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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F28F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F28F |
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管理番号 | 1281679 |
審判番号 | 不服2012-15760 |
総通号数 | 169 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-01-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-08-13 |
確定日 | 2013-11-13 |
事件の表示 | 特願2009-193861号「空調装置用熱交換器」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 6月10日出願公開、特開2010-127612号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成21年8月25日(パリ条約による優先権主張 2008年11月27日 大韓民国)の出願であって 、平成24年4月13日付けで拒絶査定がなされ(発送:4月17日)、これに対し、平成24年8月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判請求と同時に手続補正がなされたものである。 第2.平成24年8月13日の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成24年8月13日の手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の請求項1に記載された発明 平成24年8月13日の手続補正(以下「本件補正」という。)により特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりに補正された。 「【請求項1】 所定間隔を置いて配置された複数のフィンと、複数の段と複数の列をなしながら前記フィンを貫通して設置されその内部を冷媒が流れるチューブと、を具備する空調装置用熱交換器において、 空気の流れに対して垂直な前記熱交換器の全体断面積に対する前記フィンと前記チューブとの間に形成される全体空気流路断面積の割合が0.8ないし0.9であり、 互いに隣接した一対の前記フィンの間で1列の前記チューブによって区画される複数の空気流路断面積の平均値に対する各空気流路断面積の割合が0.5以下の空気流路断面積の個数が全体空気流路断面積個数の20%以下であることを特徴とする空調装置用熱交換器。」(下線部は補正箇所に対応する。下線は当審にて付与、以下同じ。) 上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「熱交換器の全体断面積に対する前記フィンと前記チューブとの間に形成される全体空気流路断面積の割合」に関して、補正前「0.7ないし0.9」であったものを「0.8ないし0.9」との限定を行うものであり、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 2.引用刊行物とその記載事項 (1)原査定の拒絶理由にて引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2005-288502号公報(以下「刊行物1」という。)には、図6と共に、以下の記載がある。 ア.「【0001】 本発明は、エアコンおよび冷凍空調機器に用いられるプレートフィンチューブ型熱交換器の製造に際し、熱交換器に使用される金属管の拡径に用いる拡管用工具およびそれを使用した拡管方法に係り、特に、多数の溝および溝間に形成されたフィンをその内面に有する内面溝付管の拡径に用いる拡管用工具およびそれを使用した拡管方法に関する。」(段落【0001】) イ.「【0030】 (熱交換器) 次に、本発明の拡管用工具を使用して製造される熱交換器について説明する。図5、図6はプレートフィンチューブ型熱交換器10の好適な例である。図5、図6に示すように、熱交換器10は、互いに平行に所定の間隔(フィンピッチPb)で配置された薄板状の複数のフィンプレート11と、これらのフィンプレート11に設けられた複数の貫通穴11aに挿入され、フィンプレート11と直交するように接合されたU字状に所定幅(曲げピッチPa)で加工された複数の内面溝付管1と、これら内面溝付管1の両端部に接合し、内面溝付管1をフィンプレート11の長手方向に所定の間隔(段方向ピッチ:前記曲げピッチPaと同間隔)で複数段、および所定の間隔(列ピッチPc)で複数列に直列に連結するUベント管12とを備える。」(段落【0030】) ウ.「【0038】 次に、前記内面溝付管1を各拡管用ビュレットで拡管し、図5および図6に示すプレートフィンチューブ型の熱交換器10を作製した。なお、熱交換器10の仕様は以下の通りとした。 (熱交換器10) 外形は、高さ250mm×長さ250mm×幅25.4mmとした。 (フィンプレート11) JISH4000に規定された合金番号1N30のアルミニウムからなる板材で、板材の表面を樹脂で被覆したものである。また、フィンプレート11の厚さは100μm、貫通穴11aの穴径は7.3mmとした。そして、200枚のフィンプレート11をフィンピッチPb1.25mmで平行に配置した。 (内面溝付管1の配置) 内面溝付管1をU字状に加工し、フィンプレート11に設けられた貫通穴11aに挿入し、2列12段(曲げピッチPa21mm、列方向ピッチPc12.7mm)に配置した(有効伝熱管長は約6.7mであった)。」(段落【0038】) エ.図6には、「所定間隔を置いて配置された複数のフィンプレート11と、2列12段をなしながら前記フィンプレート11を貫通して設置されその内部を冷媒が流れる内面溝付管1とを具備するエアコンおよび冷凍空調機器用熱交換器10」が図示されている。 オ.ウに記載された数値から、「空気の流れに対して垂直な熱交換器の全体断面積に対する前記フィンプレート11と前記内面溝付管1との間に形成される全体空気流路断面積の割合」を(本願明細書【数3】式にしたがって)求めると、0.60となる。 カ.イに「互いに平行に所定の間隔」、「長手方向に所定の間隔」と記載されているように、刊行物1記載の熱交換器においては、フィンプレート11、内面溝付管1のそれぞれが所定のピッチで配されているものと認められ、「互いに隣接した一対のフィンプレート11の間で1列の前記内面溝付管1によって区画される複数の空気流路断面積の平均値に対する各空気流路断面積の割合が0.5以下の空気流路断面積の個数」は、全体空気流路断面積個数の20%以下といえる。 上記記載事項ア?ウ、図示事項エ、認定事項オ、カを総合すると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 所定間隔を置いて配置された複数のフィンプレート11と、2列12段をなしながら前記フィンプレート11を貫通して設置されその内部を冷媒が流れる内面溝付管1と、を具備するエアコンおよび冷凍空調機器用熱交換器10において、 空気の流れに対して垂直な前記熱交換器の全体断面積に対する前記フィンプレート11と前記内面溝付管1との間に形成される全体空気流路断面積の割合が0.60であり、 互いに隣接した一対の前記フィンプレート11の間で1列の前記チューブによって区画される複数の空気流路断面積の平均値に対する各空気流路断面積の割合が0.5以下の空気流路断面積の個数が全体空気流路断面積個数の20%以下であるエアコンおよび冷凍空調機器用熱交換器10。 (2)本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2003-21485号公報(以下「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。 キ.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、空気調和機、冷凍庫、冷蔵庫、ショーケース等に使用され、冷媒と空気等の流体間で熱の授受を行うフィンチューブ型熱交換器に関する。」(段落【0001】) ク.「【0007】本発明は上記の事情を考慮してなされたもので、その目的は伝熱管の伝熱性能を向上させると共に、通風抵抗を小さくすることのできるフィンチューブ型熱交換器を提供するにある。」(段落【0007】) (3)本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2001-317890号公報(以下「刊行物3」という。)には、以下の記載がある。 ケ.「【0021】ここで、伝熱管13の外径Doを一定とした場合、管段ピッチPsが大きくなるほどフィン11の効率が低下し、同一開口面積での伝熱管13の使用量が低下し、熱交換能力は低下するが、その一方で通風抵抗△Pは大幅に低下する。また、管列ピッチPrが小さくなるほど気流方向の奥行きが減り、伝熱面積が減少し、熱交換能力が低下するが、その一方で通風抵抗△Pは大幅に低下する。さらに、伝熱管13の外径Doが大きくなるほど通風抵抗△Pは増加し、小さくなるほど通風抵抗△Pは低下する。」(段落【0021】) 3.発明の対比 本願補正発明と刊行物1記載の発明を対比すると、刊行物1記載の発明における「フィンプレート11」は本願補正発明における「フィン」に相当し、以下同様に、「2列12段」は「複数の段と複数の列」に、「内面溝付管1」は「チューブ」に、「エアコンおよび冷凍空調機器用熱交換器10」は「空調装置用熱交換器」に、各々相当する。 また、刊行物1記載の発明における「空気の流れに対して垂直な前記熱交換器の全体断面積に対する前記フィンプレート11と前記内面溝付管1との間に形成される全体空気流路断面積の割合が0.60であり」も、本願補正発明における「空気の流れに対して垂直な前記熱交換器の全体断面積に対する前記フィンと前記チューブとの間に形成される全体空気流路断面積の割合が0.8ないし0.9であり」も、共に「空気の流れに対して垂直な前記熱交換器の全体断面積に対する前記フィンと前記チューブとの間に形成される全体空気流路断面積の割合が所定値であり」といえる。 よって、両者の一致点、相違点は、次のとおりである。 (一致点) 所定間隔を置いて配置された複数のフィンと、複数の段と複数の列をなしながら前記フィンを貫通して設置されその内部を冷媒が流れるチューブと、を具備する空調装置用熱交換器において、 空気の流れに対して垂直な前記熱交換器の全体断面積に対する前記フィンと前記チューブとの間に形成される全体空気流路断面積の割合が所定値であり、 互いに隣接した一対の前記フィンの間で1列の前記チューブによって区画される複数の空気流路断面積の平均値に対する各空気流路断面積の割合が0.5以下の空気流路断面積の個数が全体空気流路断面積個数の20%以下である空調装置用熱交換器。 (相違点) 空気の流れに対して垂直な前記熱交換器の全体断面積に対する前記フィンと前記チューブとの間に形成される全体空気流路断面積の割合である所定値が、本願補正発明においては「0.8ないし0.9」であるのに対し、刊行物1記載の発明においては「0.60」である点。 4.判断 そこで、上記相違点につき検討する。 刊行物1記載の発明の熱交換器型式は一般にフィンチューブ型熱交換器と呼ばれ、この型式の熱交換器においても、従来より「伝熱管の伝熱性能を向上させると共に、通風抵抗を小さくすること」が、課題として存在していた(刊行物2、摘記事項キ、ク参照)。 一方、例えば、本願明細書の「一般に、熱伝逹量は、空気と熱交換器の熱交換面積に比例し、空気が熱交換器を通過する時の空気抵抗に反比例し、空気の流速に比例する。したがって、熱伝逹量を大きくするためには、熱交換面積を大きくするか、空気の抵抗を最小化することが必要である。」(段落【0002】)との記載や、刊行物3の記載(摘記事項ケ参照)からも理解されるように、「チューブの段ピッチ(刊行物1記載の「曲げピッチ(段方向ピッチ)Pa」、刊行物3記載の「管段ピッチPs」に相当)を拡大すると空気流路面積の増加により空気抵抗を低減させることができ、熱交換器全体の大きさの拡大を許容するならば、熱交換器の熱伝達量を大きくできる」ことは、本願の優先日以前に技術常識となっていた事項である。 また、本願の図4及び表1の記載をみると、熱伝達量は「空気の流れに対して垂直な熱交換器の全体断面積に対するフィンとチューブとの間に形成される全体空気流路断面積の割合(以下「空気流路断面比」という。)」の増加(0.1から0.9)に比例する形で、ほぼ直線的に増加しており、本願補正発明の数値範囲(0.8ないし0.9)が、作用効果面で臨界的意義を有するものとは認められない。 したがって、刊行物1記載の発明において、さらに伝熱管の伝熱性能を向上させると共に通風抵抗を小さくするために、チューブの段ピッチ間隔を拡大し、空気流路断面比を「0.60」から「0.8ないし0.9」へと拡大することは、上記技術常識を参酌することにより、当業者が容易になしえた事項である。 そして、本願補正発明により得られる効果も、刊行物1記載の発明及び上記技術常識から、当業者であれば、予測できる程度のものであって、格別なものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、刊行物1記載の発明及び上記技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5.請求人の主張の検討 (1)請求人の主張 平成25年3月7日付け回答書で請求人は、概ね、以下の2点を主張している。 (主張1) 空気流路断面比の「約0.63」と「0.8」との間には、顕著な作用効果の差があることは明らかです。(回答書第4頁第20行?第22行) (主張2) 引用文献1には、本願の明細書に記載される「熱伝達量測定値」の「理論設計値に対する比率」がどの程度であるかについて何ら記載されていません。言い換えると、引用文献1には、「熱伝達量測定値」の「理論設計値に対する比率」については、何ら考慮されていません。 ここで、引用文献1には、「空気流路断面比」により、熱交換器の性能を評価するとの考えは何ら示されていないにもかかわらず、「空気流路断面比」での数値範囲を引用文献1に記載される熱交換器についての数値から計算上導出される数値とは顕著に異なる本願請求項1に記載される数値範囲を設定することが、当業者に適宜なしえるとは到底考えられません。(回答書第5頁第1行?第9行) (2)検討 (主張1について) 上記4.判断で述べたとおり、本願補正発明の数値範囲(0.8ないし0.9)は、作用効果面で臨界的意義を有するものとは認められず、請求人の主張1は採用できない。 (主張2について) 引用文献1には「熱伝達量測定値」の「理論設計値に対する比率」がどの程度であるかについて記載されていないが、この値は、定性的には、従来より課題とされている「伝熱管の伝熱性能の向上」(刊行物2、摘記事項キ、ク参照)を評価する尺度の一つに過ぎず、また、本願補正発明の発明特定事項として記載されたものでもない。 さらに、上記4.判断で述べたとおり、伝熱管の伝熱性能を向上させると共に通風抵抗を小さくするためにチューブの段ピッチ間隔を拡大し「空気流路断面比」を大きくすることは、技術常識を参酌することにより、当業者が容易になしえた事項である。 よって、請求人の主張2は採用できない。 6.結び 以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 第3.本願発明について 1.本願発明 本件補正は、上述のとおり却下されたので、本願の請求項1、2に係る発明は、平成23年11月16日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 所定間隔を置いて配置された複数のフィンと、複数の段と複数の列をなしながら前記フィンを貫通して設置されその内部を冷媒が流れるチューブと、を具備する空調装置用熱交換器において、 空気の流れに対して垂直な前記熱交換器の全体断面積に対する前記フィンと前記チューブとの間に形成される全体空気流路断面積の割合が0.7ないし0.9であり、 互いに隣接した一対の前記フィンの間で1列の前記チューブによって区画される複数の空気流路断面積の平均値に対する各空気流路断面積の割合が0.5以下の空気流路断面積の個数が全体空気流路断面積個数の20%以下であることを特徴とする空調装置用熱交換器。」 2.刊行物とその記載事項 原査定で引用された刊行物(刊行物1)並びに刊行物2と、その記載事項は、上記の「第2.2」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明における発明特定事項である「空気の流れに対して垂直な前記熱交換器の全体断面積に対する前記フィンと前記チューブとの間に形成される全体空気流路断面積の割合」に関して、「0.8ないし0.9」としていてものを下限値を拡大して「0.7ないし0.9」としたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加した(拡大した数値範囲を有する)ものに相当する本願補正発明が、前記「第2.4」に記載したとおり、刊行物1記載の発明及び本願優先日前の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1記載の発明及び本願優先日前の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.結び 以上のとおり、本願発明は刊行物1記載の発明及び本願優先日前の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-06-13 |
結審通知日 | 2013-06-18 |
審決日 | 2013-07-02 |
出願番号 | 特願2009-193861(P2009-193861) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F28F)
P 1 8・ 575- Z (F28F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 柿沼 善一 |
特許庁審判長 |
竹之内 秀明 |
特許庁審判官 |
前田 仁 鳥居 稔 |
発明の名称 | 空調装置用熱交換器 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 南山 知広 |
代理人 | 鶴田 準一 |
代理人 | 中村 健一 |
代理人 | 河合 章 |