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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01F
管理番号 1280923
審判番号 不服2012-3672  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-02-27 
確定日 2013-10-31 
事件の表示 特願2007-553884「受電装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 7月19日国際公開、WO2007/080820〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【第1】経緯(手続・査定)

[1]手続の概要
本願は、平成19年1月9日(優先権主張、平成18年1月12日、日本国)を国際出願日とする出願であって、手続の概要は以下のとおりである。

拒絶理由通知 :平成23年 7月25日(起案日)
意見書 :平成23年 9月28日
手続補正 :平成23年 9月28日
拒絶査定 :平成23年11月25日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成24年 2月27日
手続補正 :平成24年 2月27日
前置報告 :平成24年 5月 1日
審尋 :平成24年 8月 2日
回答書 :平成24年10月 5日
当審拒絶理由通知 :平成25年 5月22日(起案日)
意見書 :平成25年 7月17日
手続補正 :平成25年 7月17日

[2]査定

原査定の理由は、概略、以下のとおりである。

〈査定の理由〉
本願の各請求項に係る発明は、下記刊行物(引用文献)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

引用文献1.特開平08-079976号公報
引用文献2.特開平11-176677号公報
引用文献3.特開2003-257751号公報
引用文献4.米国特許第6324431号明細書
引用文献5.実願昭51-063771号(実開昭52-153035号)のマイクロフィルム
引用文献6.特開平11-031614号公報
引用文献7.特開平06-163273号公報

【第2】本願発明

本願の請求項1から請求項6までに係る発明は、本願特許請求の範囲,明細書および図面(平成23年9月28日付け、平成24年2月27日付け、及び平成25年7月17日付けの各手続補正書により補正された特許請求の範囲,明細書および図面)の記載からみて、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1から請求項6までに記載したとおりのものであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(本願発明ともいう)は、下記のとおりである。

記(本願発明(【請求項1】))
スパイラルコイルを有する受電コイルと、
前記受電コイルに発生した交流電圧を整流する整流器と、
前記整流器で整流された直流電圧が充電される二次電池と、
前記スパイラルコイルと前記二次電池との間、および前記スパイラルコイルと前記整流器との間の少なくとも1箇所に配置され、厚さが5?50μmの範囲の磁性箔体とを具備し、
前記磁性箔体は、厚さ10?25μmのCo系アモルファス合金薄帯を1?3枚有するもの、厚さ10?25μmのFe基微結晶合金薄帯を1?3枚有するもの、のいずれか1種であることを特徴とする受電装置。

【第3】当審の拒絶の理由の通知

当審が平成25年5月22日付けで通知した拒絶の理由の概略は、以下のとおりである。

〈理由A〉
本件出願の請求項1,2,4?6に係る発明(「本件発明」という)は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物1?5に記載された発明(主引用発明は刊行物1又は2記載の発明)に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記(刊行物)
1.特開平8-79976号公報
2.特開平9-190938号公報
3.特開平7-283046号公報(特に段落【0023】?【0027】,実施例1,2)
4.特開2003-257751号公報(特に段落【0020】?【0033】)
5.特開平6-163273号公報(特に段落【0014】,【0018】,【0021】)

〈理由B〉
請求項1の「樹脂フィルム上にFe-Co系磁性合金薄膜を設けた磁性シートを1枚有するもの」は、発明の詳細な説明(段落【0060】)に記載されたものを遙かに超える範囲のものを含んでおり、発明の詳細な説明に記載したもの、とはいえない。

【第4】当審の判断

[1]刊行物の記載

刊行物1:特開平8-79976号公報
当審の拒絶の理由(理由A)において引用した上記刊行物1には、以下の記載(下線は、注目箇所を示すために当審で施したものである。)が認められる。

〈特許請求の範囲〉
(K1)「【請求項1】 充電部と被充電部とを分離して構成し、
前記充電部には、コイルとコンデンサの並列共振回路を含む発振回路を備え、
前記被充電部には、充電時に前記発振回路のコイルと電磁結合して電圧を誘起させるためのコイルと、該コイルに誘起した電圧により充電可能な2次電池を備えた非接触型充電器において、
前記被充電部のコイルと並列にコンデンサを接続して並列共振回路を構成したことを特徴とする非接触型充電器。
【請求項2】 前記被充電部において、
並列共振回路を構成するコイルと2次電池との間に、充電部で発生した電磁界の遮蔽を行うための電磁遮蔽板を配置したことを特徴とする請求項1記載の非接触型充電器。」

〈産業上の利用分野〉
(K2)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電動シェーバー(電動ひげそり器)、コードレス電話機、電動歯ブラシ、ラップトップ型パソコンなど、充電可能な2次電池を電源として使用する各種の電気機器、或いは電子機器等に利用される非接触型充電器に関する。
【0002】特に本発明は、2次電池を有する被充電部を、充電用の発振回路を有する充電部に対して非接触で充電できるようにした非接触型充電器に関する。」

〈課題、目的〉
(K3)「【0009】
【発明が解決しようとする課題】前記のような従来のものにおいては、次のような課題があった。(以下略)
【0010】・・・スタンド1のハウジングを構成する樹脂部分の厚みがあり、その分だけ、1次、及び2次コイル間の距離が大きくなる。
【0011】従って、1次、2次コイル間の結合度が小さくなり、充電用2次電池への充電電流が極端に小さくなる。その結果、充電用2次電池を短時間で急速充電できない。
【0012】本発明は、このような従来の課題を解決し、非接触型充電器において、充電部から被充電部への電力伝送効率を向上させることにより、2次電池の急速充電を可能にすることを目的とする。」

〈課題を解決するための手段〉
(K4)「【0013】
【課題を解決するための手段】図1は本発明の原理説明図である。本発明は前記の目的を達成するため、充電部と被充電部とを分離して構成し、前記充電部には、送信側コイル15と共振用コンデンサ29からなる並列共振回路を含む発振回路(高周波発振回路)を備え、前記被充電部には、充電時に前記発振回路の送信側コイル15と電磁結合して電圧を誘起させるための受信側コイル16と、該受信側コイル16に誘起した電圧により充電可能な2次電池18を備えた非接触型充電器において、前記被充電部の受信側コイル16と並列に共振用コンデンサ34を接続して並列共振回路を構成した。
【0014】また、前記被充電部において、並列共振回路を構成する受信側コイル16と2次電池18との間に、充電部で発生した電磁界の遮蔽を行うための電磁遮蔽板17を配置した。
【0015】
【作用】前記構成に基づく本発明の作用を、図1に基づいて説明する。2次電池18への充電を行う場合は、被充電部を充電部の上に載せた状態で、電源を投入して行う。この充電状態では、送信側コイル15と受信側コイル16が対向配置されるので、これらのコイルが、トランスのコイルと同様に機能する。すなわち、送信側コイル15がトランスの1次捲線で、受信側コイル16がトランスの2次コイルとして機能する。
【0016】充電時に充電部の発振回路が発振すると、該発振回路を構成する並列共振回路が所定の周波数で共振した状態となる。この時、送信側コイル15と受信側コイル16が電磁結合し、送信側コイル15で発生した磁束が受信側コイル16に鎖交し、受信側コイル16に電圧が誘起する。
【0017】この誘起した電圧により、受信側コイル16と共振用コンデンサ34からなる被充電部の並列共振回路が共振し、この並列共振回路の出力で2次電池18を充電する。すなわち、充電時には、充電部の並列共振回路と、被充電部の並列共振回路が同時に共振し2次電池18の充電を行う。」

〈実施例〉
(K5)「【0020】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施例は、非接触型充電式電動シェーバーに適用した例である。
【0021】図2?図7は本発明の実施例を示した図であり、図2?図7中、10は充電部スタンド、11は充電部スタンドハウジング、12は電動シェーバー、13は電動シェーバーハウジング、14はプリント板、15は送信側コイル、16は受信側コイル、17は電磁遮蔽板、18は2次電池、19はフェライトコア、20は電動シェーバー載置部、22は電源プラグ、23はヒューズ、24は全波整流回路、25は平滑用コンデンサ、26は発振用コンデンサ、27はスイッチング用トランジスタ、28は起動抵抗、29は共振用コンデンサ、30は帰還用コイル、34は共振用コンデンサ、35は平滑用コンデンサ、36は整流用ダイオード、37は定電流素子、38は電流計、39は電圧計、・・・(以下略)
【0022】§1:非接触型充電式電動シェーバーの説明・・・図2、図3参照
図2は非接触型充電式電動シェーバーの説明図1であり、A図は側面図、B図は平面図である。また、図3は非接触型充電式電動シェーバーの説明図2であり、A図は図2のX-Y方向断面図、B図はA図の一部拡大図である。
【0023】本実施例の非接触型充電式電動シェーバーは、電動シェーバー12と、充電部スタンド10で構成されている。そして、充電部スタンド10には充電部が設けてあり、電動シェーバー12には被充電部が設けてある。
【0024】前記充電部スタンド10には充電部スタンドハウジング11が設けてあり、この充電部スタンドハウジング11内に充電部が設けてある。電動シェーバー12には電動シェーバーハウジング13が設けてあり、この電動シェーバーハウジング13内に被充電部が設けてある。
【0025】また、前記充電部スタンドハウジング11の一部に、電動シェーバー12を載せて置くための電動シェーバー載置部20が設けてある。そして、電動シェーバー12を使用する時は、電動シェーバー載置部20から電動シェーバー12を取り出して使用し、それ以外の時は、電動シェーバー12を電動シェーバー載置部20上に載せておくことにより、非接触で充電を行うように構成されている。」
《充電部》
(K6)「【0026】前記充電部スタンドハウジング11内に設けた充電部には、充電用の高周波発振回路等の回路部品が設けてあるが、これらの回路部品は、プリント板14上に搭載されている。そして、前記回路部品の内、送信側コイル15は、フェライトコア19に巻いた状態で前記プリント板14上に搭載する。
【0027】この場合、フェライトコア19に巻いた送信側コイル15は、電動シェーバー載置部20と対向する位置で、かつ前記電動シェーバー載置部20に最も近い位置に配置する。」
《被充電部》
(K7)「【0028】前記電動シェーバーハウジング13内に設けた被充電部には、コイルとコンデンサの並列共振回路が設けてあるが、その並列共振回路を構成する受信側コイル16が電動シェーバーハウジング13の内部に設けてある。また、電動シェーバーハウジング13内には、電磁遮蔽板17、2次電池18等が設けてある。
【0029】この場合、受信側コイル16は、電動シェーバー12を電動シェーバー載置部20に載せた状態で、電動シェーバー載置部20に最も近い位置となるように配置し、かつ、送信側コイル15と対向するように位置決めして配置する。
【0030】また、2次電池18は、電動シェーバー12を電動シェーバー載置部20に載せた状態で、電動シェーバー載置部20から遠い位置に配置し、電磁遮蔽板17は、受信側コイル16と2次電池18の間に配置することで、送信側コイル15からの電磁遮蔽を行っている。
【0031】前記電磁遮蔽板17が無い場合は、送信側コイル15で発生した電磁界が2次電池18まで達し、2次電池18の金属体に渦電流が流れる。その結果、2次電池が発熱し2次電池が劣化する恐れがある。しかし、電磁遮蔽板17を設けることにより、送信側コイル15で発生した電磁界を遮蔽し、前記2次電池18の発熱を防止することができる。
【0032】前記2次電池としては、例えば、ニッケル・カドミウム電池、ニッケル・水素電池、リチウム・イオン電池等が使用可能である。また、電磁遮蔽板17は、例えば、複合フェライト(フェライトと樹脂の複合体)で構成する。」
《被充電部の動作、実測データ》
(K8)「【0055】(3) :被充電部の動作説明
被充電部では、充電時に次のように動作して、2次電池に対し充電を行う。
・・・(中略)・・・
【0057】この並列共振回路が共振状態になると、該並列共振回路には正弦波電圧が発生する。この電圧により整流用ダイオード36を介して平滑用コンデンサ35に電流が流れ、該平滑用コンデンサ35の端子に平滑化した直流電圧が発生する。
【0058】この平滑用コンデンサ35の端子に発生した直流電圧により、定電流素子37を介して2次電池18に充電電流が流れ、2次電池18を充電する。
§4:非接触型充電器における実測例の説明・・・図5、図6参照
図5は測定回路の説明図、図6は実測データ例である。
・・・(中略)・・・
【0064】また、送信側コイル15と受信側コイル16のギャップ長Lg は6.0mm、送信側コイル15の直径は38mm、送信側コイル15の厚みは3.9mm、受信側コイル16の直径は26mm、受信側コイル16の厚みは1.6mmであった。
・・・(中略)・・・
【0066】(2) :測定時の説明と、実測データ例の説明
充電部の発振回路は、送信側コイル15のインダクタンス値と、共振用コンデンサ29の容量値で決定される共振周波数f1 =1/√2πCP LP で発振する。実施例では、前記のように定数を選定し、測定した共振周波数f1 は、前記のようにf1 =250KHZ であった。」
《他の実施例》
(K9)「【0081】(他の実施例)以上実施例について説明したが、本発明は次のようにしても実施可能である。
(1) :充電部の発振回路は、前記実施例の回路に限らず、他の同様な発振回路にも適用可能である。
【0082】(2) :充電部と被充電部を備えた非接触型充電器は、電動シェーバーに限らず、携帯電話器、コードレス電話器など各種の機器に使用可能である。」

[2]刊行物1に記載された発明(引用発明)

ア 全体,概要
刊行物1には、前掲した記載(K1)?(K9)があり、(K2)を利用分野、(K3)を課題・目的とし、概要を(K1)(K4),詳細(実施例)を(K5)?(K9)のようにした非接触型充電器が記載されており、
全体として、前掲(K1)(K4)によれば、
「充電部と被充電部とを分離して構成」した「非接触型充電器」であって、 (→引用発明のp)
「被充電部には、充電時に前記発振回路の送信側コイル15と電磁結合して電圧を誘起させるための受信側コイル16と、該受信側コイル16に誘起した電圧により充電可能な2次電池18を備え」{(K4)【0013】}、
(→引用発明のq1,q2)
「被充電部において、並列共振回路を構成する受信側コイル16と2次電池18との間に、充電部で発生した電磁界の遮蔽を行うための電磁遮蔽板17を配置した」{(K4)【0013】} (→引用発明のq3)
「非接触型充電器。」の発明が認められる。

イ 詳細
〈受信側コイル〉
図1,図3,「受信側コイル16は、電動シェーバー12を電動シェーバー載置部20に載せた状態で、電動シェーバー載置部20に最も近い位置となるように配置し、かつ、送信側コイル15と対向するように位置決めして配置する。」(段落【0029】),
「受信側コイル16の直径は26mm、受信側コイル16の厚みは1.6mmであった。」(段落【0064】),
によれば、その形態は「平板状」といえ、
受信側コイル16は、送信側コイルと(同軸で)対向配置する平板状(図1,図3)のコイルということができる。 (→引用発明のq1)

〈整流用ダイオード,2次電池〉
図1,「【0057】この並列共振回路が共振状態になると、該並列共振回路には正弦波電圧が発生する。この電圧により整流用ダイオード36を介して平滑用コンデンサ35に電流が流れ、該平滑用コンデンサ35の端子に平滑化した直流電圧が発生する。
【0058】この平滑用コンデンサ35の端子に発生した直流電圧により、定電流素子37を介して2次電池18に充電電流が流れ、2次電池18を充電する。」によれば、
受信側コイル16に正弦波電圧が発生し、発生した正弦波電圧を整流用ダイオード36で整流し、整流した直流電圧が2次電池に充電されることは明らかである。
つまり、該受信側コイルに誘起した正弦波電圧を整流用ダイオードで整流し、整流した直流電圧が充電される2次電池を認めることができる。
(→引用発明のq3)
〈電磁遮蔽板〉
「【0030】また、2次電池18は、電動シェーバー12を電動シェーバー載置部20に載せた状態で、電動シェーバー載置部20から遠い位置に配置し、電磁遮蔽板17は、受信側コイル16と2次電池18の間に配置することで、送信側コイル15からの電磁遮蔽を行っている。
【0031】前記電磁遮蔽板17が無い場合は、送信側コイル15で発生した電磁界が2次電池18まで達し、2次電池18の金属体に渦電流が流れる。その結果、2次電池が発熱し2次電池が劣化する恐れがある。しかし、電磁遮蔽板17を設けることにより、送信側コイル15で発生した電磁界を遮蔽し、前記2次電池18の発熱を防止することができる。」によれば、
「被充電部」において、充電部の「送信側コイル」「で発生した電磁界を遮蔽し、」「2次電池18の金属体に渦電流が流れ」ることを抑制して「2次電池18の発熱を防止する」ために、
「電磁遮蔽板17は、受信側コイル16と2次電池18の間に配置」しており、「電磁遮蔽板17は、例えば、複合フェライト(フェライトと樹脂の複合体)で構成するとしている。
これらのことと、上記アの「電磁遮蔽板」に関する記載によれば、
受信側コイル16と2次電池18との間に、充電部の送信側コイル15で発生した電磁界を遮蔽し2次電池18の金属体に渦電流が流れることを抑制して2次電池18の発熱を防止するための、充電部で発生した電磁界の遮蔽を行うための電磁遮蔽板17であって、例えば、複合フェライト(フェライトと樹脂の複合体)で構成される電磁遮蔽板を配置している、ということができる。 (→引用発明のq3)

ウ 使用(適用)例
上記ア,イを総合すれば、以下のp?q3を構成とする非接触型充電器、すなわち、
p :充電部と被充電部とを分離して構成した非接触型充電器であって、
q1:被充電部には、充電時に充電部の発振回路の送信側コイルと電磁結合して電圧を誘起させるための、送信側コイルと対向配置する平板状(図1,図3)の受信側コイルと、
q2:該受信側コイルに誘起した正弦波電圧を整流用ダイオードで整流し、整流した直流電圧が充電される2次電池と、
q3:該受信側コイルと2次電池との間に、充電部の送信側コイルで発生した電磁界を遮蔽し、2次電池の金属体に渦電流が流れることを抑制して2次電池の発熱を防止するための、充電部で発生した電磁界の遮蔽を行うための電磁遮蔽板であって、例えば、複合フェライト(フェライトと樹脂の複合体)で構成される電磁遮蔽板を配置した、
p:非接触型充電器
が認められところ、その具体的使用(適用)例についてみるに、
前掲(K4)?(K8)には、具体的に「電動シェーバー」の実施例であって、
-「充電部」が「充電部スタンドハウジング11内に設け」られ、
-「被充電部」が「電動シェーバーハウジング13内に設け」られた
「電動シェーバー」に適用した実施例を説明しているが、
「本発明は、電動シェーバー(電動ひげそり器)、コードレス電話機、電動歯ブラシ、ラップトップ型パソコンなど、充電可能な2次電池を電源として使用する各種の電気機器、或いは電子機器等に利用される非接触型充電器に関する。」{前掲(K2)【0001】},
「(他の実施例)以上実施例について説明したが、「本発明は次のようにしても実施可能である」(【0081】)とする他の実施例として、「(2):充電部と被充電部を備えた非接触型充電器は、電動シェーバーに限らず、携帯電話器、コードレス電話器など各種の機器に使用可能である。」{前掲(K8)【0082】}とされており、
また、上記p?q3の構成が、特に「電動シェーバー」に限られるものともいえないことから、
上記p?q3を構成要素とする非接触型充電器は、
「電動シェーバー」の実施例に限らず、携帯電話器、コードレス電話器、ラップトップ型パソコン等の各種電子機器に使用可能であるものが想定でき、これを引用発明として認めることができる。
このとき、「被充電部」がこれら電子機器本体内に設けることができるものであり、「充電部」が(電子機器本体と分離された)これら電子機器本体の充電器内に設けることができるものであることは明らかである。 (→引用発明のr)

エ 引用発明
以上によれば、引用発明として、下記の発明を認定することができる(便宜上、p?rに分説しておく)。

記(引用発明)
p :充電部と被充電部とを分離して構成した非接触型充電器であって、
q1:被充電部には、充電時に充電部の発振回路の送信側コイルと電磁結合して電圧を誘起させるための、送信側コイルと対向配置する平板状(図1,図3)の受信側コイルと、
q2:該受信側コイルに誘起した正弦波電圧を整流用ダイオードで整流し、整流した直流電圧が充電される2次電池と、
q3:該受信側コイルと2次電池との間に、充電部の送信側コイルで発生した電磁界を遮蔽し、2次電池の金属体に渦電流が流れることを抑制して2次電池の発熱を防止するための、充電部で発生した電磁界の遮蔽を行うための電磁遮蔽板であって、例えば、複合フェライト(フェライトと樹脂の複合体)で構成される電磁遮蔽板を配置した、
p :非接触型充電器であり、
r :携帯電話器,コードレス電話器,ラップトップ型パソコン等の各種電子機器に使用可能である、すなわち、被充電部がこれら電子機器本体内に設けることができるものであり、充電部がこれら電子機器本体の充電器内に設けることができるものである、もの。

[3]本願発明と引用発明との対比(対応関係)

ア 本願発明の分説
本願発明(請求項1に係る発明)は、前記【第2】のとおりであるところ、下記のように分説することができる。

記(本願発明,分説)
A :スパイラルコイルを有する受電コイルと、
B :前記受電コイルに発生した交流電圧を整流する整流器と、
C :前記整流器で整流された直流電圧が充電される二次電池と、
D :前記スパイラルコイルと前記二次電池との間、および前記スパイラルコイルと前記整流器との間の少なくとも1箇所に配置され、厚さが5?50μmの範囲の磁性箔体とを具備し、
D1:前記磁性箔体は、厚さ10?25μmのCo系アモルファス合金薄帯を1?3枚有するもの、厚さ10?25μmのFe基微結晶合金薄帯を1?3枚有するもの、のいずれか1種であることを特徴とする
E :受電装置。

イ 要件E「受電装置。」について
引用発明の、被充電部は「充電部からの電力を受け取る装置」ということができ、したがって、「受電装置」ともいえ、要件Eにおいて本願発明と相違しない。

ウ 要件A「スパイラルコイルを有する受電コイルと、」について
本願発明でいう「受電コイル」とは、
図1,図2に示される「受電コイル11」,明細書の「受電装置2は、スパイラルコイルを有する受電コイル11」(段落【0014】),「受電コイル11を構成するスパイラルコイルとしては、銅線等の金属ワイヤを平面状態で巻回した平面コイル、金属粉ペーストをスパイラル状に印刷して形成した平面コイル等が用いられる。」(段落【0015】),「第1の実施形態の電子機器1は、例えば図1に示すように、スパイラルコイル(受電コイル)11と二次電池13との間に設置された磁性箔体16を具備している。」(段落【0018】)に照らせば、
「スパイラルコイルとしたもの」を含んでいうものと理解される。
すなわち、本願発明でいう「スパイラルコイルを有する受電コイル」とは、「受電コイル」を「スパイラルコイル」で構成したもの、つまり、「スパイラルコイルとしたもの」を含んでいうもの理解される。

引用発明の、被充電部が備えるq1の「(被充電部には、)充電時に充電部の発振回路の送信側コイルと電磁結合して電圧を誘起させるための、送信側コイルと対向配置する平板状(図1,図3)の受信側コイル」は、「受電コイル」ともいい得るものである。
もっとも、平板状(図1,図3)ではあるものの、「スパイラルコイルを有する(スパイラルコイルとしたもの)」とまでは特定しておらず、この点、本願発明と相違する。

エ 要件B、Cについて
B「前記受電コイルに発生した交流電圧を整流する整流器と、」
C「前記整流器で整流された直流電圧が充電される二次電池と、」
引用発明のq2「該受信側コイルに誘起した正弦波電圧を整流用ダイオードで整流し、整流した直流電圧が充電される2次電池と、」とする「整流用ダイオード」は、「受電コイル(「受信側コイル」)に発生した交流電圧を整流する整流器」ということができ、この点において、要件Bとは相違しない。
また、引用発明のq2の「2次電池」も「前記整流器(「整流用ダイオード)で整流された直流電圧が充電される二次電池」といえ、要件Cにおいて、本願発明と相違しない。
もっとも、要件Bの「前記受電コイル」は、「スパイラルコイルを有する(スパイラルコイルとしたもの)」とするものであるから、この点においては、上記ウと同じ相違が認められる。

オ 要件D,D1について
D「前記スパイラルコイルと前記二次電池との間、および前記スパイラルコイルと前記整流器との間の少なくとも1箇所に配置され、厚さが5?50μmの範囲の磁性箔体とを具備し、」
D1「前記磁性箔体は、厚さ10?25μmのCo系アモルファス合金薄帯を1?3枚有するもの、厚さ10?25μmのFe基微結晶合金薄帯を1?3枚有するもの、のいずれか1種であることを特徴とする」

要件Dで特定される磁性箔体は、「前記スパイラルコイルと前記二次電池との間」「に配置され」る磁性箔体を含んでおり、
また、上記のとおり、本願発明でいう「受電コイル」は、「スパイラルコイルとしたもの」を含んでいうものと理解されるのであるから、
要件Dで特定される磁性箔体は、
「スパイラルコイルとした受電コイルと前記二次電池との間に配置される磁性体」を含んでいるといい得るところ、
引用発明のq3の「受信側コイルと2次電池との間に、充電部の送信側コイルで発生した電磁界を遮蔽し、2次電池の金属体に渦電流が流れることを抑制して2次電池の発熱を防止するための、充電部で発生した電磁界の遮蔽を行うための電磁遮蔽板であって、例えば、複合フェライト(フェライトと樹脂の複合体)で構成される電磁遮蔽板を配置した」とする「電磁遮蔽板」も、
「受電コイル」(受信側コイル)「と前記二次電池との間」「に配置され」る『磁性体』といえ、この点においては、本願発明と相違しない。
もっとも、引用発明における『磁性体』といい得る「電磁遮蔽板」は、「厚さが5?50μmの範囲の磁性箔体」ともしていないし、要件D1で特定されるものともしておらず、これらの点で相違する。
また、「スパイラルコイル」ともしてしておらず、この点の相違は、上記ウと同じ相違である。

[4]一致点・相違点
以上の対比結果によれば、本願発明と引用発明との一致点および相違点は、次のとおりである。

[一致点]
A’受電コイルと、
B’受電コイルに発生した交流電圧を整流する整流器と、
C 前記整流器で整流された直流電圧が充電される二次電池と、
D’受電コイルと前記二次電池との間に配置される磁性体とを具備した、
E 受電装置。

[相違点]

[相違点1]
上記A’及びB’の「受電コイル」が、
本願発明では、「スパイラルコイルを有する(スパイラルコイルとしたもの)」とするのに対して、
引用発明では、「スパイラルコイルを有する(スパイラルコイルとしたもの)」とはしていない点,及び、
上記D’の「受電コイル」が
本願発明では、「スパイラルコイル(としたもの)」とするのに対して、
引用発明では、「スパイラルコイル(としたもの)」とはしていない点。

[相違点2]
上記D’の「磁性体」が、
本願発明では、
厚さが5?50μmの範囲の磁性箔体であって、
D1「前記磁性箔体は、厚さ10?25μmのCo系アモルファス合金薄帯を1?3枚有するもの、厚さ10?25μmのFe基微結晶合金薄帯を1?3枚有するもの、のいずれか1種であることを特徴とする」
としているのに対して
引用発明では、
「電磁遮蔽板であって、例えば、複合フェライト(フェライトと樹脂の複合体)で構成される電磁遮蔽板」としていて、そのようにはしていない点。

[5]相違点等の判断

(1)〔相違点の克服〕
引用発明を出発点とし、
〔相違点1の克服〕
引用発明の「受電コイル」(送信側コイルと対向配置する平板状(図1,図3)の受信側コイル)を、「スパイラルコイル」とすること(以下、〔相違点1の克服〕という)で、
・上記A’及びB’の「受電コイル」は、「スパイラルコイルを有する(スパイラルコイルとしたもの)」となり、
・上記D’の「受電コイル」は、「スパイラルコイル(としたもの)」となって、
上記[相違点1]は克服され、

〔相違点2の克服〕
引用発明の「磁性体」(電磁遮蔽板であって、例えば、複合フェライト(フェライトと樹脂の複合体)で構成される電磁遮蔽板)を、
「厚さが5?50μmの範囲の磁性箔体であって、」
D1「前記磁性箔体は、厚さ10?25μmのCo系アモルファス合金薄帯を1?3枚有するもの、厚さ10?25μmのFe基微結晶合金薄帯を1?3枚有するもの、のいずれか1種である」とすること(以下、〔相違点2の克服〕という)で、上記[相違点2]も克服され、
本願発明に到達する。

(2)相違点についての判断(〔相違点の克服〕の容易想到性)

ア 相違点1についての判断(〔相違点1の克服〕の容易想到性)

ア-1 「受信側コイル」・「電磁遮蔽板」を薄型化する動機付け
引用発明は、rで「携帯電話器,コードレス電話器,ラップトップ型パソコン等の各種電子機器に使用可能」とするものであるところ、
本願出願当時、携帯電話器,ラップトップ型パソコン等の携帯用電子機器(特に携帯電話)では、更なる小型化,薄型化が望まれており、
また、そのため、かかる携帯電話等の携帯用電子機器において非接触充電に使用されるコイルを含む磁気素子を小型化、薄型化することが要請されている{例えば、上記刊行物2(段落【0001】,【0002】,【0016】等),下記の周知例a(段落【0001】?【0003】,【0007】),周知例b(段落【0001】?【0003】,【0007】),周知例c(段落【0001】?【0004】)等参照}。
したがって、当業者であれば、引用発明の被充電部である、そのような電子機器(携帯電話器等)の本体を更に小型化,薄型化しようと想起するといえ、そのためには、q1の「送信側コイルと対向配置する平板状(図1,図3)の受信側コイル」(本願発明でいう「受電コイル」),q3の「電磁遮蔽板」(「磁性体」)を薄くする必要があることは自明である。
すなわち、当業者にとって、引用発明の「受信側コイル」(「受電コイル」)・「電磁遮蔽板」(「磁性体」)を薄型化する動機付けが存在している。

記(周知例a?c)
周知例a:特開2003-173921号公報
周知例b:特開2004-47700号公報
周知例c:特開2005-109173号公報

ア-2 周知事項A
電力回路に用いる薄型平板状のコイルといえば、スパイラルコイルは、その典型かつ普通のものであって周知のものである(周知事項A、上記刊行物2,刊行物3,上記周知例a?c,下記周知例4,10?12等参照。)。

ア-3 判断
引用発明の「受信側コイル」(「受電コイル」)も、「平板状(図1,図3)」のものであるが、上記ア-1・ア-2からすれば、これを薄型化するため(被充電部の薄型化を図るため)、これを、スパイラルコイルとすることは、当業者の容易想到である。
すなわち、上記〔相違点1の克服〕は当業者が容易に想到し得ることである。

イ 相違点2についての判断(〔相違点2の克服〕の容易想到性)

まず、〔相違点2の克服〕のうちの、数値限定である「厚さが5?50μmの範囲の」、2つの「厚さ10?25μmの」・「1?3枚有するもの」を除く部分、
すなわち、『引用発明の「磁性体」(電磁遮蔽板)を、磁性箔体であって、Co系アモルファス合金薄帯、Fe基微結晶合金薄帯のいずれか1種であるとすること』について検討し、
残る克服すべき数値限定部分、すなわち、そのようにした(Co系アモルファス合金薄帯、Fe基微結晶合金薄帯のいずれか1種である)『磁性箔体を、厚さ10?25μmの薄帯を1?3枚有する厚さが5?50μmの範囲のものとすること』については、その後に検討する。

イ-1 数値限定を除く部分について
上記ア-1の動機付けにしたがって、引用発明の「磁性体」(電磁遮蔽板)を薄型化しようとする際、『引用発明の「磁性体」(電磁遮蔽板)を、磁性箔体であって、Co系アモルファス合金薄帯、Fe基微結晶合金薄帯のいずれか1種であるとすること』は当業者が容易に想到し得ることである。
以下にその理由を記す。

(ア)周知事項B
上記ア-1の動機付けにしたがって、引用発明の「磁性体」(電磁遮蔽板)を薄型化しようとする際、
引用発明の「磁性体」(電磁遮蔽板)は、送信側コイル15で発生した電磁界が2次電池に達するのを遮蔽するための、すなわち磁気シールドするためのもの(例えば、複合フェライト(フェライトと樹脂の複合体)で構成される電磁遮蔽板)であるところ、
フェライトよりもはるかに透磁率が高く、薄型化するのに有利な、薄い磁気シールド(遮蔽)材料として、Co系アモルファス合金薄帯も、(Fe系アモルファス合金薄帯を熱処理して得れられる)Fe基微結晶合金薄帯も周知のもの(「周知事項B」、詳細は以下に記載。)であり、
かかる周知事項Bからすれば、当業者は、この「磁性体」(電磁遮蔽板)を、当該周知の上記材料(Co系アモルファス合金薄帯・Fe基微結晶合金薄帯)とすることをごく普通に想起するものである。

すなわち、一般に、アモルファス磁性材料(急冷法により作製されるアモルファス合金薄帯を含め)は、極めて高い透磁率,低い保持力を有し良好な軟磁性を示し、薄帯の厚みが小さく渦電流損が少なく高周波領域でも優れた磁気特性を有する点などに特徴を有することは技術常識であって(下記周知例1?3等参照)、本願出願前、20μm厚程度のFe系および(低磁気歪み高透磁率材料の)Co系アモルファス合金薄帯が実用化され(下記周知例1)、また5μm程度の薄帯も試作されていたものである(下記周知例2)ところ、
アモルファス合金薄帯や、これを熱処理して得られる微結晶析出薄帯からなる金属磁性薄帯は、脆性破壊しにくい上に、フェライト焼結体よりも飽和磁束密度が高いので、薄型化する場合に有利であることもよく知られている{例えば、周知例4参照}。
そして、かかるアモルファス合金薄帯の典型例であるCo系アモルファス合金薄帯は、アモルファス合金の中でも高透磁率であって磁気シールド材料として用いられることは良く知られており{例えば、下記周知例2,3,58、9等参照}、
また、上記微結晶析出薄帯からなる金属磁性薄帯として、(同じくアモルファス合金薄帯の典型例である)Fe系アモルファス合金薄帯を熱処理して得れられる周知のFe基微結晶合金薄帯も、Co系アモルファス合金薄帯と同様、透磁率特性がフェライトより良く(例えば、周知例5,6)、また、磁気シールドに好適であり、磁気シールド材料として用いられることも周知である{例えば、上記刊行物4,下記周知例5,7?9等参照}。

かかる周知事項Bからすれば、『引用発明の「磁性体」(電磁遮蔽板)を、磁性箔体であって、Co系アモルファス合金薄帯、Fe基微結晶合金薄帯のいずれか1種であるとすること』は当業者が容易に想到し得ることである。

(イ)周知事項C
また、スパイラルコイルは、漏れ磁束を小さくするための薄板状強磁性体をその両面に配して薄型インダクタとしてよく使用されているものであり、その薄板状強磁性体を、Co系アモルファス合金薄帯やFe基微結晶合金薄帯で構成された磁性箔体とすることは周知である(「周知事項C」、
-Co系アモルファス合金薄帯については、例えば、刊行物3,下記周知例4,10?12等が、
-Fe基微結晶合金薄帯については、例えば、刊行物3,特開平9-270334号公報(段落【0011】?【0015】等が参照される。)ところ、
引用発明の「磁性体」(電磁遮蔽板)の作用である磁気シールド(遮蔽)も、上記「薄板状強磁性体」の作用と同様、漏れ磁束を小さくするものであって、そこでの磁気作用は、本質的には変わらないことは当業者に明らかであることから、
上記ア-1の動機付けにしたがって、引用発明の「磁性体」(電磁遮蔽板)を薄型化しようとする際、
当業者であれば、かかる薄型インダクタに用いる薄板状強磁性体としての上記周知材料(Co系アモルファス合金薄帯やFe基微結晶合金薄帯で構成された磁性箔体)の適用をごく普通に想起するものである。

すなわち、引用発明の「磁性体」(電磁遮蔽板)は、「充電部の送信側コイルで発生した電磁界を遮蔽し、・・・充電部で発生した電磁界の遮蔽を行うための」ものであるところ、
(i)当該“遮蔽”とは、「電磁遮蔽板」が送信側コイルで発生した磁束が受信コイルを通過(鎖交)しその後通過し易い透磁率大の通路を提供して磁束をその通路に閉じ込めそこ(通路)からの漏れ磁束を少なくする(もって、2次電池に達することが遮蔽される。同時に磁束を増加させ受信コイルと鎖交する磁束を多くする。)ものであって、漏れ磁束を小さくするための上記「薄型インダクタ」の「薄板状強磁性体」とその磁気作用の本質は同じであること、
(ii)加えて、「薄型インダクタ」は単独でインダクタとして使用することから、「薄板状強磁性体」をスパイラルコイルの両面に備えるものである(周知例4では、トランスへの適用、片面のものも想定している(段落【0009】,【0029】)が、
引用発明の受信側コイル(受電コイル)は、分離された充電部の送信側コイルが発生する磁束と鎖交させる必要があるから、引用発明に適用する際には、薄板状強磁性体は、受信コイル(受電コイル)が送信コイルと対向する面側には配置せず送信コイルと反対側の片面にのみ配置することになる{例えば、周知例a(段落【0006】,【0008】参照),周知例b(段落【0006】?【0009】参照))こと、
以上のことは、刊行物1に接した(周知事項Cを知る)当業者が即座に理解することであって、当業者に自明なことである。
そうすると、この点からみても、上記のとおり、引用発明の「磁性体」への、薄型インダクタに用いる薄板状強磁性体としての周知材料であるCo系アモルファス合金薄帯やFe基微結晶合金薄帯で構成された磁性箔体の適用が当業者に普通に想起される。

(ウ)上記(ア)及び上記(イ)の両点からみても、『引用発明の「磁性体」(電磁遮蔽板)を、磁性箔体であって、Co系アモルファス合金薄帯、Fe基微結晶合金薄帯のいずれか1種であるとすること』は当業者が容易に想到し得ることである。

記(各周知例)
なお、〈刊行物名〉に続いて、ポイント(//内),特に注目する記載箇所、具体的摘示(「」内)、刊行物の記載から認定される事項(;に続く記載)等を示した。

〈刊行物3(特開平7-283046号公報〉
/薄型インダクタ、Co系アモルファス合金薄帯(実施例1:30μm厚×2)、アモルファス合金を結晶化させた超微細組織を持つ軟磁性体/
「【請求項1】 融着性絶縁導線を巻線し固着して成る平面状融着コイルと、その周囲に設けた該融着コイルの厚みより、厚みの大きな成形体と、上記融着コイルと成形体を挟んで成る板状の強磁性体、とから構成される薄型インダクタ。
【請求項2】 板状の強磁性体がアモルファス合金であることを特徴とする請求項1記載の薄型インダクタ。」,
「【0002】【従来の技術】電子機器の小型、薄型化要求に伴い、電源回路に用いるチョークコイル、トランス等のインダクタの小型、薄型化が進められている。焼結フェライトコアに巻線を施した巻線方式のインダクタは小型化に限界があり、巻線の代わりに平面状コイルを用いる方式の開発が進められている。」,
「【0007】プリントコイルおよび印刷コイルは、コイル厚が薄いため、銅損による発熱を抑えるのが難しい。コイル断面積を大きくできず、抵抗が高くなるためである。融着コイルは、任意の径の融着性絶縁導線を巻線し、固着することにより、容易に銅損の小さい平面状コイルが得られるため、電源回路用の薄型インダクタを得るのに有利である。」,
「【0024】強磁性体を用いることにより、板状の強磁性体3間の漏れ磁束は減少し、インダクタンスの高い薄型インダクタを得るのに有利である。」
;当該記載は、成型体1についての記述ではあるが、板状の強磁性体3を前提にいうものであって、板状の強磁性体3にも同様の作用があることは明らかである。;
「【0026】板状の強磁性体3に適用できる材料には、Co系、Fe系等のアモルファス合金、アモルファス合金を結晶化させた超微細組織を持つ軟磁性体、珪素鋼、パーマロイ、パーメンジュール、センダスト等の金属軟磁性材料や、Mn-Zn系、Ni-Zn系等の酸化物軟質磁性材料(ソフトフェライト)等が挙げられる。板(箔、帯)は、急冷法および、金型成形法、圧延加工法、グリーンシート法等により成形する方法、更に焼成、焼鈍する方法等により作製される。
【0027】強磁性体3の厚さは、薄型インダクタに要求される磁気特性やサイズに応じて、任意に使用可能である。板の作り易さおよび使い易さからは、10μmから500μmが好ましい。」,
(実施例1)
「【0033】板状のアモルファス合金は、単ロール急冷法により作製した厚さ30μmの組成Co_(70)Fe_(5)Si_(15)B_(10)(atm.%)のアモルファスリボンを15mm×15mmの箔に切断後、焼鈍し、樹脂成形体の両面に各2枚ずつ接着剤で積層した。」
;スパイラルコイル(融着コイル2がスパイラルコイルであることは、図面等より明らかである。)の両面に配する強磁性体3には、Co系、Fe系等のアモルファス合金、アモルファス合金を結晶化させた超微細組織を持つ軟磁性体の金属軟磁性材料が用いられ、その厚さは10μmから500μmが好ましく、
実施例1では、強磁性体3が30μm厚のCo系アモルファス合金薄帯2枚(計60μm)からなるの強磁性体を配している。;

〈刊行物4(特開2003-257751号公報)〉
/磁気シールド用磁性体,Fe基微結晶合金薄帯,実施の形態:10?30μm厚×2,10μmシートの条件でも10乃至15dBのシールド率,実施例:20μm厚×10で1mmのシールド壁/
(発明の実施の形態)
「【0020】本発明は上述した各々の磁気シールド用磁性体において、材料として用いられる磁性体がシート状の形状をしており、1枚のシート厚さが10μm以上且つ200μm以下であることを特徴とする。前記のシート状の磁性体を用いる構成では空間の磁束を効率よく収集可能なため、従来の磁気シールドと比較して厚さの薄い磁性体を使用することが可能である。薄い磁性体を用いることの利点は磁気シールドの構造重量を軽減することが可能になり、シールド装置の組み立てや施工性を改善することができる。例えば軟鉄やNiFe合金などの圧延薄板(厚さ0.5乃至1mm)を用いたシールドでは1Kgの重量に対して350×350mm乃至500×500mmのシールド壁を作ることが限界である。しかし、200μmのシートでは2×2mのシールド壁を作ることが可能であり、シールド壁の部品点数を大幅に減少させることができる。シールドの特性としてはNiFe板1枚のシールド率が20dB程度であり、本発明では10μmシートの条件でも10乃至15dB、またこれを200μmにすることで20dB以上のシールド率を得ることができる。
【0021】また、本発明は上記いずれかの磁気シールド用磁性体であって、前記シート形状の磁性体は1枚のシート厚さが10μm以上且つ30μm以下であり、2枚以上のシートの積層体で構成されることを特徴とする。」,
段落【0022】?【0025】摘示略
(実施例)
「【0026】[シールド壁の作製]Fe-Cu-Nb-Si-B系合金の溶湯を単ロール法により急冷し幅50mm、厚さ20μmの非晶質合金薄帯を作製した。次にこの合金薄帯を窒素ガス雰囲気中570℃で60分保持し空冷した。得られた薄帯はbccFeの微細結晶組織を備え組織の大部分が50nm以下の粒径の結晶粒からなる結晶主体の軟磁性合金であった。この薄帯を一部重ね合わせ幅方向に繋ぎ合わせて600mm×600mmのシートを作製しこのシートを10枚積層してシールド壁を作製した。各薄帯および各シートの磁化容易方向(薄帯の長手方向)は揃えてあり、それを外部磁場方向Hoと一致させた。」
;磁気シールド用磁性体を、1枚のシート厚さが10μm以上且つ30μm以下のFe基微結晶合金薄帯2枚以上のシートの積層体で構成する。同シートは10μmシートの条件でも10乃至15dBのシールド率を得ることができる。実施例は、20μm厚Fe基微結晶合金薄帯10枚とした。;

〈周知例1〉
“電気工学ハンドブック 第6版”,(オーム社発売),電気学会発行,2001年2月20日第6版第1刷発行,p194,200
図58(p.194),「急冷凝固法により、高飽和磁束密度のFe-Si-B系及び低磁気歪み高透磁率材料のCo-Si-B系の20?30μm厚薄帯が実用化されている。」(p.200,右欄15行?)

〈周知例2〉
先端電子材料事典編集委員会編,“先端電子材料事典”,株式会社 シーエムシー,1991年3月15日 第1刷発行,p86-88
「Co系アモルファス合金は磁歪がほぼ0であり極めて高い初透磁率がえられ、磁気ヘッド、磁気シールド、ノイズフィルタ、マグアンプなどに実用化されている。」,図2(p.87右欄),
「現在は板厚5μm程度のアモルファス合金が試作され・・・」(p.88右欄5行?)

〈周知例3〉
清水,杉浦,石野編,“最新電磁波の吸収と遮蔽”,日経技術図書株式会社,1999年9月10日 第2版第1刷発行,p210-211,p252-258
;図1.3-1(p.211)には、アモルファス磁性体が磁界シールドに用いられることが示されている。
「・・・液体急冷法により製造されるアモルファス合金に焦点を絞って紹介することにする。・・・工業生産上実際に用いられているものを図3.4-7に示す。図3.4-7(a)は薄帯(リボン材ともいわれる)の製造方法を示したものである。・・・超急冷された厚さ約20μm、幅100mmの薄帯が連続的に生産される。この方法は、単ロール法と呼ばれている。」(p.255-下から2行?p.256-14行),
「高透磁率,低損失である良好な軟磁性を示す。・・・薄帯の厚みや繊維の直径が小さいために渦電流損失が少ないので,高周波領域においてもその優れた磁気特性を保持し得る。」(p.256下から9行?),
;図3.4-9(p.256-257)には、板厚20μmのCo基アモルファスが示されている。;

〈周知例4:特開2003-203813号公報〉
/平面磁気素子、Co系アモルファス合金薄体(20μm厚×1,2)/
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子機器のインダクタ、チョークコイル、トランスその他に用いられる超薄型の磁性素子と、その製造方法およびそれを備えた電源モジュールとに関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、電子機器の全般的な小型・薄型化に伴い、これらに用いられる部品やデバイス、電源なども、小型化、薄型化することが強く求められている。特に、携帯機器等では、小型化以上に薄型化の要求が強くなっている。」,
「【0005】この問題に対し、・・・号公報等には、平面スパイラル状に巻かれた導体コイルの上下面を、絶縁層を介して配置された強磁性体層で挟む構造が提案されている。この構造では、透磁率の高い磁性体を導体コイルの上下面に配置しているので、薄型にしても漏洩磁束を比較的少なく抑えることができ、大きなインダクタンス値を得ることが可能であった。」,
「【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の磁性素子は、平面導体コイルおよび絶縁性物質を含むシート状コイルと、前記シート状コイルの上下面のうち少なくとも一方に配置されたシート状の第1磁性部材とを備え、前記絶縁性物質の透磁率が前記第1磁性部材の透磁率よりも小さいことを特徴としている。」,
「【0029】以下、本発明の実施の形態を説明する。以下では、インダクタやチョークコイル等に用いられる磁性素子の例について説明するが、本発明の磁性素子はこれに限定される物ではなく、2次巻き線の必要なトランス等に用いても、その効果を発揮するものである。」,
「【0061】第1磁性部材4
第1磁性部材4に用いられる磁性体材料としては、透磁率が高く、飽和磁束密度が大きく、かつ、高周波特性に優れたものが望まれる。実際に使用可能な材料としては、フェライト焼結体、ダストコア、および金属磁性薄体の三種類が上げられる。フェライト焼結体としては、・・・。ダストコアとしては、・・・。
金属磁性薄体としては、Fe-Si薄体、アモルファス薄体、または微結晶析出薄体等が用いられる。
【0062】このうち、フェライト焼結体やダストコアは、超薄型で大面積とした場合それ自体は脆性破壊しやすいが、シート状コイル1と一体化されることで破壊されにくくなる。フェライト焼結体を用いると磁気損失が小さい磁性素子が得られるが、素子の厚さの点では限界がある。ダストコアを用いると直流重畳特性の優れた磁性素子が得られるが、インダクタンス値はあまり大きくならず、素子の厚さの点ではフェライト焼結体の場合と同様に限界がある。金属磁性薄体は、脆性破壊しにくい上に、フェライト焼結体よりも飽和磁束密度が高いので、薄型化する場合に有利である。組成としては、Fe,Co,Niを主成分とするものであれば何でも用いることが可能である。また、透磁率が高く、飽和磁束密度が大きく、かつ、高周波特性に優れたものが望まれるので、超急冷法により作製されたアモルファス薄体か、これを熱処理して得られる微結晶析出薄体か、あるいは、スパッタリング法やメッキ法で作製された金属磁性薄膜体が考えられる。」,
「【0105】・・・
(実施例10?27、比較例2)第1磁性部材4として、3.0mm角で、厚さ20μmおよび30μmの2種類の超急冷Co-Fe-Ni-B系アモルファス薄体(METGLAS-2714A(米国ハネウェル社製))を用意した。また、これらのアモルファス薄体を、硝酸を用いたエッチングにより10μm厚まで薄くしたものも用意した。・・・
【0106】・・・シート状コイルの上下面に第1磁性部材4として用いる部材をさらに積層し、この積層物に重りを用いて積層方向に軽く圧力をかけながら160℃に加熱し、接着層用シートとペーストを硬化させて、断面構造が図11(b)に示した磁性素子と同様の構造である薄型の磁性素子を作製した。第1磁性部材4に金属磁性薄体の積層体を用いる場合は、さらにこの磁性素子の上下面に接着層用シートを積層し、その上下面に第1磁性部材4として用いる部材を積層し、この積層物に重りにより積層方向に軽く圧力をかけながら160℃に加熱し、接着層用シートを硬化させて、断面構造が図8(b)に示した磁性素子と同様の構造である薄型の磁性素子を作製した。以上のような部材を用いて、以下に示す実施例10?27および比較例2の磁性素子を作製した。なお、比較例2としては、シート状コイルのみを用いた磁性素子とした。表2に、実施例10?27および比較例1の磁性素子の構造、さらにこれらの磁性素子の特性を周波数100kHz直流重畳電流0A、周波数1MHz直流重畳電流0A、周波数1MHz直流重畳電流0.5Aの場合について測定した場合の結果を示した。」,
;段落【0105】の「Co-Fe-Ni-B系アモルファス薄体(METGLAS-2714A(米国ハネウェル社製)」がCo系のアモルファスの合金薄体であることは明らかであり、表2には、その20μm厚の単一層又は2層を第1磁性部材4としたものが認められる。;

〈周知例5:特公平4-4393号公報(当審拒絶理由で示した周知例2)〉
/Co系アモルファス合金・Fe基微結晶合金薄帯(18μm厚)、磁気シールド/
;実施例15(18頁,第8図)には、Co系(非晶質)アモルファス合金・(Fe基非晶質合金を熱処理して得たFe基微結晶合金は、透磁率特性がフェライトに比べ著しく高く、磁気シールドに好適であることが示されており、また、それらは、実施例1等の他の実施例と同様、18μm厚程度の薄帯に作製されたものと想定される。;

〈周知例6:特許第2835113号公報〉
/Fe基微結晶合金薄帯(18μm厚)/
「Co基アモルファス合金とほぼ同等の軟磁気特性を有する超微細な結晶粒を析出させたFe基軟磁性合金が提案されている(特開昭63-320504号公報、同64-79342号公報など参照)。このFe基超微細結晶合金は、優れた軟磁気特性を有するとともに、低磁歪を満足し、さらにFeを主としていることから比較的安価であり、Co基アモルファス合金に代る軟磁性材料として注目されている。」(2頁右欄34行?41行),
(上記「同64-79342号公報」の対応特許公報が周知例5である。)
「実施例1
式:Fe_(73)(Cu_(2)O)_(1)Nb_(3)Si_(4)B_(9)
で表される組成を有する母合金を1400℃に加熱して溶融し、溶融状態のFe基合金およびセラミックス材料とを含有うる溶湯を作製した。次いで、この溶湯を単ロール法によって急冷してアモルファス化し、幅10mm×板厚18μmの長尺なアモルファス薄帯を得た。なお、このアモルファス薄帯の結晶化温度(昇温速度10deg/minで測定)は、507℃であった。
次に、上記アモルファス薄帯を巻回し、外径18mm×内径12mm×高さ5mmのトロイダルコアを複数成形した。これら複数のトロイダルコアに対して、窒素雰囲気中において各種温度条件下で、1時間の熱処理を施し、超微細結晶粒を析出させて磁性コアを作製した。」(5頁右欄12行?27行)

〈周知例7:特開平11-284387号公報〉
/Fe基微結晶合金薄帯(20μm厚)、シールド材/
「【0002】【従来の技術】近年電子機器が高度化し、かつ多数用いられるようになったために、漏れ磁界や電磁雑音等による機器の誤動作等が問題となっている。これを防止するための磁気シールド材としては、従来、軟磁気特性に優れたパーマロイ等が有効であることが知られている。これは軟磁性材料の透磁率を利用したものであり、その値が大きいものほど効果が高い。上述したパーマロイ等に代えてアモルファス材料を用いることで、より大きな磁気シールド効果が得られることが特開昭52-10660号、同55-21196号等で示されている。また特公平4-4393号においては、Fe-Cu-Nb-Si-B系に代表されるようなナノ結晶合金が優れた軟磁性を示し、経時変化も小さいためシールド材等に適することが示されている。」,
「【0014】・・・また、アモルファスリボンから製造するリボン状ナノ結晶合金薄板は、厚さが50μm以下の薄い材料のため、場合によっては1枚で必要な有効断面積を得られないために充分なシールド効果が得られない場合がある。その場合は、ナノ結晶合金薄板を1層以上積層することができる。」,
「【0021】【実施例】(実施例1)単ロール法により幅65mm、厚さ20μmのCu_(1)-Nb_(3)-Si_(15)-B_(7)(at%)、残部Feからなるアモルファスリボンを作製した。」
「【0022】ついで加熱炉の真空引きを開始すると共に炉の加熱を開始し、585℃まで120分で昇温し、同温度で20分間保持するロウ接とナノ結晶化を兼ねた加熱熱処理を施した。しかる後に冷却を開始して約4時間で250℃まで冷却した時点で炉から取り出し、室温まで冷却しシールドパネルとした。」

〈周知例8:特許第2625485号公報(当審拒絶理由で示した周知例4)〉
/Fe基微結晶合金薄帯・Co系アモルファス合金薄帯(25μm厚)、シールド/
「実施例1
第1表に示す組成の合金溶湯を単ロール法により急冷し幅50mm、厚さ25μmの非晶質合金薄帯を作製した。
次にこの合金を窒素ガス雰囲気中第1表の条件で熱処理し、薄帯を一部重ね合わせ、200×200の平面板測定試料を作製し、シールド効果評価器により、磁界に対するシールド性の評価を行った。
第1表に磁界シールド性の評価結果を示す。なお熱処理後の合金は組織の大部分が500Å以下の粒径の結晶粒からなり結晶主体の合金であった。
本発明材料の磁界シールド効果はFe基アモルファスや電解銅箔より優れており、シールド材として優れている。」(4頁右41行?5頁第1表),
;第1表には、Co系アモルファス合金薄帯(厚さはFe系と同じ(25μm)と考えられる。)も、Fe基微結晶合金薄帯と同程度の磁気シールド効果があることが示されている。;

〈周知例9:特許第2848667号公報(当審拒絶理由通知で示した周知例5〉
/Co系アモルファス合金薄体・Fe基微結晶合金薄帯(5?9μm厚),磁気シールド/
「本願明は、・・・磁気シールド、・・・に用いられる、高周波において高透磁率および低鉄損が要求される用途に適した極薄の軟磁性合金薄帯の製造方法に関する。」(2頁左欄14行?21行),
「これに対して、一般に金属材料では板厚を薄くすることにより鉄損を抑え、高周波特性を改善できることが知られており、アモルファス合金においても厚さを低減することが検討されている。たとえば、アモルファス合金薄帯は、通常、単ロール法等を用いた液体急冷法により作製されており、既に、Co基アモルファス合金では、3?5×10^(-5)Torrの高真空中において単ロール法にて薬(審決註:正しくは「約」)6μmまでの板厚の低減が行われている(J.Appl,Phys.646050等参照)。
・・・
(発明が解決しようとする課題)
上述したように各種磁心用の磁性材料には、高透磁率、低鉄損が高周波域(?MHz域)まで要求されており、これらは機器の高効率、小形軽量化、また磁心の小形化、高性能化などにつながる。そして、軟磁性合金薄帯であるアモルファス合金薄帯およびFe基超微細結晶合金薄帯においては、これらの要求を満足させるために、板厚を極めて薄くすることが強く望まれており、既に10-^(2)Torrより高真空状態では、極薄薄帯が得られている。
・・・
上述した手段のうち、第1および第2の極薄軟磁性合金薄帯の製造方法にしたがって各製造条件を制御することにより、10^(-2)Torr以上760Torr未満の減圧雰囲気下においてもピンホールの極めて少ない極薄Co基アモルファス合金薄帯および極薄Fe基超微細結晶合金薄帯が得られる。
・・・
ここでいう極薄薄極(審決註:正しくは「極薄薄帯」であることは明らかである。)とは、板厚が10μm以下のものをいう。
また、Fe基超微細結晶合金薄帯は、得られたFe基軟磁性合金薄帯に使用した合金の結晶化温度以上の温度で熱処理を施し、超微細結晶粒を析出させることにより製造される。
・・・実用レベルにおいて良好な軟磁気特性を示す板厚10μm以下の薄帯が得られる。この板厚は、10^(-2)Torrより高真空中で得られる薄帯にはおよばないが、高真空に到達させるために必要な付加装置や真空排気時間など生産能率を考慮すると、十分な薄さである。より好ましい板厚の範囲としては5?9μmである。」(2頁右欄13行?3頁右欄45行),
「以上の条件を満足させて溶融金属を超急冷することにより、10^(-2)?760Torr低真空中で板厚10μm未満のCo基アモルファス合金薄帯およびFe基軟磁性合金薄帯50が得られる。
・・・
「実施例2?6」
「実施例1」と同じ条件で、第1表に示される組成および真空度で作製した。
第1表から、本発明の製法を用いれば、10-2Torr以上760Torr未満の低真空中においても板厚約6μmのピンホールの極めて少ないCo基アモルファス薄帯が得られることがわかる。
・・・
「実施例8?12」
「実施例7」と同じ条件で、第1表に示される組成および真空度で作製した。
第1表に示されるように、本発明によれば、10^(-2)Torr以上760Torr未満の低真空中においても、板厚約7μmかつピンホールの極めて少ないFe基軟磁性合金薄帯が得らることがわかる。
なお、本実施例の試料をトロイダル状に巻回した後、結晶化温度以上の550℃で1時間熱処理し、平均結晶粒径が14nmの微細結晶を析出させた。これらの磁心をLCRメータを用いて初透磁率10MHz、測定磁界1mOeの条件で、1MHz、1kGの鉄損をU関数計を用いて測定したところ、それぞれ1000,1.3(w/cc)と優れた値が得られた。この値は、10^(-2)Torr以下の高真空で作製した同一組成のFe基軟磁性合金と同等の値であり、本発明の10^(-2)Torr以上760Torr未満の低真空でも優れた軟磁気特性が得られることがわかる。」(5頁右欄31行?6頁右欄22行)

〈周知例10:特開平1-157508号公報〉
/平面インダクタ、Co系アモルファス合金薄帯(実施例:16μm厚×1,実施例5:4?20μm厚(特に10?15μm)×1)/
「また、この平面インダクタにおける磁気回路では、一般に強磁性薄帯2a、2bの厚さが厚い方が磁気抵抗は小さくなりインダクタンスは増加するが、全体の厚さをできるだけ薄くしようとする平面インダクタの目的とは相反することになる。
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、構成要素の接着に伴うインダクタンスの低下を防止し、かつ単位体積当りのインダクタンス値の向上を図った平面インダクタを提供するものである。」(2頁右上欄),
「また、強磁性体層の平均厚さを4?20μmとすることにより、単位体積当りのインダクタンス値L/Vの低下を防止できる。すなわち、強磁性体層の厚さが4μm未満であると、スパイラル状導体コイルに電流が流れることによって生じる磁束がすべて通るのに必要な断面積が得られないために漏れ磁束が多くなり、インダクタンスは著しく低下し、単位体積当りのインダクタンス値L/Vは低下する。一方、強磁性体層の厚さが20μmを超えると磁気回路における強磁性体層の断面積はスパイラル状導体コイルに電流が流れることによって生じる磁束のすべてを通すには十分大きくなり、磁気抵抗は減り、漏れ磁束は少なくなってインダクタンスは大きくなるが、平面インダクタンスの体積も増加するので、L/Vはかえって低下する。」(3頁右上欄)
(実施例1)
「強磁性薄帯2a、2bは、例えは単ロール法により作製した厚さ約16μm、幅25mmのCo系非晶質合金リボン(1kHにおける実効透磁率が約1.2×10^(4)、磁歪0かこれに近いもの)から切出して作製した25mm×25mmのシートで構成されている。」(3頁右下欄),
;実施例5(5頁左上欄?右下欄、第11?12図)には、スパイラルコイル両面に1枚配置する、5,10,15,20,25μmの平均厚さが異なる5種のCo系アモルファス合金薄帯について、インダクタンスLと単位体積当たりのインダクタンスL/Vを調べたこと、その結果、Lは強磁性薄帯2a、2bの平均厚さが増すにつれて徐々に増加する傾向にあるが、L/Vは強磁性薄帯2a,2bの平均厚さが10?15μmの付近で最大値をとることが分かり、このことから、強磁性薄帯2a、2bの厚さは4?20μmの範囲が望ましく、特に10?15μmの範囲がより望ましいとしている。;

〈周知例11:特開平1-310518号公報〉
/平面インダクタ、Co系アモルファス合金薄帯(4?20μm,18μm厚×1?10)/
「本発明においては、強磁性体層の平均厚さを4?20μmとすることにより、単位体積当りのインダクタンス値の低下を防止できる。すなわち、強磁性体層の厚さが4μm未満であると、スパイラル状導体コイルに電流が流れることによって生じる磁束がすべて通るのに必要な断面積が得られないために漏れ磁束が多くなってインダクタンスが著しく低下し、単位体積当りのインダクタンス値L/Vが低下する。一方、強磁性体層の厚さが20μmを超えると磁気回路における強磁性体層の断面積はスパイラル状導体コイルに電流が流れることによって生じる磁束のすべてを通すには十分大きくなり、磁気抵抗は減り、洩れ磁束は少なくなってインダクタンスは大きくなるが、平面インダクタの体積も増加するので、L/Vはかえって低下する。」(2頁右欄?3頁左上欄),
(実施例)
「第1図(実施例)に示すように、こうした構造のスパイラル状導体コイル1を7μm厚のポリイミドフィルム(絶縁層3d)を介して3層積層し、更にこの積層体の上下両面に7μm厚のポリイミドフィルム(絶縁層3e、3f)を介して単ロール法により作製した厚み18μm、幅25mmのCo系高透磁率非晶質合金リボンより切り出した1辺の長さが25 mmの正方形薄帯(強磁性体層5a、5b)で挟んだ。そして、この積層構造の平面インダクタの側面を瞬間接着剤で接着した。」(3頁左下欄?右下欄),
「次に、基本的な構成は第1図と同様で、強磁性体層5a、5bとして厚み18μm、1辺の長さが25mmの正方形状のCo系高透磁率非晶質合金薄帯を1?10枚の範囲で積層枚数を変化させたものを用いた平面インダクタについて直流重畳特性を調べた。これらの結果を第6図?第8図に示す。・・・第6図に示されるように、直流重畳電流を流さないときのインダクタンスL0は、積層枚数nを増やしても、n=1のときの値のn倍よりもはるかに小さい値にしかならない。しかし、第6図及び第7図から、積層枚数nが多くなるほど直流重畳電流の増加に伴うインダクタンスの減少度合は小さくなり、直流重畳特性が改善されることがわかる。」(4頁左上欄?左下欄)

〈周知例12:特開平9-270334号公報〉
/平面磁気素子,Co系アモルファス薄帯(15μm厚×1)/
「【0004】平面磁気素子において、磁気シールド特性に優れ、素子の単位占有面積当たりのインダクタンスの大きい素子構造としてはスパイラル平面コイルを軟磁性体でサンドイッチした平面インダクタ構造が良く知られている。」
「【0015】本発明の平面磁気素子に用いられる軟磁性体としては、Fe系、Co系、FeCo系の合金が挙げられる。これらの軟磁性体の結晶構造は特に限定されず、単結晶、多結晶(微結晶を含む)、非晶質のいずれでもよい。その飽和磁束密度は1テスラ以上、保磁力は1エルステッド以下であることが望ましい。」,
「【0026】【実施例】以下に本発明の実施例を述べる。
実施例1
【0027】ポリイミドフィルムからなる基板に銅箔を接着し、この銅箔をウェットエッチングによって加工し、円形スパイラルコイルを形成した。この円形スパイラルコイルのもう一方の面にもポリイミドフィルムを接着した。高飽和磁束密度軟磁性体として、溶湯急冷法で作製した厚さ15μmのCo系アモルファス薄帯を5mm角に切断した。高抵抗率軟磁性体として、厚さ15μm、幅1mm、長さ5mmのニッケル-亜鉛系フェライト片を用意した。これらのCo系アモルファス薄帯およびニッケル-亜鉛系フェライト片を組み合わせて、軟磁性体および高抵抗領域を形成した。すなわち、この軟磁性体層は4分割されており、中心部に1mm×1mmの孔があいている。この孔はスパイラルコイルの端子取り出し部として利用される。このようにして作製された積層接着型平面インダクタのサイズは11mm角、厚さ0.5mmである。」

イ-2 数値限定部分について
本願発明の要件D1の上記数値限定部分は、(Co系アモルファス合金薄帯、Fe基微結晶合金薄帯のいずれか1種である)『磁性箔体を、厚さ10?25μmの薄帯を1?3枚有する厚さが5?50μmの範囲のものとすること』である。

(ア)上記〔相違点1の克服〕と、〔相違点2の克服〕のうち数値限定を除く部分(イ-1)の克服をする場合、すなわち、
引用発明の被充電部(携帯電話器等)の本体を小型化,薄型化するために、その「受信側コイル」(受電コイル)をスパイラルコイルとし、
「電磁遮蔽板」(磁性体)を、Co系アモルファス合金薄帯又はFe基微結晶合金薄帯の磁性箔体とする(『磁性箔体であって、Co系アモルファス合金薄帯、Fe基微結晶合金薄帯のいずれか1種であるとする』)場合、
当業者は、具体的に、どのような厚さの薄帯を何枚用い、全体としてどのような厚さの箔体とするかを設定する必要があるところ、
Co系アモルファス合金薄帯やFe基微結晶合金薄帯(その厚さは、熱処理する前のFe系アモルファス合金薄帯とほぼ同等である)の厚さについては、先に示した種々の周知例からすれば、下は5?9μm程度の10μm以下の極薄薄帯(周知例9)から、上は50μm(周知例7の段落【0014】)の範囲内の種々の厚さのものから選択することとなる。
薄型化の点では、当然薄い方が好ましいし、一般的には、同じ全体厚さであれば、薄いものを枚数を多くした方が磁気特性の点で有利ではある(周知例9)ものの、枚数を含めた全体厚さが小さいと磁束が飽和して遮蔽できなくなることになる。

かかる設定の際、まず考慮すべき基本的かつ重要な事項は、対象とする受電コイル側装置(被充電部)が受電する最大受電電力の仕様である。それが大きい場合は、送信コイルから発生させるべき磁束も大きく設定し(受信コイルも太くすることになる)、それに伴い渦電流の原因となる漏れ磁束も大きくなり得る(これに伴い受電効率も下がる)から、遮蔽用磁性箔体が飽和しないように枚数を多く(全体厚さを大きく)設定する必要があるが、それが小さい場合は、枚数も少なく(全体厚さを小さく)設定することが可能となる。
すなわち、設定の際、基本、当業者は、小型化,薄型化しようとする受電コイル側装置(被充電部)が受電する最大受電電力の仕様に応じて、薄帯の厚さ・枚数(枚数を含めた磁性箔体の全体厚さ)を、磁束が飽和せず磁気遮蔽できる範囲内で薄く設定するものということができる。

(イ)周知のシールド用薄帯
そして、Co系アモルファス合金薄帯やFe基微結晶合金薄帯で、
磁気遮蔽(磁気シールド)効果がありこれに用いるものとしても、5?9μm(周知例9),18μm(周知例5),20μm(刊行物4の実施例,周知例3,7),25μm(周知例8)と種々の厚さのものが知られているのであって、
刊行物4(実施の形態)には、10μm厚のFe基微結晶合金薄帯1枚でも10乃至15dBのシールド効果があることが示され(段落【0020】)、
また、周知例8(第1表)では、25μm厚のCo系アモルファス合金薄帯、Fe基微結晶合金薄帯で、7.5dB以上(1kHz),15dB以上(100kHz)の磁界シールド効果があるとされているのである。

(ウ)そうすると、小型・薄型化する対象の受電コイル側装置(被充電部)が非常に小型・薄型で、最大受電電力の仕様も相当小さい場合、遮蔽すべき磁束も相当小さいといえ、かかる装置の「電磁遮蔽板」(磁性体)である磁性箔体(Co系アモルファス合金薄帯又はFe基微結晶合金薄帯)を、
例えば、上記刊行物4(実施の形態)に「10μmシートの条件でも10乃至15dB、・・・のシールド率を得る」とされる10μm厚のFe基微結晶合金薄帯1枚、それで足りなければ2?5枚(5枚の場合全体で50μm)とすることや、周知例8の25μm厚のCo系アモルファス合金薄帯またはFe基微結晶合金薄帯を1枚、足りなければ2枚(2枚の場合全体で50μm)とする程度のことは、当業者が容易に想到し得るというべきである。
そして、そのようにしたものが、上記数値限定部分である『磁性箔体を、厚さ10?25μmの薄帯を1?3枚有する厚さが5?50μmの範囲のものとすること』を満たすことは明らかである。
また、シールド効果のある薄帯としては、上記例示した、上記10μmや25μmのものに限るものではなく、上記(イ)の各周知例にあるとおり、5?9μm,18μm,20μm等の厚さの薄帯が周知であることから、これらの具体的厚さの薄帯を用い、全体厚が50μmを超えない範囲の枚数とすることも、当業者が容易に想到し得ることである。

したがって、克服すべき数値限定部分である、(Co系アモルファス合金薄帯、Fe基微結晶合金薄帯のいずれか1種である)『磁性箔体を、厚さ10?25μmの薄帯を1?3枚有する厚さが5?50μmの範囲のものとすること』も当業者が容易に想到し得ることである。

(エ)周知の薄型インダクタ用薄帯
また、上記イ-1(イ)で示したとおり、引用発明の「電磁遮蔽板」(磁性体)と本質的に同じ磁気作用をするものといえる、薄型インダクタ用の薄板状強磁性体としてCo系アモルファス合金薄帯を用いるものが周知であるところ、かかるCo系アモルファス合金薄帯の厚さ・枚数について、
30μm厚2枚としたもの(刊行物3)、
20μm厚1枚又は2枚としたもの(周知例4)、
4?20μm(特に10?15μm)厚1枚のもの(周知例10)、
16μm厚1枚のもの(周知例10の実施例)、
18μm厚1?2枚としたもの(周知例11,1?10枚と可変しているが、1?2枚(計36μm)のものも使用できることを示していると理解される。)、
15μm厚1枚のもの(周知例12)
等、種々の厚さのものが周知なのであり、
このことからみても、Co系アモルファス合金薄帯について、『磁性箔体を、厚さ10?25μmの薄帯を1?3枚有する厚さが5?50μmの範囲のものとすること』は当業者が容易に想到し得ることというべきである。
なお、刊行物3では、30μm厚2枚を用いているが、遮蔽すべき磁束が小さければ、これに代えもう少し薄い25μm厚のものを引用発明の「電磁遮蔽板」(Co系アモルファス合金薄帯)に用いる程度のことが、格別困難である、とはいえない。

(オ )まとめ(イ-2 数値限定部分)
以上の通りであるから、上記の数値限定とすることも、当業者が容易に想到し得ることである。
なお、その効果についてみても、本願明細書には、本願発明の実施例として、Co系アモルファス合金薄帯の15μ×3層(全体厚45μm、実施例1?4,6,19,20)と15μ×1層(全体厚15μm、実施例5)の例が示されているだけであって、厚さに関する比較例等も示されていないのであるから、本願発明の要件D1で規定する数値限定である、薄帯厚の下限10μm、上限25μm、全体厚の下限5μm、上限50μmが、臨界的意義を有する値ともいえない。
なお、仮に、上限50μm等が、受電効率等の点で臨界値であるといえたとしても、それは、送信コイルの発生(最大)磁束、最大受電電力等の装置の特定の具体的仕様・条件に限定された場合のものであって、一般的なものではなく、本願発明の数値限定に格別顕著性を認めることはできない。

イ-3 まとめ(相違点2についての判断)
上記の通りであるから、上記〔相違点2の克服〕も、当業者が容易に想到し得ることである。

(3)まとめ(相違点等の判断)
以上、引用発明を出発点として、上記〔相違点の克服〕(〔相違点1の克服〕と〔相違点2の克服〕)をなすことで本願発明に達するところ、その克服は当業者が容易になし得ることである。
効果についてみても、〔相違点の克服〕をする構成の採用に伴って(奏するであろうと予測される効果に比して)格別顕著なものが本願発明にあるとも認められない。

[6]まとめ(当審の判断)
本願発明は、刊行物1?4に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

【第5】むすび
以上、本願の請求項1に係る発明は、上記刊行物1?4に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それ故、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-27 
結審通知日 2013-09-03 
審決日 2013-09-19 
出願番号 特願2007-553884(P2007-553884)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 酒井 朋広  
特許庁審判長 乾 雅浩
特許庁審判官 石井 研一
関谷 隆一
発明の名称 受電装置  
代理人 特許業務法人サクラ国際特許事務所  
代理人 特許業務法人サクラ国際特許事務所  

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