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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E04H |
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管理番号 | 1280789 |
審判番号 | 不服2011-28340 |
総通号数 | 168 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-12-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-12-14 |
確定日 | 2013-10-21 |
事件の表示 | 特願2005-274664号「免震土台」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 6月21日出願公開、特開2007-154408号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成17年8月24日(優先日、平成17年7月14日)の出願であって、平成23年9月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年12月15日に審判請求がなされ、当審において平成25年3月29日付けで拒絶理由を通知したところ、平成25年6月6日付けで意見書が提出されたものである。 第2 本願発明について 1.本願発明 本件出願の請求項1?2に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 木造住宅、基礎コンクリートから土台の振動(左右上下)和らげる免震土台」 2.引用刊行物とその記載事項 (1)当審における平成25年3月29日付けで通知した拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2001-182363号公報(以下「刊行物1」という。)には、木造建築物における基礎用自在アンカーボルト及び免震土台ベースに関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。 (ア)「【請求項1】木造建築物における基礎と土台の間にゴム層と単体又は複数個からなるベアリングキャスターと円弧状の窪みを設けた鋼製プレートからなる免震装置の土台ベース。 【請求項2】木造建築物における基礎と土台の間に介在し、変動自在の移動を可能とする凸半球状の支点を持ち、土台挿通に伴う土台欠損カバー及び、ゴム層付座金を付属とした免震構造の自在アンカーボルト。」 (イ)「【0018】図1は、請求項1による免震構造の土台ベースを、一般木造住宅を実施例とした場合の構成を示す図である。図1-(ロ)に示すように、本発明の土台ベースは、基礎(200)と土台(100)の間に介在し、基礎側にゴム層(1b)を敷設し、複数個からなる小径ボール(2)を滑合させた大径ボール(3)を1つのベアリングキャスターとし、それら複数個からなる配置とした鋼製プレート(5)をゴム層(1b)を通して基礎(200)に固定するものとする。又、各ベアリングキャスターの大径ボール(3)上端部中心に滑接する形状で、円弧状の窪みを設けた鋼製プレート(4)と、ゴム層(1a)を土台(100)に固定するものとする。かつ、土台(100)側の円弧状の窪みを設けた鋼製プレート(4)では、窪みの外周部の傾斜角度を大きくすることとし、下面にくる大径ボール(3)の外れを防止するストッパーとなる形状とする。」 (ウ)「【0024】図3は、請求項2による自在アンカーボルトの構成を示す図である。・・・ 【0025】本発明による自在アンカーボルトの実施例を、図3で示すように、一般木造住宅とする場合において説明すると、基礎内にL字型ボルト(6)を持ち、基礎(200)と土台(100)の間に介在する凸半球状鋼製カバー(7)を有し、鋼製カバー(7)とL字型ボルト(6)は、螺子込み式による緊結とする。又、鋼製カバー(7)内に、空隙を設け、同形状である凸半球状の振り子支点を狭着させ、鋼製カバー(7)上部に開口を設け、凸半球状の振り子支点から延びたI字型ボルト(8)が、変動自在な移動可能なものとし、又、挿通する土台内を円筒状に欠き、土台欠損部に、円筒型で内部を円錐状の形状とした、土台欠損カバー(9)を狭持するものとし、土台上の、緊結箇所には、土台側からゴム層(10)、鋼製座金(11)、ワッシャー(12)、ナット(13)の順で設置した部品で、ボルト締めとする構成とする。」 (エ)「【0026】図4は、本発明の応用例で有り、請求項1記載の発明である土台ベースの構成を複数個からなるベアリングキャスターを備えた場合とし、かつ請求項2の自在アンカーボルトを併用した場合における図である。請求項1の、土台ベースの中心部基礎側におけるベアリングキャスター位置を除いた鋼製プレート(5)とゴム層(1b)及び土台(100)側の円弧状鋼製プレート(4)とゴム層(1a)に開口を設け、基礎内(200)より設置した自在アンカーボルトを挿通させ、土台上にて緊結するものとする。この併用例は、一般木造住宅における柱近くのアンカーボルト地点に設置することで、基礎と土台の引き抜き及び、本発明の土台ベースの変動自在な移動に対応するものとする。」 (オ)「【0032】請求項1記載の発明と請求項2記載の発明を併用した場合、建築物を一体とした形で許容範囲における360度の変動自在な水平移動が可能になり、かつ、基礎内のL字型ボルトと、凸半球状の支点を狭持したカバーを螺子込み式にすることにより、基礎と土台を絶縁する形状としながらも、十分に緊結することが出来、かつ、地盤からの振動・衝撃が土台を通して建築物へと伝わるのを防ぐことを可能とする。」 すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているということができる。 「木造建築物における基礎と土台の間にゴム層と単体又は複数個からなるベアリングキャスターと円弧状の窪みを設けた鋼製プレートからなる免震装置の土台ベースと、 木造建築物における基礎と土台の間に介在し、変動自在の移動を可能とする凸半球状の支点を持ち、土台挿通に伴う土台欠損カバー及び、ゴム層付座金を付属とした免震構造の自在アンカーボルトとを併用した、 一般木造住宅の、地盤からの振動・衝撃が土台を通して建築物へと伝わるのを防ぐことを可能とする構成」 (2)当審における平成25年3月29日付けで通知した拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2002-129772号公報(以下「刊行物2」という。)には、家屋の免震一段、二段及び三段構造に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。 (ア)「【0025】 【実施例】本発明による家屋の免震第一及び第二構造は、図11の如く地面GLを地盤Bとして施工し、基礎台Dを地面GLより上側に設ける場合、基礎台Dの外縁部に地面GLまで達するスカート9を備え、柔軟性を有するゴム片や布片等のスカート9により露出部を目隠し、或いは小動物の浸入防止等を図ることが望ましい。また地面GLに図12の如く根切り部Fを設け、地面GLより下側に地盤Bを形成し、該地盤Bに施工する場合、根切り部Fを基礎台Dより一回り小さく設け、基礎台Dの外側部の下方まで設ければ、根切り部Fへの転落を防ぐことができる。 【0026】基礎台Dの材料として、加重が局部的に加わっても損傷しない素材、例えば高い剛性を持った鉄骨等を用いるが、鉄骨以外にコンクリートや木材等を用いることも可能である。免震機能部1を構成する下支持体2と上支持体3と球体4の材料として、少なくとも基礎台Dと、基礎台Dに構築する建物Eの荷重に絶え得るに十分な強度を有する素材、例えば高い剛性を持った金属を主に用いるが、硬質のゴムや合成樹脂を用いると、地震の縦揺れに対し緩衝力を発揮し得る利点がある。」 (3)当審における平成25年3月29日付けで通知した拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特許第3425586号公報(以下「刊行物3」という。)には、物体免震装置に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。 (ア)「【0009】 【作用】前記のように構成される本発明の物体免震装置は以下に述べる作用を奏する。物体を据え付ける対応位置における基盤へ支承体を据え付け、この支承体の受圧部へ球体を介して基体の伝圧部をその自重により当接させてあるもので、これら基体と支承体とは球体の介在により分離されている。 【0010】そして、前記基体上へ物体を取り付けた状態において、地震が発生すると、基盤の横ゆれは物体の支承体を横移動させるが、該支承体の運動は、基体と支承体とに介在させた球体が、伝圧部と受圧部との間を容易に転動して、上部の基体を静止状態に保持させるので、地震の横揺れ振動は伝達されない。 【0011】また、地震の縦揺れに対しては物体の支承体を縦移動させるが、該支承体の運動は、基体と支承体とに介在させた弾性の球体が伝圧部と受圧部との間において圧縮されて、上部の基体を静止状態に保持させるので、地震の縦揺れ振動は伝達されないものであって、しかも、係止手段の係合により物体の転倒もない。」 3.本願発明と引用発明との対比 (1)両発明の対応関係 (a)引用発明の「一般木造住宅」は、本願発明の「木造住宅」に相当する。 (b)引用発明の「一般木造住宅の、地盤からの振動・衝撃が土台を通して建築物へと伝わるのを防ぐことを可能とする構成」は、本願発明の「免震土台」に相当する。 (c)引用発明の「基礎」と、本願発明の「基礎コンクリート」とは、「基礎」である点で共通する。 そして、引用発明の「地盤からの振動・衝撃が土台を通して建築物へと伝わるのを防ぐこと」と、本願発明の「基礎コンクリートから土台の振動(左右上下)和らげる」とは、「基礎から土台の振動和らげる」点で共通する。 (2)両発明の一致点 「木造住宅、基礎から土台の振動和らげる免震土台」 (3)両発明の相違点 ア.基礎が、本願発明は「コンクリート」なのに対して、引用発明は不明な点。 イ.和らげる振動が、本願発明は「左右上下」なのに対して、引用発明はそうでない点。 4.本願発明の容易推考性の検討 (1)相違点ア.について 木造住宅の基礎をコンクリート製とすることは、周知慣用技術であり、引用発明の基礎を、周知慣用のコンクリート製のものとして相違点ア.に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (2)相違点イ.について 引用発明のベアリングキャスターの様な球体(引用発明の実施例では、大径ボール(3)。本願実施例では「ゴルフボール」に対応するもの。)を用いる免震構造において、球体として弾性のあるものを使用して縦揺れ(すなわち「上下」の振動)も和らげるものとすることは、例えば、刊行物2,3に記載されている様に周知技術であり、引用発明の一般木造住宅においても、縦揺れも和らげることは望ましいことといえるので、引用発明のベアリングキャスターを、弾性のある球体を用いたものとして相違点イ.に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (3)本願発明の作用効果は、引用発明、刊行物2?3に記載された事項、及び、周知技術から当業者であれば予測できた範囲のものである。 すると、本願発明は、引用発明、刊行物2?3に記載された事項、及び、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということができる。 5.予備的判断 本願特許請求の範囲には、「ゴルフボール」等は記載されておらず、その様な記載されていない事項を「発明を特定する」事項と認定することは出来ないが、請求人は意見書等でゴルフボールに係る主張を行っていたので、免震土台にゴルフボールを使用することについても、当審における平成25年3月29日付けで通知した拒絶の理由に予備的判断を記載した。 そして、平成25年6月6日付け意見書を参酌しても、当該予備的判断についても変更する必要は認められなかった。 すなわち、例えば、当審における平成25年3月29日付けで通知した拒絶の理由に引用され、先の拒絶理由通知で引用されていた特開2000-45567号公報の【0006】にも「ボールは、・・・ボールの必要強度を満たすようにボールの直径や材質は決められればよく、特に限定されるものではない。・・・材質は、ボールに加わる荷重に十分耐えられるものであればいかなるものであっても良い・・」と記載されている様に、適宜の形状や材料を選択することは、発明を具現化するにあたり、当業者が通常的に行う設計行為である。 そして、上記刊行物2,3には免震構造において、球体として弾性のあるものを使用する技術が記載されている以上、そのような特性を有するものとして、既存のゴルフボールを使用することも当業者が容易に想到し得たことといえる。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-08-06 |
結審通知日 | 2013-08-13 |
審決日 | 2013-08-29 |
出願番号 | 特願2005-274664(P2005-274664) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(E04H)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 渋谷 知子 |
特許庁審判長 |
中川 真一 |
特許庁審判官 |
住田 秀弘 高橋 三成 |
発明の名称 | 免震土台 |