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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1281215
審判番号 不服2011-26037  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-01 
確定日 2013-11-06 
事件の表示 特願2006-162682「公衆データおよびプライベートデータを統合するシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 1月11日出願公開、特開2007- 4785〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成12年6月28日を優先日とする特願2002-506393号の一部を、平成18年6月12日(パリ条約による優先権主張 平成12年6月28日 アメリカ合衆国)に新たな特許出願としたものであって、平成22年10月19日付け拒絶理由通知に対し、平成23年2月2日に手続補正がなされたが、平成23年4月6日付けで最後の拒絶理由通知がなされ、これに対し、平成23年7月12日付けで手続補正がなされたが、平成23年7月26日付けで、平成23年7月12日付け手続補正についての補正の却下の決定がなされ、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年12月1日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同時に手続補正がなされたものである。


第2 平成23年12月1日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成23年12月1日付けの手続補正(以下、「本件補正」と呼ぶ。)を却下する。


[理由]

1.補正内容と補正の目的

本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、

「ネットワーク上で利用可能なデータの統合および送達を容易にするシステムであって、
該システムは、
該ネットワークに結合された1つ以上のホストコンピュータコンポーネントと、
少なくとも1つの公衆で利用可能なデータ記憶装置と、
少なくとも1つの個人データ記憶装置と
を備え、
該少なくとも1つの公衆で利用可能なデータ記憶装置と該少なくとも1つの個人データ記憶装置とは、該1つ以上のホストコンピュータコンポーネントに結合されており、
該1つ以上のホストコンピュータコンポーネントは、
企業トランザクションデータとビジネスパートナートランザクションデータとを受け取ることと、
該受け取られた企業トランザクションデータとビジネスパートナートランザクションデータとを集めることにより、集められたトランザクションデータを生成することと、
該少なくとも1つの公衆で利用可能なデータ記憶装置から公衆データの一部を取得すること
であって、
該取得される公衆データの一部は、該個人データと該集められたトランザクションデータとによって決定されることと、
該公衆データの一部と該集められたトランザクションデータとを統合することにより、
該ネットワークを介してユーザシステムに送達するための統合データを形成することと
を行うように構成されている、システム。」

から、

「ネットワーク上で利用可能なデータの統合および送達を容易にするシステムであって、
該システムは、
該ネットワークに結合された1つ以上のホストコンピュータコンポーネントと、
少なくとも1つの公衆で利用可能なデータ記憶装置と、
少なくとも1つの個人プロフィールデータ記憶装置と
を備え、
該少なくとも1つの公衆で利用可能なデータ記憶装置と該少なくとも1つの個人プロフィールデータ記憶装置とは、該1つ以上のホストコンピュータコンポーネントに結合されており、
該1つ以上のホストコンピュータコンポーネントは、
企業トランザクションデータとビジネスパートナートランザクションデータとを受け取ることと、
該受け取られた企業トランザクションデータとビジネスパートナートランザクションデータとを集めることにより、集められたトランザクションデータを生成することであって、該集められたトランザクションデータは個人プロフィールデータに基づいて決定されることと、
該少なくとも1つの公衆で利用可能なデータ記憶装置から公衆データの一部を取得すること
であって、
該取得される公衆データの一部は、該個人プロフィールデータと該集められたトランザクションデータに基づいて決定されることと、
該公衆データの一部と該集められたトランザクションデータとを統合することにより、
該ネットワークを介してユーザシステムに送達するための統合データを形成することと
を行うように構成されている、システム。」

に変更する補正事項を含むものである。

そして、上記補正事項中の各具体的補正事項は、いずれも、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項に新たな要件を追加することで、該発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題を相互に異なるものとするものではないので、上記補正事項は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号にいう「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。



2.独立特許要件

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」と呼ぶ。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものといえるか否かについて検討するに、当審は、下記の理由により、本願補正発明は特許出願の際、独立して特許を受けることができるものではないと判断する。

本願補正発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、本件補正後の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

以下説明する。

本願補正発明は、「該取得される公衆データの一部は、個人プロフィールデータと集められたトランザクションデータに基づいて決定される」という発明特定事項(以下、「発明特定事項A」と呼ぶ。)を要件として含む発明であるが、その発明特定事項Aによって規定される技術的事項の内の「公衆データの一部が集められたトランザクションデータに基づいて決定される」という技術的事項(以下、「技術的事項A」と呼ぶ。)は発明の詳細な説明に記載されていない。
したがって、発明特定事項Aを要件として含む本願補正発明は、発明の詳細な説明に記載された発明ではない。

この点に関し審判請求人は、平成23年12月1日付け審判請求書および平成24年6月25日付け回答書において、発明の詳細な説明の記載や関連図面の記載等を引用して縷々主張しているので、最初にその主張の当否について個別に検討する。

(1)請求項1、第【0020】、【0037】段落の記載について。

請求人は、請求項1、第【0020】、【0037】段落の記載に関して、審判請求項第3頁第12行?第4頁第1行において、「集められたトランザクションデータは、企業トランザクションデータとビジネスパートナートランザクションデータとを集めることによって生成されるデータのことであり(請求項1)、また、企業トランザクションデータは、内部コンテンツプロバイダにより提供されたトランザクショデータのことであり、ビジネスパートナートランザクションデータは、外部コンテンツプロバイダにより提供される同様のトランザクションデータのことである(段落0037)。
本発明の1つの実施形態では、公衆データ及びプライベートデータを含む統合データが、内部コンテンツプロバイダまたは外部コンテンツプロバイダで生じうるいずれの変更、修正、または更新に従って、双方向または自動的に更新される(段落0020)。その際に、公衆データの一部が、内部コンテンツプロバイダ及び外部コンテンツプロバイダが生成したデータである、集められたトランザクションデータに基づいて決定されることは明らかである。 」と主張している。

しかしながら、請求項1の「集められたトランザクションデータは、企業トランザクションデータとビジネスパートナートランザクションデータとを集めることによって生成されるデータのことであり」の記載、および、段落【0037】の「企業トランザクションデータは、内部コンテンツプロバイダにより提供されたトランザクショデータのことであり、ビジネスパートナートランザクションデータは、外部コンテンツプロバイダにより提供される同様のトランザクションデータのことである。 」の記載は、「企業トランザクションデータ」、「ビジネスパートナートランザクションデータ」と「集められたトランザクションデータ」との関係、および、「企業トランザクションデータ」、「ビジネスパートナートランザクションデータ」と、「内部コンテンツブロバイダ」、「外部コンテンツプロバイダ」との関係を単に述べているのみであって、これらの箇所には「公衆データ」に関する記載はない。
そして、第【0020】段落の「本発明の1つの実施形態では、公衆データ及びプライベートデータを含む統合データが、内部コンテンツプロバイダまたは外部コンテンツプロバイダで生じうるいずれの変更、修正、または更新に従って、双方向または自動的に更新される」の記載の意味するところは、同段落の「双方向の更新とは、ユーザシステム126がクレジットカードの支払い残高をリクエストした場合等に、ユーザシステム126によって、データ記憶装置からデータを引き出すことを指す。例えば、ユーザシステム126にDow Jones Industrial Averageが自動的に提供される場合、ユーザシステム126がリクエストすることなく、データをデータ記憶装置からユーザシステム126へとプッシュすることを指す。」との記載から、内部コンテンツプロバイダまたは外部コンテンツプロバイダで生じうる変更、修正、または更新が、ユーザシステム126からのリクエスト、および、データ記憶装置からのプッシュの二つの方法によって、ユーザシステムに送られうることを単に説明しているのみである。
したがって、第【0020】段落に記載の「内部コンテンツプロバイダ」、および、「外部コンテンツプロバイダ」が、第【0037】段落に記載のように「公衆データ」および「トランザクションデータ」を含んでいるとしても、それらの段落の記載をもって、「公衆データの一部」が、「集められたトランザクションデータ」に基づいて決定される点(技術的事項A)が記載されているということはできない。

(2)第【0031】段落、および、図6の記載について。

請求人は、第【0031】段落の記載に関して、「さらに、段落0031には具体例として、公衆データであるカードメンバーの特典が、カード会社(内部コンテンツプロバイダまたは外部コンテンツプロバイダ)が提供する会員情報(集められたトランザクションデータ)に基づいて決定される態様が記載されている。 」と主張している。

さらに、請求人は、回答書第3頁第1?24行において、「第1の具体例として、段落0031には『図6は、本発明の1つの実施形態に従って作成された個人ウェブサイトの例示的なスクリーンショットである。このスクリーンショットは、公衆データおよびプライベートデータの要素を備えた統合データ204を含む。スクリーンショット上の公衆データは、カードメンバーの特典、および別のカードに対する申し込みに関するさらなる情報を提供する「マイカード(MY CARDS)」というヘッダの下のデータ、ならびに市場指数グラフを示す、「マイファイナンス(MY FINANCE)」というヘッダの下のデータを含む。図6のスクリーンショットのプライベートデータは、現在の残高、最近の支払い、および利用可能なメンバー特典ポイントを含む、「マイアカウント(MY ACCOUNTS)」というヘッダの下のデータを含む。』との記載がある。
即ち、本発明の1つ実施形態では、本発明に係る(クレジットカード会社の)システムは、個人ウェブサイトを作成し、このウェブサイトには、ユーザが所有するクレジットカードに関する情報がヘッダ「マイカード(MY CARDS)」の下に表示され、また、ユーザが保有する資産に関する情報がヘッダ「マイファイナンス(MY FINANCE)」の下に表示される。
このウェブサイトにおいて、ヘッダ「マイカード(MY CARDS)」の下に表示されるカードメンバーの特典および別のカードに対する申し込みに関する情報(公衆データ)は、クレジットカード会社が、ユーザの所有するクレジットカードの情報を照会した結果(企業トランザクションデータ)に基づいて決定されるものである。また、ヘッダ「マイファイナンス(MY FINANCE)」の下に表示される市場指数グラフ(公衆データ)は、証券会社が、ユーザが所有する資産情報を照会した結果(ビジネスパートナートランザクションデータ)に基づいて決定されるものである。」と主張している。

そこで、段落【0031】を検討するに、同段落には「図6は、本発明の1つの実施形態に従って作成された個人ウェブサイトの例示的なスクリーンショットである。」、「スクリーンショット上の公衆データは、カードメンバーの特典、および別のカードに対する申し込みに関するさらなる情報を提供する「マイカード(MY CARDS)」というヘッダの下のデータ、ならびに市場指数グラフを示す、「マイファイナンス(MY FINANCE)」というヘッダの下のデータを含む。」との記載がある。
上記記載に対応する図6の部分には、「マイカード(MY CARDS)」というヘッダの下に、

「Reward Yourself Today!
Discover all the benefits of Membership Rewards(R)
・Learn more about the Membership Rewards(R) program
・Redeem points online

Apply for Another Card
Get a new Card or share the one you have.
・Learn about and apply for another card
・Add an additional Cardmember to your current account」
(当審注:「丸付き文字の R を (R) と記載した。)
(当審訳:今日、あなた自身に報酬を与えよう!
会員報酬の全ての特典を知る。
・会員報酬プログラムについてもっと知る。
・オンラインでポイントを交換する。

追加のカードを申し込む
新しいカードを取得するか、あなたの持っているカードを共有する
・もっと知って、追加のカードを申し込む。
・あなたの現在のアカウントに追加のカード会員を加える。」)

と記載されており、図中に、カード会員の特典の情報へのリンク、ポイントの交換を行うためのリンク、追加のカードについての情報と申し込みへのリンク、アカウントにカード会員を追加するためのリンクなどが表示されていると解釈できるが、これらの情報は、当該ユーザの取引の内容(トランザクションデータ)に関わらず、全ての会員に提示されたとしても不自然ではない案内であるから、段落【0031】、および、図6の「マイカード(MY CARDS)」というヘッダの下の箇所には、「公衆データの一部」が、「集められたトランザクションデータ」に基づいて決定される点(技術的事項A)について記載があるものとはいえない。
また、図6には「マイファイナンス(MY FINANCE)」というヘッダの下に、「Market Index Graphs」(審決注:市場指数グラフ)と記載され、更にその下に、「DJIA」、「NASD」、「SP 500」と記載されたタブを有するグラフが記載されている。これらの情報は、株価の変動を示すために広く用いられている指標をグラフ表示しているものであって、一般的にこれらの指標は当該ユーザの取引内容(トランザクションデータ)に基づいて計算されるものではないから、段落【0031】、および、図6の「マイファイナンス(MY FINANCE)」というヘッダの下の箇所にも、「公衆データの一部」が、「集められたトランザクションデータ」に基づいて決定される点(技術的事項A)について記載があるものとはいえない。

(3)第【0036】段落の記載について。

請求人は、第【0036】段落の記載に関して、「第2の具体例として、段落0036には「特定のクレジットカードの所有者は、そのカードの所有者が計画した所与の都市への旅行中に、そのカードの所有者に対して計画された特別なイベントを示され得る。」との記載がある。
このような機能を実現するためには、クレジットカード会社が、ユーザの所有するクレジットカードの種類やユーザのカード利用実績等を照会した結果(企業トランザクションデータ)が必要であり、旅行会社等に対して、ユーザの旅行先や旅行日程を照会した結果(ビジネスパートナートランザクションデータ)が必要である。本発明に係るシステムは、これらの結果(集められたトランザクションデータ)に基づいて、ユーザに示す特別なイベント(公衆データ)を決定する。 」と主張している。

しかしながら、第【0036】段落の記載を検討すると、最初の文章には「内部コンテンツプロバイダ120および外部コンテンツプロバイダ116は、多くの目的のために、個人プロフィールデータ記憶装置124からの情報を用い得る。」と記載されており、内部コンテンツプロバイダ120および外部コンテンツプロバイダが、個人プロフィールデータ記憶装置124からの情報、すなわち、「個人プロフィールデータ」を利用することついて記載されている。
続く文章には、「例えば、情報は、特定のユーザシステム126に対するマーケティング作業を指示するために用いられ得る。この目的を達成するために、ユーザ情報が、個人プロフィールデータ記憶装置124から取り出され得、特殊な販売促進メッセージ、オファー、および任意の他の適切なマーケティング材料が、その情報に基づいて、ユーザシステム126に提示され得る。」と記載されており、「個人プロフィールデータ」に基づいて「特殊な販売促進メッセージ、オファー、および任意の他の適切なマーケティング材料」が提示されることが記載されている。
さらに、続く文章には、「同様に、内部コンテンツプロバイダ120および外部コンテンツプロバイダ116は、ユーザプロフィール情報に基づいて、ネットワークユーザシステム126に提供する情報をカスタマイズし得る。このカスタマイズは、ユーザシステム126によるコンテンツリクエストに結びつけられた個人化のルールを介して達成され得る。」と記載されており、内部コンテンツプロバイダ120および外部コンテンツプロバイダ116が「ユーザプロフィール情報」(審決注:「個人プロフィール情報」と同じものを意味しているものと認められる。)に基づいて、ネットワークユーザシステム126に提供する情報をカスタマイズすることについて記載されている。
そうすると、回答書において請求人が引用した、続く文章には、「例えば、特定のクレジットカードの所有者は、そのカードの所有者が計画した所与の都市への旅行中に、そのカードの所有者に対して計画された特別なイベントを示され得る。」と記載されているが、「例えば」と記載されていることから、この説明は前の説明の例示と認められ、したがって、上記文章は「個人プロフィール情報」に基づいて内部コンテンツプロバイダおよび外部コンテンツプロバイダの情報を提示することについての一例を示しているものと文脈上解釈できる。
この点、請求人は、回答書において、「このような機能を実現するためには、クレジットカード会社が、ユーザの所有するクレジットカードの種類やユーザのカード利用実績等を照会した結果(企業トランザクションデータ)が必要であり、旅行会社等に対して、ユーザの旅行先や旅行日程を照会した結果(ビジネスパートナートランザクションデータ)が必要である。」と主張しているが、明細書にはこの機能を実現するために「企業トランザクションデータ」、または、「ビジネスパートナートランザクションデータ」を利用することについて何ら記載がなく、また、当該機能を実現するための情報が「個人プロフィール情報」に事前に記憶されている、あるいは必要に応じて入力されるという解釈も可能であるから、第【0036】段落において、「公衆データの一部」が、「集められたトランザクションデータ」に基づいて決定されること(技術的事項A)が記載されていると解することはできない。

(4)第【0042】段落の記載について。

請求人は、第【0042】段落の記載に関して、「段落0042には、「図4は、ウェブサーバ112(図1)を介した情報の例示的なフローをさらに詳細に示すフローチャートである。本発明の1つの実施形態では、情報は、…バックエンドシステム層102から、…メッセージングサービス412のいずれかに転送される。…メッセージングサービス412からの情報は、…公衆データアクセスビーン418…に転送され、次いで、デジタルディスプレイ202上のウェブページに転送される。」との記載があり、また段落0017には「バックエンドシステム層102は、例えば、1つ以上の外部コンテンツプロバイダ116、1つ以上の内部コンテンツプロバイダ120…を適切に備え得る。」との記載がある。
即ち、本発明の一実施形態では、ウェブサーバ112のメッセージングサービス412が、外部コンテンツプロバイダ116及び/または内部コンテンツプロバイダ120から提供されるトランザクションデータ(集められたトランザクションデータ)を受け取り、公衆データアクセスビーン418が、この集められたトランザクションデータに基づいて公衆データを決定することが開示されている。」と主張している。

第【0042】段落には、図4に関して、「バックエンドシステム層102」からの情報が、「メッセージングサービス412」へ転送される点、「メッセージングサービス412」からの情報が「公衆データアクセスビーン418」へ転送され、次いで、「デジタルディスプレイ202上のウェブページ」に転送される点が記載されている。
しかしながら、上記「バックエンドシステム層102」からの情報に「公衆データ」および「トランザクションデータ」が含まれているものと解釈しても、第【0042】段落には、「公衆データの一部」が、「集められたトランザクションデータ」に基づいて決定される点(技術的事項A)について何ら記載がない。

(5)小括

以上によれば、審判請求人が主張する箇所の記載を持って、技術的事項Aが記載されていると言うことはできない。
また、発明の詳細な説明における他の部分の記載を参照しても、技術的事項Aについての開示はない。

したがって、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

3.本件補正についてのむすび

よって、本件補正は、上記改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


第3 本願発明について

本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1の記載は、上記「第2」の「1.」の欄に本件補正前のものとして転記したとおりである。

それを前提に、本願が特許を受けることができるものか否かについて検討するに、当審は、下記の理由により、本願は、特許を受けることができるものではないと判断する。

1.原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないというものであり、その具体的な指摘事項のうちの請求項1に関する部分は、以下のとおりである。

「補正後の【請求項1】には「該取得される公衆データの一部は、該個人データと該集められたトランザクションデータとによって決定される」ことが記載されている。なお、「集められたトランザクションデータ」とは企業トランザクションデータとビジネスパートナートランザクションデータとを集めることにより生成されるものであることが請求項に記載されている。
請求項の上記記載を出願人の釈明及び補正の内容とあわせて読むと、「公衆データの一部」は「個人選好データ及び個人プロフィールデータ」と「トランザクションを実施した際に特定の企業(内部コンテンツプロバイダ)又は特定の企業以外(外部コンテンツプロバイダ)から提供されるデータ」によって決定されることになる。
しかしながら、出願人が補正の根拠として主張する【0020】、【0037】、【図1】、【図3】等を見ても「個人選好データ及び個人プロフィールデータ」に基づいて「公衆データの一部」を決定する記載はない。なお、【0036】には、内部コンテンツプロバイダ及び外部コンテンツプロバイダが個人プロフィールデータからの情報を用いることが記載されているから、「企業トランザクションデータ」及び「ビジネスパートナートランザクションデータ」が個人プロフィールデータに基づくことは記載されているものの、「公衆データの一部」が「個人選好データ及び個人プロフィールデータ」に基づいて決定することは記載されていない。
同様に、「公衆データの一部」は「トランザクションを実施した際に特定の企業(内部コンテンツプロバイダ)又は特定の企業以外(外部コンテンツプロバイダ)から提供されるデータ」によって決定されることについても発明の詳細な説明に記載されていない。
したがって、発明の詳細な説明には「公衆データの一部」が「個人データ」に基づいて決定されることも記載されていないし、「集められたトランザクションデータ」に基づいて決定されることも記載されておらず、さらには、「個人データ及び集められたトランザクション」の両方に基づいて決定されることも記載されていない。

以上より、【請求項1】に係る発明は、「該取得される公衆データの一部は、該個人データと該集められたトランザクションデータとによって決定される」点について、発明の詳細な説明に記載したものでない。」


2.当審の判断

当審も、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」と呼ぶ。)は、「発明の詳細な説明に記載したもの」とはいえないと判断する。

理由は以下のとおりである。

上記原査定の拒絶の理由で取り上げられた本願発明の「該取得される公衆データの一部は、該個人データと該集められたトランザクションデータとによって決定される」という発明特定事項は、上記「第2」の「2.」の欄で取り上げた技術的事項Aを含んでいるから、本願発明についても、上記「第2」の「2.」の欄に記載した理由がそのまま妥当する。

したがって、本願発明も、上記「第2」の「2.」の欄に記載したと同様の理由で発明の詳細な説明に記載したものではない。

よって、本願の特許請求の範囲の請求項1の記載は特許法第36条第6項第1号の要件を満たしていない。


3.むすび

以上のとおり、本願の特許請求の範囲の請求項1の記載は特許法第36条第6項第1号の要件を満たしていないものである。

したがって、本願は、他の拒絶の理由について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-06-04 
結審通知日 2013-06-11 
審決日 2013-06-27 
出願番号 特願2006-162682(P2006-162682)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 千本 潤介  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 稲葉 和生
衣川 裕史
発明の名称 公衆データおよびプライベートデータを統合するシステムおよび方法  
代理人 大倉 昭人  
代理人 杉村 憲司  

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