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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1281201
審判番号 不服2013-10646  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-06 
確定日 2013-11-27 
事件の表示 特願2006-319568「半導体装置、及び表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 6月12日出願公開、特開2008-135495、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年11月28日の出願であって、平成24年7月2日付けで拒絶理由が通知され、同年7月27日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ、同年9月27日付けで拒絶理由が通知され、同年11月5日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ、平成25年1月9日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年2月13日付けで意見書が提出され、同年3月19日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年6月6日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成24年11月5日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
光学的に検出可能なアライメントマークを有する半導体装置であって、
半導体基板と、
前記半導体基板の上層に形成された複数の配線層を具備し、
前記アライメントマークは、
前記半導体基板表面からの反射光が出射される明部領域と、前記明部領域より輝度の低い暗部領域とを有し、
前記暗部領域は、前記複数の配線層のそれぞれに形成された金属配線表面からの反射光が出射される領域を含む
半導体装置。」
(以下、本願の請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

第3 原査定の理由の概要
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


<引用文献>
1.特開平4-330710号公報
2.特開昭62-18714号公報
3.特開昭54-94881号公報
4.特開昭58-90728号公報
5.特開2000-182914号公報
6.特開2000-323576号公報
7.特開2003-142893号公報

・請求項1,3-6
・引用文献1-4
・備考
引用文献1(特に、図4,【0027】-【0030】参照。)には、PSG層8及びPSG層16(本願の複数の配線層に相当する。)と、PSG層8に形成されたAl層4及びPSG層16に形成されたAl層14と、で構成された凹凸部よりなる垂直反射率減少領域3と、垂直反射率が高い領域である位置検出用ターゲット2と、を備えた半導体装置の発明が記載されている。また、【0030】には、Al層4は垂直反射率を減らすものであること、すなわち、垂直反射光は減るものの、存在することが記載されている。そして、図4(b)を見れば明らかなように、Al層14にもレーザーは照射され得るから、Al層14にレーザー光が照射された場合には、同じく垂直反射光が存在すると認められる。そうすると、Al層4及びAl層14は、「表面からの反射光が出射される」ものであるから、請求項1に係る発明の「複数の配線層のそれぞれに形成された金属配線」に相当し、PSG層8及びPSG層16と、PSG層8に形成されたAl層4及びPSG層16に形成されたAl層14と、で構成された凹凸部よりなる垂直反射率減少領域3は、請求項1に係る発明の「暗部領域」に相当する。
また、半導体装置において、凹凸部よりなる反射率減少領域に対して半導体基板表面を垂直反射率の高い位置検出用領域として使用することは、引用文献2(特に、第1図,第2頁右下欄-第3頁左下欄参照。)、引用文献3(特に、第1図,第2頁左下欄-第3頁右上欄参照。)、引用文献4(特に、第1図-第4図,第2頁右上欄-第3頁左下欄参照。)に例示されるように周知技術である。
よって、引用文献1に記載の発明において、引用文献2-4に例示される周知技術を適宜採用し、凹凸部よりなる垂直反射率減少領域3に対して位置検出用ターゲット2を垂直反射率の高い領域として使用する代わりに、半導体基板12表面を垂直反射率の高い領域として使用することにより、請求項1,3-6に係る発明を構成することは当業者が容易に想到し得たことである。

・請求項2-6
・引用文献1-5
・備考
引用文献5(特に、【0017】,図2参照。)には、半導体装置において、反射光の輝度が低い部分のAl層に反射防止膜を設けることが記載されている。

・請求項7
・引用文献1-6
・備考
引用文献6(特に、【0006】-【0011】参照。)には、半導体装置において、低光反射率領域として、多結晶シリコン薄膜が形成された領域を使用することが記載されている。

・請求項8
・引用文献1-7
・備考
引用文献7(特に、図1,【0039】参照。)には、透明基板2a,2bと、アライメントマーク7a,7bが形成されたIC3と、を備えた表示装置が記載されている。

第4 当審の判断
1.刊行物の記載事項
引用文献1(特開平4-330710号公報)には、位置合わせマークの第1の実施例を示す図である図1、及び、第4の実施例を示す図である図4とともに、以下の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】 位置検出光を垂直反射させる反射領域と、前記位置検出光を散乱し垂直反射を減少させる垂直反射率減少領域と、を有することを特徴とする位置合わせマーク。
・・・(中略)・・・
【請求項6】 前記垂直反射率減少領域は、段差形成用の膜がストライプ構造に形成され、その上部にストライプ構造の反射膜が傾斜して形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の位置合わせマーク。」(【特許請求の範囲】)

(1b)「【産業上の利用分野】本発明は半導体装置の製造工程中に用いられる位置合わせマーク、レーザトリミング装置及び半導体装置の製造方法に関する。」(【0001】)

(1c)「【作用】本発明の位置合わせマークにおいては、位置合わせマークの位置検出用ターゲットとその周囲のバックグランドとの垂直反射光強度を変化させ反射率のコントラスト差を大きくする。」(【0013】)

(1d)「【実施例】本発明の位置合わせマークの第1の実施例を図1を用いて説明する。同図(a) は本実施例による位置合わせマーク1の平面図、同図(b) は本実施例による位置合わせマーク1のA-A断面図である。
半導体基板12上にフィールド酸化膜10が形成され、フィールド酸化膜10上部にPSG層8が形成されている。PSG層8上部に位置検出用ターゲット2と垂直反射率減少領域3が形成されている。位置検出用ターゲット2のレーザ光走査方向の幅は、レーザ光のスポット径の約2倍程度とする。垂直反射率減少領域3は、レーザ光走査方向に対して垂直方向に伸びたAl層4のストライプ構造で形成されている。ストライプ構造のAl層4の幅はレーザスポット径の1/3以下または2μm以下、Al層4間のギャップの幅はレーザスポット径の1/2以下または3μm以下とする。
位置検出用ターゲット2と垂直反射率減少領域3の上部に、例えばPSG或いはプラズマ窒化膜等のカバー膜6が形成されている。ストライプ構造のAl層4により垂直反射率減少領域3のカバー膜6は凹凸形状になっている。カバー膜6の厚さは、Al層4間のギャップの幅との関係では、カバー膜厚はギャップ幅の1/2倍程度が最良であるが、同程度でもよい。
本実施例では位置検出用のレーザ光源は、波長1030?1060nm、スポット径6μmφの赤外線レーザ(図示せず)を用いている。従って、本実施例においては、位置検出用ターゲット2のレーザ光走査方向の幅12μm、ストライプ構造のAl層4の幅はレーザスポット径の1/6の1μm、Al層4間のギャップの幅はレーザスポット径の約1/4の1.4 μm、カバー膜厚はギャップ幅の1/2の0.7 μmとしている。」(【0015】-【0018】)

(1e)「レーザ光が位置検出用ターゲット2に到達すると、位置検出用ターゲット2面はレーザビーム径に対し広い面積を有し、かつレーザ光に垂直であるので垂直反射率は高い。位置検出用ターゲット2のカバー膜6表面での反射により、カバー膜6の膜厚に応じた垂直反射率の変動はあるが、位置検出用ターゲット2の垂直反射光の方が垂直反射率減少領域3で垂直に反射されてくる光強度により非常に大きいものとなる。このようにして、位置検出用ターゲット2と垂直反射率減少領域3の垂直反射率の差が大きくなるため常にコントラストの良い反射率波形を得ることができる。
また、本実施例は、凹凸(段差)を有するカバー膜6の形成に、あえて反射率の高いAl層4を用いたことも特徴としている。位置検出用ターゲット2のAlと同じ層に形成することにより、位置検出用ターゲット2の製造工程で同時に垂直反射率減少領域3のAl層4を形成できるから、製造プロセス上に誤差要因を無くすことができる。」(【0020】-【0021】)

(1f)「図3において、市松模様の黒い部分はAl層4であり、白い部分はギャップ部分である。本発明の位置合わせマークの第4の実施例を図4を用いて説明する。同図(a) は本実施例による位置合わせマーク22の平面図、同図(b) は本実施例による位置合わせマーク22のC-C断面図である。
PSG層8上部に段差形成用のAl層14が形成され、PSG層16を介して位置検出用ターゲット2が形成され、位置検出用ターゲット2と同層でAl層14上部にPSG層16を介してストライプ構造のAl層4が形成されている。Al層14が段差となり、PSG層16上のAl層4は傾斜している。
位置検出用ターゲット2とAl層4の上部に、カバー膜6が形成されている。ストライプ構造で傾斜しているAl層4により垂直反射率減少領域3のカバー膜6は傾斜面を有し、Al層4間のギャップにより凹部形状を有する。
本実施例は、Al層4及びその上部のカバー膜6において、水平面を極力減らすことにより垂直反射率を減らすことを特徴としている。本発明の位置合わせマークの第5の実施例を図5を用いて説明する。同図(a)は本実施例による位置合わせマーク23の平面図、同図(b) は本実施例による位置合わせマーク23のD-D断面図である。」(【0027】-【0030】)

そうすると、引用文献1には、第4の実施例として、
「位置検出用ターゲットとその周囲のバックグランドとの垂直反射光強度を変化させ反射率のコントラスト差を大きくした位置合わせマークを有する半導体装置であって、
半導体基板12と、
前記半導体基板12上に形成されたフィールド酸化膜10と、
前記フィールド酸化膜10上部に形成されたPSG層8と、
前記PSG層8上部に形成された段差形成用のAl層14と、
前記PSG層8上部に、PSG層16を介して形成された位置検出用ターゲット2と、
前記位置検出用ターゲット2と同層で前記Al層14上部に前記PSG層16を介して形成されたストライプ構造のAl層4であって、前記Al層14が段差となり前記PSG層16上で傾斜している前記Al層4と、
前記位置検出用ターゲット2と前記Al層4の上部に形成されたカバー膜6であって、ストライプ構造で傾斜している前記Al層4により垂直反射率減少領域3で傾斜面を有し、前記Al層4間のギャップにより凹部形状を有する前記カバー膜6と、
を具備し、
前記Al層4及びその上部のカバー膜6において、水平面を極力減らすことにより垂直反射率を減らす、位置合わせマークを有する半導体装置。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

2.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「位置検出用ターゲットとその周囲のバックグランドとの垂直反射光強度を変化させ反射率のコントラスト差を大きくした位置合わせマーク」、「位置検出用ターゲット2」及び「垂直反射率減少領域3」は、それぞれ、本願発明の「光学的に検出可能なアライメントマーク」、「明部領域」及び「前記明部領域より輝度の低い暗部領域」に相当する。
そうすると、本願発明と引用発明の一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
光学的に検出可能なアライメントマークを有する半導体装置であって、
半導体基板を具備し、
前記アライメントマークは、
明部領域と、前記明部領域より輝度の低い暗部領域とを有する
半導体装置。

<相違点>
・相違点1:本願発明では、明部領域が「半導体基板表面」であるのに対して、引用発明では「『ストライプ構造のAl層4』と『同層』に形成された『位置検出用ターゲット2』」である点。

・相違点2:本願発明では、暗部領域が「前記複数の配線層のそれぞれに形成された金属配線表面」であるのに対して、引用発明では、半導体装置が「半導体基板の上層に形成された複数の配線層を具備」することが特定されておらず、引用発明の「段差形成用のAl層14」及び「ストライプ構造のAl層4」が、「前記複数の配線層のそれぞれに形成された金属配線」であるか否か不明である点。

3.判断
上記相違点について検討する。
・相違点1について
引用文献2(特開昭62-18714号公報)の、第1図、第2頁右下欄第9行-第3頁左下欄第16行、引用文献3(特開昭54-94881号公報)の、第1図-第2図、第2頁右上欄第7行-第3頁左下欄第4行、引用文献4(特開昭58-90728号公報)の、第1図-第4図、第2頁右上欄第1行-第3頁左下欄第8行等の記載から、半導体基板を具備した半導体装置の製造において用いられる、光に対して高反射率を有する部分と、低反射率を有する部分とから構成されるアライメントマークとして、高反射率を有する部分として前記半導体基板の平滑表面を用い、低反射率を有する部分として前記半導体基板の表面に微小な凹凸群を形成するようにエッチングした領域を用いる構造が、周知技術であると認められる。

すなわち、前記周知技術は、半導体基板の表面に微小な凹凸群を形成するようにエッチングした領域と、前記領域と同一の平面に存在する半導体基板の平滑表面との間における反射率の差異を利用した技術といえる。

一方、引用発明は、位置検出用ターゲット2と、ストライプ構造で傾斜しているAl層4及びその上部のカバー膜6の垂直反射率の差を用いるものである。それゆえ、引用発明において、位置検出用ターゲット2を除いたと仮定した時の「半導体基板12」の表面からの反射光の強度、すなわち、半導体装置の表面に形成された、カバー膜6、PSG層16、PSG層8及びフィールド酸化膜10を通過して半導体基板12の表面に到達し、反射し、再度、フィールド酸化膜10、PSG層8、PSG層16及びカバー膜6を通過した反射光の強度と、引用発明の「Al層4及びその上部のカバー膜6」からの反射光の強度とを対比した場合、両者の反射光の強度の関係がどのようなものとなるかは不明であり、他のいずれの引用文献の記載からも明らかとは認められない。

よって、引用発明に上記周知技術を適用して、明部領域を「『ストライプ構造のAl層4』と『同層』に形成された『位置検出用ターゲット2』」から、「半導体基板表面」に変更すること、すなわち、上記相違点1について本願発明の構成を採用する動機を認めることはできない。

したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

また、本願の請求項2-8に係る発明は、いずれも請求項1を引用し、これをさらに限定する発明であるところ、本願発明が、上記のように、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえないことから、本願の請求項2-8に係る発明も、本願発明と同様に、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明及び本願の請求項2-8に係る発明はいずれも、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2013-11-15 
出願番号 特願2006-319568(P2006-319568)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 崎間 伸洋  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 加藤 浩一
近藤 幸浩
発明の名称 半導体装置、及び表示装置  
代理人 工藤 実  

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