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審決分類 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する C09D
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する C09D
管理番号 1281637
審判番号 訂正2013-390107  
総通号数 169 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-01-31 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2013-07-25 
確定日 2013-10-18 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第4448649号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4448649号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 
理由 1.事件の経緯
本件訂正審判に係る特許第4448649号の経緯は次のとおりである。
平成14年8月9日 特願2002-233978号の出願
(優先日:平成13年8月10日)
平成15年6月6日 出願公開(特開2003-160750号)
平成22年1月7日 特許査定
平成22年1月29日 本件特許権の設定登録
平成22年4月14日 特許掲載公報発行
平成25年7月25日付け 本件訂正審判の請求
平成25年9月12日付け 手続補正書(訂正審判請求書)の提出
平成25年10月2日付け 上申書の提出

2.請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第4448649号の特許請求の範囲、及び、発明の詳細な説明を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであり、より詳細には以下のとおりである。
訂正事項1:特許請求の範囲の請求項1に記載の「〔前記色相角(∠H°)は、∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+180(a^(*)<0の場合)、又は∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+360(a^(*)>0の場合)により求められる。a^(*)及びb^(*)は、CIELAB色空間において定義される知覚色度指数を表す。〕」を、
「〔前記色相角(∠H°)は、∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+180(a^(*)<0の場合)、∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+360(a^(*)>0かつb^(*)<0の場合)、又は∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))(a^(*)>0かつb^(*)≧0の場合)により求められる。a^(*)及びb^(*)は、CIELAB色空間において定義される知覚色度指数を表す。〕」に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2?31も同様に訂正する。

訂正事項2:明細書の[0007]に記載の「〔前記色相角(∠H°)は、∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+180(a^(*)<0の場合)、又は∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+360(a^(*)>0の場合)により求められる。a^(*)及びb^(*)は、CIELAB色空間において定義される知覚色度指数を表す。〕」を、
「〔前記色相角(∠H°)は、∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+180(a^(*)<0の場合)、∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+360(a^(*)>0かつb^(*)<0の場合)、又は∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))(a^(*)>0かつb^(*)≧0の場合)により求められる。a^(*)及びb^(*)は、CIELAB色空間において定義される知覚色度指数を表す。〕」に訂正する。

訂正事項3:明細書の[0014]に記載の「〔前記色相角(∠H°)は、∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+180(a^(*)<0の場合)、又は∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+360(a^(*)>0の場合)により求められる。a^(*)及びb^(*)は、CIELAB色空間において定義される知覚色度指数を表す。〕」を、
「〔前記色相角(∠H°)は、∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+180(a^(*)<0の場合)、∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+360(a^(*)>0かつb^(*)<0の場合)、又は∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))(a^(*)>0かつb^(*)≧0の場合)により求められる。a^(*)及びb^(*)は、CIELAB色空間において定義される知覚色度指数を表す。〕」に訂正する。

訂正事項4:明細書の[0115]に記載の「色相角∠H°[=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+180(a^(*)<0の場合)、tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+360(a^(*)>0の場合)]」を、
「色相角∠H°[=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+180(a^(*)<0の場合)、tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+360(a^(*)>0かつb^(*)<0の場合)、∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))(a^(*)>0かつb^(*)≧0の場合)]」に訂正する。

訂正事項5:請求項4?11、14、15、22?24、26、28?31を削除する。

3.当審の判断
(1)訂正事項1?4について
ア.訂正の目的について(特許法第126条第1項ただし書)
訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1及びそれを直接的ないし間接的に引用する請求項2?31において、色相角(∠H°)について、「a^(*)<0の場合」と「a^(*)>0の場合」の2通りに分けて記載していたところを、訂正後の特許請求の範囲の請求項1において、「a^(*)>0の場合」を「a^(*)>0かつb^(*)<0の場合」と「a^(*)>0かつb^(*)≧0の場合」との2通りに分け、全体で「a^(*)<0の場合」、「a^(*)>0かつb^(*)<0の場合」、「a^(*)>0かつb^(*)≧0の場合」の3通りに分けて記載するように訂正するものである。

ここで、色相角∠H°と、CIELAB色空間において定義される知覚色度指数a^(*)、b^(*)とが、以下の図1で表される関係にあり、色相角∠H°の大きさが、0?90(第1象限)、90?180(第2象限)、180?270(第3象限)、270?360(第4象限)のいずれの範囲にあるかによって、
・第1象限(∠H°=0?90、a^(*)>0、b^(*)≧0)の場合は、
∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))。
(tan^(-1)(b^(*)/a^(*))は、0?90の値をとるため、補正不要。)
・第2象限(∠H°=90?180、a^(*)<0、b^(*)≧0)の場合は、
∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+180。
(tan^(-1)(b^(*)/a^(*))は、-90?0の値をとるため、第2象限の∠H°(90?180)に補正するために180の加算が必要。)
・第3象限(∠H°=180?270、a^(*)<0、b^(*)<0)の場合は、
∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+180。
(tan^(-1)(b^(*)/a^(*))は、0?90の値をとるため、第3象限の∠H°(180?270)に補正するために180の加算が必要。)
・第4象限(∠H°=270?360、a^(*)>0、b^(*)<0)の場合は、
∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+360。
(tan^(-1)(b^(*)/a^(*))は、-90?0の値をとるため、第4象限の∠H°(270?360)に補正するために360の加算が必要。)
と表されることは、技術常識と認められる(平成25年10月2日付け上申書の図2及びそれに関連する記載も参照のこと。)。

よって、色相角(∠H°)は、補正するために加算する角度が、同じ180°である第2象限の場合と第3象限の場合とをまとめて1つの式としたうえで、訂正事項1の記載の順番にならって表すと、次の式で表されることが、技術常識からみて、明らかと認められる。

・a^(*)<0(第2、3象限)の場合
∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+180
・a^(*)>0、b^(*)<0(第4象限)の場合
∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+360
・a^(*)>0、b^(*)≧0(第1象限)の場合
∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))

そうすると、訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1及びそれを直接的ないし間接的に引用する請求項2?31において、a^(*)>0、b^(*)≧0(第1象限)の場合が、a^(*)>0、b^(*)<0(第4象限)の場合と、まとめて、「∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+360」と、あたかも360の加算が必要であるかのように誤って記載されていたところを、訂正後の特許請求の範囲の請求項1において、「∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))」と、上記の技術常識と整合するように記載して、上記請求項における色相角(∠H°)についての記載全体を、
「〔前記色相角(∠H°)は、
∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+180(a^(*)<0の場合)、
∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+360(a^(*)>0かつb^(*)<0の場合)、又は
∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))(a^(*)>0かつb^(*)≧0の場合)
により求められる。a^(*)及びb^(*)は、CIELAB色空間において定義される知覚色度指数を表す。〕」
とする訂正事項であって、誤記の訂正に該当するものと認められる。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものと認められる。

また、訂正事項2?4は、明細書の発明の詳細な説明中にも、訂正事項1と同様な誤記があったため、それらについても同様に訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものと認められる。

イ.新規事項の追加、特許請求の範囲の拡張・変更、独立特許要件について(特許法第126条第5?7項)
上記ア.に記載したとおり、色相角(∠H°)がa^(*)>0、b^(*)≧0(第1象限)の場合∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))と表されることは技術常識であり、当業者にとって明らかなことと認められから、訂正事項1?4は、何ら新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付された明細書に記載された事項の範囲内においてしたものであって、特許法第126条第5項の規定に適合するものと認められる。
また、上記ア.に記載したとおりの誤記の訂正に該当すると認められる訂正事項1?4が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとは認められないから、訂正事項1?4は、特許法第126条第6項の規定に適合するものと認められる。
そして、訂正事項1?4によって訂正された本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及びそれを引用する各請求項に記載された発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとは認められないから、訂正事項1?4は、特許法第126条第7項の規定に適合するものと認められる。

ウ.まとめ
よって、訂正事項1?4は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とし、かつ同条第5項?7項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前の特許請求の範囲の請求項4?11、14、15、22?24、26、28?31を削除する訂正事項であって、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
そして、そのような特許請求の範囲の請求項を削除する訂正が、何ら新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付された明細書に記載された事項の範囲内においてしたものであって、特許法第126条第5項の規定に適合するものであること、及び、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法第126条第6項の規定に適合するものであることは明らかなことと認められる。
(なお、訂正事項5は、請求項を削除する訂正事項であって、訂正後の各請求項の記載は何ら変更されていないものであるから、独立特許要件について判断する必要のないものである。)
よって、訂正事項5は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、かつ同条第5項、6項の規定に適合するものである。

4.むすび
以上のとおりであって、本件訂正審判の請求に係る訂正事項はいずれも、特許法第126条第1項ただし書第1号ないし2号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項?7項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
インクセット及びインクジェット記録方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、記録媒体上でのCIELAB色空間において定義される色相角∠H°が約80?約110°の範囲であるイエローインク、該色相角∠H°が約330?約360°の範囲であるマゼンタインク及び該色相角∠H°が約230?約260°の範囲であるシアンインクの3色のインクと、下記インク(A)及び下記インク(B)と、反応剤を含有する反応液とを備え、
インク(A);前記色相角∠H°が約0?約80°の範囲であるインク
インク(B);前記色相角∠H°が約260?約330°の範囲であるインク
〔前記色相角(∠H°)は、∠H°=tan-1(b*/a*)+180(a*<0の場合)、∠H°=tan-1(b*/a*)+360(a*>0かつb*<0の場合)又は∠H°=tan-1(b*/a*)(a*>0かつb*≧0の場合)により求められる。a*及びb*は、CIELAB色空間において定義される知覚色度指数を表す。〕
前記インク(A)及び前記インク(B)に含有される色材が顔料であり、
前記インク(A)に含有される前記顔料が、C.I.ピグメントオレンジ62並びにC.I.ピグメントレッド49:2,112,149,177,178,188,255及び264からなる群から選ばれる1種又は2種以上であり、
前記前記インク(B)に含有される前記顔料が、C.I.ピグメントブルー60並びにC.I.ピグメントバイオレット19,23,32,36及び38からなる群から選ばれる1種又は2種以上であり、
前記シアンインクに含有される色材が顔料であり、該シアンインクに含有される前記顔料が、C.I.ピグメントブルー1,2,3,15:3,15:4,15:34,16,22,60並びにC.I.バットブルー4及び60からなる群から選ばれる1種又は2種以上であるインクセット。
【請求項2】
前記インク(A)及び前記インク(B)それぞれの明度が、前記マゼンタインク及び前記シアンインクそれぞれの明度よりも低く、かつ、前記インク(A)及び前記インク(B)それぞれの彩度が、前記マゼンタインク及び前記シアンインクそれぞれの彩度よりも高い、請求項1に記載のインクセット。
【請求項3】
前記イエローインクは400nm?500nmに吸収面積が30abs・nm以上、350abs・nm以下である吸収スペクトルを有し、前記マゼンタインクは500nm?600nmに吸収面積が20abs・nm以上、200abs・nm以下である吸収スペクトルを有し、前記シアンインクは600nm?700nmに吸収面積が50abs・nm以上、400abs・nm以下である吸収スペクトルを有し、
前記インク(A)は、その500nm?600nmにおける吸収面積が、前記マゼンタインクの500nm?600nmにおける吸収面積と同等以上であり、
前記インク(B)は、その500nm?600nmにおける吸収面積が、前記シアンインクの600nm?700nmにおける吸収面積と同等以上である、請求項1記載のインクセット。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
(削除)
【請求項11】
(削除)
【請求項12】
前記インク(A)の彩度C*Aが、前記イエローインクの彩度C*Y及び/又は前記マゼンタインクの彩度C*Mよりも高い請求項1?11の何れかに記載のインクセット。
【請求項13】
前記インク(B)の彩度C*Bが、前記マゼンタインクの彩度C*M及び/又は前記シアンインクの彩度C*Cよりも高い請求項1?12の何れかに記載のインクセット。
【請求項14】
(削除)
【請求項15】
(削除)
【請求項16】
前記インク(A)の記録媒体上での色相範囲が、a*=約60?約80、b*=約20?約80の範囲、又はa*=約30?約60、b*=約60?約100の範囲である請求項1?15の何れかに記載のインクセット。
【請求項17】
前記インク(B)の記録媒体上での色相範囲が、a*=約50?約70、b*=約-70?約-50の範囲、又はa*=約40?約60、b*=約-80?約-60の範囲である請求項1?16の何れかに記載のインクセット。
【請求項18】
前記イエローインクの記録媒体上での色相範囲がa*=約-30?約20、b*=約70?約130の範囲であり、前記マゼンタインクの該色相範囲がa*=約60?約90、b*=約-40?約-10の範囲であり、前記シアンインクの該色相範囲がa*=約-50?約-20、b*=約-70?約-40の範囲である請求項1?17の何れかに記載のインクセット。
【請求項19】
前記各インクに含有される色材が顔料である請求項1?18の何れかに記載のインクセット。
【請求項20】
前記イエローインクに含有される前記顔料が、C.I.ピグメントイエロー1,2,3,12,13,14,16,17,73,74,75,83,93,95,97,98,109,110,114,128,129,138,139,147,150,151,154,155,180及び185からなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求項19記載のインクセット。
【請求項21】
前記マゼンタインクに含有される前記顔料が、C.I.ピグメントレッド5,7,12,48(Ca),48(Mn)57(Ca),57:1,112,122,123,168,184,202及び209並びにC.I.ピグメントバイオレット19からなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求項19又は20に記載のインクセット。
【請求項22】
(削除)
【請求項23】
(削除)
【請求項24】
(削除)
【請求項25】
前記反応剤が、多価金属塩、ポリアリルアミン及びその誘導体、ポリアクリルアミド及びその誘導体、ポリエチレンイミンからなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求項1?24の何れかに記載インクセット。
【請求項26】
(削除)
【請求項27】
請求項1?26の何れかに記載のインクセットを用いて、記録媒体に文字及び/又は画像を形成するインクジェット記録方法。
【請求項28】
(削除)
【請求項29】
(削除)
【請求項30】
(削除)
【請求項31】
(削除)
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも、イエロー、マゼンタ及びシアンの3色のインクと、これら3色以外の特色インクと、反応剤を含有する反応液とを備えたインクセットに関し、特に顔料インクセット及びこれを用いたインクジェット記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
顔料インクは、一般に、染料インクに比して印刷物の画像堅牢性に優れており、サインやディスプレイ市場向けのワイドフォーマットのカラーインクジェット記録用インク等、その特性を活かした種々の用途において使用されている。このカラーインクジェット記録においては、通常、減法混色の3原色であるイエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の3色の水性顔料インクを備えた3色インクセット、あるいはこれにブラック(K)を加えた4色インクセットを用いて種々の色相を表現することが行われている。また、これら3色又は4色インクセットよりも色再現範囲の広いインクセットとして、YMCKインクに加えて、オレンジやグリーン等の色の水性インクを備えたインクセットも提案されている。
【0003】
また、このような従来のインクセットを用いたインクジェット記録方法の改良に関して、インクを凝集させる作用を有する反応剤を含有した反応液を用いたインクジェット記録方法、いわゆる二液(インクと反応液)を用いたインクジェット記録方法が知られている(例えば、特開平9-286940号公報、特開平10-120956号公報及びWO99/05230号公報等参照)。この二液を用いたインクジェット記録方法によれば、該反応液とインクとが記録媒体上で接触することにより、該反応剤が、顔料等のインク成分の分散状態を破壊し、該インク成分を凝集させて該記録媒体上に凝集物を形成するので、色濃度が高く、滲みやムラの少ない高品位の印刷物を得ることができる。この二液を用いたインクジェット記録方法は、従来のインクジェット記録方法では不十分であった、普通紙に対する十分な発色性を実現できるので、記録媒体として普通紙を用いた場合に特に有効である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の二液を用いたインクジェット記録方法は、水性インクに加えて更に水性の前記反応液を打ち込むため、該反応液を備えていない通常のインクセットを用いたインクジェット記録方法に比して、記録媒体への単位面積当たりの水性液の打ち込み量が多い。一方、記録媒体として用いられる普通紙は、多量の水分が接触すると、その接触部分におけるセルロース繊維間の水素結合が破壊され、該接触部分が伸長して紙シワ等の変形を起こす性質を有する。そのため、前記の二液を用いたインクジェット記録方法は、記録媒体として普通紙を用いた場合、該普通紙が紙シワ等の変形を起こすという問題があった。紙シワは、特にインクの打ち込み量が多くなる2次色以上の印刷部分(混色部分)で悪化し、印刷物の画質を著しく低下させる。紙シワの問題は、インクや反応液の打ち込み量を減らすことで解決することができるが、打ち込み量を減らすと発色性が低下してしまう。
【0005】
従って、本発明の目的は、記録媒体として普通紙を用いても、紙シワ等の変形を生じさせることなく、色濃度が高く、滲みやムラの少ない高品位の印刷物の提供が可能なインクセット及び該インクセットを用いたインクジェット記録方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、YMCの3色の顔料インクと、反応剤を含有する反応液とを備えるインクセットを用いた、いわゆる二液を用いたインクジェット記録方法について種々検討した結果、これらに加えて更に特色インクとして、記録媒体上でのCIELAB色空間において定義される色相角∠H°が特定の範囲にある顔料インクを2種備えた顔料インクセットを用い、2次色以上の混色部分を形成する場合は、該特色インクを使用することにより、普通紙に対して紙シワを生じさせるような多量のインクを打ち込むことなく、高発色の文字及び/又は画像を形成できることを知見した。
【0007】
本発明は、前記知見に基づきなされたもので、少なくとも、記録媒体上でのCIELAB色空間において定義される色相角∠H°が約80?約110°の範囲であるイエローインク、該色相角∠H°が約330?約360°の範囲であるマゼンタインク及び該色相角∠H°が約230?約260°の範囲であるシアンインクの3色のインクと、下記インク(A)及び/又は下記インク(B)と、反応剤を含有する反応液とを備えるインクセットを提供することにより前記目的を達成したものである。
インク(A);前記色相角∠H°が約0?約80°の範囲であるインク。
インク(B);前記色相角∠H°が約260?約330°の範囲であるインク。
〔前記色相角(∠H°)は、∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+180(a^(*)<0の場合)、又は∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+360(a^(*)>0かつb^(*)<0の場合)又はH°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))(a^(*)>0かつb^(*)≧0の場合)により求められる。a^(*)及びb^(*)は、CIELAB色空間において定義される知覚色度指数を表す。〕
尚、本発明において、記録媒体上でのCIELAB色空間というときの「記録媒体」としては、PM写真紙(セイコーエプソン(株)製)のような光沢性記録媒体が使用される。
【0008】
また、本発明は、400nm?500nmに吸収面積が30abs・nm以上、350abs・nm以下である吸収スペクトルを有するイエローインクと、500nm?600nmに吸収面積が20abs・nm以上、200abs・nm以下である吸収スペクトルを有するマゼンタインクと、600nm?700nmに吸収面積が50abs・nm以上、400abs・nm以下である吸収スペクトルを有するシアンインクと、下記インク(A)及び/又は下記インク(B)と、反応剤を含有する反応液とを備えるインクセットを提供するものである。
インク(A):500nm?600nmにおける吸収面積が、前記マゼンタインクの500nm?600nmにおける吸収面積と同等以上であるインク
インク(B):500nm?600nmにおける吸収面積が、前記シアンインクの600nm?700nmにおける吸収面積と同等以上であるインク
【0009】
また、本発明は、400nm?500nmに吸収面積が30abs・nm以上、350abs・nm以下である吸収スペクトルを有するイエローインクと、500nm?600nmに吸収面積が20abs・nm以上、200abs・nm以下である吸収スペクトルを有するマゼンタインクと、600nm?700nmに吸収面積が50abs・nm以上、400abs・nm以下である吸収スペクトルを有するシアンインクと、下記インク(A)及び/又は下記インク(B)と、反応剤を含有する反応液とを備えるインクセットを提供するものである。
インク(A):インク(A)の400nm?500nmにおける吸収面積が、当該インク(A)の500nm?600nmにおける吸収面積の0.5倍以上、2.0倍以下であるインク
インク(B):インク(B)の500nm?600nmにおける吸収面積が、当該インク(B)の600nm?700nmにおける吸収面積の0.5倍以上、5.0倍以下であるインク
【0010】
また、本発明は、前記インクセットを用いて、記録媒体に文字及び/又は画像を形成するインクジェット記録方法を提供することにより前記目的を達成したものである。
【0011】
また、本発明は、前記インクセットを用いて、記録媒体に文字及び/又は画像を形成するインクジェット記録方法であって、前記インクと前記反応液とが前記記録媒体上で接触するようにそれぞれの液滴を吐出させ、且つ複数色の前記インクの液滴それぞれを前記記録媒体上で混合して、該記録媒体上に1色又は2色以上の混色部分を形成する場合、前記インク(A)及び前記インク(B)以外のインクの少なくとも1種と、該インク(A)及び/又は該インク(B)とを用いるインクジェット記録方法を提供することにより前記目的を達成したものである。
【0012】
また、本発明は、前記インクジェット記録方法により文字及び/又は画像を形成された印刷物を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、先ず、本発明のインクセットについて、その好ましい実施形態に基づき説明する。
本実施形態のインクセットは、イエロー、マゼンタ及びシアンの3色のインクと、インク(A)及びインク(B)の2色の特色インクと、反応剤を含有する反応液とからなる。
【0014】
前記特色インクの一つであるインク(A)は、記録媒体上でのCIELAB色空間において定義される色相角∠H°が約0?約80°の範囲であるインクである。色相角∠H°は、∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+180(a^(*)<0の場合)、∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+360(a^(*)>0かつb^(*)<0の場合)又は∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))(a^(*)>0かつb^(*)≧0の場合)により求められる。a^(*)及びb^(*)は、CIELAB色空間において定義される知覚色度指数を表す。
【0015】
前記インク(A)は、前記イエローインクのI_(Y)重量と前記マゼンタインクのJ_(1M)重量とを記録媒体上で混合して得られる色相角∠H°_((Y+M))の彩度C^(*)_((Y+M))を、(I_(Y)+J_(1M))重量未満の使用量で得られるインクであることが好ましい。彩度C^(*)は、C^(*)={(a^(*))^(2)+(b^(*))^(2)}^(1/2)により求められる。
【0016】
また、前記インク(A)は、その彩度C^(*)_(A)が、前記イエローインクの彩度C^(*)_(Y)及び/又は前記マゼンタインクの彩度C^(*)_(M)よりも高い(C^(*)_(A)>C^(*)_(Y)及び/又はC^(*)_(A)>C^(*)_(M))ことが好ましい。前記インク(A)の記録媒体上での彩度C^(*)_(A)としては、80以上が好ましく、90以上が更に好ましい。
【0017】
また、前記インク(A)の記録媒体上での色相範囲は、a^(*)=約60?約80、b^(*)=約20?約80の範囲、又はa^(*)=約30?約60、b^(*)=約60?約100の範囲であることが好ましい。
【0018】
前記特色インクの他の一つであるインク(B)は、記録媒体上でのCIELAB色空間において定義される色相角∠H°が、約260?約330°の範囲であるインクである。
【0019】
前記インク(B)は、前記マゼンタインクのJ_(2M)重量と前記シアンインクのKc重量とを記録媒体上で混合して得られる色相角∠H°_((M+C))の彩度C^(*)_((M+C))を、(J_(2M)+K_(C))重量未満の使用量で得られるインクであることが好ましい。
【0020】
また、前記インク(B)は、その彩度C^(*)_(B)が、前記マゼンタインクの彩度C^(*)_(M)及び/又は前記シアンインクの彩度C^(*)_(C)よりも高い(C^(*)_(B)>C^(*)_(M)及び/又はC^(*)_(B)>C^(*)_(C))ことが好ましい。前記インク(B)の彩度C^(*)_(B)としては、好ましくは80以上、更に好ましくは90以上である。
【0021】
また、前記インク(B)の記録媒体上での色相範囲は、a^(*)=約50?約70、b^(*)=約-70?約-50の範囲、又はa^(*)=約40?約60、b^(*)=約-80?約-60の範囲であることが好ましい。
【0022】
本実施形態のインクセットに係るイエロー、マゼンタ及びシアンの3色のインクとしては、この種のインクセットにおいて通常用いられている減法混色の3原色のインクを用いることができる。
【0023】
前記イエローインクの色相角∠H°は約80?約110°、前記マゼンタインクの色相角∠H°は約330?約360°、前記シアンインクの色相角∠H°は約230?約260°である。
【0024】
また、前記イエローインク、前記マゼンタインク、及び前記シアンインクの記録媒体上での光学濃度(OD値)は、それぞれ1.7以上、1.0以上、2.0以上であることが好ましい。
【0025】
記録媒体上での明度が45以上であれば、粒状性の観点からOD値に上限をつける必要はないが、例えば、前記イエローインクの記録媒体上でのOD値が1.7?2.4であることが好ましく、極めて高い光沢を得るためには1.7?1.9であることが特に好ましい。
前記マゼンタインクの記録媒体上でのOD値は、1.0?2.6であることが好ましく、極めて優れた粒状性を得るためには1.2?2.0であることが特に好ましい。
前記シアンインクの記録媒体上でのOD値は、2.0?2.7であることが好ましく、極めて優れた粒状性を得るためには2.0?2.5であることが特に好ましい。
【0026】
また、前記イエローインク、前記マゼンタインク及び前記シアンインクの記録媒体上での彩度C^(*)_(Y)、C^(*)_(M)、C^(*)_(C)は、それぞれ、好ましくは70?120、より好ましくは80?110、更に好ましくは80?90である。
【0027】
また、前記イエローインクの記録媒体上での色相範囲は、a^(*)=約-30?約20、b^(*)=約70?約130の範囲であることが好ましく、前記マゼンタインクの該色相範囲は、a^(*)=約60?約90、b^(*)=約-40?約-10の範囲であることが好ましく、前記シアンインクの該色相範囲は、a^(*)=約-50?約-20、b^(*)=約-70?約-40の範囲であることが好ましい。
【0028】
前記インク(A)及び前記インク(B)それぞれの明度は、前記マゼンタインク及び前記シアンインクそれぞれの明度よりも低く、かつ、前記インク(A)及び前記インク(B)それぞれの彩度は、前記マゼンタインク及び前記シアンインクそれぞれの彩度よりも高いことが好ましい。
このように定義することにより、高明度部分の彩度は、CMYインクで高めることが可能であり、低明度部分の彩度は、インク(A)及び/又はインク(B)が加わることで高めることが可能である。
【0029】
また、前記インク(A)は、その明度が、前記イエローインクの明度及び/又は前記マゼンタインクの明度より低いことが好ましい。前記インク(A)の記録媒体上での明度は、35以上65以下が好ましく、40以上50以下が更に好ましい。
また、前記インク(B)は、その明度が、前記マゼンタインクの明度及び/又は前記シアンインクの明度より低いことが好ましい。前記インク(B)の記録媒体上での明度は、5以上65以下が好ましく、5以上15以下が更に好ましい。
【0030】
前記イエローインクは、400nm?500nmに吸収面積が30abs・nm以上、350abs・nm以下である吸収スペクトルを有することが好ましい。イエローインクの400nm?500nmにおける吸収面積は30abs・nm以上、250abs・nm以下であることがより好ましく、30abs・nm以上、200abs・nm以下であることがさらに好ましい。
【0031】
前記マゼンタインクは、500nm?600nmに吸収面積が20abs・nm以上、200abs・nm以下である吸収スペクトルを有することが好ましい。マゼンタインクの500nm?600nmにおける吸収面積は20abs・nm以上、150abs・nm以下であることがより好ましく、20abs・nm以上、60abs・nm以下であることがさらに好ましい。
【0032】
前記シアンインクは、600nm?700nmに吸収面積が50abs・nm以上、400abs・nm以下である吸収スペクトルを有することが好ましい。シアンインクの600nm?700nmにおける吸収面積は50abs・nm以上、300abs・nm以下であることがより好ましく、50abs・nm以上、100abs・nm以下であることがさらに好ましい。
【0033】
本発明において吸収面積(abs・nm)とは、各波長(nm)における各吸収(abs)を面として合計した値である。例えば、400nm?500nmにおける吸収スペクトルの吸収が1absであった場合、400nm?500nmにおける吸収面積は、1[abs]×(500-400)[nm]=100abs・nmとなる。
【0034】
前記インク(A)の500nm?600nmにおける吸収面積は、前記マゼンタインクの500nm?600nmにおける吸収面積と同等以上であることが好ましい。
前記インク(A)の500nm?600nmにおける吸収面積は、前記マゼンタインクの500nm?600nmにおける吸収面積の1.0倍以上、3.5倍以下であることが好ましく、1.5倍以上、3.0倍以下であることがさらに好ましい。
【0035】
前記インク(A)の400nm?500nmにおける吸収面積は、当該インク(A)の500nm?600nmにおける吸収面積の0.5倍以上、2.0倍以下であることが好ましく、0.5倍以上、1.0倍以下であることがさらに好ましい。
前記インク(A)の400nm?500nmにおける吸収面積は、40abs・nm以上、200abs・nm以下であることがより好ましく、40abs・nm以上、100abs・nm以下であることがさらに好ましい。
前記インク(A)の500nm?600nmにおける吸収面積は、20abs・nm以上、200abs・nm以下であることがより好ましく、20abs・nm以上、150abs・nm以下であることがさらに好ましい。
【0036】
前記インク(B)の500nm?600nmにおける吸収面積は、前記シアンインクの600nm?700nmにおける吸収面積と同等以上であることが好ましい。
前記インク(B)の500nm?600nmにおける吸収面積は、前記シアンインクの600nm?700nmにおける吸収面積の1.0倍以上、3.0倍以下であることが好ましく、1.0倍以上、2.0倍以下であることがさらに好ましい。
【0037】
前記インク(B)の500nm?600nmにおける吸収面積は、当該インク(B)の600nm?700nmにおける吸収面積の0.5倍以上、5.0倍以下であることが好ましく、3.0倍以上、4.0倍以下であることがさらに好ましい。
前記インク(B)の500nm?600nmにおける吸収面積は、50abs・nm以上、350abs・nm以下であることがより好ましく、50abs・nm以上、200abs・nm以下であることがさらに好ましい。
前記インク(B)の600nm?700nmにおける吸収面積は、20abs・nm以上、150abs・nm以下であることがより好ましく、20abs・nm以上、100abs・nm以下であることがさらに好ましい。
【0038】
前記各インクにおいては、Duty100%のインク重量は10?20mg/inch^(2)であることが好ましく、12?18mg/inch^(2)であることがより好ましく、14?16mg/inch^(2)であることがさらに好ましい。
前記マゼンタインクと前記シアンインクの記録媒体上での顔料固形分濃度が0.2mg/inch^(2)のときの明度が45以上であることが好ましい。
【0039】
本実施形態に係るインクに含有される顔料としては、無機顔料及び有機顔料を使用することができ、それぞれ単独又は複数種混合して用いることができる。前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン及び酸化鉄の他、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラックが使用できる。また、前記有機顔料としては、例えば、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料等)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等が使用できる。具体的には下記顔料が挙げられる。
【0040】
前記インク(A)に含有される顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ5,43及び62並びにC.I.ピグメントレッド17,49:2,112,149,177,178,188,255及び264からなる群から選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。
これらのうち、特にC.I.ピグメントオレンジ43及びC.I.ピグメントレッド149,177,178及び264からなる群から選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。この場合には、インク(A)は、「インク(A)単色で形成できる色」と、「イエローインクとマゼンタインクの2色だけを混合して形成される色相角と彩度が同じ色」の明度が近い程、粒状性と光沢とを向上させることができる。
【0041】
前記インク(B)に含有される顔料としては、C.I.ピグメントブルー60並びにC.I.ピグメントバイオレット3,19,23,32,36及び38からなる群から選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。
これらのうち、特にC.I.ピグメントブルー60及びC.I.ピグメントバイオレット19,23からなる群から選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。この場合には、インク(B)は、「インク(B)単色で形成できる色」と、「シアンインクとマゼンタインクの2色だけを混合して形成される色相角と彩度が同じ色」の明度が近い程、粒状性と光沢とを向上させることができる。
【0042】
前記イエローインクに含有される顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1,2,3,12,13,14,16,17,73,74,75,83,93,95,97,98,109,110,114,128,129,138,139,147,150,151,154,155,180,185等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。これらのうち、特にC.I.ピグメントイエロー74,110,128及び147からなる群から選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0043】
前記マゼンタインクに含有される顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド5,7,12,48(Ca),48(Mn),57(Ca),57:1,112,122,123,168,184,202,209;C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。これらのうち、特にC.I.ピグメントレッド122,202,209及びC.I.ピグメントバイオレット19からなる群から選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0044】
前記シアンインクに含有される顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1,2,3,15:3,15:4,15:34,16,22,60;C.I.バットブルー4,60等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。これらのうち、特にC.I.ピグメントブルー15:3及び/又は15:4を用いることが好ましく、とりわけ、C.I.ピグメントブルー15:3を用いることが好ましい。
【0045】
前記インク(A)及び(B)それぞれにおける前記各顔料の含有量(固形分換算、以下同じ)は、印字濃度とインクジェット記録用インクとしての信頼性とのバランスの観点から、それぞれ、インク全重量に対して、好ましくは2?6重量%、更に好ましくは2?4重量%である。
【0046】
また、前記イエロー、マゼンタ及びシアンの3色のインクにおける前記各顔料の含有量は、光沢度と彩度の観点から、それぞれ、インク全重量に対して、好ましくは0.1?2重量%、更に好ましくは1.5?2重量%である。
【0047】
また、本発明において、別の好ましい実施形態としては、インク吸収層を有するインクジェット専用記録媒体上でのドット視認性(粒状性)向上の観点から、前記マゼンタインクとシアンインクそれぞれの顔料の含有量が2重量%以下、特に0.1?2重量%、とりわけ1.5?2重量%であり、かつ、前記インク(A)とインク(B)とイエローインクそれぞれの顔料の含有量が2重量%以上、特に2?6重量%、とりわけ2?4重量%である。
【0048】
また、本発明において、更に別の好ましい実施形態としては、普通紙上での色再現範囲の拡大及び発色性の観点から、前記イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、インク(A)及びインク(B)それぞれの顔料の含有量が2重量%以上である。
【0049】
本実施形態のインクセットは、イエロー、マゼンタ及びシアンの3色の前記インクと2色の前記特色インクとを備えるものであるが、必要に応じてブラックインクを更に追加することもできる。ブラックインクに含有される顔料としては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄顔料等の無機顔料;アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料等が挙げられる。特にカーボンブラックを用いることが好ましく、好ましいカーボンブラックの例として、三菱化学製のNo.2300,No.900,MCF88,No.33,No.40,No.52,MA7,MA8,MA100,No.2200B等、コロンビア社製のRaven5750,Raven5250,Raven5000,Raven3500,Raven1255,Raven700等、キャボット社製のRegal 400R,Regal 400R,Regal 1660R,Mogul 1,Monarch 700,Monarch 800,Monarch 880,Monarch 900,Monarch 1000,Monarch 1100,Monarch 1300,Monarch 1400等、テグッサ社製のColor Black FW1,Color Black FW2,Color Black FW2V,Color Black FW18,Color Black FW200,Color Black S150,Color Black S160,Color Black S170,Printex 35,Printex U,Printex V,Printex 140U,Special Black 6,Special Black 5,Special Black 4A,Special Black 4等が挙げられる。
また、前記ブラックインク中における前記顔料の含有量は、好ましくは0.1?4重量%、更に好ましくは1?3重量%である。
【0050】
本実施形態に係るインクには、顔料の分散安定性を高める観点から、分散剤を含有させることが好ましい。分散剤としては、この種の顔料インクにおけるものと同様のものを特に制限なく用いることができ、例えば、カチオン性分散剤、アニオン性分散剤、ノニオン性分散剤や界面活性剤等が挙げられる。アニオン性分散剤の例としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸-アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-アクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン-マレイン酸共重合体、酢酸ビニル-エチレン共重合体、酢酸ビニル-脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニル-マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル-クロトン酸共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸共重合体等が挙げられる。また、アニオン性界面活性剤の例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩等が挙げられ、ノニオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。特に、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体を用いることが好ましい。
前記分散剤は、前記インク中において、前記顔料に対して、固形分換算で好ましくは0.1?10重量%、更に好ましくは0.3?6重量%含有される。
【0051】
また、本実施形態に係るインクには、インクの乾燥を防いでインクジェットプリンタのヘッドでの目詰まりを防止する観点から、高沸点有機溶媒を含有させることができる。高沸点有機溶媒としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールのアルキルエーテル類;尿素、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、トリエタノールアミン、糖アルコール等の糖類等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。
前記高沸点有機溶媒は、前記インク中、好ましくは0.1?30重量%、更に好ましくは0.5?20重量%含有される。
【0052】
また、本実施形態に係るインクには、インクの乾燥時間を短縮する観点から、低沸点有機溶媒を含有させることができる。低沸点有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、iso-プロプルアルコール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、iso-ブタノール、n-ペンタノール等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。特に、一価アルコールが好ましい。
【0053】
また、本実施形態に係るインクには、記録媒体への濡れ性を高めて浸透性を高める観点から、浸透促進剤を含有させることができる。浸透促進剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の各種界面活性剤;メタノール、エタノール、iso-プロピルアルコール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル;1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール等のジオール等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。特に、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル又は1,2-ヘキサンジオールを用いることが好ましい。
前記浸透促進剤は、前記インク中、好ましくは1?20重量%、更に好ましくは1?10重量%含有される。
【0054】
前記浸透促進剤として、下記一般式(I)で表されるアセチレングリコ-ル系化合物やポリシロキサン系化合物を用いることもできる。該アセチレングリコ-ル系化合物としては、市販されているものを用いることができ、例えば、オルフィンY、サーフィノール82,440,465,485,STG,E1010(何れも商品名、エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ社製)等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。特にサーフィノール465を用いることが好ましい。また、該ポリシロキサン系化合物としては、市販品としてBYK348(ビックケミージャパン製)等を用いることができる。該アセチレングリコール系化合物及び/又は該ポリシロキサン系化合物は、前記インク中、好ましくは0.1?5重量%、更に好ましくは0.5?2重量%含有される。
【0055】
【化1】

【0056】
本実施形態に係るインクには、前記顔料の他、必要に応じて、分散剤、高沸点有機溶媒、低沸点有機溶媒、浸透促進剤を含有させ、バランスとして水を含有させる。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水又は超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を、紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌処理した水は、長期間に亘ってカビやバクテリアの発生が防止されるので好ましい。
【0057】
本実施形態に係るインクには、更に必要に応じて、水溶性ロジン類等の定着剤、安息香酸ナトリウム等の防黴剤・防腐剤、アロハネート類等の酸化防止剤・紫外線吸収剤、キレート剤、酸素吸収剤、pH調整剤等の添加剤を含有させることができ、これらの1種又は2種以上が用いられる。
【0058】
本実施形態に係るインクは、従来公知の装置、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、バスケットミル、ロールミル等を使用して、従来の顔料インクと同様に調製することができる。調製に際しては、メンブレンフィルターやメッシュフィルター等を用いて粗大粒子を除去することが好ましい。
【0059】
本実施形態に係る反応液は、水と、前記インク中における前記顔料の分散及び/又は溶解状態を破壊し、凝集させ得る反応剤とを含有する。水としては、前述したインクにおけるものと同様のものが用いられる。また、反応剤としては、多価金属塩、ポリアリルアミン及びその誘導体、ポリアクリルアミド及びその誘導体、ポリエチレンイミンからなる群から選ばれる1種又は2種以上が用いられる。
【0060】
前記多価金属塩(反応剤)としては、2価以上の多価金属イオンと、該多価金属イオンに結合する陰イオンとから構成され、水に可溶なものを用いることが好ましい。
2価以上の多価金属イオンとしては、例えば、Ca^(2+)、Cu^(2+)、Ni^(2+)、Mg^(2+)、Zn^(2+)、Ba^(2+)等の2価金属イオン;Al^(3+)、Fe^(3+)、Cr^(3+)等の3価金属イオンが挙げられる。特に、2価以上の多価金属イオンが、Ca^(2+)又はMg^(2+)である多価金属塩は、反応液のpH及び得られる印刷物の品質という2つの観点から、好適な結果を与える。
また、陰イオンとしては、Cl^(-)、NO_(3)^(-)、I^(-)、Br^(-)、ClO_(3)^(-)、CH_(3)COO^(-)等が挙げられる。特に、硝酸イオン(NO_(3)^(-))又はカルボン酸イオン(CH_(3)COO^(-))であることが好ましい。
【0061】
前記カルボン酸イオンとしては、炭素数1?6の飽和脂肪族モノカルボン酸及び炭素数6?10の炭素環式モノカルボン酸からなる群から選ばれる1種又は2種以上のカルボン酸から誘導されるものが好ましい。
炭素数1?6の飽和脂肪族モノカルボン酸の好ましい例としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ビバル酸、ヘキサン酸等が挙げられる。特に蟻酸、酢酸が好ましい。該炭素数1?6の飽和脂肪族モノカルボン酸の飽和脂肪族炭化水素基上の水素原子は水酸基で置換されていてもよく、そのようなカルボン酸の好ましい例としては、乳酸が挙げられる。
また、炭素数6?10の炭素環式モノカルボン酸の好ましい例としては、安息香酸、ナフトエ酸等が挙げられ、より好ましくは安息香酸である。
【0062】
前記多価金属塩の含有量は、印字品質、目詰まり防止の効果が得られる範囲で適宜決定されてよいが、前記反応液中、好ましくは0.1?40重量%程度であり、より好ましくは5?25重量%程度である。
【0063】
また、前記ポリアリルアミン及びその誘導体(反応剤)は、何れも水に可溶で、水中でプラスに荷電するカチオン系高分子である。該ポリアリルアミン及びその誘導体としては、例えば、下記一般式(a)?(c)で表されるポリマー;アリルアミンとジアリルアミンとが共重合したポリマー;ジアリルメチルアンモニムクロライドと二酸化硫黄との共重合体等が挙げられる。
【0064】
【化2】

【0065】
前記ポリアリルアミン及びその誘導体の含有量は、前記反応液中、0.5?10重量%であることが好ましい。
【0066】
また、前記ポリアクリルアミド及びその誘導体(反応剤)としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系、カチオン・エステル系等の何れのものでも使用可能である。具体的には、下記一般式(d)で表されるポリアクリルアミド(ノニオン)、下記一般式(e)で表されるポリアクリルアミド(アニオン)、下記一般式(f)で表されるポリアクリル酸ソーダ(アニオン)、下記一般式(g)で表されるポリアクリルアミド(カチオン・エステル)、その他ポリアクリル酸エステル系、ポリメタクリル酸系等のポリマーが挙げられる。
〔-CH_(2)CH(CONH_(2))-〕n (d)
〔-CH_(2)CH(CONH_(2))-〕n ・〔-CH_(2)CH(COONa)-〕m (e)
〔-CH_(2)CH(COONa)-〕n (f)
〔-CH_(2)CH(CONH_(2))-〕n ・〔-CH_(2)CH(COOCH_(2)CH_(2)N(CH_(3))_(2))-〕m (g)
本発明においては反応液中の前記ポリアクリルアミド及びその誘導体の含有量は、前記反応液中に0.05?5重量%程度である事が好ましい。
【0067】
また、前記ポリエチレンイミン(反応剤)としては、合成品や市販品を用いる事ができ、特に反応性の面から、分岐型のものを使用する事が好ましい。例えば、Aldrich社製の分岐型のもの(市販品)等が挙げられる。
ポリエチレンイミンの平均分子量(Mn:数平均分子量)は、好ましくは10000以下、更に好ましくは500?2000である。
本発明において反応液中の前記ポリエチレンイミンの含有量は、好ましくは0.1?10重量%であり、更に好ましくは0.3?5重量%である。
【0068】
本実施形態に係る反応液には、反応液の乾燥を防いでインクジェットプリンタのヘッドの目詰まりを防止する観点から、湿潤剤として高沸点有機溶媒を含有させることが好ましい。該高沸点有機溶媒としては、前述したインクに用いられるものと同様のものを用いることができる。該高沸点有機溶媒の含有量は特に限定されないが、好ましくは0.5?40重量%程度であり、より好ましくは2?20重量%程度である。
【0069】
本実施形態に係る反応液には、必要に応じて、低沸点有機溶媒及び/又は浸透促進剤を含有させることもできる。該低沸点有機溶媒及び該浸透促進剤としては、前述したインクに用いられるものと同様のものを用いることができる。また、保存安定性を向上させるために、更に必要に応じて、本実施形態に係る反応液に、pH調整剤、防黴剤・防腐剤等を含有させても良い。
【0070】
本実施形態のインクセットは、ノズルからインクの液滴を吐出させ、該液滴を記録媒体に付着させて文字及び/又は画像を形成する記録方法であるインクジェット記録方法に用いられることが好ましく、特にオンデマンド型のインクジェット記録方法に用いられることが好ましい。オンデマンド型のインクジェット記録方法としては、例えば、プリンターヘッドに配設された圧電素子を用いて記録を行う圧電素子記録方法、プリンターヘッドに配設された発熱抵抗素子のヒーター等による熱エネルギーを用いて記録を行う熱ジェット記録方法等が挙げられ、何れのインクジェット記録方法にも好適に使用できる。
【0071】
本実施形態のインクセットは、従来の二液(インクと反応液)を用いたインクジェット記録用のインクセットにはない、前記インク(A)及び前記インク(B)の2色の特色インクを備えているので、色再現範囲が広い。そのため、従来のこの種のインクセットでは、2色以上のインクを用いなければ作れなかった混色部分を、本実施形態のインクセットによれば、前記特色インクのみ、あるいは従来のインクの2種以上を用いて混色部分を形成する場合よりも少量のインク打ち込み量で該混色部分を形成でき、前記特色インクと他のインクとの混色(後述する)により形成できる。従って、本実施形態のインクセットは、従来の二液を用いたインクジェット記録用のインクセットの欠点であった、多量の水性液を記録媒体(特に普通紙)に打ち込むことに起因する紙シワ等の記録媒体の変形や、紙の裏面への着色等の不都合を生じることなく、色濃度が高く、滲みやムラの少ない高品位の印刷物を提供することができる。
【0072】
次に、本発明のインクジェット記録方法について、その好ましい実施形態である前記インクセットを用いた実施形態に基づいて説明する。
本実施形態のインクジェット記録方法は、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色の前記インクと、前記反応液とからなる前記インクセットを用いて記録媒体に文字及び/又は画像を形成するインクジェット記録方法であって、前記インクと前記反応液とが該記録媒体上で接触するようにそれぞれの液滴を吐出させ、且つ複数色の該インクの液滴それぞれを該記録媒体上で混合して、該記録媒体上に1色又は2色以上の混色部分を形成する場合、前記インク(A)及び前記インク(B)以外のインクの少なくとも1種と、該インク(A)及び/又は該インク(B)とを用いるインクジェット記録方法である。
【0073】
即ち、本実施形態のインクジェット記録方法は、いわゆる二液(インクと反応液)を用いたインクジェット記録方法において、混色部分を形成する場合、前記インク(A)及び/又は前記インク(B)を用いることを特徴とするものであり、記録媒体に単色でインクを打ち込む場合は、通常のインクジェット記録方法と同様である。
【0074】
図1は、本実施形態のインクジェット記録方法を実施するためのインクジェット記録装置の要部の斜視図である。このインクジェット記録装置は、前記インク及び前記反応液をインクタンクに収納し、該インク及び該反応液がインクチューブを介して記録ヘッドに供給される態様である。即ち、記録ヘッド1とインクタンク2とがインクチューブ3で連通される。インクタンク2は内部が区切られており、4色の前記インクの部屋と、前記反応液の部屋とが設けられてなる。
【0075】
記録ヘッド1は、キャリッジ4に沿って、モータ5で駆動されるタイミングベルト6によって移動する。一方、記録媒体7はプラテン8及びガイド9によって記録ヘッド1と対面する位置に置かれる。尚、この態様においては、キャップ10が設けられてなる。このキャップ10には吸引ポンプ11が連結され、いわゆるクリーニング操作を行う。吸引されたインクはチューブ12を介して廃インクタンク13に溜め置かれる。
【0076】
記録ヘッド1のノズル面の拡大図を図2に示す。1bで示される部分が前記反応液のノズル面であって、該反応液が吐出されるノズル21が縦方向に設けられてなる。一方、1cで示される部分が前記インクのノズル面であって、ノズル22,23,24,25からは、それぞれ、前記イエローインク、前記マゼンタインク、前記シアンインク、前記ブラックインクが吐出される。
【0077】
このような構成のインクジェット記録装置を常法通り操作することにより、記録ヘッド1は、キャリッジ4に走査されながら、前記インクと前記反応液とが記録媒体7上で接触するように、それぞれの液滴を吐出する。前記反応液の記録媒体への付着は、インクを付着させる場所にのみ選択的に前記反応液を付着させる態様でもよく、また、被記録面全体に前記反応液を付着させる態様でもよい。前者の態様は、反応液の消費量を必要最小限に抑えることができ経済的であるが、反応液とインク双方を付着させる位置にある程度の精度が要求される。一方、後者の態様は、前者の態様に比べ、反応液及びインクの付着位置の精度の要求が緩和される。
【0078】
前記インクジェット記録装置によるインクジェット記録を、図3に基づき説明する。先ず、記録ヘッド1が、記録媒体7の左端から右端に向かって矢印A方向に沿って移動する間に、そのノズル面1bより前記反応液が吐出されて、記録媒体7上に帯状の反応液付着領域31が形成される。記録ヘッド1が、記録媒体7の右端に達すると、記録媒体7が、紙送り方向(矢印B)に所定量移送されると共に、記録ヘッド1が、矢印A方向と逆方向に移動して、記録媒体7の左端の位置に戻る。そして、再び記録ヘッド1が、該左端から該右端に向かって矢印A方向に沿って移動する間に、ノズル面1cより反応液付着領域31に対して前記インクが吐出され、印字領域32が形成される。
【0079】
この印字領域32の形成時において、単色でインクを打ち込む場合は、通常のインクジェット記録方法と同様に各色インクの液滴が吐出されるが、混色部分を形成する場合は、前記インク(A)及び前記インク(B)以外のインクの少なくとも1種と、該インク(A)及び/又は該インク(B)とを用い、これらのインクの液滴それぞれを反応液付着領域31上で混合して所望の混色部分を形成する。
【0080】
具体的には、前記知覚色度指数a^(*)及びb^(*)が、それぞれ、a^(*)=約-40?約90、b^(*)=約-40?約100の範囲にある混色部分、即ち、イエロー色とマゼンタ色との間の色相群の1色(例えばオレンジ色や赤色)の混色部分を形成する場合、少なくとも、イエロー及びマゼンタの2色の前記インクと、前記インク(A)とを用いる。この場合、該インク(A)の単位面積当たりのインク打ち込み量は、該混色部分の形成に用いられるインクの総打ち込み量に対して、好ましくは10?90重量%、更に好ましくは30?50重量%である。
【0081】
また、前記知覚色度指数a^(*)及びb^(*)が、それぞれ、a^(*)=約-50?約100、b^(*)=約-10?約-80の範囲にある混色部分、即ち、マゼンタ色とシアン色との間の色相群の1色(例えばバイオレット色や青色)の混色部分を形成する場合、少なくとも、マゼンタ及びシアンの2色の前記インクと、前記インク(B)とを用いる。この場合、該インク(B)の単位面積当たりのインク打ち込み量は、該混色部分の形成に用いられるインクの総打ち込み量に対して、好ましくは10?90重量%、更に好ましくは30?50重量%である。
【0082】
このようにして、反応液付着領域31上に重ねて前記インクが吐出されて、印字領域32が形成されていき、記録ヘッド1が、図3における記録媒体7の右端に達すると、記録媒体7が、紙送り方向(矢印B)に所定量移送されると共に、記録ヘッド1が、矢印A方向と逆方向に移動して、図3における記録媒体7の左端の位置に戻る。このような記録ヘッド1による一連の動作が繰り返されることにより、記録媒体7に所定の文字及び/又は画像が形成されて印刷物が作成される。
【0083】
このようにして得られた前記印刷物は、前記反応液と前記インクとが接触して生じる凝集物が記録媒体上に付着しているので、記録媒体として普通紙を用いても、色濃度が高く、また、異なる色の境界領域での不均一な色混じり、いわゆるカラーブリード等の滲みやムラの少ない高品位の印刷物である。
【0084】
本実施形態のインクジェット記録方法は、この種の記録方法において通常用いられる記録媒体は特に制限無く適用できるが、特に、紙シワ等の多量の水性液を打ち込むことに起因する問題を起こし易い普通紙(被記録面に繊維が露呈している記録媒体)に対して有効である。即ち、本実施形態のインクジェット記録方法によれば、前記インク(A)及び前記インク(B)の2色の特色インクを備えた色再現範囲の広いインクセットを用い、混色部分の形成時には該特色インクを用いることにより、従来の二液(インクと反応液)を用いたインクジェット記録方法に比して少量のインク打ち込み量で、高発色の文字及び/又は画像を形成できるので、記録媒体として普通紙を用いても、該普通紙の変形や、裏面への着色を抑制することができ、高品位の前記印刷物を提供することができる。
【0085】
本実施形態のインクジェット記録方法の実施に適したインクジェット記録装置は、前記した構成のものに制限されない。
例えば、本実施形態のインクジェット記録方法は、インクジェット記録装置における記録ヘッド1のノズル面が、図4に示すように、ノズルを全て横方向に並べた構成のものでも実施できる。図4中、41a及び41bは反応液の吐出ノズルであり、ノズル42,43,44,45からは、それぞれ、前記イエローインク、前記マゼンタインク、前記シアンインク、前記ブラックインクが吐出される。このような態様の記録ヘッドにおいては、キャリッジ上を往復する往路、復路の何れにおいても印字が可能である点で、図2に示した記録ヘッドを用いた場合よりも早い速度での印字が期待できる。また、図4に示す記録ヘッド1において、反応液及びインクそれぞれの表面張力を適宜調節すれば、反応液の吐出ノズルを1つにすることもでき(例えば、図4において、41bのノズルを省く)、更なるヘッドの小型化と印字の高速化が達成できる。
【0086】
また、本実施形態のインクジェット記録方法は、前述したようなインクタンクと記録ヘッドとが分離している構成のインクジェット記録装置のみならす、図5に示すような、インクタンクと記録ヘッドとが一体化された構成のインクジェット記録装置でも実施できる。図5中、図1の装置と同一の部材については同一の符号を付した。図5の態様において、記録ヘッド1a及び1bは、それぞれ、インクタンク2a及び2bと一体化されており、記録ヘッド1aからインクが吐出され、記録ヘッド1bから反応液が吐出される。印字方法は基本的に図1の装置と同様であってよい。そして、この態様において、記録ヘッド1aとインクタンク2a及び記録ヘッド1b及びインクタンク2bは、キャリッジ4上を共に移動する。
【0087】
本発明は、前記実施形態に制限されず、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
本発明のインクセットは、前記反応液と、記録媒体上でのCIELAB色空間において定義される色相角∠H°がそれぞれ前記特定範囲にあるイエロー、マゼンタ及びシアンの3色の前記インクと、前記インク(A)及び前記インク(B)の2色の特色インクとを備えるインクセットであればよく、これらのインク以外に、例えば、上述のブラックインクは勿論のこと、本発明に係る前記イエローインク、前記マゼンタインク及び前記シアンインク以外のイエローインク、マゼンタインク、シアンインクの1種又は2種以上を備えていてもよい。
また、前記実施形態においては、顔料インクセットを例にとり本発明のインクセットを説明したが、色材を顔料に限定するものではない。
【0088】
また、本発明のインクジェット記録方法は、複数色の前記インクの液滴それぞれを記録媒体上で混合して、該記録媒体上に1色又は2色以上の混色部分を形成する場合、前記インク(A)及び前記インク(B)以外のインクの少なくとも1種と、該インク(A)及び/又は該インク(B)とを用いればよく、混色部分を形成する際に用いるインクの組み合わせは、前記実施形態に制限されない。
また、本発明のインクジェット記録方法は、前記実施形態のように、前記反応液の液滴を吐出させた後、前記インクの液滴を吐出させて記録媒体上に文字及び/又は画像を形成する態様のみならず、前記インクの液滴を吐出させて前記記録媒体上に文字及び/又は画像を形成した後、前記反応液の液滴を吐出させる態様でもよい。
また、前記実施形態においては、4色の顔料インクを備えたインクセットを例にとり本発明のインクジェット記録方法を説明したが、このインクセットに限定されるものではなく、インクの種類や用いるインクジェット記録装置等については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【0089】
【実施例】
以下に、本発明の実施例及び試験例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、斯かる実施例により何等制限されるものではない。
【0090】
〔実施例1〕
下記組成のブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、オレンジ〔インク(A)〕、バイオレット〔インク(B)〕の6色の顔料インクを、それぞれ下記〈インクの調製〉に従い調製した。また、下記組成の反応液1を調製した。これら6色の顔料インクと反応液1とを組み合わせてインクセット1とした。
〈インクの調製〉
顔料と分散剤と水とを混合して混合物とし、サンドミル(安川製作所製)中で、該混合物の1.5倍量(重量)のガラスビーズ(直径1.7mm)と共に2時間分散させた後、ガラスビーズを取り除いて、顔料分散液を得た。次いで、下記組成における顔料と分散剤以外の成分(溶剤及び添加剤)を混合・溶解させてインク溶媒を調製し、前記顔料分散液を撹拌しながら、該インク溶媒を該顔料分散液に徐々に滴下して、常温で20分間撹拌した。その後、これを5μmのメンブランフィルターで濾過して、インクジェット記録用の顔料インクを得た。
【0091】

【0092】

【0093】

【0094】

【0095】

【0096】

【0097】

【0098】
〔実施例2〕
前記インクセット1(実施例1)において、前記反応液1に代えて、下記反応液2を組み合わせた以外は、前記インクセット1と同じ構成のインクセット2を得た。
【0099】

【0100】
〔実施例3〕
前記インクセット1(実施例1)において、前記反応液1に代えて、下記反応液3を組み合わせた以外は、前記インクセット1と同じ構成のインクセット3を得た。
【0101】

【0102】
〔実施例4〕
前記インクセット1(実施例1)において、前記反応液1に代えて、下記反応液4を組み合わせた以外は、前記インクセット1と同じ構成のインクセット4を得た。
【0103】

【0104】
〔実施例5〕
前記インクセット1(実施例1)において、前記反応液1に代えて、下記反応液5を組み合わせた以外は、前記インクセット1と同じ構成のインクセット5を得た。
【0105】

【0106】
〔実施例6〕
前記インクセット1(実施例1)において、前記反応液1に代えて、下記反応液6を組み合わせた以外は、前記インクセット1と同じ構成のインクセット6を得た。
【0107】

【0108】
〔比較例1〕下記組成のブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色の顔料インクを、それぞれ前記〈インクの調整〉に従い調製した。これら4色の顔料インクと前記反応液1とを組み合わせてインクセット7とした。
【0109】

【0110】

【0111】

【0112】

【0113】
〔比較例2〕
前記インクセット7(比較例1)において、前記反応液1を除いた以外は、前記インクセット7と同じ構成のインクセット8を得た。
【0114】
〔試験例〕(印刷物の作成及びその色彩等の測定)
インクセット1により、図4に示すノズル構成の一体型記録ヘッドを有するインクジェットプリンタ(商品名「MC-2000」、セイコーエプソン(株)製)を用いて、PM写真紙(セイコーエプソン(株)製)に対し、1440×720dpiで100%dutyを印刷し、印刷物を作成した。「duty」とは、下記式(A)で定義され、算出される値Dの単位を示すものである。100%dutyとは、画素に対する単色の最大インク重量を意味する。
D={実印字ドット数/(縦解像度×横解像度)}×100(duty) (A)
【0115】
このようにして得られた前記各印刷物の光学濃度(OD)を、グレタグ社製「SPM-50」を用い、光源D65、視野角2度で測定し、各印刷物についてのCIELAB色空間において定義されるL^(*)、a^(*)、b^(*)、並びに色相角∠H°[=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+180(a^(*)<0の場合)、∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+360(a^(*)>0かつb^(*)<0の場合)、∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))(a^(*)>0かつb^(*)≧0の場合)]及び彩度C^(*)[=〔(a^(*))^(2)+(b^(*))^(2)〕^(1/2)]をそれぞれ求めた。
評価色:1色のインクで形成される100%dutyの単色と図6に示すサークルの隣接する2色のインクの各50%dutyで形成される100%dutyの混色とした。
【0116】
(特色インクの有効性)
実施例のインクセットにより作成した前記各印刷物において、YMCの3原色インクの何れか2色により形成された100%dutyの混色部分の色相角∠H°と彩度C^(*)とを測定した。そして、これと同じ色相角∠H°及び彩度C^(*)を得るために要した特色インクの打ち込み量を測定した。それらの結果を下記表1及び表2に示す。
【0117】
【表1】

【0118】
【表2】

【0119】
表1及び表2から明らかなように、YMCの3原色インクの何れか2色を用いて形成される100%dutyの色相角∠H°の彩度C^(*)を、本発明に係る特色インクA又はBによれば、30%duty以下で得ることができる。
また、インクセット1におけるイエローインクの記録媒体上での光学濃度(OD値)は1.7であり、マゼンタインクの記録媒体上での光学濃度(OD値)は1.5であり、シアンインクの記録媒体上での光学濃度(OD値)は2.0であった。
【0120】
(各インクの吸収面積の測定)日立自記分光光度計U3300形を用いて、スキャンスピード600nm/min、スリット2.0nm、ホトマル電圧自動制御、サンプリング間隔自動の測定条件で、測定した。
ベースラインは、サンプル側、リファレンス側ともに、縦1cm×横1cm×高さ4cmの4mL容量のセキエイセルに純水を加えて設定し、測定した。
サンプル測定は、リファレンス側のセルをそのままにし、サンプル側のセルに以下のようにして調整したインク希釈液を入れ、測定した。各インク1.00gを1Lビーカーに移し、直ちに純水を加えて、合計1kgにし、希釈液を得た。
その結果を表3示す。
【0121】
【表3】

【0122】
(紙シワ・発色性の試験)
実施例1?6及び比較例1?2の各インクセットそれぞれにより、図4に示すノズル構成の一体型記録ヘッドを有するインクジェットプリンタ(商品名「MC-2000」、セイコーエプソン(株)製)を用いて、普通紙(商品名「XeroxP」、ゼロックス(株)製)に対し印刷を行った。その際、実施例1?6(インクセット1?6)の全てにおいては、レッドを表現する場合は前記オレンジインク〔インク(A)〕を主に使用し、ブルーを表現する場合は前記バイオレットインク〔インク(B)〕を主に使用した。一方、比較例1(インクセット7)及び比較例2(インクセット8)においては、レッドを表現する場合は、常法通り、前記イエローインクと前記マゼンタインクとを使用し、ブルーを表現する場合は、常法通り、前記シアンインクと前記マゼンタインクとを使用した。得られた各印刷物について、それぞれの記録画像部分の紙シワの程度及び発色性を、それぞれ目視により観察し、下記評価基準により評価した。それらの結果を下記〔表4〕に示す。尚、印刷に際しては、反応液の液滴を吐出させた後にインクの液滴を吐出させる場合、及びインクの液滴を吐出させた後に反応液の液滴を吐出させる場合の何れも行ったが、結果は同じ(〔表4〕)であった。
【0123】
(紙シワの程度の評価基準)
○:単色部分のみならず混色部分においても紙シワが発生していない。
△:単色部分では紙シワが発生していないが、混色部分で紙シワが発生している。
×:混色部分のみならず単色部分においても紙シワが発生している。
【0124】
(発色性の評価基準)
○:単色部分及び混色部分共に発色が鮮明である。
△:単色部分は発色が鮮明であるが、混色部分は発色が鮮明でない。
×:単色部分及び混色部分共に発色が鮮明でない。
【0125】
【表4】

【0126】
表4に示す結果から明らかなように、実施例1?6のインクセットは、何れも紙シワの発生が無く、発色性にも優れた印刷物を提供することができる。
比較例1のインクセットは、特色インクを備えていないため、実施例のインクセットに比して混色部分でのインクの打ち込み量が多く、該混色部分で紙シワを生じさせた。また、該混色部分の発色は不鮮明であった。
比較例2のインクセットは、反応液を備えていないので紙シワの発生は観られなかったが、混色部分のみならず単色部分においても発色性が不鮮明であった。
【0127】
【発明の効果】
本発明のインクセット及びインクジェット記録方法によれば、記録媒体として普通紙を用いても、紙シワを生じさせることなく、色濃度が高く、滲みやムラの少ない高品位の印刷物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本実施形態のインクジェット記録方法を実施するためのインクジェット記録装置の要部の斜視図である。
【図2】
図1のインクジェット記録装置における記録ヘッドのノズル面の拡大図である。
【図3】
図2の記録ヘッドによるインクジェット記録の説明図である。
【図4】
図1のインクジェット記録装置における別の態様の記録ヘッドのノズル面の拡大図である。
【図5】
本実施形態のインクジェット記録方法を実施するための別の態様のインクジェット記録装置の要部の斜視図である。
【図6】
実施例において、印刷物を作成する際の混色の組み合わせを示す図である。
【符号の説明】
1 記録ヘッド
1b 反応液のノズル面
1c インクのノズル面
21,41a,41b 反応液のノズル
22?25,42?45 インクのノズル
7 記録媒体
31 反応液付着領域
32 印字領域
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2013-10-09 
出願番号 特願2002-233978(P2002-233978)
審決分類 P 1 41・ 852- Y (C09D)
P 1 41・ 851- Y (C09D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中野 孝一  
特許庁審判長 新居田 知生
特許庁審判官 星野 紹英
菅野 芳男
登録日 2010-01-29 
登録番号 特許第4448649号(P4448649)
発明の名称 インクセット及びインクジェット記録方法  
代理人 宮坂 一彦  
代理人 宮坂 一彦  
代理人 上柳 雅誉  
代理人 上柳 雅誉  
代理人 渡辺 和昭  
代理人 渡辺 和昭  

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