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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1280708
審判番号 不服2012-16058  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-08-17 
確定日 2013-10-23 
事件の表示 特願2010-515200「H-ARQ処理メモリ管理のための方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 1月 8日国際公開、WO2009/006344、平成22年10月 7日国内公表、特表2010-532645〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本件出願は,2008年6月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年6月29日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成24年4月11日付けで拒絶査定がなされ,これを不服として同年8月17日付けで審判請求がなされたものであって,その請求項13に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成22年2月16日付け国際出願翻訳文提出書の特許請求の範囲の請求項13に記載された以下のとおりのものと認める。

「H-ARQ処理に関連付けられたデータを格納するためにメモリを動的に管理する装置であって,
H-ARQ処理に関連付けられたパケットを受信する手段と,
H-ARQバッファ内で空いているメモリ場所が利用可能であるかを判定する手段と,
前記空いているメモリ場所に前記パケットを割り当てる手段と,
前記パケットが正しく復号されたかを判定する手段と,
前記パケットが正しく復号されなかった場合,後続するパケット再送信との結合のために,前記割り当てられたメモリ場所内に前記パケットを保持する手段とを備える装置。」

2.引用発明
(1)引用発明1
原査定の拒絶の理由に引用された米国特許出願公開第2003/0118031号明細書(以下,「引用例1」という。)には,「METHOD AND SYSTEM FOR REDUCED MEMORY HYBRID AUTOMATIC REPEAT REQUEST(削減されたメモリのハイブリッド自動再送要求のための方法及びシステム)」(()内は当審仮訳。以下も同様。)に関し,図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「[0042] FIG. 2 shws a block diagram of one embodiment of a system for reduced memory hybrid ARQ, in accordance with the present invention at 200 .
[0043] Reduced memory HARQ system 200 may contain a combine and store unit 210 , a channel decoder 220 , a HARQ buffer control unit 230 , a HARQ buffer pool 240 , a reserved non-HARQ buffer 250 and a HARQ feedback generator 260 . Reduced memory HARQ system 200 may be located near the receiver of a communication device. The combination of the HARQ buffer pool 240 and the reserved non-HARQ buffer 250 may be called a pool of memory or a hybrid automatic repeat request memory buffer pool. The reserve non-HARQ buffer 250 may also be called a reserved buffer.
[0044] Combine and store unit 210 may be an electronic circuit capable of receiving a transmitted data packet, storing the data packet, producing a channel decoder input that comprises the data packet, and sending the channel decoder input to channel decoder 220 .
・・・(中略)・・・
[0049] Channel decoder 220 may generate a channel decoder status based on decoding the channel decoder input. In one example, if the data packet is encoded with a cyclic redundancy check (CRC) code, the channel decoder may verify that there are no errors using the CRC. The channel decoder status may contain an indication of whether decoding was successful or not.
・・・(中略)・・・
[0050] HARQ buffer control unit 230 may manage the transfer of data packets between combine and store unit 210 and HARQ buffer pool 240 . If the decoding of a data packet has been unsuccessful, the data packet may be temporarily stored in HARQ buffer pool 240 . Additional data packets that are unsuccessfully decoded may also be stored in HARQ buffer pool 240 . HARQ buffer control unit 230 may select and transfer data packets stored in HARQ buffer pool 240 to combine and store unit 210 for decoding using a hybrid ARQ method, where previously sent data packets are combined with a newly sent data packet to obtain an accurate, reliable data packet. HARQ buffer control unit 230 may receive control signals for the transferring of data packets. A receive (Rx) control signal may indicate, for example, that a data packet is a HARQ data packet, and it may be transferred to HARQ buffer pool 240 when appropriate. A receive control signal may indicate, for example, that a data packet is a retransmitted data packet, and a previously stored data packet may be transferred from HARQ buffer pool 240 to combine and store unit 210 . A receive control signal may indicate a quality of the received data. A receive control signal may indicate a method for combining in combine and store unit 210 . The combining method may be, for example, a Chase combining method, or an additional incremental redundancy combining method.
[0051] HARQ buffer pool 240 may be any type of memory (e.g., semiconductor, ferric/ferrous) capable of receiving, storing and sending digital contents of one or more data packets. HARQ buffer pool 240 may contain at least one hybrid automatic repeat request memory buffer. In one example, HARQ buffer pool 240 may be a circular buffer. HARQ buffer pool 240 may consist of a number of equal-sized buffers corresponding to the largest size transmission, for example, corresponding to the highest order of modulation, or it may be a contiguous memory space that may be subdivided and allocated as needed. The contiguous memory space may be more memory efficient, especially for a system that employs several modulation schemes, since low order modulations, for example, quaternary phase shift keying (QPSK), and high order modulation, for example, quadrature amplitude modulation (64-QAM), may have different buffer size requirements. If HARQ memory in HARQ buffer pool 240 is available and the receive control signal and HARQ buffer control unit 230 indicate that a data packet requires memory, a portion of HARQ buffer pool 240 may be assigned to the data packet. HARQ buffer control unit 230 may manage the assignment of memory to the data packet, such as setting the size of memory for assignment/allocation, partitioning the pool of memory, and assigning control parameters to the memory (including, for example, a received packet number, channel quality attributes, and a parameter related to time).
[0052] Reserved non-HARQ buffer 250 may be any type of memory capable of receiving, storing and sending digital contents of a data packet. Reserved non-HARQ buffer 250 may be of a predefined size. HARQ buffer control unit 230 may allocate reserved non-HARQ buffer 250 dynamically from HARQ buffer pool 240 . If HARQ memory is desired but there is no HARQ memory available, the reserved non-HARQ buffer 250 may be used to hold (store) the incoming data packet for combine and store unit 210 . Without HARQ buffer pool 240 , a retransmission must be self-decodable for successful decoding. Reserved non-HARQ buffer 250 may be used to temporarily store the results of combine and store unit 210 , such as the channel decoder input.
[0053] HARQ buffer control unit 230 may determine that HARQ buffer pool 240 is full, or nearly full.
([0042]図2は,200に示す本願発明に従った,削減されたメモリのハイブリッド自動再送要求のためのシステムの1実施例のブロック図を示す。
[0043]削減されたメモリのハイブリッド自動再送要求システム200は,結合・蓄積ユニット210,チャネルデコーダ220,HARQバッファ制御ユニット230,HARQバッファプール240,予備の非HARQバッファ250,HARQフィードバック生成器260を含んでもよい。削減されたメモリのハイブリッド自動再送要求システム200は,通信機器の受信機の近くに位置してもよい。HARQバッファプール240と予備の非HARQバッファ250のコンビは,メモリのプールあるいはハイブリッド自動再送要求メモリバッファプールと呼んでもよい。予備の非HARQバッファ250は予備のバッファとも呼んでもよい。
[0044]結合・蓄積ユニット210は,送信されたデータパケットを受信し,そのデータパケットを蓄積し,そのデータパケットを構成するチャネルデコーダ入力を生成し,そのチャネルデコーダ入力をチャネルデコーダ220に送信することができる電子回路である。
・・・(中略)・・・
[0049]チャネルデコーダ220は,チャネルデコーダ入力の復号に基づいてチャネルデコーダステータスを発生し得る。一例では,データパケットが巡回冗長検査(CRC)とともに符号化されている場合,チャネルデコーダはそのCRCを用いてエラーが無いことを確認し得る。チャネルデコーダステータスは復号が成功したか否かの指標を含み得る。
・・・(中略)・・・
[0050]HARQバッファ制御ユニット230は,結合・蓄積ユニット210とHARQバッファプール240との間のデータパケット転送を管理してもよい。データパケットの復号が不成功であった場合,そのデータパケットは一時的にHARQバッファプール240に蓄積され得る。復号が不成功であった追加のデータパケットもHARQバッファプール240に蓄積され得る。HARQバッファ制御ユニット230は,ハイブリッドARQ方法を用いた復号のために,HARQバッファプール240に蓄積されたデータパケットを選択して結合・蓄積ユニット210に転送することができ,そこで,以前に送信されたデータパケットは新たに送信されたデータパケットと結合されて正確で信頼性のあるデータパケットを得ることができる。HARQバッファ制御ユニット230は,データパケットの転送のための制御信号を受信してもよい。受信(Rx)制御信号は,例えば,データパケットがHARQデータパケットであって,適時にHARQバッファプール240に転送され得ることを指示してもよい。受信制御信号は,例えば,データパケットが再送されたデータパケットであって,以前に蓄積されたデータパケットがHARQバッファプール240から結合・蓄積ユニット210へ転送され得ることを指示してもよい。受信制御信号は,受信データの品質を指示してもよい。受信制御信号は,結合・蓄積ユニット210における結合方法を指示してもよい。その結合方法は,例えば,チェイス結合方法や追加的なインクリメンタル・リダンダンシー結合方法でもよい。
[0051]HARQバッファプール240は,1つ以上のデータパケットのデジタルコンテンツを受信し,蓄積し,送信することができる,いかなるタイプのメモリ(例えば,半導体,磁気)であってよい。HARQバッファプール240は,少なくとも1つのハイブリッド自動再送要求メモリバッファを含んでもよい。一例では,HARQバッファプール240は循環バッファでもよい。HARQバッファプール240は,最大サイズの送信,例えば,最高次の変調に対応するいくつかの同一サイズのバッファから構成されてもよく,または,必要に応じて分割され割り当てられる連続したメモリ空間でもよい。連続したメモリ空間は,特に,複数の変調スキームを用いるシステムの場合には,より有効かもしれない。なぜならば,低次の変調,例えば4相位相シフトキーイング(QPSK)と,高次の変調,例えば4相振幅変調(64-QAM)は,異なるバッファサイズを要求するかも知れないからである。もし,HARQバッファプール240内のHARQメモリが利用可能であり,かつ,受信制御信号とHARQバッファ制御ユニット230が,データパケットがメモリを必要とすることを示せば,HARQバッファプール240の一部がそのデータパケットに割り当てられる。HARQバッファ制御ユニット230は,割当て/配分のためのメモリのサイズ設定,メモリのプールの区画割り,制御パラメタのメモリへの割当て(例えば,受信パケット数,チャネル品質特性,時間に関するパラメタを含む)等の,メモリのデータパケットへの割当てを管理してもよい。
[0052]予備の非HARQバッファ250は,1つ以上のデータパケットのデジタルコンテンツを受信し,蓄積し,送信することができる,いかなるタイプのメモリであってよい。予備の非HARQバッファ250は既定のサイズでもよい。HARQバッファ制御ユニット230は,HARQバッファプール240から予備の非HARQバッファ250に動的に割当て得る。もし,HARQメモリが要求されるが,利用可能なHARQメモリが無い場合,予備の非HARQバッファ250が結合・蓄積ユニット210に代わって到着するデータパケットを保持(蓄積)するために使用され得る。HARQバッファユニット240が無いとき,復号が成功するためには再送は自己復号可能でなければならない。予備の非HARQバッファ250は,チャネルデコーダ入力等の蓄積・結合ユニット210の結果を一時的に保存するために使われてもよい。
[0053]HARQバッファ制御ユニット230は,HARQバッファプール240が満杯,あるいは,ほぼ満杯と判断してもよい。)」(5頁左欄[0042]-6頁右欄[0053])

上記引用例1の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると,
a.上記引用例1記載の「削減されたメモリのハイブリッド自動再送要求のためのシステム」は,FIG.2にあるように,「結合・蓄積ユニット210」,「チャネルデコーダ220」,「HARQバッファ制御ユニット230」,「HARQバッファプール240」を備えている。
b.上記「結合・蓄積ユニット210」について,「結合・蓄積ユニット210は,送信されたデータパケットを受信し,・・・(中略)・・・ことができる電子回路である。」(摘記事項[0044])によれば,
上記「結合・蓄積ユニット210」は,「データパケットを受信する手段」である。
c.上記「HARQバッファ制御ユニット230」について,「もし,HARQバッファプール240内のHARQメモリが利用可能であり,かつ,受信制御信号とHARQバッファ制御ユニット230が,データパケットがメモリを必要とすることを示せば,HARQバッファプール240の一部がそのデータパケットに割り当てられる。」(摘記事項[0051]),「HARQバッファ制御ユニット230は,HARQバッファプール240が満杯,あるいは,ほぼ満杯と判断してもよい。」(摘記事項[0053])によれば,
上記「HARQバッファ制御ユニット230」は,「HARQバッファプール240内で空いているHARQメモリが利用可能であるかを判断し,前記空いているHARQメモリに前記データパケットを割り当てる手段」である。
d.上記「チャネルデコーダ220」について,「チャネルデコーダ220は,チャネルデコーダ入力の復号に基づいてチャネルデコーダステータスを発生し得る。一例では,データパケットが巡回冗長検査(CRC)とともに符号化されている場合,チャネルデコーダはそのCRCを用いてエラーが無いことを確認し得る。チャネルデコーダステータスは復号が成功したか否かの指標を含み得る。」(摘記事項[0049])とあるから,
上記「チャネルデコーダ220」は,「前記データパケットが正しく復号されたかを判定する手段」である。
e.上記「HARQバッファプール240」について,「データパケットの復号が不成功であった場合,そのデータパケットは一時的にHARQバッファプール240に蓄積され得る。復号が不成功であった追加のデータパケットもHARQバッファプール240に蓄積され得る。HARQバッファ制御ユニット230は,ハイブリッドARQ方法を用いた復号のために,HARQバッファプール240に蓄積されたデータパケットを選択して結合・蓄積ユニット210に転送することができ,そこで,以前に送信されたデータパケットは新たに送信されたデータパケットと結合されて正確で信頼性のあるデータパケットを得ることができる。」(摘記事項[0050])とあるが,上記データパケットの蓄積が上記c.の「割り当てられたHARQメモリ」に行われることは明らかであるから,
上記「HARQバッファプール240」は,「前記データパケットが正しく復号されなかった場合,後続するパケット再送信との結合のために,前記割り当てられたHARQメモリ内に前記データパケットを保持する手段」である。
f.引用例1の「システム」による「HARQバッファプール240」の管理に関連して,「HARQバッファプール240は,最大サイズの送信,例えば,最高次の変調に対応するいくつかの同一サイズのバッファから構成されてもよく,または,必要に応じて分割され割り当てられる連続したメモリ空間でもよい。」(摘記事項[0051]),「HARQバッファ制御ユニット230は,HARQバッファプール240から予備の非HARQバッファ250に動的に割当て得る。もし,HARQメモリが要求されるが,利用可能なHARQメモリが無い場合,予備の非HARQバッファ250が結合・蓄積ユニット210に代わって到着するデータパケットを保持(蓄積)するために使用され得る。」(摘記事項[0052])とあるように,「システム」によって,HARQバッファプール240は,そのサイズや分割方法等が動的に変更されているから,
上記「システム」は「データパケットを格納するためにバッファを動的に管理する」ものと言える。

以上を総合すると,上記引用例1には,以下の発明(以下,「引用発明1」という。)が開示されていると認める。

「データパケットを格納するためにバッファを動的に管理するシステムであって,
データパケットを受信する結合・蓄積ユニット210と,
HARQバッファプール240内で空いているHARQメモリが利用可能であるかを判断し,前記空いているHARQメモリに前記データパケットを割り当てるHARQバッファ制御ユニット230と,
前記データパケットが正しく復号されたかを判定するチャネルデコーダ220と,
前記データパケットが正しく復号されなかった場合,後続するパケット再送信との結合のために,前記割り当てられたHARQメモリ内に前記データパケットを保持するHARQバッファプール240とを備えるシステム。」

(2)引用発明2
同じく原査定の拒絶の理由に引用された欧州特許出願公開第1389847号明細書(以下,「引用例2」という。)には,「HYBRID AUTOMATIC REPEAT REQUEST PROTOCOL(ハイブリッド自動再送要求プロトコル)」に関し,図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「[0017]The functional behaviour of one HARQ process is illustrated in Figure 4. A physical channel is used to transmit data to a receiver. In this case it is a so-called HS-DSCH(High Speed - Downlink Shared Channel), where different users are time multiplexed. As apparent from the figure, a transmitter Base Station (Node B) transmits to a receiver called User Equipment (UE1). Node B transmits (Tx) a data packet A to the UE1. Before the data is received (Rx) by the UE1 there is a propagation delay. UE1 will demodulate and decode the packet A. After a UE1 processing time of t_(RX process) an ACK or NAK will be sent (depending on if the packet A has been received correctly or not). In this case UE1 sends a NAK assuming that Packet A has not been received correctly. If the NAK has been received and decoded correctly by the transmitter (t_(propa) introduced once again by the radio channel), the transmitter can decide to resend the data packet after aprocessing time t_(TX process). Thus the number of data packets that have to be stored depends on the number of simultaneously active HARQ processes.
[0018]A high level architecture of HSDPA Base Station is depicted in Figure 5. It is assumed there are #1...# X different data flows (logical channels) with data packets to be transmitted from the Node B to the User Equipment (UE). The set of HARQ transmitting and receiving entities, located in Node B and UE respectively, will be referred to as HARQ processes. The maximum number of HARQ processes per UE is usually predefined. These data flows can have different Quality of Services (QoS), e.g. delay and error requirements and may require a different configuration of HARQ instances.
[0019]The scheduler will consider these parameters in allocating resources to different UEs.The scheduling function controls the allocation of the channel (HS-DSCH) to different users or to data flows of the same user, the current MCS level in one TTI and manages existing HARQ instances for each user.
[0020]A data flow or even a particular packet of a data flow may have a different priority.Therefore the data packets can be queued in different priority queues. Different data flows with similar QoS requirements may also be multiplexed together (e.g. data flow #3 and #4). Besides the HS-DSCH that carries the data packets there is control data which is mapped onto a High Speed - Shared Control Channel (HS-SCCH). This could carry data such as the HARQ process ID, the modulation scheme, code allocation, transport format etc. that is needed by the receiver to correctly receive, demodulate, combine and decode the packets.
[0021]As said before, the scheduler decides which of the N HARQ processes shall be used for transmission. Each HARQ process can have different window sizes. In HSDPA there is only a single HARQ process scheduled each TTI and each process works as a SAW protocol which corresponds to selective repeat ARQ with window size 1. In the example illustrated in Figure 4, a retransmission can be scheduled after 5 transmission time intervals(TTI). It is not possible to schedule the same HARQ process earlier if packet combining shall be used because the processing is still ongoing. The HARQ process number as well as the sequence number has to be signalled separately to allow a proper combining even if the packet is not received correctly. In HSDPA the 1 bit sequence number is called New Data Indicator (NDI). Each time a new packet has been sent, the NDI is incremented. In HSDPA the HARQ process ID and the NDI are signalled on the HS-SCCH.
([0017] HARQ処理の一つの機能動作が,図4に示されている。データを受信機に送信するのに,物理チャネルが用いられる。本例は,異なるユーザが時間多重される,いわゆるHS-DSCH(高速ダウンリンク共有チャネル)である。図から明らかなように,送信機側基地局(ノードB)がユーザ機器(UE1)と称される受信機に対して,送信を行う。ノードBは,データパケットAをUE1に対して送信する(Tx)。UE1によりデータが受信される前(Rx)には,伝搬遅延がある。UE1は,パケットAを復調し,復号する。UE1の処理時間t_(RXprocess)の後,ACK又はNAKが送られる(パケットAが正しく受信されたかどうかに依存する)。本例では,パケットAが正しく受信されていないものとして,UE1は,NAKを送信する。送信機により,NAKが受信され,正しく復号された場合(無線チャネルにより,t_(propa)が再度生じる),送信機は,処理時間t_(TX process)の後にデータパケットを再送するかどうかを決定することができる。よって,蓄積が必要となるデータパケット数は,同時にアクティブなHARQ処理の数に依存する。
[0018] HSDPA基地局の上位構造が図5に示されている。データパケットがノードBからユーザ機器(UE)に対して送信される,#1から#Xの異なるデータフロー(論理チャネル)が存在するものと仮定されている。ノードB及びUEのそれぞれに置かれたHARQ送受信エンティティのセットは,HARQ処理と称される。通常,UEあたりのHARQ処理の最大数は,予め規定されている。これらのデータフローは,異なるサービス品質(QoS),例えば遅延及び誤りについての要求を有することができ,異なる設定によるHARQインスタンスを要求し得る。
[0019] スケジューラは,異なるUEにリソースを割り当てる際に,これらのパラメータを考慮する。スケジューリング機能は,一つのTTIでの現在のMCSレベルにおける,異なるユーザ又は同一ユーザの複数のデータフローに対するチャネル(HS-DSCH)の割当を制御し,各々のユーザに対する既存のHARQインスタンスを管理する。
[0020] データフロー又はデータフローの特定パケットでさえ,異なる優先度を有し得る。従って,データパケットは,異なる優先度キューに入れられることができる。同一のQoS要求を持つ複数のデータフローは,多重化されても良い(例えば,データフロー#3と#4)。データパケットを搬送するHS-DSCHに加えて,高速共有制御チャネル(HS-SCCH)にマッピングされる制御データも存在する。このチャネルは,HARQ処理ID,変調方式,符号割当,トランスポートフォーマットなど受信機側でパケットの正確な受信,復調,合成及び復号を行なうために必要なデータを搬送することができる。
[0021]上述の通り,スケジューラは,N数のHARQ処理のうちの何れが送信に用いられるかを決定する。各HARQ処理は,異なるウインドウサイズを有することができる。HSDPAでは,各TTIにスケジューリングされるHARQ処理は一つのみであり,各処理は,ウインドウサイズ1の選択的リピート方式のARQに相当するSAWプロトコルとして機能する。図4に示した例では,再送は,5TTI後にスケジューリングすることができる。パケット合成が用いられる場合,同HARQ処理をこれよりも速くにスケジューリングすることはできない。処理がまだ進行中だからである。パケットが正しく受信されなかった際にも適切な合成が可能となるように,シーケンス番号に加えて,HARQ処理番号が別個にシグナリングされる必要がある。HSDPAにおいては,1ビットシーケンス番号は,新データインジケータ(NDI:New Data Indicator)と称される。新規のパケットが送られる毎に,NDIがインクリメントされる。HSDPAにおいては,HARQ処理ID及びNDIは,HS-SCCH上でシグナリングされる。)」(3頁4欄[0017]-4頁5欄[0021])

上記引用例2の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると,
FIG.4?6に記載されているように,上記引用例2のハイブリッド自動再送要求プロトコルを用いたノードBからUE1へのHSDPA(High Speed Downlink Packet Access )において,各データパケットは,制御チャネル(HS-SCCH)で伝送されるHARQ処理ID(ID=1?N)に関連付けられて送受信されており,上記引用例2には,以下の発明(以下,「引用発明2」という。)が開示されていると認める。

「HARQ処理において,データパケットをHARQ処理IDと関連付けて送受信するデータパケット送受信方法。」

3.対比
本願発明と引用発明1とを対比するに,
a.引用発明1の「データパケット」と本願発明の「H-ARQ処理に関連付けられたデータ」は「データ」である点で共通する。
b.引用発明1の「バッファ」は本願発明の「メモリ」に含まれる。
c.引用発明1の「システム」が具体的には「装置」として構成されるものであることは明らかであるから,本願発明の「装置」に相当する。
d.引用発明1の「データパケット」と本願発明の「H-ARQ処理に関連付けられたパケット」は「パケット」である点で共通する。
e.引用発明1の「受信する結合・蓄積ユニット210」は本願発明の「受信する手段」に含まれる。
f.引用発明1の「HARQバッファプール240」は本願発明の「H-ARQバッファ」に含まれる。
g.引用発明1の「HARQメモリ」は本願発明の「メモリ場所」に含まれる。
h.引用発明1の「HARQバッファ制御ユニット230」は,「判断し」「割り当てる」という動作上,本願発明の「判定する手段」及び「割り当てる手段」に相当する。
i.引用発明1の「(正しく復号されたかを)判定するチャネルデコーダ220」は本願発明の「(正しく復号されたかを)判定する手段」に含まれる。
j.引用発明1の「保持するHARQバッファプール240」は本願発明の「保持する手段」に含まれる。

以上を総合すると,両者は以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「データを格納するためにメモリを動的に管理する装置であって,
パケットを受信する手段と,
H-ARQバッファ内で空いているメモリ場所が利用可能であるかを判定する手段と,
前記空いているメモリ場所に前記パケットを割り当てる手段と,
前記パケットが正しく復号されたかを判定する手段と,
前記パケットが正しく復号されなかった場合,後続するパケット再送信との結合のために,前記割り当てられたメモリ場所内に前記パケットを保持する手段とを備える装置。」

(相違点)
「データ」及び「パケット」が,
本願発明では「H-ARQ処理に関連付けられた」ものであるのに対し,
引用発明1では単に「データパケット」である点。

4.検討
上記相違点につき検討する。
まず,上記「2.引用発明」の項中の「(2)引用発明2」の項に記したように,上記引用例2には,「HARQ処理において,データパケットをHARQ処理IDと関連付けて送受信するデータパケット送受信方法。」という引用発明2が記載されている。
そして,引用発明1,2は,いずれもHARQ処理に関する発明であるから,上記引用発明2を引用発明1に単に適用して,引用発明1の「データパケット」を「HARQ処理IDと関連付けて送受信する」ことにより,「H-ARQ処理に関連付けられた」ものとすることは,当業者が容易に想到し得たものである。

そして,本願発明が奏する効果も引用発明1及び引用発明2から容易に予測できる範囲内のものである。

5.むすび
以上のとおり,本願発明は,上記引用発明1及び引用発明2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-22 
結審通知日 2013-05-28 
審決日 2013-06-11 
出願番号 特願2010-515200(P2010-515200)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安藤 一道  
特許庁審判長 田中 庸介
特許庁審判官 新川 圭二
山本 章裕
発明の名称 H-ARQ処理メモリ管理のための方法及び装置  
代理人 河野 直樹  
代理人 中村 誠  
代理人 岡田 貴志  
代理人 野河 信久  
代理人 峰 隆司  
代理人 堀内 美保子  
代理人 佐藤 立志  
代理人 白根 俊郎  
代理人 福原 淑弘  
代理人 砂川 克  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 井関 守三  
代理人 竹内 将訓  
代理人 蔵田 昌俊  

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