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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1280799
審判番号 不服2012-15018  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-08-03 
確定日 2013-10-21 
事件の表示 特願2009-509739「布地処理剤の分配包装容器」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月15日国際公開、WO2007/130568、平成21年10月 1日国内公表、特表2009-535274〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、平成19年5月4日(優先権主張、2006年5月5日アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成23年6月15日付けで拒絶理由が通知され、平成23年11月10日に手続補正がなされたが、平成24年3月27日付けで拒絶をすべき旨の査定がされた。
これに対し、平成24年8月3日に本件審判の請求とともに手続補正(以下「本件補正」という。)がなされ、当審において平成24年11月21日付けで審尋がなされ、平成25年3月7日に回答書が提出され、平成25年4月19日に面接が行われ、平成25年5月9日に上申書が提出されたものである。

第2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲について補正をするものであって、特許請求の範囲の請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示す、以下のとおりである。

(1)補正前
「流動性組成物のための底部分配包装容器であって、
(a)底部端部及び該底部端部にある開口部を有する、流動性組成物を貯蔵するための変形可能容器であって、前記底部端部の前記開口部が、バルブを備え、該バルブは、通常の重力下での前記流動性組成物の圧力よりも大きい圧力を受けた場合にのみ、前記流動性組成物の開口部通過を可能にする、変形可能容器と、
(b)前記変形可能容器の前記底部端部に着脱可能に付設され、前記底部端部の少なくとも前記開口部を覆う分配用キャップとを備え、
前記流動性組成物は布地処理組成物であり、
前記変形可能容器の少なくとも一部分は透明又は半透明である、底部分配包装容器。」

(2)補正後
「流動性組成物のための底部分配包装容器であって、
(a)底部端部及び該底部端部にある開口部を有する、流動性組成物を貯蔵するための変形可能容器であって、前記底部端部の前記開口部が、バルブを備え、該バルブは、通常の重力下での前記流動性組成物の圧力よりも大きい圧力を受けた場合にのみ、前記流動性組成物の開口部通過を可能にする、変形可能容器と、
(b)前記変形可能容器の前記底部端部に着脱可能に付設され、前記底部端部の少なくとも前記開口部を覆う分配用キャップとを備え、
前記流動性組成物は布地処理組成物であり、
前記変形可能容器の少なくとも一部分は透明又は半透明であり、
前記分配用キャップが、前記底部端部の前記開口部と流体連通する閉鎖可能な排出口を更に備え、
前記分配用キャップが、前記流動性組成物の供給を前記変形可能容器から受け取るように作られている、底部分配包装容器。」

2.補正の適否
本件補正の特許請求の範囲の請求項1についての補正は、「分配用キャップ」について、「底部端部の前記開口部と流体連通する閉鎖可能な排出口を更に備え」、「流動性組成物の供給を前記変形可能容器から受け取るように作られている」と限定するものであり、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か(いわゆる独立特許要件)について検討する。

(1)補正発明
補正発明は、本件補正により補正された明細書、特許請求の範囲、及び図面の記載からみて、上記1.(2)のとおりのものと認める。

(2)刊行物に記載された発明
ア.刊行物1
これに対し、原査定の拒絶理由で引用され、本件優先日前に頒布された刊行物である米国特許第5655687号明細書(以下「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。かっこ内は仮訳である。

(第1欄第46?56行)
「The present invention relates to an inverted dispensing container for selectively dispensing flowable material, such as shampoo and soap for use. The dispensing container is an elongated flexible container having an inner cavity for storing content which is to be dispensed from the container. The container includes a dispensing valve at an opening of the container. The valve is open when the container is squeezed to release material or contents from the inner cavity. The valve remains closed until the container is squeezed to restrict the flow of the material from the container.」
(本発明は、シャンプー、石鹸として使用されるような流動性材料を、選択的に分配するための反転分配容器に関するものである。分配容器は、容器から分配されることになる内容物を保管するための内腔を有する細長い可撓性の容器である。容器は、容器の開口部に分配用バルブを備えている。容器が内腔から材料又は内容物を放出するように絞られたときにバルブが開いている。容器は、容器からの材料の流れを制限するように圧搾されるまで、弁は閉じたままである。)

(第3欄第49?53行)
「FIG. 4 is a cross sectional view of the travel cap 12. The travel cap 12 is formed of a cup-shaped member having a circular face 58, a cylindrical wall 60, and a rim 62.」
(図4は、旅行キャップ12の断面図である。旅行キャップ12は、円形面58、円筒壁60と、リム62を有するカップ状部材で形成されている。)

(第4欄第41?44行)
「The base cap 20 is screwed to the bottle 16 to form the dispensing container 10 via cooperation of the threaded receptacle 34 of the base cap 20 and the threaded neck 86 of the bottle 16.」
(ベースキャップ20は、ボトル16のねじ首86とベースキャップ20のねじ付き容器34の協働を介して分配容器10を形成するために、ボトル16にねじ込まれる。)

(第5欄第9?10行)
「FIG. 6 illustrates the travel cap 12 attached to the base cap 20 to seal the container 10 for transport.」
(図6は、輸送のための容器10を密閉するために、ベースキャップ20に取り付けられた旅行キャップ12を示す。)

(Fig.5、6)
ボトル16が、底部端部に開口部を有し、開口部が分配用バルブ18を備えていること、旅行キャップ12は、ベースキャップ20に着脱可能に取り付けられ、開口部を覆っていること。

これらの記載事項を、図面を参照しつつ、技術常識を考慮しながら補正発明に照らして整理すると、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認める。

「流動性材料のための反転分配容器であって、
(a)底部端部及び該底部端部にある開口部を有する、流動性材料を保管するための可撓性の容器であって、前記底部端部の前記開口部が、分配用バルブ18を備え、該分配用バルブ18は、圧搾されるまで閉じたままであり、内腔から内容物を放出するように絞られたときに開く、可撓性の容器と、
(b)前記可撓性の容器の前記底部端部に、ベースキャップ20を介して着脱可能に付設され、前記底部端部の前記開口部を覆う旅行キャップ12とを備える、
反転分配容器。」

(3)対比
補正発明と刊行物1発明とを対比する。
刊行物1発明の「流動性材料」は、補正発明の「流動性組成物」に相当し、同様に、「反転分配容器」は「底部分配包装容器」に、「保管」は「貯蔵」に、「可撓性の容器」は「変形可能容器」に、「分配用バルブ18」は「バルブ」に、「旅行キャップ12」は「分配用キャップ」に、それぞれ相当する。
刊行物1発明のバルブの「圧搾されるまで閉じたままであり、内腔から内容物を放出するように絞られたときに開く」ことは、補正発明のバルブの「通常の重力下での前記流動性組成物の圧力よりも大きい圧力を受けた場合にのみ、前記流動性組成物の開口部通過を可能にする」ことに相当する。
刊行物1発明の分配用キャップが「ベースキャップ20を介して着脱可能に付設され」ることと、補正発明の分配用キャップが「着脱可能に付設され」ることとは「直接又は間接的に着脱可能に付設され」ることに相当する。

したがって、補正発明と刊行物1発明とは、次の点で一致している。
「流動性組成物のための底部分配包装容器であって、
(a)底部端部及び該底部端部にある開口部を有する、流動性組成物を貯蔵するための変形可能容器であって、前記底部端部の前記開口部が、バルブを備え、該バルブは、通常の重力下での前記流動性組成物の圧力よりも大きい圧力を受けた場合にのみ、前記流動性組成物の開口部通過を可能にする、変形可能容器と、
(b)前記変形可能容器の前記底部端部に直接又は間接的に着脱可能に付設され、前記底部端部の少なくとも前記開口部を覆う分配用キャップとを備えている、底部分配包装容器。」

そして、補正発明と刊行物1発明とは、以下の点で相違している。
相違点1:分配用キャップについて、補正発明では、「着脱可能に付設され」るが、刊行物1発明では、「ベースキャップ20を介して着脱可能に付設され」る点。
相違点2:流動性組成物について、補正発明では「布地処理組成物」であるが、刊行物1発明では明らかでない点。
相違点3:変形可能容器について、補正発明では「少なくとも一部分は透明又は半透明」であるが、刊行物1発明では明らかでない点。
相違点4:分配用キャップについて、補正発明では「底部端部の前記開口部と流体連通する閉鎖可能な排出口を更に備え」、「流動性組成物の供給を前記変形可能容器から受け取るように作られている」が、刊行物1発明では明らかでない点。

(4)相違点の検討
相違点1について検討する。
キャップを、変形可能容器の端部に、直接、着脱可能に付設するものは、審尋で引用した実願昭62-106238号(実開昭64-11913号)のマイクロフイルムの第1図、第3図、同じく特開2006-176142号公報の図3にみられるごとく周知である。
そして、かかる周知技術により、部材点数が減るから、この点は、当業者が必要に応じて適宜なし得るものである。

相違点2について検討する。
流動性組成物として「布地処理組成物」それ自体は、原審の拒絶理由で引用した特開平8-217078号公報の段落0003、審尋で引用した実願昭62-106238号(実開昭64-11913号)のマイクロフイルムの第1ページ第18?20行にみられるごとく周知である。
収容される流動性組成物をいずれとするかは、当業者が適宜選択し得る事項であるので、刊行物1発明の容器に収容される流動性組成物を「布地処理組成物」にすることに、困難性は認められない。

相違点3について検討する。
圧縮可能な容器の胴部を透明にすることは、周知である(例えば、原審の拒絶理由で引用した独国特許出願公開第102004045062号明細書、審尋で引用した実願昭62-106238号(実開昭64-011913号)のマイクロフィルムの第1ページ第18?20行、同じく特開2006-176142号公報の段落0015を参照)。
そして、かかる周知技術により、内容物の確認が容易となるから、刊行物1発明の容器を透明にすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得るものである。

相違点4について検討する。
流動性組成物の供給において、キャップに一定量の内容物を移した後に、キャップの排出口からその内容物を排出することは、周知である(例えば、審尋で引用した実公昭40-001832号公報の容器B、特開平9-301404号公報の計量室Bを参照)。また、日常生活においても実感するところである。
したがって、刊行物1発明の分配用キャップを、容器の開口部と流体連通する閉鎖可能な排出口を備えて、流動性組成物の供給を容器から受け取るようにすることは、当業者が容易になし得るものである。

さらに、これら相違点を総合しても、格別な技術的意義が生じるとは認められない。

以上のことから、補正発明は、刊行物1発明、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。

なお、請求人は、回答書、上申書において、補正案を示している。しかし、補正案には法的根拠はない。しかも、補正案で限定する「2モードバルブ」は、刊行物1に記載されており、また、「容器を片手で掴む」点、容器とキャップの上下関係についても、周知の使用態様にすぎない。

3.むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項に係る発明は、平成23年11月10日に補正された明細書、特許請求の範囲、図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2.1.(1)に示す請求項1に記載されたとおりである。

2.刊行物等
これに対して、原査定の拒絶理由に引用された刊行物及びその記載内容は、上記第2.2.(2)に示したとおりである。

3.対比・検討
本願発明は、上記第2.2.で検討した補正発明において、付加された限定事項を削除するものである。
そうすると、本願発明を構成する事項の全てを含み、さらに他の事項を付加する補正発明が、上記第2.2.(4)で示したとおり、刊行物1発明、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないことから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-27 
結審通知日 2013-05-28 
審決日 2013-06-10 
出願番号 特願2009-509739(P2009-509739)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B65D)
P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 尾形 元  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 紀本 孝
熊倉 強
発明の名称 布地処理剤の分配包装容器  
代理人 磯貝 克臣  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 森 秀行  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 岡田 淳平  
代理人 永井 浩之  

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