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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B01J
管理番号 1281234
審判番号 不服2012-11617  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-06-21 
確定日 2013-11-06 
事件の表示 特願2007-118357号「押出し成形された固体触媒及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月15日出願公開、特開2007-296521号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成19年4月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年5月2日 (DE)ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成22年4月6日付けで手続補正書が提出され、平成23年9月12日付けの拒絶理由に対して、平成24年1月18日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年2月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年6月21日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものであり、そして、本願の請求項1に係る発明は、平成22年4月6日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
なお、平成24年1月18日付け手続補正書において、特許請求の範囲の請求項1の記載は補正されなかった。
「【請求項1】
還元剤の存在下に窒素酸化物を分解させるための押出し成形された固体触媒であって、60?87重量%の、Cu、Hf、La、Au、In、V、ランタノイド及び周期表第VIII族の遷移金属からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含有する、イオン交換されたゼオライト、10を超え37重量%までの酸化アルミニウム、及び2?10重量%の無機繊維を含有する活性物質を含有してなる固体触媒。」

2.原査定の拒絶の理由
平成23年9月12日付けの拒絶理由の理由1は、
「1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、
特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
-省略-
(理由1について)
-省略-
・請求項 1-20
・引用文献等 1-7
・備考
[請求項1,2,4,5]
引用文献1には、銅又は鉄をイオン交換して担持したゼオライト80?95.5重量%と、アルミナなどの多孔体20?0.5重量%とを混合後、成形してなる、窒素酸化物のアンモニア還元機能を有する排ガス浄化触媒が記載されており(請求項1-4参照)、触媒が成形性向上剤として無機繊維を含むことが記載されている(段落【0014】、【0023】参照)。
引用文献1に記載の発明において、無機繊維の含有量を本願発明程度に決めることは当業者にとって容易である。
-省略- 」であり、
平成24年2月15日付けの拒絶査定の理由は、
「この出願については、平成23年9月12日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考
・請求項1乃至20について
・引用文献等 1-7
出願人は、平成24年1月18日付け意見書において、以下のように主張する。
-省略-
よって、出願人の主張はいずれも採用できない。
したがって、先の拒絶理由通知で示した理由1は依然として解消していない。」である。

3.引用例記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用した特開平8-290062号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の記載がある。
(a)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は未反応アンモニアの分解活性を有する排ガス浄化硝触媒とその製造方法および該触媒を用いる排ガスの浄化方法に係り、特に触媒の酸化活性をコントロールすることにより、二酸化硫黄(SO_(2))の三酸化硫黄(SO_(3))への転化抑制、アンモニア使用量の増加の抑制、およびひ素などの揮発性酸化物蒸気による未反応アンモニア分解活性の低下防止とを図って高い脱硝性能と未反応アンモニアのリーク量の低減を長期間維持できるようにしたアンモニア(NH_(3))を還元剤とする排ガス浄化触媒とその製造方法および排ガス浄化方法に関する。」

(b)「【0012】具体的には、第1成分としてはあらかじめ公知の方法で調製したTi-V、Ti-Mo、Ti-W、Ti-V-W、Ti-Mo-Vの組み合わせの酸化物、CuまたはFeを担持したゼオライト(モルデナイトなど)などのNO_(X)のNH_(3)による還元活性を有するものを用い、第2成分としてはゼオライト、多孔質シリカ、多孔質アルミナにあらかじめ上記金属元素をイオン交換、含浸などにより担持せしめた組成物を焼成したものを用いる。」

(c)「【0014】また、両成分を混合して触媒体とする方法には、
○の1予め調製した第1成分と、第2成分粉末をそのまま乾式でペレット状に成形する方法、
○の2両成分粉体を所定割合で水の存在下、必要に応じて有機/無機バインダ、無機繊維などを添加して混練して得たペーストをハニカム状に成形したり金属基板に塗布する方法
など従来の脱硝触媒に用いる一般的方法を用いることができる。さらに得られた成形体は必要に応じて乾燥・焼成される。」(審決注:丸数字を「○の数字と表記する。)

(d)「【0017】図3(a)?(c)に本発明の触媒の使用形態を示す。ボイラ1からの排ガスの流路に反応器2、熱交換機3、電気集塵機4、煙突5をこの順に配置する。また反応器2の前流部にはNH_(3)注入ライン6を設ける。そして反応器2内の全部に、もしくは従来の酸化チタン系触媒などの公知の脱硝触媒8と組み合せて一部に本発明の触媒7を用いて脱硝触媒層を形成させる。図3(a)は反応器2内の全部に本発明の触媒7を用いて脱硝触媒層を形成させた例であり、図3(b)は反応器2内に公知の脱硝触媒8の後流側に本発明の触媒7を配置して脱硝触媒層を形成させた例であり、図3(c)は反応器2内に二つの公知の脱硝触媒8の間に本発明の触媒7を配置して脱硝触媒層を形成させた例である。図3(a)?(c)のいずれの場合にも本発明の触媒7の特色であるNH_(3)による窒素酸化物(NO_(X))の還元とその際の未反応アンモニアを窒素と水に酸化分解してリークNH_(3)を低減させる効果が得られることはもとより、従来触媒に比べNH_(3)の消費量を少なくでき、SO_(2)のSO_(3)への添加を低レベルで維持できるので、後流機器への悪影響を小さくできるのみならず、長時間高い触媒活性を維持することができる。」

(e)「【0021】第1、第2成分の混合比率は第2成分中の貴金属担持量により最適値が異なるが、第2成分/第1成分比(以下第2成分/第1成分比)として20/80?0.5/99.5望ましくは10/90?1/99(重量比)の範囲が適当である。」

(f)「【0023】得られたペースト状触媒は無機繊維製網状基材、溶射などにより粗面化した金属基板などに塗布され板状触媒に成形されるか、押出成形機により柱状あるいはハニカム状に成形される。成形体は乾燥後硫酸塩が硫酸塩として残存する温度、通常450℃?550℃で焼成して用いられる。」

(g)上記(b)(e)の記載より、引用例には、「ゼオライト(第1成分)を80?99.5重量に、多孔質アルミナ(第2成分)を0.5?20重量にする」ことが記載されているということができる。

上記(a)ないし(f)の記載事項及び上記(g)の検討事項より、引用例には
「アンモニアの存在下に窒素酸化物を還元させるための押出成形された『ハニカム状の成形体』であって、80?99.5重量の、CuまたはFeを担持したゼオライト、0.5?20重量の、CuまたはFeを担持した多孔質アルミナ、及び無機繊維を含有する、CuまたはFeを担持した『ハニカム状の成形体』。」の発明(以下、「引用例記載の発明」という。)が記載されているものと認める。

4.対比・判断
本願発明と引用例記載の発明とを対比する。
○引用例記載の発明の「アンモニア」、「還元させる」、「押出成形された」、「『ハニカム状の成形体』」、「CuまたはFeを担持した多孔質アルミナ」、「CuまたはFeを担持した『ハニカム状の成形体』」は、
本願発明の「還元剤」、「分解させる」、「押出し成形された」、「固体触媒」、「酸化アルミニウム」、「活性物質を含有してなる固体触媒」にそれぞれ相当する。

○引用例記載の発明の「CuまたはFeを担持したゼオライト」と、本願発明の「Cu、Hf、La、Au、In、V、ランタノイド及び周期表第VIII族の遷移金属からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含有する、イオン交換されたゼオライト」とは、「CuまたはFe(周期表第VIII族の金属)を含有する、イオン交換されたゼオライト」という点で共通する。

○引用例記載の発明の「80?99.5重量の」と、本願発明の「60?87重量%の」とは、「所定重量の」という点で共通する。

○引用例記載の発明の「0.5?20重量の、」と、本願発明の「10を超え37重量%までの」とは、「所定重量の」という点で共通する。

上記より、本願発明と引用例記載の発明とは、
「還元剤の存在下に窒素酸化物を分解させるための押出し成形された固体触媒であって、所定重量の、CuまたはFeを含有する、イオン交換されたゼオライト、所定重量の酸化アルミニウム、及び無機繊維を含有する活性物質を含有してなる固体触媒。」という点で共通し、以下の点で相違している。
<相違点>
本願発明では、「60?87重量%の」ゼオライト、「10を超え37重量%までの」酸化アルミニウム、及び「2?10重量%の」無機繊維であるのに対して、
引用例記載の発明では、「80?99.5重量の」ゼオライト、「0.5?20重量の」多孔質アルミナ(酸化アルミニウム)、及び無機繊維である点。

<相違点>について検討する。
引用例記載の発明の「80?99.5重量の」ゼオライト、「0.5?20重量の」酸化アルミニウム、及び無機繊維について、無機繊維の重量は、当然、押出し成形による固体触媒(ハニカム状の成形体)の製造を有意に達成する適切な重量になるべきものである。
そして、原査定の拒絶の理由に引用文献3として引用した特開平7-53208号公報には、
「【0020】
【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は何らこれら実施例に限定されるものではない。
〔参考例1〕特公昭48-32573号に記載されている方法に従って、発酵液をアルカリ処理し、遠心分離し、次いで、酸にて中和して、カードラン溶液を得た。このカードラン溶液を脱塩濃縮し、スプレードライヤーにて乾燥、濃縮して、カードランを得た。
〔実施例1〕シリカ/アルミナモル比31のMFI型ゼオライト粉末(水澤化学工業(株)製,MIZUKASIEVES EX-122,比表面積322m^(2)/g,平均粒子径 4.6μm)350g(固形分)に水酸化アルミニウム(水澤化学工業(株)製,微粉アルミナ;ベーマイト,比表面積220m^(2)/g,平均粒子径 4.0μm)350g(固形分)を加え、更に、焼結剤としてベントナイト粉末(水澤化学工業(株)製 ベレクレイ)50g(固形分)及び木節粘土200g(固形分)と、ガラス繊維(日本板硝子(株)製,マイクログラスチョップドストランド(RESO15)50gとを加え、さらにカードラン(武田薬品工業(株)製,Piopoly(商品名)-P)20.0g及びメチルセルローズ(信越化学工業(製)メトローズ,SM・3000)40.0g,ポリエチレングリコール(三洋化成工業(株)製,マクロゴール 6000)10.0gを加えこの混合物を卓上二軸混練機で約1時間乾式混合した。次いで、この混合物に蒸留水を水総量が620gとなるように加えて、減圧下(約100?700mmHg)に約1時間、混練した。この混練において、混練機のジャケットには10℃の冷水を循環させ、混練物を冷却した。このようにして得られた混練物をポリエチレン袋に入れ、3日間、室温(約23℃)で熟成した。次に、これを押出成形機(本田鉄工社製DE-35型)に装填し、減圧下に混練して、ゼオライトアルミナ成形用混練固体組成物を得た。次に、ハニカム成形用金型を上記押出成形機に装着し、これを用いて、上記ゼオライト成形用混練固体組成物を一辺30mmの正方形でセル数300個/平方インチのハニカム成形物に成形した。これを長さ5cmに切断して、電子レンジで30秒加熱し、その後、115℃の乾燥機内で約2時間乾燥した。この後、得られた乾燥成形物を電気炉に入れ、700℃で2時間焼成して、開口率63%のゼオライト-アルミナハニカム焼成物を得た。」
「【0022】〔実施例3〕実施例2で調製した銅担持、MFIゼオライト-アルミナハニカム触媒を、20mmφ×29mmH(容積9.1ml)に切り出し、これを内径約21mmφのステンレス製反応管に充填した。次に、以下に示すガス組成のモデルガスを空間速度44,000Hr^(-1)、反応温度350℃で上記触媒層を通過させ、反応前後のガス濃度をガラスクロマトグラフィー及び化学発光式NOX計で測定し、窒素酸化物の除去率を算出した。窒素酸化物の除去率の結果を〔表1〕に示す。
-省略- 」等の記載があり、これらからして、引用文献3には、「窒素酸化物を分解させるための押出成形(押出し成形)されたゼオライト-アルミナハニカム触媒(固体触媒)であって、350gのイオン交換されたゼオライト、350gの水酸化アルミニウム(微粉アルミナ;ベーマイト)、50gのガラス繊維(無機繊維)、20.0gのカードラン(β-1,3-グルカン)などを含有するCu(活性物質)を含有してなるゼオライト-アルミナハニカム触媒。」の発明(以下、「引用文献3記載の発明」という。)が記載されていると認められ、これは、「押出し成形された固体触媒であって、イオン交換されたゼオライト、酸化アルミニウム、無機繊維を含有する活性物質を含有してなる固体触媒。」という点で本願発明(引用例記載の発明)と軌を一にするものであり、一方、ゼオライトと酸化アルミニウムとの比が1(350/350)であり、カードラン(β-1,3-グルカン)などを含有している点で本願発明(引用例記載の発明)とは相違している。
しかしながら、上記で示したガラス繊維(無機繊維)の50gは、当然、ゼオライト-アルミナハニカム触媒(固体触媒)の製造を達成し得る適切な重量であることは明らかであり、そして、ゼオライト350gと酸化アルミニウム350gの合計に対する無機繊維50gの割合は、7重量%(100×50/700)であり、これは、上記相違があるとしても、引用例記載の発明において、無機繊維の重量がどれくらいになるかの検討における参考になり得るものであるというべきである。
そうすると、引用例記載の発明の「80?99.5重量の」ゼオライト、「0.5?20重量の」酸化アルミニウム、及び無機繊維について、無機繊維の重量は、押出し成形による固体触媒(ハニカム状の成形体)の製造を有意に達成すべき適切な重量として、引用文献3記載の発明の上記事項を参考にした上で、当業者であれば適宜決定する設計事項であり、この際、引用例記載の発明の「80?99.5重量の」ゼオライト、「0.5?20重量の」酸化アルミニウムは無機繊維の重量を考慮しておらず、本願発明の「60?87重量%の」ゼオライト、「10を超え37重量%までの」酸化アルミニウムは無機繊維の重量を考慮している点で両者の数値を単純に対比できないとしても、この数値が重複していることから、引用例記載の発明の「80?99.5重量の」ゼオライト、「0.5?20重量の」酸化アルミニウム、及び無機繊維が、本願発明の「60?87重量%の」ゼオライト、「10を超え37重量%までの」酸化アルミニウム、及び「2?10重量%の」無機繊維の範囲内になる場合があることは、当業者であれば十分に推認し得ることであるということができる。
したがって、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、引用例記載の発明に基いて当業者であれば容易になし得ることである。

そして、本願発明の「固体触媒を押出し成形により製造することができる等」の作用効果は、引用例記載の発明に基いて当業者であれば十分に予測し得るものである。
よって、本願発明は、原査定の拒絶の理由と同じく、引用例(引用文献1)記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

次に、請求人は、審判請求書において、「しかしながら、引用文献1において、無機繊維の使用比率は、実施例1において20.9重量%である・・・第1成分19.8kg、第2成分200g及び無機繊維5.3kgから、(5.3/(19.8+0.2+5.3))=20.9%。
この無機繊維の使用比率は、本願発明における無機繊維の含有量2?10重量%とは、かけ離れており、この範囲を示唆するものではない。」との主張をしているので、この点について検討する。
本願明細書には、実施例1に関して、「【0034】実施例1
メタチタン酸スラリ(TiO_(2)含有量:30wt%、SO_(4)含有量:8wt%)67kgにパラタングステン酸アンモニウム((NH_(4))_(10)H_(10)・W_(12)O_(46)・6H_(2)O)を2.41kgおよびメタバナジン酸アンモン0.63kgとを加えて加熱ニーダを用いて水を蒸発させながら混練し水分約36%のペーストを得た。これを3φの柱状に押し出し造粒後、流動層乾燥機で乾燥し、次に大気中550℃で2時間焼成した。得られた顆粒をハンマーミルで1μm以下の粒径が60%以上になるように粉砕して第1成分である脱硝触媒粉末を得た。このときの組成はV/W/Ti=2/5/92(原子比)である。
【0035】一方、塩化白金酸(H_(2)[PtC_(16)]・6H_(2)O)0.332gと塩化イリジウム(IrCl_(4))0.217gとを水1リットルに溶解したものに、高表面積微粒シリカ(富田製薬(株):マイコンF)500gを加え、砂浴上で蒸発乾固してPtを担持した。これを180℃で2時間乾燥後、500℃で2時間焼成し、0.025wt%Pt-0.025wt%Ir-シリカを調製して第2成分にした。このときのIr/Pt重量比は1である。
【0036】これとは別に繊維径9μmのEガラス製繊維1400本の捻糸を10本/インチの粗さで平織りした網状物にチタニア40%、シリカゾル20%、ポリビニールアルコール1%のスラリーを含浸し、150℃で乾燥して剛性を持たせ触媒基材を得た。
【0037】第1成分19.8kgと第2成分200gとに、シリカ・アルミナ系無機繊維5.3kg、水17kgを加えてニーダで混練し、触媒ペーストを得た。上記基材2枚の間に調製したペースト状触媒混合物を置き、加圧ローラを通過させることにより基材の編目間および表面に触媒を圧着して厚さ約1mmの板状触媒を得た。得られた触媒は、180℃で2時間乾燥後、大気中550℃で2時間焼成した。本触媒中の第1成分と第2成分の第2成分/第1成分比(重量比)は1/99で有り、貴金属含有量は触媒基材・無機繊維を除いて5ppmに相当する。」との記載があり、請求人が主張するように、無機繊維の使用比率は20.9%であって、本願発明の2?10重量%とかけ離れているものの、この実施例1は、上記で示されているように「繊維径9μmのEガラス製繊維1400本の捻糸を10本/インチの粗さで平織りした網状物にチタニア40%、シリカゾル20%、ポリビニールアルコール1%のスラリーを含浸し、150℃で乾燥して剛性を持たせ(た)触媒基材」の「編目間および表面に触媒を圧着して厚さ約1mmの板状触媒」にしたものであって、この板状触媒は、明らかに「押出し成形体」ではなく、そうである以上、引用例記載の発明の実施例1は、本願発明の「押出し成形された固体触媒」との対比・判断の対象になるものではないので、請求人の上記主張を採用することはできない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
それゆえ、本願は、特許請求の範囲の請求項2ないし20に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-06-07 
結審通知日 2013-06-11 
審決日 2013-06-24 
出願番号 特願2007-118357(P2007-118357)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡田 隆介  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 松本 貢
真々田 忠博
発明の名称 押出し成形された固体触媒及びその製造方法  
代理人 園田 吉隆  
代理人 小林 義教  

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