層された複数の誘電体セラミック層、および前記誘電体セラミック層間の特定の界面に沿って形成された複数の内部電極をもって構成される、コンデンサ本体と、 前記コンデンサ本体の外表面上の互いに異なる位置に形成され、かつ前記内部電極の特定のものに電気的に接続される、複数の外部電極と を備え、 前記内部電極の積層方向に隣り合うものの間に位置する前記誘電体セラミック層の厚みをtとしたとき、 前記厚みtは1μm未満であり、かつ 前記誘電体セラミックは、ABO_(3)(Aは、Ba、またはBaならびにCaおよびSrの少なくとも一方を含む。Bは、Ti、またはTiならびにZrおよびHfの少なくとも一方を含む。)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とし、かつMnおよびVを副成分として含む組成を有し、前記主成分100モル部に対して、Mnの含有量は0.05モル部以上かつ0.75モル部以下であり、Vの含有量は0.05モル部以上かつ0.75モル部以下であり、MnおよびVの合計含有量は0.10モル部以上かつ0.80モル部以下である、 積層セラミックコンデンサ。」である点で一致し、以下の点で相違する。 {相違点1} 本願発明は「前記誘電体セラミックの前記結晶粒子の平均粒径をrとしたとき、N=t/r-1(ただし、tの単位およびrの単位は互いに同じである。)で定義される平均粒界個数Nは、0<N≦2であ」るのに対して引用発明は上記構成を備えていない点。 そこで、上記相違点について検討する。 {相違点1について} 引用例2の図2によれば、内部電極間の粒界個数は、0または1であり、したがって平均粒界個数Nは0<N<1となることが推定される。よって、引用例2において推定される0<N<1は本願発明における0<N≦2に含まれるから、本願発明のように平均粒界個数Nを0<N≦2とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 よって、本願発明は、刊行物1,2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。 第3 むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1,2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-08-19 |
結審通知日 | 2013-08-20 |
審決日 | 2013-09-02 |
出願番号 | 特願2008-202564(P2008-202564) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 池田 安希子 |
特許庁審判長 |
石井 研一 |
特許庁審判官 |
大澤 孝次 関谷 隆一 |
発明の名称 | 積層セラミックコンデンサ |
代理人 | 小柴 雅昭 |