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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01B
管理番号 1281725
審判番号 不服2012-19084  
総通号数 169 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-09-28 
確定日 2013-12-06 
事件の表示 特願2011-146374「映像表示装置、映像表示方法およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月24日出願公開、特開2013- 15324、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

特許出願: 平成23年6月30日
拒絶理由通知:平成24年4月9日(発送日:同年同月17日)
手続補正: 平成24年6月13日 (以下、「補正1」という。)
拒絶査定: 平成24年6月29日(送達日:同年7月3日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成24年9月28日


第2 本願発明
本願の請求項1-9に係る発明は、補正1によって補正された明細書、特許請求の範囲、及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められる。
そこで、まず、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)について検討するに、本願発明は、以下のとおりである。

「カメラと、
ディスプレイと、
前記ディスプレイに所定の表示座標を基準として所定の図形を表示させる第1表示手段と、
鏡に映し出された前記図形の鏡像を前記カメラで撮影して得られたカメラ映像上において、前記鏡像を検出した検出座標を取得する検出手段と、
前記所定の図形の表示座標と前記鏡像の検出座標との相対的位置関係に基づいて、前記カメラで撮影されたカメラ映像における座標を前記ディスプレイの表示座標に対応させるための補正係数を算出する算出手段と、
カメラ映像に含まれている人の顔の位置を検出する位置検出手段と、
前記ディスプレイの表示座標に対する前記顔の位置を前記補正係数によって補正する補正手段と、
を備える映像表示装置。」


第3 原査定の理由の概要
請求項1-9に係る各発明は、いずれも、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



刊行物1:国際公開第2010/132305号
刊行物2:特開2010-250452号公報
刊行物3:特開2009-42162号公報


第4 当審の判断
1.刊行物の記載事項
刊行物1には、次の事項(a)ないし(c)が図面とともに記載されている。

(a)
「In addition to displaying information, the handheld device 100 may also include image analysis capability to automatically recognize persons, places, or things by analyzing images taken from the handheld device's 100 camera (or cameras) .」(第7頁第18行?同第22行)
(なお、対応する特表2012-525949号公報(段落【0014】)の記載は次のとおりである。
「情報を表示することに加えて、携帯式装置100はまた、携帯式装置100の1つのカメラ(又は複数のカメラ)から撮影された画像を解析することにより、人、場所又は物を自動的に認識する画像解析機能を有することができる。」)

(b)
「In Figure 2a, a calibration stand 200 is shown with the handheld device 100 mounted in it. The calibration stand 200 comprises a base 202 and a mirror 204. The calibration stand 200 positions the handheld device 100 at a fixed distance and orientation relative to the mirror 204 so that a test image 206 creates a reflection 208 that can be observed by the camera 112 (the camera is not explicitly visible in Figure 2a, but it's relative position is clear from Figure 1, so it is identified consistently by the numbering in Figure 2a) . Please note that the test image 206 and the reflection 208 are shown just in front of the handheld device 100 and the mirror 204 in the cross sectional view shown in Figure 2a. Of course, they would in practice actually appear on the surface of the handheld device's 100 display 104 and, respectively, on the surface of the mirror 204, but such a view is not possible in a cross sectional drawing. The handheld device 100 is inserted into the base 202 and a self-testing and calibration sequence is initiated by the user to ensure that the handheld device 100 is operating properly and can provide good quality measurements. The handheld device 100 can display a wide range of images and observe them back through it's camera to ensure that the shape, color, contrast, size, and other aspects of the images are displayed as they should be. The calibration stand 200 is clearly desirable for such self- testing and self-calibration, but it is noted that this could be undertaken by simply holding the device in front of a reflective surface and initiating the self-testing and calibration sequence. Of course, given the potential for different distances, movement of the handheld device, and other factors, the use of a calibration stand 200 may be preferred. 」(第9頁第4行?第10頁第4行)
(なお、対応する特表2012-525949号公報の記載は次のとおりである。
「【0016】
図2aに、携帯式装置100が取り付けられている較正台200を示す。較正台200は、基部202及びミラー204を備えている。較正台200は、携帯式装置100を、ミラー204に対して一定の距離及び向きに配置し、それにより、検査画像206が、カメラ112によって観察することができる反射208を生成する(カメラは、図2aでは明示的には見えないが、その相対的な位置は図1から明らかであるため、図2aでは番号付けにより一貫して識別される)。図2aに示す断面図では、検査画像206及び反射208が、携帯式装置100及びミラー204のすぐ正面に示されていることに留意されたい。当然ながら、それらは実際には、それぞれ携帯式装置100のディスプレイ104の表面とミラー204の表面とに現れるが、こうした図は断面図では不可能である。携帯式装置100は基部202に挿入され、携帯式装置100が適切に動作しており、かつ優れた品質の測定値を提供することができることを確保するように、使用者によりセルフテスト及び自己較正手続きが開始される。携帯式装置100は、広範囲の画像を表示し、そのカメラを通じてそれらの画像を再度観察することにより、画像の形状、色、コントラスト、サイズ及び他の態様があるべき形態で表示されることを確保することができる。較正台200は、こうしたセルフテスト及び自己較正に対して明らかに望ましいが、これは、単に装置を反射面の正面に保持しセルフテスト及び自己較正手続きを開始することによって取りかかることができることが留意される。当然ながら、種々の距離、携帯式装置の動き及び他の要素に関する可能性を考慮すると、較正台200の使用が好ましい可能性がある。」)

(c)
「Figure 2b shows a perspective view of a handheld device 100 mounted in a calibration stand 200 including a base 202 and mirror 204. This view is shown to avoid any confusion related to the similar view of a handheld device 100 in a calibration stand 200 shown in Figure 2a. On the mirror 204, a reflection 220 of the handheld device 100 is visible. This reflection 220 may be analyzed as already described with regard to Figure 2a by using the camera 112 to create an image of the reflection 220 and use of data processing functions in the handheld device 100 to analyze the calibration image 222 visible in the reflection 220. Note that the camera 112 is not actually visible in Figure 2b, but the camera reflection 224 of camera 112 is visible. The generation of a calibration image 222 will be discussed next with regard to Figure 2c.
Figure 2c shows a calibration image 240 that may be used for calibration and testing of the handheld device 100 either through use of the calibration stand 200 or with a reflective surface as described above. In the course of testing and calibrating the handheld device 100, a calibration image 240 is displayed on the display 104 and the reflection of the calibration image 240 is observed with a camera 112. A very wide variety of calibration images 240 may be used. The calibration image 240 shown in Figure 2c includes crosses 244, circles 246, squares 248, and triangles 250 inside display boundary 242. The shapes shown in the calibration image 240 are shown in black and white for convenience. However, a very wide variety of shapes, images, features, shadings, textures, colors, line weights, and other aspects may be used in an image for calibration and handheld device 100 testing purposes. For example, rectangles, wavy lines, ellipses, trapezoids, and very many other shapes and images displayed in all possible colors, shadings, brightness levels, and other factors may be used as test images or as part of a test image. And, in addition to stationary images, moving images and video images may be used. Many standard video and image calibration charts may also be used.」(第11頁第25行?第13頁第2行)
(なお、対応する特表2012-525949号公報の記載は次のとおりである。
「【0020】
図2bは、基部202及びミラー204を有する較正台200に取り付けられている携帯式装置100の斜視図を示す。この図は、図2aに示す較正台200における携帯式装置100の同様の図に関連するいかなる混乱も回避するように示されている。ミラー204上に、携帯式装置100の反射220が見える。図2aに関して上述したように、カメラ112を用いて反射220の画像を生成し、携帯式装置100のデータ処理機能を用いて反射220に見える較正画像222を解析することにより、この反射220を解析することができる。図2bではカメラ112は実際には見えないが、カメラ112のカメラ反射224が見えることに留意されたい。較正画像222の生成について、次に図2cを参照して説明する。
【0021】
図2cは、較正台200を用いるか又は上述した反射面を用いて、携帯式装置100の較正及びテストに用いることができる較正画像240を示す。携帯式装置100のテスト及び較正の過程において、ディスプレイ104に較正画像240が表示され、較正画像240の反射がカメラ112によって観察される。非常に多種多様の較正画像240を用いることができる。図2cに示す較正画像240は、ディスプレイ境界242内に十字244、円246、正方形248及び三角形250を含む。較正画像240に示す形状は、便宜上白黒で示されている。しかしながら、較正及び携帯式装置100のテストの目的で、画像において非常に多種多様の形状、画像、特徴、陰影、テクスチャ、色、線の太さ及び他の態様を用いることができる。例えば、すべてのあり得る色、陰影、輝度レベル及び他の要素で表示される矩形、波線、楕円、台形及び非常に多くの他の形状及び画像を、テスト画像又はテスト画像の一部として用いることができる。また、静止画像に加えて、動画及びビデオ画像を用いることができる。多くの標準的な映像及び画像較正チャートを用いることも可能である。」)

以上の点を踏まえ、上記記載(b)ないし(c)、及び図面のFIG.1?FIG.2cの記載から、引用刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。

「カメラ112と、
ディスプレイ104と、
前記ディスプレイ104に較正画像240を表示させる手段と、
ミラー204上の前記較正画像240の反射を前記カメラ112によって観察する手段と、
を備える携帯式視力検査装置。」(以下「引用発明」という。)


2.対比
本願発明と引用発明とを、主たる構成要件毎に、順次対比する。

まず、引用発明における「カメラ112」及び「ディスプレイ104」は、それぞれ本願発明における「カメラ」及び「ディスプレイ」に相当し、引用発明における「ディスプレイ104に較正画像240を表示させる手段」は、本願発明における「ディスプレイに所定の表示座標を基準として所定の図形を表示させる第1表示手段」に相当する。
また、引用発明における「携帯式視力検査装置」は、ディスプレイに所定の図形を表示させるものであるから、本願発明における「映像表示装置」に相当する。
さらに、引用発明における「ミラー204上の前記較正画像240の反射を前記カメラ112によって観察する手段」と、本願発明における「鏡に映し出された前記図形の鏡像を前記カメラで撮影して得られたカメラ映像上において、前記鏡像を検出した検出座標を取得する検出手段」とは、共に、「鏡に映し出された前記図形の鏡像を前記カメラで撮影」する手段である点で共通する。

してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「カメラと、
ディスプレイと、
前記ディスプレイに所定の表示座標を基準として所定の図形を表示させる第1表示手段と、
鏡に映し出された前記図形の鏡像を前記カメラで撮影する手段と、
を備える映像表示装置。」

(相違点)
(1)本願発明においては、「鏡に映し出された前記図形の鏡像を前記カメラで撮影する手段」が、その「得られたカメラ映像上において、前記鏡像を検出した検出座標を取得する検出手段」であるのに対し、引用発明においては、較正画像240は、視力検査用の「画像の形状、色、コントラスト、サイズ及び他の態様があるべき形態で表示されることを確保する」ためのものであって、その検出座標の取得は行われていない点。

(2)本願発明が、「前記所定の図形の表示座標と前記鏡像の検出座標との相対的位置関係に基づいて、前記カメラで撮影されたカメラ映像における座標を前記ディスプレイの表示座標に対応させるための補正係数を算出する算出手段」を備えるのに対し、引用発明はそのような手段を有さない点。

(3)本願発明が、「カメラ映像に含まれている人の顔の位置を検出する位置検出手段」を備えるのに対し、引用発明はそのような手段を有さない点。

(4)本願発明が、「前記ディスプレイの表示座標に対する前記顔の位置を前記補正係数によって補正する補正手段」を備えるのに対し、引用発明はそのような手段を有さない点。


3.判断
上記各相違点(1)-(4)について、併せて検討する。
上記刊行物2には、カメラを備えたディスプレイ装置において、カメラパラメータを較正してカメラ撮像映像を補正し、ディスプレイに表示する装置(以下「周知技術1」という。)が開示されている。
しかしながら、周知技術1は、テレビ会議システム等において、送信先ディスプレイにおける表示を適切なものとするために、画像を複数台のカメラから合成する技術に関するものであるから、これを、単独で用いられることを前提とした視力検査装置であって、複数のカメラを必要としない引用発明に適用する動機はない。逆に、視力検査に用いる表示画像の較正を目的とする引用発明を、周知技術1に適用する動機も存在しない。したがって、引用発明に周知技術1を適用することはできない。
仮に上記のように適用をしたとしても、そもそも刊行物1及び2には、「ディスプレイの表示座標」に基づく処理に関して何ら記載されておらず、本願発明に係る「前記所定の図形の表示座標と前記鏡像の検出座標との相対的位置関係に基づいて、前記カメラで撮影されたカメラ映像における座標を前記ディスプレイの表示座標に対応させるための補正係数を算出する算出手段」が導かれることにもならない。
さらに、刊行物1及び2には、本願発明に係る「カメラ映像に含まれている人の顔の位置を検出」して、「前記ディスプレイの表示座標に対する前記顔の位置を前記補正係数によって補正する補正手段」についても記載されていない。刊行物1には、撮影された画像を解析して人を認識する機能に関する記載がある(上記「1.刊行物の記載事項(a)」)ものの、顔の位置を検出することも、顔をディスプレイに表示することについても記載されておらず、このことが上記記載事項(a)から自明であるともいえない。また、刊行物3は、モニタを備えないカメラのキャリブレーションに関する位置検出技術を開示するにとどまる。
そして、本願発明は、上記相違点(2)-(4)として挙げた構成を備えることにより、映像表示装置に固定されたカメラの、ディスプレイに対するキャリブレーションを容易に行えるという、特段の作用効果を奏する。
したがって、本願発明は、引用発明、周知技術1及び刊行物3に記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
請求項2-6に係る発明は、本願発明をさらに限定した装置発明であり、請求項7に係る発明は、本願発明と同内容の装置発明であり、請求項8に係る発明は、本願発明と同等の方法発明であり、請求項9に係る発明は、本願発明と同等のプログラム発明である。よって、本願の請求項2-9に係る発明も、同様に、引用発明、周知技術1及び刊行物3に記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。


第5 むすび
以上のとおり、本願の各請求項に係る発明は、いずれも引用発明、周知技術1及び刊行物3に記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-11-11 
結審通知日 2013-11-15 
審決日 2013-11-26 
出願番号 特願2011-146374(P2011-146374)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 有家 秀郎  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 中塚 直樹
関根 洋之
発明の名称 映像表示装置、映像表示方法およびプログラム  
代理人 藤原 康高  

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