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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65G
管理番号 1281212
審判番号 不服2011-24414  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-11 
確定日 2013-11-06 
事件の表示 特願2007-508836「バキュームコンベアを不活性化するための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年11月 3日国際公開、WO2005/102882、平成19年11月22日国内公表、特表2007-533573〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本願は、2005年4月20日(パリ条約による優先権主張2004年4月20日、外国庁受理 独国)を国際出願日とする出願であって、平成18年10月19日付けで特許法第184条の5第1項に規定される書面が提出され、平成18年12月7日付けで特許法第184条の4第1項に規定される明細書、請求の範囲、図面及び要約書の日本語による翻訳文が提出され、平成22年7月2日付けで拒絶理由通知がなされ、平成23年1月12日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成23年7月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年11月11日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に同日付けの手続補正書が提出され、その後、当審における平成24年5月14日付けの書面による審尋に対して、平成24年8月8日付けで回答書が提出され、平成24年10月25日付けの補正却下の決定により平成23年11月11日付けの手続補正が却下され、平成24年11月9日付けで拒絶理由が通知され、平成25年5月10日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものであって、その請求項1ないし9に係る発明は、平成25年5月10日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲並びに国際出願時における明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】
少なくとも1つの吸込み装置(30)と、排出装置(40)と、分離容器(100)と、真空ポンプ装置(20)とを有する、吸込みガス流により、粉末、造粒物、粉塵、小部品、および錠剤を含む材料を搬送することが可能なバキュームコンベアを不活性化するための方法であって、
不活性流体が前記少なくとも1つの分離容器(100)内に、分離された物質(102)の自由面より下に供給され、
前記少なくとも1つの分離容器(100)内に存在する流体(104)の特定の流体成分の濃度が測定され、
前記不活性流体の前記供給が行われたことが前記濃度の測定結果によって決定され、 前記不活性流体の前記供給が行われるまでは前記排出装置(40)が開かず、
前記分離容器(100)は、所定の時間に、前記真空ポンプ装置(20)による前記吸込みガス流とは逆方向のカウンターブローを、前記分離容器(100)と前記真空ポンプ装置(20)を接続する管路(22)から分岐した追加の管路(26)を介して取り込む

ことを特徴とする方法。」

2.引用文献に記載された発明
(1)引用文献
当審における拒絶理由に引用された文献である特表2001-502650号公報(以下、「引用文献」という。)には、例えば、以下の記載がある。

ア.「【発明の詳細な説明】
粉状物質を空気力で搬送する装置および方法、ならびにその使用方法
技術分野
本発明は、配管システムにおいて、少なくとも一つのフィルタを用いるコンテナを有する粉状物質を空気力で搬送する装置およびその方法に関するものである。本発明は、また、前記装置および/または前記方法の使用方法に関するものでもある。」(公報第6ページ第1行ないし第7行)

イ.「本発明によれば、被搬送材料として、比重量が0.1?15g/cm3で、粒径範囲が0.1?300μmの粉状物質を空気力で搬送する上述の装置において、被搬送材料を一時的に受け入れる断面が円形状または多角形状のポンプ室を形成するコンテナの長さと内径との比は、0.5よりも大きい。さらに、被搬送材料を吸い込むための真空ポンプとコンテナとの間に設けられたフィルタの幅は、コンテナの内径によって決まる横断面以下に相当する。さらに、フィルタの取扱いのためには、プレート状のフィルタ薄膜、好ましくはフィルタインサートの枠に交換可能に配置されたフィルタ薄膜の形とするのが望ましいことが分かった。
有利な実施形態では、本発明のコンテナに、相互に制御できる4つの自動ブロックまたは栓(closure)要素が結合されている。より具体的には、供給管と排出管と真空用および搬送媒体用の管とにそれぞれ1つずつである。
吸い込み取入れ段階中に、供給管の栓要素は開いているが、排出管は閉じたままである。この状態で真空接続が開いているので、被搬送材料がポンプ室に吸い込まれる。所定の時間経過後、供給管が閉じられ、排出管が開かれる。被搬送材料は圧力、すなわち圧縮空気またはフィルタ洗浄のための窒素によって、放出される。コンテナの上部におけるフィルタは、極めて細かい粒子を保持し、空にするサイクル毎に洗浄される。」(公報第7ページ第15行ないし第8ページ第3行)

ウ.「好ましくは、粉状物質を空気式搬送作用によって排出するために、清浄化された圧縮空気、反応ガスまたは不活性ガス、特に窒素が用いられる。
上述のシステムでは、ポンプ室の上部に設置された平坦なフィルタ膜によって、粉状製品の搬送が許容される。ポンプ室の直径は、フィルタ膜の直径にほぼ一致する。
ポンプ室に真空および圧力源を交互に適用して、粉状製品を搬送する。真空ポンプによって作られた真空が、粉状の被搬送材料をポンプ室に
吸い込み、フィルタが真空ポンプによって吸い込まれた粒子を空気から分離する。搬送ガスの圧力でポンプ室を空にし、同時に逆流によってフィルタを洗浄することができる。」(公報第9ページ第9行ないし第19行)

エ.「さらに、このシステムは、可燃性の気体/蒸気の入った反応器などの容器に、粉体を導入する間における爆発の危険をかなり減じる。粉体搬送効果が吸引によって達成されるので、搬送管における爆発の危険がかなり減じられる。ほとんどの場合、粉体/酸素比が爆発限界外である。回転部分がないので、摩擦によるいかなる種類の発火または爆発の危険も問題にならない。
この手順によって、紙袋、大きな袋またはサイロから粉体を、圧力がかけられているコンテナに導入することができる。したがって、化学および製薬産業における安全予防策に関する期待に十分に沿う。ポンプ室を空にするために、種々のガス、たとえば窒素やアルゴンを用いることができる。空にする作業に中性ガスを用いると、例えば、反応器に酸素を導入せずに、不活性にした反応器に粉体を満たすことができる。その結果、不活性ガスはポンプ室を空にする段階のためだけに用いられ、粉
体搬送作業のための吸込み取入れ段階中には用いられないので、不活性ガスの消費が少ない。ポンプ室において、酸素が粉体から分離され、不活性ガスと取り替えられる。」(公報第10ページ第3行ないし第18行)

オ.「発明の実施形態
図5に示すサイロ9から比重量が0.1?15.0g/cm^(3)で、粒径範囲が0.1?300μmの粉状物質を反応容器または反応器11へ空気力で搬送する空気式搬送装置10は、それぞれ、長さaが600または850mm、内径dが200または300mmで、その内部空間がポンプ室13として作用する、電解研磨高品質鋼製の円筒形状のコンテナ12と、被搬送材料の吸込み取入れ用供給管14の連結用アダプタ接続部14aとを有する。供給管14は、接続フランジ15のブロックまたは栓部材として、いわゆるバタフライ弁16を有する。
図1において明確さを強調するために、コンテナ12から一定の間隔を置いて図示したコンテナの底部18の上方に、弁ハウジング20と排出管22のバタフライ弁16a用の駆動装置21とを示す。排出管22による作用を受け、圧力が加えられた反応器11の他に、図5には、排出管22も示される。コンテナ軸Aに対して平行な関係に方向づけられたコンテナの底部18のフック部材19は、連結棒23aにおける締め付けフック23を有するコンテナ12の固定装置24によって、着脱自在に固定するのに役立つ。
上方においてコンテナ12は、T形接続管28に軸方向に沿って設けられたドームカバー30にわたるフィルタインサート26で終端する。カバー30は、さらなる固定装置24aによって、コンテナ12のタイフック32に固定されている。図1に示すように、コンテナ12の上部は、カバー装置26,30とともに、フード構造物34によって囲まれている。
図2に示すように、接続管28からは、一方にその上流に配置された真空ポンプ27b用の真空弁27を有する真空管27aが延出し、他方に搬送ガス源29用の搬送ガス管29aが延出する。この管29aは、
閉止用バルブ17を有する。
吸込み取入れ段階中は供給管14のバタフライ弁16が開かれ、排出管22は閉じたままになっている。ポンプ室13は、真空管27aによってできた真空のために、所望の充填レベルまで、できる限り全体にまで充填されている。所定時間経過後に、供給管14は閉じられ、排出管22が開けられる。粉体は、搬送ガス管29aで閉止用バルブ17を開けた後、圧力、例えばフィルタ洗浄のための窒素によって放出される。吸込み取入れ段階の終りに、ポンプ室13から酸素を除去するために、排出管22のバタフライ弁16aを開く前に所定時間真空管27aを開けたままにしておく。
この手順において特に重要な点は、粉体を保持すると同時に、システムの吸込み能力を維持するフィルタインサート26におけるフィルタである。このフィルタは、ポンプ室13と搬送ガス源29との間に位置するので、各サイクル毎に洗浄され、その十分なろ過能力が維持される。
4つの栓要素16,16a,17,27は、共に、制御手順によって制御ボックス35に接続されている。吸込み取り入れ段階中に、供給管14のバタフライ弁16を開くが、排出管22は閉じたままにする。この状態で真空弁27は開いているので、ポンプ室13は十分に吸い込まれる。所定時間経過後、供給管14が閉じられ、排出管22が開かれる。被搬送材料は圧力、すなわち圧縮空気またはフィルタ洗浄のための窒素によって放出される。コンテナ12の上部におけるフィルタは、極めて細かい粒子を保持し、空にするサイクル毎に洗浄される。
下流に配置された反応器11に粉体が導入される前に、空気と粉体とが相互に分離される。この分離は、被搬送材料取入口14を開けるのに対して、真空閉止弁16が遅れて閉じられることによって行われる。排出管22が開けられる時に反応器11のガスが吸い込まれないように、
コンテナ12にまず圧力がかけられ、その後に、空にする弁16aが開けられる。さらに、真空管27aは、排出管22が閉じた時だけしか開かれない。
好適な吸い込み取り入れ段階は、10?12秒で、空にする時間は、3?5秒程度である。サイクルの切り替えにおける過圧を防止するために、空気式調整絞り手段が設けられている。その遅延には、通常1秒とれば十分である。
同様に、制御手順における遅延効果のために、空気を抜くための真空の閉鎖と、粉体を空にするためのバタフライ弁16aの開放とを相互に適合させることができる。ここでも、最大1秒の遅延で十分である。
空にする圧力、すなわち圧縮空気または窒素が調整されるので、ポンプ室13を開放する時に、不必要な粉じんを生じることなく吸い込んだ粉体の全量が放出される(理想圧力=1.5?2バール)。
極めて粘性の高い製品に対処する時は、完全に空にして、かつ完全にフィルタを洗浄するために、圧力を2.5?3バールに増す。」(公報第11ページ第16行ないし第13ページ第18行)

カ.「図6では、本装置10の2つが、並置した関係で平行にキャリア36に取り付けられている。図示しない連続搬送管への接続フランジ40を有する共通のマニホールドまたはポートパイプ38に、装置10,10の供給管14,14が開口している。これら2つの装置10,10を上述の方法で交互に運転させると、順次(シーケンシャル)システムから連続システムに遷移することができる。」(公報第14ページ第1行ないし第5行)

(2)引用文献に記載された発明
上記(1)ア.ないしカ.の記載及び図面を参酌すると、引用文献には以下の事項が記載されていることが分かる。

キ.弁ハウジング20と排出管22のバタフライ弁16a用の駆動装置21によって、粉状物質を含む被搬送材料を搬送し排出していることから、排出装置(以下、「排出装置A」という。)があることが分かる。

ク.粉状物質を含む被搬送材料は、ポンプ室に吸込まれているので、吸込みガス流(以下、「吸込みガス流B」という。)があることが分かる。

ケ.少なくとも1つの空気式搬送装置10と、排出装置Aと、コンテナ12と、真空ポンプ27bとを有する、吸込みガス流Bにより、粉状物質を含む被搬送材料を搬送することが可能な空気力で搬送する装置であり、不活性化するための方法であることが分かる。

コ.コンテナ12は、所定の時間に、真空ポンプ27bによる吸込みガス流Bとは逆方向のフィルター洗浄のための窒素を、前記コンテナ12と前記真空ポンプ27bを接続する真空管27aと接続管28の二つの管(以下、「管路C」という。)から分岐した搬送ガス管29aを介して取り込んでいることが分かる。

以上、上記(1)ア.ないしカ.及びキ.ないしコ.並びに図面を参酌すると、引用文献には以下の発明が記載されているといえる。
「少なくとも1つの空気式搬送装置10と、排出装置Aと、コンテナ12と、真空ポンプ27bとを有する、吸込みガス流Bにより、粉状物質を含む被搬送材料を搬送することが可能な空気力で搬送する装置を不活性化するための方法であって、
前記コンテナ12は、所定の時間に、前記真空ポンプ27bによる前記吸込みガス流Bとは逆方向のフィルター洗浄のための窒素を、前記コンテナ12と前記真空ポンプ27bを接続する管路Cから分岐した搬送ガス管29aを介して取り込む方法。」(以下、「引用文献に記載された発明」という。)

3.対比
本願発明と引用文献に記載された発明とを対比すると、引用文献に記載された発明における「空気式搬送装置10」は、その目的及び機能からみて、「吸込み装置(30)」に相当し、以下同様に、「排出装置A」は「排出装置(40)」に、「コンテナ12」は「分離容器(100)」に、「真空ポンプ27b」は「真空ポンプ装置(20)」に、「吸込みガス流B」は「吸込みガス流」に、「粉末、造粒物、粉塵、小部品、および錠剤を含む材料」は「粉状物質を含む被搬送材料」に、「空気力で搬送する装置」は「バキュームコンベア」に、「フィルター洗浄のための窒素」は「カウンターブロー」に、「管路C」は「管路(22)」に、「搬送ガス管29a」は「追加の管路(26)」に、各々相当するから、本願発明と引用文献に記載された発明とは、
「少なくとも1つの吸込み装置と、排出装置と、分離容器と、真空ポンプ装置とを有する、吸込みガス流により、粉末、造粒物、粉塵、小部品、および錠剤を含む材料を搬送することが可能なバキュームコンベアを不活性化するための方法であって、
前記分離容器は、所定の時間に、前記真空ポンプ装置による前記吸込みガス流とは逆方向のカウンターブローを、前記分離容器と前記真空ポンプ装置を接続する管路から分岐した追加の管路を介して取り込む方法。」の点で一致し、以下の点で相違する。
〈相違点〉
(1)本願発明においては、不活性流体が少なくとも1つの分離容器内に、分離された物質の自由面より下に供給されているのに対して、引用文献に記載された発明においては、そのように特定されていない点(以下、「相違点1」という。)。

(2)本願発明においては、「少なくとも1つの分離容器内に存在する流体の特定の流体成分の濃度が測定され、
不活性流体の供給が行われたことが前記濃度の測定結果によって決定され、
前記不活性流体の前記供給が行われるまでは排出装置(40)が開かず」と特定されているのに対して、引用文献に記載された発明においては、そのように特定されていない点(以下、「相違点2」という。)。

4.判断
相違点について検討する
(1)相違点1について
不活性流体を分離容器内に、分離された物質の自由面より下に供給させて、バキュームコンベアを不活性化させる方法は周知(例えば、当審の拒絶理由通知で提示した特開昭59-43736号公報、特開昭63-191788号公報参照、以下、「周知技術1」という。)であることから、引用文献に記載された発明に上記周知技術1を適用して、相違点1に係る本願発明のように特定することは、当業者が容易に推考し得るものである。

(2)相違点2について
バキュームコンベアの不活性化する方法において、分離容器内に存在する酸素濃度を測定し、不活性ガスの供給を酸素濃度の測定結果で決定することは周知(例えば、当審の拒絶理由通知で提示した、特開昭63-191788号公報参照、特開昭63-82223号公報参照、以下、「周知技術2」という。)であり、バキュームコンベアの不活性化を考慮すれば、不活性ガスの供給が行われるまでは排出装置を開かないようにすることは、設計上当然の事項(以下、「設計事項」という。)であることから、引用文献に記載された発明に上記周知技術2を適用するにあたって、上記設計事項を考慮して相違点2に係る発明のように特定することは、当業者が容易に推考し得るものである。
また、本願発明を全体として検討しても、引用文献に記載された発明、周知技術1、及び周知技術2、並びに設計事項から予測される以上の格別の効果を奏するとも認めることができない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用文献に記載された発明、周知技術1、及び周知技術2、並びに設計事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-06-14 
結審通知日 2013-06-18 
審決日 2013-06-25 
出願番号 特願2007-508836(P2007-508836)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石川 太郎宮崎 基樹  
特許庁審判長 小谷 一郎
特許庁審判官 中川 隆司
久島 弘太郎
発明の名称 バキュームコンベアを不活性化するための方法および装置  
代理人 鈴木 泰光  
代理人 吉田 稔  
代理人 田中 達也  
代理人 臼井 尚  
代理人 仙波 司  

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