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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1280642
審判番号 不服2013-11345  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-17 
確定日 2013-10-25 
事件の表示 特願2008- 77423「液晶表示装置、及び、液晶表示装置における光の色設定方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年10月 8日出願公開、特開2009-229974〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成20年3月25日の特許出願であって、原審において、平成24年7月18日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月21日付けで手続補正がなされ、平成25年3月13日付けで拒絶査定がなされ、それに対して同年6月17日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2 本願発明
本願の請求項3に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項3】
液晶ディスプレイのバックライトとなる光を照射する光照射部を有する液晶表示装置であって、
前記光照射部は、
第1の色領域の色の光を照射する第1乃至第3の光源と、
前記第2の光源からの光の波長を変換し、第2の色領域の色の光を照射する第1の蛍光体と、
前記第3の光源からの光の波長を変換し、第3の色領域の色の光を照射する第2の蛍光体と、
前記第1乃至第3の光源の光量を調整することによって、前記第1乃至第3の色領域の色によって定まる所定の色領域内で、前記第1乃至第3の色領域の色の光を合成した光の色を設定する合成光色設定手段とを有する液晶表示装置。」

3 引用例
原査定の拒絶の理由において引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、特開2006-309209号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下、同じ。)。

(1)「【0001】
本発明は、画像表示装置に関する。」
(2)「【0018】
[1.赤色の画素]
図2は、本実施形態にかかる赤色発光素子11の要部を模式的に示す断面図である。ただし、赤色発光素子の構成は図2に示すものに限定されない。
本実施形態にかかる赤色画素1は、赤色画素用発光素子13と、波長変換材料である赤色蛍光体14とを有する赤色発光素子11を備えて構成されていて、赤色画素用発光素子13から発せられた光によって赤色蛍光体14が励起されて赤色蛍光体14から赤色の光が発せられ、この赤色の光が赤色画素1から赤色光として発せられるようになっている。また、赤色画素用発光素子13が発する光の一部は、赤色蛍光体14に励起光として吸収されず、赤色蛍光体14が発する赤色光と共に、赤色画素1が発する赤色光の一成分としてカラーディスプレイの外部に発せられるようにしても良い。」
(3)「【0024】
[1-2.赤色画素用発光素子]
赤色画素用発光素子13は、赤色蛍光体14の励起光を発するものである。
赤色画素用発光素子13の種類は任意であるが、例えば、半導体発光素子、ランプ、電子ビーム、プラズマ、エレクトロルミネッセンス素子などを使用することができるが、特に発光ダイオード(即ち、LED)、端面発光型又は面発光型のレーザーダイオード(即ち、LD)等の半導体発光素子を用いることが好ましい。中でも通常は、安価なLEDが好ましい。
【0025】
また、赤色画素用発光素子13が発する光の発光波長も任意であり、赤色画素として赤色発光素子11が発する赤色光に応じて適当な発光波長の光を発する発光素子を用いればよい。通常は、近紫外から青緑色の光を励起光として発する発光素子を用いることが望ましい。赤色画素用発光素子13が発する光の具体的な波長の範囲を例示すると、通常370nm以上、好ましくは380nm以上、また、通常500nm以下、好ましくは480nm以下が望ましい。この範囲外の場合は、高効率のLEDを製造することが難しくなる虞がある。」
(4)「【0090】
[2.緑色の画素]
図3は、本実施形態にかかる非赤色の画素の一つである緑色画素2として用いる緑色発光素子21の要部を模式的に示す断面図である。
本実施形態で用いる緑色画素2に制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない限り緑色の光を発する任意の光源を用いることができる。したがって、従来用いられてきた緑色発光LEDを本実施形態にかかる緑色画素2として用いることも可能であるが、赤色光源1の場合と同様に、温度依存性を小さくして温度変化による色調変化を抑制する観点からは、緑色画素用発光素子23と、波長変換材料である緑色蛍光体24とを有する緑色発光素子21を備えて構成することが好ましい。
【0091】
本実施形態においても、緑色画素2は図3に示すような緑色画素用発光素子23と緑色蛍光体24とを有する緑色発光素子21を備えていて、緑色画素用発光素子23から発せられた光によって緑色蛍光体24が励起されて緑色蛍光体24から緑色の光が発せられ、この緑色の光が緑色画素2から緑色光として発せられるようになっている。また、緑色画素用発光素子23が発する光の一部は、赤色発光素子11の場合と同様に、緑色蛍光体24に励起光として吸収されず、緑色蛍光体24が発する緑色光と共に、緑色画素2が発する緑色光の一成分としてカラーディスプレイの外部に発せられるようにしても良い。」
(5)「【0094】
[2-2.緑色画素用発光素子]
緑色画素用発光素子23は、緑色蛍光体24の励起光を発するものである。
緑色画素用発光素子23の種類に制限はなく、緑色蛍光体24の励起光を発するものである限り任意のものを用いることができるが、例えば、赤色画素用発光素子13として説明したものと同様のものを用いることができる。また、緑色画素用発光素子23をフレーム22に取り付ける方法などについても、赤色画素用発光素子13において説明したものと同様である。」
(6)「【0129】
[3.青色の画素]
図4は、本実施形態にかかる非赤色の画素の一つである青色画素3として用いる青色発光素子31の要部を模式的に示す断面図である。
本実施形態で用いる青色画素3に制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない限り青色の光を発する任意の光源を用いることができる。
【0130】
本実施形態においては、青色画素3は図4に示すような青色画素用発光素子33を有する青色発光素子31を備えていて、青色画素用発光素子33から発せられた青色光自体が青色画素3から青色光として発せられるようになっている。」
(7)「【0133】
[3-2.青色画素用発光素子]
青色画素用発光素子33は、青色画素3が発する青色光を発するものである。
青色画素用発光素子33の種類に制限はなく、青色光を発するものである限り任意のものを用いることができるが、例えば、赤色画素用発光素子13として説明したものと同様のものを用いることができる。また、青色画素用発光素子33をフレーム32に取り付ける方法などについても、赤色画素用発光素子13において説明したものと同様である。」
(8)「【0137】
[5.その他の構成]
カラーディスプレイ等の画像表示装置は、上記の赤色画素1、緑色画素2及び青色画素3を備えていればその具体的な構成は任意である。
例を挙げると、図1に示すように、赤色画素1、緑色画素2及び青色画素3としてそれぞれ機能する赤色発光素子11、緑色発光素子21及び青色発光素子31が基板101に載積されていて、これらの赤色画素1、緑色画素2及び青色画素3が全体で、カラーディスプレイの単位画素100を構成している。」
(9)「【0139】
また、上記の赤色発光素子11、緑色発光素子21及び青色発光素子31の各導電性端子15,16,25,26,35,36は、それぞれ基板101の表面の導電体層に電気的に接続されている。
さらに、赤色発光素子11、緑色発光素子21及び青色発光素子31のうちのいずれをどれだけ発光させるかは、赤色発光素子11、緑色発光素子21及び青色発光素子31それぞれに電力を供給する時期及び供給量を、カラーディスプレイに設けられた制御部(図示せず)により制御することにより制御されているものとする。」
(10)「【0157】
また、例えば、赤色発光素子11、緑色発光素子21及び青色発光素子31などの発光素子を規則的に配列し、すべての光を合わせて白色の光源とし、液晶などの透過率制御機構と赤色及び非赤色のカラーフィルターによって画像を制御する装置として画像表示装置を構成しても良い。」

上記記載事項(1)ないし(10)及び図面の記載からみて、引用例には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「波長変換材料である赤色蛍光体14と、赤色蛍光体14の励起光である、380nm以上、480nm以下の範囲の波長の光を発する赤色画素用発光素子13とを有する赤色発光素子11を備えて構成され、赤色画素用発光素子13から発せられた光によって赤色蛍光体14が励起されて赤色蛍光体14から赤色光を発する赤色画素1、
波長変換材料である緑色蛍光体24と、赤色画素用発光素子13として説明したものと同様のものを用いることができ、緑色蛍光体24の励起光を発する緑色画素用発光素子23を有する緑色発光素子21を備えて構成され、緑色画素用発光素子23から発せられた光によって緑色蛍光体24が励起されて緑色蛍光体24から緑色光を発する緑色画素2、
赤色画素用発光素子13として説明したものと同様のものを用いることができ、青色光を発する青色画素用発光素子33を有する青色発光素子31を備えて、青色画素用発光素子33から青色光を発する青色画素3、
を備えた画像表示装置であって、
赤色発光素子11、緑色発光素子21及び青色発光素子31それぞれに電力を供給する時期及び供給量を制御して、赤色発光素子11、緑色発光素子21及び青色発光素子31のうちのいずれをどれだけ発光させるかを制御し、
赤色発光素子11、緑色発光素子21及び青色発光素子31などの発光素子を規則的に配列し、すべての光を合わせて白色の光源とした
画像表示装置。」(以下「引用発明」という。)

4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(1) 引用発明の「画像表示装置」も、本願発明の「液晶表示装置」も、ともに「表示装置」といえることは、当業者に明らかである。
(2) 引用発明の「画像表示装置」は、「赤色光を発する赤色画素1」、「緑色光を発する緑色画素2」及び「青色光を発する青色画素3」を備えるものであるから、これら「『赤色画素1』、『緑色画素2』及び『青色画素3』」は、「光を照射する光照射部」ということができ、引用発明の「画像表示装置」と、本願発明の「液晶表示装置」は、ともに「光を照射する光照射部を有する」「表示装置」の点で一致する。
(3) 引用発明の「青色画素用発光素子33」、「赤色画素用発光素子13」及び「緑色画素用発光素子23」は、いずれも「光源」ということができる。
(4) 引用発明の「青色」が本願発明の「第1の色領域の色」に、以下同様に、「赤色」が「第2の色領域の色」に、「緑色」が「第3の色領域の色」に、それぞれ相当する。
(5)ア 引用発明の「赤色画素用発光素子13」は、「赤色蛍光体14の励起光である」、「380nm以上、480nm以下の範囲の波長の光を発する」ものである。
イ 引用発明の「緑色画素用発光素子23」は、「緑色蛍光体24の励起光を発する」ものであって、「赤色画素用発光素子13として説明したものと同様のものを用いることができ」るものである。
ウ 引用発明の「青色画素用発光素子33」は、「青色光を発する」ものであって、「赤色画素用発光素子13として説明したものと同様のものを用いることができ」るものである。
エ アないしウに照らして、引用発明の「緑色画素用発光素子23」及び「青色画素用発光素子33」は、ともに「赤色画素用発光素子13」と同様のものということができる。
オ ウ及びエから、引用発明の「青色画素用発光素子33」、「赤色画素用発光素子13」及び「緑色画素用発光素子23」は、いずれも「青色光」を照射するものということができる。
(6) (3)ないし(5)に照らして、「青色画素用発光素子33」を「第1の光源」、「赤色画素用発光素子13」を「第2の光源」、「緑色画素用発光素子23」を「第3の光源」ということができ、これら「第1乃至第3の光源」は、いずれも「『青色(第1の色領域の色)』の光を照射する」点で本願発明の「第1乃至第3の光源」と一致する。
(7) 引用発明の「赤色画素1」は、「赤色画素用発光素子13から発せられた光によって赤色蛍光体14が励起されて赤色蛍光体14から赤色光を発する」ものであるから、(4)ないし(6)に照らして、引用発明の「赤色蛍光体」と、本願発明の「第1の蛍光体」は、「『赤色画素用発光素子13(第2の光源)』からの光の波長を変換し、『赤色(第2の色領域の色)』を照射する」点で一致する。
(8) 引用発明の「緑色画素2」は、「緑色画素用発光素子23から発せられた光によって緑色蛍光体24が励起されて緑色蛍光体24から緑色光を発する」ものであるから、(4)ないし(6)に照らして、引用発明の「緑色蛍光体」と、本願発明の「第2の蛍光体」は、「『緑色画素用発光素子23(第3の光源)』からの光の波長を変換し、『緑色(第3の色領域の色)』を照射する」点で一致する。
(9) 引用発明は、「赤色発光素子11、緑色発光素子21及び青色発光素子31それぞれに電力を供給する時期及び供給量を制御して、赤色発光素子11、緑色発光素子21及び青色発光素子31のうちのいずれをどれだけ発光させるかを制御し」、「赤色発光素子11、緑色発光素子21及び青色発光素子31などの発光素子を規則的に配列し、すべての光を合わせて白色の光源とした」ものであるから、(3)ないし(8)に照らして「前記第1乃至第3の光源の光量を調整することによって、前記第1乃至第3の色領域の色によって定まる所定の色領域内で、前記第1乃至第3の色領域の色の光を合成した光の色を設定する合成光色設定手段とを有する」ということができる。

上記(1)?(9)から、本願発明と、引用発明は、
「光を照射する光照射部を有する表示装置であって、
前記光照射部は、
第1の色領域の色の光を照射する第1乃至第3の光源と、
前記第2の光源からの光の波長を変換し、第2の色領域の色の光を照射する第1の蛍光体と、
前記第3の光源からの光の波長を変換し、第3の色領域の色の光を照射する第2の蛍光体と、
前記第1乃至第3の光源の光量を調整することによって、前記第1乃至第3の色領域の色によって定まる所定の色領域内で、前記第1乃至第3の色領域の色の光を合成した光の色を設定する合成光色設定手段とを有する表示装置。」
の点で一致し、下記の点で相違する。

(相違点)
「表示装置」が、本願発明では、「液晶ディスプレイのバックライトとなる光を照射する光照射部を有する液晶表示装置」であるのに対し、引用発明では、そのようなものであるかが判然としない点。

5 判断
上記相違点について検討する。
引用例には、その段落【0157】において、上記3(10)に示したとおり、
「【0157】
また、例えば、赤色発光素子11、緑色発光素子21及び青色発光素子31などの発光素子を規則的に配列し、すべての光を合わせて白色の光源とし、液晶などの透過率制御機構と赤色及び非赤色のカラーフィルターによって画像を制御する装置として画像表示装置を構成しても良い。」
と記載されている。
してみると、引用例には、赤色、緑色及び青色の3つの色領域の色を合成した白色光の光源を、液晶を用いた画像表示装置に適用することが記載されているから、引用発明の「画像表示装置」として、液晶ディスプレイのバックライトとなる光を照射する光照射部を有する液晶表示装置を採用し、上記相違点に係る本願発明の構成となすことは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び引用例の上記記載事項に基づき、当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本願発明は、引用発明及び引用例の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
本願発明は、引用発明及び引用例の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-21 
結審通知日 2013-08-28 
審決日 2013-09-10 
出願番号 特願2008-77423(P2008-77423)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲荷 宗良  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 藤本 義仁
鈴木 秀幹
発明の名称 液晶表示装置、及び、液晶表示装置における光の色設定方法  
代理人 樋口 正樹  

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