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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M |
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管理番号 | 1280774 |
審判番号 | 不服2012-25688 |
総通号数 | 168 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-12-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-12-25 |
確定日 | 2013-10-24 |
事件の表示 | 特願2009-501257「通信端末およびその制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 9月 4日国際公開、WO2008/105429〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、2008年2月26日(優先権主張2007年2月27日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成24年9月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年12月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。 第2.補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成24年12月25日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本願発明と補正後の発明 上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の平成24年4月27日付けの手続補正の特許請求の範囲の請求項1に記載された、 「【請求項1】 複数の通信端末との間で通信が可能な通信端末において、 前記複数の通信端末からの画像データを受信する受信部と、 前記受信部により受信した前記複数の通信端末からの画像データを表示する表示部と、 前記表示部に表示した複数の通信端末の画像データのうち、少なくとも1つの画像データがタッチされると、当該タッチされた画像データに対応する前記通信端末を、前記複数の通信端末との間で実行中の通信とは別の通信を行う相手として指定した旨の情報を、前記通信端末に送信するよう制御する制御部と、を備えることを特徴とする通信端末。」 という発明(以下、「本願発明」という。)を、 「【請求項1】 複数の通信端末との間で通信が可能な通信端末において、 前記複数の通信端末からの画像データを受信する受信部と、 前記受信部により受信した前記複数の通信端末からの画像データを表示する表示部と、 前記表示部に表示した複数の通信端末の画像データのうち、通信実行中の少なくとも1つの画像データがタッチされると、当該タッチされた画像データに対応する前記通信端末を、前記複数の通信端末との間で実行中の通信とは別の通信を行う相手として指定した旨の情報を、前記通信端末に送信するよう制御する制御部と、 を備えることを特徴とする通信端末。」 という発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。 2.補正の適否 (1)新規事項の有無、補正の目的要件 上記補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「制御部」に関し、「少なくとも1つの画像データ」に「通信実行中の」との構成を付加して限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び特許法第17条の2第5項(補正の目的)の規定に適合している。 (2)独立特許要件 上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。 [補正後の発明] 上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりである。 [引用発明] 原審の拒絶理由に引用された特開平4-339484号公報(以下、「引用例」という。)には、「遠隔会議装置」として図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、遠隔地にいる者どうしの会議を円滑に行うことができる遠隔会議装置に関するものである。」(2頁1欄) ロ.「【0002】 【従来の技術】図9は従来例におけるネットワークに結合された会議端末装置による遠隔会議装置である。図9において、従来の遠隔会議装置は、たとえば、カメラ90を備えた多地点間に散在する会議端末装置91ないし94をネットワーク95に接続し、各地の会議端末装置91ないし94における会議参加者の映像を同時に表示すると共に、音声を音声切替え装置によって切替えて使用している。そして、各会議端末装置91ないし94に映し出される会議参加者の映像は、たとえば、特開平2-5690号公報に示すように、各端末から送られてくる映像を縮小して切出した画面を合成している。会議中の話者の切替えは、たとえば、特開平2-39763号公報に示すように、会議者の発声パワーの出現確率によるものや、特開平2-44984号公報に示すように、議長の切替えによるもの等がある。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の遠隔会議装置において、会議参加者は、現在どの会議参加者が話をしているのか、特に話者の声を知らない場合、判別が困難であった。また、議長以外の話者が次の話者を指定したいと思っても、指定する方法がなかった。また、次の話者に指定されたとしても、次の話者に指定されたことを理解できない場合がある。さらに、会議中に話者以外の者どうしで話をすることができないため、会議が円滑に進行しなかった。 【0004】本発明は、以上のような問題を解決するためのもので、会議参加者の内の誰が話者であるかを知ると共に、次の話者や秘話の相手を指名したり、あるいは自分が次の話者に指定されていることを知ることもできる遠隔会議装置を提供することを目的とする。」(2頁1欄) ハ.「【0007】 【実施例】図1は本発明の一実施例による遠隔会議装置のブロック構成図である。図2は本発明の一実施例による遠隔会議支援端末装置の会議開始時のディスプレイを示す。図3は本発明の一実施例による遠隔会議支援端末装置の話者を表示したディスプレイを示す。図4は本発明の一実施例による遠隔会議支援端末装置の話者により次話者の選択を行う場合のディスプレイを示す。図5は本発明の一実施例による遠隔会議支援端末装置の話者および次話者を表示したディスプレイを示す。図6は本発明の一実施例による遠隔会議支援端末装置で指名された次話者のディスプレイを示す。図7は本発明の他の実施例による遠隔会議支援端末装置の話者を表示したディスプレイを示す。 【0008】図1において、ネットワーク100には、遠隔会議支援端末装置11-1、11-2・・・11-nが接続されている。遠隔会議支援端末装置11-1は、所定の指示あるいは文字等を入力するマウス112およびキーボード113と、会議参加者の画像およびその他の情報を出力するディスプレイ114と、会議参加者の発言を伝えるマイク115と、遠隔会議支援端末装置11-1における会議参加者の画像を撮るカメラ116と、上記画像および発言による音声を制御すると共に、遠隔会議支援端末装置11-1を制御するCPUを用いた遠隔会議支援端末制御部117と、前記ディスプレイ114を制御する端末表示制御部118とから構成される。また、遠隔会議支援端末制御部117は、上記遠隔会議支援端末装置11-1を制御する他に、会議参加者が発言権を申し込んだ際に発言権を獲得するための処理を行う発言権処理部119と、会議参加者が次話者を指名する際の処理を行う次話者処理部120と、話者以外の者どうしで秘話を行えるような処理を行う秘話機能処理部121とから構成される。そして、前記発言権処理部119、次話者処理部120、および秘話機能処理部121は、その遠隔会議支援端末装置を利用する会議参加者がマウス112、キーボード113、および後述の選択機能ボタン等により話者の指名、発言権の申込み、秘話の申込み等を行った場合、遠隔会議集中制御装置140の話者選択制御部141に対してそれぞれの機能を要求する。たとえば、話者を指名した場合、キーボード113から入力された会議参加者名は、遠隔会議支援端末制御部117の次話者処理部120において、特定の話者を指名したという情報に換えられて話者選択制御部141に送られる。また、発言権の申込みあるいは秘話の申込みは、前記と同様に、遠隔会議支援端末制御部117の発言権処理部119および秘話機能処理部121において処理された情報が話者選択制御部141に送られる。 【0009】各遠隔会議支援端末装置11-1、11-2、・・・、11-nが接続されているネットワーク100には、たとえば、遠隔会議を行うための遠隔会議集中制御装置140が接続されている。そして、遠隔会議集中制御装置140は、遠隔会議支援端末装置11-1、11-2、・・・、11-nから会議参加者の指名または申込みにより、発言権を申し込んだ者、次の話者、あるいは秘話を行う際の話者等を選択する話者選択制御部141と、当該話者選択制御部141で選択された話者に対して所定の表示を行う話者表示制御部142と、会議参加者の画像データあるいは氏名や資料等の文字情報を各会議参加者に送ると共に、会議参加者の音声信号を会議参加者相互に送受信させるように制御する遠隔会議集中制御部143とから構成される。 【0010】たとえば、遠隔会議支援端末装置11-1、11-2、11-3、11-4における各会議参加者AないしDが、ネットワーク100を通して会議を行うものとする。会議参加者AないしDのディスプレイ114には、各遠隔会議支援端末装置11-1、11-2、・・・、11-nのカメラ116によって撮られた会議参加者の画像がたとえば、図2に示すように、表示画面211における参加者表示矩形領域212に表示される。また、会議参加者AないしDは、各遠隔会議支援端末装置11-1、11-2、・・・、11-nの表示画面211における資料等表示領域213に資料を示したり、マウス112あるいはキーボード113で書き込むことにより会議を進めることができる。 【0011】話者選択制御部141は、各遠隔会議支援端末装置から指名もしくは申込みのあった話者の中から予め決められた選択規則にしたがって話者の選択を行う。たとえば、話者を選択して指定する場合に次のような場合がある。すなわち、(1) 会議参加者の一人である議長が優先発言権を持っていて、第1順位で話者として選択されると共に、議長が次話者を指名する指名権を有し、議長の指名に基づき選択する場合。(2) 会議参加者の誰でもが発言権を有し、遠隔会議支援端末装置11-1における発言権処理部119からの申込要求順に話者として、話者選択制御部141が自動的に選択して指定する場合。(3) 発言権処理部119からの申込要求があったにもかかわらず、現在発言中の話者がいて発言できない会議参加者、あるいは会議参加者の何れかの者により指名された次話者は、話者選択制御部141が前記の者を次話者として登録する場合。(4) 現在の話者以外の会議参加者から秘話の申込みがあったとき、選択する場合等がある。また、話者選択制御部141では、上記のような各場合において、常に話者が一人で話せるように管理する。 【0012】話者表示制御部142は、上記話者選択制御部141の選択により、話者が変わる毎に話者選択制御部141から発する選択制御信号を受取り、当該選択制御信号を各遠隔会議支援端末装置11-1、11-2、・・・、11-nの端末表示制御部118に対して、ネットワーク100を通して送付する。当該選択制御信号を受け取った各遠隔会議支援端末装置11-1、11-2、・・・、11-nにおける遠隔会議支援端末制御部117が話者表示制御部142から命令を受け、さらに端末表示制御部118に表示変更等の命令を送る。端末表示制御部118は、この遠隔会議支援端末制御部117の命令にしたがって、たとえば、図3に示すように、ディスプレイ114における会議参加者Bの枠を太く表示する。したがって、各会議参加者AないしDのディスプレイ114には、話者の枠を太く、他の会議参加者の枠を図2に示すままにして表示されているため、各会議参加者A、CおよびDは、話者が会議参加者Bであることを直ぐに知る。 【0013】たとえば、話者Bが会議参加者Cを次の話者に指名したい場合には、遠隔会議支援端末装置11-2のマウス112あるいはキーボード113を使用して、たとえば、図4に示すように、カーソル215を表示画面211上の会議参加者Cに移動する。そして、話者Bがカーソル215の停止した位置で図示されていない実行キーを押すことにより、会議参加者Cを次の話者に指名する。カーソル215によって指名された会議参加者Cの領域は、前記実行キーを押すことにより、会議参加者Cが選択されたことを示す。次話者処理部120は、会議参加者Cを次話者とするよう要求する信号を話者選択制御部141に送付する。話者選択制御部141は、前述の選択規則に従って次話者を決定する。他に、次話者要求がなかった場合には、会議参加者Cを次話者に決定する。その後、話者選択制御部141は、次話者が会議参加者Cに決定したことを話者表示制御部142に知らせる。遠隔会議支援端末制御部117は、前記話者表示制御部142からの命令を受け、さらに端末表示制御部118に対して、現話者Bと異なった形態で会議参加者Cを強調するように命令を送る。たとえば、図4において、次話者Cは、白抜き太線で表示される。同時に、話者選択制御部141は、次話者Cの指名情報をネットワーク100を通して各遠隔会議支援端末装置11-1、11-2、11-4の遠隔会議支援端末制御部117に送る。各遠隔会議支援端末11-1、11-2、11-4の遠隔会議支援端末制御部117は、端末表示制御部118対して、次の話者に予定される会議参加者Cをたとえば、白抜き太線で表示するように命令する。端末表示制御部118の命令にしたがってディスプレイ114には、たとえば、図5に示すように、現話者Bと次に予定する話者Cとが判るように表示される。また、話者表示制御部142は、次話者Cの遠隔会議支援端末装置11-3の端末表示制御部118に対して、次の話者Cとして指定されていることがネットワーク100を通して伝達される。この情報を受け取った遠隔会議支援端末装置11-3における遠隔会議支援端末制御部117は、たとえば、図6に示すように、表示画面211に指名表示領域217を表示するように端末表示制御部118に命令する。当該端末表示制御部118は、その命令にしたがってディスプレイ114に指名表示領域217を表示する。当該指名表示領域217には、たとえば、図6に示すように、「会議参加者Bさんより発言の指名がきています。」が表示される。 【0014】上記以外の他の実施例として、話者が誰であるかを他の会議参加者に判るように話者を拡大表示することができる。たとえば、遠隔会議支援端末装置11-1、11-2、・・・、11-nにおけるディスプレイ114には、図7に示されているように、参加者Bが話者として拡大されて表示される。話者の画像は、話者に太線枠を設けて表示する場合と同様に、遠隔会議支援端末制御部117が話者表示制御部142からの命令を受け、さらに端末表示制御部118に表示変更等の命令を送る。この命令によって、ディスプレイ114は拡大表示される。 【0015】遠隔会議支援端末装置11-1、11-2、・・・、11-nは、会議中発言者が一人であるように通常制御されている。そのため、話者が発言中に発言権を得たい場合、話者の発言中に他の会議参加者と打合せを行いたい場合、あるいは特定の次話者を選択したい場合には、たとえば、表示画面311または遠隔会議支援端末装置11-1、11-2、・・・、11-nの一部に選択機能指示部314を設け、当該選択機能指示部314の発言権ボタン315を押す。発言権を得るための発言権ボタン315を押した場合、ディスプレイ114では、発言権を得たい会議参加者の画像が白黒反転表示されるようにすることも可能である。話者以外の者どうしで、あるいは特定の者だけで話したい場合には、選択機能指示部314における秘話機能ボタン316を押す。秘話機能ボタン316を押すことにより、秘話機能処理部121が秘話要求信号を生成し、話者選択制御部141へ送出する。これを受信した話者選択制御部141では、選択された会議参加者だけをネットワーク100を介して接続するように各遠隔会議支援端末装置11-1、11-2、・・・、11-nの遠隔会議支援端末制御部117に命令する。そして、秘話を行うためにネットワーク100を通して接続されている会議参加者は、他の者に聞かれず会話を交わすことができる。また、上記と同様に次話者を選択したい場合には、選択機能指示部314における次話者選択ボタン317を押して、次話者を選択することができる。」(2頁2欄?4頁6欄) ニ.「【0019】 【発明の効果】本発明によれば、遠隔会議装置の表示装置上に現在の話者、あるいは次に予定する話者を選択して他の会議参加者と区別して表示できると共に、任意に話者を指定したり、あるいは特別な会議参加者どうしで秘話を交わすことができるので、遠隔会議を円滑にする。」(5頁7欄) 上記イ.?ニ.の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、 まず、上記イ.段落【0001】、上記ハ.段落【0008】?【0010】には、「ネットワーク100に接続された複数の遠隔会議支援端末装置11-1?11-nと遠隔会議集中制御装置140とからなり、各遠隔会議支援端末装置11-1?11-nにおける会議参加者が、遠隔会議集中制御装置140を通して会議を行うことができる遠隔会議装置」が開示されている。 また、上記ハ.段落【0009】の「遠隔会議集中制御装置140は、・・・会議参加者の画像データ・・・を各会議参加者に送ると共に、会議参加者の音声信号を会議参加者相互に送受信させるように制御する遠隔会議集中制御部143とから構成される」との記載によれば、前記複数の遠隔会議支援端末装置11-1?11-nには、「前記複数の遠隔会議支援端末装置11-1?11-nからの会議参加者の画像データを受信する受信部」が備えられていることが自明である。 また、上記ハ.段落【0010】、図2には、各遠隔会議支援端末装置11-1?11-nが、「前記複数の遠隔会議支援端末装置11-1?11-nからの会議参加者の画像データを表示するディスプレイ114」を備えることが開示されている。また、前記画像データが「前記受信部により受信した」画像データであることは自明である。 また、上記ハ.段落【0015】には、「秘話機能処理部121は、話者の発言中に、話者以外の者どうしで、あるいは特定の者だけで話したい場合に、ディスプレイ114に表示された秘話機能ボタン316が押されると、遠隔会議集中制御装置140に秘話要求信号を送信し、これを受信した遠隔会議集中制御装置140は、選択された会議参加者だけをネットワーク100を介して接続するように各遠隔会議支援端末装置11-1?11-nの遠隔会議支援端末制御部117に命令する」ことが開示されている。 上記において、秘話を行いたい相手が「表示中の会議参加者の画像データのうち」から選択されることは自明である。 また、上記ハ.段落【0008】、【0013】等の記載に照らすと、秘話を行いたい相手が、話者選択や次話者選択と同様に、「マウス112、キーボード113等を用いて選択される」ことは自明である。 したがって、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。 (引用発明) 「ネットワーク100に接続された複数の遠隔会議支援端末装置11-1?11-nと遠隔会議集中制御装置140とからなり、各遠隔会議支援端末装置11-1?11-nにおける会議参加者が、遠隔会議集中制御装置140を通して会議を行うことができるようにされた遠隔会議装置における各遠隔会議支援端末装置11-1?11-nにおいて、 前記複数の遠隔会議支援端末装置11-1?11-nからの会議参加者の画像データを受信する受信部と、 前記受信部により受信した前記複数の遠隔会議支援端末装置11-1?11-nからの会議参加者の画像データを表示するディスプレイ114と、 話者の発言中に、話者以外の者どうしで、あるいは特定の者だけで話したい場合に、ディスプレイ114に表示された秘話機能ボタン316が押され、表示中の会議参加者の画像データのうち、秘話を行いたい相手がマウス112、キーボード113等を用いて選択されると、遠隔会議集中制御装置140に秘話要求信号を送信する秘話機能処理部121を含む遠隔会議支援端末制御部117と、を備え、 前記秘話要求信号は遠隔会議集中制御装置140に送信され、遠隔会議集中制御装置により、選択された会議参加者だけをネットワーク100を介して接続するように各遠隔会議支援端末装置11-1?11-nの遠隔会議支援端末制御部117に命令するようにされている遠隔会議装置における各遠隔会議支援端末装置11-1?11-n。」 [対比] 補正後の発明と引用発明とを対比する。 まず、引用発明の遠隔会議支援端末装置11-1?11-nは、「各遠隔会議支援端末装置11-1?11-nにおける会議参加者が、遠隔会議集中制御装置140を通して会議を行う」ためのものであるから、補正後の発明の「通信端末」と一致する。 また、引用発明の「受信部」は、「複数の遠隔会議支援端末装置11-1?11-nからの会議参加者の画像データを受信する」ものであるから、補正後の発明の「受信部」と一致する。 また、引用発明の「ディスプレイ114」は、「前記受信部により受信した前記複数の遠隔会議支援端末装置11-1?11-nからの会議参加者の画像データを表示する」ものであるから、補正後の発明の「表示部」と一致する。 また、引用発明の「秘話機能処理部121を含む遠隔会議支援端末制御部117」は、「話者の発言中に、話者以外の者どうしで、あるいは特定の者だけで話したい場合に、ディスプレイ114に表示された秘話機能ボタン316が押され、表示中の会議参加者の画像データのうち、秘話を行いたい相手がマウス112、キーボード113等を用いて選択されると、遠隔会議集中制御装置140に秘話要求信号を送信する」ものである。 上記構成において、「秘話」は、「前記複数の通信端末との間で実行中の通信とは別の通信」といえ、また、送信された秘話要求信号は、遠隔会議集中制御装置140で受信され、遠隔会議集中制御装置140は、「選択された会議参加者だけをネットワーク100を介して接続するように各遠隔会議支援端末装置11-1?11-nの遠隔会議支援端末制御部117に命令」するものであるところ、前記命令に、「前記複数の通信端末との間で実行中の通信とは別の通信を行う相手として指定した旨の情報」が含まれることは自明である。 したがって、引用発明の「秘話機能処理部121を含む遠隔会議支援端末制御部117」は、複数の通信端末との間で実行中の通信とは別の通信を行う相手としての「指定」を、通信実行中の少なくとも1つの「画像データ」を「タッチ」することにより行う点は別として、「前記表示部に表示した複数の通信端末の画像データのうち、通信実行中の少なくとも1つの画像データに対応する前記通信端末を、前記複数の通信端末との間で実行中の通信とは別の通信を行う相手として指定した旨の情報を、前記通信端末に送信するよう制御する」点で、補正後の発明の「制御部」と一致する。 以上によれば、両者は以下の点で一致ないし相違する。 (一致点) 「複数の通信端末との間で通信が可能な通信端末において、 前記複数の通信端末からの画像データを受信する受信部と、 前記受信部により受信した前記複数の通信端末からの画像データを表示する表示部と、 前記表示部に表示した複数の通信端末の画像データのうち、通信実行中の少なくとも1つの画像データに対応する前記通信端末を、前記複数の通信端末との間で実行中の通信とは別の通信を行う相手として指定した旨の情報を、前記通信端末に送信するよう制御する制御部と、 を備える通信端末。」 (相違点) 補正後の発明は、制御部に関し、「前記表示部に表示した複数の通信端末の画像データのうち、通信実行中の少なくとも1つの画像データに対応する前記通信端末を、前記複数の通信端末との間で実行中の通信とは別の通信を行う相手として」の「指定」を、通信実行中の少なくとも1つの「画像データ」を「タッチ」することにより行うのに対して、引用発明は、これをキーボード、マウス等により行う点。 [判断] 相違点について検討する。 例えば、拒絶査定の備考欄に掲示された特開平4-310053号公報(段落【0010】、図4等の記載)、特開昭63-316966号公報(3頁右下欄12行?4頁左上欄3行等の記載)、特開平2-158250号公報(5頁左上欄13行?右上欄17行等の記載)に記載されているように、画像データを送受信する通信装置において、通信相手の指定をタッチパネルに表示された通信相手の画像をタッチすることにより行うことは周知である。 上記周知技術によれば、画像データを送受信する通信装置という点で技術分野、機能、動作を共通にする引用発明において、秘話を行いたい相手をマウス112、キーボード113等を用いて選択することに代え、秘話相手の画像をタッチすることにより選択すること、即ち、相違点のように構成することは、当業者が容易になし得ることである。 よって、補正後の発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.結語 以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項の規定により準用する同法第126条第7項の規定に適合していない。 したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成24年12月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は上記「第2.補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。 2.引用発明 引用発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の[引用発明]で認定したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は上記補正後の発明から本件補正に係る限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成に本件補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「(2)独立特許要件」の項で検討したとおり、引用例に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-08-26 |
結審通知日 | 2013-08-27 |
審決日 | 2013-09-09 |
出願番号 | 特願2009-501257(P2009-501257) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H04M)
P 1 8・ 121- Z (H04M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉村 伊佐雄 |
特許庁審判長 |
藤井 浩 |
特許庁審判官 |
山本 章裕 矢島 伸一 |
発明の名称 | 通信端末およびその制御方法 |
代理人 | 大倉 昭人 |
代理人 | 杉村 憲司 |