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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1280750
審判番号 不服2012-15488  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-08-09 
確定日 2013-10-24 
事件の表示 特願2007-338480「半導体センシング用電界効果型トランジスタ及びこれを用いた半導体センシングデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 7月16日出願公開,特開2009-156827〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成19年12月28日を出願日とする出願であって,平成23年12月8日付けで拒絶理由が通知され,平成24年1月31日付けで手続補正がなされ,同年5月11日付けで拒絶査定がなされ,同年8月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?8に係る発明は,平成24年1月31日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されたものであって,その請求項1に係る発明は,次のとおりのものであると認める。
「【請求項1】
シリコン上にゲート絶縁層が形成された電界効果型トランジスタの上記ゲート絶縁層上に,該ゲート絶縁層と結合した有機シラン単分子膜を介して,該有機シラン単分子膜と結合したAu層を積層してなり,上記ゲート絶縁層の少なくとも有機シラン単分子膜側の最表面部がシリコン酸化物で構成され,上記有機シラン単分子膜が,チオール基とアルコキシシリル基とを有するシランカップリング剤により形成されていることを特徴とする半導体センシング用電界効果型トランジスタ。」(以下,「本願発明」という。)

第3 引用刊行物記載の発明 (下線は当審で付与した。)
(1)本願出願前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開昭63-88438号公報(以下「刊行物1」という。)には,「MOSFET化学電極」について,図面とともに次の事項が記載されている。
(1-ア) 「(ロ)従来の技術
最近,MOS型FET(電界効果型トランジスタ)素子のゲート絶縁膜上に,直接または窒化ケイ素(Si_(3)N_(4))膜を介して金,白金等からなるゲート金属を密着形成させたMOSFET化学電極が提案されており,小形化,計量化およびS/N比の改善の点で種々のイオンセンサとして用途が期待されており,さらに酵素等の生体溶媒を固定化して組合わせることにより各種基質の探知センサとしての用途も期待されている。
かかるFET化学電極は,通常,ゲート絶縁膜上に直接金または白金等のゲート金属を密着形成してもよいが,水溶液中で使用する場合このゲート金属が剥がれやすいことからクロムまたはチタン等の金属膜を介して金または白金等のゲート金属を密着形成したものが知られている。」

上記(1-ア)の記載と図1?4を参照すると,上記引用刊行物1には,
「MOS型FET(電界効果型トランジスタ)素子のゲート絶縁膜上に,
クロムまたはチタン等の金属膜を介して
金からなるゲート金属を密着形成させたMOSFET化学電極を備えたイオンセンサ。」の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。

(2)本願出願前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である「Charles A. Goss et al., Application of (3-Mercaptopropyl)trimethoxysilane as a Molecular Adhesive in the Fablication of Vapor-Deposited Gold Electrodes on Glass Substrates, Anal. Chem. Vol.63, p.85-88, 1991」(以下「刊行物2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
(2-ア) 「However,the use of Cr and other metals as undercoating layers presents problems related to Cr(Ti,W) diffusion along grain boundaries to the nobble-metal surface (21-24).
・・・
An alternative approach is to replace the transition-metal underlayer with an insulating organic coupling agent,such as an organofunctional silane.For example,McGee(27)and Ponjee et al.(28)have reported that (3-mercaptopropyl)tri-methoxysilane(MPS) can be used to improve the adhesion of Ag and Au evaporated films to glass and SiO_(2) substrates.」(86頁左欄5?19行)
「当審仮訳(nobbleはnobleの誤記として訳している。):しかしながら,クロムや他の金属を下塗り層として用いることは,結晶境界に沿ったクロム(チタン,タングステン)の貴金属表面への拡散と関連した問題を提起する(21-24)。
・・・
代替手段は,遷移金属の下層を,絶縁性の有機結合剤,例えば有機官能性シランで置き換えることである。例えば,マギー(27)とポニー等は(3-メルカプトプロピル)トリ-メトキシシラン(MPS)は,銀や金蒸着薄膜の,ガラスや酸化シリコン基板への付着を改善するために用いることができることを報告している。」

第4 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「MOS型FET(電界効果型トランジスタ)素子」,「ゲート絶縁膜」,および「金からなるゲート金属」は,それぞれ本願発明の「電界効果型トランジスタ」,「ゲート絶縁層」,および「Au層」に相当することは明らかである。そして,引用発明も「基板」を有していることは明らかである。

イ 引用発明の「イオンセンサ」は,「MOS型FET(電界効果型トランジスタ)素子のゲート絶縁膜上に,」「MOSFET化学電極」が形成されているのであるから,本願発明の「半導体センシング用電界効果型トランジスタ」に相当する。

ウ 引用発明の「クロムまたはチタン等の金属膜」と本願発明の「有機シラン単分子膜」とは「接続膜」の点で共通する。

そうすると,本願発明と引用発明とは,
「基板上にゲート絶縁層が形成された電界効果型トランジスタの上記ゲート絶縁層上に,接続膜を介して,Au層を積層してなる半導体センシング用電界効果型トランジスタ。」である点で一致し,次の点で相違している。

(相違点1)
基板について,本願発明では「シリコン」であるのに対して,引用発明では,その点が特定されていない点。

(相違点2)
接続膜について,本願発明では「有機シラン単分子膜」であり,ゲート絶縁層の最表面部のシリコン酸化物と結合し,「Au層」と結合しているのに対して,引用発明では,「クロムまたはチタン等の金属膜」であり,「クロムまたはチタン等の金属膜」を介してゲート絶縁層と,「Au層」とを密着形成している点。

(相違点3)
ゲート絶縁層について,本願発明では,少なくとも接続膜側がシリコン酸化物で構成されているのに対して,引用発明では不明である点。

(1)相違点1についての検討
半導体基板としてシリコンを用いることは,例えば特開平5-243525号公報(【0040】・・・シリコン基板1にはp形シリコンを用い,・・・ゲート絶縁層を構成する酸化シリコン層24が形成されており),特開2004-320007号公報(【0053】 実施例1・・・N型のシリコン基板をゲート電極1とした。シリコン基板表層を熱酸化して得られる5000Åの酸化シリコン膜をゲート絶縁層2とした。)に記載されているように周知技術である。
してみると,引用発明に上記周知技術を適用して,相違点1に記載の本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到するものといえる。

(2)相違点2についての検討
上記摘記事項(2-イ)には,「代替手段は,遷移金属の下層を,絶縁性の有機結合剤,例えば有機官能性シランで置き換えることである。・・・(3-メルカプトプロピル)トリ-メトキシシラン(MPS)は,銀や金蒸着薄膜の,ガラスや酸化シリコン基板への付着を改善するために用いることができる。」(以下,(3-メルカプトプロピル)トリ-メトキシシランをMPSと略す。)と「金蒸着薄膜と酸化シリコン基板の付着のために遷移金属の下層をMPSに置き換える。」ことが記載されている。
そして,本願明細書には「【0022】 このような有機シラン単分子膜を構成する有機シランとしては,例えば,3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン,3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができ,分子鎖の一方の末端にチオール基,他方の末端にアルコキシシリル基(好ましくはトリアルコキシシリル基)を有し,それらが炭素数3?20の直鎖状アルケニル基に結合したものが好ましい。」と,MPSは,「有機シラン単分子膜を構成する有機シラン」であると記載されている。
そして,半導体において層間の接着を柔軟で強力にするために,より良い接着手段を探し採用しようとすることは周知の技術課題である。
してみると,引用発明に,刊行物2の上記記載事項を採用して,相違点2に記載の本願発明の構成とすることは,周知の技術課題を解決するためであるから,十分動機付けがあり,当業者が容易に想到するものと認められる。

(3)相違点3についての検討
ゲート絶縁層をシリコン酸化物とすることは,例えば上記相違点1についての検討で例示した特開平5-243525号公報,および特開2004-320007号公報に記載されているように周知技術である。
してみると,引用発明に上記周知技術を適用して,相違点3に記載の本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到するものといえる。

そして,トランジスタにおいてリーク電流を抑制することは,例えば特開2001-358236号公報,特開平3-60043号公報,特開2005-79559号公報に記載されているように,周知の課題であり,当然に考慮するパラメータであるから,本願発明の作用効果は,引用発明,刊行物2の記載事項および周知の技術事項から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。

したがって,本願発明は,引用発明,刊行物2の記載事項および周知の技術事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明,刊行物2の記載事項および周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,その他の請求項について言及するまでもなく,本願出願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-12 
結審通知日 2013-08-13 
審決日 2013-09-05 
出願番号 特願2007-338480(P2007-338480)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 黒田 浩一  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 信田 昌男
三崎 仁
発明の名称 半導体センシング用電界効果型トランジスタ及びこれを用いた半導体センシングデバイス  
代理人 重松 沙織  
代理人 小林 克成  
代理人 石川 武史  
代理人 小島 隆司  
代理人 正木 克彦  

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