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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G10K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G10K
管理番号 1280940
審判番号 不服2012-24278  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-07 
確定日 2013-10-31 
事件の表示 特願2006-307364「ノイズ低減装置、ノイズ低減方法、ノイズ低減処理用プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 5月29日出願公開、特開2008-122729〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、平成18年11月14日の出願であって、平成23年11月28日付けの拒絶理由通知に対して平成24年1月30日付けで手続補正がなされたが、同年9月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月7日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされ、その後、平成25年4月15日付けで審尋がなされたが、回答書の提出はなかったものである。


第2 平成24年12月7日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成24年12月7日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正

本件補正は、特許請求の範囲について、本件補正前に、
「【請求項1】
音響-電気変換手段で収音して得たノイズのアナログ音声信号をデジタル音声信号に変換し、前記デジタル音声信号から前記ノイズを低減するためのノイズ低減音声信号を生成し、前記ノイズ低減音声信号を音響再生して、前記ノイズと音響的に合成する処理系により、前記ノイズを低減するノイズ低減装置において、
前記処理系は、
前記音響-電気変換手段と、
前記デジタル音声信号を受けると共に、前記ノイズ低減音声信号を生成するために用いられるパラメータを受けて、前記ノイズ低減音声信号を生成するデジタル処理手段と、
複数種のノイズ特性に応じた複数個の前記パラメータを保持する保持手段と、
前記音響-電気変換手段で収音して得たノイズの特性を分析するノイズ特性分析手段と、
前記保持手段に保持されている複数個のパラメータのうちで、前記ノイズ特性分析手段による分析結果のノイズ特性であるノイズの低減に最も適した一つのパラメータを選択して前記デジタル処理手段に供給する選択設定手段と、
前記ノイズ低減音声信号と、所定の入力音声信号とを音響再生する電気-音響変換手段と、
を備えたノイズ低減装置。」
とあったところを、

「【請求項1】
音響-電気変換手段で収音して得たノイズのアナログ音声信号をデジタル音声信号に変換し、前記デジタル音声信号から前記ノイズを低減するためのノイズ低減音声信号を生成し、前記ノイズ低減音声信号を電気-音響変換手段で音響再生して、前記ノイズと音響的に合成する処理系により、前記ノイズを低減するノイズ低減装置において、
前記処理系は、
当該装置の外部に存在するノイズ源からのノイズを収音する前記音響-電気変換手段と、
前記デジタル音声信号を受けると共に、前記ノイズ低減音声信号を生成するために用いられるパラメータを受けて、前記ノイズ低減音声信号を生成するデジタル処理手段と、
複数種のノイズ特性に応じた複数個の前記パラメータを保持する保持手段と、
前記音響-電気変換手段で収音して得たノイズの特性を分析するノイズ特性分析手段と、
前記保持手段に保持されている複数個のパラメータのうちで、前記ノイズ特性分析手段による分析結果のノイズ特性であるノイズの低減に最も適した一つのパラメータを選択して前記デジタル処理手段に供給する選択設定手段と、
前記ノイズ低減音声信号と、所定の入力音声信号とを音響再生する電気-音響変換手段と、
を備えたノイズ低減装置。」
とすることを含むものである。

本件補正について検討するに、

本件補正は、本件補正前の請求項1の「前記ノイズ低減音声信号を音響再生して、」との特定事項を、「前記ノイズ低減音声信号を電気-音響変換手段で音響再生して、」と限定するとともに、本件補正前の「前記音響-電気変換手段と、」との特定事項を、「当該装置の外部に存在するノイズ源からのノイズを収音する前記音響-電気変換手段と、」と限定したものである。

よって、本件補正は、本件補正前の請求項に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前の特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)について以下に検討する。


2 引用例及びその記載事項

(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願の日前に頒布された刊行物である特開平7-56579号公報(平成7年3月3日公開、以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

a「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、騒音に対して、それを打ち消すような音を二次音として発生させることによって、ある地点の騒音を減衰させる騒音制御装置に関する。」

b「【0016】図1は、本発明に係る騒音制御装置の第1の実施例の構成図である。この第1の実施例の騒音制御装置は、騒音源からの騒音を観測するマイクロフォン等の騒音源信号観測部1と、消音すべき対象となる制御点の騒音を検出するマイクロフォン等の騒音検出部2と、騒音源信号観測部1で観測された騒音信号と騒音検出部2で検出した騒音とに基づきディジタルフィルタを更新する適応部3と、適応部3で作成したディジタルフィルタを用いて騒音源信号観測部1で観測された騒音信号をフィルタリングして騒音制御用の信号を生成する信号生成部4と、信号生成部4で作成された制御用信号を出力する二次音源部5とを有している。ここで、騒音源信号観測部1には公知の技術を用いることができ、図1の例では、騒音源信号観測部1は、騒音源からの騒音を捉えるマイクロフォン11と、その信号をディジタル信号へと変換するA/D変換器12とにより構成される。騒音検出部2もまた、制御点からの騒音を捉えるマイクロフォン21と、その信号をディジタル信号へと変換するA/D変換器22とにより構成される。信号生成部からの騒音制御信号についても、ディジタル信号からアナログ信号へ変換するD/A変換器51と、そのアナログ信号を出力するスピーカ等の二次音源部5とで構成する。」

c「【0020】図3は、本発明に係る騒音制御装置の第3の実施例の構成図である。この第3の実施例の騒音制御装置は、第1の騒音制御装置と同様の騒音源信号観測部1と、信号生成部4と、二次音源部5とを有し、予め生成されたディジタルフィルタを外部記憶部8に格納するように構成する。ここで、第1の実施例の適応部3はディジタルフィルタを予め作成ときにのみ必要なため、取り外して構成している。」

d「【0022】図4は、本発明に係る騒音制御装置の第4の実施例の構成図である。この第4の実施例の騒音制御装置は、第3の騒音制御装置と同様の騒音源信号観測部1と、信号生成部4と、二次音源部5と、予め生成されたディジタルフィルタを複数個格納する外部記憶部10とを有し、複数個のディジタルフィルタを選択するフィルタ選択部9を付加するように構成する。
【0023】このような構成の第4の実施例の騒音制御装置では、騒音制御装置の電源スイッチが入れられると、フィルタ選択部9は適当なディジタルフィルタを選択し、信号生成部4はその選択されたディジタルフィルタを用いて、騒音制御を開始する。又、使用者が別のディジタルフィルタを選択するようにフィルタ選択部9を操作すると信号生成部4は、その選択されたディジタルフィルタを用いて、別の騒音制御を開始する。このように信号処理部に必要なディジタルフィルタを複数個選択可能にしたことによって、騒音制御の環境に変化があった場合でも、対応したディジタルフィルタを呼び出して、フィルタ適応のための時間を省略できる。」

ア 上記aの「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、‥‥‥騒音を減衰させる騒音制御装置に関する。」との記載から、「騒音を減衰させる騒音制御装置」が記載されている。


(1)上記dの「【0022】図4は、本発明に係る騒音制御装置の第4の実施例の構成図である。この第4の実施例の騒音制御装置は、第3の騒音制御装置と同様の騒音源信号観測部1と、信号生成部4と、二次音源部5と、予め生成されたディジタルフィルタを複数個格納する外部記憶部10とを有し、複数個のディジタルフィルタを選択するフィルタ選択部9を付加するように構成する。」との記載から、引用例1には、「騒音制御装置は、騒音源信号観測部1と、信号生成部4と、二次音源部5と、予め生成されたディジタルフィルタを複数個格納する外部記憶部10と、複数個のディジタルフィルタを選択するフィルタ選択部9とを有すること」が記載されているということができ、また、第4の実施例の騒音制御装置における所定の各部は、第3の騒音制御装置の各部と同様の構成を有するということができる。
(2)ここで、第3の騒音制御装置についてみると、上記cの「【0020】‥‥‥この第3の実施例の騒音制御装置は、第1の騒音制御装置と同様の騒音源信号観測部1と、信号生成部4と、二次音源部5とを有‥‥‥するように構成する。」との記載から、第3の実施例の騒音制御装置の所定の各部は、第1の騒音制御装置の各部と同様の構成を有するといえる。
したがって、第4の実施例の騒音制御装置における所定の各部は、第1の騒音制御装置の各部と同様の構成を有するといえるから、上記bの「【0016】‥‥‥この第1の実施例の騒音制御装置は、騒音源からの騒音を観測するマイクロフォン等の騒音源信号観測部1と、‥‥‥騒音源信号観測部1で観測された騒音信号をフィルタリングして騒音制御用の信号を生成する信号生成部4と、信号生成部4で作成された制御用信号を出力する二次音源部5とを有している。‥‥‥信号生成部からの騒音制御信号についても、ディジタル信号からアナログ信号へ変換するD/A変換器51と、そのアナログ信号を出力するスピーカ等の二次音源部5とで構成する。」との記載から、第4の実施例の騒音制御装置は、「騒音源からの騒音を観測するマイクロフォン等の騒音源信号観測部1」と、「騒音源信号観測部1で観測された騒音信号をフィルタリングして騒音制御信号を生成する信号生成部4」と、「スピーカ等の二次音源部5」を有するということができる。
(3)したがって、上記(1)、上記(2)の記載をまとめると、引用例1に記載の騒音制御装置は、「騒音源からの騒音を観測するマイクロフォン等の騒音源信号観測部と、騒音源信号観測部で観測された騒音信号をフィルタリングして騒音制御信号を生成する信号生成部と、スピーカの二次音源部と、予め生成されたディジタルフィルタを複数個格納する外部記憶部と、複数個のディジタルフィルタを選択するフィルタ選択部とを有する」ということができ、ここで具体的な装置に注目すれば、引用例1に記載の騒音制御装置は、「騒音源からの騒音を観測するマイクロフォンと、マイクロフォンで観測された騒音信号をフィルタリングして騒音制御信号を生成する信号生成部と、スピーカと、予め生成されたディジタルフィルタを複数個格納する外部記憶部と、複数個のディジタルフィルタを選択するフィルタ選択部とを有する」ということができる。

ウ 上記bの「【0016】‥‥‥騒音源信号観測部1で観測された騒音信号をフィルタリングして騒音制御用の信号を生成する信号生成部4と、‥‥‥を有している。‥‥‥騒音源信号観測部1は、騒音源からの騒音を捉えるマイクロフォン11と、その信号をディジタル信号へと変換するA/D変換器12とにより構成される。‥‥‥信号生成部からの騒音制御信号についても、そのアナログ信号を出力するスピーカ等の二次音源部5とで構成する。」との記載から、引用例1に記載の騒音制御装置は、「マイクロフォンにより、騒音源からの騒音を捉え、A/D変換器により、その信号をディジタル信号へと変換し、信号生成部により、マイクロフォンで観測された騒音信号をフィルタリングして騒音制御信号を生成し、騒音制御信号をスピーカに入力する」ものということができる。

エ 上記aの「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、騒音に対して、それを打ち消すような音を二次音として発生させることによって、ある地点の騒音を減衰させる騒音制御装置‥‥‥」との記載、上記bの「【0016】‥‥‥スピーカ等の二次音源部5とで構成する。」との記載から、引用例1に記載の騒音制御装置の「スピーカ」は、「騒音に対してその騒音を打ち消すような音を発生させる」ものということができる。

オ 上記dの「【0023】‥‥‥騒音制御装置では、‥‥‥使用者が別のディジタルフィルタを選択するようにフィルタ選択部9を操作すると信号生成部4は、その選択されたディジタルフィルタを用いて、別の騒音制御を開始する。このように信号処理部に必要なディジタルフィルタを複数個選択可能にしたことによって、騒音制御の環境に変化があった場合でも、対応したディジタルフィルタを呼び出して、フィルタ適応のための時間を省略できる。」との記載から、引用例1に記載の騒音制御装置は、「使用者がフィルタ選択部を操作し、信号生成部がその選択されたディジタルフィルタを用いることにより、騒音制御の環境に変化があった場合でも、対応したディジタルフィルタを呼び出して、フィルタ適応のための時間を省略できる」ものということができる。

したがって、上記引用例に記載された事項、図面の記載、及び上記アないしオを総合すると、引用例には、次の事項が記載されている(以下、引用発明という。)。

「騒音を減衰させる騒音制御装置であって、
騒音源からの騒音を観測するマイクロフォンと、マイクロフォンで観測された騒音信号をフィルタリングして騒音制御信号を生成する信号生成部と、スピーカと、予め生成されたディジタルフィルタを複数個格納する外部記憶部と、複数個のディジタルフィルタを選択するフィルタ選択部とを有し、
マイクロフォンにより、騒音源からの騒音を捉え、A/D変換器により、その信号をディジタル信号へと変換し、信号生成部により、マイクロフォンで観測された騒音信号をフィルタリングして騒音制御信号を生成し、騒音制御信号をスピーカに入力して、騒音に対してその騒音を打ち消すような音を発生させるものにおいて、
使用者がフィルタ選択部を操作し、信号生成部がその選択されたディジタルフィルタを用いることにより、騒音制御の環境に変化があった場合でも、対応したディジタルフィルタを呼び出して、フィルタ適応のための時間を省略できる、
騒音を減衰させる騒音制御装置。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願の日前に頒布された刊行物である特開平6-59689号公報(平成6年3月4日公開、以下「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

「【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は騒音と逆相等音圧の補償信号をスピーカから出力することにより騒音を消去し、特に本発明では複数のスピーカとこれと対になる複数のマイクロフォンとの増幅器の増幅度の設定を容易にし、かつ騒音周波数が広い場合に収束時間を短縮する騒音制御装置に関する。」

「【0028】したがって、本実施例によれば、マルチチャンネルにおける各チャンネルでの異なる最適化を自在に図ることができるようになった。図8は本発明の第2の実施例に係る騒音制御装置の主要部を示す図である。本図に示す騒音制御装置は、第1の実施例のおけるスイッチ手段8とスピーカ用増幅器3-1、3-2、…、3-nとの間にそれぞれに設けられる可変帯域フィルタ20-1、20-2、…、20-nと、スイッチ手段9とマイクロフォン用増幅器4-1、4-2、…、4-nとの間にそれぞれ設けられる可変帯域フィルタ21-1、21-2、…、21-nと、前記補償音の影響が少ない場所に設置されたマイクロフォン23と、該マイクロフォン23の信号を増幅する増幅器24と、該増幅器24の信号を周波数分析する周波数分析手段25と、該周波数分析手段25からの周波数分析結果の基づき可変帯域フィルタ20-1、20-2、…、20-n、可変帯域フィルタ21-1、21-2、…、21-nのカット周波数を変更するフィルタ調整手段26とを含む。」

「【0031】さらには、周波数分析手段25は、マイクロフォン23からの騒音の周波数を分析しその周波数特性と逆特性の周波数特性を、フィルタ調整手段26を介して、可変帯域フィルタ20-1、20-2、…、20-n、可変帯域フィルタ21-1、21-2、…、21-nに設定してもよい。これにより、騒音の大小に拘わらず、選択された帯域全体でフラットの騒音制御の効果を発揮させることができる。」

上記記載から、引用例2には、次の事項が記載されているということができる。

「騒音を消去する騒音制御装置において(段落【0001】)、補償音の影響が少ない場所に設置されたマイクロフォン23と、該マイクロフォン23の信号を周波数分析する周波数分析手段25において周波数分析し、該周波数分析手段25からの周波数分析結果の基づき可変帯域フィルタのカット周波数を変更したり(段落【0028】)、その周波数特性と逆特性の周波数特性を、フィルタ調整手段26を介して、可変帯域フィルタに設定し、これにより、騒音の大小に拘わらず、選択された帯域全体でフラットの騒音制御の効果を発揮させることができる(段落【0031】)こと。」

ここで、マイクロフォン23は、補償音の影響が少ない場所に設置されたマイクロフォン23であり、また、引用例2の図8を参酌すると、騒音をスピーカからの補償音で消去した残留音を誤差信号として検出するマイクロフォン2-1、2-2、…、2-n(「【0017】【実施例】‥‥‥騒音を該スピーカ1-1、1-2、…、1-nからの補償音で消去した残留音を誤差信号として検出するマイクロフォン2-1、2-2、…、2-n)‥‥‥)とは、別に、補償音の影響が少ない場所に設置されたマイクロフォン23であって、このマイクロフォン23を用いて騒音制御の効果を発揮させることから、マイクロフォン23は、補償音の影響が少ない騒音を収音しているということができる。

したがって、引用例2には、次の技術が記載されているということができる。

「補償音の影響が少ない騒音を収音するマイクロフォンの信号を周波数分析し、周波数分析結果の基づき、フィルタの周波数特性を変更して、騒音制御の効果を発揮させる技術。」

(3)本願の出願の日前に頒布された刊行物である特開2005-257720号公報(平成17年9月22日公開、以下「引用例3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

「【0001】
本発明は能動騒音制御装置に関するものである。」

「【0005】以上の動作により、誤差検知部32において、位相遅れの影響が大きい高周波数帯域を除く周波数帯域で一様な騒音低減効果が得られ、高周波数帯域でも安定性を保つことが可能となる。しかし、二次音放射スピーカ34と誤差検知部32の間隔を長くして設置せざるを得ない等の原因によりスピーカ伝達関数がむだ時間要素を多く含む結果位相遅れが大きい場合、低周波数域通過信号処理部38のカットオフ周波数が小さくしなければならず所定の制御周波数帯域が狭くなるので、一旦設計した二次音生成フィルタ33では様々な周波数の騒音を制御することはできない。よって、図1で示した能動騒音制御装置を用いた場合、例えば高速移動体の客室内騒音のように定常的騒音であっても、走行状態等によって周波数特性が変動するような騒音を制御するためには、都度二次音生成フィルタ33を設計し直す、もしくは制御周波数帯域毎の二次音生成フィルタ33をあらかじめ複数設計してメモリ上に保存しておき騒音特性に応じて二次音生成フィルタ33の処理係数を入れ替える手間が必要という課題がある。また、二次音生成フィルタ33の処理特性が固定されているので、デバイス特性の経年変化等によってスピーカ伝達関数が変動した場合に制御性能が劣化する課題もある。特に、能動騒音制御装置を複数個用いる場合には、上記の二次音生成フィルタ33の入れ替えもしくは再設計には莫大な手間を要する。二次音生成フィルタ33を適応フィルタで構成することによって上記変動に応じてフィルタ係数を更新して継続的に騒音低減効果を得ることは可能であるが、適応フィルタを実現するために能動騒音制御装置の回路規模が大きくなるという課題がある。」

上記記載から、引用例3には、次の技術が記載されているということができる。

「能動騒音制御装置において、走行状態等によって周波数特性が変動するような騒音を制御するために、制御周波数帯域毎の二次音生成フィルタをあらかじめ複数設計してメモリ上に保存しておき騒音特性に応じて二次音生成フィルタの処理係数を入れ替える技術。」

(4)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願の日前に頒布された刊行物である特開2000-59876号公報(平成12年2月25日公開、以下「引用例4」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、周囲からの騒音を低減して、例えば音楽を聴きやすく等するヘッドホンおよび音響装置に関する。」

「【0004】図9のフィードフォワード方式においては、マイクロホン素子は周囲の騒音を収音するが、ドライバーユニット2から放音される音は収音しない位置に配置されている。そして、マイクロホン素子1からの、収音した周囲の騒音に対応する電気信号はイコライザ回路3に供給される。
【0005】このイコライザ回路3は、この入力された周囲の音をキャンセルするための音声信号を得るために、位相と振幅特性、すなわち、周波数特性が最適設計されている。このイコライザ回路3の出力信号は、加算回路4を介してアンプ5に供給される。
【0006】このアンプ5は、前記の周囲の音をキャンセルするための音声信号のゲインが最適なものとなるように最適設計される。このアンプ5からの前記周囲の音をキャンセルするための音声信号はドライバーユニット2に供給される。すなわち、ドライバーユニット2は、使用者の周囲の音をキャンセルするための音源としての機能を有する。
【0007】こうして、周囲の音とは逆位相の音が使用者の耳の近傍において放音されて、これが周囲の音と音響的に合成される。この結果、周囲の音がキャンセルされて、使用者には周囲の音が低減されて聴取される。
【0008】そして、この場合に、音声信号入力端子6から音楽の信号などが供給されて、加算回路4で加算され、アンプ5を通じてドライバーユニット2に供給されて、音楽が再生される。このとき、使用者は、周囲の騒音が大きくても、それは前述したようにしてキャンセルされて低減されるので、音量を上げ過ぎることなく、快適に高音質の音楽を楽しめる。」

上記記載から、引用例4には、次の技術が記載されているということができる。

「マイクロホン素子1から収音した周囲の騒音に対応する電気信号は、周囲の音をキャンセルするための音声信号を得るよう周波数特性が最適設計されたイコライザ回路3を介して、音声信号入力端子6からの音声信号と加算され、周囲の音とは逆位相の音と音声信号を再生する技術。」


3 対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

(1) 引用発明は「騒音源からの騒音を観測するマイクロフォン」を有し、「マイクロフォンにより、騒音源からの騒音を捉え、A/D変換器により、その信号をディジタル信号へと変換」するものであって、「マイクロフォン」、「騒音」は、それぞれ、本願補正発明の「音響-電気変換手段」、「ノイズ」に相当する。
また、「騒音源からの騒音を観測するマイクロフォン」は、騒音源からの騒音を収音するものであり、また、アナログ信号を出力することは常套手段であるから、「騒音を収音して騒音のアナログ信号」を出力するものということができ、また、騒音には、音声信号を含め種々の音響信号があることは明らかであるから、騒音の信号をディジタル信号に変換したものは、本願補正発明の「デジタル音声信号」に相当する。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、「音響-電気変換手段で収音して得たノイズのアナログ音声信号をデジタル音声信号に変換」する点で一致する。

(2)引用発明は、「マイクロフォンにより、騒音源からの騒音を捉え、A/D変換器により、その信号をディジタル信号へと変換し、信号生成部により、マイクロフォンで観測された騒音信号をフィルタリングして騒音制御信号を生成し、騒音制御信号をスピーカに入力して、騒音に対してその騒音を打ち消すような音を発生させる」ことから、マイクロフォンにより捉えられた騒音源からの騒音を、デジタル信号に変換し、信号生成部により、前記デジタル信号をフィルタリングして騒音制御信号を生成するものということができ、ここで、「信号生成部により、マイクロフォンで観測された騒音信号をフィルタリングして」生成された「騒音制御信号」は、騒音を減衰させる騒音低減信号ということができ、本願補正発明の「ノイズを低減するためのノイズ低減音声信号」に相当するから、本願補正発明と引用発明とは、「前記デジタル音声信号から前記ノイズを低減するためのノイズ低減音声信号を生成し、前記ノイズ低減音声信号を電気-音響変換手段で音響再生」する点で一致する。

(3)引用発明の、「信号生成部からの騒音制御信号をスピーカに入力して、騒音に対して、その騒音を打ち消すような音を発生させる」ことは、スピーカから騒音を打ち消すような音を発生させて、騒音と音響的に合成する処理を行うものということができるから、本願補正発明の「前記ノイズ低減音声信号を電気-音響変換手段で音響再生して、前記ノイズと音響的に合成する処理系により、前記ノイズを低減する」点で一致する。

(4)引用発明の「騒音を減衰させる騒音制御装置」は、本願補正発明の「ノイズ低減装置」に相当する。

(5)引用発明は、「騒音源からの騒音を観測するマイクロフォン」を有し、「マイクロフォンにより、騒音源からの騒音を捉え、」るものであって、「騒音源」は、本願補正発明の「ノイズ源」に相当し、また、引用例1の図6の記載から、雑音源は装置以外の箇所に位置するものということができるから、装置の外部に存在するものということができ、本願補正発明と引用発明とは、「当該装置の外部に存在するノイズ源からのノイズを収音する前記音響-電気変換手段」を有する点で共通する。

(6)引用発明は、「マイクロフォンにより、騒音源からの騒音を捉え、A/D変換器により、その信号をディジタル信号へと変換し、信号生成部により、マイクロフォンで観測された騒音信号をフィルタリングして騒音制御信号を生成し、騒音制御信号をスピーカに入力して、騒音に対してその騒音を打ち消すような音を発生させる」ものであって、騒音の信号をディジタル信号へ変換したものは、本願補正発明の「デジタル音声信号」に相当し(上記(1))、また、信号生成部により、マイクロフォンで観測された騒音信号をフィルタリングして得られた騒音制御信号は、本願補正発明の「ノイズを低減するためのノイズ低減音声信号」に相当する(上記(2))。そして、信号生成部は、騒音の信号のディジタル信号が入力されてフィルタリングするものであって、ディジタル処理手段ということができるから、引用発明の「信号生成部」は、本願補正発明の「ディジタル音声信号を受けて、ノイズ低減音声信号を生成するデジタル処理手段」である点で共通する。

(7)引用発明は、「信号生成部により、マイクロフォンで観測された騒音信号をフィルタリングして騒音制御信号を生成し、騒音制御信号をスピーカに入力して、騒音に対してその騒音を打ち消すような音を発生させる」ものであって、「予め生成されたディジタルフィルタを複数個格納する外部記憶部と、複数個のディジタルフィルタを選択するフィルタ選択部とを有し、」「使用者がフィルタ選択部を操作し、信号生成部がその選択されたディジタルフィルタを用いることにより、騒音制御の環境に変化があった場合でも、対応したディジタルフィルタを呼び出」すことから、信号生成部は、騒音を減衰させる騒音低減信号を生成するために、予め生成されたディジタルフィルタを複数個格納する外部記憶部から、選択されたディジタルフィルタを受け取るものといるということができる。
ここで、本願補正発明の「前記ノイズ低減音声信号を生成するために用いられるパラメータを受けて、前記ノイズ低減音声信号を生成するデジタル処理手段」について、パラメータとは、具体的には、フィルター係数のセットということができる(本願明細書の「【0067】例えば、メモリ24に、図6に示す「ノイズ減衰カーブ(ノイズ減衰特性)」で表されるような4種のノイズ低減効果を得ることができるパラメータのセット、つまり、フィルタ係数のセットが、書き込まれているとする。この図6の例では、ノイズが、低域、中低域、中域、広帯域のそれぞれに主として分布する場合の4種類のノイズ特性に対して、それぞれの場合におけるノイズを低減するカーブ特性を得るようにするフィルタ係数が、メモリ24に記憶されている場合である。」参照)。
したがって、本願補正発明の「デジタル処理手段」は、具体的にはデジタルフィルタ処理を行うものということができるから、本願補正発明と引用発明は、騒音を減衰させる騒音低減信号(本願補正発明の「ノイズ低減音声信号」に相当。)を生成するために、フィルター係数のセットを受け取るか、フィルタを受け取るかにおいて相違するものの、騒音を減衰させる騒音低減信号(同上。)を生成するためのフィルターを構成する点で共通するから、両者は、「前記ノイズ低減音声信号を生成するために用いられる、フィルタ構成を受けて、前記ノイズ低減音声信号を生成するデジタル処理手段」である点で共通する。

(8)引用発明は、「予め生成されたディジタルフィルタを複数個格納する外部記憶部と、複数個のディジタルフィルタを選択するフィルタ選択部とを有し、」「使用者がフィルタ選択部を操作し、信号生成部がその選択されたディジタルフィルタを用いることにより、騒音制御の環境に変化があった場合でも、対応したディジタルフィルタを呼び出」すことから、本願補正発明が、デジタル処理手段(具体的にはデジタルフィルタ処理を行うことに対応(上記(7))のパラメータを保持するのに対し、引用発明は、ディジタルフィルタを記憶する点で相違するものの、騒音環境に対応した特性を有する、フィルタ構成を保持する点で共通するということができるから、本願補正発明と引用発明とは、「複数種のノイズ特性に応じた複数個のフィルタ構成を保持する保持手段」を有する点で共通する。

(9)引用発明は、「予め生成されたディジタルフィルタを複数個格納する外部記憶部と、複数個のディジタルフィルタを選択するフィルタ選択部とを有」し、「使用者がフィルタ選択部を操作し、信号生成部がその選択されたディジタルフィルタを用いることにより、騒音制御の環境に変化があった場合でも、対応したディジタルフィルタを呼び出して、フィルタ適応のための時間を省略できる」ものであって、外部記憶部に複数格納されたディジタルフィルタの中から騒音制御の環境の変化に対応したディジタルフィルタが選択され、信号生成手段に供給されるということができる。ここで、騒音制御の環境の変化に対応したディジタルフィルタを選択するにあたり、最適のものを選択することは当業者が普通になし得ることであり、また、本願補正発明と引用発明とは、フィルタ構成を保持する点で共通するということができるから(上記(8))、本願補正発明と引用発明とは、「前記保持手段に保持されている複数個のフィルタ構成のうちで、ノイズの低減に最も適した一つのフィルタ構成を選択して前記デジタル処理手段に供給する選択設定手段」を有する点で共通する。

(10)引用発明は、「マイクロフォンで観測された騒音信号をフィルタリングして騒音制御信号を生成し、騒音制御信号をスピーカに入力して、騒音に対してその騒音を打ち消すような音を発生させる」ものであって、ここで、「スピーカ」は、本願補正発明の「音響再生する電気-音響変換手段」に相当し、また、引用発明の、「マイクロフォンで観測された騒音信号をフィルタリングして」生成された「騒音制御信号」は、本願補正発明の「ノイズを低減するためのノイズ低減音声信号」に相当するから(上記(2))、本願補正発明と引用発明とは「前記ノイズ低減音声信号を音響再生する電気-音響変換手段」を有する点で共通する。

(11)引用発明の各部は、各部において信号の処理及び授受がなされることから、「処理系」ということができ、本願補正発明と引用発明とは、「処理系」を有する点で一致する。


すると、本願補正発明と引用発明とは、次の<一致点>及び<相違点>を有する。

<一致点>
「音響-電気変換手段で収音して得たノイズのアナログ音声信号をデジタル音声信号に変換し、前記デジタル音声信号から前記ノイズを低減するためのノイズ低減音声信号を生成し、前記ノイズ低減音声信号を電気-音響変換手段で音響再生して、前記ノイズと音響的に合成する処理系により、前記ノイズを低減するノイズ低減装置において、
前記処理系は、
当該装置の外部に存在するノイズ源からのノイズを収音する前記音響-電気変換手段と、
前記デジタル音声信号を受けると共に、前記ノイズ低減音声信号を生成するために用いられるフィルタ構成を受けて、前記ノイズ低減音声信号を生成するデジタル処理手段と、
複数種のノイズ特性に応じた複数個の前記フィルタ構成を保持する保持手段と、
前記保持手段に保持されている複数個のフィルタ構成のうちで、ノイズの低減に最も適した一つのフィルタ構成を選択して前記デジタル処理手段に供給する選択設定手段と、
前記ノイズ低減音声信号を音響再生する電気-音響変換手段と、
を備えたノイズ低減装置。」


<相違点>
ア ノイズ低減音声信号を生成するデジタル処理手段が受ける、フィルタ構成について、本願補正発明は「パラメータ」であるのに対し、引用発明は、「ディジタルフィルタ」である点。

イ 複数種のノイズ特性に応じた複数個のフィルタ構成を保持する保持手段において、保持する対象が、本願補正発明は、「パラメータ」であるのに対し、引用発明は「ディジタルフィルタ」である点。

ウ ノイズの低減に最も適した一つのフィルタ構成を選択するにあたり、本願補正発明が、「前記音響-電気変換手段で収音して得たノイズの特性を分析するノイズ特性分析手段」を有し、前記保持手段に保持されている複数個の「パラメータ」のうちで、「前記ノイズ特性分析手段による分析結果のノイズ特性である」ノイズの低減に最も適した一つのパラメータを選択するのに対し、引用発明はこのような特定がない点。

エ 電気-音響変換手段の音響再生について、本願補正発明が、前記ノイズ低減音声信号と、「所定の入力音声信号」を音響再生するのに対し、引用発明は、「所定の入力音声信号」を音響再生することについて特定がない点。


4 判断

<相違点>ア、イについて
一般に、デジタルフィルタを変更するにあたり、そのフィルタ係数を変更することは、周知慣用手段であるから(引用例3(上記2(3)))、引用発明において、フィルタ構成を変更するために、フィルタ係数、すなわちパラメータを変更することは当業者が適宜なし得る事項である。したがって、引用発明において、ディジタルフィルタを変更するために、フィルター係数、すなわち、パラメータを、信号生成部(本願補正発明の「ノイズ低減音声信号を生成するデジタル処理手段」に相当(上記3(6)))が受けるようにすることに格別の困難性を有しない。
また、同様に、引用発明において、ディジタルフィルタを変更するために用いる「外部記憶部」(本願補正発明の「保持手段」に相当(上記3(8)))において、フィルター係数、すなわち、パラメータを記憶するようにすることに格別の困難性を有しない。

よって、本願補正発明の<相違点>ア、イに係る構成のようにすることは格別なことではない。

<相違点>ウについて
騒音を判別するために、マイクロフォンで集音して得た騒音の特性を分析し、分析結果に基づいて所望のフィルタ特性とすることは周知であり(引用例2(上記2(2))、引用例3(上記(3)))、引用発明において、「騒音制御の環境に変化があった場合でも、対応したディジタルフィルタを呼び出して、フィルタ適応のための時間を省略できる」ようにするために、「使用者がディジタルフィルタを選択する」ことに代えて、マイクロフォン(本願補正発明の「音響-電気変換手段」に相当。)で集音して得た騒音の特性を分析し、分析結果に基づいてディジタルフィルタを変更することに格別の困難性を有しない。
そして、上記「<相違点>ア、イについて」の項に記載したように、ディジタルフィルタを変更するにあたり、フィルター係数、すなわち、パラメータを記憶するようにすることに格別の困難性を有しないから、マイクロフォン(本願補正発明の「音響-電気変換手段」に相当。)で集音して得た騒音の特性を分析し、分析結果の騒音特性に基づいて、ノイズの低減に最も適した一つのパラメータを選択することは、当業者が容易になし得る事項である。

よって、本願補正発明の<相違点>ウに係る構成のようにすることは格別なことではない。

<相違点>エについて
スピーカー(本願補正発明の「電気-音響変換手段」に相当。)から、ノイズを低減させるための信号(本願補正発明の「ノイズ低減音声信号」に相当。)に加え、入力された音声信号(本願補正発明の「所定の入力音声信号」に相当。)を再生することは周知技術であり(引用例4(上記2(4)))、引用発明においても、前記周知技術を用いて「所定の入力音声信号」を再生するようにすることに格別の困難性を有しない。

よって、本願補正発明の<相違点>エに係る構成のようにすることは格別なことではない。


そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願補正発明が奏する効果は、引用発明及び周知技術から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。


5 本件補正についてのむすび

以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について

1 本願発明

平成24年12月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2[理由]1 」の本件補正前の「請求項1」として記載したとおりのものである。

2 引用例

原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、上記「第2[理由]2 引用例及びその記載事項」に記載したとおりである。

3 対比・判断

本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明の「前記ノイズ低減音声信号を電気-音響変換手段で音響再生して、」との特定事項から、「電気-音響変換手段で」との限定を削除して「前記ノイズ低減音声信号を音響再生して、」とし、本願補正発明の「当該装置の外部に存在するノイズ源からのノイズを収音する前記音響-電気変換手段と、」との特定事項から、「当該装置の外部に存在するノイズ源からのノイズを収音する」との限定を削除して「前記音響-電気変換手段と、」とするものである。

そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、更に他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記「第2 [理由] 4 判断」に示したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-22 
結審通知日 2013-08-27 
審決日 2013-09-12 
出願番号 特願2006-307364(P2006-307364)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G10K)
P 1 8・ 575- Z (G10K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邊 正宏  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 萩原 義則
石井 研一
発明の名称 ノイズ低減装置、ノイズ低減方法、ノイズ低減処理用プログラム  
代理人 中川 裕人  
代理人 鈴木 伸夫  
代理人 岩田 雅信  
代理人 脇 篤夫  

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