• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C09D
管理番号 1280695
審判番号 不服2012-4858  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-03-14 
確定日 2013-10-23 
事件の表示 特願2002-501660「高解像度インクジェット食品印刷および印刷製品」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月13日国際公開、WO01/94116、平成15年12月 2日国内公表、特表2003-535923〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.経緯
本願は、2001年6月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2000年6月2日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成23年6月14日付けで通知した拒絶理由に対して、同年9月21日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月7日付けで拒絶査定がなされ、これを不服として、平成24年3月14日に審判請求及び手続補正書が提出されたものである。

第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年3月14日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を補正しようとするもので、補正前の特許請求の範囲の請求項15に記載された発明を、補正後の請求項1記載の発明として、
「ユーザの指示に基づき装飾菓子製品を特注製造するシステムであって、
ネットワークを介してクライエント・コンピュータと通信し、ネットワークを介して、ユーザが前記クライエント・コンピュータに入力した画像情報を受信し、該受信した画像情報をオンデマンド型インクジェット・プリンターに転送することにより、前記受信した画像情報に対応する200dpiを超える解像度を有する高品質画像を前記菓子製品であるシュガー・シェル・キャンディまたはゼリービーンの非平面上に直接印刷させるサーバ・コンピュータを備えることを特徴とするシステム。」
という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。

2.補正の目的要件について
上記補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項15に記載された「菓子製品に直接印刷」を「菓子製品であるシュガー・シェル・キャンディまたはゼリービーンの非平面上に直接印刷」と限定して特許請求の範囲を減縮するものである。

3.独立特許要件について
上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。
(1)補正後の発明
上記「1.補正後の本願発明」の項で認定したとおりである。

(2)引用発明等

A.引用発明
原査定の拒絶の理由で引用した特表2000-504225号公報(平成12年4月11日公表。以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

a.「以下に図1を解説する:バブルジェット・ヘッド・アッセンブリ(1)がヘッド・アッセンブリ(1)を動かすためのパルス・モーター(2)共に示されている。このパルス・モーター(2)は電源(11)に接続される。ロジック・ボード(4)は、キャッリッジウェイ(5)を移動するバブルジェット・ヘッド・アッセンブリ(1)をパルス・モーターを経由して制御する。バブルジェット・ヘッド・アッセンブリ(1)をクリーニングし、インク・タンク(7)からバブルジェット・ヘッド・アッセンブリ(1)に液状食用色素(食品着色料)を送り出すポンプ(6)が付いている。可動台(8)が、食品を支えるために取り付けられている。専用の電源(3)に接続されるパルス・モーター(10)が、ロジック・ボード(4)とつながっており、可動台を前進させる。希望のイメージはコンピュータ(12)内部の磁気メディア内に保存されており、キーボード、キーパッド、又はポインティング・デバイスで必要なイメージ・コードを入力することによって、アクセスする。版権のあるイメージの場合は暗号アルゴリズムで保護され、カード読み取り装置によらなければ解読されない仕組みになっている。イメージが選択されると、ビットマップ、ラスター・イメージ、ポストスクリプト、又は PCX ファイル等としてロジック・ボード(4)を経由してバブルジェット・ヘッド・アッセンブリ(1)に送られる。その結果、バブルジェット・ヘッド・アッセンブリ(1)はパルス・モーター(2)を使ってキャッリッジウェイ(5)を移動し、タンク(7)から受け入れた食用色素を食用生地の事前に設定された位置に噴射する。バブルジェット・プリントヘッド・アッセンブリ(1)がキャッリッジウェイ(5)の末端にくると、パルス・モーター(10)は、倒えば4分の1インチというように事前に設定してある距離だけ可動版面を前進させることにより、食品(9)を前方に動かす。そラすると、バブルジェット・ヘッド・アッセンブリ(1)は、今度はキャッリッジウェイ(5)を戻りながら印刷し、出発点に戻ってくる。本機械は、印刷したい写真、模様あるいはテキストの印刷が完了するまでこの過程を継統する。この方法によれば、未熟練工が、高精度の複雑な色調のケーキのデコレーションやトッピングを施すことが可能になる(例:1インチ平方当たり 360x360 ドット、1670万色)。
望ましい実施例では、ケージングの中のコンパートメント内に4つのインク・タンクが設置されており、各々に異な食品着色料が入っている。色は、黒、白、その他何色でも構わないが、本実施例では4つのタンク内に、黄色とマジェンタ、シアン(青緑色)、黒が各々入っている。各々のタンクは隔離された個別のプリントヘッドに着色剤を供給する。この方法により、一つの共通のインクタンクしかない他の機械では不可能な多色プリントが可能になるわけである。普通、本機には、電源、コントロール・パネル、ロジック・ボード、関連の配線等の関速要因が含まれる。この機械を作動させるのに適した、コンピュータ、キーパッド又はポインティング・デバイスのような物を提供することも可能であろう。トレイ、ベルト・コンベヤ、ローラー等のような、食品を移動させるための可動台も提供される。この望ましい実施例では、食品を支える台は、ベルト・コンベヤ、チェーン・ドライブ、ローラー又はこれらに類似した装置の形態で、この機械に対して直角に移行し、バブルジェット・ヘッド・アッセンブリは、食品の2-10ミリ程度上を水平に移行することが可能である。この方法によると、バブルジェット・ヘッド・アッセンブリが食品の表面に接触することは全くあり得なく、本発明に基づいた機械と方法を用いれば、表面に凸凹のある食品にでも(凸凹最高で8ミリ租度)印刷することが可能になる。
望ましい実施例では、食品表面のデコレーションが可能な範囲は、最小は小さな点から最大は297mm x 420 mm(A3)の間で、時に応じてどのような大きさにもできる。
本発明に基づくこの機械は、次のような食品に使えるであろう:ロイヤル・アイシング、ガム・ペースト、シュガー・ペースト、生クリーム、カバー・ペースト、アイスクリーム、バター・クリーム、ウエファース、ライス・ペーパー、ゼラチン、マジパン、フォンダン、アメリカン・フロスティング、メレンゲ、ボイルド・アイシング、チョコレート、ボイルド・シュガー、コンフェクショナー・クリーム、カスタード、ブラマンジェ、チーズケーキ・フィリング、ペーストリー、ペースティリアージュ、ナッツ・ペースト、ウエファース、ビスケット、チーズ、ポテト、パスタ等。」(公報第6頁11行?8頁11行。下線は当審で付与、以下同様。)

してみると、引用文献1に記載された発明(以下、「引用発明」という。)は、以下のとおりのものである。
〈引用発明〉
バブルジェット・ヘッド・アッセンブリ(1)及びヘッド・アッセンブリ(1)を動かすためのパルス・モーター(2)を備え、このパルス・モーター(2)は電源(11)に接続され、そして、ロジック・ボード(4)は、キャッリッジウェイ(5)を移動するバブルジェット・ヘッド・アッセンブリ(1)をパルス・モーターを経由して制御するもので、そして、バブルジェット・ヘッド・アッセンブリ(1)をクリーニングし、インク・タンク(7)からバブルジェット・ヘッド・アッセンブリ(1)に液状食用色素(食品着色料)を送り出すポンプ(6)を備え、可動台(8)が、食品を支えるために取り付けられ、専用の電源(3)に接続されるパルス・モーター(10)が、ロジック・ボード(4)とつながり、可動台を前進させる装置において、
希望のイメージはコンピュータ(12)内部の磁気メディア内に保存されており、
コンピュータ(12)のキーボード、キーパッド、又はポインティング・デバイスで必要なイメージ・コードを入力することによって、アクセスするイメージが選択されると、ビットマップ、ラスター・イメージ、ポストスクリプト、又は PCX ファイル等としてロジック・ボード(4)を経由してバブルジェット・ヘッド・アッセンブリ(1)に送られ、その結果、バブルジェット・ヘッド・アッセンブリ(1)はパルス・モーター(2)を使ってキャッリッジウェイ(5)を移動し、タンク(7)から受け入れた食用色素を食用生地の事前に設定された位置に噴射する動作を行い、
これによれば、未熟練工が、高精度の複雑な色調のケーキのデコレーションやトッピングを施すことが可能になる(例:1インチ平方当たり 360x360 ドット、1670万色)もので、
この食品を支える台は、ベルト・コンベヤ、チェーン・ドライブ、ローラー又はこれらに類似した装置の形態で、この機械に対して直角に移行し、バブルジェット・ヘッド・アッセンブリは、食品の2-10ミリ程度上を水平に移行することが可能であるもので、このことにより、バブルジェット・ヘッド・アッセンブリが食品の表面に接触することは全くあり得なく、表面に凸凹のある食品にでも(凸凹最高で8ミリ租度)印刷することが可能になり、
この食品表面のデコレーションが可能な範囲は、最小は小さな点から最大は297mm x 420 mm(A3)の間で、時に応じてどのような大きさにもでき、
対象となる食品の例として、ロイヤル・アイシング、ガム・ペースト、シュガー・ペースト、生クリーム、カバー・ペースト、アイスクリーム、バター・クリーム、ウエファース、ライス・ペーパー、ゼラチン、マジパン、フォンダン、アメリカン・フロスティング、メレンゲ、ボイルド・アイシング、チョコレート、ボイルド・シュガー、コンフェクショナー・クリーム、カスタード、ブラマンジェ、チーズケーキ・フィリング、ペーストリー、ペースティリアージュ、ナッツ・ペースト、ビスケット、チーズ、ポテト、パスタ等である、
装置。

(3)対比・判断
補正後の発明と引用発明とを対比する。

ア.引用発明は、「コンピュータ(12)内部の磁気メディア内に保存」された「希望のイメージ」を「コンピュータ(12)のキーボード、キーパッド、又はポインティング・デバイスで必要なイメージ・コードを入力することによって、アクセスするイメージが選択され」て、「食用色素を食用生地の事前に設定された位置に噴射する動作を行い」「高精度の複雑な色調のケーキのデコレーションやトッピングを施す」ものであり、補正後の発明と、「指示に基づき装飾菓子製品を特注製造するシステム」である点で共通している。
イ.引用発明の「バブルジェット・ヘッド・アッセンブリ(1)」を備える機械は、補正後の発明の「オンデマンド型インクジェット・プリンター」と「インクジェット・プリンター」である点で共通し、そして、この「バブルジェット・ヘッド・アッセンブリ(1)」を備える機械は、「1インチ平方当たり 360x360 ドット」であるデコレーションを施すことができるものであり、また、「表面に凸凹のある食品にでも(凸凹最高で8ミリ租度)印刷することが可能」であることから、補正後の発明の「オンデマンド型インクジェット・プリンター」と、「画像情報に対応する200dpiを超える解像度を有する高品質画像を前記菓子製品」「の非平面上に直接印刷」する「インクジェット・プリンター」である点で一致する。
ウ.引用発明の「コンピュータ(12)」は、「イメージが選択されると、ビットマップ、ラスター・イメージ、ポストスクリプト、又は PCX ファイル等としてロジック・ボード(4)を経由してバブルジェット・ヘッド・アッセンブリ(1)に送」ることから、補正後の発明の「画像情報をオンデマンド型インクジェット・プリンターに転送する」「サーバ・コンピュータ」と、「画像情報を」「インクジェット・プリンターに転送する」「コンピュータ」である点で、一致している。

したがって、両者には以下の一致点と相違点とがある。

(一致点)
指示に基づき装飾菓子製品を特注製造するシステムであって、
画像情報をインクジェット・プリンターに転送することにより、前記画像情報に対応する200dpiを超える解像度を有する高品質画像を前記菓子製品の非平面上に直接印刷させるコンピュータを備えることを特徴とするシステム。

(相違点1)
システムが、補正後の発明では、「ユーザの」指示に基づくのに対し、引用発明では、「ユーザの」指示に基づくとの明示はなく、また、画像情報が、補正後の発明では、「ネットワークを介してクライエント・コンピュータと通信し、ネットワークを介して、ユーザが前記クライエント・コンピュータに入力した画像情報を」「サーバ・コンピュータ」で「受信し」た画像情報であるのに対し、引用発明では、「コンピュータ(12)内部の磁気メディア内に保存され」た「希望のイメージ」を、「必要なイメージ・コードを入力」して、「選択され」た「イメージ」である点。

(相違点2)
インクジェット・プリンターが、補正後の発明では、「オンデマンド型」であるのに対し、引用発明では、「オンデマンド型」との明示はない点。

(相違点3)
装飾用菓子が、補正後の発明では、「シュガー・シェル・キャンディまたはゼリービーン」であるのに対し、引用発明では、装飾を施す対象の食品として「ロイヤル・アイシング、ガム・ペースト、シュガー・ペースト、生クリーム、カバー・ペースト、アイスクリーム、バター・クリーム、ウエファース、ライス・ペーパー、ゼラチン、マジパン、フォンダン、アメリカン・フロスティング、メレンゲ、ボイルド・アイシング、チョコレート、ボイルド・シュガー、コンフェクショナー・クリーム、カスタード、ブラマンジェ、チーズケーキ・フィリング、ペーストリー、ペースティリアージュ、ナッツ・ペースト、ウエファース、ビスケット、チーズ、ポテト、パスタ等」と記載され、「シュガー・シェル・キャンディまたはゼリービーン」との明示はない点。

相違点につき検討を行う。
(相違点1について)
補正後の発明の出願時において、ユーザ(顧客)の利便性の向上を図るため、ユーザの要求をネットワークを通じてオンラインで受け付け、ユーザの所望する処理を行うようにしたシステムは、良く知られている周知の技術(下記、B、Cに記載の文献参照。特にCは、引用発明と同様な食用物への装飾システムに関するもの。)である。
そして、引用発明においても、ユーザ(顧客等)の利便性の向上を図ることは、当業者であれば、当然考慮すべき事項である。
してみると、引用発明において、利便性の向上を図るため、上記周知技術を採用し、ユーザの要求(所望の画像を食品等の菓子に装飾を施すこと)をネットワークを通じてオンラインで受け付け、所望の画像を食品等の菓子に直接印刷できるように構成し、相違点1に係る発明とすることは、容易になし得ることである。

B.特開平11-146161号公報(平成11年5月28日出願公開)

b.「【0028】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明が適用されるデジタル写真サービスシステムの概要を示す図である。このシステムは、通信設備や各種メディアドライブなどのデータ取込手段を備えた画像取扱装置3(パソコンあるいはワークステーション)とデジタル写真プリンタ4とからなるラボのシステムを、ユーザのパソコン1とインターネットなどのネットワーク2により接続し、ネットワークを介してプリント注文を行えるようにしたものである。
【0029】ユーザはデジタルカメラ6で撮影した写真や、ラボのデジタル出力サービスを利用してPhotoCDなどのメディア7に記録してもらった写真をパソコン1に取り込み、専用のアプリケーションソフトの機能によって取り込んだ写真のプリント注文を行うことができる。実際には、このアプリケーションソフトにより、ユーザが指定した注文内容が所定のフォーマットの注文ファイルに記述され、この注文ファイルがネットワーク2を介してラボのシステムに転送されることによって注文が行われる。あるいは、記録メディア8に記録された注文ファイルを、ラボに受け渡してもよい。
【0030】プリント対象となる写真の画像ファイルは、注文ファイルとともにネットワーク2や記録メディア8を介して転送される。または、画像ファイルが記録された記録メディア7が、注文ファイルが記録された記録メディア8とともにラボに持ち込まれる場合もある。いずれの場合も、ラボのシステムは、受け付けた注文ファイルを解析して、ファイルに記述された注文内容にしたがって写真プリント5を作成する。」(段落【0028】?【0030】の記載。)

C.WO99/48696(平成11年9月30日公開。)

c.「Title:DECORATING SYSTEM FOR EDIBLE ITEM
Abstract
A system for creating a decorative edible item from a selected image. The system includes at least one image source (20), such as a scanner and/or library of stored images, a controller unit (30) and a printer (40). An edible media is inserted into the printer (40). The user selects the image source (20), such as the scanner for scanning in a photograph reminiscence of a person or event being honored. The size of the image and the number of copies to be printed is then selected. Activation of the print sequence includes: the controller unit (30) applying color correction to the digital image and converting the digital image into printer control signals to operate the printer (40). The printer (40) then prints a rendition with edible inks onto the edible media as the edible media travels through the printer (40). A high-quality pictorial rendition of the image is thus created. The printed edible media can then be applied onto a product, shipped to a separate location, or eaten as is.」(フロント頁 Title及びAbstractの項)
当審訳
発明の名称:食用物への装飾システム。
要約:選択した画像から、装飾的な食用のアイテムを作成するためのシステム。システムは、スキャナおよび/または格納された画像ライブラリのような、少なくとも1つの画像ソース(20)と、制御部(30)、プリンタ(40)を含む。食用のメディアがプリンタ(40)に差し込まれる。ユーザは、栄誉を讃えられる人物や出来事を回想させる写真をスキャンするスキャナのような画像ソース(20)を選択する。画像のサイズと、印刷部数を次に選択する。プリントの起動シーケンスには以下が含まれる:コントローラユニット(30)が、デジタル画像に色補正を適用し、デジタル画像をプリンタ(40)を動作させるプリンタ制御信号へと変換する。プリンタ(40)はその後、食用のメディアがプリンタ(40)を縦断するのに伴って、食用のメディアに食用インクで装飾の描画をプリントする。このようにして、画像の高品質で絵画的な描画が作成される。印刷された食用メディアは、その後、製品の上に適用したり、異なる場所に出荷されたり、現状のままで食用にすることができる。

d.「The system can be used in a bakery environment as a stand-alone system or used in a network, such as a LAN, WAN, MAN, Intranet or even an Internet system.」(第5ページ第15?16行の記載。)
当審訳
システムは、製菓業の環境において、スタンドアロンシステムとしてでも、LAN、WAN、MAN、イントラネットのようなネットワークでも、さらにはインターネットのシステムでも使用できる。

(相違点2について)
「インクジェット・プリンター」として、「オンデマンド型」のものは、文献を挙げるまでもなく周知であるから、引用発明において、「インクジェット・プリンター」として「オンデマンド型」のものを採用し、相違点2に係る発明とすることは、容易になし得ることである。

(相違点3について)
引用発明では、装飾を施す対象の食品として「ロイヤル・アイシング、ガム・ペースト、シュガー・ペースト、生クリーム、カバー・ペースト、アイスクリーム、バター・クリーム、ウエファース、ライス・ペーパー、ゼラチン、マジパン、フォンダン、アメリカン・フロスティング、メレンゲ、ボイルド・アイシング、チョコレート、ボイルド・シュガー、コンフェクショナー・クリーム、カスタード、ブラマンジェ、チーズケーキ・フィリング、ペーストリー、ペースティリアージュ、ナッツ・ペースト、ビスケット、チーズ、ポテト、パスタ等」が記載され、「シュガー・シェル・キャンディまたはゼリービーン」との明示はない。
しかしながら、洋菓子の種類として、「シュガー・シェル・キャンディまたはゼリービーン」は、良く知られた菓子であり、
補正後の発明の出願時において、引用発明で使用されているインクジェットプリンタを用いて、キャンデイ等の洋菓子に装飾を施すことは、周知の事項(下記、D、Eに記載の文献参照。特にDにおいては、「M&Mキャンディー」(シュガーシェル・キャンディ-に該当するもの)に装飾を施す例が記載されている。)である。
そして、引用発明において、キャンディ等の洋菓子に装飾を施すことができない特段の事情も認められないこと等を考慮すれば、引用発明における、印刷対象の食品として、キャンディ等の洋菓子である「シュガー・シェル・キャンディまたはゼリービーン」として、相違点2に係る発明とすることは、容易になし得るものである。

D.WO97/35933(平成9年10月2日公開)
なお、訳は、対応する特表2000-507820号公報の記載を参照した。

e.「FOOD GRADE JET INKS
The present invention relates to jet ink compositions in general, and to food grade jet ink compositions in particular The jet ink compositions of the present invention are suitable for jet printing on food and pharmaceutical articles such as fruits, vegetables, candies, and tablets.」(第1頁1行?5行)
訳:食品用ジェットインク
本発明は、一般的にジェットインク組成物に係わり、特に食品用のジェットインク組成物に関するものである。本発明のジェットインク組成物は、食品および薬剤製品、例えば果実、野菜、キャンディーおよび錠剤に、ジェット印刷するのに適している。

f.「EXAMPLE 3
This example illustrates the utility and the properties of the jet ink composition prepared as in Example 2 in jet printing on glazed candies.
A laboratory scale jet printing head was mounted so as to direct a stream of ink droplets at a conveyor belt. A series of M&M candies was placed on an adhesive tape to be individually held thereby and the taped candies were anchored to the conveyor belt. As the conveyor belt transported the candies by the print head, each candy was jet printed with the inventive ink composition.」(第28頁16行?23行)
訳:実施例3
本実施例は、艶付けしたキャンディー上に印刷する際の、実施例2におけるように調製したジェットインク組成物の利用性および諸特性を説明する。
実験室規模のジェット印刷ヘッドを、インク液滴の流れをコンベアベルトに導くように搭載した。一連のM&Mキャンディーを接着テープ上に配置して、別々に維持されるようにし、該テープで固定したキャンディーを、該コンベアベルトに固定した。該コンベアベルトは、該キャンディーを該印刷ヘッドまで移動させながら、各キャンディーを、本発明のジェットインク組成物でジェット印刷した。

E.特開平9-302294号公報(平成9年11月25日公開)

g.「【0003】そこで、インクジェット印刷によると、プリント装置と印刷された文字を固着させる基質間の接触なしで印刷することができる。凹凸のあるもの、表面が柔らかいもの、壊れやすいものや不規則な形状のものの表面にも印刷することが出来るので、印刷対象物を選ばない。しかも、衛生的に印刷できるので、食品、医薬品、医薬部外品、化粧品又は飼料などの印刷にはインクジェット印刷が注目されている。」(段落【0003】の記載。)

h.「【0020】本発明のインクジェット印刷用可食性インキは、食品、医薬品、医薬部外品、化粧品、飼料又はこれらに直接触れる容器包装などへの印刷することができる。食品としては、例えば、おかき、せんべい、おこし、まんじゅう、飴などの和菓子、クッキー、ビスケット、クラッカー、パイ、スポンジケーキ、カステラ、ドーナツ、ワッフル、シュークリーム、チョコレート、チョコレート菓子、キャラメル、キャンディー、チューインガム、プリン、ゼリー、ホットケーキ、パンなどの各種洋菓子、ポテトチップス、パフスナック、プレッツェルなどのスナック菓子、アイスクリーム、アイスキャンディー、シャーベットなどの氷菓、チーズなどの乳製品、ハム、ソーセージ、ベーコン、ドライソーセージなどの畜肉製品類、魚肉ハム、魚肉ソーセージ、蒲鉾、ちくわ、はんぺん、てんぷらなどの魚介類製品またはその干物などの食品が挙げられる。また、上記食品の他に、乳酸飲料、乳酸菌飲料、濃厚乳酸飲料、果汁飲料、無果汁飲料、果肉飲料、機能性飲料、透明炭酸飲料、果汁入り炭酸飲料、果実着色炭酸飲料などの清涼飲料水などの嗜好飲料、ワイン、ワインソーダ、リキュール、カクテルなどのアルコール飲料、豆乳などの大豆加工食品、マーマレード、ジャム、コンサーブ、果実のシロップ漬、フラワーペースト、ピーナッツペースト、フルーツペーストなどのペースト類、うに、いかの塩辛、貝の干物などの各種珍味類、のり、小魚、貝類、するめ、野菜、山菜、茸、昆布などで作られる佃煮類、即席カレー、レトルトカレーなどのカレー類、ケチャップ、マヨネーズなどの各種調味料類、各種レンジ食品、冷凍食品などの食品への容器包装が挙げられる。」(段落【0020】の記載。)

以上のとおり、補正後の発明は、引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明できた発明であるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.結語
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について

1.本願発明
平成24年3月14日付けの手続補正を上記のとおり却下したので、本願の特許請求の範囲に記載された発明は、平成23年9月21日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載されたとおりのもの認められるところ、その請求項15に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
〈本願発明〉
ユーザの指示に基づき装飾菓子製品を特注製造するシステムであって、
ネットワークを介してクライエント・コンピュータと通信し、ネットワークを介して、ユーザが前記クライエント・コンピュータに入力した画像情報を受信し、該受信した画像情報をオンデマンド型インクジェット・プリンターに転送することにより、前記受信した画像情報に対応する200dpiを超える解像度を有する高品質画像を前記菓子製品に直接印刷させるサーバ・コンピュータを備えることを特徴とするシステム。

2.引用発明
引用発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2).引用発明等」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明できた発明であるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できた発明である。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができた発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-22 
結審通知日 2013-05-28 
審決日 2013-06-10 
出願番号 特願2002-501660(P2002-501660)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C09D)
P 1 8・ 575- Z (C09D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 正和  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 五十嵐 努
稲葉 和生
発明の名称 高解像度インクジェット食品印刷および印刷製品  
代理人 柳田 征史  
代理人 佐久間 剛  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ