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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B21B
管理番号 1281739
審判番号 不服2012-9189  
総通号数 169 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-18 
確定日 2013-11-14 
事件の表示 特願2008-553633「スチール又はスチール合金から成る連続鋳造製品の加熱及び/又は温度補償をするためのローラ炉床炉と熱間ストリップ仕上げ圧延ラインの前にローラ炉床炉を配設するための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 8月16日国際公開、WO2007/090455、平成21年 7月16日国内公表、特表2009-525874〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本願は、2006年12月18日(パリ条約による優先権主張 2006年2月8日、ドイツ国)を国際出願日とする出願であって、平成23年2月28日付けの拒絶理由通知に対して、平成23年6月14日に意見書が提出されるとともに同日に手続補正がされたが、平成23年12月26日付けで拒絶査定がなされた。これに対して、平成24年5月18日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに同日に手続補正(「発明の名称」についてのみの補正)がされたものである。
その後、平成24年7月27日付けの審査官による前置報告を踏まえ、当審により平成24年9月5日付けで審尋を行ったところ、審判請求人から平成24年12月20日に回答がされた。
本願の各請求項に係る発明は、平成23年6月14日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1には、次のとおり記載されている。

「【請求項1】
スチール又はスチール材料から成り、炉に適合した部分長片(10)でローラ(13a)上を炉室に搬入可能で、再び搬出可能である、連続鋳造製品(2)の加熱及び/又は温度補償をするためのローラ炉床炉(1)において、
入側(11)に、その長さが連続鋳造製品(2)の幅に相当する、炉(1)の長手方向(12)に延在するローラ(13a)から成る第1のローラ列(13)が配設されていること、出側(14)に、第1のローラ列に対して平行な第2のローラ列(15)が設けられていること、第1と第2のローラ列(13,15)の間に、連続鋳造製品(2)の横方向搬送用のストローク要素(17)を有するバッファゾーン(16)が配設されていること、炉(1)の長手方向(12)に延在する第1のローラ列(13)及び/又は第2のローラ列(15)が、それぞれ加熱ゾーン(19)を構成することを特徴とするローラ炉床炉。」(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

2.引用例とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された、欧州特許出願公開第353487号明細書(以下、「引用例」という。)には以下の事項が記載されている。
「Fig 2 shows an embodiment analogous to that of Fig.1, wherein a temperature maintenance and heating furnace 113 to feed the rolling train 10 is fed itself by a temperature equalization furnace 13, the inlets of which receive slabs 18-18' from two continuous casting lines 11.
The equalization furnace 13 comprises a central roller conveyor 15 which during the course of its development becomes the roller conveyor 116 that feeds the temperature maintenance and heating furnace 113.
Between the central roller conveyor 15 and two lateral intake roller conveyors 16 are located traversing elements 25.
The temperature equalization furnace 13 performs the task of aligning the slabs 18-18' in relation to the inlet of the temperature maintenance furnace 113 and is provided with a downstream emergency exit 17.
The walking beam elements 22-23-24 of the temperature maintenance and heating furnace 113 are analogous to those described regarding Fig.1.
The temperature maintenance and heating furnace 113 too includes an upstream emergency exit 217 and a downstream inspection and emergency door 117.
The equalization furnace 13 comprises two series of traversing elements to traverse the slabs 18 from the lateral intake roller conveyors 16 to the central roller conveyor 15. 」(明細書第5欄26行ないし55行)

ここで、上記記載事項の和訳文(仮訳)は以下のとおりである。
「図2は、図1のものと類似した実施の形態を示し、圧延列10にスラブ18-18’を搬入する温度維持加熱炉113には、温度均一化炉13により、その炉13の入口で2つの連続鋳造ライン11から受け取ったスラブ18-18’が搬入される。
均一化炉13は、その進展工程において、温度維持加熱炉113に(スラブ18-18’を)搬入するローラコンベア116へとつながる中央ローラコンベア15を含む。
中央ローラコンベア15と2つの側面入口のローラコンベア16との間にはトラバース要素25が配置されている。
温度均一化炉13は、温度維持炉113の入口との関係でスラブ18-18’を位置合わせする作業を実行するものであって、下流側非常口17が備えられている。
温度維持加熱炉113のウォーキングビーム要素22-23-24は、図1に関して説明したものと類似するものである。
温度維持加熱炉113はまた、上流側非常口217と下流側検査非常ドア117を含む。
均一化炉13は、中央ローラコンベア15に2つの側面入口のローラコンベア16からスラブ18をトラバースするための2列のトラバース要素を含む。」

ここで、引用例の上記記載及び図面から次のことが明らかである。
(1)引用例の温度維持加熱炉113は、ローラ炉床炉と呼べるものであって、全体としては、図1の温度均一化炉13と同等の構成を有し、入側のローラコンベア116とともに出側にもローラコンベアが存在する。ここで、入側のローラコンベア116を第1のローラコンベアとし、出側のローラコンベアを第2のローラコンベアとすることとすると、第1及び第2のローラコンベアは、互いに平行に設けられ、それぞれスラブ18の幅に相当する長さのローラを有している。
(2)引用例のものは、炉に搬入される前にスラブ18がシャー12により適当な長さに切断されており、「切断された部分片」が形成されている。
(3)引用例の温度維持加熱炉113のウォーキングビーム要素22-23-24は、横方向に搬送するためのものであって、これが設置された領域は、スラブ18の「一時的保持領域」となっている。

これらによれば、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているということができる。
「炉に搬入される前にシャー12により適当な長さに切断された部分片でローラ上を炉室に搬入可能で、再び搬出可能である、スラブ18のローラ炉床炉としての温度維持加熱炉113において、
入側に、その長さがスラブ18の幅に相当する、炉113の長手方向に延在するローラから成る第1のローラコンベア116が配設され、出側に、第1のローラコンベアに対して平行な第2のローラコンベアが設けられ、第1と第2のローラコンベアの間に、スラブ18の横方向搬送用のウォーキングビーム要素22-23-24を有する一時的保持領域が配設されている温度維持加熱炉113。」

3.本願発明と引用発明との対比
(1)両発明の比較
引用発明の「ローラ炉床炉としての温度維持加熱炉113」は、温度維持を行うとともに加熱も行うものであるから、本願発明の「加熱及び/又は温度補償をするためのローラ炉床炉(1)」に相当する。また、引用発明の「炉に搬入される前にシャー12により適当な長さに切断された部分片」は、炉の大きさに合わせて切断されるものであるから、引用発明の「炉に適合した部分長片」に相当する。また、同様に、「スラブ18」は「連続鋳造製品(2)」に、「第1のローラコンベア116」は「第1のローラ列(13)」に、「第2のローラコンベア」は「第2のローラ列(15)」に、「ウォーキングビーム要素22-23-24」は「ストローク要素(17)」に、「一時的保持領域」は「バッファゾーン」に、それぞれ相当する。

(2)両発明の一致点
「炉に適合した部分長片でローラ上を炉室に搬入可能で、再び搬出可能である、連続鋳造製品の加熱及び/又は温度補償をするためのローラ炉床炉において、
入側に、その長さが連続鋳造製品の幅に相当する、炉の長手方向に延在するローラから成る第1のローラ列が配設され、出側に、第1のローラ列に対して平行な第2のローラ列が設けられ、第1と第2のローラ列の間に、連続鋳造製品の横方向搬送用のストローク要素を有するバッファゾーンが配設されているローラ炉床炉。」

(3)両発明の相違点
(ア)本願発明の連続鋳造製品が「スチール又はスチール材料から成」るのに対して、引用発明のものは不明である点。
(イ)本願発明の炉は「炉(1)の長手方向(12)に延在する第1のローラ列(13)及び/又は第2のローラ列(15)が、それぞれ加熱ゾーン(19)を構成する」のに対して、引用発明のものはどのように加熱されるのか不明である点。

4.相違点についての検討
(1)相違点(ア)について
引用発明のものも、炉の前後に連続鋳造工程11と圧延工程10を備えるもの(「2.引用例とその記載事項」参照)であって、連続鋳造-加熱-圧延工程を経て加工される素材として、スチール又はスチール材料は代表的なものであるところ、そのような材質を採用することは格別でない。

(2)相違点(イ)について
引用発明の炉も温度維持加熱炉というべく、炉内を加熱していることは明らかである。ここで、例えば原審査定時に周知例として挙げられた、特開平9-296220号公報、特開平9-287018号公報などには、炉内をガスバーナで加熱するものが記載されている。そして、この特開平9-296220号公報のものは、保熱炉3に関するが、【図4】などを参照すれば、搬送テーブル(ローラー)4の側面、上下部、下部にバーナを設置したものが記載され、搬送テーブル4の特に出側が加熱ゾーンを構成しているといえる。また、特開平9-287018号公報のものは、加熱炉に関し、搬送テーブルの上下を加熱すべく、抽出ローラーテーブル11側の側壁の抽出ローラーテーブル11を挟んだ上下に10本ずつバーナを配置したものが記載されていることから、少なくとも抽出ローラーテーブル11近辺は加熱ゾーンを構成しているといえる。
さらに、周知例の1つとして新たに挙げる、特開平5-339636号公報には、連続鋳造工程と圧延工程との間に炉設備を設けたものにおいて、その炉の装入口3側を加熱するもの(【図1】参照)、抽出口6側を加熱するもの(【図4】参照)が記載されている。
引用発明のような炉においても、その炉が温度維持加熱炉ということであれば、炉に搬入された製品を先ず適切な温度になるよう加熱などを行い、そしてその温度を搬出まで維持する、或いは、又はさらに炉からの搬出時に適切な温度となるよう適宜に加熱などを行う、というような温度の維持加熱が通常考えられるところであり、加熱の箇所としては、少なくとも炉の入側の近辺や出側の近辺とするのが適当である。実際、前記周知例のものもそのような構成となっている。
そうすると、引用発明において、温度維持加熱炉113内の加熱すべき箇所として、入側としての第1のローラコンベア近辺、出側としての第2のローラコンベア近辺とし、その箇所を加熱ゾーンとすることは格別困難ということはなく、このような構成を採用して、本願発明の上記相違点(イ)に係る構成とすることは、当業者にとって想到容易ということができる。

そして、本願発明の効果も、当業者であれば、引用発明及び周知の技術から予測し得る範囲のものであって、格別顕著とはいえない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということができる。

5.まとめ
以上、本願発明は、引用発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-07 
結審通知日 2013-05-28 
審決日 2013-06-10 
出願番号 特願2008-553633(P2008-553633)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B21B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福島 和幸  
特許庁審判長 石川 好文
特許庁審判官 川端 修
鈴木 正紀
発明の名称 スチール又はスチール合金から成る連続鋳造製品の加熱及び/又は温度補償をするためのローラ炉床炉と熱間ストリップ仕上げ圧延ラインの前にローラ炉床炉を配設するための方法  
代理人 鍛冶澤 實  
代理人 清田 栄章  
代理人 篠原 淳司  
代理人 今村 良太  
代理人 江崎 光史  

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