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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1281171
審判番号 不服2013-58  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-01-04 
確定日 2013-11-07 
事件の表示 特願2008-225900「実装検査方法、実装検査装置、実装検査プログラム及び部品」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 3月18日出願公開、特開2010- 62294〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成20年9月3日に出願したものであって、平成24年10月1日付け(平成24年10月2日:発送日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年1月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成24年9月14日付けの手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「 【請求項1】
部品の実装状態を検査する実装検査方法であって、
再帰反射によって反射光を生じる再帰反射部を部品に備え、前記再帰反射部に光を照射するステップと、
前記再帰反射部の前記反射光を受光するステップと、
前記反射光の受光量に対し、閾値を設定し、前記受光量が前記閾値を超えた際に前記部品が実装されていると判定するステップと、
を含むことを特徴とする実装検査方法。」

3.引用文献の記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開昭63-37700号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア.第1ページ右下欄第1-7行
「〔産業上の利用分野〕
この発明は、プリント回路基板等に自動装着装置等により取付けられたICチップ、半導体あるいは各種部品の装着状態を検出する方法に関し、特に詳しく言うと、これら各種部品の回路基板等に対する装着位置を光学的に検出する部品装着位置検出方法に関する。」
イ.第1ページ右下欄第8行-第2ページ左上欄第8行
「〔発明の技術的背景〕
プリント回路基板等の基板上にICチップ、半導体あるいは抵抗やコンデンサ等の各種部品を自動装着装置により取付けることが広く行われている。しかしながら自動装着装置による取付けは、各種部品の取付位置の精度が不安定で、部品のずれや部品が傾いて取付けられる等の現象がしばしば発生する。
そこで例えば、搬送ベルト上に各種部品が取付けられた回路基板を載せて移動させ、その移動路中に設けた検出部により各種部品が正しく取付けられているかを識別する自動位置検出装置が提案されているが、このような自動位置検出装置の検出部は搬送ベルト上にCCDカメラ等を載置し、このカメラによって回路基板上の部品の位置を撮影し、その映像をモニターテレビで見るようになっている。しかしながら、照明等を適確に行わないと正確に撮影できず、一部に部品の識別が不可能になったりする。更に、モニターテレビで監視することは、回路基板上の部品の数が少ない時は問題がないが、部品の数が多くなるとその監視はかなりの熟練者でも困難である。」
ウ.第2ページ左上欄第10-20行
「〔発明の目的〕
この発明の目的は、回路基板全体に光を照射して各種部品を光学的に明瞭にかつ容易に識別することができる部品装着位置検出方法を提供することである。
〔発明の構成〕
この発明の部品装着位置検出方法は、電子部品の表面に光反応塗料を塗布し、回路基板に光を照射し光反応塗料による光を検出することにより電子部品の装着状態を識別することを特徴とするものである。」
エ.第2ページ右上欄第6行-同左下欄第4行
「〔実 施 例〕
以下、この発明を図面に示す一実施例について説明すると、自動装着装置(図示しない)等によりプリント基板1上に装着されたICチップ部品、半導体あるいは抵抗やコンデンサ等の電子部品2の上面には、例えば赤外線あるいは紫外線のみを反射する塗料3が塗布されている。この塗料3は、これら各種部品2の製造時に塗布するようにしておけばよい。
この電子部品2のプリント基板1への取付けが正しく取付けられているかを識別するには、このプリント基板1全体に赤外線あるいは紫外線を照射すればよい。これにより電子部品2の上面のみ光が反射するので、その電子部品2の反射光により、位置を識別すればよいので、極めて簡単に判別できる。
なお、上述実施例においては、赤外線や紫外線に反射する塗料を使用しているが、蛍光塗料を塗布し、その発色効果を利用してもよい。」
そして、光反応塗料は光の照射によって反射光を生じるものであるから、以上の記載事項、及び図面からみて、本願発明の記載ぶりに倣って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「部品の装着状態を検出する部品装着位置検出方法であって、
光の照射によって反射光を生じる光反応塗料を塗布された表面を部品に備え、前記光反応塗料を塗布された表面に光を照射し、
前記光反応塗料を塗布された表面の前記反射光を検出し、
前記反射光の検出により、部品の装着状態を識別する部品装着位置検出方法。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開昭62-194588号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
オ.第1ページ左下欄第16-18行
「〈産業上の利用分野〉
本発明は、プリント基板検査装置における基準データ入力方法に関する。」
カ.第1ページ左下欄第19行-右上欄第4行
「〈従来の技術〉
従来、プリント基板検査装置において基準基板上の部品の座標や形状等の基準データを入力する方法としては、部品が実装されていない基板と部品が実装されている基板をそれぞれ撮像し、両画像信号の差を演算して部品を識別していた。」
キ.第1ページ右下欄第5-12行
「〈発明が解決しようとする問題点〉
しかしながら、上述の如くプリント基板と部品の画像信号を用いる方法は、プリント基板上には銅箔の配線パターンが形成されているために、パターンの形成されている場所と形成されていない場合とでは色調は異なり、また基板と部品も種々の色調を有するために、基板と同様な色調の部品は識別することが困難であるという問題点がある。」
ク.第1ページ第17行-第2ページ左上欄第2行
「〈問題点を解決するための手段〉
本発明は上記問題点を解決するために、再帰反射物を混入したソルダーレジストを予めプリント基板上に塗布し、前記プリント基板上に搭載された部品を撮像することにより基準データを入力することを特徴とする。」
ケ.第2ページ左上欄第6行-12行
「第1図(イ)は本発明の一実施例に係る基準プリント基板Pの要部断面図を示し、配線パターン(不図示)が形成された基板P_(0)上に、粒径1?30μmのガラスビーズA及びチタンホワイトなどの白色顔料B(第2図)を混入したソルダーレジストSがスクリーン印刷などで塗布されている。部品CはこのソルダーレジストS上に搭載されている。」
コ.第2ページ左下欄第8-15行
「上記構成に係る検査装置により第1図(イ)の基準基板PをTVカメラ3により撮像すると、部品C以外の部分はガラスビーズA及び白色顔料の再帰反射効果により明るい小さな点の集合体として撮像され、他方、部品Cの部分はその反射光が弱く撮像されるために、TVカメラ3の出力信号Sは第1図(ロ)に示すように、S/N比の良好な部品Cのみの高精度な画像信号となる。」
以上の記載事項、及び図面からみて、引用文献2には、次の事項(以下、「引用文献2に記載されている事項」という。)が記載されている。

「プリント基板検査方法において、部品C以外の部分に再帰反射物を混入したソルダーレジストSが塗布され、再帰反射物が混入したソルダーレジストSが塗布された前記部品C以外の部分からは、再帰反射効果により明るい反射光が撮像され、再帰反射物が付加されていない部品Cからは、弱い反射光が撮像されることで、S/N比の良好な部品Cのみの高精度な画像信号を得ること」

4.対比
本願発明と引用発明を対比すると、その意味、機能または構造からみて、
後者の「部品の装着状態を検出する部品装着位置検出方法」は、前者の「部品の実装状態を検査する実装検査方法」に含まれる。

後者の「光の照射によって反射光を生じる光反応塗料を塗布された表面を部品に備え、前記光反応塗料を塗布された表面に光を照射し」と
前者の「再帰反射によって反射光を生じる再帰反射部を部品に備え、前記再帰反射部に光を照射するステップ」とは、
「光の照射によって反射光を生じる反射部を部品に備え、前記反射部に光を照射するステップ」である限りにおいて共通する。

後者の「前記光反応塗料を塗布された表面の前記反射光を検出し」と
前者の「前記再帰反射部の前記反射光を受光するステップ」とは、
「前記反射部の前記反射光を受光するステップ」である限りにおいて共通する。

後者の「前記反射光の検出により、部品の装着状態を識別する」と、
前者の「前記反射光の受光量に対し、閾値を設定し、前記受光量が前記閾値を超えた際に前記部品が実装されていると判定するステップ」とは、
「前記反射光の受光により、前記部品の装着状態を判定するステップ」である限りにおいて共通する。

そうすると、両者は本願発明の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。
[一致点]
「部品の実装状態を検査する実装検査方法であって、
光の照射によって反射光を生じる反射部を部品に備え、前記反射部に光を照射するステップと、
前記反射部の前記反射光を受光するステップと、
前記反射光の受光により、前記部品の装着状態を判定するステップ
を含む実装検査方法。」
そして、両者は次の点で相違する。
[相違点1]
「反射部」に関し、
本願発明は、「再帰反射によって反射光を生じる再帰反射部」であるのに対し、
引用発明は、「光の照射によって反射光を生じる光反応塗料を塗布された表面」であり再帰反射部ではない点。
[相違点2]
本願発明は、「反射光の受光量に対し、閾値を設定し、前記受光量が前記閾値を超えた際に前記部品が実装されていると判定するステップ」を備えているのに対し、
引用発明は、「反射光の検出により、部品の装着状態を識別する」ものであり、部品が実装されていることを判定しているか不明であり、また閾値を設定するものであるか明らかでない点。

5.判断
(1)上記[相違点1]について検討する。
引用発明は、上記記載事項イに記載されている「照明等を適確に行わないと正確に撮影できず、一部に部品の識別が不可能になったりする。」との課題に対し、記載事項ウに記載されているように、「電子部品の表面に光反応塗料を塗布し、回路基板に光を照射し光反応塗料による光を検出することにより電子部品の装着状態を識別する」ものである。
他方、引用文献2には、上記のとおり、「プリント基板検査方法において、部品C以外の部分に再帰反射物を混入したソルダーレジストSが塗布され、再帰反射物が混入したソルダーレジストSが塗布された前記部品C以外の部分からは、再帰反射効果により明るい反射光が撮像され、再帰反射物が付加されていない部品Cからは、弱い反射光が撮像されることで、S/N比の良好な部品Cのみの高精度な画像信号を得ること」が記載されている。
引用文献2に記載されている事項は、引用発明と同じ、部品の装着状態を識別する部品装着検出方法に関するものである。
また、引用文献2に記載されている事項は、部品C以外の部分に再帰反射物を混入したソルダーレジストSが塗布されているが、部品Cと部品C以外の部分との間で反射光に強弱を与え、S/N比の良好な部品Cのみの高精度な画像信号を得るものであり、引用発明と同様に撮像における基板と部品の識別性を高めるという機能の点で共通している。
引用発明では、部品の表面に光反応塗料を塗布して、基板と部品の識別性を高めているが、引用文献1の記載事項エに、「電子部品2の上面には、例えば赤外線あるいは紫外線のみを反射する塗料3が塗布されている。」及び、「なお、上述実施例においては、赤外線や紫外線に反射する塗料を使用しているが、蛍光塗料を塗布し、その発色効果を利用してもよい。」と記載されているように、部品の表面に塗布する材料は、基板との識別性が向上する機能を有すればよいことが窺える。引用文献1にはカメラと照明との位置関係の記載はないが、例えば、照明とカメラを同一方向に配置する場合には、反射光が再び入射方向へ帰る方が優位であり、この場合に、引用発明と引用文献2に記載されている事項に接した当業者であれば、光反応塗料に代えて引用文献2に記載されている事項である再帰反射物を部品表面に塗布することは適宜になし得ることである。
よって、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(2)上記[相違点2]について検討する。
引用発明の「装着状態を識別」に関し、引用文献1の記載事項イには「この電子部品2のプリント基板1への取付けが正しく取付けられているかを識別する」と記載されており、「正しく取付け」には部品のずれや傾きも含め部品自体が実装されているか否かも含まれることが技術常識であり、引用発明の「装着状態を識別する」において、このような部品の実装を識別することは、当業者であれば適宜になし得ることである。
また、引用発明は「反射光の検出により、部品の装着状態を識別する」ものであり、引用文献1には部品のずれや傾き等の部品の位置を識別することも記載されている。これらの位置の識別は適切な閾値を設定してはじめて識別できるものであって、部品が実装されているか否かを識別するための反射光を検出したか否かの判断においても、例えば光電素子により受光量を電流に変換した際の電流値等に、何らかの閾値を設けて判断することは必要不可欠であり、部品の実装の有無を、反射光の受光量に対する閾値をもって判定することも、当業者が合理的かつ自然に発想し得るものである。
よって、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

審判請求人は、審判請求書において、「引用文献1は、電子部品の表面に塗布された光反応塗料により光を検出することを述べるに過ぎず、光を検出さえすれば電子部品が装着されていると判断している。このような内容の引用文献1に対し、本願は、反射光の受光量に対し、閾値を設定し、受光量が閾値を超えた際に部品が実装されていると判定するのであって、引用文献1には反射光の受光量に対して閾値を設定することや、受光量が閾値を超えた場合に部品が実装されていると判断することのいずれについても記載されていない。」(「5.本願発明と引用文献等に記載された発明との対比」、「(1) 請求項1」、「ア)」)と主張している。
しかしながら、本願発明において、受光量がどの様に計測または計算されるかについて何ら限定されず、閾値についても受光量に基づいて如何なる手法に基づいて設定されたかについても限定されていないので、上記「相違点2」で述べたとおり、受光量の閾値を超えた場合に実装を判断することは当業者であれば適宜になし得ることである。なお、受光量が本願明細書に記載されているような光の明暗を二値化した際の白色部の数量だとしても、反射光を撮像して部品の実装状態の検査する方法において、検出した反射光を明暗に二値化して色部の数量に基づき実装状態を判断する技術は、従来周知の技術であり(特開平5-264222号公報(段落【0002】?【0005】)を参照。)、格別なものではない。
よって、請求人の主張は認められない。

(3)作用効果について
請求人は、審判請求書において、引用発明は「光を検出すれば電子部品が装着されていると判断するのみであり、検出する光の程度を考慮しない引用文献1は、端子の先端がスルーホール内にあり照射される光が弱くなる場合や、端子が正常にスルーホール内に圧入されなかった不良品の場合にさらに照射される光が弱くなるため、反射光のばらつきなどから実装状態を判定するのが非常に困難であるとの、本願が解決しようとした課題にも何ら着目したものではない。そして、斯かる本願の課題について着目もしていない引用文献1には、上記相違点について示唆する記載もない。」(「5.本願発明と引用文献等に記載された発明との対比」、「(1) 請求項1」、「ア)」)と主張しているが、本願発明において、端子の先端がスルーホール内にある場合の圧入状態を検出する事項を、発明特定事項としていないので、当該主張は本願発明の発明特定事項に基づくものではない。
総合的にみても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が予測できる範囲内のものであって、格別ではない。

6.むすび
以上総合すると、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明、引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができない以上、本願の請求項2ないし4に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-09-06 
結審通知日 2013-09-10 
審決日 2013-09-24 
出願番号 特願2008-225900(P2008-225900)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 奥村 一正  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 山岸 利治
森川 元嗣
発明の名称 実装検査方法、実装検査装置、実装検査プログラム及び部品  
代理人 畝本 正一  

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