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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F24C |
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管理番号 | 1280938 |
審判番号 | 不服2012-22650 |
総通号数 | 168 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-12-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-11-16 |
確定日 | 2013-10-31 |
事件の表示 | 特願2008-150086号「加熱調理器」拒絶査定不服審判事件〔平成21年12月17日出願公開、特開2009-293892号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成20年6月9日の出願であって、平成24年8月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年11月16日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 その後、当審において、平成25年6月24日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、同年8月19日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1ないし5に係る発明は、平成25年8月19日付け手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「キッチンに形成した略長方形の穴部に収容される略直方体の本体と、前記キッチン上面と略同一面に位置する前記本体の天面に備えた略長方形の天板と、前記天板を囲う外枠と、前記本体に内蔵されて前記天板に載置された被加熱物を加熱する加熱装置と、前記加熱装置の制御回路と、前記天板の前部端近傍下面に設けた静電タッチ式のスイッチと、前記天板四隅の角部の少なくとも前記本体前側の1か所を削除して設けた収納部と、前記収納部に収納された前記制御回路の電源スイッチと、前記収納部に収納され、前記天板を通過させずに前記本体の上方に配置された機器と赤外線で通信を行うための赤外線通信装置とで構成し、前記赤外線通信装置は前記電源スイッチと同一面で前記電源スイッチよりも後方で前記穴部の外側でかつ前記キッチン上面より高い位置に配され、前記天板上の液体が前記収納部に流れ込んで前記赤外線通信装置から発信する赤外線を遮蔽することを防ぐとともに前記静電タッチ式のスイッチが配置される領域と前記収納部とが区分されるように前記天板と前記収納部の間に前記天板上面より高い凸部を形成した加熱調理器。」 3.引用例 これに対して、当審で通知した拒絶理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2005-268208号公報(以下「引用例1」という。)及び特開2007-198613号公報(以下「引用例2」という。)には、それぞれ以下の各事項が記載されている。 [引用例1について] (1a)「【請求項1】 本体と、トッププレート及び前記トッププレートの周縁部を枠状に覆うトップフレームを有し前記本体上部に装着されるトップユニットと、前記トッププレートの下部に配置され前記トッププレート上の被加熱物を誘導加熱する複数のインダクションヒータと、前記トッププレート上面に形成された1つ以上の操作キーを有し前記操作キーを指で触れる操作により制御命令を入力する操作部であって前記制御命令に応じて前記複数のインダクションヒータのうちの対応するインダクションヒータの動作が制御される複数の個別操作スイッチ部と、所定以上の力で電源スイッチ操作部を操作することにより開閉動作が行われるスイッチであってその開閉動作に応じて前記制御命令が有効化及び無効化される電源スイッチとを備え、前記電源スイッチ操作部は、前記トップユニットの使用者側の左右いずれか一方の角部近傍上面に、どの前記操作キーよりも前記角部に近接させて配置されるとともに、前記個別操作スイッチ部と前記電源スイッチ操作部との間に、前記トッププレート上面に段差を形成する電源スイッチ識別表示部を設けてなる誘導加熱調理器。 【請求項2】 電源スイッチ識別表示部は、トップユニットの角部を構成するトップフレームの2辺の内縁を相互に結ぶ段差をトッププレート上面に形成する請求項1に記載の誘導加熱調理器。 【請求項3】 電源スイッチ識別表示部は、トップフレームと一体形成された金属板でトップユニットの角部を覆うかまたは囲うように形成され、電源スイッチ操作部を前記電源スイッチ識別表示部の範囲内に設けてなる請求項2に記載の誘導加熱調理器。 ・・・ 【請求項5】 トッププレートは、平面形状が略長方形で使用者側の角部の一方を三角形状に切り欠いた形状に形成されるとともに、前記トッププレートの切り欠いた部分である切り欠き部を電源スイッチ識別表示部で覆う構成とした請求項3または4に記載の誘導加熱調理器。」 (1b)「【0025】 図1は、システムキッチン等の流し台のキャビネットに設けられた開口部(図示せず)に、調理器ユニット部が収納された本体1をはめ込んだビルトイン型の誘導加熱調理器を示している。 【0026】 図に示すように、本体1の上面にはトップユニット40が固定されている。トップユニット40は、耐熱性と電気絶縁性に優れた耐熱ガラス又は結晶化セラミックからなる板状のトッププレート2と、枠状に形成されトッププレート2の周囲を覆って保護するトップフレーム8を有している。トッププレート2の下部には、被加熱物を誘導加熱するコイルである2個のインダクションヒータ5a、5bが設けられている。・・・トッププレート2の表面上には、また、触れる操作によりインダクションヒータ5aを動作させる複数の操作キー(タッチパッド)で構成された個別操作スイッチ部4aが設けられている。同様に、トッププレート2上面において、インダクションヒータ5bを動作させる複数の操作キー(タッチパッド)で構成された個別操作スイッチ部4bがその動作を表示する動作表示部3bの近傍に対応させて配置されている。」 (1c)「【0027】 図2は、本体1をキャビネット7内に落とし込んで設置した状態の詳細を示している。トッププレート2の下には平板状に巻線を巻回した誘導加熱用コイルであるインダクションヒータ5a、5bが配置されている。インバータ電源装置6から高周波交流電流の供給を受けたインダクションヒータ5a、5bから高周波磁界を発生させることにより、被加熱物である鍋9の鍋底に渦電流を発生させ、発熱させて調理することができるようになっている。インバータ電源装置6の出力を制御する制御部10は、個別操作スイッチ部4a、4bに属する操作キーを指で触れる操作により制御命令(加熱開始、停止、又は出力値の設定若しくは変更等の命令をいう)を入力しその制御命令に応じて複数のインダクションヒータ5a、5bのうちの対応するインダクションヒータの動作を制御し、また、センサー17による部品温度又はその雰囲気温度の情報によってインダクションヒータ5a、5bの加熱出力や加熱動作の起動・停止をコントロールしている。また、制御部10は、電源スイッチ28の開閉動作に応じて、個別操作スイッチ部4a、4bおよび5cを含む全て(又は特定)の入力命令の無効化及び有効化を決定する。また、いずれかのヒータが動作している場合には、電源スイッチ28の動作に応じて加熱動作を禁止する。 【0028】 本体1の操作キー全て(又は特定のもの)に対する入力操作の有効化、無効化を決定する電源スイッチ28及び、その開閉動作を行わせるための入力操作部である電源スイッチ操作部26が、トップユニット40に組み込まれている。」 (1d)【0029】 電源スイッチ操作部26と、個別操作スイッチ部4a、4bおよび5cとを視覚的に区別するための「電源スイッチ識別表示部」として、トップユニット40の使用者側の右側の角部上面に、フレームコーナ部42を形成している。フレームコーナ部(電源スイッチ識別表示部)42は、トップユニット40の角部においてトップフレーム8と一体形成された金属板で電源スイッチ操作部26周囲を覆うように形成されており、トップユニット40の角部につながるトップフレーム8の縦、横2辺の内縁の途中をバイパスするように相互にかつ連続的に結ぶ段差を形成する段部8aをトッププレート2の上面に形成する。 【0030】 電源スイッチ操作部26は、フレームコーナ部42の内縁で形成された段差により囲まれ、フレームコーナ部42の上面より、電源スイッチ操作部26の上面が下方に位置するように構成されている。また、電源スイッチ操作部26の周囲でシール部材41によりフレームコーナ部42の裏面との間でシールされている。 【0031】 ・・・いずれにしても、電源スイッチ操作部26は、トップユニット40の上面に設けられており、かつトップユニット40の使用者側(手前側)の右側の角部に、トップフレーム8と一体に形成された電源スイッチ識別表示部であるフレームコーナ部42の範囲内に設けられている。 【0032】 そして、図1に示すようにシステムキッチンのキャビネット7の開口部には、本体1が、本体1上部に設けられたフランジ部でキャビネット7の開口部の周囲に支持され吊り下げられるようにはめ込まれている。・・・」 (1e)「【0034】 図3は、個別操作スイッチ部4a、4b、電源スイッチ操作部26および電源スイッチ28近傍の詳細な構成を示している。・・・個別操作スイッチ部4a、4bは、トッププレート2の上面に設けられた複数の操作キー(電極)と、これらの操作キーにそれぞれ対向してトッププレート2の下面に設けられた複数の電極44と、トッププレート2の下面の電極44に押し付けられる状態で取り付けられている接点端子11で構成されている。接点端子11は、弾力性を持つ導電性を有する材料で、中央にたわむ部分を設けた形状であって、本実施の形態では金属の薄板で構成している。接点端子11の先端部をトッププレート2の下面の電極に常時接触しているようにするとともに、その取り付けの位置が決まるように、接点端子11が樹脂などのホルダー12に固定されている。そして、使用者がこの個別操作スイッチ部4a、4bの操作キーに触れたときの当該操作キーと対向するトッププレート裏面電極44間の静電容量の変化を制御部10で検出してその信号を制御部10のマイコンに送って処理している。・・・」 (1f)「【0035】 トッププレート2は、平面形状が略長方形となっており、使用者から見て右側手前角部が斜めにカットされ角部を含め三角形状に切り欠かれている(以下このカットされた部分を「切り欠き部」という)。トッププレート2の周縁部は、トップフレーム8と同一のステンレスあるいは鉄板等の金属が折り曲げられて形成されたフレームコーナ部(電源スイッチ識別表示部)42により覆われ、割れたり欠けたりしないように保護されている。枠状のトップフレーム8は、全体外形が略長方形となっており、トッププレート2の周縁部を覆うとともに、平面形状が略三角形の面でなるフレームコーナ部42がトッププレート2の外側の切り欠き部を覆い、水の浸入を防止するシール部材43がトップフレーム8及びフレームコーナ部42と、トッププレート2間に設けられている。 【0036】 このように、トッププレート2は、平面形状が略長方形で使用者側の角部の一方を三角形状に切り欠いた形状に形成され、トッププレート2の切り欠いた部分をフレームコーナ部(電源スイッチ識別表示部)42で覆う構成としたので、トップフレーム8の外形は、極端な切り欠きのない長方形に近い形状となりデザイン的にアンバランスがないようにすることができるとともに、トッププレート2の形状が単に直線的に角部を切り欠く形状であるので加工が簡単で、三角形状に切り欠いた部分に電源スイッチ操作部26及び電源スイッチ28または電源スイッチ28を動作させる機構部品を配置することができるので電源スイッチ識別表示部及び電源スイッチ操作部26を容易に構成することができる。」 (1g)「【0037】 また、トッププレート2の切り欠き部に臨む部分の縁部上面をフレームコーナ部(電源スイッチ識別表示部)42で覆うとともに水の浸入を防止するシール部材43を、フレームコーナ部42の下面とトッププレート2上面間に設ける構成としたことにより、トッププレート2とトップフレーム8下面との間には、トップフレーム8内縁全体にわたり段差を形成する段部8aが設けられ、トッププレート2の上面にふきこぼれなどで液体がこぼれても、トッププレート2の外側や、電源スイッチ操作部26には流れて行かないようにすることができ、さらには水の浸入を防止するシール部材43がフレームコーナ部42(トップフレーム8)とトッププレート2間に設けられているので本体1内や電源スイッチ28まで水が到達するのを防止することができる。」 (1h)図1には、個別操作スイッチ部4a、4b、4cは、トッププレート2の使用者側に設けられていることが記載されている。 (1i)図2には、電源スイッチ操作部26は、キャビネットに設けられた開口部のほぼ外側でかつキャビネット上面より高い位置に配置されていることが記載されている。 以上の記載によると、引用例1には、 「流し台のキャビネットに設けられた開口部に、本体をはめ込んだビルトイン型であり、 本体と、トッププレート及び前記トッププレートの周縁部を枠状に覆うトップフレームを有し前記本体上部に装着されるトップユニットと、前記トッププレートの下部に配置され前記トッププレート上の被加熱物を誘導加熱する複数のインダクションヒータと、前記トッププレート上面に形成された1つ以上の操作キーを有し前記操作キーを指で触れる操作により制御命令を入力する操作部であって前記制御命令に応じて前記複数のインダクションヒータのうちの対応するインダクションヒータの動作が制御される複数の個別操作スイッチ部と、所定以上の力で電源スイッチ操作部を操作することにより開閉動作が行われるスイッチであってその開閉動作に応じて前記制御命令が有効化及び無効化される電源スイッチとを備え、前記電源スイッチ操作部は、前記トップユニットの使用者側の左右いずれか一方の角部近傍上面に、どの前記操作キーよりも前記角部に近接させて配置されるとともに、前記個別操作スイッチ部と前記電源スイッチ操作部との間に、前記トッププレート上面に段差を形成する電源スイッチ識別表示部を設けてなる誘導加熱調理器であって、 前記電源スイッチ識別表示部は、トップフレームと一体形成された金属板であり、トップユニットの角部を構成するトップフレームの2辺の内縁を相互に結ぶ段差をトッププレート上面に形成し、 前記トッププレートは、平面形状が略長方形で使用者側の角部の一方を三角形状に切り欠いた形状に形成されるとともに、前記トッププレートの切り欠いた部分である切り欠き部を前記電源スイッチ識別表示部で覆う構成とし、前記電源スイッチ操作部は、前記切り欠き部に設けられ、 前記個別操作スイッチ部は、トッププレートの使用者側に設けられた誘導加熱調理器。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 [引用例2について] (2a)「【請求項1】 赤外線投光手段を有し、該赤外線投光手段からの赤外線信号により上方に設けた換気装置を制御するようにした加熱調理器において、 前記換気装置を、加熱部に通電して調理を開始する前に駆動するようにしたことを特徴とする加熱調理器。 ・・・ 【請求項6】 加熱部、該加熱部の出力を制御する制御部、上端部外周に設けたフランジ部上に配設された赤外線投光手段、該赤外線投光手段の制御部等を有し、前面側にロースター及びメインスイッチや火力調整ダイヤルスイッチ等を有する前面操作部が設けられた本体ケースと、 トッププレートの保持部に前記赤外線投光手段に対応して赤外線通光部が設けられ、前記本体ケースの上面開口部に装着された天板とからなり、 前記火力調整ダイヤルスイッチ又はメインスイッチをONすると前記赤外線投光手段からの赤外線信号が上方に設けた換気装置に受光されて該換気装置が駆動され、次に前記火力調整ダイヤルスイッチにより前記加熱部の出力を設定するように構成したことを特徴とする加熱調理器。 【請求項7】 前記赤外線投光手段を、本体ケースの前面側のフランジ部上に設けたことを特徴とする請求項6記載の加熱調理器。」 (2b)「【0012】 [実施の形態1] 図1は本発明の実施の形態1に係る一部を断面で示した加熱調理器の斜視図、図2は一部を省略して示した図1の天板を取外した状態を示す斜視図、図3は同じく図2の平面図である。 加熱調理器1は、上面及び前面が開口されて上面開口部の周縁にフランジ部3が設けられた本体ケース2と、保持枠26及び例えば板ガラスの如き非磁材からなり、外周縁が保持枠26に取付けられたトッププレート27から構成され、本体ケース2のフランジ部3に上面開口部を覆って装着された天板25とからなっている。」 (2c)「【0020】 上記のように構成した加熱調理器1は、図5,図6に示すように、例えば、後部が壁面60に当接し又は近接して設置された流し台50に組込まれ、あるいは流し台等の上に載置される。そして、加熱調理器1の上方には、壁面60に取付けられた換気装置55が庇状に設けられている。 【0021】 この換気装置55は、フード部56と、フード部56に設けた換気扇57とからなり、フード部56の上部先端部には、加熱調理器1の赤外線LED23a?23cからの赤外線信号を受光する赤外線の受光部58が設けられており、フード56の下部中央部には照明部59が設けられている。そして、受光部58が赤外線信号を受光すると、換気扇57の駆動回路及び照明部59の点灯回路がONするようになっている。」 (2d)「【0038】 [実施の形態2] 図10は本発明の実施の形態2に係る加熱調理器の平面図及びA-A拡大断面図である。なお、実施の形態1と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、説明を省略する。 実施の形態1においては、天板25のトッププレート27の前面側に赤外線通光部33a?33cを設けたが、本実施の形態においては、トッププレート27を保持する保持枠26に赤外線通光部33a,33bを設けたものである。 【0039】 すなわち、図10に示すように、本体ケースの前面側のフランジ部3の左右(上面操作部28の両側)に、赤外線LED23a,23bが搭載された基板20aを配置すると共に、これに対応して天板25の保持枠26に赤外線通光部33a,33b(本実施の形態においては「窓」となり、透明又は半透明の材料で覆われる)を設け、赤外線LED23a,23bを発光制御部20に接続したものである。」 (2e)「【0042】 本実施の形態に係る加熱調理器の上記以外の構成及び作用、効果、実施の形態1の場合とほぼ同様であるが、本実施の形態においては、さらに次のような効果を得ることができる。 ・・・ 【0044】 また、トッププレート27より一段高い位置に赤外線通光部33a,33bが設けられているので、赤外線通光部33a,33bが調理鍋40等によって遮蔽されたり、調理鍋40からのふきこぼれなどによって汚れたり塞がれたりすることがない。 さらに、赤外線通光部33a,33bを保持枠26の左右又は後面側に設けた場合は、使用者の手などによって赤外線信号が遮断されるおそれがなく、これらにより、換気装置55の受光部58の受光効率を高めることができる。」 (2f)図2(b)には、赤外線投光手段を構成する赤外線LEDは、流し台の開口部の外側でかつ流し台上面より高い位置に配置されていることが記載されている。 以上の記載によると、引用例2には、 「赤外線投光手段からの赤外線信号により上方に設けた換気装置を制御するようにした加熱調理器において、赤外線投光手段を構成する赤外線LEDを本体ケースの前面側のフランジ部の左右に配置し、これに対応して天板の保持枠に赤外線通光部を設ける」ことが記載されているものと認められる。 4.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、 引用発明の「流し台」及び「開口部」は、それぞれ本願発明の「キッチン」及び「穴部」に相当し、上記「開口部」の形状は、本願発明でいう「略長方形」であることは明らかであり、 引用発明の誘導加熱調理器の「本体」は、本願発明でいう「略直方体」であることは明らかであり、 引用発明の「トッププレート」は、本願発明の「天板」に相当し、また、引用発明の「誘導加熱調理器」はビルトイン型であるので、上記「トッププレート」は、流し台のキャビネット上面と本願発明でいう「略同一面に位置する」ことは明らかであり、 引用発明の「トップフレーム」は、トッププレートの周縁部を枠状に覆うことから、本願発明の「外枠」に相当し、 引用発明の「インダクションヒータ」は、本願発明の「加熱装置」に相当し、また、引用発明の「誘導加熱調理器」は、上記「インダクションヒータ」を制御する本願発明でいう「制御回路」を備えることは明らかであり、 引用発明の「電源スイッチ操作部」は、その操作によりインダクションヒータの動作を制御する制御命令が有効化及び無効化されるものであることから、本願発明の制御回路の「電源スイッチ」に相当し、 引用発明の「個別操作スイッチ部」は、トッププレートの使用者側に設けられ、操作キーを指で触れる操作により制御命令を入力する操作部であり、静電容量の変化が検出されるものであることから(記載事項(1e)参照)、本願発明の天板の前部端近傍下面に設けた「静電タッチ式のスイッチ」を備えることは明らかであり、 引用発明の「切り欠き部」は、トッププレートの使用者側の角部の一方を三角形状に切り欠いて形成され、また、電源スイッチ操作部が設けられるものであることから、本願発明の天板四隅の角部の少なくとも本体前側の1か所を削除して設けた「収納部」に相当し、 引用発明の「段差」は、個別操作スイッチ部と電源スイッチ操作部との間に、トッププレート上面に形成されるものであり、個別操作スイッチ部と電源スイッチ操作部とが区分されることは明らかであるので、本願発明の静電タッチ式のスイッチが配置される領域と収納部とが区分されるように天板と前記収納部の間に形成された前記天板上面より高い「凸部」に相当する。 よって、両者は、 「キッチンに形成した略長方形の穴部に収容される略直方体の本体と、前記キッチン上面と略同一面に位置する前記本体の天面に備えた略長方形の天板と、前記天板を囲う外枠と、前記本体に内蔵されて前記天板に載置された被加熱物を加熱する加熱装置と、前記加熱装置の制御回路と、前記天板の前部端近傍下面に設けた静電タッチ式のスイッチと、前記天板四隅の角部の少なくとも前記本体前側の1か所を削除して設けた収納部と、前記収納部に収納された前記制御回路の電源スイッチとで構成し、前記静電タッチ式のスイッチが配置される領域と前記収納部とが区分されるように前記天板と前記収納部の間に前記天板上面より高い凸部を形成した加熱調理器。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点;本願発明では、収納部には、天板を通過させずに本体の上方に配置された機器と赤外線で通信を行うための赤外線通信装置が収納され、前記赤外線通信装置は電源スイッチと同一面で前記電源スイッチよりも後方で穴部の外側でかつキッチン上面より高い位置に配され、また、天板と前記収納部の間に形成された凸部は、天板上の液体が前記収納部に流れ込んで前記赤外線通信装置から発信する赤外線を遮蔽することを防ぐとされているのに対し、引用発明では、電源スイッチ操作部が設けられた切り欠き部には、そのような赤外線通信装置は設けられていない点。 5.判断 上記相違点について検討すると、 (ア)一般的に、加熱調理器の上方に換気装置が設けられることはごく普通のことであり、また、キッチンの各種機器において、操作を自動化したり、操作性を向上させたりすることは一般的な技術課題であるので、引用発明の誘導加熱調理器において、引用例2に記載された赤外線投光手段からの赤外線信号により上方に設けた換気装置を制御する機能を追加することは、当業者が容易に想到し得た事項である。 (イ)引用例2に記載された「赤外線投光手段」を構成する赤外線LEDの加熱調理器における配置は、本体ケースの前面側のフランジ部の左右であるから、引用発明の電源スイッチ操作部が設けられている「切り欠き部」の誘導加熱調理器における配置と同じである。そうすると、引用発明の誘導加熱調理器において、引用例2に記載された赤外線投光手段からの赤外線信号により上方に設けた換気装置を制御する機能を追加する際に、「赤外線投光手段」を「切り欠き部」に設けることは、当業者が容易に想到し得た事項である。また、その場合、「切り欠き部」には、トッププレートがないことより、上記「赤外線投光手段」は、上記相違点に係る本願発明の「天板を通過させずに本体の上方に配置された機器と赤外線で通信を行う」ことができるものである。 (ウ)引用発明の上記「切り欠き部」に上記「赤外線投光手段」を設ける場合、「電源スイッチ操作部」と「赤外線投光手段」との配置関係は、設計上適宜に決める程度のことと認められ、また、引用例2には、赤外線投光手段(赤外線通光部)を保持枠の左右又は後面側に設けた場合ではあるが、使用者の手などによる赤外線信号の遮断に係る記載もあることより(記載事項(2e)参照)、「赤外線投光手段」を、使用者の手などの影響が少ない「電源スイッチ操作部」よりも後方に配置することは、当業者が容易に想到し得た設計上の事項と認められる。また、「赤外線投光手段」と「電源スイッチ操作部」とを同じ「切り欠き部」に配置することから、それらを同一面に配置することは、単なる設計事項に過ぎない。 (エ)引用発明において、上記「切り欠き部」と流し台のキャビネットに設けられた「開口部」との配置関係は特定されていないが、「切り欠き部」は、トッププレートの角部を三角形状に切り欠いて形成されたものであるので、トップユニットの周縁部に位置すること、また、引用例1には、「切り欠き部」に設けられている電源スイッチ操作部が上記「開口部」のほぼ外側に配置されていることが記載され(記載事項(1i)参照)、引用例2にも、赤外線投光手段を構成する赤外線LEDを流し台の開口部の外側に配置されていることが記載されている(記載事項(2f)参照)ことから、引用発明の「切り欠き部」に「赤外線投光手段」を設ける場合、「赤外線投光手段」を流し台のキャビネットに設けられた「開口部」の外側に配置することは、当業者が容易になし得ることと認められる。また、その際、上記「赤外線投光手段」が、キャビネット上面より高い位置に配置されることは当然の事項である。 (オ)引用発明の電源スイッチ操作部が設けられた「切り欠き部」に上記「赤外線投光手段」を設けた場合、トッププレート上面に形成された「段差」は、トッププレートの上面にふきこぼれなどで液体がこぼれても、電源スイッチ操作部には流れて行かないようにすることができるものであるので(記載事項(1g)参照)、同じ場所に設けた「赤外線投光手段」も同様なことがいえることから、上記「段差」は、上記相違点に係る本願発明でいう「天板上の液体が前記収納部に流れ込んで赤外線通信装置から発信する赤外線を遮蔽することを防ぐ」ものといえる。 上記(ア)?(オ)より、引用発明の誘導加熱調理器において、引用例2に記載された赤外線投光手段(赤外線通信装置)からの赤外線信号により上方に設けた換気装置(機器)を制御する機能を追加し、また、赤外線投光手段(赤外線通信装置)を切り欠き部の電源スイッチ操作部(電源スイッチ)の後方に配置することにより、上記相違点の本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 したがって、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-09-02 |
結審通知日 | 2013-09-03 |
審決日 | 2013-09-17 |
出願番号 | 特願2008-150086(P2008-150086) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(F24C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 木村 麻乃 |
特許庁審判長 |
鳥居 稔 |
特許庁審判官 |
平上 悦司 山崎 勝司 |
発明の名称 | 加熱調理器 |
代理人 | 寺内 伊久郎 |
代理人 | 藤井 兼太郎 |
代理人 | 内藤 浩樹 |