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審決分類 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1281211
審判番号 不服2011-23348  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-10-28 
確定日 2013-11-06 
事件の表示 特願2006-527994「自動ソフトウェア更新を提供するための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 4月21日国際公開,WO2005/036393,平成19年 3月22日国内公表,特表2007-507037〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,2004年8月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年9月25日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって,
平成18年3月22日付けで特許法第184条の4第1項の規定による明細書,請求の範囲,及び,図面(図面の中の説明に限る)の日本語による翻訳文が提出され,平成19年6月11日付けで審査請求がなされ,平成22年9月16日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成23年3月22日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,平成23年6月22日付けで審査官により拒絶査定がなされ,これに対して平成23年10月28日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,平成23年12月22日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされ,平成24年2月2日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋がなされ,平成24年4月18日付けで回答書の提出があったものである。

第2.平成23年10月28日付けの手続補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成23年10月28日付け手続補正を却下する。

[理由]

1.補正の内容
平成23年10月28日付けの手続補正(以下,「本件手続補正」という)により,平成23年3月22日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲,
「 【請求項1】
プロセスプラント内の,該プロセスプラント内で用いられる複数のプロセス制御デバイスに接続されているホストシステム上で動作するホストアプリケーションを更新するための方法であって,
前記方法は,
前記複数のプロセス制御デバイスのうちのある一つに関連するデバイス記述を特定するためのデバイス記述識別子を要求するために,前記ホストシステムからの第一のコマンドを前記複数のプロセス制御デバイスのうちのその一つに送信することと,
前記ホストシステムで,前記複数のプロセス制御デバイスのうちのその一つから,前記デバイス記述識別子を受信することと,
前記デバイス記述識別子を用いて前記デバイス記述識別子に関連するデバイス記述を前記ホストシステムにダウンロードすることと,
前記デバイス記述に記述されている,前記複数のプロセス制御デバイスのうちのその一つのためのデータおよび動作手順を含むように,前記ホストアプリケーションを更新することと,
を含み,
前記デバイス記述識別子は,前記複数のプロセス制御デバイスのうちのその一つに関連するデバイス記述を特定するための,デバイス識別子,製造業者ID,デバイス更新のうちの少なくとも一つを含み,
前記デバイス記述は,前記複数のプロセス制御デバイスのうちのその一つの一または複数の特徴に関連する,変数,方法,コマンド,メニューまたは表示形式のうちの少なくとも一つを含む,前記複数のプロセス制御デバイスのうちのその一つのためのデータおよび動作手順を含んでいる。
【請求項2】
前記デバイス記述をダウンロードすることが,CD-ROM,ディスク,およびオンラインデータベースのうちの一つから,前記デバイス記述をダウンロードすることを含む,請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ホストアプリケーションを更新することが,前記ホストアプリケーションに前記デバイス記述をコピーすることを含む,請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ホストシステムが,プロセスプラント内のシステムであり,前記複数のデバイスのうちのその一つが,該プロセスプラント内で用いられる複数のプロセス制御デバイスのうちの一つである,請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記デバイス記述識別子に基づいて前記ホストシステム上の前記デバイス記述をサーチすることをさらに含む,請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記デバイス記述をダウンロードすることが,
通信ネットワークに前記ホストシステムを接続することと,
前記通信ネットワークに接続されているデバイス記述データベースから前記デバイス記述を要求することと,
前記デバイス記述データベースから前記デバイス記述を受信することと,
を含む,請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記デバイス記述データベースが,Fieldbusデータベース,Profibusデータベース,およびHART通信協会データベースのうちの一つである,請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記デバイス記述をダウンロードすることが,前記デバイス記述データベースのインターネットアドレスを格納することと,前記デバイス記述データベースに接続するために,インターネット通信プロトコルおよび無線通信プロトコルのうちの一つを用いることとを含む,請求項6記載の方法。
【請求項9】
ホストシステム上で動作するホストアプリケーションにソフトウェア更新を提供するための方法であって,
前記方法は,
プロセス制御デバイス上のデバイス記述を特定するための第一のデバイス記述識別子を格納することと,
前記デバイス記述は前記プロセス制御デバイスとの通信に用いられ,前記デバイス記述識別子を要求するために,コマンドを前記プロセス制御デバイスに送信することと,
前記ホストシステムで,前記プロセス制御デバイスから,前記デバイス記述識別子を受信することと,
前記デバイス記述識別子を用いて,前記ホストシステムが前記デバイス記述を有しているか否かを判断することと,
前記ホストシステムが前記デバイス記述を有していない場合,前記デバイス記述を前記ホストシステムに自動的にダウンロードすることと,
前記ホストアプリケーションを前記デバイス記述に記述されている前記プロセス制御デバイスのためのデータおよび動作手順で更新することと,
を含み,
前記デバイス記述識別子は,前記デバイス記述を特定するための,デバイス識別子,製造業者ID,デバイス更新のうちの少なくとも一つを含み,
前記デバイス記述は,前記プロセス制御デバイスの一または複数の特徴に関連する,変数,方法,コマンド,または表示形式のメニューのうちの少なくとも一つを含む,前記プロセス制御デバイスのためのデータおよび動作手順を定義している。
【請求項10】
前記ホストシステム上に前記デバイス記述識別子を格納することをさらに含む,請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記デバイス記述識別子を格納することと,前記ホストシステムがインターネットに接続されているか否かを判断することと,前記ホストシステムがインターネットに接続されている場合,インターネットセッションを開始することと,前記ホストシステム上に前記デバイス記述をダウンロードするために,インターネットに接続されたデバイス記述データベースに要求を送信することとをさらに含む,請求項9記載の方法。
【請求項12】
デバイス製造業者により提供されているデバイス記述データベースのインターネットアドレスに,前記デバイス製造業者の識別子を関連づけている一覧表を,前記ホストシステム上に格納することをさらに含む,請求項9記載の方法。
【請求項13】
前記ホストアプリケーションが,(1)資産管理システムアプリケーション,(2)プラントシミュレーションアプリケーション,(3)プラント保全アプリケーション,(4)プラント監視アプリケーション,(5)プロセス制御アプリケーションのうちの一つである,請求項12記載の方法。
【請求項14】
通信ネットワークを通じてデバイス記述データベースに接続された,プロセス制御ホストアプリケーションをプロセス制御デバイスのデバイス記述で更新するためのコンピュータシステムであって,
前記デバイス記述は,前記プロセス制御デバイスの一または複数の特徴に関連する,変数,方法,コマンド,メニューまたは表示形式のうちの少なくとも一つを含む,前記プロセス制御デバイスのためのデータおよび動作手順を含み,
前記コンピュータシステムは,
処理ユニットと,
コンピュータ読み取り可能メモリと,
前記プロセス制御デバイスから該プロセス制御デバイスのためのデバイス記述を特定するためのデバイス記述識別子を要求し,前記プロセス制御デバイスから該プロセス制御デバイスに関係するデバイス記述識別子を受信し,該デバイス記述識別子を用いて前記デバイス記述データベースから前記プロセス制御デバイスのデバイス記述をダウンロードし,前記デバイス記述に記述されている前記プロセス制御デバイスのためのデータおよび動作手順で前記プロセス制御ホストアプリケーションを更新するように,前記処理ユニット上で実行可能である,前記コンピュータ読み取り可能メモリに格納されているソフトウェアルーチンと,
を備え,
前記デバイス記述識別子は,前記デバイス記述を特定するための,デバイス識別子,製造業者ID,デバイス更新のうちの少なくとも一つを含んでいる。
【請求項15】
前記ソフトウェアルーチンが,インターネットプロトコルおよび無線通信プロトコルのうちの一つを利用して,前記デバイス記述をダウンロードすべく前記処理ユニット上でさらに実行可能である,請求項14記載のコンピュータシステム。
【請求項16】
前記プロセス制御ホストアプリケーションが,(1)資産管理システムアプリケーション,(2)プラントシミュレーションアプリケーション,(3)プラント保全アプリケーション,(4)プラント監視アプリケーション,(5)プロセス制御アプリケーションのうちの一つである,請求項14記載のコンピュータシステム。
【請求項17】
前記ソフトウェアルーチンが,前記コンピュータシステムと通信可能に接続された遠隔コンピュータ上に配置された遠隔ホストアプリケーションを更新するようにさらに構成されている,請求項14記載のコンピュータシステム。
【請求項18】
複数のプロセス制御デバイスおよび該複数のプロセス制御デバイスとの通信に必要な一または複数のプロセスアプリケーションを有するプロセスプラントにおいて用いるためのコンピュータシステムであって,
前記コンピュータシステムは,コンピュータプロセッサにより実行されたときに,そこにコンピュータ指示が格納されるコンピュータ読み取り可能媒体を備えてなり,
前記コンピュータ指示は,
前記複数のプロセス制御デバイスのうちの一つから,前記複数のプロセス制御デバイスのうちの一つに関連するデバイス記述識別子を要求するように動作可能である通信モジュールと,
前記複数のプロセス制御デバイスのうちの一つから前記デバイス記述識別子を受信し,該デバイス記述識別子を格納するように動作可能である格納モジュールと,
前記デバイス記述識別子により特定されるデバイス記述を格納するデバイス記述データベースを検索するように動作可能である検索モジュールと,
前記デバイス記述データベースからデバイス記述をダウンロードするように動作可能であるダウンロードモジュールと,
前記デバイス記述に記述された前記複数のプロセス制御デバイスのうちの一つのためのデータおよび動作手順で,前記一または複数のプロセスアプリケーションのうちの一つを更新するように構成された更新モジュールと,を提供し,
前記デバイス記述は,前記複数のプロセス制御デバイスのうちの一つの一または複数の特徴に関連する,変数,方法,コマンド,メニューまたは表示形式のうちの少なくとも一つを含む,前記複数のプロセス制御デバイスのうちの一つのためのデータおよび動作手順を含み,
前記デバイス記述識別子は,前記デバイス記述を特定するための,デバイス識別子,製造業者ID,デバイス更新のうちの少なくとも一つを含んでいる。
【請求項19】
前記ダウンロードモジュールが,インターネットプロトコルを用いて,前記デバイス記述データベースと通信してなる,請求項18記載のコンピュータシステム。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正前の請求項」という)は,
「 【請求項1】
プロセスプラント内の,該プロセスプラント内で用いられる複数のプロセス制御デバイスに接続されているホストシステム上で動作するホストアプリケーションを更新するための方法であって,
前記方法は,
前記ホストアプリケーションが通信する予定であるプロセス制御デバイスであって,前記ホストアプリケーションがそのデバイス記述を有していない一または複数のプロセス制御デバイスを特定するために,前記ホストシステムでソフトウェア更新アプリケーションを周期的に実行することと,
前記ソフトウェア更新アプリケーションが,該ソフトウェア更新アプリケーションにより特定されたプロセス制御デバイスに関連するデバイス記述を特定するためのデバイス記述識別子を要求するために,前記ホストシステムからの第一のコマンドを前記ソフトウェア更新アプリケーションにより特定されたプロセス制御デバイスに送信することと,
前記ホストシステムで,前記ソフトウェア更新アプリケーションにより特定されたプロセス制御デバイスから,前記デバイス記述識別子を受信することと,
前記デバイス記述識別子を用いて前記デバイス記述識別子に関連するデバイス記述を前記ホストシステムにダウンロードすることと,
前記ソフトウェア更新アプリケーションが,前記デバイス記述に記述されている,前記ソフトウェア更新アプリケーションにより特定されたプロセス制御デバイスのためのデータおよび動作手順を含むように,前記ホストアプリケーションを更新することと,
を含み,
前記デバイス記述識別子は,前記ソフトウェア更新アプリケーションにより特定されたプロセス制御デバイスに関連するデバイス記述を特定するための,デバイス識別子,製造業者ID,デバイス更新情報を含み,
前記デバイス記述は,前記ソフトウェア更新アプリケーションにより特定されたプロセス制御デバイスの一または複数の特徴に関連する,変数,方法,コマンド,メニューまたは表示形式を含む,前記複数のプロセス制御デバイスのうちのその一つのためのデータおよび動作手順を含んでいる。
【請求項2】
前記デバイス記述をダウンロードすることが,CD-ROM,ディスク,およびオンラインデータベースのうちの一つから,前記デバイス記述をダウンロードすることを含む,請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ホストアプリケーションを更新することが,前記ホストアプリケーションに前記デバイス記述をコピーすることを含む,請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ホストシステムが,プロセスプラント内のシステムであり,前記複数のデバイスのうちのその一つが,該プロセスプラント内で用いられる複数のプロセス制御デバイスのうちの一つである,請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記デバイス記述識別子に基づいて前記ホストシステム上の前記デバイス記述をサーチすることをさらに含む,請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記デバイス記述をダウンロードすることが,
通信ネットワークに前記ホストシステムを接続することと,
前記通信ネットワークに接続されているデバイス記述データベースから前記デバイス記述を要求することと,
前記デバイス記述データベースから前記デバイス記述を受信することと,
を含む,請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記デバイス記述データベースが,Fieldbusデータベース,Profibusデータベース,およびHART通信協会データベースのうちの一つである,請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記デバイス記述をダウンロードすることが,前記デバイス記述データベースのインターネットアドレスを格納することと,前記デバイス記述データベースに接続するために,インターネット通信プロトコルおよび無線通信プロトコルのうちの一つを用いることとを含む,請求項6記載の方法。
【請求項9】
ホストシステム上で動作するホストアプリケーションにソフトウェア更新を提供するための方法であって,
前記方法は,
前記ホストアプリケーションが通信する予定であるプロセス制御デバイスであって,前記ホストアプリケーションがそのデバイス記述を有していないプロセス制御デバイスを特定するために,前記ホストシステムでソフトウェア更新アプリケーションを周期的に実行することと,
前記ホストアプリケーションが通信する予定であるプロセス制御デバイス上の第一のデバイス記述識別子を格納することと,
前記ソフトウェア更新アプリケーションが,前記デバイス記述は前記プロセス制御デバイスとの通信に用いられ,前記デバイス記述識別子を要求するために,コマンドを前記プロセス制御デバイスに送信することと,
前記ホストシステムで,前記プロセス制御デバイスから,前記デバイス記述識別子を受信することと,
前記ソフトウェア更新アプリケーションが,前記デバイス記述識別子を用いて,前記ホストシステムが前記デバイス記述を有しているか否かを判断することと,
前記ソフトウェア更新アプリケーションが,前記ホストシステムが前記デバイス記述を有していない場合,前記デバイス記述を前記ホストシステムに自動的にダウンロードすることと,
前記ソフトウェア更新アプリケーションが,前記ホストアプリケーションを前記デバイス記述に記述されている前記プロセス制御デバイスのためのデータおよび動作手順で更新することと,
を含み,
前記デバイス記述識別子は,前記ホストアプリケーションが通信する予定であるプロセス制御デバイスに関連するデバイス記述を特定し,
前記デバイス記述識別子は,前記デバイス記述を特定するための,デバイス識別子,製造業者ID,デバイス更新情報を含み,
前記デバイス記述は,前記プロセス制御デバイスの一または複数の特徴に関連する,変数,方法,コマンド,および表示形式のメニューを含む,前記プロセス制御デバイスのためのデータおよび動作手順を定義している。
【請求項10】
前記ホストシステム上に前記デバイス記述識別子を格納することをさらに含む,請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記デバイス記述識別子を格納することと,前記ホストシステムがインターネットに接続されているか否かを判断することと,前記ホストシステムがインターネットに接続されている場合,インターネットセッションを開始することと,前記ホストシステム上に前記デバイス記述をダウンロードするために,インターネットに接続されたデバイス記述データベースに要求を送信することとをさらに含む,請求項9記載の方法。
【請求項12】
デバイス製造業者により提供されているデバイス記述データベースのインターネットアドレスに,前記デバイス製造業者の識別子を関連づけている一覧表を,前記ホストシステム上に格納することをさらに含む,請求項9記載の方法。
【請求項13】
前記ホストアプリケーションが,(1)資産管理システムアプリケーション,(2)プラントシミュレーションアプリケーション,(3)プラント保全アプリケーション,(4)プラント監視アプリケーション,(5)プロセス制御アプリケーションのうちの一つである,請求項12記載の方法。
【請求項14】
通信ネットワークを通じてデバイス記述データベースに接続された,プロセス制御ホストアプリケーションをプロセス制御デバイスのデバイス記述で更新するためのコンピュータシステムであって,
前記デバイス記述は,前記プロセス制御デバイスの一または複数の特徴に関連する,変数,方法,コマンド,メニューまたは表示形式を含む,前記プロセス制御デバイスのためのデータおよび動作手順を含み,
前記コンピュータシステムは,
処理ユニットと,
コンピュータ読み取り可能メモリと,
前記処理ユニット上で実行可能である,前記コンピュータ読み取り可能メモリに格納されているソフトウェアルーチンと,
を備え,
前記ソフトウェアルーチンは,前記コンピュータシステムにより実行されるホストアプリケーションが通信する予定であり,そのデバイス記述が前記コンピュータシステムに存在していないプロセス制御デバイスを周期的に特定し,前記ソフトウェアルーチンにより特定されたプロセス制御デバイスから該特定されたプロセス制御デバイスのためのデバイス記述を特定するためのデバイス記述識別子を要求し,前記特定されたプロセス制御デバイスから該特定されたプロセス制御デバイスに関係するデバイス記述識別子を受信し,該デバイス記述識別子を用いて前記デバイス記述データベースから前記プロセス制御デバイスのデバイス記述をダウンロードし,前記デバイス記述に記述されている前記特定されたプロセス制御デバイスのためのデータおよび動作手順で前記プロセス制御ホストアプリケーションを更新するように,前記処理ユニット上で実行可能であり,
前記デバイス記述識別子は,前記デバイス記述を特定するための,デバイス識別子,製造業者ID,およびデバイス更新情報を含んでいる。
【請求項15】
前記ソフトウェアルーチンが,インターネットプロトコルおよび無線通信プロトコルのうちの一つを利用して,前記デバイス記述をダウンロードすべく前記処理ユニット上でさらに実行可能である,請求項14記載のコンピュータシステム。
【請求項16】
前記プロセス制御ホストアプリケーションが,(1)資産管理システムアプリケーション,(2)プラントシミュレーションアプリケーション,(3)プラント保全アプリケーション,(4)プラント監視アプリケーション,(5)プロセス制御アプリケーションのうちの一つである,請求項14記載のコンピュータシステム。
【請求項17】
前記ソフトウェアルーチンが,前記コンピュータシステムと通信可能に接続された遠隔コンピュータ上に配置された遠隔ホストアプリケーションを更新するようにさらに構成されている,請求項14記載のコンピュータシステム。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正後の請求項」という)に補正された。

2.補正の適否
(1)新規事項
ア.当審の判断
本件手続補正が,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第3項の規定を満たすものであるか否か,即ち,本件手続補正が,平成18年3月22日付けで提出された明細書,請求の範囲,及び,図面(図面の中の説明に限る)の日本語による翻訳文(以下,これを「当初明細書等」という)に記載した事項の範囲内でなされたものであるかについて,以下に検討する。

補正後の請求項1に記載された,
「ホストアプリケーションが通信する予定であるプロセス制御デバイスであって,前記ホストアプリケーションがそのデバイス記述を有していない一または複数のプロセス制御デバイスを特定するために,前記ホストシステムでソフトウェア更新アプリケーションを周期的に実行することと,
前記ソフトウェア更新アプリケーションが,該ソフトウェア更新アプリケーションにより特定されたプロセス制御デバイスに関連するデバイス記述を特定するためのデバイス記述識別子を要求するために,前記ホストシステムからの第一のコマンドを前記ソフトウェア更新アプリケーションにより特定されたプロセス制御デバイスに送信すること」,
補正後の請求項9に記載された,
「前記ホストアプリケーションが通信する予定であるプロセス制御デバイスであって,前記ホストアプリケーションがそのデバイス記述を有していないプロセス制御デバイスを特定するために,前記ホストシステムでソフトウェア更新アプリケーションを周期的に実行することと,
前記ホストアプリケーションが通信する予定であるプロセス制御デバイス上の第一のデバイス記述識別子を格納することと,
前記ソフトウェア更新アプリケーションが,前記デバイス記述は前記プロセス制御デバイスとの通信に用いられ,前記デバイス記述識別子を要求するために,コマンドを前記プロセス制御デバイスに送信することと,
前記ホストシステムで,前記プロセス制御デバイスから,前記デバイス記述識別子を受信することと,
前記ソフトウェア更新アプリケーションが,前記デバイス記述識別子を用いて,前記ホストシステムが前記デバイス記述を有しているか否かを判断すること」,
補正後の請求項14に記載された,
「コンピュータシステムにより実行されるホストアプリケーションが通信する予定であり,そのデバイス記述が前記コンピュータシステムに存在していないプロセス制御デバイスを周期的に特定し,前記ソフトウェアルーチンにより特定されたプロセス制御デバイスから該特定されたプロセス制御デバイスのためのデバイス記述を特定するためのデバイス記述識別子を要求し,」(下線は,説明の都合上,当審にて附加したものである。以下,同じ),
という一連の処理については,当初明細書等には記載されていない。
そこで,上記引用の,補正後の請求項1に記載の一連の処理,及び,補正後の請求項9,並びに,補正後の請求項14に記載の一連の処理が,当初明細書等の記載から読み取れるかについて,以下に検討する。

当初明細書等には,
「【0020】
図3には,図1のソフトウェア更新アプリケーション24の動作の概略を記述しうる一つの可能なフローチャートが示されている。一般的にいえば,ソフトウェア更新アプリケーション24を用いることにより,ホストシステム14上のさまざまなホストアプリケーションがプロセスプラント10内のさまざまなデバイスと通信することが可能となる。所望ならば,ソフトウェア更新アプリケーション24を,ある周期的頻度で自動的に動作するようにセットアップすることができ,このようにセットアップされた場合,ソフトウェア更新アプリケーション24は,ホストコンピュータ14のさまざまなホストアプリケーションによる通信要求ログを探しうる。この要求ログは,通信が望まれるデバイスを特定しうるし,また,この要求ログを,メモリ64内に,ホストシステム14のCPU62のレジスタ内に,または,その他の所望の場所に格納することができる。
【0021】
あるいは,ソフトウェア更新アプリケーション24は,ユーザにより,ホストシステム14上で動作するホストアプリケーションにより,または,他のホストコンピュータにおいて起動されてもよい。たとえば,要求アプリケーション,たとえばプラントシミュレーションアプリケーション18は,当該プラントシミュレーションアプリケーション18がDDの無いデバイスと通信することが必要なときには,CPU62へコマンドを送信してソフトウェア更新アプリケーション24を起動するようになっている。この場合,ソフトウェア更新アプリケーション24へのコマンドには,プラントシミュレーションアプリケーション18およびこのプラントシミュレーションアプリケーション18により通信を必要とされているデバイスについてのなんらかの情報が含まれている。
【0022】
単純化のために,図3には,要求アプリケーションによるデバイス28との通信要求に応答するソフトウェア更新アプリケーション24の動作が示されている。このような要求を受信すると,ブロック80は,デバイス28と接続され,公知のコマンドを用いて,デバイス28のDD識別子を要求する。このDD識別子は,デバイス28との通信に用いられるプロトコルに指定されている場合がある。たとえば,HARTプロトコルが用いられている場合,そのデバイスのDD識別子を要求するために,コマンド#0がそのデバイスに送信されうる。このデバイス28への要求は,ホストシステム14から,通信バス26,通信ネットワーク12,または,ホストシステム14とデバイス28との間のその他の通信リンクを通じて,送信されうる。
【0023】
ブロック82は,ブロック80により送信された要求に応答して,デバイス28からDD識別子を受信し,メモリ64に,受信されたデバイス28のDD識別子を格納するようになっている。公知のように,デバイス28により提供されるDD識別子には,デバイス28の製造業者ID,デバイス識別子,デバイス更新などの如き情報が含まれる。たとえば,ブロック84は,デバイス28のDD識別子により特定されるDDを求めて,ローカルDDデータベース22またはホストシステム14上のその他のホストアプリケーションのうちの一つを検索する。
【0024】
ブロック84がホストシステム14にデバイス28のDDが存在しないと決定した場合,ブロック86は,ホストシステム14がインターネット40にアクセス可能か否かを判断する。可能な場合,ブロック88は,デバイス28のDDを有するインターネットに接続されたDDデータベースを特定する。ブロック88は,インターネット40を通じて要求を送信し,この要求に対する応答を解析することにより上記の判断を下す。もちろん,ブロック88は,HARTデータベース44,FOUNDATION Fieldbusデータベース46または一または複数の製造業者のデータベースなどの如き有望なまたは公知のDDデータベースのインターネットアドレスを格納していてもよい。また,ブロック88は,所望のDDの検索のためにいかなる所望のサーチエンジン,ブラウザなどを用いてもよい。所望ならば,ブロック88は,対話式のスクリーンを用いてオペレータと相互作用し,オペレータがインターネット上において適切なDDを見つけ出すための補助を提供することができるようにしてもよい。また,ソフトウェア更新アプリケーション24は,さまざまなデバイス製造業者の名称に関する一覧表を,これらの製造業者により提供されているDDデータベースのインターネットアドレスに供してもよい。
【0025】
ブロック88がデバイス28のDDを有するHARTデータベース44の如きデータベースを見出した場合,ブロック90は,デバイス28のDDを取得するために,HARTデータベース44に対して要求を送信する。このHARTデータベース44に対する要求には,ブロック82に取得されたようなデバイス28のDD識別子に含まれた情報の一部または全部が含まれている。
【0026】
ホストシステム14によるインターネット40へのアクセスが可能でないことをブロック86が決定した場合,ブロック92は,DD識別子を格納し,インターネット40への接続の可能性を周期的にチェックするようになっている。あるいは,ホストシステム14は,CD-ROM,ディスケットなどを用いて,DD提供者から必要なDDを受け取るようにしてもよい。ブロック94は,ブロック92がインターネット40への接続をチェックしている経過時間,および,ソフトウェア更新アプリケーション24を終了させる所定の時間後のタイムアウトを追跡記録してもよい。
【0027】
いずれの場合であっても,ブロック90がデバイス28のDDをダウンロードしたあと,または,ブロック84によってホストシステム14がデバイス28のDDを有していることが決定されたとき,ブロック96は,要求アプリケーション(たとえば,プラントシミュレーションアプリケーション18)を更新する必要があるか否かを決定する。ユーザは,ホストアプリケーションが必要に応じてDDを得るために自動的に更新される必要があることを指定しうる。あるいは,ソフトウェア更新アプリケーション24は,ホストアプリケーションを所望のDDで更新するためのコマンドをブロック96へ送信することができるように,プログラムされてもよい。」
という記載が存在する。

(ア)上記引用の当初明細書等の段落【0020】の,
「ソフトウェア更新アプリケーション24を,ある周期的頻度で自動的に動作するようにセットアップすることができ,このようにセットアップされた場合,ソフトウェア更新アプリケーション24は,ホストコンピュータ14のさまざまなホストアプリケーションによる通信要求ログを探しうる。この要求ログは,通信が望まれるデバイスを特定しうる」,
という記載と,当初明細書等の段落【0021】の,
「ソフトウェア更新アプリケーション24は,ユーザにより,ホストシステム14上で動作するホストアプリケーションにより,または,他のホストコンピュータにおいて起動されてもよい」,及び,
「当該プラントシミュレーションアプリケーション18がDDの無いデバイスと通信することが必要なときには,CPU62へコマンドを送信してソフトウェア更新アプリケーション24を起動するようになっている」,
という記載から,当初明細書等には,
“ソフトウェア更新アプリケーションは,要求アプリケーションから起動されるか,
周期的頻度で自動的に動作して,要求アプリケーションからの通信要求ログを探すか,の何れかで起動する”ことは読み取れる。
しかしながら,当初明細書等の記載における,
“周期的頻度で自動的に動作して,要求アプリケーションからの通信要求ログを探す”という「ソフトウェア更新アプリケーション」が,「要求アプリケーション」が,「プロセス制御デバイス」への通信を要求しているかを確認する動作に過ぎない。
即ち,当初明細書等に記載されている処理が,
「ホストアプリケーションがデバイス記述を有していない一または複数のプロセス制御デバイスを特定するために,前記ホストシステムでソフトウェア更新アプリケーションを周期的に実行する」ことを意味するものでないことは明らかである。

(イ)当初明細書等の段落【0021】における,
「プラントシミュレーションアプリケーション18がDDの無いデバイスと通信することが必要なときには,CPU62へコマンドを送信してソフトウェア更新アプリケーション24を起動するようになっている。この場合,ソフトウェア更新アプリケーション24へのコマンドには,プラントシミュレーションアプリケーション18およびこのプラントシミュレーションアプリケーション18により通信を必要とされているデバイスについてのなんらかの情報が含まれている」,
という記載の,特に,
「プラントシミュレーションアプリケーション18がDDの無いデバイスと通信することが必要なときには,CPU62へコマンドを送信してソフトウェア更新アプリケーション24を起動するようになっている」
において,「プラントシミュレーションアプリケーション18」は,「要求アプリケーション」であるから,
当初明細書等の記載においては,
“要求アプリケーションが,DD,即ち,デバイス記述のないデバイスと通信することが必要なときは,CPUにコマンドを送信して,ソフトウェア更新アプリケーションを起動する”構成であることが読み取れ,該「コマンド」には,上記引用の段落【0021】に,
「ソフトウェア更新アプリケーション24へのコマンドには,プラントシミュレーションアプリケーション18およびこのプラントシミュレーションアプリケーション18により通信を必要とされているデバイスについてのなんらかの情報が含まれている」,
と記載されているように,「通信」先である「デバイス」についての「なんらかの情報」が含まれているのであるから,
従って,当初明細書等の記載においては,補正後の請求項1に記載の,
「ソフトウェア更新アプリケーションにより特定されたプロセス制御デバイス」,
即ち,“ソフトウェア更新アプリケーションが,プロセス制御デバイスを特定する”という動作は行っていないことは明らかである。
補正後の請求項14に記載の,
「前記ソフトウェアルーチンにより特定されたプロセス制御デバイスから該特定されたプロセス制御デバイス」,
についても同様である。

(ウ)上記引用の当初明細書等の段落【0026】に,
「ホストシステム14によるインターネット40へのアクセスが可能でないことをブロック86が決定した場合,ブロック92は,DD識別子を格納し」と記載されているが,
該引用記載における「DD識別子を格納し」の「DD識別子」は,当初明細書等の段落【0022】から記載されている,「ソフトウェア更新アプリケーション」の動作において,「要求アプリケーション」から「デバイス」への“通信要求”に応答して,「DD識別子」を「プロセス制御デバイス」に要求することで得られたものであり,該「DD識別子」は,当初明細書等の段落【0026】の記載に従えば,
“インターネットへのアクセスが可能でない場合に,一時的に,いずれかに格納されている”ものと解されるものであり,補正後の請求項9の,
「ホストアプリケーションが通信する予定であるプロセス制御デバイス上の第一のデバイス記述識別子を格納する」,
という記載からは,該「プロセス制御デバイス」上に,“複数のデバイス記述識別子が存在し,そのうちの第一のデバイス記述識別子を格納する”と解されるので,該段落【0026】における「DD識別子を格納し」が,そのような処理を意味していると解することはできない。
仮に,補正後の請求項9に記載された,上記引用の記載内容が,単に,「デバイス記述識別子を格納すること」であるとしても,
補正後の請求項1,請求項9,及び,請求項14に記載された内容から,各請求項における“周期的に実行すること”,“コマンドを送信すること”,“デバイス記述識別子を受信すること”等は,その処理の順に記載されていると解されるので,補正後の請求項9における,
「ホストアプリケーションが通信する予定であるプロセス制御デバイス上の第一のデバイス記述識別子を格納する」,
という処理は,その前段の,
「前記ホストアプリケーションが通信する予定であるプロセス制御デバイスであって,前記ホストアプリケーションがそのデバイス記述を有していないプロセス制御デバイスを特定するために,前記ホストシステムでソフトウェア更新アプリケーションを周期的に実行すること」,
と,その後段の,
「前記ソフトウェア更新アプリケーションが,前記デバイス記述は前記プロセス制御デバイスとの通信に用いられ,前記デバイス記述識別子を要求するために,コマンドを前記プロセス制御デバイスに送信すること」,
との間の処理であると解される。
しかしながら,上記で検討したように,当初明細書等の記載においては,
“ソフトウェア更新アプリケーションを周期的に実行する”ことは,
“要求アプリケーションから,デバイスへの送信要求があるかを確認する”ことであり,
“要求アプリケーションから,ソフトウェア更新アプリケーションへの,デバイスへの送信要求ある”段階とほぼ同等の段階であり,
一方,「記述識別子を格納する」のは,当初明細書等の記載においては,
“ソフトウェア更新アプリケーションが,デバイスから,DD識別子を受信”した後であるから,当初明細書等の記載からは,補正後の請求項9に記載されているような,
「ホストシステムでソフトウェア更新アプリケーションを周期的に実行する」,
処理の次段に,
「ホストアプリケーションが通信する予定であるプロセス制御デバイス上の第一のデバイス記述識別子を格納する」,
処理が続く構成を読み取ることはできない。

以上,(ア)?(ウ)に検討したとおりであるから,本件手続補正は,当初明細書等の記載の範囲内でなされたものではない。

イ.新規事項むすび
したがって,本件手続補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第3項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(2)目的要件
ア.当審の判断
本件手続補正は,上記「(1)新規事項」において検討したとおり,
平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第3項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものではあるが,仮に,本件手続補正が,当初明細書等の記載の範囲内でなされたものであるとして,
本件手続補正が,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第4項の規定を満たすものであるか否か,即ち,本件手続補正が,特許法第17条の2第4項に規定する請求項の削除,特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る),誤記の訂正,或いは,明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)の何れかを目的としたものであるかについて,以下に検討する。

補正後の請求項1に記載の,
「前記ホストアプリケーションが通信する予定であるプロセス制御デバイスであって,前記ホストアプリケーションがそのデバイス記述を有していない一または複数のプロセス制御デバイスを特定するために,前記ホストシステムでソフトウェア更新アプリケーションを周期的に実行することと」,
補正後の請求項9に記載の,
「前記ホストアプリケーションが通信する予定であるプロセス制御デバイスであって,前記ホストアプリケーションがそのデバイス記述を有していないプロセス制御デバイスを特定するために,前記ホストシステムでソフトウェア更新アプリケーションを周期的に実行すること」,
及び,補正後の請求項14に記載の,
「コンピュータシステムにより実行されるホストアプリケーションが通信する予定であり,そのデバイス記述が前記コンピュータシステムに存在していないプロセス制御デバイスを周期的に特定し」,
という処理事項は,「ソフトウェア更新アプリケーション」を「周期的に実行する」という処理段階を,補正前の請求項1,請求項9,及び,請求項14に記載の構成に,新たに加えるものであるから,該処理段階を,補正前の請求項1,請求項9,及び,請求項14に記載の構成加えるという補正は,補正前の請求項1,請求項9,及び,請求項14に係る発明における発明特定事項の何れかを限定するものに該当しない。
そして,上記で指摘したように,該処理段階は,補正前の何れの請求項にも記載されていないものであるから,当該補正事項が,請求項の削除を目的としたものでないことも明らかである。
そして,原審の平成22年9月16日付けの拒絶理由,及び,平成23年6月22日付けの拒絶査定における記載不備の指摘に対応するものでもないので,
当該補正事項が,明瞭でない記載の釈明に該当しないことも明らかである。
また,当該補正事項が,誤記の訂正でないことも明らかである。
以上のとおりであるから,本件手続補正は,請求項の削除,特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る),誤記の訂正,或いは,明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)の何れかを目的としたものではない。

イ.目的要件むすび
したがって,本件手続補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第4項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(3)独立特許要件
本件手続補正は,上記「(1)新規事項」において検討したとおり,
平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第3項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであり,
更に,上記「(2)目的要件」において検討したとおり,
平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第4項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであるが,仮に,本件手続補正が,当初明細書等の記載の範囲内でなされ,かつ,目的要件を満たすものであるとして,
本件手続補正が,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定を満たすものであるか否か,即ち,補正後の請求項に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて,以下に検討する。

ア.36条6項1号について
補正後の請求項1に記載の,
「ホストアプリケーションが通信する予定であるプロセス制御デバイスであって,前記ホストアプリケーションがそのデバイス記述を有していない一または複数のプロセス制御デバイスを特定するために,前記ホストシステムでソフトウェア更新アプリケーションを周期的に実行することと,
前記ソフトウェア更新アプリケーションが,該ソフトウェア更新アプリケーションにより特定されたプロセス制御デバイスに関連するデバイス記述を特定するためのデバイス記述識別子を要求する」,
ことは,上記「(1)新規事項」において検討したとおり,本願明細書の発明の詳細な説明には記載されていない。
補正後の請求項9に記載の,
「前記ホストアプリケーションがそのデバイス記述を有していないプロセス制御デバイスを特定するために,前記ホストシステムでソフトウェア更新アプリケーションを周期的に実行すること」,
及び,補正後の請求項14に記載の,
「前記コンピュータシステムにより実行されるホストアプリケーションが通信する予定であり,そのデバイス記述が前記コンピュータシステムに存在していないプロセス制御デバイスを周期的に特定し,前記ソフトウェアルーチンにより特定されたプロセス制御デバイスから該特定されたプロセス制御デバイスのためのデバイス記述を特定するためのデバイス記述識別子を要求し」,
についても同様である。
そして,補正後の請求項2?請求項8は,補正後の請求項1を直接・間接に引用し,補正後の請求項10?請求項13は,補正後の請求項9を直接・間接に引用し,補正後の請求項15?請求項17は,補正後の請求項14を引用するものである。
よって,補正後の請求項1?請求項17に係る発明は,本願明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではない。

イ.36条6項2号について
(ア)補正後の請求項1に,
「ホストアプリケーションが通信する予定であるプロセス制御デバイスであって,前記ホストアプリケーションがそのデバイス記述を有していない一または複数のプロセス制御デバイスを特定するために,前記ホストシステムでソフトウェア更新アプリケーションを周期的に実行する」,
と記載されているが,「ソフトウェア更新アプリケーション」は,「ホストアプリケーション」が,「通信する予定であるプロセス制御デバイス」の「デバイス記述」を有していないことを,「周期的に実行する」ことで,どのようにして「特定」しているのか,同請求項1に記載の内容,及び,他の請求項に記載された内容を総合勘案しても不明である。
補正後の請求項9,請求項14についても同様である。

(イ)補正後の請求項2?請求項8は,補正後の請求項1を直接・間接に引用し,補正後の請求項10?請求項13は,補正後の請求項9を直接・間接に引用し,補正後の請求項15?請求項17は,補正後の請求項14を引用するものであるから,上記(ア)で指摘した明確でない構成を内包し,かつ,補正後の請求項2?請求項8,補正後の請求項10?請求項13,及び,補正後の請求項15?請求項17に記載の内容を加味しても,上記(ア)で指摘した明確でない構成が,明確になるものではない。

以上,(ア),及び,(イ)において検討したとおりであるから,本願の請求項1?請求項17に係る発明は,明確でない。

ウ.36条4項1号について
補正後の請求項1に記載の,
「ホストアプリケーションが通信する予定であるプロセス制御デバイスであって,前記ホストアプリケーションがそのデバイス記述を有していない一または複数のプロセス制御デバイスを特定するために,前記ホストシステムでソフトウェア更新アプリケーションを周期的に実行する」,
について,本願明細書の発明の詳細な説明には,上記「(1)新規事項」において引用した,段落【0020】?【0027】に記載された程度の内容しか存在しておらず,当該記載内容については,上記「(1)新規事項」において検討したとおりであるから,上記引用の,本願明細書の発明の詳細な説明における記載内容からは,どのようにして,
「ホストアプリケーションがそのデバイス記述を有していない一または複数のプロセス制御デバイスを特定するために,前記ホストシステムでソフトウェア更新アプリケーションを周期的に実行する」,
ことを実現しているか不明である。
よって,本願明細書の発明の詳細な説明は,経済産業省令で定めるところにより,その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記述したものでない。

エ.29条2項について
(ア)補正後の請求項1に記載の発明
補正後の請求項1に記載の内容は,当初明細書等に記載されていないものであり,該記載内容は,明確でない構成を含むものであるが,補正後の請求項1に係る発明(以下,これを「本件補正発明」という)は,一応,上記「1.補正の内容」において,補正後の請求項1として引用した記載のとおりのものであるとして,以下の検討を行う。

(イ)引用刊行物に記載の発明
原審における,平成22年9月16日付けの拒絶理由に引用された,本願の第1国出願前に既に公知である,特表2001-523365号公報(公表日,2001年11月20日,国際公開日,1998年11月12日,以下,これを「引用刊行物1」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

A.「【特許請求の範囲】
1.周辺装置に結合されたホスト装置にデバイス・ドライバをインストールする方法であって,
前記周辺装置からデバイス・コードを受信するステップと,
遠隔処理システムに前記デバイス・コードを送信するステップと,
前記デバイス・コードの前記遠隔処理システムへの送信に応答して前記デバイス・ドライバを前記遠隔処理システムから受信するステップと,
を含む方法。」(2頁1行?8行)

B.「B.デバイス・ドライバのインストール
デイジー・チェーンにおける各周辺装置に対して,適切なデバイス・ドライバを処理システム中のどこかに記憶しなければならない。しかしながら,上記したように,このようなドライバを周辺装置自体の中に記憶するのは望ましくなく,また,拡張バス28に接続され得る全ての周辺装置に対するデバイス・ドライバをWebTVボックス10に予めロードすることも望ましくない。また,クライアント・システム1aのユーザーに対して,適切なデバイス・ドライバをマニュアルでロードするよう要求するのも望ましくない。したがって,本発明は,以下に説明するように,使用されている特定のシステム構成に適切なデバイス・ドライバだけをWebTVクライアント・システム1aに自動的にインストールする技法を提供する。
WebTVクライアント・システムと共に使用するように設計されている各周辺装置には,その周辺装置を正確に識別するために用いられるデバイス・コードが与えられる。例えば,このコードは装置の種別(例えばプリンタ),製造会社,モデル番号などを識別する。ある実施の形態では,デバイス・コードは周辺装置内のレジスタに記憶される64ビットのコードである。本発明によれば,これらのデバイス・コードは,図6を参照して以下に説明するように,システム1a内で実際に接続されている周辺装置30に対する適切なドライバのみを要求して受信するために,WebTVボックス10によって用いられる。
図6は,適切なデバイス・ドライバをクライアント・システム1aにインストールするためのルーチンを示す。システムの初期化に応答して,WebTVボックス10は,ステップ601において,デイジー・チェーンに接続されているすべての周辺装置30からデバイス・コードを要求する。WebTVクライアント・システムにおいて使用されるように設計されている各周辺装置30は,そのデバイス・コードとスロット番号を,バス28を介して,デイジー・チェーンにおける二番目に最上位の装置に送ることによって,このような要求に応答するように設計されている。各周辺装置はデイジー・チェーンにおける下位の装置から受け取った応答をWebTVボックス10に中継する。したがって,ステップ602において,WebTVボックス10は接続されている全ての周辺装置30からデバイス・コードを受け取る。ステップ603において,WebTVボックス10は受け取った全てのデバイス・コードをネットワーク接続29を介してWebTVサーバー5に送る。」(16頁1行?17頁4行)

C.「したがって,ステップ604において,WebTVサーバー5は,ネットワークを介してWebTVクライアント1から送信されたデバイス・コードを受信する。ステップ605では,デバイス・コードの受信に応答して,WebTVサーバー5は受信したコードを自動的に用いてデータベースを参照し,WebTVボックス10に接続されている特定の周辺装置30に対する適切なデバイス・ドライバを決定する。適切なドライバが識別されると,ステップ606において,WebTVサーバー5は自動的にこれらのデバイス・ドライバをWebTVクライアント1にネットワーク接続29を介してダウンロードする。ステップ607において,WebTVボックス10はWebTVサーバー5から送信されたデバイス・ドライバを受信して自動的にインストールする。」(17頁19行?28行)

上記Aに引用した記載から,引用刊行物1には,
「周辺装置に結合されたホスト装置にデバイス・ドライバをインストールする方法であって,
前記周辺装置からデバイス・コードを受信するステップと,
遠隔処理システムに前記デバイス・コードを送信するステップと,
前記デバイス・コードの前記遠隔処理システムへの送信に応答して前記デバイス・ドライバを前記遠隔処理システムから受信するステップと,
を含む方法」という発明が記載されていることが読み取れ,
上記Bの「WebTVボックス10は,ステップ601において,デイジー・チェーンに接続されているすべての周辺装置30からデバイス・コードを要求する」という記載における「WebTVボックス」とは,上記Aの記載における「ホスト装置」であり,上記Bの「WebTVボックス10は,ステップ601において,デイジー・チェーンに接続されているすべての周辺装置30からデバイス・コードを要求する」という記載から,引用刊行物1に記載の発明における,
「デバイス・コードを受信するステップ」の前に,「ホスト装置は,周辺装置からデバイス・コードを要求する」というステップが存在することは明らかである。
そして,引用刊行物1に記載の発明における「デバイス・コード」は,上記Bの「その周辺装置を正確に識別するために用いられるデバイス・コードが与えられる。例えば,このコードは装置の種別(例えばプリンタ),製造会社,モデル番号などを識別する」という記載から,「装置の種別」,「製造会社」,「モデル番号」等の“複数の識別情報”を含む態様を含むものであると解される。
更に,上記Cの「WebTVサーバー5は受信したコードを自動的に用いてデータベースを参照し,WebTVボックス10に接続されている特定の周辺装置30に対する適切なデバイス・ドライバを決定する。適切なドライバが識別されると,ステップ606において,WebTVサーバー5は自動的にこれらのデバイス・ドライバをWebTVクライアント1にネットワーク接続29を介してダウンロードする」という記載,及び,「WebTVボックス10はWebTVサーバー5から送信されたデバイス・ドライバを受信して自動的にインストールする」という記載における,「WebTVサーバー」は,引用刊行物1に記載の発明における「遠隔処理システム」に相当するものであるから,上記A,及び,上記Cに引用の記載から,
「遠隔処理システムは受信したコードを自動的に用いてデータベースを参照し,ホスト装置に接続されている特定の周辺装置に対する適切なデバイス・ドライバを決定する。適切なドライバが識別されると,遠隔処理システムは自動的にこれらのデバイス・ドライバをホスト装置にダウンロードする。ホスト装置は遠隔処理システムから送信されたデバイス・ドライバを受信して自動的にインストールする」ことが読み取れる。
以上検討した事項から,引用刊行物1には,次の発明(以下,これを「引用発明」という)が記載されていると認める。

周辺装置に結合されたホスト装置にデバイス・ドライバをインストールする方法であって,
前記ホスト装置は,前記周辺装置から,装置の種別,製造会社,モデル番号などを識別するデバイス・コードを要求するステップと,
前記周辺装置から前記デバイス・コードを受信するステップと,
遠隔処理システムに前記デバイス・コードを送信するステップと,
前記デバイス・コードの前記遠隔処理システムへの送信に応答して,前記遠隔処理システムは受信したコードを自動的に用いてデータベースを参照し,前記ホスト装置に接続されている特定の周辺装置に対する適切なデバイス・ドライバを決定するステップと,
適切なドライバが識別されると,前記遠隔処理システムは自動的にこれらのデバイス・ドライバを前記ホスト装置にダウンロードするステップと,
前記遠隔処理システムがダウンロードした前記デバイス・ドライバを,前記ホスト装置が受信するステップと,
前記ホスト装置は遠隔処理システムから送信された前記デバイス・ドライバを受信して自動的にインストールするステップと,
を含む方法。

(ウ)本件補正発明と,引用発明との対比
a.引用発明における「ホスト装置」に,「周辺装置」は「結合」,即ち,“接続されている”のは明らかであるから,
本件補正発明における「プロセスプラント内で用いられる複数のプロセス制御デバイス」と,該「デバイスに接続されているホストシステム」と,
“周辺機器”と,該“周辺機器に接続されているホスト”である点で共通する。

b.引用発明における「デバイス・ドライバ」は,「ホスト装置」上で動作するものであり,本件補正発明においては,「ホストアプリケーション」を更新するために「デバイス記述」を,「ホストシステム」に,「ダウンロードする」ものであり,
引用発明における「デバイス・ドライバ」は,「周辺装置」毎に決まるものであり,
本件補正発明における「デバイス記述」も,「プロセス制御デバイス」毎に決まるものであるから,
引用発明における「デバイス・ドライバ」と,
本件補正発明における「デバイス記述」とは,
“周辺機器ごとに決まる情報”である点で共通する。
したがって,引用発明における「周辺装置に結合されたホスト装置にデバイス・ドライバをインストールする方法」と,
本件補正発明における「プロセスプラント内の,該プロセスプラント内で用いられる複数のプロセス制御デバイスに接続されているホストシステム上で動作するホストアプリケーションを更新するための方法」とは,
“周辺機器に接続されているホストに,周辺機器毎に決まる情報を取得する方法”である点で共通する。

c.引用発明における「デバイス・コード」は,「周辺装置」の「デバイス・ドライバ」を特定するための情報であり,
本件補正発明における「デバイス記述識別子」は,「デバイス記述」を識別するための情報であるから,
引用発明における「デバイス・コード」と,
本件補正発明における「デバイス記述識別子」とは,
“周辺機器毎に決まる情報を特定するための識別情報”である点で共通する。
そして,引用発明における「ホスト装置は,前記周辺装置から,装置の種別,製造会社,モデル番号などを識別するデバイス・コードを要求するステップ」において,「ホスト装置」は,「周辺装置」に対して,「デバイス・コードを要求する」ための「コマンド」を発行していることは明らかであるから,
引用発明における「前記ホスト装置は,前記周辺装置から,装置の種別,製造会社,モデル番号などを識別するデバイス・コードを要求するステップ」と,
本件補正発明における「前記ソフトウェア更新アプリケーションが,該ソフトウェア更新アプリケーションにより特定されたプロセス制御デバイスに関連するデバイス記述を特定するためのデバイス記述識別子を要求するために,前記ホストシステムからの第一のコマンドを前記ソフトウェア更新アプリケーションにより特定されたプロセス制御デバイスに送信すること」とは,
“ホストから,周辺機器毎に決まる情報を特定するための識別情報を要求するためのコマンドを,周辺機器に送信すること”である点で共通する。

d.引用発明における「前記周辺装置から前記デバイス・コードを受信するステップ」と,
本件補正発明における「前記ホストシステムで,前記ソフトウェア更新アプリケーションにより特定されたプロセス制御デバイスから,前記デバイス記述子を受信すること」とは,
“ホストで,周辺機器から,周辺機器毎に決まる情報を特定するための識別情報を受信すること”である点で共通する。

e.引用発明においては,「デバイス・コードの前記遠隔処理システムへの送信に応答して,前記遠隔処理システムは受信したコードを自動的に用いてデータベースを参照し,前記ホスト装置に接続されている特定の周辺装置に対する適切なデバイス・ドライバを決定する」,即ち,“デバイス・コードを用いて,特定の周辺機器に適切なデバイス・ドライバを決定する”ものであるから,このことと,上記b.で検討した事項から,
引用発明における「適切なドライバが識別されると,前記遠隔処理システムは自動的にこれらのデバイス・ドライバを前記ホスト装置にダウンロードするステップ」と,
本件補正発明における「前記デバイス記述子を用いて前記デバイス記述子に関連するデバイス記述を前記ホストシステムにダウンロードすること」とは,
“周辺機器毎に決まる情報を特定するための識別情報を用いて前記周辺機器毎に決まる情報を特定するための識別情報に関連する周辺機器毎に決まる情報をホストにダウンロードすること”である点で共通する。

f.引用発明における「デバイス・コード」は,「装置の種別,製造会社,モデル番号などを識別する」ものでもあり,該「製造会社」が,本件補正発明における「製造業者ID」に,また,引用発明における「モデル番号」は,少なくとも,ある「装置の種別」に含まれる「デバイス」を,同じ「装置の種別」に含まれる「デバイス」と“識別”する情報として用いるものであることは明らかであるから,本件補正発明における「デバイス識別子」と,“デバイス識別情報”である点で共通するので,
引用発明における「デバイス・コード」と,
本件補正発明における「デバイス記述識別子」とは,
“周辺機器毎に決まる情報を特定するための識別情報は,デバイス識別情報,製造業者IDを含”むものである点で共通する。

よって,上記a.?f.に検討した事項から,本件補正発明と引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。

[一致点]
周辺機器に接続されているホストに,周辺機器毎に決まる情報を取得する方法であって,
前記方法は,
前記ホストから,前記周辺機器毎に決まる情報を特定するための識別情報を要求するためのコマンドを,前記周辺機器に送信することと,
前記ホストで,前記周辺機器から,前記周辺機器毎に決まる情報を特定するための識別情報を受信することと,
前記周辺機器毎に決まる情報を特定するための識別情報を用いて前記周辺機器毎に決まる情報を特定するための識別情報に関連する周辺機器毎に決まる情報をホストにダウンロードすることと,
を含み,
周辺機器毎に決まる情報を特定するための識別情報は,デバイス識別情報,製造業者IDを含む,方法。

[相違点1]
“周辺機器に接続されているホストに,周辺機器毎に決まる情報を取得する方法”に関して,
本件補正発明においては,「プロセスプラント内で用いられる複数のプロセス制御デバイスに接続されているホストシステム上で動作するホストアプリケーションを更新するための方法」であって,該「更新」に用いるための「デバイス記述」を取得するものであるのに対して,
引用発明においては,「ホスト装置」,及び,「周辺装置」が,「プロセスプラント内で用いられる」点に関しては言及されておらず,「ホスト装置」が取得するのは,「周辺装置」の「デバイス・ドライバ」であって,「ホスト装置」の有する「アプリケーション」を更新するための情報ではない点。

[相違点2]
本件補正発明においては,「ホストアプリケーションが通信する予定であるプロセス制御デバイスであって,前記ホストアプリケーションがそのデバイス記述を有していない一または複数のプロセス制御デバイスを特定するために,前記ホストシステムでソフトウェア更新アプリケーションを周期的に実行する」ものであるのに対して,
引用発明においては,上記引用の処理を実行するような「ソフトウェア更新アプリケーション」については言及されていない点。

[相違点3]
“前記ホストから,前記周辺機器毎に決まる情報を特定するための識別情報を要求するためのコマンドを,前記周辺機器に送信すること”,及び,
“周辺機器毎に決まる情報を特定するための識別情報を受信すること”に関して,
本件補正発明においては,“ホストシステムからの第一のコマンドを,ソフトウェア更新アプリケーションに特定されたプロセス制御デバイスに送信する”処理を,“ソフトウェア更新アプリケーションが,デバイス記述識別子を要求するために”行っているものであるのに対して,
引用発明においては,「周辺装置」をどのように特定し,「デバイス・コード」の要求を,どのように処理しているか明確には示されていない点。

[相違点4]
“周辺機器毎に決まる情報を特定するための識別情報を用いて前記周辺機器毎に決まる情報を特定するための識別情報に関連する周辺機器毎に決まる情報をホストにダウンロードすること”に関して,
本件補正発明においては,「ホストアプリケーションを更新するため」に用いる「デバイス記述」をダウンロードしているのに対して,
引用発明においは,「周辺装置」の「デバイス・ドライバ」をダウンロードしている点。

[相違点5]
本件補正発明においては,“ソフトウェア更新アプリケーションが,デバイス記述に記述されている,ソフトウェア更新アプリケーションにより特定されたプロセス制御デバイスのためのデータおよび動作手順を含むように,ホストアプリケーションを更新する”ものであるのに対して,
引用発明においては,「ホスト装置」において,「アプリケーション」の「更新」を行う点は示されていない点。

[相違点6]
“周辺機器毎に決まる情報を特定するための識別情報”に関して,
本件補正発明においては,「デバイス記述識別子」が,「デバイス更新情報」,及び,「デバイス識別子」を含んでいるのに対して,
引用発明においては,「デバイス・コード」が,「モデル番号」を含み,「周辺装置」の更新に関する情報を有しているか不明である点。

[相違点7]
“周辺機器毎に決まる情報”に関して,
本件補正発明においては,“デバイス記述が,ソフトウェア更新アプリケーションにより特定されたプロセス制御デバイスの一つまたは複数の特徴に関連する,変数,方法,コマンド,メニューまたは表示形式を含む,前記複数のプロセス制御デバイスのうちのその一つのためのデータおよび動作手順を含む”ものであるのに対して,
引用発明においては,該“周辺機器毎に決まる情報”が,「デバイス・ドライバ」である点。

(エ)相違点に対する当審の判断
a.[相違点1],[相違点4],[相違点7]について
原審が平成22年9月16日付けの拒絶理由において引用した,本願の第1国出願前に既に公知である,特開平11-316685号公報(1999年11月16日公開,以下これを「引用刊行物2」という)には,

D.「【0002】
【従来の技術】工業生産施設では通常は数多くの場所にフィールドデバイスが投入されている。これらのフィールドデバイスはセンタから遠隔制御または遠隔操作可能である。「フィールドデバイス」とは工業的なプロセスが実行される施設に投入されるセンサとアクチュエータを一般的に指す。このようなフィールドデバイスとしては圧力センサがある。この圧力センサを使用し容器内の圧力を測定し監視する。フィールドデバイスはまた温度測定器でもよい。この温度測定器を用いてプロセス経過の所望の個所で温度を監視することができる。また液量測定器をフィールドデバイスとして使用することも可能である。この液量測定器は容器の充填状態を監視する。フィールドデバイスとしてインテリジェンスを有するデバイスがますます使用されている。このようなインテリジェントデバイスは,測定値検出用の単純なデバイスよりも格段に応用範囲が広い。このようなフィールドデバイスは,検出した測定値を処理するだけではなく,例えばセンタにある,PCをベースとするコントローラを用い,または携帯型コントローラを用い,フィールドバスを介してオンラインでまたはオフラインでフィールドデバイスパラメタを制御することが可能である。例えば必要に応じて種々異なる測定目標値または測定値の閾値ならびに測定領域をフィールドバスを介してフィールドデバイスに伝送することができる。この機能を達成するために,フィールドデバイスに記憶されたアプリケーションプログラムに対して,フィールドデバイスパラメタを記述する必要がある。このような記述はネットワークアーキテクチャの標準記述として作成されOSI層モデルの第8層とみなすことが可能である。このために様々な,いわゆるデバイス記述言語("Device Description Language",略してDDL)が決められており,上記の目的のために使用することが可能である。このデバイス記述言語は,フィールドデバイスパラメタの属性を記述するだけでなく,パラメタと属性との間の依存性ないしは関係をも記述することができる。
【0003】しかしながらこれまでフィールドデバイスをデバイス記述言語によって遠隔制御および遠隔操作するためにとられて来た方法には,数多くの欠陥がある。言語を用いて作成された,フィールドデバイス用のデバイス記述("Device Description"略してDD)がデバイスの機能を正しく記述している保証はない。複雑なフィールドデバイスに対しては,フィールドデバイスのパラメタの機能と矛盾のないデバイス記述を作成することは極めて困難である。今の所はデバイスコードをデバイス記述に変換することのできるツールまたはデバイス記述からデバイスコードを作成できるツールは存在しない。存在するのは種々異なる多様な,特定のコントローラ専用のデバイス記述言語である。このことはフィールドデバイスとコントローラとのそれぞれの組合せに対して完全に専用にデバイス記述を書かなければならないことを意味する。新規の装置を投入しなければならない場合または既存の装置のソフトウェアを更新しなければならない場合には,通常はこのデバイス記述を更新し,コントローラに導入しなければならないことになる。これは通常は,更新されたデバイス記述をフロッピィーディスクを使用してコントローラに入力することによって行われる。しかしこれはバージョン問題(version problem)を起こしやすい。」

と記載され,上記Dに記載の「工業生産施設」,「フィールドデバイス」,及び,「コントローラ」が,本件補正発明における「プロセスプラント」,「プロセス制御デバイス」,及び,「ホストシステム」に相当する。
したがって,上記Dの「新規の装置を投入しなければならない場合または既存の装置のソフトウェアを更新しなければならない場合には,通常はこのデバイス記述を更新し,コントローラに導入しなければならないことになる。これは通常は,更新されたデバイス記述をフロッピィーディスクを使用してコントローラに入力する」という記載から明らかなように,“プロセスプラントに,新規のデバイスを導入した場合,該デバイスの制御に必要な,デバイス記述を,ホストシステムのソフトウエア更新のために取得する”ことは,本願の第1国出願前に,当業者には周知の技術事項であり,引用発明を,「プロセスプラント」の「ホストシステム」に適用し,ダウンロード対象を,「プロセス制御デバイス」の「デバイス記述」とすることは,当業者が適宜なし得る事項である。
そして,「デバイス記述」であれば,該「デバイス記述」が,上記Dに記載されているように,「フィールドデバイスパラメタの属性を記述するだけでなく,パラメタと属性との間の依存性ないしは関係をも記述」したものであることから,該「デバイス記述」が,「プロセス制御デバイスの一つまたは複数の特徴に関連する,変数,方法,コマンド,メニューまたは表示形式を含む,前記複数のプロセス制御デバイスのうちのその一つのためのデータおよび動作手順を含む」よう構成し得ることは,当業者には周知の技術事項である。
よって,相違点1,及び,相違点4,並びに,相違点7は,格別のものではない。

b.[相違点2]について
上記「(1)新規事項」で検討したとおり,本願明細書には,「ホストアプリケーションが通信する予定であるプロセス制御デバイスであって,前記ホストアプリケーションがそのデバイス記述を有していない一または複数のプロセス制御デバイスを特定するために,前記ホストシステムでソフトウェア更新アプリケーションを周期的に実行する」という処理は記載されていない。
そこで,当該“処理”については,本願明細書の発明の詳細な説明を参照して,段落【0020】の「さまざまなホストアプリケーションによる通信要求ログを探しうる。この要求ログは,通信が望まれるデバイスを特定しうる」という記載,即ち,“「ホストシステム」から「通信が望まれるデバイス」に対する「通信要求」があるかを周期的に確認する”ものとして,以下の検討を行う。

通信要求が発生するような環境において,該通信要求の検出処理を周期的に実行するようなことは,例えば,本願の第1国出願前に既に公知である,特開平05-197652号公報(1993年8月6日公開,以下これを「周知文献1」という)の段落【0031】に,

E.「受信処理によるデ-タ着信通知が戻ってくるまでは送信処理は上記送信要求検出処理を周期的に実行できる。」

と記載されているように,本願の第1国出願前に,当業者においては周知の技術事項であり,また,本願の第1国出願前に既に公知である,特開昭63-005430号公報(1998年1月11日公開,以下,これを「周知文献2」という)に,

F.「プログラムには周期的に実行されるもの,またある外部信号(イベントと呼ぶ)により起動するものなど様々であり,これらのタイプをグループに合せて表現する。」(3頁右上欄11行?14行)

と記載されているように,“周期的に実行されるプログラム”も,本願の第1国出願前に,当業者には周知の技術事項であるから,引用発明において,
“ホスト装置において,ホスト装置の有するアプリケーションからの送信要求を監視するプログラムを周期的に実行するよう構成する”ことは,同業者が適宜なし得る事項である。
また,仮に,周期的に実行される処理が,“送信要求の監視”ではなく,“デバイス”の特定処理であるとしても,例えば,本願の第1国出願前に既に公知である,特開2003-076623号公報(2003年3月14日公開,以下,これを「周知文献3」という)に,

G.「【0044】図5は図1及び図2中のサーバ決定手段及び通信中継手段による処理動作を示すフロー図であり,この図に沿ってサーバ決定手段9,9aによる最適サーバの決定動作及び通信中継手段8,8aへの通知動作を説明する。先ず,サーバ決定手段9,9aは,周期タイマなどの起動イベントによって周期的に起動する(ステップST1b)。この周期タイマは,クライアント端末7や通信端末12を構成するコンピュータ装置に通常設けられているものを使用しても良い。」

と記載されていて,“所望の装置等を決定するためのプログラムを周期的に起動する”よう構成することも,本願の第1国出願前に既に知られた技術手法であるから,引用発明においても,“ホスト装置が,要求を送る周辺装置を決定するプログラムを周期的に実行する”よう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,相違点2をどのように解釈したとしても,相違点2は,格別のものではない。

c.[相違点3]について
本願の第1国出願前に既に公知である,特開2003-131959号公報(2003年5月9日公開,以下,これを「周知文献4」という)に,

H.「【0045】例えば,クライアントアプリケーション1が起動されるPC103がプリンタ102の情報(デバイス情報)を取得する場合,PC103において,クライアントアプリケーション1は,プロキシを用いたプロセス間通信を行うことで,サーバアプリケーションが起動されるPC121に対して,情報取得したいデバイス(ここでは,プリンタ102)を示す情報を送信する。PC121において,サーバアプリケーションは,スタブによりクライアントアプリケーション1から送信されてきた情報を受信し,当該受信情報によりデバイス情報を取得すべきデバイス(プリンタ102)を認識し,SNMPプロトコル等によりプリンタ102のデバイス情報を取得し,当該取得情報を,プロセス間通信によりプロキシを介してクライアントアプリケーション1が起動されるPC103に対して返送(コールバック通知)する。この通知を受けたPC103において,クライアントアプリケーション1は,当該通知情報に基づいてビットマップ表示等を行うことで,PC103のユーザに対してデバイス情報を表示する。」

と記載されてもいるように,“情報を取得する相手を認識した上で,該取得相手から,所望の情報を取得する”ような処理は,当業者に周知の技術事項であり,該処理を,アプリケーションによって実行することも,上記b.で検討したように周知の事項であるから,引用発明においても,“「ホスト装置」が「要求」を送信する「周辺装置」を,アプリケーションを用いて特定し,該アプリケーションが,「要求」を送信し,特定された「周辺装置」からの「デバイス・コード」を受信する”よう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,相違点3は格別のものではない。

d.[相違点5]について
上記a.において検討したように,引用刊行物2には,“新規に接続されたデバイスのデバイス記述に基づいて,ソフトウェアを更新する”ことが記載されているので,引用発明においても,「周辺装置」の「デバイス・ドライバ」ではなく,「デバイス記述」を取得するよう構成した場合に,「ホスト装置」の有する関連する“ソフトウェア”を,該「デバイス記述」によって,「更新」するよう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,相違点5は,格別のものではない。

e.[相違点6]について
本願の第1国出願前に既に公知である,特開2002-063098号公報(2002年2月28日公開,以下,これを「周知文献5」という)に,

I.「【0035】すなわち,プリンタシステム1は,図3に示すように,ホスト装置2が,搭載しているバージョンアップソフトの動作により,自己の備えている現状のプリンタドライバソフトのバージョン情報を調査し,また,プリンタ装置3と通信してプリンタ装置3の現状のプリンタファームのバージョン情報を獲得する(ステップS201)。また,ホスト装置2は,搭載しているバージョンアップソフトの動作により,インターネット5を介してプリンタメーカー側のサーバー6に接続し,サーバー6の提供可能なドライバソフト及びプリンタファームの最新バージョン情報を獲得する(ステップS202)。」

と記載されているように,「バージョンアップソフトウェア」(本件補正発明における「デバイス記述」に相当)を取得するために,接続されている周辺機器に,該周辺機器の「パージョン情報」(本件補正発明における「デバイス更新情報」に相当)を要求し,取得することは,当業者にとって周知の事項であり,
また,“個々の装置を識別するための識別子を用いる”点についても,例えば,本願の第1国出願前に既に公知である,特開平11-331147号公報(1999年11月30日公開,以下,これを「周知文献6」という)の段落【0024】に,

J.「装置ID-装置識別子又はクライアント識別子を表す255バイトまでの変数」,

と記載されているように,当業者には周知の技術事項であるから,
引用発明においても,「デバイス・コード」に,「モデル番号」に替えて,「装置ID」,即ち,「デバイス識別子」を採用し,前記「バージョン情報」,即ち,「デバイス更新情報」を加えて,「周辺装置」から取得するよう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,相違点6は,格別のものではない。

上記で検討したごとく,相違点1?7はいずれも格別のものではなく,そして,本件発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば当然に予測可能なものに過ぎず格別なものとは認められない。
以上のとおりであるから,本件補正発明は,引用発明,及び,引用刊行物2,並びに,周知文献1?周知文献6に記載された如き周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際特許を受けることができない。

(オ)独立特許要件むすび
したがって,本件手続補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.補正却下むすび
以上,上記「2.補正の適否」の「(1)新規事項」において検討したとおり,
本件手続補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第3項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
仮に,本件手続補正が,当初明細書等の記載の範囲内でなされたものであるとしても,上記「2.補正の適否」の「(2)目的要件」において検討したとおり,
本件手続補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第4項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
仮に,本件手続補正が,当初明細書等の記載の範囲内でなされ,かつ,目的要件を満たすものであるとしても,上記「2.補正の適否」の「(3)独立特許要件」において検討したとおり,
本件手続補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって,補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
平成23年10月28日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,これを「本願発明」という)は,平成23年3月22日付けの手続補正により補正された,上記「第2.平成23年10月28日付けの手続補正の却下の決定」の「1.補正の内容」において,補正前の請求項1として引用した次のとおりのものである。

「プロセスプラント内の,該プロセスプラント内で用いられる複数のプロセス制御デバイスに接続されているホストシステム上で動作するホストアプリケーションを更新するための方法であって,
前記方法は,
前記複数のプロセス制御デバイスのうちのある一つに関連するデバイス記述を特定するためのデバイス記述識別子を要求するために,前記ホストシステムからの第一のコマンドを前記複数のプロセス制御デバイスのうちのその一つに送信することと,
前記ホストシステムで,前記複数のプロセス制御デバイスのうちのその一つから,前記デバイス記述識別子を受信することと,
前記デバイス記述識別子を用いて前記デバイス記述識別子に関連するデバイス記述を前記ホストシステムにダウンロードすることと,
前記デバイス記述に記述されている,前記複数のプロセス制御デバイスのうちのその一つのためのデータおよび動作手順を含むように,前記ホストアプリケーションを更新することと,
を含み,
前記デバイス記述識別子は,前記複数のプロセス制御デバイスのうちのその一つに関連するデバイス記述を特定するための,デバイス識別子,製造業者ID,デバイス更新のうちの少なくとも一つを含み,
前記デバイス記述は,前記複数のプロセス制御デバイスのうちのその一つの一または複数の特徴に関連する,変数,方法,コマンド,メニューまたは表示形式のうちの少なくとも一つを含む,前記複数のプロセス制御デバイスのうちのその一つのためのデータおよび動作手順を含んでいる。」

第4.引用刊行物に記載の発明
原審が,平成22年9月16日付けの拒絶理由に引用した,特表2001-523365号公報には,上記「第2.平成23年10月28日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」の「(3)独立特許要件」における「(イ)引用刊行物に記載の発明」において認定したとおりの引用発明が記載されているものと認める。

第5.本願発明と引用発明との対比
本願発明は,上記「第2.平成23年10月28日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」の「(3)独立特許要件」において検討した,本件補正発明から,
「前記ホストアプリケーションが通信する予定であるプロセス制御デバイスであって,前記ホストアプリケーションがそのデバイス記述を有していない一または複数のプロセス制御デバイスを特定するために,前記ホストシステムでソフトウェア更新アプリケーションを周期的に実行すること」を取り除き,
本件補正発明における,
「前記ソフトウェア更新アプリケーションが,該ソフトウェア更新アプリケーションにより特定されたプロセス制御デバイスに関連する」を,
「前記複数のプロセス制御デバイスのうちのある一つに関連する」とし,
本件補正発明における,
「前記ソフトウェア更新アプリケーションにより特定されたプロセス制御デバイスから」を,
「前記複数のプロセス制御デバイスのうちのその一つから」とし,
本件補正発明における,
「前記ソフトウェア更新アプリケーションが,前記デバイス記述に記述されている,前記ソフトウェア更新アプリケーションにより特定されたプロセス制御デバイスのためのデータおよび動作手順を含むように,前記ホストアプリケーションを更新すること」を,
「前記デバイス記述に記述されている,前記複数のプロセス制御デバイスのうちのその一つのためのデータおよび動作手順を含むように,前記ホストアプリケーションを更新すること」とし,
本件補正発明における,
「前記ソフトウェア更新アプリケーションにより特定されたプロセス制御デバイスに関連するデバイス記述を特定するための,デバイス識別子,製造業者ID,デバイス更新情報を含み」を,
「前記デバイス記述識別子は,前記複数のプロセス制御デバイスのうちのその一つに関連するデバイス記述を特定するための,デバイス識別子,製造業者ID,デバイス更新のうちの少なくとも一つを含み」とし,
本件補正発明における,
「前記デバイス記述は,前記ソフトウェア更新アプリケーションにより特定されたプロセス制御デバイスの一または複数の特徴に関連する,変数,方法,コマンド,メニューまたは表示形式を含む」を,
「前記デバイス記述は,前記複数のプロセス制御デバイスのうちのその一つの一または複数の特徴に関連する,変数,方法,コマンド,メニューまたは表示形式のうちの少なくとも一つを含む」としたものであるから,
本願発明と,引用発明との一致点,及び,相違点は,次のとおりである。

[一致点]
周辺機器に接続されているホストに,周辺機器毎に決まる情報を取得する方法であって,
前記方法は,
前記ホストから,前記周辺機器毎に決まる情報を特定するための識別情報を要求するためのコマンドを,前記周辺機器に送信することと,
前記ホストで,前記周辺機器から,前記周辺機器毎に決まる情報を特定するための識別情報を受信することと,
前記周辺機器毎に決まる情報を特定するための識別情報を用いて前記周辺機器毎に決まる情報を特定するための識別情報に関連する周辺機器毎に決まる情報をホストにダウンロードすることと,
を含み,
周辺機器毎に決まる情報を特定するための識別情報は,製造業者IDを含む,方法。

[相違点あ]
“周辺機器に接続されているホストに,周辺機器毎に決まる情報を取得する方法”に関して,
本願発明においては,「プロセスプラント内で用いられる複数のプロセス制御デバイスに接続されているホストシステム上で動作するホストアプリケーションを更新するための方法」であって,該「更新」に用いるための「デバイス記述」を取得するものであるのに対して,
引用発明においては,「ホスト装置」,及び,「周辺装置」が,「プロセスプラント内で用いられる」点に関しては言及されておらず,「ホスト装置」が取得するのは,「周辺装置」の「デバイス・ドライバ」であって,「ホスト装置」の有する「アプリケーション」を更新するための情報ではない点。

[相違点い]
“周辺機器毎に決まる情報を特定するための識別情報を用いて前記周辺機器毎に決まる情報を特定するための識別情報に関連する周辺機器毎に決まる情報をホストにダウンロードすること”に関して,
本願発明においては,「ホストアプリケーションを更新するため」に用いる「デバイス記述」をダウンロードしているのに対して,
引用発明においは,「周辺装置」の「デバイス・ドライバ」をダウンロードしている点。

[相違点う]
本願発明においては,“デバイス記述に記述されている,プロセス制御デバイスのためのデータおよび動作手順を含むように,ホストアプリケーションを更新する”ものであるのに対して,
引用発明においては,「ホスト装置」において,「アプリケーション」の「更新」を行う点は示されていない点。

[相違点え]
“周辺機器毎に決まる情報”に関して,
本願発明においては,“デバイス記述が,複数のプロセス制御デバイスのうちのその一つの一または複数の特徴に関連する,変数,方法,コマンド,メニューまたは表示形式を含む,前記複数のプロセス制御デバイスのうちのその一つのためのデータおよび動作手順を含む”ものであるのに対して,
引用発明においては,該“周辺機器毎に決まる情報”が,「デバイス・ドライバ」である点。

第6.当審の判断
本願発明と,引用発明との[相違点あ]は,上記「第2.平成23年10月28日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」の「(3)独立特許要件」における「(ウ)本件補正発明と,引用発明との対比」において検討した,本件補正発明と,引用発明との[相違点1]と同じものであり,同様に,本願発明と,引用発明との[相違点い],[相違点う],及び,[相違点え]は,本件補正発明と,引用発明との[相違点4],[相違点5],及び,[相違点7]と,これらの相違点において,本件補正発明においては,「ソフトウェア更新アプリケーション」関与している点を除けば,ほぼ同等であり,本願発明も,引用発明も,各処理を「ホスト」,或いは,「ホスト装置」が行っている点は同一であるから,本願発明と,引用発明との[相違点あ]?[相違点え]は,上記「第2.平成23年10月28日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」の「(3)独立特許要件」における「(エ)相違点に対する当審の判断」おいて,本件補正発明と,引用発明との[相違点1],[相違点4],[相違点5],及び,[相違点7]について検討したとおり,格別のものではない。
そして,本願発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば当然に予測可能なものに過ぎず格別なものとは認められない。

第7.むすび
したがって,本願発明は,本願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-06-07 
結審通知日 2013-06-11 
審決日 2013-06-26 
出願番号 特願2006-527994(P2006-527994)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G06F)
P 1 8・ 571- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 561- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 573- Z (G06F)
P 1 8・ 574- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保 光宏  
特許庁審判長 仲間 晃
特許庁審判官 石井 茂和
田中 秀人
発明の名称 自動ソフトウェア更新を提供するための方法および装置  
代理人 特許業務法人 有古特許事務所  

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