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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 F23K |
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管理番号 | 1281129 |
審判番号 | 不服2012-23578 |
総通号数 | 168 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-12-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-11-28 |
確定日 | 2013-11-05 |
事件の表示 | 特願2007-160526「エマルション燃焼装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年12月25日出願公開、特開2008-309455〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は,平成19年6月18日の出願であって,平成24年4月23日付けで拒絶の理由が通知されたが,これに対する応答はなく,平成24年8月23日付けで拒絶査定がなされ,それに対して,平成24年11月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 そして,この出願の請求項1?7に係る発明は,願書に添付された明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ,その請求項1に記載された発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりである。 「【請求項1】 燃料油供給部,水供給部,及び乳化剤供給部と, 複数のラビリンス状凹部の撹拌室に前記燃料油供給部と水供給部と乳化剤供給部とから供給された所定割合の燃料油,水,乳化剤を通過させることで水粒子を微細均一化させながらエマルション燃料を作る静止型ミキサーと, 前記静止型ミキサーから供給されるエマルション燃料を燃焼させる燃焼部と, を備えたことを特徴とするエマルション燃焼装置。」 2.刊行物 原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2004-286310号公報(以下,「刊行物1」という。)には,次の事項が図面とともに記載されている。 ・「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は,化石燃料を燃焼させて熱エネルギーを発生させるバーナ装置において,高い比率の水を含む水エマルジョン燃料を燃焼させることを可能とすることによって,化石燃料の節減と,燃焼排気物におけるCO,CO2の削減とを図り,環境保全に寄与することができる電磁誘導式のバーナ装置に関する。」 ・「【0004】 エマルジョン化機器としては,従来,所定の割合で定量された水と油とを,内部に攪拌羽根を装置したミキシングタンクに導き,乳化剤添加条件下において攪拌羽根をモータ駆動することによって,油水を互いに混合させる方式のものが利用されている。ただし,この攪拌方式によって得られるエマルジョン燃料は,油水の分散粒のサイズが大きく,油は油としての特性を失わず,また,水は水としての特性を失ってはいない状態である。したがって,暫く静置することにより両者が容易に分離してしまうとともに,直ちに燃焼させた場合においても,油のみが燃焼し水は水蒸気に形態を転じて残存する結果となることが多い。すなわち,油に混ぜられた水は,熱の発生に何ら寄与しないばかりか,かえって油の着火性を低下させる働きをすることとなる。これを防ぐ方策として従来は,一のミキシングタンクを経たエマルジョン燃料を攪拌羽根の態様が異なる第二,第三のミキシングタンクを通過させる方法が採られている。かくして,従来のエマルジョン化機器は,一般家庭は,言うまでもなく,工業用途においても相当の設置スペースを要求する大規模システムとなり,その小型高性能化が切望されている。」 ・「【0012】 この構成に係る電磁誘導式バーナ装置は,油水のエマルジョン化の面に関する特徴と,エマルジョン化された水エマルジョン燃料の燃焼面における特徴とを有する。 【0013】 本発明におけるエマルジョン化面に関する特徴は,従来利用されてきた攪拌羽根を備えるミキシング装置のような可動部分を有しない静止型混合機が用いられている点である。静止型混合機は,定量された水と燃料の粗混合物の通路にハニカムフィルタを設置するのみの簡単な構成であって,現在得ることが可能な最も理想に近い水エマルジョン燃料を短時間に生産することができるとともに,装置規模の格段の小型化を達成することができるものである。なお,本発明のバーナ装置に使用される静止型混合機は,独立の静止型混合機として既に特許権を取得している。 【0014】 この静止型混合機において使用されるハニカムフィルタは,分流ハニカムコアと合流ハニカムコアとからなる。分流ハニカムコアは,一箇所に同時に圧入された水と燃料とを迷路を経由して多箇所に分流する。迷路は,樹状ではなくメッシュ状に形成されており,部分的に分流と合流とを反復しながら多箇所に分流する仕組みである。また,合流ハニカムコアは,同様のメッシュ状の迷路を経由して,多箇所に分流した水と燃料と一箇所に合流させる機能を有する。分流ハニカムコアと合流ハニカムコアは,ペアとして用いられ1ユニットのハニカムフィルタを構成している。 【0015】 そして,静止型混合機において特に有利な点は,用いるハニカムフィルタのユニット数によって,ユニット数比例的に油水の分散度合いを高めることができることである。したがって,ハニカムフィルタを何ユニット用いるかは,水エマルジョン燃料の用途や,要求される加水比率等によって自由に決定することができる。ただし,ユニット数の増加は,静止型混合機に油水の粗混合燃料を圧送する際の所要圧送圧力を増大させる。また,ハニカムフィルタユニットは,可動部分を有しないため極めて小型であり,ユニット数の増加による装置規模の肥大化は無視し得る。」 ・「【0019】 【発明の実施の形態】 以下,図面を引用しながら本発明の実施の形態例を説明する。 【0020】 本発明に係る水エマルジョン燃料用の電磁誘導式バーナ装置は,エマルジョン化機器として用いられる定量混合機10および静止型混合機20,燃焼機器として用いられるバーナ本体30を主要部としてなる(図1)。 【0021】 定量混合機10は,攪拌機14,および配管系を介して攪拌機14に連絡する水槽11,燃料槽12,乳化剤槽13等からなり,静止型混合機20に送る水と燃料を予め設定された割合によって定量し,粗混合することを目的とする。水槽11,燃料槽12および乳化剤槽13には,それぞれ,レベルセンサ11a,12a,13aが付属し,液量不足を表示または告知することができる。また,水槽11,燃料槽12,乳化剤槽13と攪拌機14間の配管系には,制御弁B1,B2,B3が介装され,水,燃料,乳化剤の分量は,これらの制御弁B1,B2,B3に対するフィードバック系11b,12bによって自動制御される。 【0022】 定量混合機14によって定量および粗混合された水燃料混合液は,圧送ポンプ15によって所定の圧力で静止型混合機20に送り込まれる。圧送ポンプ15と静止型混合機20のインポート21a間には,調整弁B4および圧力計16が介装され,必要な圧力を設定することができる。 【0023】 静止型混合機20は,ハウジング21内に多段に重ねた複数ユニットのハニカムフィルタ22…を備え,インポート21aから圧入された水燃料混合液をハニカムフィルタ22…を通過させることによって,アウトポート21bからサブミクロンレベルに乳化された水エマルジョン燃料を排出する装置であり,したがって,ハウジング21内に可動部分を有しない,いわゆる静止型である。なお,静止型混合機20による油水の分散原理は,せん断である。 【0024】 静止型混合機20によって生産された水エマルジョン燃料は,減圧槽17に送られて常圧となり,燃料ポンプ18によってバーナ本体30に送られる。なお,燃料ポンプ18とバーナ本体30との間には,バーナ本体30への燃料供給量を調整するための絞り弁B5が設置されている。」 ・「【0027】 静止型混合機20は,両端にフランジ21f,21fを有する筒形の堅固なハウジング21を有する(図2)。ハウジング21は,フランジ21f,21fを貫通する固定ボルトb1,b1によってハウジング21の両端を塞ぐ1対の面板23,23を伴う。そして,一方の面板23には,油水混合液を導入するインポート21aが,他方の面板23には,エマルジョン化した水エマルジョン燃料を排出するアウトポート21bが形成されている。また,1対の面板23,23の内側には,それぞれ加圧ブロック24,24が装填されている。この加圧ブロック24,24は,各面板23側から螺入する加圧ボルトb2,b2を締め込むことによって互いに接近する向きに変位することができる。そして,1対の加圧ブロック24,24間に複数ユニットのハニカムフィルタ22…が挟み込まれている構造である。 【0028】 1ユニットのハニカムフィルタ22は,分流ハニカムコア22Aと,合流ハニカムコア22Bとからなり(図3),さらに,分流ハニカムコア22Aは,中心に混合対象物を受け入れる導入孔2Eを有する外側エレメント2Aと,導入孔2Eを有しない内側エレメント2Bとからなる(図4)。同様に,合流ハニカムコア22Bは,中心に混合した対象物を排出する排出孔2Dを有する外側エレメント2Aと,排出孔2Dを有しない内側エレメント2Bとからなる。それぞれのエレメントには,六角網目状に連続するリブ2Kが形成されており,外側エレメント2Aと内側エレメント2Bとは,リブ2Kを形成した側を向かい合わせとし,この際にリブ2Kを構成する六角網目が一致しないようにして重ね合わされる。また,各エレメントには,六角網目が一致しないことを保障するための符合部2F…が形成されている。この結果,重ね合わされた外側エレメント2Aと内側エレメント2B間には,複雑に分岐した迷路が形成されることとなる。このようにして一体化された分流ハニカムコア22Aと合流ハニカムコア22Bとは,互いの内側エレメント2B,2Bを内側として組み合わされ,1ユニットのハニカムフィルタ22を構成する。 【0029】 そして,1ユニットのハニカムフィルタ22における混合対象物の移行経路は,分流ハニカムコア22Aの導入孔2Eから外側エレメント2Aと内側エレメント2B間の迷路を通過して分流ハニカムコア22Aの外周に抜け出した上,合流ハニカムコア22Bの外周部からその外側エレメント2Aと内側エレメント2B間の迷路に侵入し,中心の排出孔2Dに集まって外部に至る経路である。ハニカムフィルタ22を多ユニット重ねて使用する場合には,かかる経路による混合対象物の移行が反復して行われる。したがって,静止型混合機20においては,ユニット数比例的に混合対象物の分散度を高めることができるのである。」 ・「【0032】 【発明の効果】 以上に説明したように,本発明に係る電磁誘導式バーナ装置は,静止型混合機によって得られる高度にエマルジョン化された水エマルジョン燃料を高周波コイルによる電磁励振加熱下において,水分子が極臨界酸化作用を起こす際の温度臨界点と圧力臨界点とを低下させて燃焼させるので,普通燃料によって高温に予熱する大型の気化チャンバ等を必要とせず,実用的な小型のバーナ装置によって高い加水比率の水エマルジョン燃料を安定に燃焼させることができるという効果を奏する。」 ・段落【0022】には,「定量混合機14によって定量および粗混合された水燃料混合液は,圧送ポンプ15によって所定の圧力で静止型混合機20に送り込まれる。」と記載されているから,静止型混合機20に供給されるのは,所定割合の水,燃料,乳化剤であるといえる。 よって,上記記載事項及び図面によると,刊行物1には,次の発明が記載されていると認められる(以下,この発明を「刊行物1に記載された発明」という。)。 「燃料槽12,水槽11,及び乳化剤槽13と, 外側エレメント2Aと内側エレメント2B間の迷路に前記燃料槽12と水槽11と乳化剤槽13とから供給された所定割合の燃料,水,乳化剤を通過させることで水粒子をサブミクロンレベルに乳化させながら水エマルジョン燃料を作る静止型混合機20と, 前記静止型混合機20から供給される水エマルジョン燃料を燃焼させるバーナ本体30と, を備えた水エマルジョン燃料用の電磁誘導式バーナ装置。」 3.対比・判断 本願発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると,刊行物1に記載された発明の「燃料槽12」は,本願発明の「燃料油供給部」に相当し,以下同様に,「水槽11」は「水供給部」に,「乳化剤槽13」は「乳化剤供給部」に,「燃料」は「燃料油」に,「サブミクロンレベルに乳化」は「微細均一化」に,「水エマルジョン燃料」は「エマルション燃料」に,「静止型混合機20」は「静止型ミキサー」に,「バーナ本体30」は「燃焼部」に,「水エマルジョン燃料用の電磁誘導式バーナ装置」は「エマルション燃焼装置」に,それぞれ,相当する。 刊行物1の段落【0028】の記載より,外側エレメント2Aと内側エレメント2Bとは,リブ2Kを構成する六角網目が一致しないように重ね合わされているから,本願発明と同様の構造を有しているものであり,両者の間の迷路は,複数のラビリンス状凹部の撹拌室を有しているといえる。 してみると,両者は, 「燃料油供給部,水供給部,及び乳化剤供給部と, 複数のラビリンス状凹部の撹拌室に前記燃料油供給部と水供給部と乳化剤供給部とから供給された所定割合の燃料油,水,乳化剤を通過させることで水粒子を微細均一化させながらエマルション燃料を作る静止型ミキサーと, 前記静止型ミキサーから供給されるエマルション燃料を燃焼させる燃焼部と,を備えたエマルション燃焼装置」 である点で一致し,両者の間に構成上の差異は存在しない。 そうすると,本願発明は,刊行物1に記載された発明といわざるをえない。 なお,請求人は,審判請求書において補正案を提示して補正の機会を求め,平成25年7月31日付けのFAXにおいて「(1)審査において補正しなかった理由」を述べている。しかしながら,これまで,平成24年4月23日付けの拒絶理由通知後と平成24年11月28日付け審判請求時の2回の補正の機会を有していたのにもかかわらず補正がなされなかった。しかも,上述したとおり,本願発明は,拒絶理由通知に示された刊行物1に記載された発明と同一であり,新たに拒絶の理由を通知しなければならないものではない。そうしてみると,あえて補正の機会を与えなければならないとする特別な事情があったものとは認められない。 4.むすび 以上のとおり,本願発明は,刊行物1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。 したがって,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は,拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-08-21 |
結審通知日 | 2013-08-29 |
審決日 | 2013-09-17 |
出願番号 | 特願2007-160526(P2007-160526) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(F23K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 後藤 泰輔 |
特許庁審判長 |
堀川 一郎 |
特許庁審判官 |
藤井 昇 平城 俊雅 |
発明の名称 | エマルション燃焼装置 |
代理人 | 特許業務法人太田特許事務所 |