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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1280688
審判番号 不服2011-25659  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-28 
確定日 2013-10-23 
事件の表示 特願2007-511923「複数の文書からユーザが好む1つの文書を再生する方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年11月10日国際公開、WO2005/106708、平成19年12月13日国内公表、特表2007-536654〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成17年4月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2004年5月4日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成22年9月13日付けで拒絶理由の通知がなされ、平成23年3月18日付けで手続補正書の提出がなされ、同年7月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年11月28日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに同日付けで手続補正書の提出がなされ、当審において、平成24年7月23日付けで前置報告書を利用した審尋がなされ、同年10月24日付けで回答書の提出がなされたものである。



2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成23年11月28日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下「本願発明」という)。

「【請求項1】
再生デバイスにおいて、それに設定されたデバイスプロファイルにより複数の文書から文書を再生する方法であって、前記デバイスプロファイルはユーザ識別情報とは独立であり、前記文書を分類する文書セットを画成し、文書セット内の文書は1つ以上の特徴における類似性を有し、時間はスライスに分割され、前記デバイスプロファイルは文書セットのリストと、各文書セットに関連する、各時間スライスの再生カウンタとを含み、
前記方法は、
時刻を決定する段階と、
前記時刻が属する現在の時間スライスを決定する段階と、
決定した時間スライスに関連する再生カウンタの値に関する特徴に基づいて、前記現在の時間スライスにおいて最も再生された文書セットが高い優先度で再生のため選択されるように、文書セットを選択する段階と、
前記選択された文書セット内の文書の再生を自動的またはユーザ制御により開始する段階と、
を有し、
前記再生デバイスで文書を再生するたびに、その文書が属する文書セットに関連する、前記決定した時間スライスの再生カウンタをインクリメントする方法。」



3.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-293539号公報(以下、「引用文献」という)には、下記の事項が記載されている。

(ア)「【0038】またCPU11は、個人プロファイルが登録されると、当該個人プロファイルごとに図11(A)及び(B)に示すような時間帯別ジャンル視聴頻度テーブルJT及び時間帯別チャンネル視聴頻度テーブルCTを生成し、そのデータをEEPROM27に格納する。
【0039】そしてCPU11は、例えばユーザがリモートコマンダ5A?5Eを操作して同一番組を5分以上見たときや、番組予約を行ったときには、対応する時間帯別ジャンル視聴頻度テーブルJT(審決注)及び時間帯別チャンネル視聴頻度テーブルCTの対応する曜日時刻の対応するジャンル又はチャンネルの頻度値に視聴時間又は予約番組の時間を加算する。
【0040】さらにCPU11は、このようにして得られた新たな時間帯別ジャンル視聴頻度テーブルJT(審決注)に基づいて、EEPROM27に格納されている対応するユーザテーブルUTの対応する生活場面の対応するジャンルの視聴率を更新する。
【0041】一方CPU11は、個人プロファイルが登録された後、リモートコマンダ5A?5Eが操作されることにより赤外線信号IRとして番組ガイドの表示指令が与えられると、この赤外線信号IRに含まれるID情報と対応するユーザテーブルUTのデータをEEPROM27から読み出す。
【0042】そしてCPU11は、このユーザテーブルUTのデータと、カレンダタイマ25から与えられる曜日時刻情報とに基づいて、当該番組ガイドの表示指令が与えられた曜日時刻に応じたユーザの各ジャンルの嗜好値を算出し、算出結果に基づいてジャンルごとの優先順位を表すジャンル優先順位テーブルを生成する。
【0043】さらにCPU11は、このようにして生成したジャンル優先順位テーブルに基づいて、SRAM26に格納されているEPGデータを優先順位の高い番組順に読み出し、これをMPEGデコーダ17に送出する。この際CPU11は、例えば同じジャンルの番組が複数あった場合には、EEPROM27に格納されている対応する時間帯別チャンネル視聴頻度テーブルCTに基づいて視聴頻度の高いチャンネルの優先順位を上げる。
【0044】そしてMPEGデコーダ17は、このEPGデータに基づいて所定の表示形態のEPG画面の画面データを生成し、これをNTSCエンコーダ19に送出する。
【0045】この結果モニタ装置4の表示面4Aには、上述の画面データに基づいて、図10のようにユーザの嗜好に応じて優先度の高い番組から番組情報を並べたEPG画面43が表示される。」
(審決注:段落【0039】及び【0040】には、「時間帯別ジャンル視聴率頻度テーブルJT」という用語が記載されていたが、図面には時間帯別のジャンルに関するテーブルは図11の「時間帯別ジャンル視聴頻度テーブルJT」しか記載されておらず、また、段落【0039】には頻度値として視聴時間を加算することは記載されているが、視聴率を計算することは記載されていない。一方、「時間帯別ジャンル視聴頻度テーブルJT」という用語は、段落【0038】に記載されている。よって、上記「時間帯別ジャンル視聴率頻度テーブルJT」は、段落【0038】及び図11に記載された「時間帯別ジャンル視聴頻度テーブルJT」の誤記であると認められるので、ここでは「時間帯別ジャンル視聴頻度テーブルJT」という用語に統一して記載した。)

(イ)「【0056】(5)本実施の形態の動作及び効果
以上の構成において、この衛星放送受信システム1の受信復号装置3では、各リモートコマンダ5A?5Eが操作されて個人プロファイルが登録されると、この個人プロファイルに基づいてユーザテーブルUTを生成すると共に、この後リモートコマンダ5A?5Eから出力される赤外線信号IRに含まれるID情報に基づいてユーザを識別しながら、各ユーザの視聴履歴に応じて対応するユーザテーブルUTを順次更新するようにしてユーザの嗜好を学習する。
【0057】そしてEPG画面43の表示指令が入力されたときには、この更新されたユーザテーブルUTに基づいてEPGデータを並べ替えるようにして、ユーザの嗜好に応じた順番で番組情報が並べられたEPG画面43を表示する。
【0058】従ってこの衛星放送受信システム1では、このようにEPG画面43にユーザの嗜好に応じた順番で推薦する番組の情報が表示される分、このEPG画面43に基づいてユーザが所望番組を容易に選択するようにすることができる。
【0059】以上の構成によれば、各リモートコマンダ5A?5Eにそれぞれ対応させてユーザテーブルUTを生成すると共に、この後赤外線信号IRに含まれるID情報に基づいてユーザを識別しながら、各ユーザの視聴履歴に基づいてユーザの嗜好を学習し、学習結果に基づいてEPGデータを並べ替え、当該並べ替えたEPGデータに基づいてEPG画面43を生成して表示するようにしたことにより、各ユーザごとの嗜好に応じた最適なEPG画面43を表示することができ、かくしてユーザの番組選択を容易化させ得る衛星放送受信システムを実現できる。」

(ウ)図11には、時間帯別ジャンル視聴頻度テーブルJTの構造として、縦軸にはジャンルが設定され、横軸には曜日別に1時間毎の時間帯が設定されたものが記載されている。また、上記(ア)の段落【0039】には、時間帯別ジャンル視聴頻度テーブルJTの対応する曜日時刻の対応するジャンルの頻度値に視聴時間を加算することが記載されている。
よって、引用文献には、「時間帯別ジャンル視聴頻度テーブルJT」が、「横軸が曜日別に1時間毎の時間帯に分割され、縦軸が番組のジャンルに設定され、各時間帯には各ジャンルに関連する視聴時間の加算値」を含むものであることが記載されている。


よって、上記(ア)乃至(ウ)及び関連図面から、引用文献には下記の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。

「受信復号装置において、時間帯別ジャンル視聴頻度テーブルJTを利用して複数の番組の中から優先順位の高い番組を表示する方法であって、前記時間帯別ジャンル視聴頻度テーブルJTは、横軸が曜日別に1時間毎の時間帯に分割され、縦軸が番組のジャンルに設定され、各時間帯には各ジャンルに関連する視聴時間の加算値が含まれ、
番組ガイドの表示指令が与えられると、
ユーザテーブルUTのデータと、カレンダタイマから与えられる曜日時刻情報とに基づいて、当該番組ガイドの表示指令が与えられた曜日時刻に応じたユーザの各ジャンルの嗜好値を算出してジャンルごとの優先順位を表すジャンル優先順位テーブルを生成し、
前記ジャンル優先順位テーブルに基づいてEPGデータを優先順位の高い番組順に読み出してユーザの嗜好に応じて優先度の高い番組から番組情報を並べたEPG画面を表示し、
同一番組を5分以上見たとき、対応する時間帯別ジャンル視聴頻度テーブルJTの対応する曜日時刻の対応するジャンルの頻度値に視聴時間の時間を加算する方法。」



4.対比
(1)本願発明と引用発明との対応関係について
(ア)引用発明の「受信復号装置」は、受信した信号から映像に再生するものであるから、本願発明の「再生デバイス」に相当している。

(イ)本願明細書の段落【0018】には、「文書は、例えば、オーディオまたはビデオ文書、スチル写真ファイル、テキストファイル、またはグラフィックスファイル等である。」と記載されていることから、本願発明の「文書」はテキストファイルに限定されるものではなく、オーディオやビデオ等を含んだ広い概念のものであることから、引用発明の「番組」も本願発明の「文書」に相当している。

(ウ)引用発明の「ジャンル」は、番組を内容で分類したものであり、受信復号装置で利用できるように予め設定されているものであることは明らかであるから、本願発明の「文書セット」に相当し、また、引用発明も「前記文書を分類する文書セットを画成し、文書セット内の文書は1つ以上の特徴における類似性を有し」たものであるといえる。

(エ)引用発明の「時間帯別ジャンル視聴頻度テーブルJT」は、横軸が時間帯に分割されたものであり、縦軸に複数のジャンルが設定されるものと認められるので、引用発明の「時間帯別ジャンル視聴頻度テーブルJT」も「時間はスライスに分割され」、「ジャンルのリスト」を有したものであるといえる。

(オ)本願明細書の段落【0007】には、「この装置プロファイルを用いて、一定の時間(time of day)スライス中に再生のためにユーザがどの文書を選択したか記録する」、「その時に記録されるものは、ユーザプロファイルではなく、その装置自体が使用されるやり方である。これは本発明において装置プロファイルと呼ぶ」と記載され、該「装置プロファイル」は本願発明の「デバイスプロファイル」に対応したものであると認められる。 一方、引用発明の「時間帯別ジャンル視聴頻度テーブルJT」も、一定の時間帯に分割された各時間帯において、ユーザがどのジャンルを選択したかが視聴時間として記録されるものであり、別の見方をすれば、受信復号装置自体が使用されるやり方を記録していることになるので、「デバイスプロファイル」と呼び得るものである。

(カ)本願明細書の段落【0032】には、図3の時間スライスリストが装置プロファイルを構成していること、時間スライスリストはセット識別子Sとセットの使用回数Cからなる情報エントリーを含んだテーブルからなり、該テーブルは信号処理ブロック21の不揮発メモリ28に記録されることが記載され、段落【0031】には「このセットの識別子を使用して、対応する時間スライスリスト中の関連する再生カウンタをインクリメントする」ことが記載さていることから、本願発明の「再生カウンタ」は、時間スライスリストというテーブル内の使用回数Cの数値が対応したものである。
一方、引用発明の「時間帯別ジャンル視聴頻度テーブルJT」には、「各時間帯には各ジャンルに関連する視聴時間の加算値」が含まれており、該「視聴時間の加算値」は再生時間を計数したものであるから、上記セットの使用回数Cに対応したものである。
よって、引用発明の「時間帯別ジャンル視聴頻度テーブルJT」も、本願発明の「再生カウンタ」を含んだものであるといえる。

(キ)上記(ア)乃至(カ)の記載から、引用発明も「再生デバイスにおいて、それに設定されたデバイスプロファイルにより複数の文書から文書を再生する方法であって、前記文書を分類する文書セットを画成し、文書セット内の文書は1つ以上の特徴における類似性を有し、時間はスライスに分割され、前記デバイスプロファイルは文書セットのリストと、各文書セットに関連する、各時間スライスの再生カウンタとを含」んでいるといえる。

(ク)引用発明は、「ユーザテーブルUTのデータと、カレンダタイマから与えられる曜日時刻情報とに基づいて、当該番組ガイドの表示指令が与えられた曜日時刻に応じたユーザの各ジャンルの嗜好値を算出」しており、また、「同一番組を5分以上見たとき、対応する時間帯別ジャンル視聴頻度テーブルJTの対応する曜日時刻の対応するジャンルの頻度値に視聴時間の時間を加算」しているので、引用発明でも、嗜好値の算出及び頻度値の更新のために、カレンダタイマから番組ガイドの表示指令が与えられた曜日時刻を決定し、また、該決定された時刻が属する時間帯別ジャンル視聴頻度テーブルJTの時間帯を決定していることは明らかである。

(ケ)引用文献の段落【0040】には、時間帯別ジャンル視聴頻度テーブルJTに基づいてユーザテーブルUTの視聴率を更新することが記載されているので、ユーザテーブルUT内の「朝食時」等の生活場面は、時間帯別ジャンル視聴頻度テーブルJTの時間帯に対応付けられていることは明らかである。
そして、引用発明はユーザテーブルUTのデータに基づいて、番組ガイドの表示指令が与えられた曜日時刻に応じたユーザの各ジャンルの嗜好値を算出するものであるが、上記段落【0040】の記載から、該嗜好値はユーザテーブルUT内で特定された生活場面の視聴率から算出され、該生活場面は上記(ク)から番組ガイドの表示指令が与えられた曜日時刻が属する時間帯別ジャンル視聴頻度テーブルJTの時間帯により特定されるものと認められるので、引用発明の「嗜好値」は、番組ガイドの表示指令が与えられた曜日時刻が属する時間帯別ジャンル視聴頻度テーブルJTの時間帯で特定されたユーザテーブルUTの視聴時間に基づく生活場面のジャンル別視聴率から算出されたものといえる。

(コ)引用発明の「ジャンル優先順位テーブル」は、「当該番組ガイドの表示指令が与えられた曜日時刻に応じたユーザの各ジャンルの嗜好値を算出してジャンルごとの優先順位」を表したものであるところ、上記(ケ)の「嗜好値」の内容を加味すれば、「ジャンル優先順位テーブル」の優先順位は、番組ガイドの表示指令が与えられた曜日時刻が属する時間帯で特定されたユーザテーブルUT内の生活場面のジャンルが、視聴時間に基づく視聴率順位で示されたものということができる。

(サ)引用発明は、「前記ジャンル優先順位テーブルに基づいてEPGデータを優先順位の高い番組順に読み出してユーザの嗜好に応じて優先度の高い番組から番組情報を並べたEPG画面を表示」するものであるところ、上記(コ)の「優先順位」の内容を加味すれば、引用発明は、番組ガイドの表示指令が与えられた曜日時刻が属する時間帯で特定されたユーザテーブルUT内の生活場面のジャンルにおいて、視聴時間に基づく視聴率が最も高いジャンルが視聴において優先度が高くなるように選択するものであるといえる。

(シ)上記(ク)乃至(サ)から、本願発明と引用発明は、「時刻を決定する段階と、前記時刻が属する現在の時間スライスを決定する段階と、決定した時間スライスに関連する再生カウンタの値に関する特徴に基づいて、前記現在の時間スライスにおいて最も再生された文書セットが高い優先度で再生のため選択されるように、文書セットを選択する段階」を有しているといえる。

(ス)引用文献の段落【0058】には、「このようにEPG画面43にユーザの嗜好に応じた順番で推薦する番組の情報が表示される分、このEPG画面43に基づいてユーザが所望番組を容易に選択するようにすることができる」と記載されていることから、引用発明における番組の視聴は、ユーザの嗜好に応じて優先度の高い番組から番組情報を並べたEPG画面の表示に基づいて、ユーザが所望番組を選択することで開始されるものとなるので、引用発明も「選択された文書セット内の文書の再生をユーザ制御により開始する段階」を有しているといえる。

(セ)引用発明では、「同一番組を5分以上見たとき、対応する時間帯別ジャンル視聴頻度テーブルJTの対応する曜日時刻の対応するジャンルの頻度値に視聴時間の時間を加算」しているが、「5分以上」という限定は、ユーザが番組の選択段階で視聴した番組で、かつ、ユーザが視聴を望んでいない番組までもが、時間帯別ジャンル視聴頻度テーブルJTのデータ更新の対象になることを防止するための制限であると認められる。
また、上記(ク)に記載したように、引用発明でも、カレンダタイマから番組ガイドの表示指令が与えられた曜日時刻を決定し、該決定された時刻が属する時間帯別ジャンル視聴頻度テーブルJTの時間帯を決定していることは明らかであるから、時間帯別ジャンル視聴頻度テーブルJTの更新される時間帯は、カレンダタイマから番組ガイドの表示指令が与えられた曜日時刻が属する時間帯別ジャンル視聴頻度テーブルJTの時間帯であるといえる。
よって、引用発明は、ユーザが視聴を望んだ番組を視聴するたびに、時間帯別ジャンル視聴頻度テーブルJTの視聴時間の加算を行うことになるため、引用発明も「前記再生デバイスで文書を再生するたびに、その文書が属する文書セットに関連する、前記決定した時間スライスの再生カウンタをインクリメント」しているといえる。


(2)本願発明と引用発明の一致点と相違点について
上記の対応関係から、本願発明と引用発明は、下記の点で一致しまた相違する、

(一致点)
「再生デバイスにおいて、それに設定されたデバイスプロファイルにより複数の文書から文書を再生する方法であって、前記文書を分類する文書セットを画成し、文書セット内の文書は1つ以上の特徴における類似性を有し、時間はスライスに分割され、前記デバイスプロファイルは文書セットのリストと、各文書セットに関連する、各時間スライスの再生カウンタとを含み、
前記方法は、
時刻を決定する段階と、
前記時刻が属する現在の時間帯を決定する段階と、
決定した時間帯に関連する再生カウンタの値に関する特徴に基づいて、前記現在の時間帯において最も再生された文書セットが高い優先度で再生のため選択されるように、文書セットを選択する段階と、
前記選択された文書セット内の文書の再生を自動的またはユーザ制御により開始する段階と、
を有し、
前記再生デバイスで文書を再生するたびに、その文書が属する文書セットに関連する、前記決定した時間スライスの再生カウンタをインクリメントする方法。」
の点で一致している。

(相違点)
デバイスプロファイルについて、本願発明の「デバイスプロファイル」は「ユーザ識別情報とは独立」であるのに対し、引用発明の「デバイスプロファイル」は、ユーザ識別情報とは独立であるとはいえない点。



5.当審の判断
(1)相違点について
原査定の備考欄に「ユーザ識別情報を用いてプロファイルをユーザ単位で管理することも、プロファイルをデバイス単位で管理することも広く行われていることである」と記載されているとおり、日常使用する装置について、ユーザーへの利便性を向上させるために、該装置の使用履歴をプロファイルとして蓄積しておき、後日該装置を利用する段階で蓄積しておいたプロファイルを参照する方法において、「プロファイル」の形態として、ユーザ単位のプロファイルを蓄積する形態、及び、装置単位のプロファイルを蓄積する形態のどちらも形態も広く一般に利用されているところである。

具体的には、原査定の備考欄に記載された文献2(特開平11-196389号公報)には、第3の実施形態(段落【0104】-【0109】)として複数人が一台の利用端末を共用する場合に複数人の履歴を加算したものが該一台の利用端末の優先度になることから使用装置単位のプロファイルを蓄積する形態が記載され、第1の実施形態(段落【0076】-【0090】)として一人が一台の利用端末を利用する場合に該一人の履歴に基づく優先度になることからユーザ単位にプロファイルを蓄積する形態が記載されているといえる。
このような装置単位のプロファイルを蓄積する形態は、上記文献以外にも、特開2003-274298号公報には、段落【0016】-【0019】にユーザが使用した履歴情報を頻度メモリーに記憶(ユーザーを識別する情報は記憶しない)しておき、テレビ放送受信機の電源がオンとなったときに頻度メモリーから一週間前の同じ時間帯に頻繁に受信していたチャネルを自動的に選局することが記載され、特開平10-150642号公報には、段落【0028】-【0033】に視聴時間が一定時間経過した放送を視聴履歴情報として視聴履歴記憶メモリ24に記憶(ユーザーを識別する情報は記憶しない)し、視聴履歴情報を表示するときは表示優先度の高い方から順に表示するチャンネルを決定し、番組情報を表示することが記載されているように周知技術である。

してみると、引用文献には、「デバイスプロファイル」をユーザ識別情報とは独立して設定することは記載されていないとしても、ユーザ識別情報とは独立に装置単位のプロファイルを蓄積する形態が広く一般に利用され、周知技術であることを鑑みれば、引用文献に接した当業者であれば、引用発明の「デバイスプロファイル」をユーザ識別情報とは独立したものとすることに格別な困難性があるとは認められない。

よって、引用発明に上記周知技術を採用し、「『デバイスプロファイル』は『ユーザ識別情報とは独立』である」とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

(2)本願発明の作用効果について
本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。



6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-27 
結審通知日 2013-05-28 
審決日 2013-06-10 
出願番号 特願2007-511923(P2007-511923)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 紀田 馨打出 義尚  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 山崎 達也
長島 孝志
発明の名称 複数の文書からユーザが好む1つの文書を再生する方法及び装置  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  

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