• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1280979
審判番号 不服2011-26566  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-08 
確定日 2013-10-30 
事件の表示 特願2000-604272号「重ね合わせ誤差に対する拡大誤差およびレチクル回転誤差の影響の低減」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月14日国際公開、WO00/54108、平成14年11月19日国内公表、特表2002-539605号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成12年2月11日の出願(パリ条約による優先権主張、1999年3月11日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成23年2月8日付けで手続補正がなされ、同年8月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年12月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その後、平成24年12月13日付けで拒絶理由が通知され、平成25年4月25日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。

本願の請求項1ないし18に係る発明は、平成25年4月25日付けの手続補正で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載された次のとおりのものである。

「 【請求項1】 設計パターンを含む設計領域と、
設計領域の外側に位置する第1のアライメントマークと、
第1のアライメントマークに対称である、設計領域の外側に位置する第2のアライメントマークと、を含むレチクルと、
設計パターン、第1のアライメントマークおよび第2のアライメントマークをウェハのフォトレジスト層上に投影し、設計パターン、第1のアライメントマークおよび第2のアライメントマークがウェハのフォトレジスト層上に、投影されたようにエッチングされるように構成された光源と、
ウェハのフォトレジスト層上にエッチングされた第1および第2のアライメントマークの位置を識別およびマッピングするように構成された顕微鏡と、
ウェハのフォトレジスト層上にエッチングされた第1および第2のアライメントマークの位置に基づいてウェハ上の第1の仮想アライメントマークの位置を計算するように構成されたプロセッサとを含み、第1の仮想アライメントマークの位置は、ウェハのフォトレジスト層上にエッチングされた第1および第2のアライメントマークの中点であり、プロセッサは、続くウェハのエッチングプロセスにおけるウェハのアライメントを促進するために第1の仮想アライメントマークの位置を採用する、システム。
【請求項2】 レチクルの中心点は、レチクル上で第1および第2のアライメントマークの中点であり、第2のアライメントマークは、レチクル中心点に関して第1のアライメントマークと対称である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】 第1のアライメントマークは、レチクル上で第2のアライメントマークのものと同一のパターンを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】 第1のアライメントマークは、レチクル上で第2のアライメントマークと異なるパターンを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】 第1の想像線が、ウェハのフォトレジスト層上にエッチングされた第1および第2のアライメントマークに交わり、第2の想像線が、レチクル中心がウェハのフォトレジスト層上に投影される位置とウェハのフォトレジスト層上にエッチングされた第1および第2のアライメントマークの中点とに交わり、第1の想像線は、ウェハ上で第2の想像線に対して垂直である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】 プロセッサは、以下の方程式に基づいてウェハに関して第1の仮想アライメントマークの位置を計算し、
【数1】


式中X_(v),Y_(v)は第1の仮想アライメントマークの(x,y)座標であり、(X_(1),Y_(1))は、ウェハのフォトレジスト層上にエッチングされた第1のアライメントマークの(x,y)座標であり、(X_(2),Y_(2))は、ウェハのフォトレジスト層上にエッチングされた第2のアライメントマークの(x,y)座標である、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】 プロセッサは、最小二乗法を用いて第1の仮想アライメントマークの位置を決定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】 第2の設計パターンを含む第2の設計領域と、
設計領域の外側に位置する第3のアライメントマークと、
レチクル中心点に関して第3のアライメントマークに対称である、設計領域の外側に位置する第4のアライメントマークと、を含む第2のレチクルをさらに含み、
光源は、第2の設計パターン、第3のアライメントマークおよび第4のアライメントマークをウェハのフォトレジスト層上に投影し、第2の設計パターン、第3のアライメントマークおよび第4のアライメントマークがウェハの他のフォトレジスト層上に、フォトレジスト層上の第1および第2のアライメントマークの位置に関する所定のオフセット位置に投影されたようにエッチングされるように構成され、
顕微鏡は、ウェハの他のフォトレジスト層上にエッチングされた第3および第4のアライメントマークの位置を識別およびマッピングするように構成され、
プロセッサは、ウェハの他のフォトレジスト層上にエッチングされた第3および第4のアライメントマークの位置に基づいてウェハの他のフォトレジスト層上の第2の仮想アライメントマークの位置を計算するように構成され、第2の仮想アライメントマークの位置は、ウェハの他のフォトレジスト層上にエッチングされた第3および第4のアライメントマークの中点であり、プロセッサは、所定のオフセット位置に基づいて、ウェハに関する第1の仮想アライメントマークと第2の仮想アライメントマークとの間のオフセット関係を決定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】 他のフォトレジスト層は、フォトレジスト層の上に形成され、プロセッサは、第1の仮想アライメントマークおよび第2の仮想アライメントマークを用いる間、フォトレジスト層に対して他のフォトレジスト層を整列させることを制御するようにさらに構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】 フォトレジスト層および他のフォトレジスト層は、ウェハの異なる領域に形成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】 設計パターンを含む設計領域と、
設計領域の外側に位置する第1のアライメントマークと、
設計領域の外側に位置し、第1のアライメントマークに対称な第2のアライメントマークと、を含むレチクルと、
設計パターン、第1のアライメントマークおよび第2のアライメントマークをウェハのフォトレジスト層上に投影し、設計パターン、第1のアライメントマークおよび第2のアライメントマークがウェハのフォトレジスト層上に、投影されたようにエッチングされるように構成された光源と、
ウェハのフォトレジスト層上にエッチングされた第1および第2のアライメントマークの位置を識別およびマッピングするように構成された顕微鏡と、
ウェハのフォトレジスト層上にエッチングされた第1および第2のアライメントマークの位置、レチクル上に与えられた第1および第2のアライメントマークの位置、およびウェハのフォトレジスト層上の第1および第2のアライメントマークのエッチングのために意図された位置に基づいて、レチクル回転誤差および/またはレンズ拡大誤差の大きさを決定するように構成されたプロセッサとを含む、システム。
【請求項12】 設計パターンを含む設計領域と、設計領域の外側に位置する第1のアライメントマークと、レチクル中心点に関して第1のアライメントマークに対称である、設計領域の外側に位置する第2のアライメントマークと、を含むレチクルを用いて、ウェハのフォトレジスト層上に第1のアライメントマークをエッチングするステップと、
ウェハのフォトレジスト層上に第1のアライメントマークの直接上に第2のアライメントマークをエッチングする意図でレチクルを用いて第2のアライメントマークをフォトレジスト層上にエッチングするステップと、
第1の仮想アライメントマークを決定するステップとを含み、第1の仮想アライメントマークは、組合された、エッチングされた第1および第2のアライメントマークによって規定される物体の中心であり、さらに、
続くウェハのエッチングプロセスにおいて、第1の仮想アライメントマークを使用してウェハを整列させることを促進するステップを含む、方法。
【請求項13】 以下の方程式から仮想アライメントマークの位置を決定するステップをさらに含み、
【数2】


式中、(X_(V),Y_(V))は仮想アライメントマークの(x,y)座標であり、X_(MAX)は物体の最大x座標であり、X_(MIN)は物体の最小x座標であり、Y_(MAX)は物体の最大y座標であり、Y_(MIN)は物体の最小y座標である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】 少なくとも2つのアライメントマークをウェハの設計領域の外側でウェハの第1の表面層上にエッチングするための手段を含み、少なくとも2つのアライメントマークは、ウェハの第1の表面層上にエッチングされたマークがウェハの第1の表面層上にエッチングされたマークの中点に関してレチクル回転誤差および/またはレンズ拡大誤差を実質的に打ち消すように関連付けられた対称性を有し、さらに、
中点を決定するための手段を含み、中点は仮想アライメントマークであり、さらに、
続くウェハのエッチングプロセスにおいて、仮想アライメントマークを基準として用いてウェハを整列させるための手段を含む、システム。
【請求項15】 ウェハの第1の表面層上にエッチングされた少なくとも2つのアライメントマークの位置を識別するための手段をさらに含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】 2つの付加的なアライメントマークをウェハの他の設計領域の外側でウェハの第2の表面層上にエッチングするための手段をさらに含み、2つの付加的なアライメントマークは、ウェハの第2の表面層上にエッチングされた2つの付加的なマークがウェハの第2の表面層上にエッチングされた2つの付加的なマークの中点に関してレチクル回転誤差および/またはレンズ拡大誤差を実質的に打ち消すように関連付けられた対称性を有し、
2つの付加的なマークの中点を決定するための手段を含み、中点は第2の仮想アライメントマークであり、さらに、
第1および第2の仮想アライメントマークを基準として用いてウェハを整列させるため
の手段を含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】 第1および第2のアライメントマークを用いて第1および第2の表面層を整列させるための手段をさらに含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】 ウェハの設計領域の外側でウェハの表面にアライメントマークをエッチングするための手段と、
ウェハの表面にエッチングされたアライメントマークの位置を決定するための手段と、 意図されたエッチング位置からのエッチングされたアライメントマークのずれを決定するための手段と、
ウェハのアライメントを修正してずれを補償するための手段とを含む、ウェハアライメントシステム。」

第2 特許法第36条の要件について
1.当審の拒絶理由
当審において平成24年12月13日付けで通知した拒絶理由の「第1」の概要は以下のとおりである。
「第1 本願は、以下の理由で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

1.請求項1
(1)請求項1に記載された「ウェハの第1の表面層上に印刷された第1および第2のアライメントマーク」の「印刷」について、リソグラフィにおいて「印刷」という用語は一般的でないため、当該「印刷」が(a)リソグラフィによりウェハ上にパターニングされて生じた状態を指すものか、(b)ウェハ上に別途、リソグラフィとは異なる「印刷」が施されるものか、あるいは(c)(a)及び(b)以外の事項を意味するのかが、発明の詳細な説明及び図面を参酌してもなお不明であり、さらに、そのような「第1および第2のアライメントマーク」を「ウェハ」の「表面層上に印刷」するとはいかなる技術的事項を意味するのかが不明である。
上記の点は、請求項2?19に記載(請求項の引用によるものを含む)された「印刷」についても同様である。

……(略)……

2.請求項5
(1)請求項5に記載された「第1の想像線が、第1および第2のアライメントマークに交わり、第2の想像線が、レチクル中心と第1および第2のアライメントマークの中点とに交わり、第1の想像線は、第2の想像線に対して垂直である」という記載について、当該記載の関係のみでは、レチクル中心が第2の想像線上のどこに位置するのかが一義的に定まらないため、第1、第2のアライメントマークに対するレチクル中心の位置関係が不明である。

(2)請求項5で引用する請求項1に記載された「レチクル中心点に関して第1のアライメントマークに対称である、設計領域の外側に位置する第2のアライメントマーク」について、請求項5に係る発明に対応する発明の詳細な説明の記載は【0046】?【0051】及び【図11c】?【図11f】であると考えられるところ、【0046】には「アライメントマーク284aおよび284bは、レチクル中心286に関して互いに対称」及び「アライメントマーク284a’および284b’は、レチクル中心286’に関して互いに対称」と、また【0047】には「マーク284aおよび284bは、レチクル中心286に関して互いに対称」と記載されているものの、【図11c】?【図11f】では、アライメントマーク及びレチクル中心との間に、そのような対称な関係は存在していないから(一般に、ある「点」に対して「対称」という場合、「点対称」な関係のみが定義可能であることに留意されたい。)、請求項1を引用する請求項5の当該記載は、発明の詳細な説明及び図面を参酌してもなお意味が不明である。

3.請求項8
請求項8に記載された「第1の仮想アライメントマークは、ウェハに関して第2の仮想アライメントマークからの既知のオフセットを有する」について、あらかじめ「既知」であればオフセットは生じることはないと考えられるところ、「既知のオフセットを有する」とは、いかなる技術的事項を指すのかが、発明の詳細な説明及び図面を参酌してもなお不明である。
また、「オフセット」とは、一定の離れた距離のことを指すものと解されるところ、「仮想アライメントマーク」自体が「オフセットを有する」とはいかなる技術的事項を指すのかが、発明の詳細な説明及び図面を参酌してもなお不明である。
上記の点については、請求項8を引用する請求項9?11、並びに請求項10及び請求項10を引用する請求項11に記載された「第2の仮想アライメントマークは、ウェハに関して第3の仮想アライメントマークからの既知のオフセットを有する」についても同様である。

4.請求項9
請求項9に記載された「プロセッサは第1の仮想アライメントマークおよび第2の仮想アライメントマークを用いて第1の層を第2の層に整列させる」について、「プロセッサ」は通常、演算をするためのものにすぎないから、それ単独ではウェハ等の物体を動かす機能はないところ、「プロセッサ」が「第1の仮想アライメントマークおよび第2の仮想アライメントマークを用いて第1の層を第2の層に整列させる」とは、プロセッサが「第1のアライメントマークおよび第2のアライメントマーク」をどのように「用いて」、何によって「第1の層を第2の層に整列させる」のか、その意味する技術的事項が、発明の詳細な説明及び図面を参酌してもなお不明である。
上記の点については、請求項9を引用する請求項10及び11、並びに請求項11に記載された「プロセッサは、第2の仮想アライメントマークおよび第3の仮想アライメントマークを用いて第2の層を第3の層に整列させる」についても同様である。

……(略)……

6.請求項13

……(略)……

(3)請求項13に記載された「第1のアライメントマークの直接上に第2のアライメントマークを印刷する意図で第2のアライメントマークを第1の表面層上に印刷する」について、「第1のアライメントマークの直接上に第2のアライメントマークを印刷する」とは、「マーク」の「直接上」に「マーク」を「印刷する」という言葉の意味する内容、及び「印刷する意図」と「印刷する」ことの関係が、発明の詳細な説明及び図面を参酌してもなお不明である。

上記(1)?(3)の点については、請求項13を引用する請求項14についても同様である。

……(略)……

第2 本願は、以下の理由で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

請求項1?19に係る発明は、上記「第1」に示した各理由により、発明の詳細な説明と対応しておらず、したがって、発明の詳細な説明に記載されたものとは認められないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。


第3 本願は、以下の理由で特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

請求項1?19に係る発明は、上記「第1」に示した各理由により、対応する発明の詳細な説明及び図面を参酌しても、その記載が不明であり、あるいは、上記「第2」に示した理由により、対応する技術的事項が発明の詳細な説明に記載されておらず、また技術常識を参酌しても、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということができない。
したがって、本願は、発明の詳細な説明に、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明瞭かつ十分に記載されていないから、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。」

2.当審の判断
(1)請求項1について
(1-1)請求人は平成25年4月25日付け意見書において
「1) 審判官殿は、請求項1に記載された「ウェハの第1の表面層上に印刷された第1および第2のアライメントマーク」の「印刷」について、リソグラフィにおいて「印刷」という用語は一般的でないため、当該「印刷」が(a)リソグラフィによりウェハ上にパターニングされて生じた状態を指すものか、(b)ウェハ上に別途、リソグラフィとは異なる「印刷」が施されるものか、あるいは(c)(a)および(b)以外の事項を意味するのかが、発明の詳細な説明および図面を参酌してもなお不明であり、さらに、そのような「第1および第2のアライメントマーク」を「ウェハ」の「表面層上に印刷」するとはいかなる技術的事項を意味するのかが不明であり、上記の点は、請求項2?19に記載された「印刷」についても同様であるとご指摘されました。
そこで、上述のように、請求項1?19において、「印刷」を「エッチング」に補正するとともに、請求項1等において、「設計パターン、第1のアライメントマークおよび第2のアライメントマークをウェハのフォトレジスト層上に投影し、設計パターン、第1のアライメントマークおよび第2のアライメントマークがウェハのフォトレジスト層上に、投影されたようにエッチングされるように構成された光源」との限定を付加しました(たとえば、明細書の第0023段落および図4参照)。
上記の補正により、「印刷」が(a)リソグラフィによりウェハ上にパターニングされて生じた状態を指し、アライメントマークは、アライメントマークおよび設計パターンを有するレチクルを用いてウェハのフォトレジスト層上にエッチングされることが明確となっています。よって、ご指摘の記載不備は解消されたものと思料致します。」と主張している。
しかし、請求項1に記載された「ウエハのフォトレジスト層上にエッチングされた第1および第2のアライメントマーク」では、第1および第2のアライメントマークはウエハのフォトレジスト層上にエッチングされるのであるから、ウエハのフォトレジスト層の上の層をエッチングすることを意味するものと考えられるが、通常はフォトレジスト層をパターニングし、パターニングされたフォトレジスト層で覆われた部分以外の部分をエッチングすることでパターンを形成するのが普通であり、このような、「フォトレジスト層上にエッチング」とはいかなる技術的事項を意味するのか不明である。
また、請求項1に記載された「設計パターン、第1のアライメントマークおよび第2のアライメントマークをウェハのフォトレジスト層上に投影し、設計パターン、第1のアライメントマークおよび第2のアライメントマークがウェハのフォトレジスト層上に、投影されたようにエッチングされるように構成された光源」では、「光源」が「投影」とともに「エッチング」も行うことを意味するものと考えられるが、通常「光源」はエッチングを行うものではないから、「投影されたようにエッチングされるように構成された光源」とはいかなる技術的事項を意味するのか不明である。
したがって、請求項1に係る発明は明確とはいえない。

(1-2)当審の拒絶理由で、請求項5で引用する請求項1について指摘したことに対し、請求人は平成25年4月25日付け意見書において
「2) 審判官殿は、請求項5で引用する請求項1に記載された「レチクル中心点に関して第1のアライメントマークに対称である、設計領域の外側に位置する第2のアライメントマーク」について、請求項5に対応する発明に対応する発明の詳細な説明の記載は、第0046段落?第0051段落および図11c?図11fであると考えられるところ、図11c?図11fでは、アライメントマークおよびレチクル中心との間に対称な関係は存在していないから、請求項1を引用する請求項5の当該記載は、発明の詳細な説明および図面を参酌してもなお不明であるとご指摘されました。
そこで、上述のように、請求項1において「レチクル中心点に関して」との限定を削除しました。当該補正により、上記の1)での補正および議論と合わせて、補正前の請求項1と補正前の請求項5との間にあった「第1のアライメントマーク」、「第2のアライメントマーク」および「レチクル中心」間の位置関係の矛盾が解消され、ご指摘の記載不備は解消されたものと思料致します。」と主張している。
しかし、請求項1において「レチクル中心点に関して」との記載が削除されたことにより、第2のアライメントマークは第1のアライメントマークと何に関して対称であるのかが不明となったから、請求項1に記載された「第1のアライメントマークに対称である、設計領域の外側に位置する第2のアライメントマーク」は意味が不明である。
したがって、請求項1に係る発明は明確とはいえない。

(1-3)上記(1-1)で指摘した点は、請求項1を直接または間接的に引用する請求項2ないし10においても同様に不明であり、請求項1と同様の記載がある請求項11、12、14およびこれらの請求項の何れかを直接または間接的に引用する請求項13、15ないし17においても同様に不明である。また、上記(1-2)で指摘した点については、請求項1を直接または間接的に引用する請求項3ないし10においても同様に不明であり、請求項1と同様の記載がある請求項11においても同様に不明である。
したがって、請求項2ないし17に係る発明は明確とはいえない。

(1-4)上記(1-1)ないし(1-3)で指摘した点については、発明の詳細な説明の記載と対応しておらず、請求項1ないし17に係る発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。

(1-5)上記(1-1)ないし(1-3)で指摘した点については、対応する技術的事項が発明の詳細な説明に記載されておらず、請求項1ないし17に係る発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。

(2)請求項5について
(2-1)請求人は平成25年4月25日付け意見書において、
「1) 審判官殿は、請求項5に記載された「第1の想像線が、第1および第2のアライメントマークに交わり、第2の想像線が、レチクル中心と第1および第2のアライメントマークの中点とに交わり、第1の想像線は、第2の想像線に対して垂直である」という記載について、当該記載の関係のみでは、レチクル中心が第2の想像線上のどこに位置するのかが一義的に定まらないため、第1、第2のアライメントマークに対するレチクル中心の位置関係が不明であるとご指摘されました。
そこで、上述のように、請求項5において、「第1の想像線が、第1および第2のアライメントマークに交わり、第2の想像線が、レチクル中心と第1および第2のアライメントマークの中点とに交わり、第1の想像線は、第2の想像線に対して垂直である」を「第1の想像線が、ウェハのフォトレジスト層上にエッチングされた第1および第2のアライメントマークに交わり、第2の想像線が、レチクル中心がウェハのフォトレジスト層上に投影される位置とウェハのフォトレジスト層上にエッチングされた第1および第2のアライメントマークの中点とに交わり、第1の想像線は、ウェハ上で第2の想像線に対して垂直である」に補正しました(たとえば、明細書の第0046段落?第0051段落および図11c?図11fにおける記載参照)。
請求項5において、第1および第2の想像線の位置は、ウェハ上で明確に定義されています。よって、上記の補正により、レチクル中心が第2の想像線上の「ウェハのフォトレジスト層上に投影される位置」に位置することが一義的に定まり、下記の2)での補正および議論と合わせて、第1、第2のアライメントマークに対するレチクル中心の位置関係が明確になったものと思料致します。」と主張している。
しかし、請求人が補正の根拠とする明細書の第0046段落?第0051段落および図11c?図11fには、「第1の想像線」および「第2の想像線」は、レチクル上における想像線であったことしか記載されていないが、請求項5には「第1の想像線が、ウェハのフォトレジスト層上にエッチングされた第1および第2のアライメントマークに交わり、第2の想像線が、レチクル中心がウェハのフォトレジスト層上に投影される位置とウェハのフォトレジスト層上にエッチングされた第1および第2のアライメントマークの中点とに交わり、第1の想像線は、ウェハ上で第2の想像線に対して垂直である」と記載されているように「第1の想像線」および「第2の想像線」は、ウエハ上における想像線となっており、このような「第1の想像線」および「第2の想像線」が、ウエハ上における想像線であることは、発明の詳細な説明には記載されていない。
したがって、請求項5に係る発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。

(2-2)請求項5には「レチクル中心がウェハのフォトレジスト層上に投影される」と記載されているが、「レチクル中心」は、レチクルにおける中心位置を意味するものであり、何らかのパターンが形成されていることを意味するものではないことは明らかであるから、「レチクル中心がフォトレジスト層上に投影される」とはいかなる技術的事項を意味するのかが不明である。
したがって、請求項5に係る発明は明確とはいえない。

(2-3)上記(2-2)で指摘した点については、発明の詳細な説明の記載と対応しておらず、請求項5に係る発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。

(2-4)上記(2-1)、(2-2)で指摘した点については、対応する技術的事項が発明の詳細な説明に記載されておらず、請求項5に係る発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。

(3)請求項8について
(3-1)請求人は平成25年4月25日付け意見書において、
「審判官殿は、請求項8等に記載された「第1の仮想アライメントマークは、ウェハに関して第2の仮想アライメントマークからの既知のオフセットを有する」について、あらかじめ「既知」であればオフセットは生じることはないと考えられるところ、「既知のオフセットを有する」とは、いかなる技術的事項を指すのか、また、「オフセット」とは、一定の離れた距離のことを指すものと解されるところ、「仮想アライメントマーク」自体が「オフセットを有する」とはいかなる技術的事項を指すのかが、発明の詳細な説明および図面を参酌してもなお不明であるとご指摘されました。
そこで、上述のように、請求項8において、第3および第4のアライメントマークに関する記載を詳しく限定し直すとともに、「第1の仮想アライメントマークは、ウェハに関して第2の仮想アライメントマークからの既知のオフセットを有する」を「プロセッサは、所定のオフセット位置に基づいて、ウェハに関する第1の仮想アライメントマークと第2の仮想アライメントマークとの間のオフセット関係を決定する」に補正しました(たとえば、明細書の第0048段落?第0051段落参照)。また、請求項10を「フォトレジスト層および他のフォトレジスト層は、ウェハの異なる領域に形成される」に補正するとともに、請求項11を削除しました。
補正後の請求項8は、第3および第4のアライメントマークに対して予期されるエッチング位置のオフセットが所定のものであり、プロセッサが、第3および第4のアライメントマークに対して予期されるエッチング位置の所定のオフセットに基づいて、仮想アライメントマークに対するオフセットを決定することを示しています。上記の補正により、「既知のオフセットを有する」との文言は削除され、プロセッサは、所定のオフセット位置に基づいて、「ウェハに関する第1の仮想アライメントマークと第2の仮想アライメントマークとの間のオフセット関係」を決定することが明確になったものと思料致します。」と主張している。
しかし、請求項8に記載された「所定のオフセット位置に投影」では、どのような位置に投影することを意味するのか不明であり、さらに、「プロセッサは、所定のオフセット位置に基づいて、ウェハに関する第1の仮想アライメントマークと第2の仮想アライメントマークとの間のオフセット関係を決定する」では、「ウェハに関する第1の仮想アライメントマークと第2の仮想アライメントマークとの間のオフセット関係」が、どのように決定されるのかが不明である。
なお、請求項8が引用する請求項1では「ウェハのフォトレジスト層上にエッチングされた第1および第2のアライメントマークの位置に基づいてウェハ上の第1の仮想アライメントマークの位置を計算するように構成され」ており、請求項8では「ウェハの他のフォトレジスト層上にエッチングされた第3および第4のアライメントマークの位置に基づいてウェハの他のフォトレジスト層上の第2の仮想アライメントマークの位置を計算するように構成され」ているのであるから、「第1の仮想アライメントマーク」と「第2の仮想アライメントマーク」との間のオフセット関係は、上記計算の結果から求めることができるものと考えられるが、上記計算結果から求めるのではなく、「所定のオフセット位置に基づいて」「オフセット関係を」「決定する」とは、いかなる技術的事項を意味するのかが不明である。
したがって、請求項8に係る発明は明確とはいえない。

(3-2)上記(3-1)で指摘した点は、請求項8を引用する請求項9、10においても同様に不明である。
したがって、請求項9、10に係る発明は明確とはいえない。

(3-3)上記(3-1)、(3-2)で指摘した点については、発明の詳細な説明の記載と対応しておらず、請求項8ないし10に係る発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。

(3-4)上記(3-1)、(3-2)で指摘した点については、対応する技術的事項が発明の詳細な説明に記載されておらず、請求項8ないし10に係る発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。

(4)請求項9について
(4-1)請求人は平成25年4月25日付け意見書において、
「審判官殿は、請求項9等に記載された「プロセッサは第1の仮想アライメントマークおよび第2の仮想アライメントマークを用いて第1の層を第2の層に整列させる」について、「プロセッサ」は通常、演算をするためのものにすぎないから、それ単独ではウェハ等の物体を動かす機能はないところ、プロセッサが「第1のアライメントマークおよび第2のアライメントマーク」をどのように「用いて」、何によって「第1の層を第2の層に整列させる」のか、その意味する技術的事項が、発明の詳細な説明および図面を参酌してもなお不明であるとご指摘されました。
そこで、上述のように、請求項9において、「他のフォトレジスト層は、フォトレジスト層の上に形成され」との限定を付加するとともに、「プロセッサは、第1の仮想アライメントマークおよび第2の仮想アライメントマークを用いて第1の層を第2の層に整列させる」を「プロセッサは、第1の仮想アライメントマークおよび第2の仮想アライメントマークを用いる間、フォトレジスト層に対して他のフォトレジスト層を整列させることを制御するようにさらに構成される」に補正しました(たとえば、明細書の第0048段落?第0051段落参照)。
上記の補正により、プロセッサが「第1の仮想アライメントマークおよび第2の仮想アライメントマークを用いる間」、「フォトレジスト層に対して他のフォトレジスト層を整列させることを制御する」ことが明確となっています。補正後の請求項9は、プロセッサが、フォトレジスト層を直接整列させるのではなく、整列のプロセスを制御することを示しています。なお、上述のように、請求項11は削除しました。以上により、ご指摘の記載不備は解消されたものと思料致します。」と主張している。
しかし、「他のフォトレジスト層はフォトレジスト層の上に形成され」ているのであるから、すでに形成されている「フォトレジスト層」と「他のフォトレジスト層」を「整列させることを制御する」とは、具体的にどのような制御を行うことを意味するのかが不明である。
したがって、請求項9に係る発明は明確とはいえない。

(4-2)上記(4-1)で指摘した点については、発明の詳細な説明の記載と対応しておらず、請求項9に係る発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。

(4-3)上記(4-1)で指摘した点については、対応する技術的事項が発明の詳細な説明に記載されておらず、請求項9に係る発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。

(5)請求項12について
(5-1)請求人は平成25年4月25日付け意見書において、
「3) 審判官殿は、請求項13等に記載された「第1のアライメントマークの直接上に第2のアライメントマークを印刷する意図で第2のアライメントマークを第1の表面層上に印刷する」について、「第1のアライメントマークの直接上に第2のアライメントマークを印刷する」とは、「マーク」の「直接上」に「マーク」を「印刷する」という言葉の意味する内容、および「印刷する意図」と「印刷する」ことの関係が、発明の詳細な説明および図面を参酌しても不明であるとご指摘されました。
そこで、上述のように、請求項13(補正後の請求項12)において、「第1のアライメントマークの直接上に第2のアライメントマークを印刷する意図で第2のアライメントマークを第1の表面層上に印刷する」を「ウェハのフォトレジスト層上に第1のアライメントマークの直接上に第2のアライメントマークをエッチングする意図でレチクルを用いて第2のアライメントマークをフォトレジスト層上にエッチングする」に補正しました(たとえば、明細書の第0052段落?第0056段落参照)。
上記の補正により、「ウェハのフォトレジスト層上に」第1のアライメントマークの直接上に第2のアライメントマークを「エッチング」する意図で「レチクルを用いて」第2のアライメントマークをフォトレジスト層上にエッチングすることが明確となり、ご指摘の記載不備は解消されたものと思料致します。」と主張している。
しかし、請求項12に記載された「第2のアライメントマーク」は「レチクル中心点に関して第1のアライメントマークに対称であ」り、しかも「設計領域の外側に位置する」ものであるから、ウエハのフォトレジスト層上で第2のアライメントマークは第1のアライメントマークの直接上に投影されたりエッチングされたりすることはないはずである。そうすると「第1のアライメントマークの直接上に第2のアライメントマークをエッチングする意図でレチクルを用いて第2のアライメントマークをフォトレジスト層上にエッチングする」とは、いかなる技術的事項を意味するのかが不明である。
したがって、請求項12に係る発明は明確とはいえない。

(5-2)上記(5-1)で指摘した点は、請求項12を引用する請求項13においても同様に不明である。
したがって、請求項13に係る発明は明確とはいえない。

(5-3)上記(5-1)、(5-2)で指摘した点については、発明の詳細な説明の記載と対応しておらず、請求項12、13に係る発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。

(5-4)上記(5-1)、(5-2)で指摘した点については、対応する技術的事項が発明の詳細な説明に記載されておらず、請求項12、13に係る発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。

3.むすび
以上検討したとおり、本願は、特許法第36条第6項第1、2号および同条第4項に規定する要件を満たしていない。

第3 特許法第29条第2項の要件について
1.原査定の拒絶理由
平成23年7月14日付けで通知した拒絶理由の「理由3、4」の概要は以下のとおりである。

「[理由3]この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
[理由4]この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された引用例に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」

2.本願発明
平成25年4月25日付けの手続補正で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項18に記載された事項により特定される発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「ウェハの設計領域の外側でウェハの表面にアライメントマークをエッチングするための手段と、
ウェハの表面にエッチングされたアライメントマークの位置を決定するための手段と、
意図されたエッチング位置からのエッチングされたアライメントマークのずれを決定するための手段と、
ウェハのアライメントを修正してずれを補償するための手段とを含む、ウェハアライメントシステム。」

3.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平10-223528号公報(以下「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(後述する引用発明の認定に関連する箇所に下線を付した。)

記載事項ア.
「【0051】次に、上述のようにして構成された本第1の実施形態に係る投影露光装置10におけるアライメント動作及び露光動作について、図6のようなショット配列のウエハWの第2層露光時を例に挙げて説明する。
【0052】まず、不図示のウエハローダから図1及び図2に示されるウエハホルダー36上にウエハWが転送される。ウエハWの各ショット領域にはそれぞれ、前層の露光により既に回路パターンが形成されている。更に、図6に示されるように、ウエハW上の各ショット領域S_(n )(n=1,2,3,……,26)にはそれぞれ2個の十字型のアライメントマークMA_(n) 、MB_(n )(n=1,2,3,……,26)が形成されている。ここでは、レチクルRのアライメントが終了しており、不図示の干渉計によって規定される直交座標に対するレチクルRのX,Y,回転方向のずれ量はほぼ零となっているものとする。
【0053】アライメントマークMA_(n) 、MB_(n) は、各ショット領域の中心(基準点)に関して点対称となる位置に形成され、設計上、各ショット領域S_(n) のX方向長さはPx、Y方向の長さはPyであるものとする。また、同一ショット内のマーク中心間のX方向の間隔はpxであり、Y方向の間隔はpyであるものとする。
【0054】次に、主制御系32がウエハWの原点調整(プリアライメント)を行う。その後、特開平6ー275496号公報に詳細に開示されるような、EGA(エンハンスト・グローバルアライメント)計測を行うが、本実施形態では、それに先立って主制御系32では可動式の計測顕微鏡28の位置を調整する。
【0055】これを更に詳述すると、図6のウエハWの場合、サンプルショットとして斜線が施された8つのショット領域(S_(1 )、S_(4) 、S_(5) 、S_(8) 、S_(19)、S_(22)、S_(23)、S_(26))を選択するものとし、アライメントマークMA_(1) とMA_(4 )を同時に計測し、次にMB_(1 )とMB_(4) とを同時に計測し、以後MA_(5) とMA_(8) を同時に計測するというようにマークを2つずつ順次計測していくものとする。この場合、これら同時に計測される各組のアライメントマークはほぼ同一のX軸上に位置しているので、両顕微鏡26、28が図7の平面図に示されるような位置関係にあるとき、主制御系32では図3のY移動機構76A、76Bをその位置で固定し、この状態から計測顕微鏡28を+X方向に駆動し、図8の平面図に示される距離d=3Pxとなるように、X移動機構72を介して計測顕微鏡28の位置を調整する。ここで、図7に示される基準位置に計測顕微鏡28があるときに、基準板FPを用いて計測顕微鏡28の検出中心と投影光学系PLの光軸との距離であるベースライン長さBa2_(0) の計測を、予め固定側の計測顕微鏡26のベースライン長さBa1_(0) の計測とともに行っておけば、図7の両顕微鏡26、28の間隔Dは既知であるので、改めてベースライン長さBa2を計測することなく、移動後のベースライン長さBa2を計測顕微鏡28の位置を管理する干渉計86X、86Yの計測値に基づいて求めることができる。
【0056】上記の計測顕微鏡28の位置調整が終了すると、主制御系32では、ベースライン長さBa2が変動しないように、計測顕微鏡28の位置をサーボ制御しながら、ウエハステージ22をXY2次元駆動して、8つのEGAショット領域(サンプルショット領域)内のアライメントマークMA_(m) 、MB_(m) (m=1,4,5,8,19,22,23,26)のステージ座標系(X、Y)上での座標値(FM_(NXn) 、FM_(NYn ))を実測する。ここで、本実施形態では、前述したように、計測顕微鏡26、28を用いて3Px離れた2つのアライメントマークMA(又はMB)を同時に計測することができるので、アライメントマークを順次一つずつ計測しなければならなかった従来の場合に比べて、計測時間をおよそ1/2に短縮することが可能になる。
【0057】そして、上記のサンプルショットのアライメントマーク位置の実測が終了すると、主制御系32では、この計測結果と、既知の上記選択された8個のショット領域の基準点(ショットセンタ)のウエハW上の座標系(α,β)上での設計上の配列座標値(C_(Xn),C_(Yn))と、測定されたアライメントマークの各ショット領域Sn上の座標系(x,y)での設計上の座標値(相対座標値)(S_(NXn) ,S_(NYn))とを用いて、次式の座標変換式に基づいてウエハWの各ショット領域S_(n )のステージ座標系(X,Y)上での計算上の座標、及びショット領域の各誤差(ショット領域そのものの倍率誤差、回転誤差等)を求める。」

記載事項イ.
「【0062】その後、主制御系32では式(1)の変換行列B中の各ショット領域上の回路パターンの残存回転誤差θを補正するように、レチクルステージ14を介してレチクルRに適当な回転を施して、ステージ座標系(X,Y)に対するショット領域S_(n) 上の回路パターンの回転を小さく抑える。
【0063】次に、ウエハW上の座標系の直交度誤差wは、厳密な意味では補正できないが適度にレチクルRを回転させることで、その誤差を小さく抑えることができる。そこで、主制御系32では回転誤差Θ、回転誤差θ及び直交度誤差wのそれぞれの絶対値の和が最小になるように、レチクルR又はウエハWの回転量を最適化することも可能である。
【0064】次に、主制御系32では、式(1)の変換行列B中の各ショット領域Sn上の回路パターンの直交する2方向への線形伸縮(スケーリング誤差)を補正するように、図1の結像特性制御装置20を介して投影光学系PLの投影倍率を調整する。すなわち、この補正処理で、変換行列Bの要素を構成するショットスケーリングrx及びryに合わせて、投影光学系PLの投影倍率を調整する。
【0065】次に、主制御系32では、上で求めた誤差パラメータより成る要素を含む変換行列A及びOを用いて、次式にウエハW上の各ショット領域Snの基準点の設計上の配列座標値(C_(Xn) ,C_(Yn))を代入することにより、その基準点のステージ座標系(X,Y)上での計算上の配列座標値(G_(Xn) ,G_(Yn))を求める。
【0066】
【数2】


【0067】そして、主制御系32では、計算により得られた配列座標(G_(Xn),G_(Yn))及び予め求めてあるベースライン長さBa1、Ba2に基づいて、ウエハW上の各ショット領域Snの基準点を投影光学系PLの露光フィールド内の所定の位置に位置合わせして、当該ショット領域に対してレチクルRのパターン像を投影露光する。こうした位置合わせ及び投影露光が、各ショット領域について順次実行される。そして、ウエハW上の全てのショット領域への露光が終了した後に、ウエハWの現像が行われる。」

記載事項ウ.
「【0100】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、同時に複数の位置合わせマークを計測できるので、アライメントのための計測時間を最大計測光学系(又は指標マーク)の個数分の1に短縮することが可能であり、システム全体としてのスループットを向上させることができる。」

記載事項エ.
「【図1】




記載事項オ.
「【図6】




4.引用例に記載された発明の認定
引用例の上記記載事項ア.?オ.の記載内容からして、引用例には、次の発明が記載されていると認めることができる。

「前層の露光によりウエハWのショット領域に回路パターンとアライメントマークMA_(n)、MB_(n)を形成する手段と、アライメントマークMA_(n)、MB_(n)のステージ座標系上での座標値を実測する計測顕微鏡と、この計測結果と、ショット領域の基準点のウエハW上の座標系上での設計上の配列座標値と、測定されたアライメントマークの各ショット領域上の座標系での設計上の座標値とを用いて、ウエハWの各ショット領域のステージ座標系上での計算上の座標、及びショット領域の各誤差(ショット領域そのものの倍率誤差、回転誤差等)を求め、その後、各ショット領域上の回路パターンの残存回転誤差を補正するようにレチクルステージを介してレチクルRに適当な回転を施し、次に各ショット領域上の回路パターンの直交する2方向への線形伸縮を補正するように投影光学系PLの投影倍率を調整する主制御系、とを含むシステム。」(以下「引用発明」という。)

5.本願発明と引用発明との対比・判断
(a)引用発明の「前層の露光により」「形成」された「アライメントマークMA_(n)、MB_(n)」は、前層の露光後のエッチングにより形成されたものであることは明らかであるから、引用発明の「前層の露光によりウエハWのショット領域に回路パターンとアライメントマークMA_(n)、MB_(n)を形成する手段」と、本願発明の「ウェハの設計領域の外側でウェハの表面にアライメントマークをエッチングするための手段」は、「ウェハの表面にアライメントマークをエッチングするための手段」である点で共通している。
(b)引用発明の「アライメントマークMA_(n)、MB_(n)のステージ座標系上での座標値を実測する計測顕微鏡」は、本願発明の「ウェハの表面にエッチングされたアライメントマークの位置を決定するための手段」に相当する。
(c)引用発明の「この計測結果と、ショット領域の基準点のウエハW上の座標系上での設計上の配列座標値と、測定されたアライメントマークの各ショット領域上の座標系での設計上の座標値とを用いて、ウエハWの各ショット領域のステージ座標系上での計算上の座標、及びショット領域の各誤差(ショット領域そのものの倍率誤差、回転誤差等)を求め」る「主制御系」は、本願発明の「意図されたエッチング位置からのエッチングされたアライメントマークのずれを決定するための手段」に相当する。
(d)引用発明の「その後、各ショット領域上の回路パターンの残存回転誤差を補正するようにレチクルステージを介してレチクルRに適当な回転を施し、次に各ショット領域上の回路パターンの直交する2方向への線形伸縮を補正するように投影光学系PLの投影倍率を調整する主制御系」は、本願発明の「ウェハのアライメントを修正してずれを補償するための手段」に相当する。
(e)引用発明の「システム」が本願発明の「ウエハアライメントシステム」に相当する。

(a)?(e)に記載したことからして、本願発明と引用発明の両者は、
「ウェハの表面にアライメントマークをエッチングするための手段と、
ウェハの表面にエッチングされたアライメントマークの位置を決定するための手段と、
意図されたエッチング位置からのエッチングされたアライメントマークのずれを決定するための手段と、
ウェハのアライメントを修正してずれを補償するための手段とを含む、ウェハアライメントシステム。」
である点で一致し、次の相違点が存在する。

相違点
本願発明は、アライメントマークをウェハの設計領域の外側でエッチングするのに対して、引用発明は、アライメントマークMA_(n)、MB_(n)とウエハの設計領域との位置関係が不明である点。

上記相違点について検討する。
アライメントマークは、通常回路パターンが形成される設計領域の外側に設けるのが技術常識であるから、上記相違点は実質的な相違点とはいえない。仮に上記相違点が実質的な相違点であったとしても、アライメントマークを設計領域の外側に設けるようにする程度のことは当業者であれば容易に想到し得ることである。

したがって、本願発明は引用発明であるか、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上検討したとおり、本願発明は、引用発明であるか、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し特許を受けることができないか、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 まとめ
したがって、本願は、特許法第36条第6項第1、2号および同条第4項に規定する要件を満たしていない。
また、本願発明は、引用発明であるか、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し特許を受けることができないか、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-29 
結審通知日 2013-06-04 
審決日 2013-06-17 
出願番号 特願2000-604272(P2000-604272)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (H01L)
P 1 8・ 121- WZ (H01L)
P 1 8・ 537- WZ (H01L)
P 1 8・ 536- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤尾 隼人  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 森林 克郎
伊藤 昌哉
発明の名称 重ね合わせ誤差に対する拡大誤差およびレチクル回転誤差の影響の低減  
代理人 仲村 義平  
代理人 森田 俊雄  
代理人 深見 久郎  
代理人 堀井 豊  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ