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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1281764
審判番号 不服2013-2787  
総通号数 169 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-02-13 
確定日 2013-11-14 
事件の表示 特願2009-271329「裏面一体化シート及びそれを使用した太陽電池モジュールの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 6月 9日出願公開、特開2011-114262〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、平成21年11月30日の出願であって、平成24年11月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年2月13日付けで拒絶査定不服審判請求がなされ、これと同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定

1 結論

本件補正を却下する。

2 理由

(1)補正の内容

本件補正は、特許請求の範囲について、補正前の

「【請求項1】
封止材及びバックシートが積層状態で一体化されており、太陽電池モジュールの裏面側に使用される裏面一体化シートであって、
前記裏面一体化シートの周縁において、前記バックシートが存在し前記封止材が存在しない、帯状の未積層部が形成されていることを特徴とする裏面一体化シート。
【請求項2】
前記帯状の未積層部の幅方向の大きさが2?15mmであることを特徴とする請求項1記載の裏面一体化シート。
【請求項3】
前記裏面一体化シートが、平面視矩形形状の枚葉形態であり、少なくとも対向する一対の辺に前記未積層部が形成されている請求項1又は2記載の裏面一体化シート。
【請求項4】
前記裏面一体化シートが、ロール状の巻き取り形態であり、当該巻き取りの幅方向の対向する一対の両辺に、連続的に前記未積層部が形成されている請求項1又は2記載の裏面一体化シート。
【請求項5】
前記封止材と前記バックシートとが、熱ラミネーション法、又は、前記バックシートの表面に溶融した前記封止材を押し出す溶融押し出し法によって積層されている請求項1から4いずれか記載の裏面一体化シート。
【請求項6】
裏面側離型シートと表面側離型シートとの間に、請求項1から5いずれか記載の裏面一体化シートと、太陽電池素子と、表面側のシート部材と、を重ねて真空加熱ラミネーションにより接合し、その後に両離型シートを剥離する工程を備え、
前記真空加熱ラミネーションにおいて、前記裏面一体化シートの周縁近傍から流動によりはみ出した封止材が、前記裏面側離型シート及び/又は表面側離型シート上にはみ出さないように行なうことを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項7】
前記はみ出した封止材が、前記裏面一体化シートの未積層部上、及び、当該未積層部を除く太陽電池モジュールの周縁端面上に留まる請求項6記載の太陽電池モジュールの製造方法。」

を、

「【請求項1】
太陽電池モジュールの製造方法であって、
裏面側離型シートと表面側離型シートとの間に、封止材及びバックシートが積層状態で一体化されている裏面一体化シートと、太陽電池素子と、表面側のシート部材と、を重ねて真空加熱ラミネーションにより接合し、その後に両離型シートを剥離する工程を備え、
前記裏面一体化シートの周縁において、前記バックシートが存在し前記封止材が存在せず、太陽電池モジュールを構成する他の部材との接合後に前記バックシートから切り落とされる部分である、帯状の未積層部が形成されており、
前記真空加熱ラミネーションにおいて、前記裏面一体化シートの周縁近傍から流動によりはみ出した封止材が、前記裏面側離型シート及び/又は表面側離型シート上にはみ出さないように行なうことを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記はみ出した封止材が、前記裏面一体化シートの未積層部上、及び、当該未積層部を除く太陽電池モジュールの周縁端面上に留まる請求項1に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記帯状の未積層部の幅方向の大きさが2?15mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記裏面一体化シートが、平面視矩形形状の枚葉形態であり、少なくとも対向する一対の辺に前記未積層部が形成されている請求項1から3のいずれかに記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項5】
前記裏面一体化シートが、ロール状の巻き取り形態であり、当該巻き取りの幅方向の対向する一対の両辺に、連続的に前記未積層部が形成されている請求項1から3のいずれかに記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項6】
前記裏面一体化シートが、前記封止材と前記バックシートとが、熱ラミネーション法、又は、前記バックシートの表面に溶融した前記封止材を押し出す溶融押し出し法によって積層されている請求項1から5のいずれかに記載の太陽電池モジュールの製造方法。」

と補正するものであって、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると認められる。
そして、本件補正後の請求項1(以下「本願補正発明」という。)は、本件補正前の請求項1を引用する請求項6を減縮したものと認められる。

(2)独立特許要件についての検討

本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。

ア 刊行物の記載

(ア)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平11-186575号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある(下線は当審にて付した。以下同じ。)。

a 「【請求項1】 透光材、封止材、太陽電池セルおよび保護材を積層した被成型体を加圧成型して太陽電池モジュールを製造する製造方法において、前記被成型体表面の周縁を圧接してラミネートを行うことにより、前記保護材を前記封止材を介して前記透光材に圧着することを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
……
【請求項5】 封止材がはみ出さないように、前記封止材の寸法を透光材および保護材より小さくすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の太陽電池モジュールの製造方法。」

b 「【0015】
また、封止材がはみ出さないように、封止材の寸法を透光材および保護材より小さくしたり、保護材の寸法を透光材と同じ寸法にしたりして、ラミネートを行うようにしてもよい。こうすれば、ラミネートを行った後に、封止材や保護材が被成型体の外部にはみ出さないので、従来行われていた封止材や保護材をカットする工程をなくすことができる。なお、上記寸法とは、部材の縦幅および横幅をいう。」

c 「【0042】
次に、太陽電池モジュールを作製するための製造手順について説明する。まず、取付台8に枠体7を取り付け、太陽電池モジュールの構成部材を載置台6に載置する。載置する順は、図1に示すように、透光性基板1、封止材(下側)2a、太陽電池セル3、封止材(上側)2b、裏面保護フィルム4である。なお、封止材(下側)2aと封止材(上側)2bとは、加熱、加圧されることにより一体化されて、ラミネート後は、太陽電池セル3を包み込むような1つの封止材2になる。
【0043】
被成型体10をセットした後、取付台8を閉じることにより、載置台6と取付台8とが当接する。このとき、枠体7が被成型体10の周縁部分、すなわち、裏面保護フィルム4の周縁部分に接する(図1参照)。しかし、太陽電池セル3は、枠体7の枠により損傷されることはない。
【0044】
次いで、取付台8内部が完全に密閉された後、取付台8内の上層12および下層13を脱気して真空状態にするとともに加熱する。所定時間経過後、上層12のみにだけ空気を封入し、下層13は真空状態のままにしておく。これにより、境界シート11が下層13側に弾性変形し、下層13内には約1atmの均一な圧力がかかり、プレスが行われる。封止材2が熱と加圧により流動して、太陽電池セル3を包み込み、透光性基板1と裏面保護フィルム4との間にも入り込み、封止材2、透光性基板1および太陽電池セル3が密着する。
【0045】
このとき、枠体7の下方にある封止材2は、下方向に押さえつけられ、外側に流れ出ようとする。しかし、この部分の封止材2は量が少なく、しかも封止材2bは封止材2aおよび透光性基板1よりも小さいので、周縁の外端に達するだけとなり、外側にはみ出すことはなく、薄く形成される。
【0046】
また、枠より内側の封止材2は、外側に向かって流れ出ようとするが、枠体7が障害となるので移動できず、図2に示すように、枠体7の開口16部分に封止材2の膨らみが生じ、厚く形成される。
【0047】
ラミネートを終了する前には、上層12を真空状態にし下層13に空気を封入する。これにより、下層13は大気圧と等しくなる。そして、取付台8を開き、ラミネート装置5から被成型体10を取り出し、封止材2の接着性を向上させるためオーブン等で封止材2を架橋する。そして、被成型体10の周縁部分をシール部材で巻き、アルミニウム等からなる保護用のフレーム枠を装着し、太陽電池モジュールが完成する。」

d 図1ないし図4は、次のものである。



(イ)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2000-91610号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。

a 「【請求項1】太陽電池用のフロントカバーフィルムまたはバックカバーフィルムに、熱可塑性樹脂を主成分とする太陽電池用充填材層が積層されていることを特徴とする太陽電池のカバーフィルム。
……
【請求項9】太陽電池用のフロントカバーフィルムまたはバックカバーフィルムに、熱可塑性樹脂を主成分とする太陽電池用充填材層を積層してなる太陽電池のカバーフィルムの製造方法であって、前記フロントカバーフィルムまたはバックカバーフィルムに、熱可塑性樹脂を主成分とする太陽電池用充填材層を、熱ラミネーション法、ドライラミネーション法、押し出しラミネーション法、押し出しコート法、カレンダーコート法のいずれかで積層することを特徴とする太陽電池のカバーフィルムの製造方法。」

b 「【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記のような製造方法で太陽電池を製造した場合、性能面では良好なものが得られたが、積層時の部材が、太陽電池素子、両面の充填材シート、そして、フロントカバーシートおよびバックカバーシートのように多く、これらを所定の位置に重ねて積層するなど、作業が煩雑で工程数も多く、生産性に劣り、また、充填材シートやフロントおよびバックカバーシートの厚さにも無駄があり、コスト面でも高価となる問題があった。
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、太陽電池の各部材を積層して太陽電池モジュールを作製する際、その部材数を減らして工程を簡略化し、且つ、充填材層やフロントカバーシートおよびバックカバーシートの厚さをできる限り薄くして省資源、低コスト化を図り、性能、コンパクト性、長期信頼性、経済性に優れた太陽電池モジュールを作製できる太陽電池のカバーフィルムとその製造方法、およびそのカバーフィルムを用いた太陽電池モジュールを提供することにある。」

c 「【0033】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の太陽電池のカバーフィルムおよびそれを用いた太陽電池モジュールの実施の形態について説明する。
本発明に係る太陽電池のカバーフィルムは、例えば、図1の(イ)、(ロ)に示すような構成となる。
また、このようなカバーフィルムを用いて作製される太陽電池モジュールは、例えば、図2に示すような構成とすることができる。
……
図1の(ロ)において、背面用の太陽電池のカバーフィルム20は、バックカバーフィルム3と太陽電池用充填材層2′とを積層した構成である。そして、この場合も、両者の間には、図には示していないが、必要に応じて、接着剤層、熱接着性樹脂層、アンカーコート層などの接着層を設けて接着性を向上させることができる。
バックカバーフィルム3には、例えば、中間層にバリヤー層としての無機酸化物の蒸着層を有し、且つ、少なくとも一方の面に光反射性を有する白着色などの樹脂フィルムが積層された積層フィルム、または、中間層に金属箔層または金属蒸着層を有し、両側に樹脂フィルムが積層された積層フィルムを用いることが好ましい。
また、太陽電池用充填材層2、2′には、それぞれ各種の熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂組成物を使用することができるが、特に、エチレン-酢酸ビニル共重合体は、その酢酸ビニル含有量の調節などにより、熱流動性や熱接着性を容易に調整できるので好適に使用することができる。
【0036】
図2において、太陽電池モジュール100は、前面、即ち、光が入射する側から、フロントカバーフィルム1、太陽電池用充填材層2、太陽電池素子4、太陽電池用充填材層2′、バックカバーフィルム3が順に積層された構成である。
【0037】
このような太陽電池モジュール100は、太陽電池素子4の前面側に、前記図1の(イ)に示した前面用の太陽電池のカバーフィルム10を配置し、そして、太陽電池素子4の背面側には、前記図1の(ロ)に示した背面用の太陽電池のカバーフィルム20を配置して、例えば、真空ラミネート法などで排気、加熱圧着することにより、生産性よく製造することができる。」

d 図1及び図2は、次のものである。



イ 引用発明

上記ア(ア)aないしdによれば、引用文献1には、次の発明が記載されているものと認められる。

「透光性基板1、封止材2a、2b、太陽電池セル3および裏面保護フィルム4を積層した被成型体を加圧成型して太陽電池モジュールを製造する製造方法において、被成型体表面の周縁を圧接してラミネートを行うことにより、裏面保護フィルム4を封止材2a、2bを介して透光性基板1に圧着する太陽電池モジュールの製造方法であって、
封止材2a、2bが被成型体10からはみ出さないように、封止材2a、2bの寸法を透光性基板1および裏面保護フィルム4より小さくし、
取付台8に枠体7を取り付け、
透光性基板1、封止材(下側)2a、太陽電池セル3、封止材(上側)2b、裏面保護フィルム4の順で、太陽電池モジュールの構成部材を載置台6に載置し、
取付台8を閉じることにより、載置台6と取付台8とを当接し、枠体7を裏面保護フィルム4の周縁部分に当接し、
取付台8内部が完全に密閉された後、取付台8内の上層12および下層13を脱気して真空状態にするとともに加熱し、所定時間経過後、上層12のみにだけ空気を封入し、下層13は真空状態のままにしておくことにより、境界シート11を下層13側に弾性変形し、プレスを行う太陽電池モジュールの製造方法。」(以下「引用発明」という。)

ウ 対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「透光性基板1」、「封止材(上側)2b」、「太陽電池セル3」、「裏面保護フィルム4」及び「太陽電池モジュール」は、それぞれ本願補正発明の「表面側のシート部材」、「封止材」、「太陽電池素子」、「バックシート」及び「太陽電池モジュール」に相当する。

(イ)引用発明の「透光性基板1、封止材(下側)2a、太陽電池セル3、封止材(上側)2b、裏面保護フィルム4の順で、太陽電池モジュールの構成部材を載置台6に載置し」、「真空状態にするとともに加熱し」、「プレスを行う」ことは、本願補正発明の「封止材及びバックシート」と、「太陽電池素子と、表面側のシート部材と、を重ねて真空加熱ラミネーションにより接合」することに相当する。

(ウ)引用発明の「封止材(上側)2b」の寸法は、「裏面保護フィルム4より小さく」されているので、「裏面保護フィルム4」の周縁において、「裏面保護フィルム4」が存在し「封止材(上側)2b」が存在しない帯状の未積層部が形成される点で、本願補正発明と共通する。

以上によれば、両者は、

「太陽電池モジュールの製造方法であって、
封止材及びバックシートと、太陽電池素子と、表面側のシート部材と、を重ねて真空加熱ラミネーションにより接合する工程を備え、
バックシートが存在し封止材が存在しない帯状の未積層部が形成されている太陽電池モジュールの製造方法。」

で一致し、以下の点で相違するものと認められる。

a 本願補正発明では、真空加熱ラミネーションによる接合の工程において、裏面側離型シート及び表面側離型シートを用い、裏面一体化シートの周縁近傍から流動によりはみ出した封止材が裏面側離型シート及び/又は表面側離型シート上にはみ出さないようにするのに対し、引用発明1では、真空加熱ラミネーションによる接合の工程において、裏面側離型シート及び表面側離型シートを用いるか否かが特定されておらず、封止材2a、2bが被成型体10からはみ出さないようにしている点(以下「相違点1」という。)。

b 本願補正発明では、封止材及びバックシートが積層状態で一体化されている裏面一体化シートを用いるのに対し、引用発明では、封止材(上側)2b及び裏面保護フィルム4が一体化されていない点(以下「相違点2」という。)。

c 本願補正発明では、帯状の未積層部は、太陽電池モジュールを構成する他の部材との接合後にバックシートから切り落とされる部分であるのに対し、引用発明では、帯状の未積層部は、太陽電池モジュールを構成する他の部材との接合後に裏面保護フィルム4から切り落とされる部分であるか否かが特定されていない点(以下「相違点3」という。)。

エ 判断

(ア)相違点1について

太陽電池モジュールを真空加熱ラミネーションによって製造する際に、裏面側離型シート及び表面側離型シートを用いることは、例えば特開2000-101117号公報(段落【0025】、【0027】及び図2を参照。)に記載のように周知の技術であって、引用発明において、当該周知の技術を適用することに格別の困難性は認められない。
そして、引用発明において、封止材2a、2bは被成型体10からはみ出さないから、裏面側離型シート及び表面側離型シートを採用しても、はみ出した封止材2a、2bが裏面側離型シート、表面側離型シート上にはみ出すことはないので、結局、引用発明において、上記周知の技術を適用することにより、本願補正発明の相違点1に係る構成とすることは当業者が容易になし得ることである。

(イ)相違点2について

上記ア(イ)aないしcによると、引用文献2には、「太陽電池用のバックカバーフィルム」(本願補正発明の「バックシート」に相当。)に、「太陽電池用充填材層」(本願補正発明の「封止材」に相当。)を、「熱ラミネーション法、ドライラミネーション法、押し出しラミネーション法、押し出しコート法、カレンダーコート法のいずれかで積層」(本願補正発明の「積層状態で一体化」に相当。)して「背面用の太陽電池のカバーフィルム」(本願補正発明の「裏面一体化シート」に相当。)とすることにより、低コスト化や生産性の向上を図る技術が記載されていると認められる。
そして、太陽電池モジュールの製造において、低コスト化や生産性の向上は周知の課題であるから、引用発明に、引用文献2に記載の上記技術を適用して、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得ることである。

(ウ)相違点3について

引用発明では、裏面保護フィルム4の寸法について特定されていないところ、引用文献1には、「……保護材の寸法を透光材と同じ寸法にしたりして、ラミネートを行うようにしてもよい。」(上記ア(ア)bを参照。)と記載されており、引用発明において、裏面保護フィルム4の寸法を他の部材との比較でどのように設定するかは、当業者が適宜決定し得る設計的事項にすぎないものである。
そして、太陽電池モジュールの製造において、他の部材よりも寸法の大きいバックシートを使用し、他の部材との接合後に、外側にはみ出ているバックシートを切り落とすことは、例えば引用文献1(段落【0005】及び【0007】を参照。)に記載のように周知の技術であることを踏まえると、引用発明において、他の部材よりも寸法の大きい裏面保護フィルム4を使用し、他の部材との接合後に、外側にはみ出ている裏面保護フィルム4を切り落とすこと、すなわち、相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が適宜なし得ることである。

(エ)本願補正発明の効果について

本願補正発明によってもたらされる効果を全体としてみても、引用発明1、引用文献2に記載の技術及び周知技術から当業者が当然に予測できる程度のものであって、格別顕著なものとはいえない。
なお、請求人は、審判請求の理由において、封止材及びバックシートを個別に積層するよりもあらかじめ一体化したほうが、封止材のはみだし量が少なくなるという知見は、従来全く予想できなかったものである旨主張するが、封止材のはみだし量は、封止材の寸法(幅、厚さ)や真空加熱ラミネーションの条件(温度、圧力、時間)等を含めた諸条件に左右されるものと考えられるから、採用できない。

オ 小括

以上のとおり、本願補正発明は、引用文献1、2に記載の発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)補正却下の決定のむすび

よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであって、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明

本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1を引用する請求項6に係る発明(以下「本願発明」という。)を、請求項1を引用しない形式で記載すると以下のとおりである。

「裏面側離型シートと表面側離型シートとの間に、封止材及びバックシートが積層状態で一体化されており、太陽電池モジュールの裏面側に使用される裏面一体化シートであって、前記裏面一体化シートの周縁において、前記バックシートが存在し前記封止材が存在しない、帯状の未積層部が形成されている裏面一体化シートと、太陽電池素子と、表面側のシート部材と、を重ねて真空加熱ラミネーションにより接合し、その後に両離型シートを剥離する工程を備え、
前記真空加熱ラミネーションにおいて、前記裏面一体化シートの周縁近傍から流動によりはみ出した封止材が、前記裏面側離型シート及び/又は表面側離型シート上にはみ出さないように行なうことを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。」

2 判断

本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定を付したものが本願補正発明であるところ、本願補正発明が、前記第2、2(2)において検討したとおり、引用文献1、2に記載の発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであることに照らせば、本願発明が引用文献1、2に記載の発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであることは明らかである。

3 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用文献1、2に記載の発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-09-11 
結審通知日 2013-09-17 
審決日 2013-09-30 
出願番号 特願2009-271329(P2009-271329)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和田 将彦  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 服部 秀男
小松 徹三
発明の名称 裏面一体化シート及びそれを使用した太陽電池モジュールの製造方法  
代理人 正林 真之  

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