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審決分類 |
審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 H02G 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02G 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02G |
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管理番号 | 1280926 |
審判番号 | 不服2012-13422 |
総通号数 | 168 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-12-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-07-13 |
確定日 | 2013-10-31 |
事件の表示 | 特願2009- 72256「螺旋状保護具及び螺旋状保護具の取り付け方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年10月 7日出願公開,特開2010-226884〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成21年3月24日の出願であって,平成23年9月6日に手続補正がされ,平成24年4月9日付けで拒絶査定がされ,これに対して同年7月13日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同日に手続補正がされ,その後平成25年3月18日付けで審尋がされ,それに対して同年5月17日に回答書が提出されたものである。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成24年7月13日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 平成24年7月13日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は,補正前の特許請求の範囲の請求項1?4を,補正後の特許請求の範囲の請求項1?2と補正するとともに,補正前の明細書を補正するものであって,補正前後の特許請求の範囲は,以下のとおりである。 (補正前) 「【請求項1】 支柱と,前記支柱の支持部材に支持された架空のケーブルとの接触位置に取り付ける螺旋状保護具であって, 前記螺旋状保護具は,前記ケーブルに取り付けるものであり,チューブ状の本体に,左回りの螺旋部と右回りの螺旋部が反転部を介して,軸線にそって交互に連なる形状に係る分断部が形成され,前記反転部は,前記左回り螺旋部から右回り螺旋部に続く間が突起状で,同一線上に揃う同じ向きのL/R反転部と,前記L/R反転部と向きが異なると共に前記右回り螺旋部から左回り螺旋部に続く間が突起状で,同一線上に揃う同じ向きのR/L反転部とで構成されて, さらに,前記チューブ状の本体は合成ゴムであり,前記分断部は前記チューブ状の本体をカッターにより切断した切断形状で,分断面間の隙間は僅であるか,又は無く,このチューブ状の本体を引き延ばした場合に空間領域が形成され,複数のケーブルに巻き付けて,この複数のケーブルを前記支柱との接触による損傷から保護すると共に,複数のケーブルを一束にまとめることを特徴とする螺旋状保護具。 【請求項2】 支柱と,前記支柱の支持部材に支持された架空のケーブルとの接触位置に螺旋状保護具を取り付ける取り付け方法であって, 前記螺旋状保護具は,前記ケーブルに取り付けるものであり,チューブ状の本体に,左回りの螺旋部と右回りの螺旋部が反転部を介して,軸線にそって交互に連なる形状に係る分断部が形成され,前記反転部は,前記左回り螺旋部から右回り螺旋部に続く間が突起状で,同一線上に揃う同じ向きのL/R反転部と,前記L/R反転部と向きが異なると共に前記右回り螺旋部から左回り螺旋部に続く間が突起状で,同一線上に揃う同じ向きのR/L反転部とで構成されて, 前記螺旋状保護具は,ボビンに巻かれて,螺旋状保護具の取り付けに際し,前記ケーブルの所定の位置を,任意の反転部へ差し込み,そのまま差し込み方向へ螺旋に沿って回転させながら前記ケーブルを内部へ取り込んでいき,隣り合う次の反転部に達したら,その次の反転部へ前記ケーブルを差し込み,そのまま差し込み方向へ螺旋に沿って回転させながら隣り合う次の反転部に達するまで前記ケーブルを内部へ取り込む回転動作を順次繰返し,前記螺旋状保護具が所定の長さに達した場合に前記螺旋状保護具を切断して,前記ボビンを前記ケーブルに対して回転させることなく,ケーブルに沿わせて取り付けることを特徴とする螺旋状保護具の取り付け方法。 【請求項3】 前記左回り螺旋部と前記右回り螺旋部は,1.6?1.7の螺旋巻数であることを特徴とする請求項2に記載の螺旋状保護具の取り付け方法。 【請求項4】 前記チューブ状の本体は合成ゴムであり,前記分断部は前記チューブ状の本体をカッターにより切断した切断形状で,分断面間の隙間は僅であるか,又は無く,このチューブ状の本体を引き延ばした場合に空間領域が形成され,複数のケーブルに巻き付けて,複数のケーブルを前記支柱との接触による損傷から保護すると共に,複数のケーブルを一束にまとめることを特徴とする請求項2または3に記載の螺旋状保護具の取り付け方法。」 (補正後) 「【請求項1】 支柱と,前記支柱の支持部材に支持された架空のケーブルとの接触位置に取り付ける螺旋状保護具であって, 前記螺旋状保護具は,前記ケーブルに取り付けるものであり,チューブ状の本体に,左回りの螺旋部と右回りの螺旋部が反転部を介して,軸線にそって交互に連なる形状に係る分断部が形成され,前記反転部は,前記左回り螺旋部から右回り螺旋部に続く間が突起状で,同一線上に揃う同じ向きのL/R反転部と,前記L/R反転部と向きが異なると共に前記右回り螺旋部から左回り螺旋部に続く間が突起状で,同一線上に揃う同じ向きのR/L反転部とで構成されて, さらに,前記チューブ状の本体は合成ゴムであり,前記分断部は前記チューブ状の本体をカッターにより切断した切断形状で,分断面間の隙間は僅であるか,又は無く,このチューブ状の本体を引き延ばした場合に空間領域が形成され,複数のケーブルに巻き付けて,この複数のケーブルを前記支柱との接触による損傷から保護すると共に,複数のケーブルを一束にまとめ, 前記螺旋状保護具への保護力と前記ケーブルへの取り付け作業の作業性のバランスに優れるため,前記左回り螺旋部と前記右回り螺旋部は,1.6?1.7の螺旋巻数であることを特徴とする螺旋状保護具。 【請求項2】 支柱と,前記支柱の支持部材に支持された架空のケーブルとの接触位置に螺旋状保護具を取り付ける取り付け方法であって, 前記螺旋状保護具は,前記ケーブルに取り付けるものであり,チューブ状の本体に,左回りの螺旋部と右回りの螺旋部が反転部を介して,軸線にそって交互に連なる形状に係る分断部が形成され,前記反転部は,前記左回り螺旋部から右回り螺旋部に続く間が突起状で,同一線上に揃う同じ向きのL/R反転部と,前記L/R反転部と向きが異なると共に前記右回り螺旋部から左回り螺旋部に続く間が突起状で,同一線上に揃う同じ向きのR/L反転部とで構成されて, 前記螺旋状保護具は,ボビンに巻かれて,螺旋状保護具の取り付けに際し,前記ケーブルの所定の位置を,任意の反転部へ差し込み,そのまま差し込み方向へ螺旋に沿って回転させながら前記ケーブルを内部へ取り込んでいき,隣り合う次の反転部に達したら,その次の反転部へ前記ケーブルを差し込み,そのまま差し込み方向へ螺旋に沿って回転させながら隣り合う次の反転部に達するまで前記ケーブルを内部へ取り込む回転動作を順次繰返し,前記螺旋状保護具が所定の長さに達した場合に前記螺旋状保護具を切断して,前記ボビンを前記ケーブルに対して回転させることなく,ケーブルに沿わせて取り付け, 前記螺旋状保護具への保護力と前記ケーブルへの取り付け作業の作業性のバランスに優れるため,前記左回り螺旋部と前記右回り螺旋部は,1.6?1.7の螺旋巻数であり, 前記チューブ状の本体は合成ゴムであり,前記分断部は前記チューブ状の本体をカッターにより切断した切断形状で,分断面間の隙間は僅であるか,又は無く,このチューブ状の本体を引き延ばした場合に空間領域が形成され,複数のケーブルに巻き付けて,複数のケーブルを前記支柱との接触による損傷から保護すると共に,複数のケーブルを一束にまとめることを特徴とする螺旋状保護具の取り付け方法。」 2 補正事項の整理 本件補正のうち,特許請求の範囲についての補正事項を整理すると,以下のとおりである。 (補正事項1) 補正前の請求項1の「複数のケーブルを一束にまとめ」を,補正後の請求項1の「複数のケーブルを一束にまとめ, 前記螺旋状保護具への保護力と前記ケーブルへの取り付け作業の作業性のバランスに優れるため,前記左回り螺旋部と前記右回り螺旋部は,1.6?1.7の螺旋巻数である」と補正すること。 (補正事項2) 補正前の請求項2の「ケーブルに沿わせて取り付けること」を,補正後の請求項2の「ケーブルに沿わせて取り付け, 前記螺旋状保護具への保護力と前記ケーブルへの取り付け作業の作業性のバランスに優れるため,前記左回り螺旋部と前記右回り螺旋部は,1.6?1.7の螺旋巻数であり, 前記チューブ状の本体は合成ゴムであり,前記分断部は前記チューブ状の本体をカッターにより切断した切断形状で,分断面間の隙間は僅であるか,又は無く,このチューブ状の本体を引き延ばした場合に空間領域が形成され,複数のケーブルに巻き付けて,複数のケーブルを前記支柱との接触による損傷から保護すると共に,複数のケーブルを一束にまとめること」と補正すること。 (補正事項3) 補正前の請求項3,4を削除すること。 3 新規事項の追加の有無及び補正の目的の適否について (1)新規事項の追加の有無について (1-1)補正事項1について 補正後の請求項1の「前記螺旋状保護具への保護力と前記ケーブルへの取り付け作業の作業性のバランスに優れるため,前記左回り螺旋部と前記右回り螺旋部は,1.6?1.7の螺旋巻数である」ことは,本願の願書に最初に添付した明細書(以下願書に最初に添付した明細書を「当初明細書」という。)の段落【0031】に「前記左回り螺旋部13と右回り螺旋部15は,1.6?1.7の螺旋巻数となっていることが好ましい。すなわち,螺旋状保護具11への保護力とケーブル7への取り付け作業の作業性のバランスに優れるためである。」と記載されているから,補正事項1は,本願の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであり,当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものである。 (1-2)補正事項2について 補正後の請求項2の「前記螺旋状保護具への保護力と前記ケーブルへの取り付け作業の作業性のバランスに優れるため,前記左回り螺旋部と前記右回り螺旋部は,1.6?1.7の螺旋巻数」については,補正事項1のところで述べたとおり,当初明細書の段落【0031】に記載されており,また,「前記チューブ状の本体は合成ゴムであ」ることについては,当初明細書の段落【0023】に「螺旋状保護具11の素材としては,剛性を備えた合成樹脂,合成ゴム等で形成することができる。」と記載され,「前記分断部は前記チューブ状の本体をカッターにより切断した切断形状で,分断面間の隙間は僅であるか,又は無く,このチューブ状の本体を引き延ばした場合に空間領域が形成され」ることについては,当初明細書の段落【0027】に「前記分断部は,チューブ本体を,カッター等により切断して形成するものである。換言すれば,分断部はチューブ本体が切断された切断形状であり,通常は分断面間の隙間は僅かか,又は無いが,チューブを引き延ばした場合には空間領域が形成される。」と記載され,「複数のケーブルに巻き付けて,複数のケーブルを前記支柱との接触による損傷から保護すると共に,複数のケーブルを一束にまとめること」については,当初明細書の段落【0039】に「複数のケーブル7に螺旋状保護具11を容易に巻き付けることができるとともに,前記ケーブル7を,前記支柱1との接触による損傷から保護することができる。さらに,複数のケーブル7を一束にまとめることができる」と記載されているから,補正事項2は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであり,当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものである。 (1-3)補正事項3について 補正事項3は補正前の請求項3,4を削除するものであるので,当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであることは明らかである。 したがって,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定に規定する要件を満たすものである。 (2)補正の目的の適否について (2-1)補正事項1について 補正事項1は,補正前の請求項1の「左回り螺旋部と前記右回り螺旋部」に対して,「1.6?1.7の螺旋巻数」としたものであるという「分断部」の形状に関する技術的限定を加えるものであるから,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (2-2)補正事項2について 補正事項2は, ・補正前の請求項2の「左回り螺旋部と前記右回り螺旋部」に対して,「1.6?1.7の螺旋巻数」としたものであるという「分断部」の形状に関する技術的限定を加え, ・「チューブ状の本体」が,「合成ゴムであ」るという「材料」に関する技術的限定を加え, ・また「分断部」に対して,「本体をカッターにより切断した切断形状で,分断面間の隙間は僅であるか,又は無く,このチューブ状の本体を引き延ばした場合に空間領域が形成され」るという「形状」に関する技術的限定を加え, ・「螺旋状保護具」に対して,「複数のケーブルに巻き付けて,複数のケーブルを前記支柱との接触による損傷から保護すると共に,複数のケーブルを一束にまとめる」という「機能」に関する技術的限定を加えたものであるから,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (2-3)補正事項3について 補正事項3は,補正前の請求項3,4の削除であるから,補正事項3は,特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当する。 (3)小括 以上検討したとおりであるから,本件補正のうち特許請求の範囲についての補正は特許法第17条の2第3項及び第5項に規定する要件を満たすものである。 したがって,本件補正は適法になされたものである。 そして,本件補正は,特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものに該当する補正を含むものであるから,本件補正による補正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて,以下更に検討する。 4 独立特許要件について (1)補正発明 本件補正による補正後の請求項1?2に係る発明は,本件補正により補正された明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1?2に記載されている事項により特定されるとおりのものであり,そのうちの請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)は,請求項1に記載されている事項により特定されるものであり,再掲すると以下のとおりのものである。 「支柱と,前記支柱の支持部材に支持された架空のケーブルとの接触位置に取り付ける螺旋状保護具であって, 前記螺旋状保護具は,前記ケーブルに取り付けるものであり,チューブ状の本体に,左回りの螺旋部と右回りの螺旋部が反転部を介して,軸線にそって交互に連なる形状に係る分断部が形成され,前記反転部は,前記左回り螺旋部から右回り螺旋部に続く間が突起状で,同一線上に揃う同じ向きのL/R反転部と,前記L/R反転部と向きが異なると共に前記右回り螺旋部から左回り螺旋部に続く間が突起状で,同一線上に揃う同じ向きのR/L反転部とで構成されて, さらに,前記チューブ状の本体は合成ゴムであり,前記分断部は前記チューブ状の本体をカッターにより切断した切断形状で,分断面間の隙間は僅であるか,又は無く,このチューブ状の本体を引き延ばした場合に空間領域が形成され,複数のケーブルに巻き付けて,この複数のケーブルを前記支柱との接触による損傷から保護すると共に,複数のケーブルを一束にまとめ, 前記螺旋状保護具への保護力と前記ケーブルへの取り付け作業の作業性のバランスに優れるため,前記左回り螺旋部と前記右回り螺旋部は,1.6?1.7の螺旋巻数であることを特徴とする螺旋状保護具。」 (2)引用例の記載及び引用発明 ア 本願の出願前に日本国内において頒布され,原査定の根拠となった拒絶の理由において引用された特開2008-68922号公報(以下「引用例」という。)には,「通信ケーブル結束用具」(発明の名称)に関して,図1?5とともに以下の記載がある(なお,下線は当合議体にて付加したものである。)。 (ア)「【0009】 図1?図5は,この発明の第1実施例を示すものである。 図1,図2において,1は通信ケーブル結束用具(以下「結束用具」という)である。この結束用具1は,例えば,プラスチック製パイプ等で,弾性復元力を有する筒状部材からなる所定長さの用具本体2を備えている。 【0010】 この用具本体2には,長手方向に連続する切り離し部3を形成することで,通信機器(図示せず)間の複数の通信ケーブルGを結束させる(図3参照)。つまり,用具本体2は,1回転あるいは2回転で通信ケーブルGの束を結束できる形状記億の復元力を持つもので,プラスチックの材質,厚さ,螺旋状の切り離し部3の間隔の調整で最良の形態に形成されている。 【0011】 用具本体2の切り離し部3は,図1,図2に示すように,長手方向の一定の区間Pにおいて,右方向で一定のピッチで螺旋状に1回転から2回転周回する右スパイラル部4を形成する右スパイラル切り離し部5と,回転方向が右方向から左方向になるよう緩やかな弧を描いて反転する左反転部6を形成する左反転切り離し部7と,この左反転切り離し部7を境にして右スパイラル部4と対向する左方向で且つ一定のピッチで螺旋状に1回転から2回転周回する左スパイラル部8を形成する左スパイラル切り離し部9と,回転方向が左方向から右方向になるよう緩やかな弧を描いて反転する右反転部10を形成する右反転切り離し部11とが,一つのグループとして形成される。 【0012】 そして,用具本体2には,前記切り離し部3の一つのグループ(区間P)を順次に繰り返して形成することにより,右スパイラル部4と左反転部6と左スパイラル部8と右反転部10とが複数形成される。 【0013】 …(中略)… 【0015】 次に,この第1実施例の作用を説明する。 図3,図5に示すように,束ねる複数の通信ケーブルGの巻き始めは,どこの位置からでも可能である。 所定長さの結束用具1と束ねる複数の通信ケーブルGとを,併せて左手で握る。 そして,左手近くの山側左反転縁部(左反転先端部)14を,右手で摘んで外側に大きくひねって回し,右スパイラル部4及び左スパイラル部8まで開口させ,複数の通信ケーブルGを束にして巻き付ける。この巻き付けた部分を左手で握り直し,結束状態を維持する。 次に,その先の右反転山側縁部(右反転先端部)19を,摘んで逆外側に大きくひねって回し,両側の右スパイラル部4及び左スパイラル部8全体を開口し,通信ケーブルGの束に巻きつける。 そして,順次,左手を移動し,同様の作業を実施することで,通信ケーブルG巻き付けが完了する。 最後に,結束用具1の両端をテープ等の固着具で止める。 よって,結束用具1は,交互する左右のスパイラル部4,8及び反転部6,10により,通信ケーブルGの束の外周を旋回せずに結束が可能である。 【0016】 この結果,結束用具1が通信機器間の複数の通信ケーブルGを方向別に整理して結束し,これにより,通信機器周辺が整理され見栄えが良くなるとともに,通信ケーブルGのルート判別が容易となり,併せて,通信ケーブルGが結束用具1で保護され,保全対策や,清掃や通信機器の移動がし易く,作業性の良い環境を得る。 また,結束用具1を通信ケーブルGの束に巻き付けるのに,通信ケーブルGの束の外周を旋回させる工程を省くことで,1メートルの長さでは,結束作業時間が従来の半分以下で完了する。長い結束作業程効果があり,一本物で10メートル以上連続して巻くことも可能で,作業効率は変わらず,簡便で且つ廉価に,通信ケーブルGの束を結束用具1に結束させることができる。」 <引用発明の認定> 以上を総合すると,引用例には,以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「筒状部材からなる所定長さの用具本体2に,右方向で一定のピッチで螺旋状に1回転から2回転周回する右スパイラル部4を形成する右スパイラル切り離し部5と,回転方向が右方向から左方向になるよう緩やかな弧を描いて反転する左反転部6を形成する左反転切り離し部7と,この左反転切り離し部7を境にして右スパイラル部4と対向する左方向で且つ一定のピッチで螺旋状に1回転から2回転周回する左スパイラル部8を形成する左スパイラル切り離し部9と,回転方向が左方向から右方向になるよう緩やかな弧を描いて反転する右反転部10を形成する右反転切り離し部11とが,一つのグループとして形成された通信ケーブルGの束を結束する結束用具1。」 (3)対比 以下に,補正発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「結束用具1」は,スパイラル(螺旋)部を有していること及び引用例の段落【0016】から「通信ケーブルGが結束用具1で保護され」ることが分かるから,本願発明の「螺旋状保護具」に相当する。 イ また,引用発明の「『左反転切り離し部7を境にして右スパイラル部4と対向する左方向で且つ一定のピッチで螺旋状に』『左スパイラル部8を形成する左スパイラル切り離し部9』」,「『右方向で一定のピッチで螺旋状に』『右スパイラル部4を形成する右スパイラル切り離し部5』」,「回転方向が左方向から右方向になるよう緩やかな弧を描いて反転する右反転部10を形成する右反転切り離し部11」「回転方向が右方向から左方向になるよう緩やかな弧を描いて反転する左反転部6を形成する左反転切り離し部7」は,それぞれ本願発明の「『左回りの螺旋部』『に係る』『分断部』」,「『右回りの螺旋部』『に係る』『分断部』」,「左回り螺旋部から右回り螺旋部に続く間が突起状で,同一線上に揃う同じ向きのL/R反転部」,「L/R反転部と向きが異なると共に前記右回り螺旋部から左回り螺旋部に続く間が突起状で,同一線上に揃う同じ向きのR/L反転部」に相当する。 ウ したがって,引用発明と補正発明とは,「チューブ状の本体に,左回りの螺旋部と右回りの螺旋部が反転部を介して,軸線にそって交互に連なる形状に係る分断部が形成され,前記反転部は,前記左回り螺旋部から右回り螺旋部に続く間が突起状で,同一線上に揃う同じ向きのL/R反転部と,前記L/R反転部と向きが異なると共に前記右回り螺旋部から左回り螺旋部に続く間が突起状で,同一線上に揃う同じ向きのR/L反転部とで構成されて」いる点で一致する。 エ 引用発明の「通信ケーブルGの束を結束する」ことは,複数のケーブルを束ねて結束していることであるから,引用発明と補正発明とは「複数のケーブルに巻き付けて」「複数のケーブルを一束にまとめ」ている点で一致する。 したがって,補正発明と引用発明とは, (一致点) 「ケーブルの螺旋状保護具であって, 前記螺旋状保護具は,前記ケーブルに取り付けるものであり,チューブ状の本体に,左回りの螺旋部と右回りの螺旋部が反転部を介して,軸線にそって交互に連なる形状に係る分断部が形成され,前記反転部は,前記左回り螺旋部から右回り螺旋部に続く間が突起状で,同一線上に揃う同じ向きのL/R反転部と,前記L/R反転部と向きが異なると共に前記右回り螺旋部から左回り螺旋部に続く間が突起状で,同一線上に揃う同じ向きのR/L反転部とで構成され, 複数のケーブルに巻き付けて,複数のケーブルを一束にまとめたことを特徴とする螺旋状保護具。」 である点で一致し,以下の点で相違する。 (相違点1) 補正発明は「支柱と,前記支柱の支持部材に支持された架空のケーブルとの接触位置に取り付け」「ケーブルを前記支柱との接触による損傷から保護する」保護具であるのに対して,引用発明は「通信機器間の」「通信ケーブルの」保護具である点。 (相違点2) 補正発明は,「チューブ状の本体は合成ゴムであり,前記分断部は前記チューブ状の本体をカッターにより切断した切断形状で,分断面間の隙間は僅であるか,又は無く,このチューブ状の本体を引き延ばした場合に空間領域が形成され」るものであるのに対して,引用発明はこの点が特定されていない点。 (相違点3) 補正発明は,「左回り螺旋部と」「右回り螺旋部」の「螺旋巻数」が「螺旋状保護具への保護力と前記ケーブルへの取り付け作業の作業性のバランスに優れるため,」「1.6?1.7」回転であるのに対して,引用発明は,「1回転から2回転」である点。 (4)判断 (4-1)相違点1について ア スパイラル(螺旋状)保護具を,高所で作業が必要な架空ケーブルの保護具として,支柱と前記支柱の支持部材に支持された架空のケーブルとの接触位置に取り付けることは,下記の周知例1にも記載されているように周知の技術である。 イ そして,保護具を設けることにより,架空ケーブルが接触等により損傷を受けることから保護されるという効果も,周知例1にも記載されているように自明である。 ウ したがって,周知の技術を勘案し,引用発明の保護具を,周知の支柱と,前記支柱の支持部材に支持された架空のケーブルとの接触位置に取り付け,ケーブルを前記支柱との接触による損傷から保護することは,当業者が容易になし得た事項である。 (ア)周知例1:実願昭63-76495号(実開平1-180125号)のマイクロフィルム 本願の出願前に日本国内において頒布され,原査定の根拠となった拒絶の理由において提示された実願昭63-76495号(実開平1-180125号)のマイクロフィルムには,「ケーブル保護用スパイラルスリーブ」(考案の名称)に関して,図5とともに以下の記載がある a「前記のように構成した本考案のケーブル保護用スパイラルスリーブは,プラスチック外被が傷つくおそれのあるケーブルに装着して保護する。例えば第5図示のように電柱に吊架されたメッセンジャワイヤWからハンガーHによって吊り下げられた架空ケーブルCの外周にスパイラル帯条1を前記のようにして巻付けて装着する。このようにスパイラルスリーブをケーブルに装着しておけば,ケーブルが揺れ動いてもケーブル被覆の損傷が防止されることになる。」(公報明細書第6ページ1行?10行) (4-2)相違点2について ア 結束具の材料として合成ゴムを用い,カットすることによりスパイラル状に形成することは,例えば以下の周知例2に,「ニトリル-ブタジエン系ゴム,スチレン-ブタジエン系ゴム」等の合成ゴムを材料とし,「成形した後,そのチューブをスパイラル状にカットすることにより作製」した「スパイラルチューブ」が記載されているようにケーブルの結束具という技術分野において周知の技術である。 イ そして,引用例の結束具がケーブル保護具の機能を持つことは(3)アで検討したとおりであるので,上記周知の技術を勘案し,引用発明において,材料として合成ゴムを採用し,スパイラル状にカットすることにより螺旋状保護具とすることは,当業者が容易になし得たことである。 ウ そして,カットによりスパイラルを形成する時に,ケーブルを保護する程度,ケーブル挿入のための作業性等を考慮し,分断面間の隙間を僅かとするか,又は無しとすることは当業者が適宜なし得た設計的事項といえる。 エ また,材料として,伸縮性の良好な合成ゴムを用いれば,「チューブ状の本体を引き延ばした場合に」ゴムが変形して,「空間領域が形成され」るようになることは当業者の予測の範囲内である。 (ア)周知例2:特開平10-70808号公報 本願の出願前に日本国内において頒布された特開平10-70808号公報(以下「周知例2」という。)には,「スパイラルチューブ」(発明の名称)に関して,図1?3とともに以下の記載がある a「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は,スパイラル形状を呈するスパイラルチューブに関し,特に,複数本のケーブルを束ねるために使用されるスパイラルチューブに関する。 【0002】 【従来の技術】複数本のケーブル(ビニール被覆電線)を配線する場合,一般に,それらケーブルはスパイラルチューブによって束ねられる。」 b「【0011】 【発明の実施の形態】次に,本発明について図面を参照して詳細に説明する。 【0012】図1を参照して,本発明の第1の実施の形態によるスパイラルチューブ10は,スパイラル形状を呈し,例えば,図3に示すように複数本のケーブル20(図3)を束ねるために使用される。図示のスパイラルチューブ10は,有機結合剤12中に軟磁性体粉末14を混練・分散した複合磁性体から構成されている。有機結合剤12としては,伸縮特性の良好なエラストマーを使用することが好ましい。また,軟磁性体粉末14は,実質的に偏平状の粉末であることが好ましい。 【0013】有機結合剤12としては,ポリエステル系樹脂,ポリ塩化ビニル系樹脂,ポリビニルブチラール樹脂,ポリウレタン樹脂,セルロール系樹脂,ニトリル-ブタジエン系ゴム,スチレン-ブタジエン系ゴム等の熱可塑性樹脂あるいはそれらの重合体等を挙げることができる。 【0014】軟磁性体粉末14としては,高周波透磁率の大きな鉄アルミ珪素合金(これはセンダスト(商標)と呼ばれる),鉄ニッケル合金(パーマロイ)をその代表的素材として挙げることができる。軟磁性体粉末14は,微細粉末化され表面部分を酸化して使用される。なお,軟磁性体粉末14のアスペクト比は十分に大きい(例えば,おおよそ5:1以上)ことが望ましい。 【0015】このようなスパイラルチューブ10は,押出し成形法によりチューブ状に押出し成形した後,そのチューブをスパイラル状にカットすることにより作製することができる。すなわち,押出し機(図示せず)を用いて,軟磁性体粉末14を有機結合剤12中に混練・分散させた原料を溶融したものをダイ(図示せず)から押出すことによってチューブ(図示せず)を成形し,そのチューブをスパイラル状にカットする。」 (4-3)相違点3について ア 引用発明は,螺旋巻数が1回転から2回転であり,補正発明の1.6?1.7回転はこの範囲に含まれている。 イ そして,以下の周知例3に記載されているように,ケーブルの螺旋保持具として作業性を重視して螺旋巻数を1.7?1.9程度にすることは,当該技術分野において周知の技術であり,螺旋巻数として,1.7前後の値はごく普通の値として用いられているものである。 ウ また,本願の明細書の段落【0031】には,「1.6?1.7の螺旋巻数となっていることが好ましい。」と記載され,それは「螺旋状保護具11への保護力とケーブルの取付作業の作業性のバランスに優れるためである。」としか記載されておらず,その他の記載を精査しても,螺旋巻数を1.6?1.7としたことにより,当業者の予想を超えた作用効果が生じているとは認められない。したがって,補正発明において,螺旋巻数を1.6?1.7としたことによる技術的な臨界的意義も認められない。 エ しがたって,相違点3は,当業者が容易になし得た範囲に含まれるものである。 (ア)周知例3:特開2005-168284号公報 本願の出願前に日本国内において頒布された特開2005-168284号公報には,「螺旋状支持具およびその架設方法およびケーブル敷設方法」に関して,図9?12とともに以下の記載がある a「【0055】 図9?図12は螺旋状支持具1の第二の実施形態を示したものである。螺旋状支持具1は,左回り螺旋部3と右回り螺旋部5と反転部7とからなっている。反転部7は同一線上に揃う同一向きのL/R反転部7LとそのL/R反転部7Lと向きが反対で同一線上に揃う同一向きのR/L反転部7Rとで構成されていることは前記第一実施形態と同様であるが,左回り螺旋部3と右回り螺旋部5は前記反転部7と共に線条間が予め開いた形状に作られ,引き延ばすことなく架設されるようになっている。 【0056】 反転部7は,図11に示すように軸線2から見た側面において,左回り螺旋部3と右回り螺旋部5によって作られる円周の上に突出している。これにより,鎖線で示すように突出した反転部7は支持線等21に差し込む時にそのまま回転(矢印)させることで容易に差し込むことができる。また,螺旋状支持具1内の支持線等21及びケーブル22は,風の影響で大きく振れても,反転部7の外側へ回り込むことはなく確実な架設状態が得られるようになる。 【0057】 一方,左回り螺旋部3と右回り螺旋部5は,1.7?1.9の同一螺旋巻数に設定されていて,螺旋の巻き角度にすると612°?684°未満となっている。 【0058】 1.7?1.9の螺旋巻数は,作業性を重視したもので,反転部7を支持線等21に差し込んだ後,そのまま最大でも1.9回りさせることで支持線等21を螺旋状支持具1内へ短時間で取り込めることが可能となるもので,実験の結果では1.8が最適な螺旋巻数となっている。」 (4-4)判断についてのまとめ 以上検討したとおり,補正発明は,当業者における周知の技術を勘案することにより,引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (4-5)独立特許要件についてのまとめ 本件補正は,補正後の特許請求の範囲により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないものである。 (5)補正の却下の決定についてのむすび 以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?4に係る発明は,平成23年9月6日の手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲1?4に記載されている事項により特定されるとおりのものであり,そのうちの請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,請求項1に記載されている事項により特定される以下のとおりのものである。 「支柱と,前記支柱の支持部材に支持された架空のケーブルとの接触位置に取り付ける螺旋状保護具であって, 前記螺旋状保護具は,前記ケーブルに取り付けるものであり,チューブ状の本体に,左回りの螺旋部と右回りの螺旋部が反転部を介して,軸線にそって交互に連なる形状に係る分断部が形成され,前記反転部は,前記左回り螺旋部から右回り螺旋部に続く間が突起状で,同一線上に揃う同じ向きのL/R反転部と,前記L/R反転部と向きが異なると共に前記右回り螺旋部から左回り螺旋部に続く間が突起状で,同一線上に揃う同じ向きのR/L反転部とで構成されて, さらに,前記チューブ状の本体は合成ゴムであり,前記分断部は前記チューブ状の本体をカッターにより切断した切断形状で,分断面間の隙間は僅であるか,又は無く,このチューブ状の本体を引き延ばした場合に空間領域が形成され,複数のケーブルに巻き付けて,この複数のケーブルを前記支柱との接触による損傷から保護すると共に,複数のケーブルを一束にまとめることを特徴とする螺旋状保護具。」 第4 引用例に記載された発明 引用例1には,上記第2,4(2)に記載したとおり,引用発明が記載されている。 第5 判断 本願発明は,補正発明から,上記第2,2に記載した補正事項1についての補正によりなされた技術的限定を省いたものである。 そうすると,第2,4(4)において検討したとおり,補正発明は,周知の技術を勘案することにより,引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,補正発明から技術的限定を省いた本願発明についても,当然に,周知の技術を勘案することにより,引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって,本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第6 むすび 以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-09-02 |
結審通知日 | 2013-09-03 |
審決日 | 2013-09-19 |
出願番号 | 特願2009-72256(P2009-72256) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H02G)
P 1 8・ 56- Z (H02G) P 1 8・ 121- Z (H02G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 南 正樹 |
特許庁審判長 |
松本 貢 |
特許庁審判官 |
加藤 浩一 西脇 博志 |
発明の名称 | 螺旋状保護具及び螺旋状保護具の取り付け方法 |
代理人 | 三好 秀和 |