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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02M
管理番号 1280606
審判番号 不服2013-10967  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-12 
確定日 2013-10-17 
事件の表示 特願2012- 67347「安定性判定方法、安定性判定回路、電力変換装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月24日出願公開、特開2013- 17375〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成24年3月23日(優先日、平成23年6月6日)の出願であって、平成24年6月25日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成24年7月3日)、これに対し、平成24年9月3日付で意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年3月8日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成25年3月12日)、これに対し、平成25年6月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年9月3日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「コンバータ(8)と、インバータ(1)と、前記コンバータと前記インバータとを接続する一対の直流母線(70,71)と、前記一対の直流母線の間に接続されるコンデンサ(72)と、前記コンデンサ(72)と共にローパスフィルタを形成するインダクタ(3)とを備える電力変換装置(5)における動作の安定性を判定する方法であって、
前記一対の直流母線の間の直流電圧(Vdc)の脈動分(Vdcr)の振幅(|Vdcr|)が、所定値(Q)を超えることを以て、前記電力変換装置の動作が不安定であると判定する、安定性判定方法。」


3.引用例
これに対して、原査定の理由に引用された特開2002-247859号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

「本発明は、交流入力を直流に変換し、再び交流に変換するインバータ装置、特に直流リンク電圧に含まれるリップルに起因する平滑用コンデンサの損傷を防止できるインバータ装置に関するものである。
例えば、実開平5-43800号公報に示されるように、接点リレーを使用せずに、ヒューズの断線を検出すると共に、三相交流電源の欠相を検出するインバータ装置は公知である。図5に示すように、このインバータ装置は、三相交流電源(51)の電力が各相共ヒューズ(52)を介して全波整流回路(53)に与えられて整流され、更に平滑用コンデンサ(54)により直流化される。この直流出力は、制御回路(図示せず)により制御されるスイッチング素子から構成される周知のインバータ回路(56)に与えられ、インバータ回路(56)により所定の周波数及び電圧の交流に変換されて電動機(57)が駆動される。また、インバータ装置の直流回路には、短絡時の焼損防止用のヒューズ(58)が設けられる。異常検出装置(61)はインバータ装置の直流主回路に挿入され直流電圧を分圧する2個の抵抗器(62,63)、直流電圧を電気的絶縁状態で再現する電圧検出回路(64)、電圧検出回路(64)の出力から交流分のみを取り出す交流分検出回路(65)、交流分検出回路(65)の出力のピーク値を保持するピークホールド回路(66)を備えると共に、ピーク値を設定値と比較して設定された下限値を下回るか及び設定された上限値を超えるかを判断し、該当する場合に異常信号を出力する2個の比較器(67,68)を備えている。電圧検出回路(64)は、抵抗器(62,63)により分圧された電圧値に比例したデューティ比を設定するデューティ比設定回路(69)、デューティ比設定回路(69)の出力信号により分圧された電圧をスイッチングするトランジスタ(70)、トランジスタ(70)によりスイッチングされた信号を二次側に伝達するフォトカプラ(71)、フォトカプラ(71)の二次側の信号を整形するバッファ(72)、バッファ(72)で整形された信号を積分する積分器(73)から構成される。
電圧検出回路(64)により直流主回路の電圧が電気的に絶縁された状態で再現される。電圧検出回路(64)の出力信号から交流分検出回路(65)により交流分のみが検出され、ピークホールド回路(66)により直流主回路の電圧リップルのピーク値が検出される。これにて、抵抗器(62,63)、電圧検出回路(64)、交流分検出回路(65)及びピークホールド回路(66)から検出手段が構成される。
ピークホールド回路(66)の出力値が比較器(67,68)の両者に与えられ、予め設定された上限値と下限値と夫々比較される。ピークホールド回路(66)の出力値が上限値と下限値との範囲内から外れる場合には、異常信号が出力される。また、比較器(67,68)は、インバータ装置の運転信号が運転状態になったときにのみ作動する。従って、比較器(67,68)は異常検出手段として機能する。
図示しないが、制御回路又は異常検出装置(61)から異常信号が出力された場合は、インバータ装置の外部において、所定のシーケンスにより電動機(57)の駆動を別のインバータ装置による運転又は商用電源による運転に切り換えられる。
インバータ装置が正常に作動するとき、直流主回路には電力の授受の関係から三相交流電源(51)の出力周波数の6倍に相当する電圧リップルが生ずる。この電圧リップルは、電圧検出回路(64)及び交流分検出回路(65)により検出されるが、正常時にはそのピーク値が小さく、設定された上限値と下限値との間の範囲内にある。従って、比較器(67)又は比較器(68)からヒューズ切れの異常信号が出力されることはない。
欠相が発生すると、インバータ装置に入力される電源が単相分となり、直流主回路に供給される電圧リップルが大きくなる。従って、電圧検出回路(64)により検出された電圧リップルも大きくなってピークホールド回路(66)から出力されるピーク値が設定された上限値を超える結果、比較器(67)から欠相の異常信号が出力される。このように、直流主回路の電圧又は電流のリップルの大きさを検出して、接点リレーを使用せずにインバータ装置の入力及び内部のヒューズの断線及び三相交流電源の欠相を検出することができる。」(【0001】-【0007】)

上記記載事項からみて、引用例1には、
「全波整流回路と、インバータ回路と、前記全波整流回路と前記インバータ回路とを接続する直流主回路と、前記直流主回路に接続される平滑用コンデンサとを備えるインバータ装置における異常検出方法であって、
前記直流主回路の直流電圧の電圧リップルのピーク値が、上限値を超えることを以て、前記インバータ装置が異常であると判定する、異常検出方法。」
との発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。


4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「全波整流回路」、「インバータ回路」、「直流主回路」、「平滑用コンデンサ」、「インバータ装置」、「異常検出方法」、「電圧リップルのピーク値」、「上限値」、「前記インバータ装置が異常であると判定する」は、それぞれ本願発明の「コンバータ(8)」、「インバータ(1)」、「一対の直流母線(70,71)」又は「一対の直流母線の間」、「コンデンサ(72)」、「電力変換装置(5)」、「動作の安定性を判定する方法」又は「安定性判定方法」、「脈動分(Vdcr)の振幅(|Vdcr|)」、「所定値(Q)」、「前記電力変換装置の動作が不安定であると判定する」に相当する。

したがって、両者は、
「コンバータと、インバータと、前記コンバータと前記インバータとを接続する一対の直流母線と、前記一対の直流母線の間に接続されるコンデンサとを備える電力変換装置における動作の安定性を判定する方法であって、
前記一対の直流母線の間の直流電圧の脈動分の振幅が、所定値を超えることを以て、前記電力変換装置の動作が不安定であると判定する、安定性判定方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点〕
本願発明は、コンデンサと共にローパスフィルタを形成するインダクタを有するのに対し、引用発明は、ローパスフィルタを形成するインダクタを有していない点。


5.判断
コンバータと、インバータと、前記コンバータと前記インバータとを接続する一対の直流母線と、前記一対の直流母線の間に接続されるコンデンサとを備える電力変換装置において、インバータに供給される直流分からリップル分を除くために、コンデンサと共にローパスフィルタを形成するインダクタを設けることは本願の優先日前に周知の事項(必要ならば、特開2005-20837号公報、特開2002-204524号公報等参照)であり、引用発明においても、通常使用時にインバータに供給される直流分からリップル分を除く必要性は当然に存在するから、引用発明において、コンデンサと共にローパスフィルタを形成するインダクタを設けることは、当業者が容易に考えられることと認められる。

なお、請求人は、審判請求書において、
『しかしながら、上記意見書でも述べたように、引用文献1で想定しているリップルの増大の原因たる電源の欠相、不平衡状態は、上記インダクタを採用しただけでリップルの増大を緩和するであろう。これを別の側面から見れば、インダクタを追加してローパスフィルタを構成してしまうと、引用文献1が検出しようとする電源の欠相、不平衡状態や平滑コンデンサの容量低下の検出をしにくくなってしまうことになる。
このように引用文献1に対して、拒絶査定で示されたような電力変換装置の構成を適用することは、引用文献1の本来的な技術的思想を阻害するものである。引用文献1の本来的な技術的思想を無視して周知技術を適用することは、本願を見て初めてなしえる後知恵であると思料する。』
と主張するが、
コンデンサと共にローパスフィルタを形成するインダクタを設け、直流電圧の脈動分の振幅を検出して電源の欠相・不平衡状態を判断することは、特開2002-204524号公報にもみられるように本願の優先日前に周知の事項であるから、請求人の上記主張は採用できない。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。


6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-15 
結審通知日 2013-08-20 
審決日 2013-09-02 
出願番号 特願2012-67347(P2012-67347)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 尾家 英樹  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 新海 岳
槙原 進
発明の名称 安定性判定方法、安定性判定回路、電力変換装置  
代理人 有田 貴弘  
代理人 福市 朋弘  
代理人 吉竹 英俊  

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