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審判番号(事件番号) データベース 権利
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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E04D
管理番号 1281146
審判番号 不服2012-14095  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-07-23 
確定日 2013-11-07 
事件の表示 特願2006-147388号「軒樋の接続構造」拒絶査定不服審判事件〔平成19年12月 6日出願公開、特開2007-315104号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年5月26日の出願であって、平成24年4月18日付けで拒絶査定がされ、この査定に対し、同年7月23日に本件審判が請求されるとともに、審判請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成24年7月23日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年7月23日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の請求項1に記載された発明
本件補正により、特許請求の範囲の【請求項1】は、
「【請求項1】
左右に隣接した一対の軒樋に跨るように内継手部材を軒樋内に嵌合し、前記各軒樋に重なる前記内継手部材の外面の左右の両側部に接着剤塗布面部をそれぞれ設け、前記各接着剤塗布面部における前記内継手部材の左右中央側の端部に前記内継手部材の周方向に亘って前記接着剤塗布面部に接着剤を塗布する際のガイドとなるガイド用突条を設け、前記ガイド用突条を、前記内継手部材と前記軒樋とに弾接する弾性材で構成し、前記ガイド用突条の前記接着剤塗布面部に臨む側における前記内継手部材の外面からの立ち上がり面が前記接着剤のガイド面となり、前記ガイド面は、前記ガイド用突条の基端から先端に亘って、前記内継手部材の外面から離れる程、前記接着剤塗布面部から離れる方向に向けて傾斜していることを特徴とする軒樋の接続構造。」
と補正された。

上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ガイド面は」「傾斜していること」について「前記ガイド用突条の基端から先端に亘って、」傾斜していると限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2.引用刊行物とその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2006-45767号公報(以下、「刊行物1」という。)には、軒樋用内継手及び軒樋接続方法に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】
軒樋と軒樋を接続する内継手であって、軒樋の内面に沿った形状の前面部と底面部と後面部を備え、且つ、その長さ方向の中間部に開口部が形成された仮止用部材と、軒樋の内面に沿った形状の前面部と底面部と後面部を備えた上記開口部に嵌込まれる接着用部材からなることを特徴とする軒樋用内継手。
【請求項2】
接着用部材の外面に、その前面部から底面部を経て後面部に至る溝を設け、その溝にパッキンを嵌着したことを特徴とする請求項1に記載の軒樋用内継手。」
(イ)「【0017】
図1に示す軒樋用内継手1は、合成樹脂製の仮止用部材2と、この仮止用部材2の中間の開口部に嵌込まれる合成樹脂製の接着用部材3から構成されたものであって、図6に示すように双方の軒樋10、10を内側から接続するものである。」
(ウ)「【0024】
次に、図5、図6、図7、図8を参照して、上記の軒樋用内継手1を用いた軒樋接続方法を説明する。
【0025】
まず、図5、図7に示すように、接続すべき双方の軒樋10、10に仮止用部材2を嵌込んで、係合耳縁23、24を軒樋10、10の耳部10a、10bに係合させ、仮止用部材2の中央の目印25に合わせて、双方の軒樋10、10の端部同士を突き合わせて仮止めする。そして、この仮止め状態で、接続される全ての軒樋10のバランスを充分に調整する。その場合、仮止用部材2の前面部20、20と後面部22、22は補強材4によって内側に大きく変形しないように補強されているため、係合耳縁23、24が軒樋10の耳部10a、10bから外れて仮止めが解除される心配はない。
【0026】
次いで、図6、図8に示すように、接着用部材3の外面に接着剤を塗布し、その後面部32上端の係止部34を軒樋の後側耳部10bの底面に係止させて、その係止部分を支点として接着用部材3を下方に回動させ、前面部30上端の係合部33を接着用部材3の弾性変形を利用して軒樋の前側耳部10aと仮止用部材2の係合耳縁23に係合させて接着用部材3を仮止用部材2の開口部2aに嵌込み、双方の軒樋10、10の端部内面に接着用部材3を密着させた状態で強固に接着することにより軒樋10、10を水密的に接続する。」
(エ)「【0028】
また、本発明の軒樋用内継手1は、前記の接着用部材3に代えて、望ましくは図4に示すような接着用部材3Aも採用し得るものである。即ち、図4に示す接着用部材3Aは、図3に示す接着用部材3の外面に、前面部30から底面部31を経て後面部32に至る4本の溝3aを設け、それぞれの溝3aに合成ゴム等からなる防水用のパッキン3bを嵌着すると共に、溝3a、3aの間に接着剤塗布部の目印3cを左右それぞれ2箇所ずつ罫書きで付けたものである。この接着用部材3Aは溝3aを設けたので、図3に示す接着用部材3よりも、前面部30、底面部31、後面部32の厚みが増している。
【0029】
上記のような接着用部材3Aを用いると、たとえ接着剤の塗布が不十分であったとしても、パッキン3bが軒樋10、10の接続端部内面に密着して防水作用を発揮するため軒樋10、10の接続箇所から水が漏れ出すのを防ぐことができるし、また、接着剤を過剰に塗布したとしてもパッキン3bの外側に接着剤がはみ出すこともない。更に、軒樋10、10の端部相互の多少のズレは柔軟なパッキン3bによって修正することができる。尚、接着用部材3Aに設ける溝3aの本数は2本でもよく、接着剤塗布部の目印3cは罫書き以外の手段で付けてもよい。」
(オ)記載事項(エ)と共に図4を見ると、図4には、接着用部材3Aが、
接着用部材3Aの外面には、接着剤塗布部の目印3cが左右それぞれ2箇所ずつ罫書きで付けられ、
左側の目印3c,3c、右側の目印3c,3c、それぞれの左右方向外側には、接着用部材3Aの前面部30から底面部31を経て後面部32に至る4本の溝3a,3a,3a,3aを設け、それぞれの溝3a,3a,3a,3aに合成ゴム等からなる防水用のパッキン3bを嵌着する構成で図示されている。
また、図示された、防水用のパッキン3bの、各目印3cに臨む側における接着用部材3Aの外面からの立ち上がり面は、パッキン3bの基端から先端に亘って、接着用部材3Aの外面から離れる程、各目印3cから離れる方向に向けて弧状に延びている。

すると、刊行物1には、図4記載の態様に着目して、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているということができる。
「接続すべき双方の軒樋10、10に仮止用部材2を嵌込んで、係合耳縁23、24を軒樋10、10の耳部10a、10bに係合させ、仮止用部材2の中央の目印25に合わせて、双方の軒樋10、10の端部同士を突き合わせて仮止めし、
次いで、接着用部材3Aの外面に接着剤を塗布し、その後面部32上端の係止部34を軒樋の後側耳部10bの底面に係止させて、その係止部分を支点として接着用部材3Aを下方に回動させ、前面部30上端の係合部33を接着用部材3Aの弾性変形を利用して軒樋の前側耳部10aと仮止用部材2の係合耳縁23に係合させて接着用部材3Aを仮止用部材2の開口部2aに嵌込み、双方の軒樋10、10の端部内面に接着用部材3Aを密着させた状態で強固に接着することにより軒樋10、10を水密的に接続する軒樋接続方法であって、
接着用部材3Aの外面には、接着剤塗布部の目印3cが左右それぞれ2箇所ずつ罫書きで付けられ、
左側の目印3c,3c、右側の目印3c,3c、それぞれの左右方向外側には、接着用部材3Aの前面部30から底面部31を経て後面部32に至る4本の溝3a,3a,3a,3aを設け、それぞれの溝3a,3a,3a,3aに合成ゴム等からなる防水用のパッキン3bを嵌着するもので、
防水用のパッキン3bの、各目印3cに臨む側における接着用部材3Aの外面からの立ち上がり面は、パッキン3bの基端から先端に亘って、接着用部材3Aの外面から離れる程、各目印3cから離れる方向に向けて弧状に延びている軒樋接続方法。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特願平5-295864号公報(以下、「刊行物2」という。)には、合成樹脂製軒樋継手に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「【0003】この合成樹脂製軒樋継手は合成樹脂製の継手本体の両端部内面に、柔軟な紐状体が継手本体内面をほぼ横断するように設けられているものである。この合成樹脂製軒樋継手は、この紐状体やその周辺部に接着剤を塗布し、この両端の紐状体の上にそれぞれ接続する軒樋の先端部を載せると、簡単に軒樋が接続できるものである。」
(イ)「【0007】本発明に使用する紐状体としては、柔軟な材料を紐状体にしたものであって、天然ゴム、合成ゴム等のゴムや、軟質塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等の軟質の合成樹脂等を紐状体にしたものが好適である。そして、この紐状体の形状としては適宜でよい。例えば、断面が円形、楕円形等の棒状体でもよいし、板状体でもよい。更に、この棒状体や板状体の表面に凹凸が設けられていてもよい。」
(ウ)「【0013】先ず、図1?2に示す実施例について説明する。図1?2において、1は出隅部または入隅部に使用する塩化ビニル樹脂からなる合成樹脂製軒樋継手である。2は塩化ビニル樹脂からなる合成樹脂製の継手本体である。3は天然ゴム製の断面円形の柔軟な紐状体であり、この紐状体3は継手本体2の両端部内面に、この内面をほぼ横断するように設けられている。」
(エ)「【0017】次に、図3に示す実施例について説明する。図3に示す実施例では、紐状体3aは表面に長手方向に凸条が設けられている天然ゴム製の板状体であり、この紐状体3aの中にピアノ線からなる鋼製の線材4aが設けられていることが図1?2に示す実施例と異なる。その他は図1?2に示す実施例と同じであるから説明を省略する。」
(オ)図2には、表面が弧として形成される断面円形の紐状体3が記載され、図3には、表面が直線の傾斜面で構成された凸条が設けられている紐状体3aが記載されている。

3.本願補正発明と引用発明との対比
(1)両発明の対応関係
(a)引用発明の「接着用部材3A」は、本願補正発明の「内継手部材」に相当し、以下同様に、
引用発明の「接続すべき双方の軒樋10、10に仮止用部材2を嵌込んで、・・双方の軒樋10、10の端部同士を突き合わせて仮止めし、次いで、・・後面部32上端の係止部34を軒樋の後側耳部10bの底面に係止させて・・回動させ、前面部30上端の係合部33を接着用部材3Aの弾性変形を利用して軒樋の前側耳部10aと仮止用部材2の係合耳縁23に係合させて接着用部材3Aを仮止用部材2の開口部2aに嵌込み、双方の軒樋10、10の端部内面に接着用部材3Aを密着させた状態」は、「左右に隣接した一対の軒樋に跨るように内継手部材を軒樋内に嵌合」に、
「接着用部材3Aの外面」の「接着剤塗布部」は、「接着剤塗布面部」に、
「接着用部材3Aの外面には、接着剤塗布部の目印3cが左右それぞれ2箇所ずつ罫書きで付けられ」たことは、目印3cが付けられた部分が接着剤塗布部となることが自明であるので、「各軒樋に重なる前記内継手部材の外面の左右の両側部に接着剤塗布面部をそれぞれ設け」たことに、
「軒樋接続方法」により軒樋が接続された構成は、「軒樋の接続構造」に相当する。
(b)引用発明の「左側の目印3c,3c、右側の目印3c,3c、それぞれの左右方向外側」のうち、「左側の目印・・の・・右方向外側」及び「右側の目印・・の左・・方向外側」と、本願補正発明の「各接着剤塗布面部における前記内継手部材の左右中央側の端部」とは、後者の各接着剤塗布面部が「内継手部材の外面の左右の両側部に」設けられたものであるのに対して、前者の各目印3cも「接着用部材3Aの外面」に設けられたものであるので、両者は、内継手部材の外面における内継手部材の左右中央側の部分である点で共通する。
また、引用発明の「防水用のパッキン3b」と、本願補正発明の「ガイド用突条」とは、突条である点で共通する。
そして、引用発明の「左側の目印3c,3c、右側の目印3c,3c、それぞれの左右方向外側には、接着用部材3Aの前面部30から底面部31を経て後面部32に至る4本の溝3a,3a,3a,3aを設け、それぞれの溝3a,3a,3a,3aに合成ゴム等からなる防水用のパッキン3bを嵌着する」ことと、本願補正発明の「各接着剤塗布面部における前記内継手部材の左右中央側の端部に前記内継手部材の周方向に亘って前記接着剤塗布面部に接着剤を塗布する際のガイドとなるガイド用突条を設け」ることとは、内継手部材の外面における内継手部材の左右中央側の部分に内継手部材の周方向に亘って突条を設ける点で共通する。
(c)引用発明の「防水用のパッキン3b」は、「合成ゴム等からなる防水用のパッキン3b」であって、刊行物1記載事項(エ)の「接着用部材3Aを用いると、たとえ接着剤の塗布が不十分であったとしても、パッキン3bが軒樋10、10の接続端部内面に密着して防水作用を発揮するため軒樋10、10の接続箇所から水が漏れ出すのを防ぐことができる」ものであって、密着が、合成ゴム等からなる防水用のパッキン3bが弾接することによりなされていると解されるので、引用発明の「合成ゴム等からなる防水用のパッキン3b」と、本願補正発明の「ガイド用突条を、前記内継手部材と前記軒樋とに弾接する弾性材で構成し」たこととは、突条を、内継手部材と軒樋とに弾接する弾性材で構成した点で共通する。
(d)引用発明の「防水用のパッキン3bの、各目印3cに臨む側における接着用部材3Aの外面からの立ち上がり面」と、本願補正発明の「ガイド用突条の前記接着剤塗布面部に臨む側における前記内継手部材の外面からの立ち上がり面」とは、前者の「目印3c」が「接着剤塗布部の目印3c」であるので、突条の接着剤塗布面部に臨む側における内継手部材の外面からの立ち上がり面である点で共通する。
そして、引用発明の「防水用のパッキン3bの、各目印3cに臨む側における接着用部材3Aの外面からの立ち上がり面は、パッキン3bの基端から先端に亘って、接着用部材3Aの外面から離れる程、各目印3cから離れる方向に向けて弧状に延びている」ことと、本願補正発明の「ガイド用突条の前記接着剤塗布面部に臨む側における前記内継手部材の外面からの立ち上がり面が前記接着剤のガイド面となり、前記ガイド面は、前記ガイド用突条の基端から先端に亘って、前記内継手部材の外面から離れる程、前記接着剤塗布面部から離れる方向に向けて傾斜していること」とは、突条の接着剤塗布面部に臨む側における内継手部材の外面からの立ち上がり面は、突条の基端から先端に亘って、内継手部材の外面から離れる程、前記接着剤塗布面部から離れる方向に向けて延びている点で共通する。

(2)両発明の一致点
「左右に隣接した一対の軒樋に跨るように内継手部材を軒樋内に嵌合し、前記各軒樋に重なる前記内継手部材の外面の左右の両側部に接着剤塗布面部をそれぞれ設け、内継手部材の外面における前記内継手部材の左右中央側の部分に前記内継手部材の周方向に亘って突条を設け、前記突条を、前記内継手部材と前記軒樋とに弾接する弾性材で構成し、前記突条の接着剤塗布面部に臨む側における内継手部材の外面からの立ち上がり面は、突条の基端から先端に亘って、内継手部材の外面から離れる程、前記接着剤塗布面部から離れる方向に向けて延びている軒樋の接続構造。」

(3)両発明の相違点
相違点:突条が、本願補正発明は「接着剤を塗布する際のガイドとなるガイド用」突条であって、
突条が、「各接着剤塗布面部における」内継手部材の左右中央側の「端部」に内継手部材の周方向に亘って「接着剤塗布面部」に設けられており、
突条の立ち上がり面が、「接着剤のガイド面」となり、突条の基端から先端に亘って、内継手部材の外面から離れる程、前記接着剤塗布面部から離れる方向に向けて「傾斜し」ているのに対して、
突条が、引用発明は、防水用のパッキン3bであって、
防水用のパッキン3bは、接着用部材3Aの外面の、左側の目印3c,3c、及び右側の目印3c,3cの左右方向外側に設けられており、
防水用のパッキン3bの立ち上がり面は、「接着剤のガイド面」と表現されておらず、接着剤塗布面部から離れる方向に向けて延びる形態が「弧状」である点。

4.本願補正発明の容易推考性の検討
相違点について
ア.突条が「接着剤を塗布する際のガイドとなるガイド用」であり、突条の立ち上がり面が「接着剤のガイド面」となる点について
引用発明の防水用のパッキン3bは、「接着用部材3Aの外面」の「接着剤塗布部の目印」の「左右方向外側」の「溝3a,3a,3a,3a」に「合成ゴム等からなる防水用のパッキン3bを嵌着」したもの、すなわち、接着剤塗布部の外側に設けた突条であって、刊行物1記載事項(エ)の「接着剤を過剰に塗布したとしてもパッキン3bの外側に接着剤がはみ出すこともない」機能を生ずるものであり、接着剤がパッキン3b間に塗布されて、該接着剤は、「軒樋10、10の端部内面に接着用部材3Aを密着させた」ときに、パッキン3bにより、外側にはみ出すことが無い様に、移動する方向が変更されるものと解され、引用発明の防水用のパッキン3bは、本願明細書【0007】等に記載されているガイド用突条4の作用と同様の機能を生ずるものといえるので、突条が、本願補正発明は「接着剤を塗布する際のガイドとなるガイド用」突条であり、突条の立ち上がり面が「接着剤のガイド面」となる点は、実質的な相違点ではない。

イ.突条が「接着剤塗布面部における・・端部」に設けられる点について
引用発明の「接着剤塗布部」は、「接着用部材3Aの外面に接着剤を塗布し・・・双方の軒樋10、10の端部内面に接着用部材3Aを密着させた状態で強固に接着することにより軒樋10、10を水密的に接続する」ためのものであって、その範囲は、当該目的を達成し得る限りにおいて、目印3c近傍で適宜選択し得るものであり、さらに、工業製品において部品の小型化が一般的な要望事項であることも考慮すると、小型化を意図して、刊行物1図4の目印3cと防水用のパッキン3bとの間の部分も接着剤塗布部として利用して、防水用のパッキン3bを「接着剤塗布面部における」「端部」に設けられたものとすることは、当業者が適宜なし得る設計事項である。

ウ.突条の立ち上がり面が、突条の基端から先端に亘って、内継手部材の外面から離れる程、前記接着剤塗布面部から離れる方向に向けて「傾斜し」ている点について
(a)刊行物2には、合成樹脂製軒樋継手の軒樋の先端部を載せる「紐状体」(本件発明の「ガイド用突条」、及び、引用発明の「パッキン3b」と、軒樋の接続部で用いる突条である点で共通するもの。)に関して、記載事項(イ)の「形状としては適宜でよい」旨の記載と共に、図2の先端方向に弧状に延びた断面形状の紐状体3と、図3の先端方向に直線的に延びた断面形状の紐状体3aとが、実施例として並記されている。
(b)そして、一般に発明の具現化にあたり、構成要素の、材質・寸法・形状等の適宜の選択は、当業者が設計行為として通常的に行うことであり、かつ、刊行物1の記載事項全体について検討しても、引用発明において、防水用のパッキン3bが、図4に図示された様に円形形状であることが、必須であると認識される様なものでもない以上、引用発明の防水用のパッキン3bの断面形状として、刊行物2図3に記載されている様な先端方向に直線的に延びる形状を選択することは、当業者が適宜なし得る設計事項である。

エ.総合判断
そうすると、引用発明の引用発明の防水用のパッキン3bを、上記イ.の様に「接着剤塗布面部における」「端部」に設けられたものとするとともに、上記ウ.の様に表面が先端方向に直線的に延びる形状として、本願補正発明の相違点に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願補正発明の作用効果は、引用発明、刊行物2記載の事項、及び当業者に周知の事項から当業者であれば予測できた範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明、刊行物2記載の事項、及び当業者に周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、出願人は、審判請求書等で、「接着剤塗布面部の端部に設けたガイド用突条のガイド面を・・傾斜させたものであり、この構成により・・潰れていくガイド用突条の逃げ空間を形成することができ・・接着剤がガイド用突条によって接着剤塗布面部側に向かって押されにくくなります。」等、ガイド面の形状を傾斜したものとしたことの作用効果を主張しているが、それらは、出願当初から現時点に至るまで、明細書に記載されたものではない。

5.むすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成24年7月23日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?2に係る発明は、平成23年4月11日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
左右に隣接した一対の軒樋に跨るように内継手部材を軒樋内に嵌合し、前記各軒樋に重なる前記内継手部材の外面の左右の両側部に接着剤塗布面部をそれぞれ設け、前記各接着剤塗布面部における前記内継手部材の左右中央側の端部に前記内継手部材の周方向に亘って前記接着剤塗布面部に接着剤を塗布する際のガイドとなるガイド用突条を設け、前記ガイド用突条を、前記内継手部材と前記軒樋とに弾接する弾性材で構成し、前記ガイド用突条の前記接着剤塗布面部に臨む側における前記内継手部材の外面からの立ち上がり面が前記接着剤のガイド面となり、前記ガイド面は前記内継手部材の外面から離れる程、前記接着剤塗布面部から離れる方向に向けて傾斜していることを特徴とする軒樋の接続構造。」

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1?2とその記載事項は、前記の「第2 2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明の構成を全て含むとともに、本願発明の構成に更に限定を付加した本願補正発明が、前記「第2」の「3.」、「4.」に記載したとおり、引用発明、刊行物2記載の発明、及び当業者に周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も本願補正発明と同様の理由により、引用発明、刊行物2記載の発明、及び当業者に周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
したがって、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-09-09 
結審通知日 2013-09-10 
審決日 2013-09-26 
出願番号 特願2006-147388(P2006-147388)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (E04D)
P 1 8・ 121- Z (E04D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 油原 博  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 杉浦 淳
住田 秀弘
発明の名称 軒樋の接続構造  
代理人 水尻 勝久  
代理人 西川 惠清  
代理人 北出 英敏  
代理人 木村 豊  

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