• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1280771
審判番号 不服2012-24296  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-07 
確定日 2013-10-24 
事件の表示 特願2005-148193「光走査装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年11月30日出願公開、特開2006-323276〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成17年5月20日に出願されたものであって、平成23年9月15日付けで拒絶理由が通知され、同年11月18日に手続補正がなされたが、平成24年9月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月7日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成24年11月18日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、次のとおりのものである。
「複数の光源と、該光源からのビームを主走査方向に偏向する偏向器と、該偏向器にて偏向されたビームを被走査面上に結像するレンズと、該レンズを透過したビームを被走査面に導くための光路折返しミラーとを備えた光走査装置において、
前記偏向器は各光源に対して共通に設置されており、
前記レンズは同じ金型によって成形されたものが前記偏向器の左右両側に副走査方向に反転された状態で配置され、該レンズの少なくとも1面が副走査方向の上側及び下側がそれぞれ式(1)で表わされる面形状を有し、かつ、上側及び下側では式(1)中のCijが異なり、
【数1】

前記光路折返しミラーの枚数は前記偏向器に対して一方の上側光路及び下側光路かつ他方の上側光路及び下側光路で全て奇数又は偶数であること、
を特徴とする光走査装置。」

3 刊行物の記載内容
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された特開2004-226864号公報(以下「引用刊行物」という。)には、以下の記載がある(下線は、当審で付した。)。

ア 「【請求項1】
光偏向器を有する光走査装置において、
光源装置から射出された光ビームを被走査面へ導く光学素子群を少なくとも2つ有するとともにこれらの光学素子群は上記光偏向器を共有しており、
一つの光学素子群の、光偏向器よりも後に配置されている光学素子と、他の光学素子群の、光偏向器よりも後に配置されている光学素子は、光路を曲げるだけの機能を有する折り返しミラーを除き、光源装置から被走査面までの光路を直線的に展開した状態で、光偏向器の回転軸に垂直な軸に対してほぼ回転対称に配列されていることを特徴とする対向走査型の光走査装置。
【請求項2】
請求項1記載の光走査装置において、光学素子群は、第1光学素子群と第2光学素子群からなり、これらの光学素子群の光偏向器よりも後に配置されている光学素子が、光偏向器の回転軸に垂直な軸に対してほぼ回転対称に配列されていることを特徴とする光走査装置。
・・・
【請求項5】
請求項2から4のいずれかに記載の光走査装置において、光偏向器よりも後に配設される折返しミラーの枚数は、第1光学素子群と第2光学素子群において偶数または奇数に揃えられていることを特徴とする光走査装置。」、

イ 「【0008】本発明は以上のような従来技術の問題点を解消するためになされたもので、特許文献3記載のもののように、「光偏向器」を共有し、複数の走査光学系を構成する光学素子を光偏向器の両側に対向させて配設したものにおいて、形成される画像の色ずれを抑えることができる光走査装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明の光走査装置は、「光偏向器を有する光走査装置」であって、以下の如き特徴を有する。
すなわち、光源装置から射出された光ビームを被走査面へ導く光学素子群を少なくとも2つ有するとともにこれらの光学素子群は上記光偏向器を共有しており、一つの光学素子群の、光偏向器よりも後に配置されている光学素子と、他の光学素子群の、光偏向器よりも後に配置されている光学素子は、光路を曲げるだけの機能を有する折り返しミラーを除き、光源装置から被走査面までの光路を直線的に展開した状態で、光偏向器の回転軸に垂直な軸に対してほぼ回転対称に配列されていることを特徴とする対向走査型の光走査装置である。
【0010】
ここで、「光源装置から被走査面までの光路を直線的に展開」とは以下のことを意味する。光走査装置を実際の画像形成装置に搭載する場合には、全体的な大きさをコンパクトにするために、折返しミラーを複数枚用いて光路を折り曲げるのが普通である。これに対し、光路を折り曲げるだけの機能しか有さない折返しミラーを除去し、光路が折り曲げられる前と後で全く等価になるように光線を直線的に展開して各光学素子を配設する。これを本明細書では「光路を直線的に展開」と呼ぶことにする。
【0011】
光偏向器に対して光ビームが主走査平面内で入射する通常の光走査装置の場合、光偏向器で反射された光ビームも主走査平面内にあるため、各光学素子にパワーを有するミラーを用いなければ、全ての光学素子は一つの平面すなわち主走査平面上に乗ることになる。
一方、光偏向器に対して光ビームが主走査平面に対してある角度を有して入射する「斜入射タイプ」の光走査装置の場合、一つの平面上に光学素子が配列されるわけではない。しかし、光偏向器から反射された光ビームが斜めであっても、被走査面に直線的に入射されるように配設されている場合、これを「光路を直線的に展開」と呼ぶ。
【0012】
請求項2記載の発明の特徴は、請求項1記載の光走査装置において、光学素子群は、第1光学素子群と第2光学素子群からなり、これらの光学素子群の光偏向器よりも後に配置されている光学素子が、光偏向器の回転軸に垂直な軸に対してほぼ回転対称に配列されていることである。
・・・
【0013】
・・・
請求項5記載の発明の特徴は、請求項2から4のいずれかに記載の発明において、光偏向器よりも後に配設される折返しミラーの枚数は、第1光学素子群と第2光学素子群において偶数または奇数に揃えられていることである。」

ウ 「【0020】しかし、光源装置から被走査面9,9’までの光路を直線的に展開した状態で、一つの光学素子群の光偏向器5よりも後に配置されている光学素子6、7、8と、他の光学素子群の光偏向器5よりも後に配置されている光学素子6’、7’、8’相互の関係を、「回転多面鏡の回転軸を対称軸としたほぼ回転対称な関係とする」のではなく、図1に示す実施の形態のように、「光偏向器の回転軸に垂直な軸に対してほぼ回転対称」の関係とすると、走査線曲がりは、図4に示すように同じ方向の曲がりとなる。そのため、走査線曲がりそのものは発生していても、色ずれとしては殆ど目立たなくなる。
図1に示す実施の形態では、防音ガラス6,6’と防塵ガラス8,8’は取り付け角度βでほぼ平行であり、走査レンズ7、7’の基準面11、12は、副走査平面内において上下が互いに逆になっている。具体的には、第1光学素子群を構成する走査レンズ7の基準面11は基底と接し、第2光学素子群を構成する走査レンズ7’の基準面12は、上記基底と反対側となるように取り付けられている。」

エ 「【0027】図5に、本発明にかかる光走査装置の前記第1の実施形態を要部のみ示す。図5において、半導体レーザである光源1から放射された光ビームは発散性の光束で、カップリングレンズ2により、以後の光学系にカップリングされる。カップリングされたビームの形態は、以後の光学系の光学特性に応じ、弱い発散性の光束や弱い収束性の光束となることも、平行光束となることもできる。本実施例では収束性の光束としている。カップリングレンズ2を透過した光ビームは、アパーチャ3の開口部を通過する際、光束周辺部が遮断されて「ビーム整形」され、「線像結像光学系」であるシリンドリカルレンズ4に入射する。シリンドリカルレンズ4は、パワーのない方向を主走査方向に向けて配置され、副走査方向には正のパワーを持ち、入射してくる光ビームを副走査方向に集束させ、「光偏向器」である回転多面鏡5の偏向反射面近傍に、主走査方向に長い線像を形成させる。
【0028】偏向反射面により反射された光ビームは、回転多面鏡5の等速回転に伴い等角速度的に偏向されつつ、「走査光学系」をなす1枚の走査レンズ7を透過し、「被走査面」の実体をなす光導電性の感光体表面9上に光スポットとして集光し、被走査面を光走査するように構成されている。図5では光源としての半導体レーザはシングルビームとして描いてあるが、マルチビーム用の光源装置を用いてもよい。
この実施形態において、設計値通りの走査レンズ7が成形されたとしても、本実施例で不可避的に発生する走査線曲がり量は15μm程度である。したがって、第1光学素子群による走査線と第2光学素子群による走査線とを単に重ね合わせることを想定すると、最大30μmの色ずれとして発生する可能性がある。しかし、各光学素子を第1の実施形態に関して説明したように配設すると、この色ずれ量は殆ど0μmである。
また、走査レンズ7に反りが発生したとしても同様のことが言える。例えば、第1光学素子群での反り量が10μm、第1光学素子群での反り量が15μmとすると、従来では25μmの色ずれとなっていたものが、本発明の実施形態では5μmの色ずれとなる。」

オ 「【0032】次に、第5の実施の形態について説明する。これまで説明してきた実施の形態では、2本の走査線による2色の書き込みを例として説明したが、実際のフルカラープリンターでは、シアン、マゼンタ、イエロー、黒の4色を被走査面上に書き込む必要がある。これを実現するには、図8に示す実施の形態のように、第1群、第2群の各光学素子を2段構成とし、回転多面鏡5も2段の偏向反射面を有する構成にすればよい。図8では煩雑を避けるため防音ガラス、防塵ガラスを省略して示している。
【0033】図8において、回転多面鏡5を挟んでその両側に第1、第2の光学素子群を構成する走査レンズ7、7’が配置されている。回転多面鏡5の上段の偏向反射面で反射される光ビームは、走査レンズ7、折り返しミラーMC1、MC2を経てシアンの画像を受け持つ感光体ドラム111Cに至る一方、走査レンズ7’、折り返しミラーMB1、MB2を経て黒の画像を受け持つ感光体ドラム111Bに至るように構成されている。また、回転多面鏡5の下段の偏向反射面で反射される光ビームは、走査レンズ7、折り返しミラーMM1、MM2を経てマゼンタの画像を受け持つ感光体ドラム111Mに至る一方、走査レンズ7’、折り返しミラーMY1、MY2を経てイエローの画像を受け持つ感光体ドラム111Yに至るように構成されている。
【0034】ところで、図8に示す実施の形態は、これを画像形成装置に搭載する際の光走査装置の1実施形態となっているが、そのため前述の実施形態と異なり、光ビームの光路を折り曲げる折返しミラーが挿入されている。この折返しミラーは、各色に相当する光ビームに対して本実施の形態では2枚ずつ配設されている。ここで、重要な点は、使用する折返しミラーの枚数を、偶数または奇数で揃えるということ、すなわち、偶数なら偶数で揃え、奇数なら奇数で揃えるということである。各色に対応する走査光学系の折り返しミラーの枚数が、一方では偶数、他方では奇数というように、互いに異なっていると、走査線曲がりの向きが反転してしまい、揃わなくなる。このため色ずれが発生し、画像を劣化させる要因となる。」

カ 「【0036】
次に、第6の実施の形態について説明する。先にも指摘したように、走査線曲がりの要因には走査レンズの反りが挙げられる。走査レンズの反りは、樹脂化された走査レンズを成形する際の冷却時間に反比例して発生することが分かっており、冷却時間を短くするとこの反り量は大きくなる傾向がある。・・・」

(2)上記(1)アないしオ(特にア及びイの請求項5に係る発明に関する記載及びオの第5の実施形態に関する記載)によれば、引用刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「光偏向器を有する光走査装置であって、光源装置から射出された光ビームを被走査面へ導く第1光学素子群と第2光学素子群を有するとともにこれらの光学素子群は上記光偏向器を共有しており、これらの光学素子群の光偏向器よりも後に配置されている光学素子が、光路を曲げるだけの機能を有する折り返しミラーを除き、光偏向器の回転軸に垂直な軸に対してほぼ回転対称に配列されており、光偏向器よりも後に配設される折返しミラーの枚数は、第1光学素子群と第2光学素子群において偶数または奇数に揃えられている対向走査型の光走査装置において、上記光偏向器は回転多面鏡、上記被走査面は感光体ドラムであり、シアン、マゼンタ、イエロー、黒の4色を被走査面上に書き込むために、第1光学素子群と第2光学素子群の各光学素子を2段構成とするとともに、回転多面鏡5を上下2段の偏向反射面を有する構成とし、回転多面鏡5を挟んでその両側に第1、第2の光学素子群を構成する走査レンズ7、7’が配置され、回転多面鏡5の上段の偏向反射面で反射される光ビームは、走査レンズ7、折り返しミラーMC1、MC2を経てシアンの画像を受け持つ感光体ドラム111Cに至る一方、走査レンズ7’、折り返しミラーMB1、MB2を経て黒の画像を受け持つ感光体ドラム111Bに至るように構成され、また、回転多面鏡5の下段の偏向反射面で反射される光ビームは、走査レンズ7、折り返しミラーMM1、MM2を経てマゼンタの画像を受け持つ感光体ドラム111Mに至る一方、走査レンズ7’、折り返しミラーMY1、MY2を経てイエローの画像を受け持つ感光体ドラム111Yに至るように構成されている光走査装置。」

4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明は、シアン、マゼンタ、イエロー、黒の4色を被走査面上に書き込むためにそれぞれに対応する光ビームを感光体ドラムへ導くものであるから、引用発明の「光源装置」が複数の光源を備えることは明らかである。
また、引用発明の「光偏向器」である「回転多面鏡」、「走査レンズ7、7’」及び「折返しミラー」は、それぞれ、本願発明の「偏向器」、「レンズ」及び「光路折返しミラー」に相当する。

(2)引用発明は、「光源装置から射出された光ビームを被走査面へ導く第1光学素子群と第2光学素子群を有するとともにこれらの光学素子群は上記光偏向器を共有」するものであるから、本願発明の「偏向器は各光源に対して共通に設置されて」いるとの構成を備えるものといえる。

(3)引用発明の「光学素子」は「光偏向器の回転軸に垂直な軸に対してほぼ回転対称に配列」されているから、引用発明における、「回転多面鏡5を挟んでその両側」に配置される「第1、第2の光学素子群を構成する走査レンズ7、7’」は、「偏向器の左右両側に副走査方向に反転された状態で配置」されたものといえ、この点において、本願発明の「レンズ」と一致する。

(4)引用発明は、「回転多面鏡5の上段の偏向反射面で反射される光ビームは、走査レンズ7、折り返しミラーMC1、MC2を経てシアンの画像を受け持つ感光体ドラム111Cに至る一方、走査レンズ7’、折り返しミラーMB1、MB2を経て黒の画像を受け持つ感光体ドラム111Bに至るように構成され、また、回転多面鏡5の下段の偏向反射面で反射される光ビームは、走査レンズ7、折り返しミラーMM1、MM2を経てマゼンタの画像を受け持つ感光体ドラム111Mに至る一方、走査レンズ7’、折り返しミラーMY1、MY2を経てイエローの画像を受け持つ感光体ドラム111Yに至るように構成されている」ものであるところ、引用発明の「折返しミラーの枚数」は「第1光学素子群と第2光学素子群において偶数または奇数に揃え」られているから、引用発明は、本願発明の「前記光路折返しミラーの枚数は前記偏向器に対して一方の上側光路及び下側光路かつ他方の上側光路及び下側光路で全て奇数又は偶数である」との構成を備えるものといえる。

(5)以上によれば、本願発明と引用発明とは
「複数の光源と、該光源からのビームを主走査方向に偏向する偏向器と、該偏向器にて偏向されたビームを被走査面上に結像するレンズと、該レンズを透過したビームを被走査面に導くための光路折返しミラーとを備えた光走査装置において、前記偏向器は各光源に対して共通に設置されており、前記レンズは前記偏向器の左右両側に副走査方向に反転された状態で配置され、前記光路折返しミラーの枚数は前記偏向器に対して一方の上側光路及び下側光路かつ他方の上側光路及び下側光路で全て奇数又は偶数である光走査装置」
である点で一致し、
「レンズが、本願発明では、同じ金型によって成形されたものであり、また、少なくとも1面が副走査方向の上側及び下側がそれぞれ下記式(1)

で表わされる面形状を有し、かつ、上側及び下側では式(1)中のCijが異なるのに対して、引用発明ではそのようなものであるか不明である点」(以下、単に「相違点」という。)
で相違するものと認められる。

5 判断
(1)前記3(1)カのとおり、引用刊行物には、「走査レンズの反りは、樹脂化された走査レンズを成形する際の冷却時間に反比例して発生することが分かっており、・・・」との記載があり、走査レンズが樹脂を成形したものであることが示されているものと認められる。してみれば、引用発明において、走査レンズとして「同じ金型によって成形されたもの」を用いて、「光偏向器の回転軸に垂直な軸に対してほぼ回転対称に配列」することは、当業者が当然考慮する程度のことというべきである。

(2)また、引用発明は、「第1光学素子群と第2光学素子群の各光学素子を2段構成とするとともに、回転多面鏡5を上下2段の偏向反射面を有する構成」とし、「回転多面鏡5の上段の偏向反射面で反射される光ビームは、走査レンズ7、折り返しミラーMC1、MC2を経てシアンの画像を受け持つ感光体ドラム111Cに至る一方、走査レンズ7’、折り返しミラーMB1、MB2を経て黒の画像を受け持つ感光体ドラム111Bに至るように構成され、また、回転多面鏡5の下段の偏向反射面で反射される光ビームは、走査レンズ7、折り返しミラーMM1、MM2を経てマゼンタの画像を受け持つ感光体ドラム111Mに至る一方、走査レンズ7’、折り返しミラーMY1、MY2を経てイエローの画像を受け持つ感光体ドラム111Yに至るように構成」されているものであって、走査レンズ7、7’は上下2段構成とされるものと認められる。
そして、走査レンズ7、7’がしかるべき面形状を有するようにすることは、当業者が設計上当然に考慮すべき事項であるところ、走査レンズ7、7’が上下2段構成とされる引用発明においては、上段、下段のそれぞれがしかるべき面形状を有するようにすることは、当業者が設計上当然に考慮すべき事項というべきであって、上段と下段が同じ面形状でなければならない事情はないから、上段と下段が異なる面形状を有するようにすることは、当然想定されることである。

(3)そして、本願発明において、「上側及び下側では式(1)中のCijが異なる」としたことの技術的意義は、レンズの上側と下側とで面形状が異なることを特定するにとどまるところ、上記(2)のとおり、引用発明においても、上段と下段が異なる面形状を有するようにすることは、当然想定されることである。

(4)以上の検討によれば、引用発明において、相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得る程度のことというべきである。

(5)請求人は、審判請求の理由において、「各光路での独立した収差補正が可能で各被走査面上でのボウの湾曲方向を揃えて色ずれを効果的に抑えることができる効果は引用文献1-4からは予測できない顕著なものである」旨主張するが、上記(2)での検討に照らして、引用発明においても、各光路での独立した収差補正は可能といえるし、各被走査面上でのボウの湾曲方向を揃えて色ずれを抑える効果も奏されるものと認められるから、本願発明において、格別顕著な効果が奏されるものとは認められない。
よって、請求人の上記主張は、採用できない。

6 むすび
以上の検討によれば、本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-26 
結審通知日 2013-08-27 
審決日 2013-09-09 
出願番号 特願2005-148193(P2005-148193)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 徹  
特許庁審判長 服部 秀男
特許庁審判官 中田 誠
畑井 順一
発明の名称 光走査装置  
代理人 特許業務法人プロフィック特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ