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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04Q
管理番号 1281659
審判番号 不服2012-14475  
総通号数 169 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-07-27 
確定日 2013-11-06 
事件の表示 特願2009-513370「共同設置されたWLANおよびBluetoothのための効率的なオペレーション」拒絶査定不服審判事件〔平成19年12月13日国際公開、WO2007/143352、平成21年11月19日国内公表、特表2009-540632〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2007年(平成19年)5月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年6月2日、2006年8月29日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成23年8月24日付けの拒絶理由通知に対して、平成23年11月29日付けで手続補正がなされたが、平成24年3月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年7月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成24年7月27日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年7月27日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
平成24年7月27日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項20は、以下のとおりである。
「【請求項20】
IEEE 802.15標準のもとで動作する装置から前記装置によって送信又は受信された伝送を検知することと、
前記検知に基づいて前記装置の休止期間を決定することと、
無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)中のアクセスポイントと通信するためのトラヒックが前記休止期間内に制限されることを保証するために前記装置の休止期間に対する少なくとも1つの条件が満たされるかどうかを決定することと、
前記少なくとも1つの条件が満たされる場合に、前記装置の休止期間に前記WLAN中のアクセスポイントと通信することと、
を備えた、ステーションの動作方法。」

上記補正は、補正前の請求項20に記載した発明を特定するために必要な事項について限定を付加するものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項20に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)否かについて以下に検討する。

2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第03/047174号(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに次の(1)?(5)の事項が記載されている。なお、下線は当審が付した。

(1)「背景技術
近年、2.4GHz帯又は5GHz帯のISMバンド(Industrial,Science,and Medical Band)において、時分割多重接続(Time Division Multiple Access:TDMA)方式の複数の無線LANシステムが提案、規格化されている。TDMA方式は、同一周波数帯で異なる時間領域を各移動局に割り当てて通信を行う方式である。TDMA方式の無線LANシステムには、集中制御方式と分散制御方式とが存在する。
第12図は、集中制御方式の無線LANシステムの構成を示す。第12図に示すように、集中制御方式の無線LANシステム101は、移動局に対する通信時間帯(通信を行うための時間領域)の割り当て、通信のタイミングの制御を行う基地局103と、基地局103により通信のタイミングを制御される、例えば第1から第3までの複数の移動局105、107及び111とを含む。
基地局103は、例えば中央制御装置115を有しているか接続されているとともに、広域ネットワーク(WAN)117と接続されていても良い。基地局103と、第1から第3までの移動局105、107及び111との間は、信号118-1から118-3により通信が可能である。
第13図に分散制御方式の第2の無線通信システム102の構成例を示す。第13図に示すように、第2の無線LANシステム102は、第1から第4までの移動局121、123、125及び127を有している。第1から第4までの移動局121、123、125及び127は、例えば、信号131-1から131-4により通信が可能である。移動局がお互いに通信要求を行い、移動局間で個々に通信のタイミングを調整する。
集中制御方式の無線通信システムの代表的なものとしては、ARIB(電波産業会)のSTD-T70(HiSWANa)、ETSI(欧州通信標準化機関)のHiperLAN/2、業界団体によるBluetooth等がある。
分散制御方式の無線通信システムの代表的なものとしては、IEEE802委員会の802.11a、IEEE802委員会の802.11b、ARIBのRCR STD-T33等がある。
以上に説明した規格に基づく無線通信機器又はそれを備えたノート型PC(パーソナルコンピュータ)やPDA(パーソナルデータアシスタント)などを用いて通信を行う場合、通信エリアが重なった場合などに発生する相互干渉を回避する必要がある。」(第1頁第6行?第2頁第14行)

(2)「本発明は、集中制御方式の無線通信システムを含む複数の無線通信システムにおける干渉を防止し、帯域を効率的に運用する技術を提供することである。」(第3頁第15行?第17行)

(3)「発明を実施するための最良の形態
本明細書においては、無線通信システム中でシステムを制御する局を基地局と呼ぶ。基地局は、アクセスポイント、ポーリングマスタ、ハブステーション、制御局などとも呼ばれる。また、通信を行う移動可能な各機器を移動局と呼ぶが、端末、ステーションなどと称されることがある。尚、第1の無線通信システムは、基地局を有しており、基地局の送信する制御信号に基づいて動作を行う集中制御方式の無線通信システムである。一方、第2の無線通信システムは、少なくとも移動局を有している。第2の無線通信システムには基地局が含まれていても良い。
発明者は、集中制御方式の第1の無線通信システムの基地局が送信する制御情報を、第2の無線通信システムの基地局又は移動局が解読することにより、第1の無線通信システムが使用しない時間領域を求め、その時間領域において第2の無線通信システムのデータ通信を行うことにより、第1の無線通信システムと第2の無線通信システムとの間で調整のための通信を行うことなく、お互いのシステム間の干渉を低減し、周波数の利用効率を高めることができると考えた。」(第5頁第16行?第6頁第3行)

(4)「第6図の上側2段のタイムチャートは、集中制御方式(第1の無線通信システム)の通信時間帯域利用例を示しており、1段目のタイムチャートは基地局3、2段目のタイムチャートは第3移動局11の送信利用帯域を示している。3段目、4段目のタイムチャートは、分散制御方式(第2の無線通信システム)の通信帯時間域利用例を示しており、その1段目のタイムチャートは第1移動局5の、2段目のタイムチャートは第2移動局7の送信利用帯域を示している。
まず、基地局3は、時間帯域(1)において制御情報31を発信することにより、集中制御方式の第1の無線通信システム1が使用する時間帯域(2)と(3)とを報知する。ここで、基地局3は、時間帯域(2)において第3移動局11へデータ(1)38を送信し、第3移動局11は、時間帯域(3)において、基地局3にデータ(2)39を送信する。以上の動作により、集中制御方式による双方向の無線通信が実現できる。
一方、第2の無線通信システム2については、以下の動作を行う。
第1の移動局5は、時間帯域(4)において第2の移動局7に送信時間帯の割当て要求を含んだデータ送信要求(RTS)信号44を送信する。
基地局3は、自己のシステム(集中制御方式の第1の無線通信システム1)の第3移動局11のデータ信号39に含まれる時間割当ての要求を察知する。第1及び第2の移動局5又は7の少なくともいずれかは制御情報31を受信し、第1の無線通信システム1が使用しない空き時間領域(第6図では、1フレーム内の(4)以後の時間領域)を識別する。
第1移動局5からのRTS信号に応答して、第2移動局7は、受信準備完了信号CTS46を時間帯域(5)において送信する。第1移動局5は、時間帯域(6)においてデータ(3)45を伝送する。第2移動局7は、時間帯域(7)において、データ受信完了信号ACK47を送信する。第6図の一番下のチャートに示すように、同一周波数における送信利用時間領域には重なりがない。」(第11頁第8行?第12頁第7行)

(5)「第7図は、本発明の第1の実施の形態による無線通信システムにおける第1移動局(第1図)の動作を示すフローチャートである。以下、主として第2図と第7図とを参照して、無線通信システムにおける移動局の動作について説明する。
第2の無線通信システム2(第1図)内の第1移動局5(第1図)は、ステップS43でデータ送信のための動作を開始する。次いで、ステップS45においてキャリアセンス処理を行う。キャリアセンス処理において、無線送受信処理手段20、復調手段21(第2図)により第2の無線通信システム2以外の電波が存在するか確認する。すなわち、ステップS45’において、他のシステムが存在するか否かを確認する。
ステップS45’において、第1の無線通信システム1の基地局3の制御情報31のプリアンブル信号36が捕捉された場合、その旨を通信制御手段28に通知し、ステップS46の制御信号受信処理を開始する。同時に、通信制御手段28は、タイミング生成手段29に対してプリアンブルによるフレーム先頭を通知し、タイミング生成手段29は内部カウンタによりフレーム内の経過時間をカウントしてフレーム同期をとる。
ステップS45’においてプリアンブル信号36が捕捉されない場合、すなわち他のシステムの存在が確認されない場合、第1移動局5は、他の無線通信システムが存在しないものとして、ステップS50-2に示す既存の分散制御による動作処理を行う。
制御信号31は、無線通信システム内の全ての移動局を対象とした信号であるため、一般に暗号化はされていないが、受信信号がスクランブラ等により処理されている場合、受信された制御信号31よりスクランブラの初期値を取り出し無線データ抽出手段22に設けられたデスクランブラによりスクランブルを解除する。次いで制御情報31を解読してフレーム内で送信利用さている帯域割当情報などのデータを抽出し取得し、受信データ保存手段23に一時保存する。
次に、ステップS47に進み、フレーム構成算出処理を行う。フレーム構成算出処理においては、通信制御手段28は、まず、受信データ保存手段23に一時保存された制御情報31により、フレーム内で第1の無線通信システム1がこのフレームで利用する時間領域と利用しない空白時間領域とを算出する。さらに、ステップS47-1において、算出結果により得られた空白時間領域が、第2の無線通信システム2のデータ送受信に必要な最低限の長さ以上あるか否かを判断する。本実施の形態においては、第2の無線通信システム2がデータ送受信を行うために必要な最低限の長さ、すなわちRTS信号+CTS信号+最小のデータ+ACK信号の送信に必要な長さを、必要な最低限の長さ以上あるか否かの判断基準とする。1フレーム内において、第2の無線通信システム2がデータ送受信を行うために利用可能な空白時間領域と利用できない利用不可能な通信不能時間領域とに区別して認識する。
次に、ステップS47のフレーム構成算出処理の結果に基づき、ステップS47-1において、本フレーム内に第2の無線通信システム2が送受信可能な空白時間領域が有るか否かを判断する。空白時間領域がない場合には、ステップS50に進み、フレームの終了まで送受信処理を停止する。例えば、通信制御手段28がタイミング情報生成手段29からの情報に基づき、次のフレームの制御情報の受信処理を開始するまでの間、無線送受信手段20,変調手段27及び復調手段21などの使用しない部分に向けての電力供給を停止することにより、移動局の消費電力を低減することができる。
ステップS47-1において、空白時間領域(帯域)があると判断された場合は、第1移動局5は、送信用データがバス制御手段24を通して送信データ保存手段25に渡され保存されているか確認する(例えば、無線LANカードが移動局で、無線LANカードが挿入されたノート型パソコンが無線LANに送信したいデータを、バスコントローラを利用してカードの送信バッファにデータを送る)。
ステップS47-2において送信データがあると判断された場合、ステップS48のデータ送信処理に進み、通信制御手段28は、送信データよりRTS+CTS+DATA+ACK信号の送信に要する時間を計算する。送信に要する時間が空き帯域以上であった場合は、送信データ保存手段25に保存されている送信データを、無線データ生成手段26で分割して空き帯域に入る大きさの送信用無線パケットに変換する。さらに、タイミング情報生成手段29のフレーム内の時間を示すカウンタ情報により、フレーム内の空き帯域先頭時間を判断して変調手段27に送信開始を通知する。
ステップS47-2で送信データがないと判断された場合は、ステップS49に進み、第1移動局5は、第2の無線通信システムの移動局(移動局7)からの送信データ受信に備える(データ受信準備処理)。
データ送信処理(ステップS48)、データ受信準備処理(ステップS49)中に、空白時間領域と通信不能時間領域とが時間的に交互に存在する場合には、通信不能時間領域の長さが予め設定された電力供給停止を行う。すなわち、送受信停止を行うのに十分な長さ、かつ、有効である長さより大きい場合、通信制御手段28は、その通信不能時間領域においても送受信停止処理を行って、移動局の消費電力を低減することができる。また、フレーム内空白時間領域がなくなった場合、フレーム内の残りの時間領域でステップS50に進み送受信停止処理を行う。
フレームの終了後、さらに無線通信を行う場合には、ステップS51からステップS46の第1の無線通信システム1の基地局3の制御信号受信処理に戻る。
データ送信処理(ステップS48)では、第6図に示すフレーム構成図の通りに、第2移動局7は、RTS信号44を受信した場合、CTS信号46を送信して、受信準備完了を通知する。CTS信号を受信した第1移動局5は、データ(3)45を送信する。データが正常に受信された場合、第2移動局7は、第1移動局5にたいして、ACK信号47を送り、受信完了を通知する。
以上により、第6図の一番下の全体での利用帯域例で示されるように2つの無線通信システムを、互いに干渉することなく共存させることができる。
以上に説明したように、本発明の第1の実施の形態による無線通信システムによれば、自己の通信時間帯の空き領域に第2の無線通信システムの通信時間帯を割り当てるので、時間帯の利用を有効に行うことができる。」(第12頁第22行?第15頁下から第5行)

(6)上記(1)?(5)の記載を総合すれば、引用文献には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「IEEE802.11a等の分散制御方式の第2の無線通信システム2は、第1移動局5と第2移動局7とを含み、基地局を含んでいてもよく、ステップS43において、第1移動局5は、データ送信のための動作を開始し、
Bluetooth等の集中制御方式の第1の無線通信システム1は、基地局3と第3移動局とを含み、ステップS45‘において、基地局3の制御情報31のプリアンブル信号36が捕捉された場合、その旨を通信制御手段28に通知し、制御情報31を解読してフレーム内で送信利用さている帯域割当情報などのデータを抽出し取得し、
ステップS47において、通信制御手段28は、まず、受信データ保存手段23に一時保存された制御情報31により、フレーム内で第1の無線通信システム1が利用する時間領域と利用しない空白時間領域とを算出し、
ステップS47-1において、算出結果により得られた空白時間領域が、第2の無線通信システム2のデータ送受信に必要な最低限の長さ以上あるか否かを、第2の無線通信システム2がデータ送受信を行うために必要な最低限の長さ、すなわちRTS信号+CTS信号+最小のデータ+ACK信号の送信に必要な長さを、必要な最低限の長さ以上あるか否かの判断基準として、判断し、1フレーム内において、第2の無線通信システム2がデータ送受信を行うために利用可能な空白時間領域と利用できない利用不可能な通信不能時間領域とに区別して認識して、空白時間領域(帯域)があると判断された場合は、第1移動局5は、送信用データがバス制御手段24を通して送信データ保存手段25に渡され保存されているか確認し、
ステップS47-2において、送信データがあると判断された場合、ステップS48のデータ送信処理に進み、
ステップS48において、通信制御手段28は、送信データよりRTS+CTS+DATA+ACK信号の送信に要する時間を計算し、送信に要する時間が空き帯域以上であった場合は、送信データ保存手段25に保存されている送信データを、無線データ生成手段26で分割して空き帯域に入る大きさの送信用無線パケットに変換し、第2移動局7は、RTS信号44を受信した場合、CTS信号46を送信して、受信準備完了を通知し、CTS信号を受信した第1移動局5は、データ(3)45を送信する無線通信システム」

3. 対比・判断
(1)本願補正発明と引用発明との対比
(あ)本願補正発明の「IEEE 802.15標準」は、近距離通信の標準規格であって、Bluetooth(登録商標)の規格であるIEEE802.15.1を含むものである。
引用発明の「Bluetooth等の集中制御方式の第1の無線通信システム1の基地局3」は、本願補正発明の「IEEE 802.15標準のもとで動作する装置」に相当する。
引用発明は、第1の無線通信システム1の基地局3の制御情報31のプリアンブル信号36が捕捉されると、フレーム内で第1の無線通信システム1がこのフレームで利用する時間領域と利用しない空白時間領域とを算出するのであるから、制御情報31のプリアンブル信号36を捕捉するために、第1の無線通信システム1の基地局3によって送信された伝送を検知しているということができる。
それゆえ、本願補正発明と引用発明とは、「IEEE 802.15標準のもとで動作する装置から前記装置によって送信された伝送を検知すること」を行う点で一致する。

(い)また、引用発明が算出する、フレーム内で第1の無線通信システム1が利用する時間領域と利用しない空白時間領域のうち、利用しない空白時間領域は、第1の無線通信システム1が休止している期間ということができ、引用発明において、「1フレーム内において、」「空白時間領域(帯域)があると判断」することは、第1無線通信システム1の基地局3の休止期間を決定することということができる。
それゆえ、本願発明と引用発明とは、「前記検知に基づいて前記装置の休止期間を決定すること」を行う点で一致する。

(う)引用発明は、「ステップS47-1において、算出結果により得られた空白時間領域が、第2の無線通信システム2のデータ送受信に必要な最低限の長さ以上あるか否かを、第2の無線通信システム2がデータ送受信を行うために必要な最低限の長さ、すなわちRTS信号+CTS信号+最小のデータ+ACK信号の送信に必要な長さを、必要な最低限の長さ以上あるか否かの判断基準として、判断し、1フレーム内において、第2の無線通信システム2がデータ送受信を行うために利用可能な空白時間領域と利用できない利用不可能な通信不能時間領域とに区別して認識して、空白時間領域(帯域)があると判断された場合」において、「第1移動局5」は、送信データが保存されているか確認し、「ステップS47-2において、送信データがあると判断された場合、ステップS48のデータ送信処理に進」むものであって、「通信制御手段28は、送信データよりRTS+CTS+DATA+ACK信号の送信に要する時間を計算」し、「送信に要する時間が空き帯域以上であった場合は、送信データ保存手段25に保存されている送信データを、無線データ生成手段26で分割して空き帯域に入る大きさの送信用無線パケットに変換する。」ものである。
すなわち、引用発明は、「空白時間領域」が、「RTS信号+CTS信号+最小のデータ+ACK信号の送信」に必要な長さ以上あれば、(利用可能な)空白時間領域があると判断され、送信データがあればデータ送信処理がなされるものであって、「空白時間領域」が、「RTS信号+CTS信号+最小のデータ+ACK信号の送信に必要な長さ」以上あることと、第1移動局5から第2移動局7に送信される送信データがあることを条件として、第2の無線通信システムの第1移動局5はデータ送信を行うものである。
そして、「RTS+CTS+DATA+ACK信号の送信に要する時間」が「空き帯域以上であった場合」は、送信データを「分割して空き帯域に入る大きさの送信用無線パケットに変換する」のであるから、逆に、前記「送信に要する時間」が「空き帯域」以下であれば、送信データを分割しないで送信するものと解され、結局のところ、引用発明は、トラヒックである「RTS+CTS+DATA+ACK信号」のデータ量が「空白時間領域」内に納まるようにするために、必要に応じて送信データを分割制限することによって、「空白時間領域」内にデータ送信するようにしている。
それゆえ、引用発明は、第1移動局5が通信するためのトラヒックが、空白時間領域内に制限されることを保証するための処理を行っているということができる。

(え)本願補正発明における「少なくとも1つの条件」について、本願明細書には、
「【0071】
ステーションは、すべての休止期間あるいはいくつかの休止期間、アクセスポイントと通信する。ステーションは、少なくとも1つの条件に基づいて、所与の休止期間にアクセスポイントと通信するかどうかを決定する。その条件は、データの周期性(例えばコーデックのフレーミング間隔)、アクセスポイントにおけるステーション宛のデータの存在、ステーションにおけるアクセスポイントに送るデータの存在、あるいはその組み合わせに関連する。」
と説明がなされている(下線は、当審が付した。)。
すなわち、単に、「アクセスポイントにおけるステーション宛のデータの存在、ステーションにおけるアクセスポイントに送るデータの存在」が条件とされるだけのものである。
引用発明も、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)の規格の一つであるIEEE802.11a等の分散制御方式の第2の無線通信システム2における第1移動局5から第2移動局7に送信される送信データがあることを条件としているものであるから、引用発明は、第1の無線通信システム1の基地局3の休止期間に対する少なくとも1つの条件が満たされるかどうかを決定しているということができる。

(お)上記(う)と(え)とを総合すると、本願補正発明と引用発明とは、「無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)中において通信するためのトラヒックが前記休止期間内に制限されることを保証するために前記装置の休止期間に対する少なくとも1つの条件が満たされるかどうかを決定すること」を行う点で共通する。
また、引用発明は、「空白時間領域(帯域)があると判断された場合」に、第1移動局5がデータを送信するものであるから、本願補正発明と引用発明とは、「前記少なくとも1つの条件が満たされる場合に、前記装置の休止期間に前記WLAN中のアクセスポイントと通信すること」を行う点で一致する。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、相違する。

[一致点]
「IEEE 802.15標準のもとで動作する装置から前記装置によって送信又は受信された伝送を検知することと、
前記検知に基づいて前記装置の休止期間を決定することと、
無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)中の通信装置と通信するためのトラヒックが前記休止期間内に制限されることを保証するために前記装置の休止期間に対する少なくとも1つの条件が満たされるかどうかを決定することと、
前記少なくとも1つの条件が満たされる場合に、前記装置の休止期間に前記WLAN中の通信装置と通信することと、
を備えた、ステーションの動作方法。」

[相違点]
本願補正発明は、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)中のアクセスポイントと通信するのに対して、
引用発明は、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)中のアクセスポイントと通信するものではなく、移動局7と通信するものである点。

(2)相違点に対する判断
上記2.(3)に摘記したように、引用発明の第2の無線通信システムは、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)中において通信を行うものであって、少なくとも移動局を有していて、基地局を含んでいてもよいものであるから、一般にアドホックモードといわれるような、第1移動局5が第2移動局7に対して、直接に通信を行うこともあれば、インフラストラクチャーモードといわれるような、基地局を介して通信を行ってもよいものである。
また、無線ローカルエリアネットワークにおける基地局をアクセスポイントと呼ぶことが通例である。
それゆえ、引用発明において、無線ローカルエリアネットワークである第2の無線通信システムにおける第1移動局5の通信先をアクセスポイントとすることは、当業者が容易になし得たことである。

以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.まとめ
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明の認定
平成24年7月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成23年11月29日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1?42に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項20に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。
「【請求項20】
IEEE 802.15標準のもとで動作する装置から前記装置によって送信又は受信された伝送を検知することと、
前記検知に基づいて前記装置の休止期間を決定することと、
前記装置の休止期間に対する少なくとも1つの条件が満たされるかどうかを決定することと、
前記少なくとも1つの条件が満たされる場合に、前記装置の休止期間に無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)中のアクセスポイントと通信することと、
を備えた、ステーションの動作方法。」

2.引用文献
原審拒絶理由に引用された文献、および、その記載事項は、前記第2 2.に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明の限定事項である構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2 3.に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.まとめ
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-06-06 
結審通知日 2013-06-11 
審決日 2013-06-24 
出願番号 特願2009-513370(P2009-513370)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04Q)
P 1 8・ 121- Z (H04Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 廣川 浩  
特許庁審判長 吉村 博之
特許庁審判官 加藤 恵一
吉田 隆之
発明の名称 共同設置されたWLANおよびBluetoothのための効率的なオペレーション  
代理人 井関 守三  
代理人 峰 隆司  
代理人 高倉 成男  
代理人 福原 淑弘  
代理人 野河 信久  
代理人 竹内 将訓  
代理人 堀内 美保子  
代理人 岡田 貴志  
代理人 中村 誠  
代理人 砂川 克  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 河野 直樹  
代理人 白根 俊郎  
代理人 佐藤 立志  
代理人 蔵田 昌俊  

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