• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16H
管理番号 1280778
審判番号 不服2013-1576  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-01-28 
確定日 2013-10-24 
事件の表示 特願2008-227345「ベルトシステムおよびベルトシステムの歯付きベルトとプーリ」拒絶査定不服審判事件〔平成22年3月18日出願公開、特開2010-60068〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成20年9月4日の出願であって、平成24年10月30日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年11月6日)、これに対し、平成25年1月28日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
そして、本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成24年5月23日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「丸歯形の歯部を有する歯付きベルトと、前記歯部が係合するプーリ溝が設けられたプーリとを備えたベルトシステムであって、
前記歯付きベルトが、Sガラスの心線を有し、
前記歯部および前記プーリ溝の輪郭形状が、前記歯部が前記プーリ溝に係合したときに、前記プーリ溝が前記歯部の歯面における歯高さの中心よりも前記歯部の頂点側にある圧縮領域のみを圧縮し、前記プーリ溝におけるプーリ歯先面の端部近傍に設けられた前記輪郭形状の変曲点において前記歯部との間に第1の隙間を設け、前記歯部の頂点とプーリ溝底との間に第2の隙間を設けるように調整されていることを特徴とするベルトシステム。」

第2 刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された特表昭62-500799号公報(以下「刊行物」という。)には、「同期駆動装置およびその製造方法」に関して、図面(特に、図4-6参照。)とともに、次の事項が記載されている。なお、促音は、小文字を用いて表記した。

1 「本発明の1つの特徴は、ベルト歯の歯元における高いせん断応力を軽減し、ランド部分におけるスラッピング現象を抑制する歯付プーリ・歯付ベルト組合せ体を提供することである。」(第2頁右上欄第19?22行)

2 「図面の簡単な説明
第1図は、本発明の同期駆動装置を示す概略図である。
第2図は、第1図の駆動装置の改良ベルトを示す拡大部分透視図である。
第3図は、第2図の線3-3に沿ってみた拡大部分断面図である。
第4図は、第1図に示された装置のプーリの1対の歯の間の溝内に本発明のベルトの歯の1つが最初に進入したところを示す部分概略断面図である。
第5図は、第4図と同様の図であるが、第4図のベルト歯とプーリ歯との間の相対的移動が更に進んだところを示す。
第6図は、第4図と同様の図であるが、第4図のベルト歯が2つのプーリ歯間の溝内に完全に受容されたとした場合のベルト歯の理論的プレストレスを示す。この状態では2つのプーリ歯は、ベルト歯の両側面のランド部分に接触しており、ベルト歯の歯元からは離隔している。
第7図は、第4図と同様の図であるが、本発明の他の実施例を示す。
第8図は、第7図と同様な図であるが、第6図の実施例を示す。」(第2頁右下欄第5?25行)

3 「第4?6図を参照して説明すると、プーリ21(および/または22)は、その周縁に延長した複数の実質的に断面曲線状のプーリ歯24を有しており、各1対の隣り合う歯24と24の間に溝25を画定している。プーリ歯24の長手断面形状は、間に溝25を画定する互いに対面した曲線状側面26,26を画定する。各プーリ歯の側面26は、第4図に示されるように溝25の底部27において隣接するプーリ歯の側面26と結合し、また、頂部において同じプーリ歯の他の側面26と結合してプーリ歯24の、やはり曲線状の外側先端28を画定する。」(第3頁右上欄第8?17行)

4 「本発明のベルト23は、第2,3図に明示されており、抗張体30と、その内側から突出した複数の歯31と、抗張体の外側から延長した裏当部材33とから成っている。」(第3頁右上欄第25行?左下欄第3行)

5 「各ベルト歯31の長手方向の断面形状は、台形であり、それぞれ平坦な底面38および曲線状の歯元39に連接する互いに対向した側面37を画定する。各側面37は、実質的に平坦な、即ち、直線状部分40と円弧状部分41を有する。円弧状部分41は、それぞれ対応する歯31の両側側面37の間に中心43を有する半径42によって画定されている。各ベルト歯31の各円弧状歯元39は、それぞれの側面37の外部に中心45を有する半径44によって画定されている。各ベルト歯31の各側面37の平坦部分40は、対応する円弧状歯元39と円弧状部分41に連接し、円弧状部分41は平坦な底面38に連接している。各側面37の平坦部分40は、当該ベルト歯31の横断中心線48に平行な線47に対し角度46をなしている。
各ベルト歯31の各側面37の円弧部分41は、当該ベルト歯31の歯元39から遠い側にある、ベルト歯31の自由端部分即ちかど部分49の少くとも一部分を画定する。」(第3頁左下欄第18行?右下欄第10行)

6 「ベルト歯31およびプーリ歯24の形状および構成は、それぞれのベルト歯31が第6図に示されるように隣り合うプーリ歯24の間の溝25内に理論的に完全に、そして均一に受容された場合、ベルト歯31の各かど部分49が、隣接するプーリ歯24の側面26と、第6図に鎖線54によって表わされるベルト歯31の常態での輪郭線とによって囲まれた区域53で表わされる量だけ半径方向外方へ、かつ、互いに向って内方へ圧縮されるように選定される。このとき、プーリ歯24の先端28はベルト歯31の各側の隣接するランド部分36に係合し、隣接するプーリ歯24の側面26は、それぞれ、第6図に示された大きな間隙50′によってベルト歯31の歯元39から離隔されるので、この時点では歯元39またはランド部分36に理論的に何等の力または応力も課せられない。
かくして、本発明のベルト23の各ベルト歯31は、その両側のかど部分49を隣接するプーリ歯24の側面26の捕捉作用により半径方向外方へ、かつ、互いに向い合う方向に内方へ圧縮されることによって隣り合うプーリ歯24の間の溝25と協同する。この捕捉作用は、ベルト23の歯元39およびランド部分36がベルト歯31とプーリ歯24との以後の相互作用によって通常の仕事負荷が課せられることにより応力を加えられる前に、ベルト歯31に半径方向ならびに水平方向に予備応力を与える。この予備応力付与作用は、各ベルト歯31の歯元39における高いせん断応力を軽減することによってベルトの寿命を延長するとともに、騒音を減少させ、ランド部分36が歯24の先端28に係合することによってランド部分におけるスラッピング現象(ランド部分が先端28にばたばた打ちつけること)を抑止する。」(第4頁左上欄第16行?右上欄第20行)

7 「先に述べたように、プーリ歯24、および本発明によって実現される独特の態様でプーリ歯と協同するベルト歯21(審決注:「31」の誤記。)の特定の形状は、添付図に示され、以上に説明されたもの以外の形状とすることもできる。」(第4頁左下欄第17?20行)

8 「これに対して、本発明のベルト23Aの各ベルト歯31Aの長手断面形状は、先に述べた米国特許第3,756,091号の第2図に示された形状と実質的に同じであり、第8図に示されるように歯31Aが溝25A内に完全に、かつ、均一に受容され、プーリ歯24Aの先端28Aが歯31Aの両側のランド部分36Aに係合したとき、理論的に、ベルト歯31Aの両側側面37A,37Aの自由端部分49A,49Aが、プーリ歯24Aの側面26Aとベルト歯の常態での輪郭線を表わす鎖線54Aとによって囲まれた区域として表わされる区域53A(第8図)分だけ半径方向外方へ、かつ、互いに向って内方へ圧縮されることになる。ここで第8図から分るように、ベルト歯31Aの歯元39Aは、先に述べた溝25内の歯31の歯元39の場合と同様に、隣接するプーリ歯24Aの側面26Aから完全に離隔している。従って、ベルト23Aおよびプーリ21Aは、先の実施例に関連して説明したのと同じ態様で作動し、予備応力付与作用によりベルトの寿命を延長するとともに、ランド部分のスラッピング現象の抑止により運転音を静穏にする。」(第4頁右下欄第7?24行)

9 FIG.6は、「ベルト歯31が・・・隣り合うプーリ歯24の間の溝25内に理論的に完全に、そして均一に受容された場合」(上記6)を示したもので、「ベルト歯31の各かど部分49が、隣接するプーリ歯24の側面26と、第6図に鎖線54によって表わされるベルト歯31の常態での輪郭線とによって囲まれた区域53で表わされる量だけ半径方向外方へ、かつ、互いに向って内方へ圧縮される」(同)との記載、及び「第6図に示された大きな間隙50′によってベルト歯31の歯元39から離隔されるので、この時点では歯元39またはランド部分36に理論的に何等の力または応力も課せられない。」(同)との記載に照らせば、同図には、ベルト歯31の各かど部49,49のみが、ベルト歯31のランド部36の延長面からベルト歯31の底面までの距離の中心点よりもベルト歯31の底面側で圧縮されることが示されている。
また、同図には、プーリ歯24の溝25の輪郭形状において、「曲線状の外側先端28」(上記3)から「曲線状側面26,26」(同)に至る間に変曲点が存在し、当該変曲点においてベルト歯31との間に間隙50´を設けること、及びベルト歯31の底面と溝25の底部27との間に間隙を設けることがそれぞれ示されている。

10 FIG.7及び8には、上記8の「第8図に・・・ベルト歯の常態での輪郭線を表わす鎖線54A」との記載も参酌すると、ベルト歯31Aが丸歯形であることが示されている。

これらの記載事項及び図面の図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「台形のベルト歯31を有するベルト23と、前記ベルト歯31が係合する溝25が設けられたプーリ21とを備えた歯付プーリ・歯付ベルト組合せ体であって、前記ベルト23が抗張体30を有し、前記ベルト歯31および前記溝25の輪郭形状が、前記ベルト歯31が前記溝25に係合したときに、前記溝25がベルト歯31のランド部36の延長面からベルト歯31の底面までの距離の中心点よりも前記ベルト歯31の底面側にあるかど部分49のみを圧縮し、前記溝25におけるプーリ歯24の先端28の端部近傍に設けられた前記輪郭形状の変曲点において前記ベルト歯31との間に間隙50´を設け、前記ベルト歯31の底面と溝25の底部27との間に間隙を設けるように調整されている歯付プーリ・歯付ベルト組合せ体。」

第3 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「ベルト歯31」は前者の「歯部」に相当し、以下同様に、「ベルト23」は「歯付きベルト」に、「溝25」は「プーリ溝」に、「プーリ21」は「プーリ」に、「歯付プーリ・歯付ベルト組合せ体」は「ベルトシステム」に、「抗張体30」は「心線」に、「ベルト歯31の底面」は「歯部の頂点」に、「ベルト歯31のランド部36の延長面からベルト歯31の底面までの距離の中心点」は本願明細書の段落【0019】の「圧縮領域20Cは、歯底面24の延長面24Sから頂点20Pまでの距離である歯高さ20Hの中心点Cよりも頂点20P側に設けられている。」との記載からみて「歯部の歯面における歯高さの中心」に、「かど部分49」は「圧縮領域」に、「プーリ歯24の先端28」は「プーリ歯先面」に、「間隙50´」は「第1の隙間」に、「溝25の底部27」は「プーリ溝底」に、「間隙」は「第2の隙間」に、それぞれ相当する。

したがって、両者は、
「歯部を有する歯付きベルトと、前記歯部が係合するプーリ溝が設けられたプーリとを備えたベルトシステムであって、前記歯付きベルトが心線を有し、前記歯部および前記プーリ溝の輪郭形状が、前記歯部が前記プーリ溝に係合したときに、前記プーリ溝が前記歯部の歯面における歯高さの中心よりも前記歯部の頂点側にある圧縮領域のみを圧縮し、前記プーリ溝におけるプーリ歯先面の端部近傍に設けられた前記輪郭形状の変曲点において前記歯部との間に第1の隙間を設け、前記歯部の頂点とプーリ溝底との間に第2の隙間を設けるように調整されているベルトシステム」
である点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
本願発明は、歯付きベルトの歯部が「丸歯形」であるのに対し、引用発明は、ベルト23のベルト歯31が「台形」である点。

〔相違点2〕
本願発明は、心線が「Sガラス」であるのに対し、引用発明は、抗張体30がどのような材料から構成されるのか具体的に特定されていない点。

第4 当審の判断
そこで、各相違点について検討する。
1 相違点1について
刊行物のFIG.7及び8には、別の実施例として、丸歯形のベルト歯31Aを有するベルト23Aが記載されている。
また,刊行物の第4頁左下欄第17?20行には「先に述べたように、プーリ歯24、および本発明によって実現される独特の態様でプーリ歯と協同するベルト歯21の特定の形状は、添付図に示され、以上に説明されたもの以外の形状とすることもできる。」と記載されており、ベルト歯の形状が適宜変更可能であることを示唆している。
そうしてみると、引用発明において、ベルト歯31の形状を、刊行物に記載された別の実施例のベルト歯31Aに倣って、丸歯形とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

2 相違点2について
ベルトシステムに用いる歯付きベルトにおいて、心線として、高強度ガラス繊維の1つであるSガラスからなるものを用いることは、例えば、特開2000-9186号公報の段落【0007】及び段落【0014】、特開2001-349382号公報の段落【0022】ないし段落【0026】、特開平7-138879号公報の段落【0023】等に記載されているように、従来周知の技術である。
そして、歯付きベルトに用いる心線の種類は、ベルトシステムの負荷や寿命等を考慮して、当業者が適宜選択する設計的事項である。
引用発明は、「各ベルト歯31の歯元59における高いせん断応力を軽減することによってベルトの寿命を延長するとともに、騒音を減少させ、ランド部分36が歯24の先端28に係合することによってランド部分におけるスラッピング現象(ランド部分が先端28にばたばた打ちつけること)を抑止する」(前記「第2 刊行物」の「6」)もので、ベルトの寿命の延長を目的としているから、引用発明において、前記周知技術を適用して、心線をSガラスからなるものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

3 効果について
本願発明が奏する効果は、引用発明及び前記周知技術から、当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものでない。

審判請求人は、「本願発明は、プーリ溝42と歯部20の噛み合いにおいて、プーリ溝42が圧縮領域のみを圧縮して圧縮領域20Cを保持するので、プーリ溝42と歯部20の正しい噛み合い状態が維持され、この作用はSガラスの心線によって伸びを抑えられたベルトによって、より顕著になります。このようなプーリ溝歯部の組み合わせにより、特に低負荷時に騒音レベルを低下させる」ことができる旨(審判請求書の「(3)本願発明と引用発明の対比」の欄)主張する。
しかしながら、本願明細書及び図6に記載された騒音比較試験の結果において、心線がEガラスの実施例Aと心線がSガラスの実施例Bとを比較すると、トルクが0N・m、49N・m、147N・mのときに、審判請求人が述べるように、実施例Bの方が実施例Aよりも騒音レベルは低くなるものの、98N・mのときには、実施例Bの方が実施例Aよりも騒音レベルは高くなり、同様のことが実施例Aと実施例Dの間でも生じており、これらからすると、心線をSガラスとすることは、騒音低下を実現するための最適化ないし好適化であって、格別の効果を生じたとはいえないから、審判請求人の主張は採用できない。

4 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び前記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
本願発明は、引用発明及び前記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-20 
結審通知日 2013-08-27 
審決日 2013-09-09 
出願番号 特願2008-227345(P2008-227345)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 広瀬 功次  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 島田 信一
森川 元嗣
発明の名称 ベルトシステムおよびベルトシステムの歯付きベルトとプーリ  
代理人 小倉 洋樹  
代理人 松浦 孝  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ