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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C03C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C03C
管理番号 1281106
審判番号 不服2011-18516  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-08-26 
確定日 2013-11-01 
事件の表示 特願2004-361924「合わせガラス用中間膜及び合わせガラス」拒絶査定不服審判事件〔平成17年8月4日出願公開、特開2005-206453〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成16年12月14日(優先権主張 平成15年12月26日)の出願であって、平成22年4月26日付けの拒絶理由が通知され、同年7月8日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成23年5月27日付けで拒絶査定されたので、平成23年8月26日付けで拒絶査定不服審判が請求され、同日付けで手続補正書により特許請求の範囲が補正され、平成24年3月26日付けで特許法第164条3項に基づく報告書を引用した審尋がなされ、同年5月28日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成23年8月26日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年8月26日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正前及び補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲についてするものであって、特許請求の範囲の請求項1に関する補正は、(1)合わせガラスを構成する「2枚のガラス」に関し、本件補正前における「クリアガラス、グリーンガラス、高熱線吸収ガラス及び紫外線吸収ガラスからなる群より選択される2枚のガラス」を、本件補正により「2枚のクリアガラス」に限定するとともに、(2)本願補正前の「遮熱層」について、「遮熱性能のある金属酸化物を含有」することに加えて、本件補正により、さらに「透明樹脂、可塑剤」を含有することとし、同じく本件補正前の「紫外線遮蔽層」について、本件補正により「透明樹脂、可塑剤及び紫外線カット剤を含有」することを特定し、(3)本件補正前の請求項3及び5を削除するものである。
上記(1)及び(2)の補正は、本件発明の特定事項を限定するものであることは明らかであり、補正前後の請求項1に係る発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので特許請求の範囲の減縮にあたり、上記(3)の補正は、請求項の削除に該当する。
このため、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含み、特許法第17条の2第3項規定に反する新規事項を追加するものではない。
そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かを、請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)について検討する。
本願補正発明は、次のとおりのものである。
「少なくとも遮熱層と紫外線遮蔽層とをそれぞれ1層以上有することを特徴とする合わせガラス用中間膜であって、
遮熱層は、透明樹脂、可塑剤及び遮熱性能のある金属酸化物を含有し、かつ、2枚のクリアガラスの間に介在させて合わせガラスとしたときに、周波数0.1MHz?26.5GHzにおける電磁波シールド性能が10dB以下、ヘイズが1.0%以下、可視光透過率が70%以上、かつ、300?2100nmの波長領域での日射透過率が可視光透過率の85%以下であり、
紫外線遮蔽層は、透明樹脂、可塑剤及び紫外線カット剤を含有し、2枚のクリアガラスの間に介在させて合わせガラスとしたときに、SAE J1796に準拠して測定した紫外線透過率が10%以下であることを特徴とする合わせガラス用中間膜。」

2.刊行物に記載された発明
(1)引用例1の記載事項
これに対し、本願優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由で引用された特開2003-252657号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「少なくとも、2層の(A)層と前記(A)層の間に挟着される(B)層との3層からなる積層構造を有する合わせガラス用中間膜であって、前記(A)層は、ポリビニルアセタール樹脂(P)、可塑剤(W)及び錫ドープ酸化インジウム粒子からなり、前記(B)層は、ポリビニルアセタール樹脂(Q)、可塑剤(X)及び錫ドープ酸化インジウム粒子からなり、・・・であることを特徴とする合わせガラス用中間膜」(特許請求の範囲の請求項1)
(イ)「上記(A)層は、ITO粒子を含有することにより、赤外線カット効果を有し、遮熱性を有する。・・・」(【0035】段落)
(ウ)「上記(A)層には、更に、必要に応じて、・・・耐候性や耐光性を改善するための紫外線吸収剤・・・等の添加剤が添加されていてもよい。」(【0046】段落)
(エ)「上記(B)層は、ITO粒子を含有することにより、赤外線カット効果を有し、遮熱性を有する。・・・。」(【0076】段落)
(オ)「(1)光学特性
直記分光光度計(島津製作所社製、UV3100)を使用して合わせガラスの300?2500nmの波長領域での透過率を測定し、JIS Z 8722及びJIS R 3106(1998)に準拠して380?780nmの波長領域での可視光透過率(Tv)、300?2500nmの波長領域での日射透過率(Ts)を求めた。
(2)ヘイズ (Hz)
JIS K 6714に準拠して測定した。」(【0138】【0139】段落)
(カ)「(4)電磁波透過性
近傍界の電磁波シールド効果測定法(KEC法)により、0.1?10MHzの周波数領域での反射損失値(dB)を測定し、厚さ2.5mmの通常のフロートガラス単板から得られる値と比較した。また、遠方界の電磁波シールド効果測定法として、送信受信用の1対のアンテナ間に合わせガラス600mm角を立て、電波信号発生装置からの電波をスペクトルアナライザーで受信することにより、2?26.5GHzの周波数領域での反射損失値(dB)を測定し、厚さ2.5mmの通常のフロートガラス単板から得られる値と比較した。測定周波数領域全体での比較の結果、両者の差(ΔdB)の最小値?最大値を表1に示した。」(【0141】段落)
(キ)【0145】段落の【表1】には、実施例1?6の各種製造条件と得られた合わせガラスの特性値がまとめられており、可視光透過率(Tv)が77.3?85.0%、日射透過率(Ts)が47.5?64.3%、ヘイズ (Hz)が0.5%、電磁波透過性(ΔdB)が0?1dBであることを確認することができる。

(2)引用例1に記載された発明
記載事項(ア)によれば、引用例1には2層の(A)層により(B)層を挟持した合わせガラス用中間膜が記載されており、(A)層は、ポリビニルアセタール樹脂、可塑剤及び錫ドープ酸化インジウム粒子からなり、前記(B)層は、ポリビニルアセタール樹脂、可塑剤及び錫ドープ酸化インジウム粒子からなる。そして、同(ウ)によれば、(A)層には、耐候性や耐光性を改善するための紫外線吸収剤が含まれる。
また、引用例1の中間膜を使用して合わせガラスとしたときの特性は、同(キ)によれば、可視光透過率(Tv)が77.3?85.0%、日射透過率(Ts)が47.5?64.3%、ヘイズ (Hz)が0.5%、電磁波透過性(ΔdB)が0?1dBである。
したがって、引用例1には次の発明(以下「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。
「2層の(A)層により(B)層を挟持した構造であり、該(A)層は、ポリビニルアセタール樹脂、可塑剤、錫ドープ酸化インジウム粒子及び紫外線吸収剤からなり、該(B)層は、ポリビニルアセタール樹脂、可塑剤及び錫ドープ酸化インジウム粒子からなる合わせガラス用中間膜であって、
合わせガラスとしたときに、可視光透過率(Tv)が77.3?85.0%、日射透過率(Ts)が47.5?64.3%、ヘイズ (Hz)が0.5%、電磁波透過性(ΔdB)が0?1dBである合わせガラス用中間膜。」

3.対比と判断
(1)対比
本願補正発明と引用例1発明とを比較する。
引用例1発明における「ポリビニルアセタール樹脂」は、本願補正発明における「透明樹脂」に相当することは明らかであり、また、記載事項(イ)(エ)によれば、引用例1発明の(A)層及び(B)層に含まれる「錫ドープ酸化インジウム粒子」(ITO粒子)は赤外線カット効果を有するので、本願補正発明における「遮熱性能のある金属酸化物」に相当する。
そして、引用例1発明の(A)層は、紫外線吸収剤を含んでおり、これは本願補正発明における「紫外線カット剤」であるので、本願補正発明における「紫外線遮蔽層」に相当する。なお、引用例1発明の(A)層は、遮熱性能のある金属酸化物であるITO粒子と共に紫外線カット剤を含有するので、紫外線遮断性ばかりでなく遮熱性を有する。しかし、遮熱性と紫外線遮断性は、それぞれ、ITO粒子と紫外線カット剤という異なる物質により独立して達成され、遮熱性は紫外線遮断性に実質的な影響を与えないので、引用例1発明における(A)層は紫外線遮断層であるとすることができる。
また、(B)層は、「遮熱性能のある金属酸化物」を含有するので本願補正発明における「遮熱層」に相当する。
一方、合わせガラスとした場合の特性について、まず、電磁波透過性(電磁波シールド特性)に関しては、引用例1では記載事項(カ)に示される測定条件で測定しており、これは、本願補正発明と同じ条件(本願明細書【0113】段落)である。そして、引用例1発明における計測値は0?1dBであるので、引用例1発明における合わせガラスは、本願補正発明における「周波数0.1MHz?26.5GHzにおける電磁波シールド性能が10dB以下」の要件を満たす。
ヘイズに関しては、引用例1発明では、計測値が0.5%であるが、同(オ)によれば、その測定条件は、本願補正発明と同じJIS規格によっているので(本願明細書【0114】段落)、本願補正発明の「ヘイズが1.0%以下」の要件を充足する。
可視光透過率(Tv)と日射透過率(Ts)に関しても、引用例1発明では、前者が77.3?85.0%であり、後者が300?2100nmの波長領域で47.5?64.3%(可視光透過率の55.9?83.2%)であり、同(オ)によれば、引用例1においても本願補正発明と同じ測定条件(本願明細書【0115】段落)によっているので、本願補正発明における「可視光透過率が70%以上、かつ、300?2100nmの波長領域での日射透過率が可視光透過率の85%以下」の要件を充足する。
したがって、本願補正発明と引用例1発明との一致点と相違点は次のとおりとなる。
(i)一致点
「少なくとも遮熱層と紫外線遮蔽層とをそれぞれ1層以上有することを特徴とする合わせガラス用中間膜であって、
遮熱層は、透明樹脂、可塑剤及び遮熱性能のある金属酸化物を含有し、かつ、2枚のクリアガラスの間に介在させて合わせガラスとしたときに、周波数0.1MHz?26.5GHzにおける電磁波シールド性能が10dB以下、ヘイズが1.0%以下、可視光透過率が70%以上、かつ、300?2100nmの波長領域での日射透過率が可視光透過率の85%以下であり、
紫外線遮蔽層は、透明樹脂、可塑剤及び紫外線カット剤を含有することを特徴とする合わせガラス用中間膜。」
(ii)相違点
本願補正発明における紫外線遮蔽層は、2枚のクリアガラスの間に介在させて合わせガラスとしたときに、SAE J1796に準拠して測定した紫外線透過率が10%以下であるのに対し、引用例1発明における紫外線遮蔽層の紫外線透過率は、明記されていない点。

(2)判断
請求人は、従来技術において達成される紫外線遮蔽層による紫外線透過率はせいぜい38.4%であるところ(審判請求書第5頁17行)、本願補正発明においては紫外線透過率を10%以下とすることにより、遮熱層に入射した紫外線がITO粒子等の金属酸化物の化学変化を発生させ、これが周辺の樹脂マトリックスに影響して耐候性を低下することを防いでおり、紫外線透過率を10%以下にすることについて、引用例1には動機付けがない旨を主張する。
そこで、引用例1発明において、上記相違点の特定事項に想到することが容易であるかを検討する。
ア 周知例の記載事項
本願優先日前に国際公開され、拒絶査定及び前置報告書でも引用された、請求人の出願に係る国際公開03/18502号公報(以下「周知例」という。)には、次の事項が記載されている。
(サ)「可塑化ポリビニルアセタール樹脂組成物からなる合わせガラス用中間膜であって、前記可塑化ポリビニルアセタール樹脂組成物は、ポリビニルアセタール樹脂100重量部、可塑剤20?60重量部、並びに、錫ドープ酸化インジウム(ITO)微粒子、・・・からなる群より選択される少なくとも1種の微粒子0.1?3重量部を含有するものであり、
・・・であることを特徴とする請求の範囲第1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15項記載の合わせガラス用中間膜。」(第54頁の請求項16)
(シ)「可塑化ポリビニルアセタール樹脂組成物は、更に、紫外線吸収剤として、マロン酸エステル系化合物及び/又はシュウ酸アニリド系化合物を含有することを特徴とする請求の範囲第16、17、18又は19項記載の合わせガラス用中間膜。」(第56頁の請求項20)
(ス)「紫外線吸収剤としてマロン酸系化合物及び/又はシュウ酸アニリド系化合物等を含有することにより、熱や光(特に紫外線領域)等のエネルギーによりITO微粒子等自体や分散安定剤が化学変化を起こしたり、それが周辺のポリビニルアセタール樹脂マトリクスにまで影響を与えたりすることを抑制できる。従って、高い耐候性を本発明の中間膜に付与することができる。
上記マロン酸系化合物及びシュウ酸アニリド系化合物等は、UV-B領域において強い吸収を示すので、種々の樹脂の劣化を引き起こす300?320nmの波長の紫外線から樹脂を保護するのに適しており、本発明の中間膜の耐候性及び耐光性を改善することができる。また、マロン酸系化合物及びシュウ酸アニリド系化合物等の吸収域は可視光と重ならないので、着色を引き起こすこともない。更に、モル吸光度が非常に高く、分子量が小さいので、同じ含有量での紫外線の吸収量が従来の紫外線吸収剤よりもはるかに高く、紫外線吸収剤の含有量を減らし、コストダウンを図ることができる。」(第22頁14?26行)
(セ)「(SUV照射試験後光学特性測定)
5cm×10cmの照射サンプルを作製し、以下の条件でSUV照射試験を行った。
試験装置:アイスーパーUVテスター(岩崎電気社製、SUV-F11型)
UV強度:100mW/cm^(2)
限定波長:295?450nm
ブラックパネル温度:63℃
照射時間:100、200、300時間でサンプリング
照射距離:235mm
SUV照射試験後、直記分光光度計(島津製作所社製、U-4000)を使用して、JIS Z 8722及びJIS R 3106に準拠して、380?780nmの波長領域での可視光透過率Tv(SUV照射後)、・・・を測定し、下記式により、ΔTv、・・・を求めた。
ΔTv=Tv(SUV照射後)-Tv(SUV照射前) (1)」(第47頁18行?第48頁5行)
(ソ)第49頁の表4には、マロン酸[(4-メトキシフェニル)-メチレン]-ジメチルエステルを紫外線吸収剤として使用した実施例12?21(第41頁1行?第45頁3行)の結果がまとめられており、SUV照射試験後光学特性測定に関しては、紫外線に300時間照射した前後の可視光透過率の差であるΔTvは、-1.7?-0.5%の範囲であり、紫外線に対し高い耐候性を維持することが確認できる。

イ 周知例から把握される周知技術
記載事項(サ)(シ)より、周知例には、可塑化ポリビニルアセタール樹脂組成物からなる合わせガラス用中間膜であって、ITO微粒子を含有するとともに、紫外線吸収剤を含有する中間膜が記載されており、該中間膜は、遮熱性と紫外線吸収性を併せ持つものである。
そして、同(ス)によれば、紫外線吸収剤としてマロン酸系化合物を含有することにより、紫外線によるITO微粒子の化学変化や、該化学変化による周辺のポリビニルアセタールへの影響を抑制できるとしており、これは、本願補正発明が解決するのと同じ課題を解決するものである。
また、合わせガラスの紫外線に対する耐候性の評価として、SUV照射試験後光学特性測定に注目すれば、記載事項(セ)によれば、周知例においても本願補正発明と同じ試験条件(本願明細書【0120】【0121】段落参照)により特性評価をしている。そして、その結果は、300時間照射後のΔTvは、同(ソ)によれば、周知例では-1.7?-0.8%を達成しており、これは、本願補正発明における-2.9?-1.2%と同等に優れた特性であるといえる。
したがって、次の技術は、本願優先日前に当業者に周知のものであったといえる。
「可塑化ポリビニルアセタール樹脂組成物からなる合わせガラス用中間膜であって、遮熱性金属酸化物としてITO微粒子、紫外線カット剤としてマロン酸系化合物を含有することで、紫外線によるITO粒子への作用と周辺樹脂への作用を抑制し、もって紫外線に対する優れた耐候性を有する合わせガラス用中間膜。」

ウ 相違点の容易想到性
請求人の主張するとおり、引用例1には、紫外線透過率を10%以下にすることについて記載も示唆もない。
しかし、引用例1発明においても、合わせガラス用中間膜の耐候性や耐光性を改善するために、(A)層には紫外線吸収剤を含有することとしている(記載事項(ウ))。
そして、上記したように、合わせガラス用中間膜の紫外線吸収剤としてマロン酸系化合物を使用することは周知であり(さらに必要なら、特開2003-327455公報の特許請求の範囲の請求項1及び8も併せて参照。)、また、マロン酸系化合物を使用することにより、紫外線によるITO粒子の化学反応に起因する耐候性低下を防ぐことも、上記したとおり周知であったといえる。
したがって、引用例1発明において使用する紫外線吸収剤として、周知のマロン酸系化合物を採用すること、これにより、紫外線によるITO粒子の化学反応に起因する耐候性低下を防ぐことは、当業者であれば容易に想到するところである。
そして、合わせガラス用中間膜の紫外線に対する耐候性を改善することは、紫外線吸収剤により紫外線の透過を抑制することと密接に関連するので、引用例1発明においても、SAE J1796に準拠して測定した紫外線透過率が10%以下を達成し得るものと推認できる。
以上のとおりであるので、本願補正発明は、引用例1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易になしうるものである。

4.本件補正についての結び
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成23年8月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成22年7月8日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「少なくとも遮熱層と紫外線遮蔽層とをそれぞれ1層以上有することを特徴とする合わせガラス用中間膜であって、
遮熱層は、遮熱性能のある金属酸化物を含有し、かつ、クリアガラス、グリーンガラス、高熱線吸収ガラス及び紫外線吸収ガラスからなる群より選択される2枚のガラスの間に介在させて合わせガラスとしたときに、周波数0.1MHz?26.5GHzにおける電磁波シールド性能が10dB以下、ヘイズが1.0%以下、可視光透過率が70%以上、かつ、300?2100nmの波長領域での日射透過率が可視光透過率の85%以下であり、
紫外線遮蔽層は、クリアガラス、グリーンガラス、高熱線吸収ガラス及び紫外線吸収ガラスからなる群より選択される2枚のガラスの間に介在させて合わせガラスとしたときに、SAE J1796に準拠して測定した紫外線透過率が10%以下であることを特徴とする合わせガラス用中間膜。」

2.進歩性の判断
本願発明は、上記第2[理由]で検討した本願補正発明の「遮熱層」に関し、「遮熱性能のある金属酸化物」に加えて「透明樹脂、可塑剤」を含有するという特定事項、及び「紫外線遮蔽層」に関し、「透明樹脂、可塑剤及び紫外線カット剤を含有し」との特定事項を削除し、「2枚のガラス」として、「クリアガラス」に加えて「グリーンガラス、高熱線吸収ガラス及び紫外線吸収ガラスからなる群より選択さる2枚のガラス」として2枚のガラスの選択肢を追加するものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、本願発明の下位概念に想到する本願補正発明が、前記「第2の[理由]3(2)」に記載したとおり、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-11-27 
結審通知日 2012-12-04 
審決日 2012-12-20 
出願番号 特願2004-361924(P2004-361924)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C03C)
P 1 8・ 121- Z (C03C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 直也  
特許庁審判長 真々田 忠博
特許庁審判官 斉藤 信人
豊永 茂弘
発明の名称 合わせガラス用中間膜及び合わせガラス  
代理人 特許業務法人 安富国際特許事務所  

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